JP3043049B2 - 銀付人工皮革 - Google Patents

銀付人工皮革

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Description

【発明の詳細な説明】 〈産業上の利用分野〉 本発明は、改良された柔軟性と充実感を有する人工皮
革に関する。
〈従来技術〉 従来より、天然皮革様の柔軟性のある風合を持つ人工
皮革は各種提案されてきた。
天然皮革様の柔軟性を出すために、まず1.0dr以下の
極細繊維で3次元絡合不織布をつくり弾性樹脂を含浸、
湿式凝固したものが提案された。
さらに柔軟な物を目指して、海島型多成分繊維からな
る3次元絡合不織布に弾性樹脂を含浸し湿式凝固した
後、溶剤で多成分繊維の少なくとも一成分を抽出除去し
て、単繊維が0.1dr以下の超極細繊維束と弾性樹脂の微
多孔質からなるものが提案され、そのしなやなか柔軟性
を天然皮革に非常に近いものとして市場で高い評価を受
けている。
また、超極細繊維束からなる3次元絡合不織布にごく
わずかな弾性樹脂をバインダーとして含むものがより天
然皮革に近い構造、組成のものとして提案された。
〈発明が解決しようとする課題〉 しかしながら、弾性樹脂の割合が高いものは、やや反
発感のあるゴムライクな風合である。また、密度ま低い
ために、軽量性は特徴としてアピール出来たが、反面、
充実感に欠けるものであった。
また、弾性樹脂の割合を少なくしていくと柔軟性は高
くなっても弾性回復性が劣り、充実感も十分とは言えな
い。
近年、本物感、高級感のあるものに対する要求はます
ます高くなっており、天然皮革を目標とした技術改良は
進んでいるが、まだ、天然皮革と同様の充実感があり、
柔軟性を有するものはつくらていない。
本発明は、天然皮革と同様の充実感を持ちしかも柔軟
で、ゴムライクな反発感のない高級感あふれる人工皮革
を提供しようとするものである。
〈課題を解決するための手段〉 本発明者等は、かかる多くの要求に対して、優れた皮
革様材料を提供するために鋭意研究した結果、3次元絡
合した平均単繊度0.1dr以下の極細繊維束とミクロポー
ラスなポリウレタンバインダーからなり、極細繊維束と
ポリウレタンの重量比が70/30〜97/3でありかつ見掛け
密度が0.5〜0.8g/cm3である基体層と、100%伸長時のモ
ジュラスが20〜150kg/cm2である樹脂からなる厚みが10
〜100μmの無孔質層とからなる銀付人工皮革とするこ
とにより天然皮革様の柔軟性と充実感を合わせ持つ銀付
人工皮革が得られることを見出した。
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明に使用する極細繊維束は、特に限定はしない
が、一成分を抽出除去する海島型多成分繊維または後工
程で細繊維化される分割型多成分繊維などの極細繊維束
形成型繊維から得られるもので、単繊維が0.1〜0.005dr
で10本〜数千本が束になったものが柔軟性の高い人工皮
革を得る上で望ましい。
本発明の基体層を得るためにはまず高密度の不織布を
得る必要がある。
先に述べた極細繊維束形成型繊維を通常の方法でラン
ダムウエッバーあるいはクロスラッパーにて積層ウエブ
をつくり、まず、ニードルパンチングあるいは水流絡合
等で高密度3次元絡合不織布をつくる。この際、不織布
の厚み方向に出来るだけ多くの繊維が配列し、見かけ密
度が0.1g/cm3以上、好ましくは0.15g/cm3以上のものと
することが望ましい。
ニードルパンチングによって絡合させる場合、パンチ
ング条件は特に限定はしないが、ニードル針としては1
バーブもしくは3バーブのものが好ましく用いられ、10
00パンチ/cm2以上、好ましくは1500パンチ/cm2以上の
パンチ密度で行ったものが地合いもよく高密度で良好な
不織布が得られる 絡合処理によって不織布を高密度化するには限度があ
り、この不織布をさらに高密度なものにすために不織布
を収縮させることが好ましい。
極細繊維束形成型繊維にポリエステルを用いる場合に
は、もとの多成分繊維を50℃〜70℃程度の比較的低温下
で2〜3.5倍の倍率で延伸し、不織布を形成した後、加
熱することで不織布を収縮させることが出来る。この方
法で高密度不織布を得ることが工業的に適しているが、
具体的にはトンネル型乾燥機の中で熱風で連続的に加熱
する方法、あるいは熱水浴中で処理する方法があり、後
者のほうが不織布を効率良く均一に加熱できることより
好ましい。このとき、熱水中に、不織布への熱水の浸透
を高める働きをもつ界面活性剤等を添加しておくとさら
に効率良く収縮処理ができるようになる。
この方法を用いて得た高密度不織布、またはこの収縮
処理を行わない不織布を加熱し、プレスすることで目的
とする高密度不織布を得る。
このとき不織布の密度としては0.45g/cm3以上、好ま
しくは0.5g/cm3以上とすることが好ましい。
この不織布にポリウレタンをミクロポーラスな構造で
不織布内に付与するには従来公知の方法が採用出来、ポ
リウレタンのジメチルホルムアミド(DMF)溶液を不織
布に含浸し、DMF/水の混合液または水単独などのポリウ
レタンの非溶剤中で不織布内のポリウレタンを凝固させ
る方法が良く用いられる。また、ポリウレタンを水など
の非溶剤とメチルエチルケトン(MEK)/トルエンなど
の低沸点溶剤の混合液に分散させた液を不織布に含浸
し、加熱乾燥して液中の低沸点溶剤を先に蒸発させ、液
中の非溶剤の比率を徐々に高めてポリウレタンを凝固さ
せる方法もある。
このとき最終的に基体層の極細繊維束とポリウレタン
の重量比が70/30〜97/3、好ましくは80/20〜90/10とな
るようにポリウレタンを付与する必要がある。
極細繊維束とポリウレタンの比が70/30以下ではポリ
ウレタンの比率が高くなりすぎ、基体層の風合にミクロ
ポーラスポリウレタンの弾性的な性質が強く影響し、天
然皮革の持つ低反発な柔軟性からかけ離れた風合とな
り、また、97/3以上ではミクロポーラスなポリウレタン
バインダーの量が少なすぎ、弾性回復性が乏しく充実感
も十分とは言えない。
ここで用いられるポリウレタンは特に限定するもので
はなく公知のものが使用できる。
例えばここで用いられるポリウレタンのポリオール成
分は、分子量が500〜5000好ましくは1000〜2000である
両末端に水酸基を有するポリエステルジオール、ポリエ
ーテルジオール、ポリカーボネートジオールあるいはこ
れらの混合物である。
有機ジイソシアネートとしては4,4′−ジフェニルメ
タンジイソシアネート(MDI)がよく用いられるが、耐
光性の良好なものが必要な場合はイソホロンジイソシア
ネートあるいは水添MDIが用いられる。
さらに鎖伸長剤としては2以上の活性水素を有する炭
素数が2ないし6の低分子ジオールあるいはジアミンが
用いられる。
このようにして不織布にミクロポーラスなポリウレタ
ンバインダーを付与する前、あるいは後に多成分繊維の
極細繊維化処理を行う。
海島型多成分繊維の場合は海成分が可溶でかつ島成分
が不溶な溶剤中で、例えば、パークレン、トリクレン、
トルエンなどで、海成分の樹脂を抽出除去し、極細繊維
束を発現させるし、分割型多成分繊維の場合は機械的処
理あるいは溶剤中で剥離分割細繊維化を行う。この工程
でも必要に応じてプレス等で基体の高密度化を行う。
これら一連の工程で得た基体は見掛け密度が0.5〜0.8
g/cm3、好ましくは0.55〜0.65g/cm3のものが天然皮革の
持つ充実感を再現し、しかも、柔軟性を合わせ持ったも
のとなる。
このとき先に述べたように極細繊維束とポリウレタン
の重量比が70/30〜97/3であることが必要である。
いくら基体の見掛け密度が好ましい範囲にあっても、
ポリウレタンの比率が30%以上であればポリウレタンの
性質であるゴム弾性が強く見られ、天然皮革の反発感の
少ない充実観のある風合とは異なる。また、ポリウレタ
ンの比率が3%以下ではバインダーの量が少なくなりす
ぎ、弾性回復性が乏しく、充実感も十分とは言えない。
このようにして得られた基体の表面に樹脂による銀面
層を付与し、銀付人工皮革を造りあげる。
銀面層を付与する方法はいくつかあり、例えば基体層
の表面にポリウレタンを主成分とする樹脂液をグラビア
コーターで塗布し、その後、加熱エンボスロールで加圧
型押しする方法、基体層の表面に離型紙によって模様付
けされた樹脂膜を接着するいわゆる乾式造面法、そし
て、基体層の上にポリウレタンを主成分とする樹脂溶液
をコートしポリウレタンの非溶剤中で湿式凝固させ、樹
脂スポンジによるコート層を付与し、この上に先ほどの
グラビアコート−エンボス型押しによる方法、あるいは
離型紙造面法によって銀面層をつくるなどの方法が用い
られる。
ここで用いられる樹脂はポリウレタンが最も良く用い
られるが、これは先に含浸用ポリウレタンについて述べ
たのと同様に公知のものを用いれば良く、適宜他の樹脂
を混合して用いても良い。ただし、近年多くの用途で耐
久性が共れられるのでポリエーテル系、あるいはポリカ
ーボネート系などの耐久性に優れたポリウレタンを用い
ることが好ましい。
また、ポリウレタンは硬さの目安である100%伸長時
のモジユラスが20〜150kg/cm2のものが好ましい。20kg/
cm2以下では強度的に問題があり、150/cm2以上では基体
層に対して無孔質層が硬く、人工皮革全体の風合も硬く
なり、折れシワが不自然で荒くなる。
ざらに、無孔質層の厚みは10〜100μmの範囲が好ま
しく、10μm以下では強度が低くなり、100μm以上で
は無孔質層および人工皮革の風合が硬くなり、折れシワ
も不自然で荒くなる。
無孔質層を付与する前または付与した後に必要に応じ
てさらに柔軟性を付与するためにや自然な揉みシワを付
けるために柔軟化処理を行っても良い。
柔軟化処理には機械的なもみを行う方法、あるいは柔
軟化効果を持つ薬液を含浸する方法などが用いられる。
柔軟化に特に効果がある方法として高圧液流染色機を
用い、熱水液流と共に狭いノズルを通過させる方法があ
る。
〈実施例〉 次に本発明を実施例でさらに詳細に説明する。
尚、実施例中の部または%はことわりのない限り重量
に関するものである。
実施例1 島成分がポリエチレンテレフタレート75部、海成分が
低密度ポリエチレン25部からなり、島本数が50本である
繊度10drの海島型繊維を56℃の温水中で2.8倍に延伸
し、機械的に捲縮をかけて、51mmにカットし、カードで
解織し、クロスラッパーでウエブをつくり、これを1バ
ーブのニードル針でパンチ密度1200P/cm2でニードルパ
ンチングし、3次元絡合不織布をつくった。得られた不
織布の見掛け密度は0.16g/cm3であった。
この不織布を80℃の熱水中に2分間浸漬し、面積で40
%収縮させた後、100℃の熱風乾燥機で乾燥し、さらに
表面温度145℃の熱ドラムに金属のネットで加熱圧着し
て、表面が平滑で見掛け密度0.50g/cm3の不織布とし
た。
この不織布にポリエステル系ポリウレタンの13%DMF
溶液を含浸し、DMFと水が1/2の混合液中で湿式凝固さ
せ、ついで熱パークレン中で処理して多成分繊維中の海
成分を抽出除去し、平均単繊度0.08drのポリエステルの
極細繊維束の33次元絡合不織布にポリウレタンが多孔質
構造となって含有した基体を得た。
この基体を、サーキュラータイプの高圧液流染色機を
用い、120℃の熱水液流で布速度100m/分で直径200mmの
ノズルを1時間通過させることで基体を柔軟化させた。
このようにして得られた基体の極細繊維束とミクロポ
ーラスなポリウレタンバインダーの重量比は80/20であ
り、基体層の見掛け密度は0.58g/cm3であった。
この基体の表面に、前もって離型紙上に塗布して模様
付けしておいた、100%伸長時のモジユラスが40kg/cm2
のポリウレタンと顔料からなる厚み30μmの樹脂膜を架
橋型のポリウレタン系接着剤(厚さ40μm)で貼りつけ
るいわゆる離型紙造面によって、厚さ70μmの無孔質仕
上げ層を持つ銀付人工皮革を得た。
この造面品に天然油脂系とシリコン系の混合系の柔軟
剤を含浸し、フリー乾燥したのち手揉みを想定した揉み
機で機械的なもみを行った。
得られた銀付人工皮革は天然皮革と同様な低反発で柔
軟しかも充実感がある風合であり、緻密な折れジワのみ
られるものであった。
実施例2 島成分がポリエチレンテレフタレート65部、海成分が
低密度ポリエチレン35部からなり、島本数が800本であ
る繊度15drの海島型繊維を56℃の温水中で3.0倍に延伸
し、機械的に捲縮をかけ、51mmにカットし、カードで解
繊し、クロスラッパーでウエブをつくり、これを1バー
ブのニードル針でパンチ密度1000P/cm2でニードルパン
チングして3次元絡合不織布をつくった。得られた不織
布の見掛け密度は0.15g/cm3であった。
この不織布を実施例1と同様に、熱水中で35%面積収
縮させ、乾燥、加熱圧着、平滑化し、これにポリウレタ
ン溶液を含浸、凝固し、パークレン中で抽出し、基体を
得た。
これを実施例1と同様に液流染色機で柔軟化して得た
基体は極細繊維とミクロポーラスなポリウレタンバイン
ダーの重量比は80/20であり、見掛密度は0.55g/cm3であ
った。
この基体の表面に100%伸長時のモジュラスが50kg/cm
2であるエーテル系ポリウレタンと顔料からなる塗料を
グラビアコーターで塗布し、加熱エンボスロールで型押
しを行なった。その結果、表面に厚さ20μmの無孔質仕
上げ層ができた。
このものも実施例1と同様に機械的な揉み及び柔軟剤
による柔軟処理を行い、銀付人工皮革を得たが、これは
天然皮革と同様な低反発で実施例1のものよりさらに柔
軟でしかも充実感がある風合を再現し、より緻密な折れ
ジワのみられるものであった。
比較例1 実施例1と同一の海島型繊維を3.5倍に延伸し、延伸
後に80℃の温水中で収縮させた後、機械的に捲縮をか
け、51mmにカットし、クロスラップウエブをつくり、9
バーブのニードル針で400P/cm2のニードルパンチングで
3次元絡合不織布をつくった。この不織布の見掛け密度
は0.13g/cm3であった。
この不織布を熱風乾燥機内で120℃で加熱し、30℃程
度の金属ロールでプレスし、表面の平滑な不織布をつく
った。このものの見掛け密度は0.35g/cm3であった。
この不織布に実施例1と同様にポリウレタン溶液を含
浸し、湿式凝固、海成分の抽出を行い、人工皮革基体を
得た。
この基体に同様に離型紙造面し、さらに柔軟処理を行
って銀付人工皮革を得た。
この人工皮革の見掛け密度は0.4g/cm3であり、極細繊
維束とポリウレタンの重量比は75/25であった この人工皮革は柔軟性が高く、ソフトなものであった
が充実感に乏しく、緻密な折れジワのできないものであ
った。
比較例2 実施例1と同様にしてニードルパンチング不織布をつ
くり、熱水中で収縮した後、乾燥、加熱圧着・平滑化
し、表面の平滑な不織布を得た。この不織布の見掛け密
度は0.55g/cm3であった。この不織布にポリエーテル系
ポリウレタンの2%DMF溶液を含浸、湿式凝固し、さら
にパークレン中で処理して海島繊維の海成分を除去し、
人工皮革基体を得た。この基体に実施例1と同様に離型
紙造面し、柔軟処理を行って銀付人工皮革を得た。
この人工皮革は基体の見掛け密度が0.7g/cm3で極細繊
維束とポリウレタンの比率は98/2であったので、高密度
で低反発ではあるものの、あまりに低反発な為に弾性回
復性に乏しく、充実感も物足りないものであった。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】3次元絡合した平均単繊度0.1dr以下の極
    細繊維束とミクロポーラスなポリウレタンバインダーか
    らなり、極細繊維束とポリウレタンの重量比が70/30〜9
    7/3でありかつ見掛け密度が0.5〜0.8g/cm3である基体層
    と、100%伸長時のモジュラスが20〜150kg/cm2である樹
    脂からなる厚みが10〜100μmの無孔質層とからなる柔
    軟で充実感のある銀付人工皮革。
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