JP3961296B2 - 皮革様シートおよびその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、ボール製造用、特に形状安定性の優れた縫製ボール製造用皮革様シートおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、天然皮革および/又は複合材からなるパーツを多数縫い合わせるか溶接して外部被覆層を形成し、それによってゴム製空気袋を包囲したサッカーボール、ハンドボール、バレーボールなどのスポーツボールが上市されている。また天然皮革の代替として人工素材が用いられる場合も増加している。人工素材からなるパーツは通常多層からなり、表層として高分子重合体層が、内側の層として繊維質基体層が備えられる。そしてスポーツボール製造に関して、これらと複合材の組み合わせ使用は公知であり、人工素材としては、最表層として耐磨耗性の高分子被覆層が、内側の層として織物又はフェルトに高分子弾性体が充填された層が備えられ、目付調整、撥水、防水、耐傷性等目的に応じて様々な複合材がさらに備えられる。
【0003】
かかるスポーツボールにそのような材料を使用する際の問題は、圧縮空気で膨れた内部ゴム製空気袋によって強い内圧がかかる場合に、内部ゴム製空気袋を包囲する外部被覆層の形状安定性が十分でなく、得られるスポーツボールが実質的に釣り合いのとれた真球性を有しないか、あるいは製造されたスポーツボールが時間の経過につれてその真球性が損なわれることにある。その原因は外部被覆層中の内側の層の強力特性および伸張特性の異方性にあることが多い。
【0004】
これらのボールの形状は、空中進行時の方向安定性の観点から真球に近い形状が好ましいとされている。ボールの形状が真球からずれている場合には、空中進行時にかかる空気抵抗にムラが生じ、その結果ボールの直進性が低下する。
【0005】
上記の問題を解決するために、真球に近いボールを提供しうる素材の開発が試みられている。たとえば、内部ゴム製空気袋と外部被覆層との間に木綿、ビスコース、ポリアミド又はポリエステルからなる多層の生地が挿入され、個々の生地は、多方向の安定性をもたらすために、費用をかけて45°の角度で互い違いに置き換え積層されたり、あるいは当該生地の特有の繻子形成を備えることにより生地を堅くするなどの改良が試みられてきた。しかしながら、このような改良は風合いの硬化を招くだけでなく、ボール全体の重量も重くなり、生地と人工素材の組み合わせによる理想的なスポーツボールは未だ得られていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、多数のパーツを縫い合わせるか溶接してゴム製空気袋を包囲することによって製造されたスポーツボールに関して、当該ゴム製空気袋の所定の内圧を受ける際にきっちりと球形状の丸みを達成し、さらに内圧が継続的にかかった状態においても球形状を維持し、さらに風合いの軟らかいスポーツボール用皮革様シートを提案することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討した結果、繊維が三次元絡合されている不織布(A)とその内部に充填された高分子弾性体(B)からなる基体の表面に、ポリウレタン(C)を主体とする被覆樹脂層を有する皮革様シートにおいて、下記式(1)および(2)を満足することを特徴とする皮革様シートが、ボール用途、更には縫製ボール用途として優れた形態安定性と軟らかな風合いを有することを見出し、本発明の完成に至った。
1≦(Y/X)<2 ・ ・ ・ ・ (1)
2 < X < 8 ・ ・ ・ ・ (2)
X:シートの最大伸張方向の20%伸張時の応力(kgf/cm)
Y:シートの最大伸張方向と直交する方向の20%伸張時の応力(kgf/cm)
【0008】
ここで言うシートの最大伸張方向とは、シートが最も伸びやすい方向、いわゆるシートの横方向を意味し、シートの最大伸張方向と直交する方向とは、本発明の皮革様シートを製造するにあたり最も張力がかけられる方向であり、通常製造ラインの進行方向、いわゆるシートの縦方向を意味する。
【0009】
また、本発明は、繊維が三次元絡合されている不織布(A)とその内部に充填された高分子弾性体(B)からなる基体の表面に、高分子弾性体(C)からなる被覆樹脂層を有する皮革様シートを製造するに際し、下記(1)〜(4)の工程
(1)繊維が三次元絡合された不織布(A)を製造する工程、
(2)高分子弾性体溶液または分散液を繊維が三次元絡合されている不織布(A)に含浸し、高分子弾性体(B)を凝固させる工程、
(3)得られた基体を、130〜160℃、巾出し率10〜25%にて予備熱セットした後に、150〜180℃でかつ該予備熱セット温度よりも15℃以上高い温度で巾出し率8〜15%にて本熱セットする工程、
(4)基体の表面に高分子弾性体(C)からなる被覆層を付与する工程、を(1)(2)(3)(4)の順序または(1)(2)(4)(3)の順序で行うこと、あるいは(4)を(3)の工程途中で行うことを特徴とする皮革様シートの製造方法に関する。
【0010】
本発明の繊維が極細繊維の場合、工程(1)は、▲1▼極細繊維を発生する極細繊維発生型繊維を主体とするステープルを、カージングしてウェッブとする工程、▲2▼ウェッブを積層し、ニードルパンチして不織布とする工程、▲3▼ニードルパンチした不織布をプレスする工程、を含んでも良い。そして、工程(2)の前後にて皮革様シートを構成する不織布が極細繊維発生型繊維からなる場合には、極細繊維発生型繊維から極細繊維を発生させる工程を行う。
【0011】
【発明実施の形態】
本発明に用いる繊維は、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維等の公知の合成繊維を使用することができるが、得られる皮革様シートの面の平滑性、風合い、タッチおよび折れしわ性が優れることから好ましくは繊度1デシテックス以下、より好ましくは0.5デシテックス以下の繊維を用いる。繊度0.5デシテックス以下の極細繊維を発生させる極細繊維発生型繊維は、相溶性を有していない2種以上の熱可塑性ポリマーを複合紡糸または混合紡糸することにより得ることができる。その代表的な繊維の形態は、いわゆる海島型繊維と呼ばれるものである。
【0012】
海島型繊維の島成分ポリマーとしては、溶融紡糸可能で、強度等の繊維物性を十分に発揮するポリマーであって、紡糸条件下で海成分ポリマーより溶融粘度が大きく、かつ表面張力が大きいポリマーが好ましく、例えば6−ナイロン、66−ナイロン等で代表されるのポリアミド系ポリマー、およびこれらを主体とする共重合体、ポリエチレンテレフタート、ポリブチレンテレフタレート等で代表されるポリエステル系ポリマー、およびこれらを主体とする共重合体等が好適に用いられる。
また海成分ポリマーとしては、島成分ポリマーよりも溶融粘度が低く、島成分との溶解性、分解性を異にし、海成分の溶解除去に用いられる溶剤または分解剤等への溶解性または分解性が大きく、島成分との相溶性の小さいポリマーが好ましい。例えばポリエチレン、変性ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、変性ポリエステル等が好適に用いられる。
【0013】
繊度0.5デシテックス以下の極細繊維を発生させる場合、極細繊維発生型繊維すなわち海島型繊維の好適な海島体積比率は30/70〜70/30の範囲である。海成分が30%未満では溶剤または分解剤などで溶解または分解除去する成分が少なすぎて柔軟性が十分発現できず、海成分が70%を越える比率では、溶解または分解除去後の島成分からなる繊維の絶対量が少なく皮革様シートとしての充分な物性が確保できず、また溶解または分解除去する成分が多いことは生産性の観点からも好ましくない。
本発明における海成分を溶解除去した後の好適な島成分の平均繊度は、前述のごとく0.5デシテックス以下であることが得られる皮革様シートの面平滑性が良好になり、さらに風合いにおいても柔軟性が優れることから好ましいが、風合い、触感を損なわない程度に上記以外の繊維を用いてもよい。
【0014】
本発明の極細繊維発生型繊維を従来公知の方法によって、延伸、捲縮、熱固定、カット等の処理を経てステープルとする。
極細繊維発生型繊維のステープルには、例えば繊維間の摩擦を下げる効果のあるポリオルガノシロキサンや各種変性されたシリコン系の油剤、繊維間をまとめ対金属間の摩擦を下げる効果のある鉱物油系の油剤、その他帯電防止剤等の公知の油剤を繊維の特質を考慮しながらブレンドして付与する。付与する工程としては各繊維の延伸の前後、捲縮の前後、繊維の混綿の前後等いずれでもよい。極細繊維発生型繊維はカード、ニードル工程での巻き付きや繊維割れなどのトラブルが起きやすく、したがって繊維に摩擦係数を軽減する油剤を重点的に付与するのが好ましい。続いて、極細繊維発生型繊維ステープルを公知の方法でカード、ウェッバーを通してランダムウェッブまたはクロスラップウェッブとし、これらのウェッブを積層する。
【0015】
次に積層したウェブをニードルパンチにより繊維絡合不織布とするが、本発明におけるニードルパンチのフェルト針は公知の物が用いられる。そしてウェッブの厚さ方向への絡合を行うには繊維切れの起きにくい1バーブ針が好適に用いられる。また不織布の表面の比重を上げるためには3バーブ、6バーブ、9バーブ等の多バーブの針が使用できる。また、目的によってこれらの針を組み合わせても良い。
ニードルパンチ工程におけるパンチ数は使用する針の形状や、ウェッブの厚みにより異なるが、200〜2500パンチ/cmの範囲で行うことが好ましい。一般的に極細繊維発生型繊維のニードルパンチにおいては、ニードルパンチ条件が強すぎる場合には極細繊維発生型繊維の切断や繊維割れがおこり、絡合が向上せず、またニードルパンチ条件が弱すぎる場合には厚さ方向に並ぶ繊維本数の不足をまねき絡合が向上しない。
【0016】
ニードルパンチされた不織布は次に表面を平滑化し、厚みを規制するため、厚さ方向にプレスする。プレスの方法は、複数の加熱ロール間を通す方法、予熱した不織布を冷却ロール間に通す方法等従来公知の方法が利用でき、極細繊維発生型繊維中の海成分すなわちポリエチレンなどの低溶融粘度成分の溶融・圧着により、より不織布の平滑化を達成することが出来る。なお、この際に次工程以降で不織布にかかる張力やプレス等による形態変化を抑制する目的でポリビニルアルコールやデンプン、樹脂エマルジョン等、後工程で除去可能な接着剤を付与することは差し支えない。不織布の厚みは、得られる皮革様シートの用途等によって任意に選択でき、特に制限されるものではないが、その厚みは0.2〜3.0mm程度であることが好ましく、0.4〜2.5mm程度であることがより好ましい。不織布の見かけ密度は、柔軟な風合いを有する皮革様シートを得るためには0.10〜0.60g/cmであることが好ましく、0.15〜0.50g/cmであることがより好ましい。見かけ密度が0.10g/cm未満の場合、得られる皮革様シートの腰がなくなったり、ゴムの様な風合いとなる傾向がある。一方、見かけ密度が0.60g/cmを越えた場合、反発性および腰感が劣り、天然皮革のような風合いが損なわれる傾向がある。
【0017】
面を平滑化した不織布は次に高分子弾性体溶液または分散液を含浸し、スポンジ状に凝固させる。高分子弾性体としては従来から皮革様シートの製造に用いられている樹脂が好適に用いられる。すなわち、ポリウレタン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリアクリル酸系樹脂、ポリアミノ酸系樹脂、シリコン系樹脂、およびこれらの共重合、これらの混合物等が好適である。なかでもポリウレタン系樹脂が天然皮革様の風合い、触感等が得られることから好ましい。これらの樹脂は水系エマルジョンまたは有機溶剤溶液として前記不織布に含浸した後、乾式凝固又は湿式凝固等を行うことによりスポンジ状に凝固する。
【0018】
高分子弾性体溶液または分散液を含浸凝固した繊維質基体が極細繊維発生型繊維からなる場合には、次工程として、高分子弾性体および極細繊維発生型繊維の島成分の非溶剤であり、極細繊維発生型繊維の海成分の溶剤または分解剤である液により該海成分を溶解または分解除去することにより極細繊維を発生させ、極細繊維不織布と高分子弾性体からなる基体を得る。
【0019】
こうして得られた基体は、その力学特性に異方性が生じる傾向がある。すなわち前述の工程を連続工程にて実施する場合には、通常、処理工程中にラインの進行方向(以後これを「基体縦方向」と定義する)に最も張力がかかっているために得られた基体の縦方向は伸びにくく、基体縦方向と直交する方向(以後これを「基体横方向」と定義する)は伸びやすいといった異方性が生じる。そこで、力学特性の異方性を緩和するため、基体横方向に巾セットいわゆる巾を広げる操作を行う。
【0020】
基体の巾セット方法としては、特に制限はなく、種々の公知の方法を用いることができるが、ピンまたはクリップ等でシートの巾をセットした状態にて熱をかけ乾燥するいわゆるテンター乾燥機が好ましく用いられる。
【0021】
ここで行う巾セットは、以下のように予備熱セットおよび本熱セットの2段階に分割して実施する。基体の力学特性の異方性を緩和するまで1段階で巾セットを実施する場合には、200℃以上の高温での処理が必要となり、風合い硬化の原因となるばかりでなく、含浸した高分子弾性体の熱劣化をも引き起こすために好ましくない。また、巾出し率が30%を超えるため設備負荷も大きくなってしまう。
【0022】
そこで本発明は、前述の方法にて得られた基体を、1段階目としてまず130〜160℃の温度で、基体横方向に基体の巾を基準として巾出し率10〜25%、好ましくは10〜20%にて予備熱セットを行い、次に2段階目として、予備熱セットされた基体を、150〜180℃でかつ該予備熱セット温度よりも15℃以上高い温度で、予備熱セット後の基体の巾を基準として巾出し率8〜15%にて本熱セットを行うといった2段階に分割して巾セットを実施する。
【0023】
予備熱セットの巾出し率が10%未満の場合には、力学特性の異方性を緩和するために本熱セット時の巾出し率を25%以上にする必要があり、さらに処理温度が200℃以上の高温にしなければ十分に巾出しができず、結果として風合いの硬化および含浸ポリウレタンの熱劣化等の原因となるだけでなく、本熱セット時の設備負荷が大きくなり工程通過性が低下する。また、予備熱セットの巾出し率が20%を越える場合には、急激に巾を出すことによって基体の内部構造が不均一となり、さらに設備負荷も大きくなる。また、130℃未満での予備熱セットでは、充分な熱セットが行われずセット後の基体横方向の収縮が大きく、結果として本熱セット時の巾出し率を高くせざるを得なくなるため皮革様シートの風合いの硬化および含浸ポリウレタンの熱劣化が起こる。
本熱セットの巾出し率を8%未満にする場合には、予備熱セットの巾出し率を高く設定する必要があり、前述のように高温での予備熱セット処理が必要となり、本熱セットの巾出し率が15%を越える場合には、基体の内部構造が不均一となりシワを生じることがある。
【0024】
また、予備熱セットと本熱セットの温度差が15℃未満の場合には、本熱セットの効果が小さくなるため、結果として予備熱セットの巾出し率を高くしておく必要があり、得られる皮革様シートの風合いの硬化および含浸ポリウレタンの熱劣化が起こりやすくなる。
【0025】
ここでいう巾出し率とは、セット前後の巾変化を表すパラメーターであり、下記式(3)にて定義される数値である。
巾出し率(%)=(W1−W2)/W2×100・・・(3)
W1:巾セット後の基体横方向の巾(cm)
W2:巾セット前の基体横方向の巾(cm)
【0026】
このような巾セット処理により、基体は力学特性の異方性が緩和されるが、特に下記式(1)および式(2)を満足することがボール用途、更には縫製スポーツボール用素材として重要であり、下記式(1)および式(2)を満足させるよう、2段階の巾セット時の処理温度および巾セット率を決定する必要がある。
1≦(Y/X)<2・・・・ 式(1)
2< X <8 ・・・・ 式(2)
X:シートの最大伸張方向の20%伸張時の応力(kgf/cm)
Y:シートの最大伸張方向と直交する方向の20%伸張時の応力(kgf/cm)
【0027】
また、基体の巾セット工程実施に先立ち、公知の柔軟剤および撥水剤等の各種処理剤もしくは水を含浸し、湿潤状態にて巾セットを実施することが、基体を構成している繊維間の摩擦を低下させ、容易に式(1)および式(2)の範囲を満足する皮革様シートを得ることができるため好ましい。
【0028】
前述の方法にて得られた基体の少なくとも片側の面に、ポリウレタンを主体とする重合体層を被覆する。被覆する樹脂は、ポリエステル系ポリウレタン、ポリエーテル系ポリウレタン、ポリカーボネート系ポリウレタン、およびこれらの混合物、架橋型ポリウレタン、シリコン変性ポリウレタン等の変性ポリウレタン樹脂など、公知の樹脂を用いることができるが、耐摩耗性の観点から、シリコン変性ポリウレタンがより好ましい。シリコン変性ポリウレタンの例としては、ジメチルシロキサン単位をポリウレタンの主鎖や側鎖に導入することにより変性したポリウレタンが好ましく、さらにシリコン変性の程度としては、ポリウレタン中に2〜20重量%のジメチルシロキサン単位が存在しているのが好ましい。また、必要に応じて、酸化防止剤等の添加剤や、他の着色剤、顔料、紫外線吸収剤等を本発明の目的を大きく損なわない範囲で添加してもよい。樹脂の100%モジュラスは、風合いの点から、30〜100kg/cm2の範囲が好ましい。30kg/cmに満たない場合には、柔軟な風合いは実現できるものの耐磨耗性が低下しボールとしての実用に耐えられなくなる。また、100kg/cmを越える場合には、風合い硬化が進行し、ボールとしての商品価値が低下してしまう。
【0029】
前述の方法にて得られた基体の片側の面にポリウレタンの被覆層を付与する方法は、ナイフコート、グラビアコート等によりコートして乾燥するコーティング法、離型紙上に樹脂を塗布し、基体と接着、乾燥した後、離型紙を剥離する乾式法、コーティングした後、ポリウレタンの非溶剤でかつポリウレタンを溶解している有機溶剤と混和性のある溶液の凝固浴中で凝固を生じさせる湿式法、ポリウレタンの有機溶剤溶液あるいは分散液に、水を微分散させたW/Oタイプのエマルジョンをコーティングした後、有機溶剤を選択的に蒸発させてポリウレタンを凝固させる方法、溶融した樹脂を基体上に塗布し、冷却固化させる方法など、従来公知の方法が用いられる。
前述の熱セットする工程の前あるいは途中に被覆層を付与する場合には、特に付与条件に制限はないが、熱セット工程の後に被覆層を付与する場合には、熱セット工程での温度より低い条件にてポリウレタンを分散若しくは溶解している水若しくは溶剤を蒸発させることが式(1)および式(2)を満足する皮革様シートを得る上で好ましい。
【0030】
表面に被覆させるポリウレタン層の厚みは、任意に選択でき、特に限定されるものではないが、基体層及び表面層とのバランスの点から、10〜400μm、好ましくは50〜200μmである。厚さが10μmに満たない場合は、表面物性の低下を招きやすいだけでなく、繊維質の生地目が表面に現れ表面のスムース感が得られにくくなるため好ましくない。一方、400μmを超えると、風合いがゴムライクになること、基体と被覆層とのバランスが崩れさらにはボールの目付が重たくなる等商品価値が低下してしまうこと、また、生産性が低下するなどの観点から好ましくない。
【0031】
巾セット工程は、被覆層を形成する前または後のどちらの工程で処理してもかまわないが、面の平滑性の点から被覆層を形成する前が好ましい。
【0032】
これまで述べてきたように、縫製ボールの真球性を実現するためには、下記式(1)を満足するものが重要であり、
1≦(Y/X)<2・・・・ 式(1)
X:シートの最大伸張方向の20%伸張時の応力(kgf/cm)
Y:シートの最大伸張方向と直交する方向の20%伸張時の応力(kgf/cm)
より好ましくは、1≦(Y/X)<1.5である。
(Y/X)が2以上の場合には、皮革様シートが1方向にのみ伸張するため縫製ボールの真球性が低下し、ボールとしての商品価値が低くなる傾向がある。
【0033】
また、Xの値は、下記式(2)を満足することが風合い、シート強度のバランスが良好であり、ボール用素材として必要である。
2 < X < 8 ・ ・ ・ ・ (2)
すなわち、2以下の場合には、ボールにしたときのタッチおよび風合いは良好であるが、耐磨耗性および機械物性が低下する。また8以上の場合には、耐磨耗性および機械物性は良好であるが、ボールにしたときのタッチおよび風合いが硬く、さらにはボールの空気を抜いたときに生じるシワが再び空気を入れたときに充分に消えないといった欠点が発生することがある。
【0034】
[20%伸張時の応力(kgf/cm)の測定]
・試料の準備
300mm×25mmの試験片をシートの所定の方向より各2枚採取し、20℃、湿度65%で24時間以上放置する。
・装置
荷重伸長記録装置が付属した定速伸長型引張試験機(島津製作所製:IM-100型)を用いた。
・測定方法
オートグラフのツカミ間隔を200mmとし初荷重をかけ試験片を取り付ける。引張速度20mm/minで20%まで引伸し、この時の応力F(kgf)を測定する。
X(またはY) = F/2.5cm
【0035】
【実施例】
次に本発明の実施態様を実施例で具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の部数及び%は特に断わりのない限り重量に基づくものである。
【0036】
実施例1
6−ナイロンとポリエチレンをチップで50/50の重量比で混合して、押し出し機にて島成分が6−ナイロンであって、海成分が高流動性低密度ポリエチレン(海成分/島成分比率=50/50)からなる600島の海島型繊維を紡糸した。得られた繊維を延伸、クリンプ、カットして、3.5デシテックス、カット長さ51mmのステープル繊維を得た。
【0037】
該ステープル繊維をカードに通し、クロスラッパー方式によりウエッブとし、積層した。次に針に1箇所のバーブのついたフェルト針を用いて980P/cmの針刺し密度でニードルパンチして目付640g/mの不織布を得た。この不織布を120℃で加熱後、プレスして表面を平滑にし、厚み2.41mm、目付627g/m、見かけ密度0.260g/cmとした後に13%のポリウレタンのジメチルホルムアミド(DMFと略す)溶液を含浸し、15%DMF水溶液で凝固し、湯洗し、熱トルエンで繊維中の海成分であるポリエチレンを抽出除去後乾燥し、0.045デシテックスの太さの6−ナイロンの極細繊維とポリウレタンからなる基体を得た。得られた基体は、厚さ1.7mmであった。X=1.3でY=4.1であり、Y/X=3.15となった。得られた基体を湿潤状態とし、基体横方向に145℃、巾出し率15%にて2分間予備熱セットした後、さらに165℃、巾出し率10%にて2分間本熱セットした。この処理により得られた基体はX=4.2、Y=6.0であり、Y/X=1.42であった。
【0038】
シボ付き離型紙の(大日本印刷(株)製 UM−12)上に表皮層としてポリエーテル系ポリウレタン(大日精化工業(株)製 商品名:ME8115P)100部、白顔料(大日精化工業(株)製 商品名:DUT4093)5部、メチルエチルケトン30部、DMF30部のポリウレタン溶液をウェットで80g/m塗布し、100℃で5分加熱し、表皮層を得た。その上にポリエーテル系ポリウレタン(大日精化工業(株)製 商品名:ME8105P)100部、メチルエチルケトン30部、DMF30部のポリウレタン溶液をウェットで80g/m塗布し、100℃で5分加熱し、表皮層上に中間層を得た。その上にポリエーテル系ポリウレタン(大日精化工業(株)製 商品名:UD8310)100部、DMF60部、架橋剤(大日精化工業(株)製 商品名:NE架橋剤)10部、架橋促進剤(大日精化工業(株)製商品名:102促進剤)8部のポリウレタン溶液をウェットで150g/m塗布し、70℃で1分加熱し、このフィルムを上記基体に貼り合せた。これを60℃、48時間熟成させ、離型紙をシートから剥離し、銀付き調皮革様シートを得た。こうして得られた銀付き調皮革様シートは、X=4.7、Y=6.4であり、Y/X=1.36であった。この皮革様シートを裁断縫製したサッカーボールはその長径と短径の比が1.01以下の真球性を有していた。また、このボールを3ヶ月間使用した後の形態変化を調べた結果、長径と短径の比が1.01以下の真球性を維持しており、商品価値の高いものであった。
【0039】
実施例2
実施例1において、予備熱セットを140℃、巾出し率10%にて実施し、本熱セットを160℃、巾出し率10%にて実施した以外は同様の処理を行った。得られた皮革様シートは、X=4.3、Y=5.9でありY/X=1.37であった。この皮革様シートを裁断縫製したサッカーボールはその長径と短径の比が1.01以下の真球性を有していた。また、このボールを3ヶ月間使用した後の形態変化を調べた結果、長径と短径の比が1.01以下の真球性を維持しており、商品価値の高いものであった。
【0040】
実施例3
実施例1において、予備熱セットを155℃、巾出し率15%にて実施し、本熱セットを175℃、巾出し率8%にて実施した以外は同様の処理を行った。得られた皮革様シートは、X=5.8、Y=7.0でありY/X=1.21であった。この皮革様シートを裁断縫製したサッカーボールはその長径と短径の比が1.01以下の真球性を有していた。また、このボールを3ヶ月間使用した後の形態変化を調べた結果、長径と短径の比が1.01以下の真球性を維持しており、商品価値の高いものであった。
【0041】
実施例4
実施例1において、表皮樹脂としてポリカーボネート系シリコン変性ポリウレタン樹脂(大日本インキ化学工業(株)製 商品名:クリスボンNY324)100部、DMF30部、メチルエチルケトン30部、顔料白10部、ポリイソシアネート硬化剤(大日本インキ化学工業(株)製 商品名:DN−950)10部からなるポリウレタン樹脂溶液を固形分で80g/mになる様に塗布した以外は同様の処理を行った。得られた皮革様シートは、X=4.1、Y=6.1でありY/X=1.49であった。この皮革様シートを裁断縫製したサッカーボールはその長径と短径の比が1.01以下の真球性を有していた。また、このボールを3ヶ月間使用した後の形態変化を調べた結果、長径と短径の比が1.01以下の真球性を維持しており、商品価値の高いものであった。
【0042】
比較例1
実施例1において、基体の本熱セットを実施しない以外は同様の処理を実施し、皮革様シートを得た。得られた皮革様シートは、X=1.4、Y=4.3でありY/X=3.07であった。得られた皮革様シートを縫製しサッカーボールとしたところ、その長径と短径の比が1.06であり、真球性が低く商品価値の低いものであった。
【0043】
【発明の効果】
本発明により、風合いが柔軟で、サッカーボールなどのスポーツボール用途、更には縫製ボールを作製した場合に真球性の高いボールを作製することが可能となる皮革様シートを提供する。本発明により得られる皮革様シート状物を縫製して得られる各種スポーツ用ボールは、真球性に優れるだけでなく、その形状安定性も良好であり商品価値の高いものである。

Claims (2)

  1. 繊維が三次元絡合されている不織布(A)とその内部に充填された高分子弾性体(B)からなる基体の表面に、高分子弾性体(C)からなる被覆樹脂層を有する皮革様シートを製造するに際し、下記(1)〜(4)の工程(1)繊維が三次元絡合された不織布(A)を製造する工程、(2)高分子弾性体溶液または分散液を繊維絡合不織布に含浸し、高分子弾性体(B)を凝固させる工程、(3)得られた皮革様基体を、130〜160℃、巾出し率10〜25%にて予備熱セットした後に、150〜180℃でかつ該予備熱セット温度よりも15℃以上高い温度で巾出し率8〜15%にて本熱セットする工程、(4)基体の表面に高分子弾性体(C)からなる被覆層を付与する工程、を(1)(2)(3)(4)の順序または(1)(2)(4)(3)の順序で行うこと、あるいは(4)を(3)の工程途中で行うことを特徴とする皮革様シートの製造方法。
  2. 高分子弾性体(C)がシリコン変性ポリウレタンであることを特徴とする請求項に記載の皮革様シートの製造方法。
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