JP3030346B1 - 車椅子用三輪キャスター - Google Patents

Abstract

【要約】 【課題】 前輪キャスターの前輪の半径より大き
な高低差を有する段差のある走行床面や路面であって
も、無理なく、スムースに乗り越えて走行できる車椅子
用三輪キャスターを提供する。 【解決手段】 車椅子の前脚フレーム３に取り付けら
れるキャスター軸４と、キャスター軸４の下端部に枢着
された揺動支持部材５と、揺動支持部材５に回転可能に
取り付けられた回転アーム６と、回転アーム６の下端に
取り付けられた前輪１３と、揺動支持部材５の後端に取
り付けられ、走行時に前輪１３とともに走行面に当接し
転動するストッパー輪８と、揺動支持部材の先端に取り
付けられ、走行時は走行面に当接しない補助輪１４とを
具備する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、高齢者、障害者用
の車椅子の三輪キャスターに関する。

【０００２】

【従来の技術】歩行が困難になった高齢者や障害者は、
その移動のために一般には車椅子が用いられている。近
年、車椅子の移動性能はかなり改善されて快適となった
が、走行面に段差部があったり、凹凸を有する路面で
は、なかなかその性能が発揮できない。

【０００３】即ち、車椅子の車輪の乗り越え高さは、理
論的には前輪キャスターの前輪の半径であるために、車
椅子の前輪キャスターでは、段差部や凹凸部における高
低差が前輪の半径程度となると、乗り越えられず、段差
部や凹凸部における高低差がある程度ある床面や路面の
走行は制限されてしまうという問題があった。

【０００４】従来から、このような問題点に着目して、
ある程度の段差や凹凸面があっても車椅子が走行できる
ように、車椅子用前輪キャスターの構造について研究が
なされていたが、いずれも前輪キャスタの構造が複雑と
なるばかりでなく、前輪寸法やキャスタ全体の重量が大
きくなってしまうという状況であった。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来の上記
問題点を解決することを目的とするものであり、前輪キ
ャスタの前輪の半径より大きな高低差を有する段差のあ
る走行床面や路面であっても、無理なく、スムースに乗
り越えて走行できるという、大きな車輪と同等の段差乗
り越え能力を備え、しかも、構造が簡単であり、コンパ
クトかつ軽量な車椅子の前輪キャスターとして機能する
三輪キャスターを提供することである。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本発明は、上記課題を解
決するために、車椅子の前脚フレームに取り付けられ方
向転換機能を有する車椅子用三輪キャスターであって、
上記車椅子の前脚フレームに取り付けられるキャスター
軸と、上記キャスター軸の下端部に枢着された揺動支持
部材と、上記揺動支持部材に回転可能に取り付けられた
回転アームと、上記回転アームの下端に取り付けられた
前輪と揺動支持部材の後端に取り付けられ、走行時上記
前輪とともに走行面に当接し転動するストッパー輪と、
揺動支持部材の先端に取り付けられ、走行時は走行面に
当接しない補助輪とを具備し、段差乗越え機能を有する
ことを特徴とする車椅子用三輪キャスターを提供する。

【０００７】

【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を実施例に基
づき図面を参照して説明する。図１は、本発明の三輪キ
ャスター１を車椅子２に適用した状態を示す車椅子２の
全体図である。本発明に係る三輪キャスター１は、通常
の前輪キャスター同様に車椅子２の左右の前脚フレーム
３，３の夫々に取り付けられる。

【０００８】図２は、三輪キャスター１の要部の構成を
示す図である。三輪キャスター１は、前脚フレーム３に
取り付けるためのキャスター軸４と、揺動支持部材５
と、回転アーム６とを備えている。

【０００９】キャスター軸４は、車椅子２の前脚フレー
ム３の下端部に適宜固着手段により固定されて取り付け
られる。

【００１０】揺動支持部材５は、その後端側において、
図２中に示されるように下方に屈折しており、その屈折
部９の下端部７にストッパー輪８が取り付けられてい
る。

【００１１】そして、揺動支持部材５の上記屈折してい
る部分近傍において、キャスター軸４の下端部に水平支
持軸１１により枢着されており、水平支持軸１１を中心
にしてピッチング方向に回転可能である。車椅子２がフ
ラットな床面Ｆ又は路面上にある時には、揺動支持部材
５のストッパー輪８及び前輪１３は、床面Ｆ、即ち走行
面に当接しているために、揺動支持部材５は回転しない
が、揺動支持部材５及びストッパー輪８が上方に持ち上
げられ自由状態にある場合では、揺動支持部材５は、水
平支持軸１１を中心にして回転可能である。

【００１２】揺動支持部材５のやや前方部１０におい
て、後方に屈曲した回転アーム６の上端部が垂直支持軸
１２により枢着されており、回転アーム６は垂直支持軸
１２を中心としてヨー方向に回転可能である。回転アー
ム６の下端には、前輪１３が取り付けられており、この
前輪１３の前縁部Ｅの直上近傍に垂直支持軸１２がくる
ような位置関係に構成される。

【００１３】回転アーム６と前輪１３により、従来の車
椅子の前輪キャスター同様に、走行時の方向変換機能が
付与される。フラットな床面Ｆや路面を走行する通常の
走行の際には、前輪１３とストッパー輪８は、床面Ｆや
路面等の走行面に当接して転動する。

【００１４】揺動支持部材５の前端部には、補助輪１４
が取り付けられている。この補助輪１４は、フラットな
床面Ｆや路面上を通常走行する際には、走行面には当接
しない状態で取り付けられている。

【００１５】以上のような構成から成る本発明に係る三
輪キャスター１の作用を説明する。フラットな床面Ｆや
路面を通常走行する際は、図２の状態であり、前輪１３
及びストッパ輪８が床面Ｆ上を転動し、補助輪１４は前
上方に位置し、床面とは接触していない状態である。

【００１６】今、車椅子２が床面Ｆや路面上に配置され
た前輪１３より半径の大きな高低差を有する段差部Ｄを
乗り越す際の動作を説明する。車椅子２が前方に移動し
段差部Ｄに近づくと、図３に示すように、まず前輪１３
の前縁が段差部Ｄの垂直部１５にＡ点で接触する。

【００１７】そして、さらに車椅子２の前進力（通常は
主輪１６を使用者が手で駆動して生じる。）が、キャス
ター軸４を介して揺動支持部材５に伝達すると、Ａ点を
中心にして、回転アーム６及び揺動支持部材５から成る
系に反時計方向のモーメントＭ１が生じる。これによ
り、揺動支持部材５は、図４に示すように、Ａ点を中心
にして反時計方向に回転し、補助輪が段差部Ｄの上面１
７にＢ点で当接する。

【００１８】なお、前輪１３の前縁部Ｅの直上近傍に垂
直支持軸１２がくるような位置関係に構成されているか
ら、前輪１３がＡ点で当接してさらに車椅子の前進力が
前輪１３に加わっても、回転アーム６が垂直支持軸１２
を中心に回転してしまうことはない。

【００１９】さらに、車椅子２が前進してキャスター軸
４に前進力が伝達すると、Ｂ点を中心にして、揺動支持
部材５、回転アーム６及び前輪１３から成る系に反時計
方向のモーメントＭ１が作用して、揺動支持部材５がＢ
点を中心に反時計方向に回転する。これにより、図５に
示すように、前輪１３及びストッパー輪８は上昇して段
差部Ｄを乗り越えその上面にＣ点で前輪１３が接地す
る。即ち、三輪キャスター１は、図５に示すように段差
部Ｄを乗り越えることができる。

【００２０】このように段差部Ｄを乗り越えてから、揺
動支持部材５の後端部に、キャスター軸４を介して車椅
子２及び使用者の重量の一部Ｗが下方に加わるので、揺
動支持部材５には、モーメントＭ２が時計方向に作用
し、Ｃ点を中心として時計方向に回転する。これによ
り、補助輪１４は、図６に示すように、段差部Ｄの上面
１７から上方に持ち上がり、ストッパー輪８は上面１７
に当接し、三輪キャスター１は通常の走行状態に戻る。

【００２１】三輪キャスター１が段差部Ｄを乗り越えれ
ば、車椅子２の主輪１６の半径は段差部Ｄに比べて大き
な寸法であるから、さらに前進することにより容易に段
差部Ｄを乗り上げることができ、段差部Ｄの上面１７を
通常走行することが可能となる。

【００２２】なお、上記実施例では、本発明に係る三輪
キャスター１は、車椅子２の前輪１３として適用した場
合について説明したが、荷物運搬用具等その他の車輪付
き運搬機器に適用できることは言うまでもない。

【００２３】

【発明の効果】本発明に係る三輪キャスターは、キャス
ター軸に回転可能な揺動支持部材を設け、これに回転ア
ームにより前輪を取付け、又、揺動支持部材の先端部に
補助輪を取付け、車椅子の前進力を利用して揺動支持部
材にモーメントを作用させる構成としたので、前輪の半
径より大きな高低差を有する段差や凹凸のある床面や路
面であっても、無理なく、スムースに乗り越えて走行で
きるという、段差及び凹凸を乗り越える性能を十分発揮
することができる。

【００２４】さらに、本発明の三輪キャスターは、構造
がきわめて簡単かつ軽量であり、製造コストも安価であ
り、既存の車椅子にも容易に取り付けられるから、車椅
子の付加価値を高め、来たるべき高齢化社会に多大の貢
献をもたらすものである。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係る三輪キャスターを車椅子に適用し
た状態を示す図である。

【図２】本発明に係る三輪キャスターの実施例を説明す
る図であり、通常の走行状態を示す図である。

【図３】上記実施例の三輪キャスターの作用を説明する
図であり、前輪が段差部に当接した状態を示す図であ
る。

【図４】上記実施例の三輪キャスターの作用を説明する
図であり、補助輪が段差部上面に当接した状態を示す図
である。

【図５】上記実施例の三輪キャスターの作用を説明する
図であり、補助輪、前輪及びストッパー輪が段差部Ｄの
上面に乗り上げた状態を示す図である。

【図６】上記実施例の三輪キャスターの作用を説明する
図であり、三輪キャスタが段差部Ｄの上面に乗り上げた
後、通常の走行状態に戻った状態を示す図である。

【符号の説明】

１ 三輪キャスタ ２ 車椅子 ３ 前脚フレーム ４ キャスター軸 ５ 揺動支持部材 ６ 回転アーム ８ ストッパ輪 １３ 前輪 １４ 補助輪 １６ 主輪 Ｄ 段差部

フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) A61G 5/02 510 - 511 A61G 5/00 510 A61G 1/02 501 - 502 B60B 33/00

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】車椅子の前脚フレームに取り付けられ方向
   転換機能を有する車椅子用三輪キャスターであって、 上記車椅子の前脚フレームに取り付けられるキャスター
   軸と、 上記キャスター軸の下端部に枢着された揺動支持部材
   と、 上記揺動支持部材に垂直支持軸を中心として回転可能に
   取り付けられた回転アームと、 上記回転アームの下端に取り付けられた前輪と、 上記揺動支持部材の後端に取り付けられ、走行時上記前
   輪とともに走行面に当接し転動するストッパー輪と、 上記揺動支持部材の先端に取り付けられ、走行時は走行
   面に当接しない補助輪とを具備し、段差乗越え機能を有
   することを特徴とする車椅子用三輪キャスター。