JP4147569B2 - 車椅子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、肢体が不自由な身体障害者や老人等の移動手段として用いられる車椅子に関し、特に、段差の乗り上りを補助するための技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の車椅子は、左右のフレーム間に着座部と背もたれ部が設けられ、左右のフレーム間の外側に左右の主車輪が設けられると共に、この主車輪の前方に左右の前輪キャスタが設けられているのが一般的である。
従って、使用に際しては、着座部に腰掛けた状態で左右の主車輪を回転させて移動させることになる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
近年、身体障害者等への配慮からバリヤフリーが提唱されているが、屋外の道路や屋内の通路において、段差の解消については徐々に改善がみられるものの、十分に整備されていると言えるものではない。
このような段差を車椅子で乗り上がる場合、車体を後傾して前輪キャスタを浮かせて段差の上に乗り上げる必要がある。この際、介助者がいれば車体を後傾させるのにそれほどの問題はないが、介助者がいない場合には、使用者本人の体重移動によって車体を後傾しなければならない。
このようなことを使用者本人が行うと、非常に危険であるし、又、車椅子を体験試乗すれば判るが、低い段差であっても、これに乗り上げるには大変な労力が必要であり、使用者本人が一人で段差を乗り上がるには到底無理がある。
【0004】
本発明では、このような段差を乗り上がる際に、体重移動によって車体を後傾させるといった危険な行動を伴うことなく、補助車輪を利用して前輪キャスタを浮かせることで、使用者本人が一人でも楽に段差を乗り上ることができるようにした車椅子を提供することを課題としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本発明(請求項1)の車椅子は、
左右のフレーム間に着座部と背もたれ部が設けられ、前記左右のフレーム間の外側に左右の主車輪が設けられると共に、この主車輪の前方に左右の前輪キャスタが設けられ、
先端に補助車輪が取り付けられたステイの基端部が前記左右の各フレームの前方下端に軸着され、
このステイはハンドル操作により軸着部を中心とした後向き位置と、ほぼ下向垂直位置との間を回動すると共に、常時はバネにより後向き位置に付勢され、
前記ステイの後向き位置では補助車輪が、主車輪と前輪キャスタの間において主車輪と前輪キャスタとの接地レベルと同一又は接地レベルよりも上方に位置し、
前記ステイの下向垂直位置では補助車輪が、主車輪と前輪キャスタの間において主車輪と前輪キャスタとの接地レベルよりも下方に位置し、
前記補助車輪が接地レベルよりも下方に位置したステイの下向垂直位置を係脱するストッパが設けられている構成にした。
【0006】
この車椅子を使用するに際しては、通常と同様に、着座部に腰掛けた状態で左右の主車輪を回転させて移動させることになる。この場合、ステイはバネにより後向き位置に付勢され、この後向き位置では、補助車輪が接地レベルと同一又は接地レベルよりも上方に位置しているため、補助車輪が車椅子の移動の障害になることはない。
【0007】
そして、段差に乗り上げる場合には、前輪キャスタを段差の手前部分に位置させ、この状態でハンドル操作により、ステイを後向き位置から下向垂直位置に回動させ、ストッパによりこの下向垂直位置に固定させる。
このステイの下向垂直位置では、補助車輪が接地レベルよりも下方に位置しているため、主車輪の接地部分を支点として車体の前方が浮き上がり(車体が後傾する)、これに伴って前輪キャスタが浮き上がる。
このようにして補助車輪と主車輪とで車体を支え、この状態のまま車体を前進させて、浮き上がった状態の前輪キャスタを段差の上に移動させる。
次に、ストッパによるステイの固定を解除させて、車体を前進させれば、ステイはバネの付勢によって下向垂直位置から後向き位置に戻り、前輪キャスタが段差の上で接地するため、後は、主車輪を回転させて段差に乗り上げていけば、車体全体が段差に乗り上がる。
このようにして補助車輪を利用することにより、使用者本人が一人でも楽に段差を乗り上ることができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面により詳述する。図1は本発明の実施の第1形態である車椅子の側面図、図2はその正面図、図3は要部を示す斜視図、図4は使用状態の側面図である。
【0009】
図において、1,1は左右のフレームで、その後部に、手回し輪21,21を備えた主車輪2,2がそれぞれに軸着されると共に、その前部に、前輪キャスタ3,3がそれぞれに取り付けられている。尚、11は足載せ板、12は手押し用グリップ、13は肘掛けである。又、図示していないが、主車輪2の回転を固定するブレーキ等が設けられている。
【0010】
又、左右のフレーム1,1間には、着座部4と背もたれ部5が設けられている。
着座部4は、フレーム1とは別体の左右のバー部材41,41を備え、この左右のバー部材41,41が、下端を左右のフレーム1,1に軸着したX状フレーム42の上端に取り付けられると共に、この左右のバー部材41,41間に着座シート43が折りたたみ可能に張設されたものになっている。
又、背もたれ部5は、前記着座部4の後側において、左右のフレーム1,1間に背受けシート51,51が上下2段に張設されたものになっている。
従って、前記X状フレーム42を中央交差部の軸支部44を中心にして上下方向に扁平に変形させれば(図2に示す状態)、左右のフレーム1,1の間隔が広がると共に、着座シート43及び背受けシート51が展開して車椅子としての使用が可能になる。
一方、前記X状フレーム42を軸支部44を中心にして左右方向に扁平に変形させれば、左右のフレーム1,1の間隔が狭まると共に、着座シート43及び背受けシート51が折り畳まれて車椅子を幅方向に折り畳むことができる。
【0011】
そして、前記左右のフレーム1,1には、先端に補助車輪6が取り付けられたステイ60の基端部がそれぞれに独立して軸着されている。このステイ60の軸着部61にはハンドル62の下端が取り付けられ、このハンドル62の前後回動操作によりステイ60が軸着部61を中心として後向き位置(図1実線位置)と、ほぼ下向垂直位置(図1仮想線位置)との間を回動すると共に、常時はバネ63により後向き位置に付勢されている。
又、前記補助車輪6は、ステイ60の後向き位置では、主車輪2と前輪キャスタ3の間において主車輪2と前輪キャスタ3との接地レベルLと同一又は接地レベルLよりも上方に位置し、ステイ60の下向垂直位置では、主車輪2と前輪キャスタ3の間において接地レベルLよりも下方に位置するように設定されている。
又、左右のフレーム1,1には、ハンドル62の回動をガイドするガイドフレーム64が取り付けられ、このガイドフレーム64には、補助車輪6が接地レベルLよりも下方に位置したステイ60の下向垂直位置を係脱するストッパ65(図3に示す)が設けられている。
【0012】
次に、この車椅子を用いて段差を乗り上げる際の使用方法を図4により説明する。
この車椅子を使用するに際しては、通常と同様に、着座部4に腰掛けた状態で左右の主車輪2,2を手回し輪21により回転させて移動させることになる。
この場合、ステイ60はバネ63により後向き位置に付勢され、この後向き位置では、補助車輪6が接地レベルLと同一又は接地レベルLよりも上方に位置しているため、補助車輪6が車椅子の移動の障害になることはない。
【0013】
そして、段差Tに乗り上げる場合には、前輪キャスタ3を段差Tの手前部分に位置するまで車椅子を移動させ、この状態でハンドル62をガイドフレーム64に沿って手前側に回動させて、ステイ60を後向き位置から下向垂直位置に回動させ、この位置でハンドル62をストッパ65に係止してステイ60を下向垂直位置に固定させる。
このステイ60の下向垂直位置では、補助車輪6が接地レベルLよりも下方に位置しているため、図4に示すように、主車輪2の接地部分を支点として車体の前方が浮き上がり(車体が後傾する)、これに伴って前輪キャスタ3が浮き上がる。
このようにして補助車輪6と主車輪2とで車体を支え、この状態のまま車体を前進させて、浮き上がった状態の前輪キャスタ3を段差Tの上に移動させる。
次に、ハンドル62をストッパ65から解除してステイ60の固定を解除させ、車体を前進させれば、ステイ60はバネ63の付勢によって下向垂直位置から後向き位置に戻り、前輪キャスタ3が段差Tの上で接地するため、後は、主車輪2を回転させて段差Tに乗り上げていけば、車体全体を段差Tに乗り上げることができる。
このようにして補助車輪6を利用することにより、使用者本人が一人でも楽に段差Tを乗り上ることができる。
【0014】
又、この実施の形態では、先端に補助車輪6が取り付けられたステイ60が左右のフレーム1,1にそれぞれに独立して軸着されているため、例えば、一方のハンドル62を操作して一方の補助車輪6を段差Tに乗り上げたのち、他方のハンドル62を操作して他方の補助車輪6を段差Tに乗り上げるというように、左右別々に段差Tに乗り上げるようにしてもよいし、両方のハンドル62,62を同時に操作して両方の補助車輪6,6を同時に段差T上に乗り上げるようにしてもよい。
尚、この実施の第1形態では、車椅子が折り畳み可能に形成されているが、折り畳み式でない車椅子についても、先端に補助車輪6が取り付けられたステイ60を左右のフレーム1,1にそれぞれに独立して軸着するようにしてもよい。
【0015】
次に、図5は本発明の実施の第2形態である車椅子の要部を示す斜視図である。
この実施の第2形態は、車椅子が折り畳み可能に形成されている場合で、この車椅子の左右方向中央部に1個の補助車輪6が設けられている例である。
この場合、先端に補助車輪6が取り付けられたステイ60の基端が中央支持板70に取り付けられ、左右のフレーム1,1にそれぞれ側部支持板71,71が軸着され、この両側部支持板71,71と中央支持板70とが屈折リンク72,72により連結されると共に、一方の側部支持板71の軸着部73にハンドル62が取り付けられた構造になっている。
【0016】
従って、車椅子を幅方向に折り畳むと、屈折リンク72,72が屈折し、逆に車椅子を幅方向に広げると、屈折リンク72,72が伸長するため、車椅子の折り畳みに対応することができる。
【0017】
尚、段差Tの乗り上げに際し、ハンドル62の操作により屈折リンク72を介してステイ60を後向き位置と、ほぼ下向垂直位置との間で回動させること、及びその他の構成は実施の第1形態と同様である。
【0018】
次に、図6は本発明の実施の第3形態である車椅子の要部を示す斜視図である。
この実施の第3形態は、車椅子が折り畳み式でない場合で、この車椅子の左右方向中央部に1個の補助車輪6が設けられている例である。
この場合、左右のフレーム1,1間に支持軸80が横架状態で軸着され、この支持軸80の中央部に、先端に補助車輪6が取り付けられたステイ60の基端が取り付けられ、支持軸80の一端にハンドル62が取り付けられた構造になっている。
【0019】
尚、段差Tの乗り上げに際し、ハンドル62の操作により支持軸80を介してステイ60を後向き位置と、ほぼ下向垂直位置との間で回動させること、及び車椅子が折り畳み式でない点を除いて、その他の構成は実施の第1形態と同様である。
【0020】
次に、図7は本発明の実施の第4形態である車椅子の要部を示す斜視図である。
この実施の第4形態は、支持軸90、ステイ60、補助車輪6、ハンドル62、バネ63を1組のユニットとして、これを既存の車椅子(新車でも可)に取り付けるようにしたものである。
【0021】
この場合、支持軸90は、外管90aと、この外管90a内に摺動可能に挿入された内棒90bによって伸縮可能に形成されている。
前記外管90aは、一方のフレーム1に着脱可能に取り付けるようにした二つ割り取付具91の軸受部91aに外端部分が軸支され、その外端にハンドル62が取り付けられると共に、内端部にステイ60を介して補助車輪6が取り付けられている。この場合、ハンドル62及びステイ60を、外管90aに対して当初より固定しておいてもよいし、着脱可能に取り付けるようにしてもよい。
尚、前記二つ割り取付具91には、ハンドル62に当接してステイ60を下向垂直位置で係止するストッパ64aが設けられている。
前記内棒90bは、他方のフレーム1に着脱可能に取り付けるようにした二つ割り取付具92の軸受部92aに外端部分が固定され(軸支してもよい)、内端側が前記外管90a内に摺動可能に挿入されている。
又、前記バネ63は、一方のフレーム1に着脱可能に取り付けるようにした二つ割り取付具93と、外管90aに突設した腕部材69の間に取り付けられる。
【0022】
従って、この実施の第4形態では、支持軸90、ステイ60、補助車輪6、ハンドル62、バネ63を1組のユニットとしているため、これを車椅子に着脱することにより、必要に応じて補助車輪6を利用した段差Tの乗り上げができる。
又、支持軸90が、外管90aと内棒90bとの2重管構造によって伸縮可能に形成されているため、車椅子の折り畳みに対応できるし、又、左右のフレーム1,1の間隔が異なる異機種の車椅子にも適用することができる。
【0023】
以上、本発明の実施の形態を図面により説明したが、具体的な構成はこれに限定されることはない。
例えば、車椅子の駆動について、実施の形態では、主車輪に手回し輪を設けた手動式を示したが、主車輪を電動モータによって回転させるようにした電動車椅子に本発明の構成を適用できることは勿論である。
又、ステイ、補助車輪、ハンドル等をユニットとして、これを既存の車椅子に取り付けるようにすることも可能である。
【0024】
【発明の効果】
以上説明してきたように、本発明の車椅子にあっては、上記のように構成したので、補助車輪を利用して前輪キャスタを浮かせることができ、段差を乗り上がる際に、体重移動によって車体を後傾させるといった危険な行動を伴うことなく、使用者本人が一人でも楽に段差を乗り上ることができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の第1形態である車椅子の側面図である。
【図2】その正面図である。
【図3】要部を示す斜視図である。
【図4】使用状態の側面図である。
【図5】本発明の実施の第2形態である車椅子の要部を示す斜視図である。
【図6】本発明の実施の第3形態である車椅子の要部を示す斜視図である。
【図7】本発明の実施の第4形態である車椅子の要部を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 フレーム
11 足載せ板
12 手押し用グリップ
13 肘掛け
2 主車輪
21 手回し輪
3 前輪キャスタ
4 着座部
41 バー部材
42 X状フレーム
43 着座シート
44 軸支部
5 背もたれ部
51 背受けシート
6 補助車輪
60 ステイ
61 軸着部
62 ハンドル
63 バネ
64 ガイドフレーム
65 ストッパ
70 中央支持板
71 側部支持板
72 屈折リンク
73 軸着部
80 支持軸
L 接地レベル
T 段差
Claims (1)
- 左右のフレーム間に着座部と背もたれ部が設けられ、前記左右のフレーム間の外側に左右の主車輪が設けられると共に、この主車輪の前方に左右の前輪キャスタが設けられ、
先端に補助車輪が取り付けられたステイの基端部が前記左右の各フレームの前方下端に軸着され、
このステイはハンドル操作により軸着部を中心とした後向き位置と、ほぼ下向垂直位置との間を回動すると共に、常時はバネにより後向き位置に付勢され、
前記ステイの後向き位置では補助車輪が、主車輪と前輪キャスタの間において主車輪と前輪キャスタとの接地レベルと同一又は接地レベルよりも上方に位置し、
前記ステイの下向垂直位置では補助車輪が、主車輪と前輪キャスタの間において主車輪と前輪キャスタとの接地レベルよりも下方に位置し、
前記補助車輪が接地レベルよりも下方に位置したステイの下向垂直位置を係脱するストッパが設けられていることを特徴とした車椅子。
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