JP3897486B2 - 身体障害者および高齢者用三輪式電動カート - Google Patents
身体障害者および高齢者用三輪式電動カート Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、身体障害者および高齢者用三輪式電動カートに関する。
【0002】
【従来の技術】
身体障害者や高齢者が日常生活を円滑に送るための移動手段として電動機を搭載した身体障害者用車椅子が多用されるようになってきた。
身体障害者および高齢者用電動カート(以下、電動カート」という)を用いることにより坂道や道路の通行が容易となり、買い物なども人手を借りずにできるようになった。しかしながら、現存の建物や道路の構造が車いすに適合しているものが非常に少ない。
一日も早く、全ての道路や建物が一般の車椅子でも快適に移動できるように改良されることが望まれる。
【0003】
高齢者社会を目前にして体力の低下した身体障害者や高齢者の移動手段である電動カートの需要が益々増加してくる。その電動カートが身体障害者や高齢者用福祉機器として役立つためにはつぎの点を満足する必要がある。
1)身体機能が極度に低下した人でも十分使いこなせるものであること。
2)全ての建物や道路が電動カートの走行に適する構造であること。
【0004】
三輪式電動カートを運転するのは、一般に身体障害者や高齢者に限定されるので、健常者には何でもないようなささやかなことでも、大事故につながる危険性を持っている。それでも日本も少子化高齢化社会を迎えているので、今後高齢者といえども、できるだけ身の回りのことは周囲の手を借りずに自分でしなければならない。身体障害者も同様である。
従来の三輪式電動カートは、ハンドルバー操作や、路面の凹凸および傾斜などによって車体が傾くと、アイポイントも同時に変換する。その結果、運転者の視野角も以前と異なってくるので危険性が増大する。また、急激なハンドル操作を行った場合、運転者の上半身に生じる遠心力方向と電動カートの進行方向とのねじれからくる身体への圧迫が、機能が低下した者にとっては負担となって不快感を伴う。
【0005】
図6は、従来の三輪式電動カートの一例を示す正面図である。
この三輪式電動カートは身体機能が低下した身体障害者や高齢者が手元で走行に関わる全操作を安全にできるように装置が一か所にまとめられている。
しかしながら、以下の点で問題が存在する。
1)座席31は水平方向に左右に回転できようになっており、乗降する場合には座席の回転方向を変更するのであるが、三輪電動カートが傾いた場合には不便であり危険である。
2)ハンドルバー32を操作したとき三輪式電動カートの進行方向とアイポイントの方向との間に角度差が生じる。すなわち、ハンドルバー操作によってアイポイントが変化したと同時に視野角も以前と異なって危険性が増大する。
【0006】
3)三輪式電動カートは人間の歩行補助具としての役目をするので、歩行速度に類似した低速で走行しなければならない。ちなみに最高速度は6km/時である。
また、従来の三輪式電動カートは、バネによる緩衝装置が装着されていないので、座席とタイヤのクッション性により軽減された以外の全荷重が運転している身体障害者や高齢者に付加され、かなりの負担となる。
さらに緩衝装置が取り付けられていないことで、路面の凹凸,傾斜によって車体が傾くと、アイポイントも同時に変化するので、運転者は周囲の視覚情報を正確に得ることができない。
4)急激なハンドルバー操作を行った場合、緩衝装置が装着されていないので、車体のローリングは生じないが、運転者の上半身に生じる遠心力方向と三輪式電動カートの進行方向とのねじれからくる身体への圧迫が機能が低下した者にとってはかなり負担となる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、身体障害者や高齢者が簡単に乗降できて簡便に操作ができるとともに車両の旋回時において、従来、運転者が感じていた不快感を除去することにより快適性を保持し、アイポイントを不変にすることにより視野角も不変となり、事故の防止に役立つ三輪式電動カートを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために本発明による三輪式電動カートは、三輪式電動カートにおいて、ハンドルおよび前輪を有し、座席を回転軸で支持する車両前部と、電動駆動する後輪を有する車両後部とからなり、前記車両前部の後面に一対のガイドローラを設けるとともに前記車両後部の前面に、前輪位置を中心に円弧を描き、かつ、前記座席に運転者の略頭部位置を中心に円弧を描くように前記ガイドローラを案内するガイドレールを設け、前記ガイドレールにガイドローラを収容して前記車両前部と車両後部とを連結し、接地傾斜面上ではガイドレール中を座席の回転軸が鉛直になって座席面が水平になる位置まで前記ガイドローラを移動させ、左右旋回時にはガイドレール中を遠心力方向に前記ガイドローラを移動させて運転者にかかる負荷を緩和するとともに運転者の視点をほぼ一定位置に保持するように構成されている。
また、本発明は上記構成において、前記車両前部の後面に、1以上の緩衝ローラを設け、前記車両前部と車両後部の連結状態において、前記車両後部の前面に前記緩衝ローラが圧接し、ガイドローラ移動時、前記緩衝ローラは前記車両後部の前面を転がるように構成されている。
【0009】
上記構成によれば、車体が水平面に対し傾斜しても運転座席の回転軸が常に水平面に対し垂直状態を保持して乗降できる。旋回時、座席位置が僅かに遠心力方向に移動するので、身体にかかる負荷が少なくなり、アイポイントの動きを不変にできる。路面の凹凸や傾斜が変化してもアイポイントが不変となるので視野角も、また不変となる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳しく説明する。
図1は本発明による三輪式電動カートの動作原理を説明するための概略図である。
前輪7の位置と、運転者1の頭部2の位置を中心に円弧を描くような形状にガイドレール5が構成される。ガイドレール5は後輪を含む車両後部(図2参照)に取り付けられている。
【0011】
このガイドレール5中を、ハンドル3および前輪7ならびに座席を含む車両前部(図2参照)に設けられているガイドロ一ラが左右に滑動するようになっている。
このため、接地面が傾斜した場合、運転者の荷重によりガイドローラが移動して座席が水平に保たれ、旋回時に左右に座席が振れるため、頭部2の位置が一定に保たれる。
【0012】
図2は、本発明による三輪式電動カートの実施の形態を示す図で、(a) は平面図,(b)は正面図である。
車両前部10は、ハンドル19,前輪12,足置部26,座席20および背当て15より構成されている。車両前部10にはバッテリー21が内蔵されている。座席20は回転軸20aによって車両前部10の上面に支持されており、乗降を容易にするため回転軸20aを中心に左右にそれぞれ90度ずつ回転可能になっている。
車両前部10の後面からは軸17a,18aでそれぞれ支持されたガイドローラ17,18が突出している。
【0013】
車両後部11は、後輪13,14および電動駆動部(図示しない)より構成されている。車両後部11の前面には、ガイドレール16が設けられている。このガイドレール16中をガイドローラ17,18が左右に滑動可能に収容されている。
ガイドレール16およびガイドローラ17,18は走行時に加わる連結機構への圧縮荷重と引っ張荷重を受けるので、それに耐えられるだけの強度にする必要がある。そして、連結機構のガイドローラ17,18とガイドレール16の問に生ずる圧縮および引っ張りの荷重を連結部の中心にくるように調整し、不必要な荷重変動を抑えている。
また、この電動カートの駆動軸のホーシングの取付けに厚手のゴム板を用い、タイヤのサイズをワイド化し、設定空気圧を低くするなどして、路面の凹凸などによる急激な衝撃荷重が運転者に直接伝達しないように吸収させている。
【0014】
図3は、右旋回時および左旋回時の車両前部と車両後部の関係を説明するための平面図である。
この図は水平方向の動きに着目したものである。
右旋回時には、遠心力によりガイドレール16中をガイドローラ17,18が左方向に移動し、遠心力を緩和するとともに頭部の移動を抑える。
左旋回時には、同様にガイドローラ17,18が右方向に移動し、遠心力を緩和するとともに頭部の移動を抑える。なお、垂直方向についても左右旋回時、同様に移動し遠心力を緩和するとともに頭部の移動を抑える。
【0015】
図4,図5は、車両前部および後部の連結機構の車両前部側のローラ側機構および車両後部側のガイドレール機構を説明するための図である。
図4において、車両前部10の後面壁は、ガイドレールの曲面と略同程度の曲面を有し、後面壁の左右部分に軸17a,18aが植設されている。この軸17a,18aの先端にガイドローラ17,18がその側面が車両前部の後面壁10aに対し平行ではなく、すこし傾斜を持った状態で取り付けられている。また、ガイドローラ17,18の間に軸22a,23a,24aが植設され、その先端に緩衝ローラ22,23,24および25が取り付けられている。緩衝ローラ22,23,24および25の回転面(円周面)は、車両前部の後面壁に対し平行である。
【0016】
図5において、車両後部11の前面に設けられているガイドレール16は、断面がL形状の下部ガイドレール16aおよび上部ガイドレール16bにより構成されている。ガイドレール16は垂直面に対し運転者の頭部を中心として円弧を描く形状であるとともに水平面に対しても前輪を中心に円弧を描く形状となっている。
下部ガイドレール16a,上部ガイドレール16bの間に上記ガイドローラ17,18が収容され、各ガイドローラ17,18は、下部ガイドレール上面16cおよび上部ガイドレール底面16dに接して滑動する。ガイドローラ17,18の側面は図2(b)に示すようにガイドローラの中心から前輪12の接地点まで延長した線に対し直角になっている。したがってガイドローラ17,18は、鉛直方向に対し少し傾いた状態でガイドレール16中を滑動する。
また、緩衝ローラ22,23,24および25は、車両後部11の前面壁11aに接して回転する。
【0017】
電動カートが旋回すると、旋回方向とは反対方向にガイドローラ17,18が遠心力によりガイドレール16中を滑動し、同時に車両後部11の前面壁11aに当接された緩衝ローラ22,23,24および25も、車両前部および車両後部との間の荷重の圧力を吸収しながら、同じ方向に回転移動する。
このため、運転者の視点(頭部)は常にガイドレール上の弧を描く移動半径の中心にあるので、車両が旋回しても視野は変化しない。また、車体が水平面に対し傾斜した位置で停車した場合でも、運転者の荷重によりガイドローラ17,18はガイドレール中を傾いた方向に移動し、垂直下方に荷重がかかる状態で静止し、座席が水平状態で乗降が可能となる。
さらに車両が前部と後部となっており、それぞれ一定の範囲内で後部に対し前部は自由に動く機構であるので、連結機構を挟んで車両後部は滑らかに車両前部に追従することができる。
【0018】
【発明の効果】
以上、説明したように本発明は、ハンドルおよび前輪を有し、座席を回転軸で支持する車両前部と、電動駆動する後輪を有する車両後部とからなり、車両前部の後面に一対のガイドローラを設けるとともに車両後部の前面に、前輪位置を中心に円弧を描き、かつ、座席に運転者の略頭部位置を中心に円弧を描くように前記ガイドローラを案内するガイドレールを設け、ガイドレールにガイドローラを収容して車両前部と車両後部とを連結し、接地傾斜面上ではガイドレール中を座席の回転軸が鉛直になって座席面が水平になる位置までガイドローラを移動させ、左右旋回時にはガイドレール中を遠心力方向に前記ガイドローラを移動させて運転者にかかる負荷を緩和するとともに運転者の視点をほぼ一定位置に保持するように構成したものである。
したがって、従来の構造では、座席に接しない運転者の上半身に左右の振れが生じていたが、本発明によれば、座席と上半身の位置関係がほぼ一定に保たれるようになり、身体障害者や高齢者が簡単に乗降して、簡便に操作でき快適性を保持できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による三輪式電動カートの動作原理を説明するための概略図である。
【図2】本発明による三輪式電動カートの実施の形態を示す図で、(a)は平面図,(b)は正面図である。
【図3】右旋回時および左旋回時の車両前部と車両後部の関係を説明するための図である。
【図4】車両前部および後部との連結機構の車両前部側のローラ側機構を説明するための図である。
【図5】車両前部および後部との連結機構の車両後部側のガイドレール機構を説明するための図である。
【図6】従来の三輪式電動カートの一例を示す正面図である。
【符号の説明】
1…運転者
2…頭部
3…ハンドル
4…後輪
5,16…ガイドレール
7…前輪
10…車両前部
11…車両後部
12…前輪
13,14…後輪
15…背当て
17,18…ガイドローラ
19…ハンドル
20…座席
21…バッテリー
22〜25…緩衝ローラ
Claims (2)
- 三輪式電動カートにおいて、
ハンドルおよび前輪を有し、座席を回転軸で支持する車両前部と、
電動駆動する後輪を有する車両後部とからなり、
前記車両前部の後面に一対のガイドローラを設けるとともに前記車両後部の前面に、前輪位置を中心に円弧を描き、かつ、前記座席に運転者の略頭部位置を中心に円弧を描くように前記ガイドローラを案内するガイドレールを設け、
前記ガイドレールにガイドローラを収容して前記車両前部と車両後部とを連結し、
接地傾斜面上ではガイドレール中を座席の回転軸が鉛直になって座席面が水平になる位置まで前記ガイドローラを移動させ、
左右旋回時にはガイドレール中を遠心力方向に前記ガイドローラを移動させて運転者にかかる負荷を緩和するとともに運転者の視点をほぼ一定位置に保持するように構成したことを特徴とする身体障害者および高齢者用三輪式電動カート。 - 前記車両前部の後面に、1以上の緩衝ローラを設け、
前記車両前部と車両後部の連結状態において、前記車両後部の前面に前記緩衝ローラが圧接し、ガイドローラ移動時、前記緩衝ローラは前記車両後部の前面を転がることを特徴とする請求項1記載の身体障害者および高齢者用三輪式電動カート。
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