JP3029106B1 - 塗付装置用超硬合金製塗付工具 - Google Patents

塗付装置用超硬合金製塗付工具

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Abstract

【要約】 【課題】従来の鋼製または超硬合金製塗布具は塗布液中
の脂肪酸、極圧添加剤、防錆剤などによる腐食摩耗と、
磁性粉末、硬質セラミック粉末などによるアブレーショ
ン摩耗、摩擦摩耗により損傷し、短寿命であった。 【解決手段】塗付工具の少なくとも先端部が超硬合金か
らなり、該超硬合金はコバルトを主成分とする結合相を
2〜16重量%と、残部の炭化タングステンを主成分と
する硬質相を含有し、硬さがロックウエル硬度のAスケ
ールで90.0(HRA)〜93.0(HRA)で、硬
さをX(HRA)と表し、超硬合金の保磁力をY(エル
ステッド)と表したときに、該保磁力が50Xー432
0>Y≧35Xー3035の範囲を満足する塗布装置用
超合金製塗付工具。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、プラスチック,
紙,金属箔,金属板,ガラスなどの支持体に代表される
被塗付物体の表面に、無機物質と有機物質との混在した
液状物質でなる塗付液を塗付するための塗付装置に設置
されて、塗付液が排出されるダイコーター,コーターダ
イ,ドクターエッジと呼称されている塗付工具に代表さ
れる超硬合金製塗付工具に関し、特に紙またはプラスチ
ックなどのフイルム,デイスク,シート,テープ,ドラ
ム状の被塗付物体の表面に、フエライトなどの磁性粒子
を含む溶液,ハロゲン化銀などの写真感光材の粒子を含
む溶液,コピー紙などの紙の表面に被覆される溶液に代
表される塗付液を塗付し、塗付膜を形成するための装置
に具備され、塗付膜が塗付されるような構造に形成され
てなる塗付装置用超硬合金製塗付工具に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】従来から被塗付物体の表面に感熱性膜、
導電性膜、低反射導電膜、紫外線防止膜、電磁波防止
膜、保護膜または磁性膜に代表される各種の被膜を被覆
することが行われている。これらの中でも、ビデオ用,
オーディオ用のフイルム,デイスク,シート,テープ,
ドラムに代表される磁気記録媒体は、プラスチックなど
の被塗付物体の表面に磁性粒子を含む塗付膜を塗付する
ために各種方式でなる塗付装置が用いられている。これ
らの塗付装置に設置されて、塗付膜となるための塗付液
が流出されるような構造に形成された塗付工具がある。
【0003】この塗付工具のうち、主として塗付先端部
により、塗付液の流出量を調整および制御しながら、連
続的に走行する被塗付物体に塗付液を均一な厚さで塗付
させる塗付工具がある。この塗付工具の塗付先端部は、
形状精度,面精度,刃こぼれのないシャープエッジが要
求されると同時に、塗付液中の無機物質でなる硬質分散
粒子による摩耗と樹脂,溶媒などの各種添加剤による腐
食が著しいため、耐摩耗性,化学的腐食(コロージョ
ン)や電気的腐食(エロージョン)に対する耐腐食性,
潤滑性の向上が望まれている。
【0004】そこで近年では、塗付先端部に超硬合金を
使用すること、またはそれに関連した提案が行われてい
る。しかしながら、従来の超硬合金を塗付先端部に採用
した場合においても、開発当初に対して高速塗付化への
移行と、樹脂,溶媒などの各種添加剤および硬質分散粒
子の変遷がなされていること、さらには被膜を積層に被
覆するという被膜構成の変遷に伴って、複数のスリット
を有する構成、または一工程で複数の塗付工具が使用さ
れる構成になってきていることから、耐摩耗性,耐腐食
性とも満足できなく、短寿命であるという問題がある。
この問題を改善しようとして提案されている代表的なも
のに、特開昭57ー84771号公報,特開平2ー26
5673号公報,特開平2ー265674号公報および
特開平6ー114316号公報がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】塗付工具に超硬合金を
適用した先行技術のうち、特開昭57ー84771号公
報には、ロックウェルAスケールで88以上の硬さを有
する超硬合金をドクターエッジ(塗付先端部に相当する
部分)でなる塗付工具を具備した塗付装置が開示されて
いる。また、特開平2ー265674号公報には、Co
含有量が15重量%以下で、硬さが83HRA〜89H
RAである超硬合金をドクターエッジとする塗付工具を
具備した塗付装置が開示されている。これら両公報に開
示の超硬合金を塗付先端部に使用すると、従来の鋼製塗
付先端部に対比して耐摩耗性および耐腐食性が改善され
るものの、塗付速度,塗付液の変遷による影響と、特に
塗付液中に磁性粉末、硬質セラミックス粉末、ダイヤモ
ンドライクカーボンなどの高硬質物質を含有している場
合には、塗付先端部から塗付液が流出されるときに、塗
付液中の高硬質物質によるアブレーション摩耗と脂肪酸
や硫黄含有有機物などによる腐食摩耗とにより、塗付先
端部に微小損傷が生じ、その結果被塗付物体に被覆され
る被膜表面の平滑度が低下し、実用不可能になるという
問題がある。
【0006】本発明の先行技術として挙げた特開平2ー
265673号公報には、平均粒径1.5μm以下のW
CとCoからなる超硬合金、またはこれらに必要に応じ
て平均粒径5μm以下のTi,Ta,Nbの炭化物が添
加された超硬合金製のドクターエッジを具備した塗付装
置について開示されている。同公報に開示の超硬合金
は、面精度,刃立性などの点で良好なものの、耐腐食性
が満足されず、かつ上述と同様に被塗付物体や塗付液と
の滑り性(潤滑性)が劣り、短寿命になるという問題が
ある。さらに、特開平6ー114316号公報には、C
oに0.5〜1.0%のCrを含有させた結合相でなる
超硬合金のドクターエッジを具備した塗付装置が開示さ
れている。同公報に開示の耐腐食性の超硬合金は、Co
にCrを添加した結合相により耐腐食性が改善されてい
るものの、腐食と摩擦摩耗およびアブレーション摩耗と
の相乗作用から短寿命になること、および安定した寿命
が得られないという問題がある。
【0007】本発明は、上述のような問題点を解決した
もので、具体的には、炭化タングステンの粒度分布を均
一にして、炭化タングステンと結合相とを均一分散およ
び均一混在させることにより、結合相分布のむらをなく
し、強度、硬さ、靱性、耐摩耗性、潤滑性を高め、かつ
耐衝撃性、耐微小欠損性を向上させるとともに、さらに
必要に応じて結合相中にNi,Cr,V,Cr32,V
Cの中の少なくとも1種を固溶させることにより、塗付
液による化学的腐食や電気的腐食に対する耐腐食性,耐
摩耗性および潤滑性を大幅に向上させて、被塗付物体上
に形成される被膜表面の面精度を高め、被膜表面に生じ
るスジ状の欠陥を極力抑制し、長寿命を達成させた塗付
装置用超硬合金製塗付工具の提供を目的とするものであ
る。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、塗付装置
に具備される超硬合金製塗付工具について、寿命延長を
検討していたところ、炭化タングステンを主成分とする
硬質相と結合相とでなる超硬合金における硬質相の粒度
分布を均一にすること、特に耐微小欠損性を高めるため
に炭化タングステンの粒径を調整し、かつその粒度分布
を均一とし、硬質相と結合相とを均一分散および均一混
在させると、硬質相と結合相との分布むらがなくなり、
塗付液中の樹脂や有機溶液などに対する耐腐食性が向上
すること、硬質相の粒度分布、特に炭化タングステンの
粒径および粒度分布は、ほぼ超硬合金の保磁力に影響さ
れること、炭化タングステンの粒度分布と粒径は、結合
相量などを考慮した場合に超硬合金の保磁力と硬さの関
係として換算されること、超硬合金の保磁力と硬さとの
値を一定に保つと、強度、硬さ、靱性、耐摩耗性、潤滑
性を高めることができて、その目的が達成されるという
知見を得て、本発明を完成するに至ったものである。
【0009】すなわち、本発明の塗付装置用超硬合金製
塗付工具は、塗付装置に具備されて被塗付物体の表面に
塗付膜が塗付されるように設計された塗付工具であっ
て、該塗付工具は、該塗付膜を塗付させるための塗付先
端部を備えており、該塗付工具の少なくとも該塗付先端
部が超硬合金からなり、該超硬合金は、コバルトを主成
分とする結合相を2〜16重量%と、残部が炭化タング
ステンを主成分とする硬質相と不可避不純物からなり、
該超硬合金は、硬さがロックウエル硬度のAスケールで
90.0(HRA)以上〜93.0(HRA)以下から
なり、該硬さをX(単位:HRA)と表し、該超硬合金
の保磁力をY(単位:エルステッド)と表したときに、
該保磁力(Y)が50Xー4320>Y≧35Xー30
35の式を満足する範囲にあるものである。
【0010】
【発明の実施の態様】本発明の塗付工具が設置される塗
付装置は、ブラウン管パネルなどのガラス表面を塗付す
るための塗付装置、オーデイオ装置、ビデオ装置、コン
ピュータ装置などに付随する磁気記録に用いられるフイ
ルム,デイスク,シート,テープ,ドラムなどの表面に
磁性膜が被覆されてなる磁気記録媒体を作製するための
塗付装置,またはファクス用紙,コピー用紙、写真フイ
ルムなどの表面を塗付するための塗付装置などであり、
無機物質と有機物質とを含有する塗付液が塗付される装
置ならば特に制限されるものではない。
【0011】この塗付装置に具備される本発明の塗付工
具は、少なくとも塗付先端部を備えており、この塗付先
端部の形状としては塗付液が流出される状態に形成され
ておればよく、具体的には塗付液の流出する側の端面に
孔状の流出口が少なくとも1個形成されて、噴霧状に塗
付液を流出させることが可能になっている場合、または
同端面にスリット状の流出口が形成されて、線状〜面状
に塗付液を流出させることが可能になっている場合を代
表例として挙げることができる。このうち、塗付先端部
は、塗付液の流出する側の端面にスリット状の塗付液流
出口が形成されていると、このスリット状の塗付液流出
口から流出された塗付液が一定速度で移動するフイルム
状の被塗付物体の表面に膜厚さや膜面積の調整を容易に
し、磁気記録媒体などのテープ状の被塗付物体の作製を
容易にすることから好ましいことである。磁気記録媒体
を作製するための塗付装置に具備される塗付工具の場合
には、このスリット状の塗付液流出口は、目的とする被
膜厚さにより調整する必要があり、特に、10μm〜1m
mのスリット幅であることが好ましいことである。
【0012】この超硬合金は、実質的には結合相と硬質
相とで構成されており、このうち結合相は、具体的に
は、例えばCo,Niの金属,Co−Ni,Co−C
r,Co−CrーC,Co−V,Co−VーC,Co−
Cr−V,Co−W,Ni−Cr,NiーCr−V,N
i−W,Co−Ni−Cr,Co−NiーW,Co−W
−M,Ni−W−MまたはCo−Ni−W−M(但し、
MはCr,Mo,Vの2種以上の元素を表わす)の中の
1種からなる組成成分の合金を代表例として挙げること
ができる。
【0013】これらの結合相のうち、結合相に対して7
5重量%以上のCoと、残部がクロム、モリブデン、バ
ナジウム、タングステン、炭化クロム、炭化バナジウム
の1種以上の固溶元素を25重量%以下固溶した結合相
の場合には、硬質相の粒径および粒度分布の調整が容易
であることから好ましく、特にクロム、バナジウム、炭
化クロム、炭化バナジウムの1種以上の固溶した結合相
でなる場合には、合金中の硬質相の粒子成長抑制効果が
高く、かつ合金特性としての耐腐食性、耐摩耗性が特に
優れることから好ましい。この結合相量は、合金全体に
対して2重量%未満になると、強度・靱性が低下して研
削加工が困難となり、また巣孔残留による硬さの低下と
加工面精度の劣化を引起こし、逆に16重量%を超え多
くなると硬さ低下による耐摩耗性劣化が顕著となるため
に、2〜16重量%と定めたものである。この結合相量
は、耐アブレーション摩耗性、耐腐食摩耗性、耐摩擦摩
耗性、およびエッジの耐微小損傷性,耐微小欠損性か
ら、特に、超硬合金全体に対し3〜12重量%含有して
いることが好ましいことである。
【0014】この結合相の他に、本発明の塗付工具とし
ての超硬合金を構成している硬質相は、実質的に炭化タ
ングステンのみからなる場合、または主成分の炭化タン
グステンと、その他周期律表の4a,5a,6a族金属
の炭化物、窒化物、炭酸化物、窒酸化物およびこれらの
相互固溶体の中の少なくとも1種の立方晶構造化合物と
でなる硬質相からなる場合を挙げることができる。これ
らのうち、実質的に炭化タングステンのみからなる硬質
相の場合には、靱性および強度に優れることから好まし
く、硬質相に対して炭化タングステンを98重量%以上
と、周期律表の4a,5a,6a族金属の炭化物、窒化
物、炭酸化物、窒酸化物およびこれらの相互固溶体の中
の少なくとも1種の立方晶構造化合物とでなる硬質相か
らなる場合には、炭化タングステンの粒径調整が容易に
なること、硬度および耐摩耗性を高める傾向になること
から好ましいことである。
【0015】これらの硬質相のうち、立方晶構造化合物
の硬質相は、結晶学的に立方晶構造からなる化合物であ
り、具体的には、例えばTiC、ZrC、HfC、Ta
C、NbC、VC、(W,Ti)C、(W,Ti,T
a)C、(W,Ti,Ta,Nb)C、Ti(C,
N)、Zr(C,N)、(W,Ti)(C,N)、
(W,Ti,Ta)(C,O)、(W,Ti,Ta)
(N,O)、(W,Ti,Ta)(C,N,O)の中の
少なくとも1種を代表例として挙げることができる。こ
の立方晶構造化合物は、超硬合金の強度を低下させる傾
向になり、それを抑制させるために1μm以下の平均粒
径にすることが好ましく、できるだけ均一な粒径とし、
かつ均一に分散している場合には強度および靱性に優れ
ることから好ましいことである。
【0016】硬質相の主成分として存在する炭化タング
ステンは、平均粒径が1.5μm以下、好ましくは平均
粒径が1.0μm以下でなり、かつ90%以上が平均粒
径±0.5μmの範囲にある場合、特に平均粒径+1μ
mの粒径が炭化タングステン全体に対し5%以下でなる
と、塗付先端部の表面精度および刃立性などを向上させ
る効果を有することから好ましいことである。
【0017】以上のような組成成分で構成されている超
硬合金からなる本発明の塗付工具は、合金特性としての
硬さがロックウエル硬度のAスケールで90.0HRA
未満になると耐摩耗性の低下が著しく、逆に93.0H
RAを越えて高くなるとエッジ部分に微小損傷および微
小欠損が生じ易くなること、および製造方法が困難にな
ることから、90.0〜93.0HRAと定めたもので
ある。また、この硬さをX(単位:HRA)と表し、本
発明の塗付工具における保磁力をY(単位:エルステッ
ド)と表したときに、Y<35Xー3035の範囲にな
ると、耐アブレーション摩耗性、耐腐食摩耗性および耐
摩擦摩耗性の低下が顕著となり、エッジの耐微小損傷
性,耐微小欠損性および耐塑性変形損傷性などを含めた
全諸特性のバランスが悪くなり、安定した寿命を得るこ
とが困難となる。
【0018】本発明の塗付工具は、形状的には、特に制
限を受けることなく、上述の組成成分の超硬合金により
作製すればよく、ダイコーター用の塗付先端部としての
代表例として、図1,図2および図3を示すことができ
る。この図1は、本発明の塗付工具として例示した概略
的斜視図であり、図2は、図1の塗付先端部のスロット
幅に対し、平行方向からの概略の縦断面図である。図3
は、図2の変形例として示した概略の縦断面図である。
これらの図1,図2および図3における符号1は、塗付
先端部であり、符号2は、塗付液が押出されるスロット
部(排出口)であり、符号3は、塗付液を溜めておくポ
ケット部である。さらに、これらの図1〜3は、排出口
部分を超硬合金製とし、その他の母体部分を鋼製とし、
これら両者を接合する構造にすることも、コスト面から
は好ましいことである。
【0019】本発明の塗付工具は、以下の実施試験で詳
述するように市販の各出発原料粉末を用いて従来からの
粉末冶金法を応用して作製することができる。製造方法
上の重要点は、具体的には、まず、できるだけ微細で均
一な粒度分布を有する炭化タングステン粉末を出発原料
として用いること、その他の出発原料粉末も同様な傾向
とし、かつ不可避不純物の少ない出発原料粉末を選定す
る。次に、製造工程における重要点は、配合組成におい
ては、低炭素領域とすること、混合工程においては、混
合粉砕を強化するとともに混合中の不純物の混入を避け
ること、焼結工程においては焼結温度をできるだけ低温
にすることなどを挙げることができる。
【0020】
【作用】本発明の塗付工具は、超硬合金を構成している
結合相の含有量と、この合金の特性である硬さおよび保
磁力の関係により、合金中の炭化タングステンの粒径が
決定され、かつ粒度分布が均一に保持されており、その
結果耐磨耗性、耐微小損傷性、耐微小欠損性を高める作
用をし、特に耐微小損傷性、耐微小欠損性の向上作用を
し、さらに合金の表面精度が高められ易く、合金の刃立
性および潤滑性を向上するという間接的作用を有してい
るものである。また、本発明の塗付工具は、超硬合金を
構成している結合相中にクロム、炭化クロム、バナジウ
ム、炭化バナジウムの中の少なくとも1種が固溶されて
いると、上述の作用の他に硬質相の粒成長を抑制し、硬
質相の微細化と粒度分布の均一化を高める作用および耐
腐食性を顕著に高める作用が付加されること、結合相中
にWが多量に固溶されていると、強度,靭性および耐腐
食性を改善する作用をし、より一層の潤滑性,耐摩耗
性,面精度,刃立性および化学的腐食や電気的腐食に対
する耐腐食性を高める作用となっているものである。
【0021】
【実施試験】まず、出発原料粉末として、平均粒子径が
1.5μmの炭化タングステン粉末(以下、「f-WC」と
記す)と、平均粒子径が3.0μmの炭化タングステン
粉末(以下、「m-WC」と記す)と、平均粒子径が1.2
〜1.8μmの範囲にあるCo、Cr32、VC、Ta
C、TiC、NbC、Niの各粉末を用いて、表1に示
した本発明品1〜7用の配合組成成分に秤量し、ステン
レス製ポットにアセトン溶媒と超硬合金製ボールととも
に装入し、72時間の混合粉砕後、乾燥して混合粉末を
得た。これらの混合粉末を金型に充填し、2ton/c
2の圧力により、約直径10mm×高さ30mm形状
と約13mm×13mm×5mm形状の超硬合金が得ら
れるように圧粉成形体を作製し、この圧粉成形体をアル
ミナとカーボン繊維からなるシート上に設置し、雰囲気
圧力10Paの真空中で、表1に併記した温度でもって
1時間加熱保持し、本発明品1〜7の超硬合金を得た。
【0022】本発明品1〜7で使用した出発原料粉末の
他に、平均粒子径が4.5μmのWC(以下、「L-WC」
と記す)と、fーWCとmーWCとL−WCを1:1:
3に混合したWC(以下、「mx-WC」と記す)との出
発原料粉末を追加し、表1に示した比較品1〜4用の配
合組成成分とした。その他の製造工程のうち、混合粉砕
時間を24時間とした以外は本発明品1〜7と同様と
し、焼結温度を表1に併記した条件とし、比較品1〜4
の超硬合金を得た。
【0023】こうして得た本発明品1〜7および比較品
1〜4の各超硬合金試料を#230のダイヤモンド砥石
で湿式研削加工し、約直径10mm×高さ30mmの形
状と約13mm×13mm×5mm形状の超硬合金に作
製した。これらの試料のうち、13mm×13mm×5
mm形状の超硬合金の各試料を用いて、ロックウエル硬
度計による硬さ(HRA)とドイツ製保磁力測定器によ
る保磁力(単位:エルステッド)を求めて、その結果を
表2に示した。
【0024】また、同形状試料の13mm×5mmの一
端面をラップ加工し、金属顕微鏡および走査型電子顕微
鏡にて組織観察し、各試料の炭化タングステンの平均粒
径を表2に併記した。また、これら各試料のうち、本発
明品1〜7は、炭化タングステンの粒度が均一であり、
結合相の分散が良好であったのに対し、比較品1〜4
は、炭化タングステンの粒度が不均一であり、結合相の
分散が悪く、結合相のプールが観察された。さらに、同
形状の各試料を、記録媒体の表面被膜を構成する磁性体
被膜として、従来から実用されている二硫化ジベンジ
ル、ベンゾチアゾール、高級脂肪酸および結合剤樹脂な
どを含有する溶液中に常温で30日間浸漬した後、光学
顕微鏡により腐食の状態を観察し、その腐食試験結果を
表3に併記した。このときの腐食試験結果は、以下の符
号により表示した。{表記符号と腐食状況は、◎:全く
腐食なし、○:僅かに腐食(やや曇有り)、△:腐食有
り(曇有り)、×:著しい腐食(色調変化有り)}
【0025】次に、直径10mm×高さ30mm形状の
超硬合金試料の外周と一端面をラップ加工し、これらを
ピンとして使用し、鋼板上にポリエチレンフタレート製
厚膜が被覆されたデイスクを用いて、ピンーデイスク式
摩擦摩耗試験機により記録媒体の被膜作製に相当する簡
易試験を行った。この簡易試験条件は、ピンとデイスク
との間に1mmのクリアランスを持たせて、このクリア
ランス中に常時、二硫化モリブデン粉末、アルミナ粉
末、フエライト粉末、二硫化ジベンジル、ベンゾチアゾ
ール、高級脂肪酸および結合剤樹脂などを含有する溶液
が存在する状態でピンをデイスク上で回転させて、72
時間後のピンの端面部腐食および摩擦摩耗状態を観察
し、その結果を表3に併記した。このときのピンーデイ
スク試験結果は、以下の符号により表示した。{表記符
号と損傷状況は、◎:全く損傷なし、○:僅かに損傷、
△:損傷有り、×:著しい損傷}
【0026】以上の簡易試験結果に基づいて、本発明品
2,3,4および比較品2,3について、それぞれと同
一組成の混合粉末を用い、プレス成形,予備成形,焼
結,研削加工の工程を経て図1に概略図として示した塗
付装置用の塗付先端部を含む塗付工具を製作した。これ
らの塗付工具を、従来から実用されている磁気テープ用
塗付装置に着装し、磁性記録媒体の磁性体膜を含む被膜
作製試験を行い、被塗付物体である磁気テープに塗付さ
せた塗付膜におけるスジの発生状況と塗付工具の塗付先
端部でのエッジの微小損傷状態などから判断した寿命評
価は、比較品2の寿命時間を1とした場合に、比較品3
が約1.3倍、本発明品5が約2.1倍、本発明品4が
約2.5倍、本発明品3が約3.0倍であった。
【0027】
【表1】
【0028】
【表2】
【0029】
【表3】
【0030】
【発明の効果】本発明の塗付工具は、従来の超硬合金製
塗付工具に対比して、塗付液中に含有されている脂肪
酸、極圧添加剤、防錆剤などによる耐腐食性に優れるこ
と、特に化学的腐食や電気的腐食に対する耐腐食損傷摩
耗性に優れること、塗付液中に含有されている磁性粉
末、硬質セラミックス粉末などによる耐アブレーション
摩耗性に優れること、さらに塗付液の排出口部分の塗付
先端部エッジにおける耐微小損傷性に優れること、これ
らが総合された合金の諸特性がバランスよく優れている
ことから、実用された場合に、被塗付物体の表面荒れを
抑制できること、被塗付物体の表面上のスジ発生を抑制
できることから、長寿命であるという優れた効果を有し
ている。
【図面の簡単な説明】
【図1】は、実施試験において、実用試験を試みたとき
の、塗付工具の概略を例示した斜視図である。
【図2】は、図1のスリット幅に対する平行方向からの
縦断面図である。
【図3】は、図2の変形例として示した縦断面図であ
る。
【符号の説明】
符号1は、塗付先端部。 符号2は、塗付液が押出されるスロット部(排出口)。 符号3は、塗付液を溜めておくポケット部。
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI G03F 7/16 501 G03F 7/16 501 G11B 5/842 G11B 5/842 Z (56)参考文献 特開 平6−134379(JP,A) 特開 平6−277608(JP,A) 特開 平10−57869(JP,A) 特開 平10−15460(JP,A) 特開 平2−265673(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B05C 5/02 B05B 1/04 B05C 11/04 D21H 23/32 - 23/50 G03F 7/16 501 G11B 5/842

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】塗付装置に具備されて被塗付物体の表面に
    塗付膜が塗付されるように設計された塗付工具であっ
    て、該塗付工具は、該塗付膜を塗付させるための塗付先
    端部を備えており、該塗付工具の少なくとも該塗付先端
    部が超硬合金からなり、該超硬合金は、コバルトを主成
    分とする結合相を2〜16重量%と、残部の炭化タング
    ステンを主成分とする硬質相とを含有しており、該超硬
    合金は、硬さがロックウエル硬度のAスケールで90.
    0(HRA)以上〜93.0(HRA)以下からなり、
    該硬さをX(単位:HRA)と表し、該超硬合金の保磁
    力をY(単位:エルステッド)と表したときに、該保磁
    力が50Xー4320>Y≧35Xー3035の範囲を
    満足する塗付装置用超硬合金製塗付工具。
  2. 【請求項2】上記塗付先端部は、塗付液が流出される流
    出口がスリット状に形成されている請求項1に記載の塗
    付装置用超硬合金製塗付工具。
  3. 【請求項3】上記結合相は、該結合相中の75重量%以
    上がコバルトであり、残部がタングステン、クロム、バ
    ナジウム、炭化クロム、炭化バナジウムの中の1種以上
    の結合相強化物質を含有している請求項1または2に記
    載の塗付装置用超硬合金製塗付工具。
  4. 【請求項4】上記硬質相は、実質的に炭化タングステン
    からなる請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載の塗
    付装置用超硬合金製塗付工具。
  5. 【請求項5】上記硬質相は、該硬質相中の98重量%以
    上が炭化タングステンであり、残部が周期律表の4a,
    5a,6a族金属の炭化物、炭窒化物、炭酸化物および
    これらの相互固溶体の中から選ばれた少なくとも1種の
    立方晶構造化合物を含有する請求項1〜3のうちのいず
    れか1項に記載の塗付装置用超硬合金製塗付工具。
  6. 【請求項6】上記立方晶構造化合物は、平均粒径が1μ
    m以下でなる請求項5に記載の塗付装置用超硬合金製塗
    付工具。
  7. 【請求項7】上記炭化タングステンは、平均粒径が1.
    5μm以下でなり、かつ90%以上が平均粒径±0.5
    μmの範囲にある均一粒径からなる請求項1〜6のうち
    のいずれか1項に記載の塗付装置用超硬合金製塗付工
    具。
  8. 【請求項8】上記塗付工具は、磁気記録媒体の被膜作製
    に用いられる請求項1〜7のうちのいずれか1項に記載
    の塗付装置用超硬合金製塗付工具。
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