JP3609850B2 - 塗布装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は塗布装置に係り、特に塗布液を支持体に均一に塗布することが可能な塗布装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、支持体上に塗布液を塗布する方法として、ロールコート法、グラビアコート法、スライドビードコート法、ドクターコート法等の種々の方法が用いられているが、生産性や操作性が高く塗布膜の厚さ制御性に優れることから、近年、押出し塗布法が注目されている。
【0003】
押出し塗布法は、サポートロール等の搬送手段の間において、支持体に対して所定の張力がかかるように押出し塗布ヘッドのフロントエッジ面(支持体搬送方向上流側)とバックエッジ面(支持体搬送方向下流側)を押し付け、スリット部から押し出される塗布液の押出し量の変化に応じてバックエッジ面と支持体との間隔を変化させることで、所定の膜厚となるように制御して塗布を行うものである。
【0004】
このような押し出し塗布に用いる塗布装置として、支持体上に均一な塗布を行うために、押出し塗布ヘッドのバックエッジ面(スリットの支持体搬送方向下流側)の断面形状を三角状とし、バックエッジ面に2平面を形成した塗布装置がある(特開昭57−84771号公報)。しかし、特開昭57−84771号公報に開示された塗布装置は、バックエッジ面の断面に頂点が存在しているので、塗布時に汚れや異物が頂点を越えて流出し難く、押出し塗布ヘッドのスリット部出口に蓄積した汚れや異物等により、スジ、塗布ムラが発生し易いという問題があった。そして、最近の塗布速度の高速化(例えば、塗布速度300m/分)や、塗布の薄層化(例えば塗膜厚10cc/m2 )の要請より、スリット部出口に異物が蓄積せず流動性の良好な湾曲したバックエッジ面を備えた押出し塗布ヘッドが主流となっている。
【0005】
このようにバックエッジ面に湾曲部をもつ押出し塗布ヘッドとしては、フロントエッジ面のスリット側端部においてフロントエッジ面に引いた接線とバックエッジ面の下流側端部においてバックエッジ面に引いた接線とのなす角度θ1 、および、フロントエッジ面のスリット側端部においてフロントエッジ面に引いた接線とフロントエッジ面のスリット側端部からバックエッジ面に引いた接線とのなす角度θ2 との関係を規定(θ1 <θ2 <180°)した塗布装置(特開平2−265672号公報)、バックエッジ面を湾曲面部分と平面部分とで構成し、フロントエッジ面のスリット側端部においてフロントエッジ面に引いた接線と平面部分の延長線とのなす角度θ1 、および、フロントエッジ面のスリット側端部においてフロントエッジ面に引いた接線とフロントエッジ面のスリット側端部からバックエッジ面に引いた接線とのなす角度θ2 との関係を規定(θ1 <θ2 <180°)した塗布装置(特開平2−262566号公報)が開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平2−265672号公報や特開平2−262566号公報に開示された塗布装置では、押出し塗布ヘッドの湾曲したバックエッジ面を作製する際の湾曲面研磨が平面研磨よりも困難であるため、所望の湾曲形状を備え、かつ良好な表面粗さを有するバックエッジ面を作製することが困難であるという問題があった。
【0007】
バックエッジ面の表面粗さについては、薄膜塗布時に異物付着によるスジ、塗布ムラという塗布面特性に影響を与えることが既に知られている(特開平2−207865号公報)。同公報によれば、表面粗さ(中心線平均粗さ)Raが5μm以下の場合、良好な塗布面特性が得られるとされ、さらに、表面粗さRaが0.1μm以下の表面粗さを得ることは加工精度上困難であることが開示されている。
【0008】
しかしながら、上述の高速化、薄層化の要請から、表面粗さRaが0.1μm以下の表面粗さを有するバックエッジ面を備えた押出し塗布ヘッドが要望されている。また、特開平2−207865号公報に開示された表面粗さの測定方法は、一方向に測定するため、表面粗さRaが0.1μm以下のレベルになると測定精度の信頼性にやや欠けるという問題があった。
【0009】
本発明は、上述のような実情に鑑みてなされたものであり、スジや塗布ムラを発生することなく均一な塗布膜を支持体上に形成可能な塗布装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
このような目的を達成するために、本発明はスリット部から塗布液を連続的に押し出して支持体表面に塗布液を塗布する押出し塗布ヘッドを備えた塗布装置において、前記塗布ヘッドのバックエッジの上端面であるバックエッジ面は前記支持体の搬送方向に沿って連続した3以上の平面で構成され、各平面の境界部における頂角は178°以上180未満の範囲であり、かつ、前記バックエッジ面の表面粗さRaは0.05μm以下であり、前記バックエッジの長さは0.8〜3.0mmの範囲にあるような構成とした。
【0011】
スリット部から塗布液を連続的に押し出して支持体表面に塗布液を塗布する押出し塗布ヘッドのバックエッジ面を上記スリット部出口に異物が蓄積しない湾曲形状とした場合、バックエッジ面の表面粗さRaを0.2μm以下とすることは加工精度上困難であり、塗布面のスジや塗布ムラを引き起こすことになっていた。しかし、上述のような本発明では、スリット部から押し出され支持体に塗布される塗布液の流動性が良好となり、スリット部出口に異物が蓄積せず、スジや塗布ムラを発生することなく支持体に均一な塗布膜を形成することが可能である。
【0012】
以下、本発明の具体的構成について説明する。
【0013】
図1は本発明の押出し塗布ヘッドの断面図であり、図2は図1に示され押出し塗布ヘッドのバックエッジの部分拡大断面図である。図1および図2において、押出し塗布ヘッド1はフロントエッジ2、バックエッジ4、フロントエッジ2とバックエッジ4との間に形成されているスリット部8、ポケット部9を備えている。そして、スリット部8から連続的に押し出された塗布液は支持体11に塗布される。
【0014】
本発明では、この押出し塗布ヘッド1のバックエッジ4の上端面であるバックエッジ面5が支持体の搬送方向に沿って連続した3以上の平面(図示例では、平面5a,5b,5cの3平面)で構成され、各平面の境界部における頂角θn (nは2以上の整数、図示例では平面5aと平面5bとのなす頂角θ1 、平面5bと平面5cとのなす頂角θ2 )が175°以上180°未満の範囲であり、かつ、バックエッジ面5の表面粗さRaが0.2μm以下であることを特徴としている。
【0015】
上記のバックエッジ面5を構成する各平面5a,5b,5cの境界部における頂角θ1 および頂角θ2 は、上述のように175°≦θ1 ,θ2 <180°、好ましくは178°≦θ1 ,θ2 <180°の範囲内で設定することができる。頂角θ1 ,θ2 が175°未満であると、スリット部8から押し出される塗布液の流動性が悪く、3平面5a,5b,5cからなるバックエッジ面5のドクターエッジとしての効果が得られず、支持体11への塗布においてスジ、塗布ムラが発生する。
【0016】
バックエッジ面5の表面粗さRaは中心線平均粗さ(JIS B0601)であり、この表面粗さRaは上記のように0.2μm以下、好ましくは0.05μm以下である。バックエッジ面5の表面粗さRaが0.2μmを超えると、支持体11に形成した塗布面に細かいスジが発生する。
【0017】
ここで、表面粗さRaの測定方法について説明する。
【0018】
まず、3平面5a,5b,5cをバックエッジ面5に作製する過程を図3に示した。図3において、バックエッジ4を▲1▼→▲2▼→▲3▼→▲4▼の順序で各々平面研磨することにより、3平面5a,5b,5cからなるバックエッジ面5を作製することができる。そして、上記の平面研磨のうち、▲1▼の平面研磨が完了した時点で表面粗さRaを測定する。これにより、充分な測定長が得られる。また、1箇所の測定点において、研磨目に対して45°で交差させて×印を描くように2回走査させるので、信頼性の高い測定が可能である。このような測定を、押出し塗布ヘッド1の幅方向(支持体11の搬送方向に直角の方向)の5箇所で行い、得られた計10データの平均値を表面粗さRaとする。具体的な測定機種としては、サーフテスト301A(ミツトヨ(株)製)を使用することができ、測定長0.8mm、カットオフ値0.8の条件で測定を行うことができる。
【0019】
上述のようなバックエッジ4の長さ(支持体搬送方向の長さ)Lは、0.5〜5.0mm程度、好ましくは0.8〜3.0mm程度とすることができる。バックエッジ4の長さが0.5mm未満、あるいは5.0mmを超えると、3平面5a,5b,5cからなるバックエッジ面5のドクターエッジとしての効果が充分ではなく、塗布面にスジ、塗布ムラが発生する。また、バックエッジ面5を構成する各平面5a,5b,5cの長さLa ,Lb ,Lc は、各々0.1〜2.0mm、好ましくは0.2〜1.0mmの範囲とすることができる。1平面の長さが0.1mm未満であると、加工製造上困難となり、2.0mmを超えると塗布面にスジ、塗布ムラが発生し易くなり好ましくない。ここで、バックエッジ4の長さLは、スリット部8の塗布液流出方向を基準線とし、バックエッジ4の両端点において上記基準線に平行な線を引き、その平行線の距離をエッジの長さとしている。
【0020】
スリット部8は、その開口幅wが0.05〜0.6mm程度であり、押出し塗布ヘッド1の幅方向(支持体搬送方向に対し直角方向)に沿って形成されている流路である。また、スリット部8の流路長lは、例えば、塗布液の組成および物性、塗布液の供給量等に基づいて設定することができる。さらに、フロントエッジ面3とバックエッジ面5との間に形成されるスリット部8の出口の幅は、開口幅wと同等に設定されるのが一般的であるが、場合によっては出口幅を広くする等、開口幅wと等しくなくてもよい。
【0021】
このような押出し塗布ヘッド1は、従来の押出し塗布ヘッドと同様の材料、例えば、ステンレス鋼、超硬合金材料等を用いて作成することができる。
【0022】
上記の押出し塗布ヘッド1では、図示されていない塗布液供給手段から塗布液がポケット部9に供給される。ポケット部9への塗布液の供給は、ポケット部9の一方の端部からの供給、ポケット部9の両端部からの供給、あるいは、ポケット部9の中間部からの供給等、いずれの供給方法であってもよい。このポケット部9に供給された塗布液は、スリット部8を経由してスリット部8の出口から押出され、バックエッジ面5と搬送されている支持体11との間隙部分に連続的に供給される。そして、塗布液の供給量、押出し塗布ヘッド1に対する支持体11の張力、ラップ角等により、支持体11とバックエッジ面5との間隙が設定され、塗布液が支持体11上に塗着される。この時、バックエッジ面5はドクターエッジの役割をなし、かつ、バックエッジ面5の形状および表面粗さRaが上述のような設定となっているため、塗布液の流動性が極めて良好であり、スリット部出口における異物蓄積が発生せず、スジや塗布ムラを生じることなく支持体11に均一な塗布膜を形成することが可能である。
【0023】
また、本発明の塗布装置においては、押出し塗布ヘッドを上述のような構造とする他に、図4に示されるような多層(図示例では2層)同時塗布用の押出し塗布ヘッドとすることができる。図4に示される押出し塗布ヘッド1は、フロントエッジ2、バックエッジ4との間にセンターエッジ6を備え、2つのスリット部8、8´、2つのポケット部9、9´を備えている。このような多層同時塗布用の押出し塗布ヘッド1の場合においても、バックエッジ4の上端面であるバックエッジ面5は、上述の1層塗布用の押出し塗布ヘッドのバックエッジ面5と同様の構成である。
【0024】
本発明の塗布装置に使用することのできる支持体としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム等のプラスチックフィルム、紙や金属箔等からなる長尺の可撓性支持体等を挙げることができ、特に制限はない。また、支持体は、予め種々の処理層が形成されたものであってもよい。
【0025】
本発明の塗布装置に使用することのできる塗布液は、押出し塗布ヘッドによる塗布に適した塗布液であれば特に制限はない。押出し塗布法は、塗布膜の厚さ制御性に優れており、従来より安定した塗布膜厚さが要求されるような用途において用いられている。このような用途の一つとして、磁気記録媒体の磁気記録層やバックコート層の形成があり、磁性粉、バインダおよび溶媒を含有する磁性塗布液、あるいは、バックコート用塗布液は、本発明に使用することのできる塗布液の一つである。
【0026】
ここで、磁性塗布液の例を挙げると、磁性粉としては、γ−Fe2 O3 、Co含有γ−Fe2 O3 、Fe3 O4 、Co含有Fe3 O4 、CrO2 、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト等の酸化物微粉末、Fe、Co、Ni等の金属あるいはこれらの合金微粉末、炭化鉄等がいずれも使用可能である。また、バインダとしては、公知の各種樹脂バインダはいずれも使用可能である。さらに、溶媒は特に制限はなく、例えば、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系、トルエン等の芳香族系等の各種溶媒を目的に応じて適宜選択することができる。また、磁性塗布液には、必要に応じて無機微粒子、潤滑剤等の各種添加剤を含有させてもよい。上記のような磁性塗布液を用いて形成される磁気記録層は、乾燥膜厚が0.1〜6μm程度であり、この磁気記録層の30〜92重量%を磁性粉が占めるような構成が好ましい。また、近年行われているように塗布液を湿潤状態で多層化して塗布層を設けてもよい。この場合、塗布液は磁性液に限定されるものではなく、非磁性液、樹脂の溶解液等、上述の通り押出し型塗布ヘッドによる塗布に適した塗布液ならば適用可能であり、塗布層の層構成についても必要に応じて選択することができる。
また、バックコート用塗布液の例を挙げると、顔料としてはカーボンブラック、α−Fe2 O3 、TiO2 、CaO、SiO2 、Cr2 O3 、α−Al2 O3 、SiC、CaCO3 、BaSO4 、ZnO、MgO、窒化ホウ素、TiC等の非磁性無機粉末等いずれも使用可能である。また、バインダとしては、公知の各種樹脂バインダはいずれも使用可能である。さらに、溶媒は特に制限はなく、例えば、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系、トルエン等の芳香族系等の各種溶媒を目的に応じて適宜選択することができる。また、バックコート用塗布液には、必要に応じて無機微粒子、潤滑剤等の各種添加剤を含有させてもよい。上記のようなバックコート用塗布液を用いて形成されるバックコート層は、乾燥膜厚が0.1〜1.0μm程度であり、このバックコート層の30〜80重量%を顔料が占めるような構成が好ましい。
【0027】
【実施例】
次に、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。
【0028】
支持体として幅1000mm、厚さ15μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを準備した。また、下記の組成の磁性塗布液を準備した。
(磁性塗布液の組成)
Co含有γ−Fe2 O3 …100重量部
(Hc=750Oe、比表面積(BET) =43m2 /g)
塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体 … 10重量部
ポリエステルポリウレタン樹脂 … 10重量部
カーボンブラック … 5重量部
アルミナ粉末 … 5重量部
ステアリン酸 … 2重量部
ステアリン酸ブチル … 1重量部
メチルエチルケトン …100重量部
トルエン …100重量部
シクロヘキサノン … 80重量部
ポリイソシアネート … 4重量部
実施例1〜4、比較例1〜5
下記の表1に示されるように、バックエッジ面を構成する3平面の境界部における頂角θ1 、θ2 を種々変更し、バックエッジ面の表面粗さRa、バックエッジ長を所定値に設定した図1に示される押出し塗布ヘッド1を用い、上記の磁性塗布液を支持体11に塗布し、乾燥して磁気記録層(厚み3μm)を形成した。その後、カレンダー処理を行い、12.65mm幅にスリットして磁気記録媒体(ビデオテープ)とした。尚、表面粗さRaの測定方法、塗布条件は下記に示されるものとした。
(表面粗さRaの測定方法)
測定機 : サーフテスト301A(ミツトヨ(株)製)
測定長 : 図3の▲1▼の平面研磨が完了した時点で0.8mm測定
カットオフ値 : 0.8
測定点 : 幅方向5点、各点で研磨目に対して45°交差で2回走査
(塗布条件)
支持体の搬送速度 : 300m/分
比較例6〜9
バックエッジ面を2平面から構成されるものとし、下記の表1に示されるように各平面の境界部における頂角θ1 を種々変更し、バックエッジ面の表面粗さRa、バックエッジ長を所定値に設定した押出し塗布ヘッドを使用した他は、上記の実施例1〜4と同様にして磁気記録媒体を作成した。
実施例5〜8、比較例10
下記の表1に示されるように、バックエッジ面の表面粗さRaを種々変更し、バックエッジ面を構成する3平面の境界部における頂角θ1 、θ2 、バックエッジ長を所定値に設定した図1に示される押出し塗布ヘッド1を使用した他は、上記の実施例1〜4と同様にして磁気記録媒体を作成した。
実施例9〜14、比較例11〜12
下記の表1に示されるように、バックエッジ面の表面粗さRaおよびバックエッジ長を種々変更し、バックエッジ面を構成する3平面の境界部における頂角θ1 、θ2 を所定値に設定した図1に示される押出し塗布ヘッド1を使用した他は、上記の実施例1〜4と同様にして磁気記録媒体を作成した。
実施例15
バックエッジ面を5平面から構成されるものとし、バックエッジ面を構成する5平面の境界部における頂角θ1 、θ2 、θ3 、θ4 、バックエッジ面の表面粗さRaおよびバックエッジ長を下記の表1に示されるように設定した押出し塗布ヘッドを使用した他は、上記の実施例1〜4と同様にして磁気記録媒体を作成した。
【0029】
上記のように作成した磁気記録媒体の磁気記録層の塗布面特性を下記の評価基準にしたがって評価し、その結果を下記の表1に示した。
【0030】
(塗布面特性の評価基準)
◎ … 1000mm幅×10000m長において塗布スジおよび塗布ムラがなく良好
○ … 1000mm幅×10000m長において塗布スジが2本以下、かつ、塗布ムラが目立たない
× … 1000mm幅×10000m長において塗布スジが3本以上、塗布ムラが著しい
【0031】
【表1】
実施例1〜4と比較例1〜5の塗布面特性を対比すると、バックエッジ面を構成する3平面のなす頂角の大きさにより塗布液流動性が変化し、バックエッジ面による良好なドクターエッジ効果は、本発明の頂角範囲において得られることが確認された。
【0032】
実施例1〜4と比較例6〜9の塗布面特性を対比すると、バックエッジ面が2平面から構成される押出し塗布ヘッドのおける塗布液の流動性が、本発明の押出し塗布ヘッド(3平面構成)に比べて劣っていることが明らかとなった。
【0033】
実施例5〜8と比較例10の塗布面特性を対比すると、バックエッジ面の表面粗さRaを0.2μm以下とすることにより塗布液流動性が良好となり、バックエッジ面による良好なドクターエッジ効果が得られることが確認された。尚、本発明では、バックエッジ面形成は図3に示されるように平面研磨により行うことができ、湾曲研磨に比べて表面粗さRaをより小さいものとすることが容易であった。
【0034】
実施例9〜14と比較例11〜12の塗布面特性を対比すると、バックエッジ長を0.5〜5.0mmの範囲、好ましくは0.8〜3.0mmの範囲とすることにより、良好な塗布面特性が得られることが確認された。
【0035】
実施例4と実施例15の塗布面特性を対比すると、バックエッジ面が3平面で構成された場合と5平面で構成された場合では塗布面特性に大きな違いは認められず、両者とも良好な結果であり、バックエッジ面の構成面数は3平面で充分であることが確認された。
【0036】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば押出し塗布ヘッドのドクターエッジの役割を果たすバックエッジ面が、各平面の境界部における頂角が175°以上180°未満の範囲であり支持体の搬送方向に沿って連続した3以上の平面で構成されており、バックエッジ面形成を平面研磨により行うことができるため、バックエッジ面の表面粗さRaを0.2μm以下の良好な状態にすることが容易であり、このため、スリット部から押し出され支持体に塗布される塗布液の流動性が良好であり、また、スリット部出口に異物が蓄積せず、スジや塗布ムラを発生することなく支持体に均一な塗布膜を形成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の塗布装置を構成する押出し塗布ヘッドの一例を示す断面図である。
【図2】図1に示される押出し塗布ヘッドのバックエッジの部分拡大断面図である。
【図3】本発明の塗布装置を構成する押出し塗布ヘッドのバックエッジ面の作成方法を説明するための図である。
【図4】本発明の塗布装置を構成する押出し塗布ヘッドの他の例を示す断面図である。
【符号の説明】
1…押出し塗布ヘッド
2…フロントエッジ
3…フロントエッジ面
4…バックエッジ
5…バックエッジ面
5a,5b,5c…バックエッジ面を構成する平面
6…センターエッジ
7…センターエッジ面
8,8´…スリット部
9,9´…ポケット部
11…支持体
L…バックエッジの長さ
Claims (2)
- スリット部から塗布液を連続的に押し出して支持体表面に塗布液を塗布する押出し塗布ヘッドを備えた塗布装置において、前記塗布ヘッドのバックエッジの上端面であるバックエッジ面は前記支持体の搬送方向に沿って連続した3以上の平面で構成され、各平面の境界部における頂角は178°以上180未満の範囲であり、かつ、前記バックエッジ面の表面粗さRaは0.05μm以下であり、前記バックエッジの長さは0.8〜3.0mmの範囲にあることを特徴とする塗布装置。
- 前記押出し塗布ヘッドは前記スリットを2以上備え、前記バックエッジ面の支持体搬送方向上流側に1以上のセンターエッジ面を有することを特徴とする請求項1に記載の塗布装置。
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