JP2019005724A - 塗布工具及び塗布装置 - Google Patents
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Abstract
Description
被塗布材の表面に塗布液を塗布する際には、塗布工具を搭載した塗布装置が用いられるが、塗布工具を構成する材料としては、主として、超硬合金あるいはステンレス鋼等が知られている(例えば、特開2004−261678号公報、特開2006−272204号公報、特開2014−200719号公報等参照)。
塗布工具をステンレス鋼で構成した場合には、比較的安価(材料費、加工費)に製造可能であり、また、加工が容易であり、さらに、すぐれた耐食性を備えるという利点を備えるが、超硬合金に比して耐摩耗性に劣り、シャープエッジを出しにくく(バリが発生しやすい)、長時間にわたっての形態維持が困難であるという欠点があった。
一方、塗布工具構成材料として超硬合金を用いた場合には、高硬度であって耐摩耗性にすぐれるため、シャープエッジを出すことが可能であり、高精度な膜厚制御ができるとともに液切れが良好であるという利点を有する反面、ステンレス鋼に比べて耐食性が劣るという欠点があった。
そこで、塗布工具を構成する材料については、特に、耐摩耗性と耐食性を両立させるという観点から、従来からいくつかの提案がなされている。
また、特許文献4には、炭化タングステン基焼結体の製造方法として、原料粉末として、炭化タングステンと所望の炭窒化物の粉末を用い、これを混合後成形し、この成形体を、例えば1500〜2000℃で焼結することが記載されており、また、焼結後に、不活性雰囲気でHIP(熱間等方向加圧加工)処理を行い、焼結組織中の空孔を除去してもよいとされている。
より具体的には、上記硬質相は、該硬質相中の98重量%以上が炭化タングステンであり、残部がTi,Ta,Nbの炭化物、Tiの炭窒化物およびW−Ti,W−Ti−Ta,W−Ti−Nb,W−Ti−Ta−Nbの複合炭化物,複合炭窒化物の中から選ばれた少なくとも1種の立方晶構造化合物を含有し、かつ該炭化タングステンおよび該立方晶構造化合物が均一分散されている超硬合金からなる塗布先端部を備えた塗布工具が提案されている。
そして、上記塗布工具を用いることにより、結合相中に最適な固溶元素を固溶させ、かつ炭化タングステンの粒度分布を均一にし、炭化タングステンと結合相とを均一分散および均一混在させて、結合相分布のむらをなくすことにより、強度、硬さ、靱性、耐摩耗性、潤滑性を高め、かつ耐衝撃性、耐微小欠損性を向上させるとともに、主として固溶元素の固溶した結合相により塗布液による化学的腐食や電気的腐食に対する耐腐食性,耐摩耗性および潤滑性を大幅に向上させることができるとされている。
従来、酸系(塩酸、硫酸、硝酸等)の成分が添加されている塗布液に対して、超硬合金からなる塗布工具を使用すると、結合相の主成分であるコバルトが塗布液と反応し、酸化還元を伴い塗布液中に溶出するという現象が生じている。そして、この現象が進行すると、硬質相成分であるタングステンカーバイドの保持力が弱まり、タングステンカーバイド粒子の脱落が始まる。
これに対処するため、結合相成分をニッケルで置換したり、耐食効果の見込めるクロムを複合添加することである程度の耐食効果を得ることはできるが、時間の経過とともに腐食は進行していくため、結局、塗布工具としての寿命は短いものとなっている。
耐摩耗性にすぐれた高硬度の材料を使用することでこのような現象の発生を抑制することができることから、塗布工具の耐摩耗性を重視する場合には、一般的にステンレス鋼より硬質な超硬合金が用いられている。
そして、超硬合金中の結合相成分を低減するための具体的な方策として、超硬合金を作製する際に、結合相形成用原料粉末(例えば、コバルト粉末、ニッケル粉末、鉄粉末)を特に使用することなく、硬質相形成用の粉末として、タングステンカーバイド(以下、「WC」で示す。)粉末とチタンカーバイド(以下、「TiC」で示す。)粉末のみを用い、WC粉末とTiC粉末をステンレス鋼製混合容器中に収納し、WC−Co超硬合金あるいはWC−Co−Ni超硬合金をメディアとするアトライターにより混合し、圧粉成形体を作製し、この成形体を焼結した後、焼結体の緻密化を図るHIP処理を施して超硬合金を作製したところ、超硬合金の結合相成分となるCo、Ni、Feの含有量を極めて少なく抑えることができ(Co、Ni、Feの含有量合計で2.0質量%未満)、実質的には、WCとTiCを硬質相とする超硬合金(以下、「WC−TiC超硬合金」で示す。)を作製し得ることを見出した。
そして、この超硬合金は、焼結後にHIP処理を行ったことで、理論密度100%近くまで焼結体の緻密化が進行するため、従来の超硬合金に劣らない硬さを有し、すぐれた耐摩耗性を備えることを見出した。
そして、この(W,Ti)C超硬合金の理論密度も、前記と同様、理論密度100%近くにまで高めることができ、従来の超硬合金に劣らない硬さと耐摩耗性を有するものであった。
そして、二次硬質相を含有する上記超硬合金も、二次硬質相が耐食性、耐酸化性を向上させるため、酸性〜弱アルカリ(pH1〜9)の塗布液(腐食環境)に対して、すぐれた耐食性を示すことを見出した。
「(1)塗布装置に搭載される塗布工具において、
被塗布材に接触または接近する塗布工具の少なくとも先端部1mm以内は超硬合金で構成され、
前記超硬合金は、Co、NiおよびFeのうちから選ばれる一種又は二種以上からなる結合相と、残部は、WC、TiCおよびWとTiとCの固溶体のうちから選ばれる一種又は二種以上からなる硬質相と不可避不純物からなり、前記結合相を構成するCo、Ni、Feの含有量合計が、超硬合金全体に占める含有割合は2.0質量%未満であることを特徴とする塗布工具。
(2)前記超硬合金において、硬質相中の金属成分であるWが、超硬合金全体に占める含有割合は、40質量%以上80質量%以下であることを特徴とする(1)に記載の塗布工具。
(3)前記超硬合金について、X線回折法により回折ピーク強度を測定し、回折角2θが40°から43°の範囲に存在する回折ピーク強度のトップにあたるカウント数をIaとし、回折角2θが46°から50°の範囲に存在する回折ピーク強度のトップにあたるカウント数をIbとして求めた場合、Ib/Ia≦1の関係を満足することを特徴とする(1)または(2)に記載の塗布工具。
(4)前記超硬合金は、VC、NbC、TaC、TaNbCおよびCr3C2のうちから選ばれる一種または二種以上の炭化セラミックスを、硬質相としてさらに含有することを特徴とする(1)乃至(3)のいずれかに記載の塗布工具。
(5)前記超硬合金は、TiN、TaNおよびNbNのうちから選ばれる一種または二種以上の窒化セラミックスを、硬質相としてさらに含有することを特徴とする(1)乃至(4)のいずれかに記載の塗布工具。
(6)前記塗布工具の先端部以外の箇所は、ステンレス鋼で構成されていることを特徴とする(1)乃至(5)のいずれかに記載の塗布工具。
(7)前記超硬合金は、ロックウエル硬度Aスケールで89.0HRA以上95.0HRA以下の硬さを有することを特徴とする(1)乃至(6)のいずれかに記載の塗布工具。
(8)前記(1)乃至(7)のいずれかに記載の塗布工具を搭載した塗布装置。」
を特徴とするものである。
したがって、本発明の塗布工具は、酸性の塗布液から弱アルカリ性の塗布液のいずれに対してもすぐれた耐食性を発揮する。
また、塗布工具の先端部の前記超硬合金は、ロックウエル硬度Aスケールで89.0HRA以上95.0HRA以下の高硬度を有することから耐摩耗性に優れ、さらに、塗布液中に含有されている硬質粉末等に対する耐アブレーション摩耗性にもすぐれる。
したがって、本発明の塗布工具は、耐食性と耐摩耗性を兼ね備えるため、汎用性のある塗布工具として使用することができ、また、その長寿命化を図ることができる。
塗布工具の先端部1mm以内は、少なくとも、超硬合金で構成されるが、塗布工具のその他の箇所は、ステンレス鋼で構成することができる。
なお、前記不可避不純物とは、原料粉末あるいは製造工程等から不可避的に混入するppmレベルの不純物成分であって、例えば、O,S,P,Cu等である。
前記結合相を構成するCo、Ni、Feの含有量合計は、超硬合金全体の2.0質量%未満であり、一方、WC、TiCおよび(W,Ti)Cのうちから選ばれる一種又は二種以上からなる硬質相は、超硬合金全体のほぼ98.0質量%以上99.9質量%以下を占めることになる。
しかし、超硬合金の製造工程においては、図2に示すようなアトライターで原料粉末を混合する際に、混合メディアとしてWC−Co超硬合金あるいはWC−Co−Ni超硬合金を用いること、また、混合する際の撹拌部をWC−Co超硬合金で構成し、混合容器をステンレス鋼で構成していることから、作製された超硬合金には、結合相成分であるCo、Ni、Feが微量含有される。
結合相成分であるCo、Ni、Feは、超硬合金の耐食性を劣化させるため、その含有量は、可及的に少ないことが望まれるが、その含有量合計が2.0質量%未満であれば、超硬合金の耐食性を大きく低下させることはない。
したがって、本発明の超硬合金においては、結合相成分であるCo、Ni、Feの含有量合計は2.0質量%未満に定めた。
超硬合金中の結合相成分の含有量を、超硬合金全体に対して2.0質量%未満に制限するための具体的な手段としては、原料粉末の混合に際しての、混合メディアや混合容器等の材質の選択すること、また、混合条件としての回転数や運転時間を調製することによって、コントロールすることができる。
例えば、原料粉末の混合を、図2に示すアトライターにより行う場合、ボール形状のメディアとしてWC−Co超硬合金あるいはWC−Co−Ni超硬合金を用い、撹拌部をWC−Co超硬合金で構成し、また、混合容器はステンレス鋼製とし、それぞれの材質を調整し、さらに、混合速度、混合時間を調整することによって、原料粉末中に混入(含有)されるCo、Ni、Feの量、言い換えれば、超硬合金における結合相の含有量、をコントロールすることができる。
なお、仮に、何らかの手段で、Co、Ni、Feの含有量合計を0.1質量%未満にまで低減して、更なる耐食性の向上を図ったとしても、逆に、超硬合金の緻密化を図ることができなくなり、欠陥(巣穴)が残るため、超硬合金の機械的強度が大幅に低下してしまう。
それ故、塗布工具として用いられる超硬合金に必要とされる特性(耐食性、硬度、強度)を総合的に勘案すれば、Co、Ni、Feの含有量合計を敢えて0.1質量%未満にまで低減する必要はない。
なお、本発明の超硬合金においては、原料粉末、あるいは、製造工程から必然的に混入するO,S,P,Cu等の不可避不純物の微量混入を避けることはできないが、これらはppmレベルのごく微量であるから、超硬合金の特性(例えば、硬度、耐食性等)に大きな影響を及ぼすことはない。
これは、Wの含有量が40質量%未満であると結合相成分との濡れ性が悪くなるため焼結に際しての緻密化が進行しにくくなるからであり、また、逆に、Wの含有量が80質量%を超えて多くなると、例えば、リチウムイオン二次電池用の負極スラリーを塗布する塗布工具として使用した場合に、超硬合金に変色が発生するようになるからである。
これは、Ib/Ia>1になると、圧粉成形体を焼結した際に、焼結体の緻密化が進行しづらくなり、HIP処理を施したとしても、製品に欠陥(巣孔)が残存し、硬度、耐摩耗性が低下するためである。
Ib/Ia≦0.5の関係を満たすことがより好ましい。
ここで、「固溶化熱処理を施した粉末」とは、WとTiとCの全率固溶体のみからなる粉末ばかりでなく、WとTiとCの全率固溶体とWCとTiCが混在して存在する粉末(特に、X線回折におけるピーク強度比Ib/Ia≦1の関係を満たすことが好ましい。)をも含む。
なお、WC、TiC、(W,Ti)Cからなる硬質相と、前記二次硬質相の含有量合計は、超硬合金全体のほぼ98.0質量%以上99.9質量%以下とする。
これは、前記超硬合金の硬さがロックウエル硬度Aスケールで89.0HRA未満になると耐摩耗性を十分に確保することができず、一方、硬さが95.0HRAを越えて高くなると塗布工具の先端部に微小損傷および微小欠損が生じ易くなるためである。
例えば、硬質相形成用原料粉末として、固溶化熱処理粉末を用いた場合、次のような工程で作製することができる。
(1)まず、W粉末とTiO2粉末とグラファイト粉末とを所定の配合比(例えば、炭化後のWC粉末:TiC粉末=40:60〜80:20(但し、質量比)になるよう)で混合し、2000℃で固溶化熱処理と炭化を同時に行った固溶化熱処理粉末を作製する。
(2)上記で作製した固溶化熱処理粉末を硬質相形成用原料粉末として、Co、Ni、Feからなる結合相形成用粉末を用いることなく、これをアルコールと混ぜ合わせて図2に示すアトライターにより湿式混合を行う。
その際、例えば、直径1.0mmのボール形状のメディアとしてWC−30質量%Co超硬合金を用い、撹拌部はWC−10質量%Co超硬合金とし、混合容器はステンレス鋼製としたアトライターにより、所定の回転数の容器内で所定時間混合する。
(3)所定時間混合した後、固溶化熱処理粉末とアルコールの混合スラリーを取り出し、真空乾燥後、固溶化熱処理粉末を回収する。
(4)プレス成形により、(W,Ti)C粉末の圧粉体を成形し、真空焼結最高到達温度1500℃の条件で焼結し、その後、1400℃×100MPaの条件での熱間等方圧加圧処理(HIP処理)を施し、焼結体の緻密化を行う。
上記(1)〜(4)の工程で超硬合金を作製することにより、Co、Ni、Feからなる結合相の含有量合計が、超硬合金全体に対して2.0質量%未満である超硬合金を作製することができるが、このようにして作製した超硬合金をX線回折すると、例えば、図3に示す形態の回折パターンが得られる。
なお、上記工程において、硬質相形成用原料粉末として固溶化熱処理粉末を用いたのは、真空焼結およびHIP処理において、焼結体の緻密化が進行しやすく、欠陥の少ない焼結体を得やすいという理由によるが、硬質相形成用原料粉末としてWC粉末とTiC粉末を用いる場合、あるいは、二次硬質相形成用の原料粉末をさらに添加する場合でも、結合相形成成分であるCo、Ni、Feの含有量合計が、超硬合金全体に対して2.0質量%未満である超硬合金を作製することができる。
スタート粉末をW、TiO2,グラファイトとし、処理後の粉末がWC:TiCの質量比で70:30となるように配合後、炭化と同時に固溶化熱処理(2200℃)を施した固溶化熱処理粉末を作製し(平均粒子径1.2μm)、この固溶化熱処理粉末を硬質相形成用原料粉末として用い、これを、エタノールを主成分とするアルコールと混ぜ合わせ、アトライターにより湿式混合を行った。
その際に、混合メディアとしては、直径1.0mmのボール形状のWC−30質量%Co超硬合金製メディアを使用した。また、混合メディアや原料と接触する撹拌部は、WC−10質量%Co超硬合金製の材質を使用した。さらに、混合する容器としては、SUS304製の容器を使用し、回転数120rpmで10時間混合した。
ついで、油圧式プレス装置で、単位圧力1MPaで圧紛体を成形し、これを、真空焼結最高到達温度1500℃の条件で焼結した。
さらに、上記で作製した焼結体を、1400℃×100MPaの条件での熱間等方圧加圧法(HIP)により、焼結体の緻密化を行い、本発明の超硬合金1(「本発明品1」という)を作製した。
ついで、前記研磨面を、電子線プローブマイクロアナライザ(EPMA)を用いて観察し、波長分散型X線分析(WDS)を用いて元素の定性分析を行い、検出した元素の定量分析を行った。
表1に、その結果を示す。
スタート粉末をW、TiO2,グラファイトとし処理後の粉末がWC:TiCの質量比で80:20となるように配合後、炭化と同時に固溶化熱処理(2200℃)を施した固溶化熱処理粉末を(平均粒子径1.1μm)硬質相形成用原料粉末として用意し、また、二次硬質相形成用原料粉末として、平均粒子径が1.5μmのTaC粉末を、全原料粉末の2.40質量%となるように配合し、これを、エタノールを主成分とするアルコールと混ぜ合わせ、実施例1と同様な条件でアトライターによる湿式混合を行い、以後、実施例1と同様な方法により本発明の超硬合金2(「本発明品2」という)を作製した。
また、実施例1と同様にして、本発明品2について元素の定量分析を行った。
表1に、その結果を示す。
スタート粉末をW、TiO2,グラファイトとし処理後の粉末がWC:TiCの質量比で50:50となるように配合後、炭化と同時に固溶化熱処理(2000℃)を施した固溶化熱処理粉末を(平均粒子径1.5μm)硬質相形成用原料粉末として用意し、また、二次硬質相形成用原料粉末として、平均粒子径が1.5μmのTaC粉末と平均粒子径が1.0μmのNbC粉末を、それぞれの含有量が、全原料粉末のそれぞれ1.5質量%及び11.5質量%となるように配合し、これを、エタノールを主成分とするアルコールと混ぜ合わせ、アトライターによる湿式混合を行った。その際、混合メディアとしては、直径1.0mmのボール形状のWC−15質量%Co−20質量%Ni超硬合金製メディアを使用した。また、混合メディアや原料と接触する撹拌部は、WC−20質量%Co超硬合金製の材質を使用した。さらに、混合する容器としては、SUS304製の容器を使用し、回転数120rpmで20時間混合した。
ついで、実施例1と同様な焼結条件、HIP条件で、超硬合金3(「本発明品3」という)を作製した。
また、実施例1と同様にして、本発明品3について元素の定量分析を行った。
表1に、その結果を示す。
スタート粉末をW、TiO2,グラファイトとし処理後の粉末がWC:TiCの質量比で70:30となるように配合後、炭化と同時に固溶化熱処理(2000℃)を施した固溶化熱処理粉末を(平均粒子径1.2μm)硬質相形成用原料粉末として用意し、また、二次硬質相形成用原料粉末として、平均粒子径が1.5μmのTaN粉末と平均粒子径が1.1μmのNbN粉末を、それぞれの含有量が、全原料粉末のそれぞれ2.5質量%及び2.5質量%となるように配合し、これを、エタノールを主成分とするアルコールと混ぜ合わせ、アトライターによる湿式混合を行った。その際、混合メディアとしては、直径1.0mmのボール形状のWC−20質量%Co−10質量%Ni超硬合金製メディアを使用した。また、混合メディアや原料と接触する撹拌部は、WC−20質量%Co超硬合金製の材質を使用した。さらに、混合する容器としては、SUS304製の容器を使用し、回転数120rpmで20時間混合した。
ついで、実施例1と同様な焼結条件、HIP条件で、超硬合金4(「本発明品4」という)を作製した。
また、実施例1と同様にして、本発明品4について元素の定量分析を行った。
表1に、その結果を示す。
しかし、以下に述べる比較例1〜4では、Co、Ni、Fe等の結合相形成用原料粉末を用い、硬質相と結合相からなる超硬合金を作製した。
また、前記実施例1〜4では、いずれも、焼結後、熱間等方圧加圧法(HIP)による焼結体の緻密化処理を行ったが、比較品1〜4に関しても、熱間等方圧加圧法(HIP)による焼結体の緻密化処理を行った。
まず、平均粒子径が1.0μmのWC粉末を硬質相用形成原料粉末として用い、また、平均粒子径が0.9μmのCo粉末を結合相形成用原料粉末として用い、さらに複炭化物として平均粒子径が1.0μmのCr3C2粉末を用い、WC粉末とCo粉末とCr3C2粉末を、WC:Co:Cr3C2の質量比が90:10:1になるように配合し、エタノールを主成分とするアルコールと混ぜ合わせ、図2に示すアトライターにより湿式混合を行った。
その際に、混合メディアとしては、直径1.0mmのボール形状のWC−8質量%Co超硬合金製メディアを使用した。また、混合メディアや原料と接触する撹拌部は、WC−8質量%Co超硬合金製の材質を使用した。さらに、混合する容器としては、SUS304製の容器を使用し、回転数120rpmで10時間混合した。
ついで、油圧式プレス装置で、単位圧力1MPaで圧紛体を成形し、これを、真空焼結最高到達温度1500℃の条件で焼結した後、該焼結体を、1400℃×100MPaの条件での熱間等方圧加圧法(HIP)により、焼結体の緻密化を行い、比較例の超硬合金1(「比較品1」という)を作製した。
ついで、前記研磨面を、電子線プローブマイクロアナライザ(EPMA)を用いて観察し、波長分散型X線分析(WDS)を用いて元素の定性分析を行い、検出した元素の定量分析を行った。
表2に、その結果を示す。
比較例1において、WC粉末とCo粉末とCr3C2粉末の配合割合を、WC:Co:Cr3C2の質量比が189:10:1となるように配合を変更し、その他の工程は、比較例1と同様な方法で、比較例の超硬合金2(「比較品2」という)を作製した。
表2に、比較品2について調査した定量分析結果を示す。
平均粒子径が1.0μmのWC粉末を硬質相用形成原料粉末として用い、また、平均粒子径が0.8μmのNi粉末を結合相形成用原料粉末として用い、さらに複炭化物として平均粒子径が1.0μmのCr3C2粉末を用い、WC粉末とNi粉末とCr3C2粉末を、WC粉末:Ni粉末:Cr3C2粉末の質量比が187:12:1になるように配合し、エタノールを主成分とするアルコールと混ぜ合わせ、比較例1と同様な条件で、アトライターによる湿式混合を行った。
その他の工程は、比較例1と同様な方法で、比較例の超硬合金3(「比較品3」という)を作製した。
表2に、比較品3について調査した定量分析結果を示す。
平均粒子径が1.0μmのWC粉末および平均粒子径が1.0μmのTiC粉末を硬質相形成用原料粉末として用い、また、平均粒子径が0.9μmのCo粉末と平均粒子径が0.8μmのNi粉末を結合相形成用原料粉末として用い、さらに複炭化物として平均粒子径が1.0μmのCr3C2粉末を用い、(WC粉末+TiC粉末)と(Co粉末+Ni粉末+Cr3C2粉末)を、(WC+TiC):(Co+Ni+Cr3C2)の質量比が88:12 になるように配合し、エタノールを主成分とするアルコールと混ぜ合わせ、比較例1と同様な条件で、アトライターにより湿式混合を行った。
その他の工程は、比較例1と同様な方法で、比較例の超硬合金4(「比較品4」という)を作製した。
表2に、比較品4について調査した定量分析結果を示す。
表3に、測定結果を示す。
表3に示す結果から、本発明品1〜4は、比較品1〜4に劣らないロックウエル硬度を示すことから、従来の超硬合金と同等の耐摩耗性を備えることがわかる。
腐食試験:
塩酸と純粋を混合し、pH1.8に調製した腐食液中に、試験片を浸漬し、経過時間毎の試験片の重量を測定することにより、経過時間毎の重量変化率(wt/%)を求め、重量変化率が少ないものを耐食性良と判定した。
表3に、浸漬してから140時間経過後、また、400時間経過後の重量変化率(wt/%)を示す。
なお、表3の耐食性評価の欄における「◎印」は、重量変化率(wt/%)が非常に少なく、極めて優れた耐食性を有することを示し、「○印」は、耐食性が十分満足できるものではないことを示し、「×印」は、耐食性が極めて劣ることを示す。
また、図3には、浸漬後、140時間経過するまでの重量変化率(wt/%)の推移をグラフ(横軸:浸漬時間(h),縦軸:(wt/%))として示した。
リチウムイオン二次電池の負極スラリー(pH5〜9の弱酸性〜弱アルカリ性)を腐食液とし、腐食液に試験片を半浴させ、24時間経過後また400時間経過後に浴から取り出し、浸漬部と未浸漬部の外観の変色の有無を観察し、変色の程度の大小によって耐食性の良否を評価した。
ここで、リチウムイオン二次電池用の負極スラリーは、次の組成からなる。
AB(アセチレンブラック):1%、
SBR(スチレン・ブタジエンゴム):1%、
CMC(カルボキシメチルセルロース):1%、
黒鉛:97%、
溶媒:水
なお、上記SBR(スチレン・ブタジエンゴム)は、合成ゴムの一種でベンゼンの水素原子の一つがビニル基に置換した炭化水素と不飽和炭化水素の共重体であり、上記CMC(カルボキシメチルセルロース)は、セルロースの骨格を構成するグルコピラノースモノマーのヒドロシキ基の一部にカルボキシメチル基を結合させたものである。
表3に、耐食性試験結果として、24時間経過後の変色の有無および400時間経過後の変色の有無を示す。
なお、表3の耐食性評価の欄における「◎印」は、耐変色性が非常に優れることを示し、「○印」は、表面濁りの発生があることを示し、「×印」は、耐変色性が劣ることを示す。
Claims (8)
- 塗布装置に搭載される塗布工具において、
被塗布材に接触または接近する塗布工具の少なくとも先端部1mm以内は超硬合金で構成され、
前記超硬合金は、Co、NiおよびFeのうちから選ばれる一種又は二種以上からなる結合相と、残部は、WC、TiCおよびWとTiとCの固溶体のうちから選ばれる一種又は二種以上からなる硬質相と不可避不純物からなり、前記結合相を構成するCo、Ni、Feの含有量合計が、超硬合金全体に占める含有割合は2.0質量%未満であることを特徴とする塗布工具。 - 前記超硬合金において、硬質相中の金属成分であるWが、超硬合金全体に占める含有割合は、40質量%以上80質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の塗布工具。
- 前記超硬合金について、X線回折法により回折ピーク強度を測定し、回折角2θが40°から43°の範囲に存在する回折ピーク強度のトップにあたるカウント数をIaとし、回折角2θが46°から50°の範囲に存在する回折ピーク強度のトップにあたるカウント数をIbとして求めた場合、Ib/Ia≦1の関係を満足することを特徴とする請求項1または2に記載の塗布工具。
- 前記超硬合金は、VC、NbC、TaC、TaNbCおよびCr3C2のうちから選ばれる一種または二種以上の炭化セラミックスを、硬質相としてさらに含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の塗布工具。
- 前記超硬合金は、TiN、TaNおよびNbNのうちから選ばれる一種または二種以上の窒化セラミックスを、硬質相としてさらに含有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の塗布工具。
- 前記塗布工具の先端部以外の箇所は、ステンレス鋼で構成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の塗布工具。
- 前記超硬合金は、ロックウエル硬度Aスケールで89.0HRA以上95.0HRA以下の硬さを有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の塗布工具。
- 請求項1乃至7のいずれか一項に記載の塗布工具を搭載した塗布装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2017125893A JP6930051B2 (ja) | 2017-06-28 | 2017-06-28 | 塗布工具及び塗布装置 |
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WO2022131194A1 (ja) * | 2020-12-16 | 2022-06-23 | Mmcリョウテック株式会社 | 塗布装置 |
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