JP2010248561A - 超硬合金 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】硬質相が主としてWCの粒子から構成され、結合相が主として金属Coから構成されるWC-Co系超硬合金であり、Co:0.2〜0.9質量%、Cr:0.2〜1.5質量%含有し、残部がWとCとの二元化合物及び不純物からなる。Coは、主として金属成分として存在する。WCの平均粒度が0.2μm以上0.7μm以下であり、WCの粒度の標準偏差σがσ≦0.2である。Coを上記範囲で含有することで靭性を高められる。Coを上記範囲で含有することで焼結性を高められ、焼結温度を低めにできる上に、Crを含有することで、WCの成長を効果的に抑制して、微細で均一的な粒度のWCが存在する超硬合金とすることができる。Crが金属成分として存在することで、Cr炭化物の存在による強度の低下を抑制することができる。
【選択図】図1
Description
《組成》
本発明超硬合金は、硬質相が主としてWCの粒子から構成され、結合相が主として金属Coから構成されるWC-Co系超硬合金であり、Co及び後述するCrを除く残部がWとCとの二元化合物と不可避的な不純物とにより構成される。更に後述するVを含む場合は、Co、Cr及びVを除く残部がWとCとの二元化合物と不可避的な不純物とにより構成される。WとCとの二元化合物は、WC、W2Cが挙げられる。
本発明超硬合金は、当該超硬合金に対してCoを0.2質量%以上含有することで靭性(例えば、破壊靱性)に優れる上に、WCの周囲を十分に覆うことができる。そのため、本発明超硬合金を製造するにあたり、焼結温度を通常の超硬合金と同程度、例えば、通常の減圧焼結と同程度の焼結条件で焼結を行っても緻密な超硬合金とすることができる。Coが0.2質量%未満では、WCの周囲を十分に覆いきれず焼結性が低下するため、焼結温度を高くする必要があり、焼結温度の高温化により、焼結時にWCの粒成長を促進して粗大なWCの発生を招く。そして、粗大な粒子の存在による強度の低下を招く。また、Coが少な過ぎると靭性も極端に低下する。Coが多いほど、靭性の向上、焼結性の向上に効果があるが、0.9質量%を超えると、硬度(室温から高温に亘る硬度)が低下し、特に、600℃以上の高温域での硬度の低下が著しい。Coの含有量を0.2質量%以上0.9質量%以下とすることで、焼結温度の高温化によるWCのオストワルド成長を抑制し、超硬合金中のWCの粒度を均一的にすることができる。Coの含有量は、0.2質量%以上0.6質量%以下がより好ましい。
Crを超硬合金に対して0.2質量%以上含有することで、WCの粒成長を効果的に抑えて粗大なWCの発生を低減し、微細で均一的な大きさのWCが均一的に存在する超硬合金を安定して製造することができる。また、Crを含有することで、超硬合金の耐酸化性を向上することができる。Crが多いほど、粒成長の抑制効果が高められるが、Crが多過ぎると、Cr炭化物として析出し易くなり、Cr炭化物の存在による強度の低下の要因となる。そこで、本発明超硬合金は、Crの含有量を0.2質量%以上1.5質量%以下とする。より好ましいCrの含有量は、0.2質量%以上0.9質量%以下である。
本発明超硬合金は、Co,Cr,(V)を除く残部がWとCとの二元化合物及び不可避的な不純物により構成される。WとCとの二元化合物のうち、特に、WCの含有量が当該超硬合金に対して97質量%以上である。このWCは、超硬合金中に粒状で存在して、硬質相として機能する。特に、WCは、微粒である上に均一的な大きさである。具体的には、WCの平均粒度が0.2μm以上0.7μm以下であり、粒度の標準偏差σが0.2以下である。平均粒度が上記範囲を満たし、かつ標準偏差が上記範囲を満たすことで、微細なWCにより硬度を高められると共に、粗大なWCが少ないことにより強度の低下を低減することができる。また、本発明超硬合金は、このような微細で均一的な組織を有することで、表面性状に優れる。平均粒度が0.2μm未満と小さ過ぎると、亀裂が進展し易く、靭性の低下を招き、平均粒度が0.7μm超であると、硬度の低下を招く。より好ましい平均粒度は、0.2μm以上0.4μm以下である。標準偏差σは小さい方が好ましく、特に下限を設けない。
本発明超硬合金は、高硬度、高靭性、及び高強度である。具体的には、HRA硬度が94以上96以下、破壊靱性が4MPa・m1/2以上、抗折力が1GPa以上であることが好ましい。HRA硬度が94以上であることで、耐摩耗性に優れ、HRA硬度が96以下であることで、過度な高硬度化による靭性の低下を低減できる。また、破壊靱性が4MPa・m1/2以上及び抗折力が1GPa以上であることで、各種の部材の製造にあたり、加工時の亀裂やチッピングを効果的に抑えられ、かつ高硬度な上に、高靭性及び高強度である超硬合金本来の優れた性能を具える部材を提供することができる。
超硬合金は、一般に、原料の準備→原料の混合・粉砕→乾燥→成形→焼結という工程で製造される。本発明超硬合金は、上記焼結後に、更にHIP(熱間静水圧焼結)を行うと共に、特定の原料の利用、及び特定の条件での混合・粉砕を行う。
原料のWC粉末は、超硬合金中のWCが微細な状態になり易いように、微細なものを利用することが好ましい。具体的には、平均粒度が0.1μm以上0.5μm以下のWC粉末が好ましい。0.1μm未満でも0.5μm超でも粒成長して粗大なWCが存在する超硬合金が形成され易い。
原料のCo粉末には、微細なWC粉末と均一的に混合され易いように、WC粉末と同程度の微細なものを利用することが好ましい。具体的には、平均粒度が0.2μm以上0.6μm以下のCo粉末が好ましい。0.2μm未満であると、Coが小さ過ぎることで再凝集し易くなってCoが均一的に分散されず、焼結性の低下や、焼結性の低下に伴う焼結温度の高温化によりWCの粒成長を促して、均一的な粒度分布が得られ難くなる。0.6μm超であると、微細なWC粉末と均一的に混合され難くなり、上述のようにCoが不均一に存在することによる焼結性の低下や粒度分布の不均一を招く。
上述したCrやV含有のWC粉末及びCo粉末に加えて、適宜カーボン粉末を添加することなどにより、超硬合金中における炭素(C)の総量を調整する。超硬合金中の炭素の総量が少な過ぎると、CoxWyCzが生成され易くなり、逆に多過ぎると、Coに固溶し切れず、WCとして析出されず、フリーカーボンとして超硬合金中に存在したり、Cr炭化物などが析出されて、強度の低下を招く。
上述した原料となる粉末を用意し、アトライター、ボールミル、ビーズミルといった回転翼を有する粉砕分散機により、混合・粉砕を行う。混合・粉砕の時間は10時間以上20時間以下が好ましい。特に、混合・粉砕の開始から5時間までの初期工程を高速回転(25r.p.m.以上)で行い、以降の混合・粉砕(以下、後工程と呼ぶ)を低速回転(25r.p.m.未満)で行うことが好ましい。初期工程で概ねの混合・粉砕を完了し、後工程では、主として分散を行う。このように混合・粉砕工程を多段にすることで、均一的な混合、分散を実現し易い。混合・粉砕工程の全体に亘って高速回転で行うと、Coの凝集が生じて分散状態が悪くなり、WCが成長し易くなるなど、組織の不均一化を招く。一方、混合・粉砕工程の全体に亘って低速回転で行うと、粉砕や混合が不十分で組織の不均一化を招く。
種々の原料粉末を用意して超硬合金を作製し、得られた超硬合金の組成、組織、機械的特性を調べた。また、この超硬合金から高圧水流加工用ノズルを作製し、ノズルの寿命を調べた。
原料として、平均粒度が0.5μmのWC粉末、平均粒度が0.2μm及び0.6μmのCo粉末、及びカーボン粉末を用意した。上記WC粉末として、当該WC粉末に対して、Crを0.2〜1.5質量%含有するもの、Crを0.2〜1.5質量%及びVを0.2質量%含有するものを用意した。上記CrやVを含有するWC粉末、Co粉末、及びカーボン粉末の合計質量に対して、Co粉末:0.2〜0.9質量%となるように、カーボン粉末:上記合計質量に対して炭素の含有量が、製造される各組成の超硬合金の理論炭素量に対してそれぞれプラス0.1質量%以上0.15質量%以下となるように添加量を調整し、残部をWC粉末とした。これらの原料粉末は、いずれも市販のものが利用できる。なお、試料No.1,2には、平均粒径が0.2μmのCo粉末、試料No.3〜5には、平均粒径が0.6μmのCo粉末を用いた。
比較として、原料にCr3C2,VC,Mo2Cを用いた試料、Cr3C2,VC,Mo2Cを用いていない試料を作製した。具体的には、原料として、平均粒度が0.7μmのWC粉末(CrやVを含有しないもの)、及びCo粉末、Mo2C粉末、VC粉末、Cr3C2粉末(いずれも平均粒度:0.7〜1.5μm)、並びにカーボン粉末を用意した。これらの原料粉末の添加量を適宜調整して、試料No.1〜5と同様に、混合・粉砕→造粒→乾燥→静水圧プレス→丸棒材の作製→焼結→HIPという工程を経て、超硬合金を得た。試料No.101〜106では、混合・粉砕の全時間に亘って、高速回転(25r.p.m.以上)で混合・粉砕を行い、焼結条件やHIP条件は、試料No.1〜5と同様とした。得られた超硬合金に試料No.1〜5と同様の加工を施して、高圧水流加工用ノズルを製作した。
得られた各超硬合金について、ICP(inductively-coupled plasma)分光分析及びX線回折を行い、組成及び組織を調べた。その結果を表1に示す。全ての試料のCoの含有量、試料No.1〜5におけるCr及びVの含有量、及び試料No.101〜106におけるCr,V,Moの含有量は、超硬合金に対する質量割合である。X線回折により、純金属Coのピーク波形からずれた位置にピーク波形が得られ、かつCoとWとの化合物、Cr炭化物、V炭化物のピーク波形が検出限界により得られない場合、Cr,Vは、Co中やWC中に固溶した状態で存在すると判断する。また、X線回折により、WCのピーク波形が得られ、かつW2Cのピーク波形が検出限界により得られない場合、WとCとの二元化合物は全てWCとして存在すると判断する。なお、超硬合金の組成の分析は、上記ICP分光分析の他、Co滴定などを利用することができる。また、配合原料の組成は、超硬合金の組成に実質的に等しい。
得られた各超硬合金について、組織観察を行い、WCの平均粒度、粒度の標準偏差σ、粒度(粒径)が0.8μm以上であるWCの面積割合を求めた。その結果を表2に示す。組織観察は、以下のように行った。各超硬合金を任意に切断して断面をとり、この断面を研削した後、#3000までのバフ研磨を施した。研磨した面を約5000倍の倍率で、FESEM(Field Emission Scanning Electron Microscope)によるEBSD(Electron Back-Scatter Diffraction)法を用いて観察した。観察は、研磨した面に対して任意の複数の視野(ここでは、1視野:180μm2で3視野)を選択して、視野ごとに行った。各視野中に存在する全てのWCの結晶粒について、結晶方位毎に色別(マッピング)を行い、結晶粒径を視覚的に把握できるようにした。得られたマッピング像に画像解析を行い、3つの視野に存在する全てのWCについてそれぞれ面積の円相当径を求め、この円相当径をWCの粒度(直径)とし、3つの視野に存在する全てのWCの粒度の平均を超硬合金の平均粒度とする。上記粒度の測定には、市販のEBSD装置を用いることができる。また、3つの視野に存在する全てのWCについて粒度の標準偏差を求め、この標準偏差を超硬合金の標準偏差σとする。更に、3つの視野に存在する全てのWCについて、粒度が0.8μm以上であるWCの合計面積S0.8WCを求め、3つの視野の合計面積Sfに対する面積割合R(%)=(S0.8WC/Sf)×100を求め、この割合Rを超硬合金におけるWCの面積割合Rとする。
得られた各超硬合金について、HRA硬度、破壊靭性(KIC)、抗折力を測定した。その結果を表2に示す。HRA硬度及び抗折力は、室温で市販の装置を用いて測定した。破壊靱性(KIC)は、ビッカース法に基づく測定が可能な市販の装置を用いて測定した。
作製したノズルを用いて、以下のようにして寿命を調べた。その結果を表2に示す。砥粒に#120のガーネットを用い、水圧:300MPaで鉄板を切断する。一定時間ごとにノズルの貫通孔の直径を測定し、摩耗による上記直径の変化を調べる。初期の貫通孔の直径φ0.5mmに対して0.1mm増加するまで、即ち、貫通孔の直径が0.6mmになるまで鉄板を切断し、直径φが0.6mmになった時点の時間を寿命として評価した。
Claims (6)
- Coを0.2質量%以上0.9質量%以下、Crを0.2質量%以上1.5質量%以下含有し、残部がWとCとの二元化合物及び不純物からなり、
前記Coの少なくとも一部は、金属として存在しており、
前記WとCとの二元化合物のうち、WCの平均粒度が0.2μm以上0.7μm以下であり、
前記WCの粒度の標準偏差σがσ≦0.2であることを特徴とする超硬合金。 - 粒度が0.8μm以上であるWCの面積割合が当該超硬合金に対して5%以下であることを特徴とする請求項1に記載の超硬合金。
- 前記WとCとの二元化合物は、主としてWCであり、
W2Cを含む場合、体積割合で、W2C/(WC+W2C)≦0.005以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の超硬合金。 - 前記超硬合金のHRA硬度が94以上96以下、破壊靱性(KIC)が4MPa・m1/2以上、抗折力が1GPa以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の超硬合金。
- 更に、Vを0.2質量%以下含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の超硬合金。
- Cr炭化物及びV炭化物が、X線回折により検出されないことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の超硬合金。
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