JP2009097081A - 超硬合金および切削工具ならびにミニチュアドリル - Google Patents
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Abstract
【課題】 高強度を有する超硬合金および切削工具ならびにミニチュアドリルを提供する。
【解決手段】 硬質相成分として炭化タングステンを、結合相成分としてコバルトをそれぞれ含み、かつ粒成長抑制剤を含む超硬合金であって、炭化タングステン粒子3の平均粒径が0.2μm以下であるとともに、断面の15000倍の電子顕微鏡写真における10μm角の視野中において最大径0.2μm以上のコバルトプール5aが存在し、該コバルトプール5aに接している炭化タングステン粒子3aは、コバルトプール5aに接していない炭化タングステン粒子3bよりも粒径が大きい。
【選択図】 図1
【解決手段】 硬質相成分として炭化タングステンを、結合相成分としてコバルトをそれぞれ含み、かつ粒成長抑制剤を含む超硬合金であって、炭化タングステン粒子3の平均粒径が0.2μm以下であるとともに、断面の15000倍の電子顕微鏡写真における10μm角の視野中において最大径0.2μm以上のコバルトプール5aが存在し、該コバルトプール5aに接している炭化タングステン粒子3aは、コバルトプール5aに接していない炭化タングステン粒子3bよりも粒径が大きい。
【選択図】 図1
Description
本発明は、超硬合金および切削工具ならびにミニチュアドリルに関し、特に、硬質相成分として炭化タングステンを、結合相成分としてコバルトをそれぞれ含み、かつ粒成長抑制剤を含む超硬合金、および小径エンドミル、小径ドリル、小径パンチなどの切削工具、ならびにミニチュアドリルに関する。
炭化タングステン(WC)/コバルト(Co)系超硬合金は耐磨耗性、高温強度および高弾性率に優れているという理由から、金属の切削加工やプリント基板加工用として用いられており、特に、炭化タングステン粒子(以下、WC粒子ということもある)を主体として、チタン、ニオブ、ジルコニウム、クロム、バナジウム、およびタンタル等のいわゆるβ相(β金属炭化物)を添加し、かつ結合相としてコバルトを含有せしめた超硬合金が広く用いられている。
上述のWC/Co系超硬合金では、結合金属であるCo相の量と、WC粒子の粒度、そして、WC粒子間の距離によって機械的な特性が影響を受けるようになり、一般的に、WC粒子が微細であるほど機械的特性、特に強度が大きくなる。これに伴い、WC/Co系の超硬合金の製造時、粒子成長抑制のために炭化バナジウム(VC)、炭化クロム(Cr3C2)、炭化タンタル(TaC)、および炭化ニオブ(NbC)のうち少なくとも1種が粒成長抑制剤として添加されている。一方でWC粒子の微粒化に伴い焼結体中のCo相の厚さが薄くなるため破壊靱性は低下する。一般にCo相の量を増加させることで破壊靱性の低下は抑制することができるが硬度が低下するため、用途により最適な組成を決定する必要がある。
また、ミニチュアドリル用の超硬合金としては、特許文献1に記載されるようなものが知られている。この特許文献1には、平均粒径0.2〜0.8μmのWC粒子を60〜85体積%と、平均粒径1.2〜3μmの周期律表第4a、5a、6a族金属の少なくとも1種の炭化物、窒化物または炭窒化物からなるβ相粒子を5〜30体積%と、からなる硬質相と、前記硬質相の間を鉄族金属の少なくとも1種を主体とする結合相5〜20体積%にて結合してなるもので、結合相が凝集した結合相プールの最大粒径が1μm以下である超硬合金が開示されている。
この超硬合金は、平均粒径0.1〜0.8μmのWC原料粉末と、平均粒径1〜1.3μmの周期律表第4a、5a、6a族金属の少なくとも1種の炭化物、窒化物または炭窒化物原料粉末と、平均粒径0.1〜1μmの少なくとも1種の鉄族金属原料粉末とを12〜36時間混合粉砕した後、これを成形し、1400〜1450℃にて1〜2時間真空焼成した後、前記焼成温度より20〜50℃低い温度にて0.5〜1時間、50〜100MPaの圧力で熱間静水圧処理して製造することが記載されている。
特開2004−190118号公報
しかしながら、特許文献1記載の超硬合金では、WC粒子が平均粒径0.2〜0.8μmであり、コバルトプール(結合相プール)の最大粒径が1μm以下であることが記載されているものの、WC粒子の平均粒径が0.4〜0.6μmであり、コバルトプールの最大径が0.2μm以上であり、このような超硬合金では、WC粒子が0.4μm以上と大きいため、近年のミニチュアドリルの小径化に対応できないという問題があった。
すなわち、近年ではミニチュアドリルの小径化が進み、直径300μm以下、さらには100μm以下にまで小型化が進んでおり、これに伴いミニチュアドリル用の超硬合金のWC粒子も0.5μm以下、さらには0.3μm以下と微粒になってきている。
ミニチュアドリルの小径化に対応するにはWC原料粉末を小さくする必要があるが、特許文献1に記載されるように、WC粒子が0.2μm以下と小さくなると、WC粒子同士の凝集が生じて結合相が凝集し易くなり、粗大なコバルトプールが生成し、このコバルトプールを起点としてクラックが進展するため、超硬合金の強度が低下し、これによりミニチュアドリルが折損し易くなるという問題があった。
本発明は、高強度を有する超硬合金および切削工具ならびにミニチュアドリルを提供することを目的とする。
本発明者等は、炭化タングステンの平均粒径を0.2μm以下と小さくし、任意断面の15000倍の電子顕微鏡写真における10μm角の視野中において最大径0.2μm以上のコバルトプールが存在した場合、該コバルトプールに接している炭化タングステン粒子の粒径を、コバルトプールに接していない炭化タングステン粒子の粒径よりも大きくなるように制御することにより、コバルトプールを起点とするクラックの進展を、コバルトプールに接している粗大な炭化タングステン粒子により抑制できることを見出し、本発明に至った。
即ち、本発明の超硬合金は、硬質相成分として炭化タングステンを、結合相成分としてコバルトをそれぞれ含み、かつ粒成長抑制剤を含む超硬合金であって、前記炭化タングステン粒子の平均粒径が0.2μm以下であるとともに、断面の15000倍の電子顕微鏡写真における10μm角の視野中において最大径0.2μm以上のコバルトプールが存在し、該コバルトプールに接している前記炭化タングステン粒子は、前記コバルトプールに接していない前記炭化タングステン粒子よりも粒径が大きいことを特徴とする。
本発明の超硬合金では、炭化タングステンの平均粒径が0.2μm以下であるため、コバルトが凝集し易く、最大径0.2μm以上のコバルトプールが存在しやすいが、このようなコバルトプールが生成したとしても、このコバルトプールに接して粗大な炭化タングステン粒子が存在するため、コバルトプールからクラックが進展しようとしても、粗大な炭化タングステン粒子によりクラックの進展が抑制され、強度を向上できる。
また、本発明の超硬合金は、断面の15000倍の電子顕微鏡写真における10μm角の視野中において、前記最大径0.2μm以上のコバルトプールが5〜30個存在することを特徴とする。このような超硬合金では、炭化タングステン粒子の平均粒径が0.2μm以下であるため、コバルトが凝集し易く、最大径0.2μm以上のコバルトプールが存在しやすいが、10μm角の視野中において30個以下であるため、高い強度、硬度を維持できる。
また、本発明の超硬合金は、前記コバルトプールに接している前記炭化タングステン粒子の平均粒径が0.3μm以上であり、かつ、前記コバルトプールに接していない前記炭化タングステン粒子の平均粒径は0.1μm以下であることを特徴とする。
このような超硬合金では、コバルトプールに接していない炭化タングステン粒子の平均粒径は0.1μm以下であるため、強度および硬度をさらに向上することができる。また、コバルトプールに接していない炭化タングステン粒子の平均粒径が小さくなると、破壊靱性が低下する傾向にあるが、本発明の超硬合金では、最大径0.2μm以上のコバルトプールに接している炭化タングステン粒子の平均粒径が0.3μm以上であるため、コバルトプールに接していない炭化タングステン粒子の平均粒径は0.1μm以下であるにもかかわらず、最大径0.2μm以上のコバルトプールに接している炭化タングステン粒子により、コバルトプールを起点とするクラックの進展を有効に妨げ、強度のみならず破壊靱性をも向上することができる。
本発明の切削工具は、上記超硬合金からなることを特徴とする。これにより、強度および硬度に優れ、折損を抑制できる切削工具を得ることができる。
本発明のミニチュアドリルは、上記超硬合金からなることを特徴とする。これにより、近年におけるミニチュアドリルの小径化に対応することができ、直径300μm以下、さらには100μm以下とでき、このように小径化したとしても、強度および硬度に優れ、折損を抑制できるミニチュアドリルを得ることができる。
本発明の超硬合金では、炭化タングステン粒子の平均粒径が0.2μm以下であるため、コバルトが凝集し易く、最大径0.2μm以上のコバルトプールが存在しやすいが、このようなコバルトプールが生成したとしても、このコバルトプールに接して粗大な炭化タングステン粒子が存在するため、コバルトプールからクラックが進展しようとしても、粗大な炭化タングステン粒子によりクラックの進展が抑制され、その結果、強度を向上できる。
このような超硬合金を切削工具やミニチュアドリルに適用することにより、近年の小型薄型化に対応でき、小型薄型化した場合でも、強度および硬度を向上でき、切削性能を向上できるとともに、長寿命を達成できる切削工具、並びに、例えばプリント配線板加工に優れたミニチュアドリルを得ることができる。
以下、本発明を詳述する。本発明の超硬合金は、図1に示すように、硬質相と結合相で構成されており、硬質相は炭化タングステン粒子(以下、WC粒子ということもある)3からなり、結合相5はCoを主成分とするもので、Coは全量中に5〜15質量%の割合で含有されている。
また、結合相5の強化の点で、超硬合金中に含有されるバナジウムを炭化物(VC)換算で0.1〜1.5質量%、クロムを炭化物(Cr3C2)換算で0.1〜2.5質量%含有することが望ましい。このバナジウム、クロムは、WCに対して粒成長抑制剤としての機能を備えている。これらの粒成長抑制剤は、結合相5中のCoに固溶している。
尚、図2は、図1の模式図である。硬質相であるWC粒子3の平均粒径は0.2μm以下であり、特に高強度化という観点から、0.15μm以下であることが望ましい。WC粒子3は三角柱状であり、見る角度によって三角形や四角形に見える。このようなWC粒子3の平均粒径は、走査電子顕微鏡(SEM)写真においてWC粒子3の占める面積を測定して平均値を算出し、WC粒子3が球状と仮定したときの直径に換算して、平均粒径を得ることができる。WC粒子3の占める面積は、例えば、画像ソフト(日本ローパー:ImagePro Plus)により測定できる。
そして、本発明の超硬合金は、図1に示したように、断面の15000倍の電子顕微鏡写真における10μm角の視野中において、最大径0.2μm以上のコバルトプール5aが存在し、該コバルトプール5aに接しているWC粒子3a(以下、粗大WC粒子3aという場合がある)は、コバルトプール5aに接していないWC粒子3bよりも粒径が大きいことを特徴とする。
最大径0.2μm以上のコバルトプール5aに接しているWC粒子3aがコバルトプール5aに接していないWC粒子3bよりも大きいか否かは、上記電子顕微鏡から目視にて確認できるが、本発明では、ある任意の断面のコバルトプール5aに接しているWC粒子3aと、コバルトプール5aに接していないWC粒子3bとの最大幅で比較し、WC粒子3aの最大幅が、WC粒子3bの最大幅よりも1.2倍より大きい場合に、WC粒子3aがWC粒子3bよりも粒径が大きいと判定した。
本発明の超硬合金では、最大径0.2μm以上のコバルトプール5aに接しているWC粒子3aの平均粒径は0.3μm以上であることが望ましい。これにより、コバルトプール5aを起点としたクラックの進展を有効に止めることができ、強度のみならず、破壊靱性をも向上することができる。WC粒子3aの平均粒径は、2μm以下であることが望ましい。これによりWC粒子3aが破壊源となることを抑制し、強度低下を抑制できる。WC粒子3aの平均粒径は、特に0.4〜1.5μmであることが望ましい。
また、最大径0.2μm以上のコバルトプール5aには、少なくとも1個の粗大WC粒子3aが接しているが、粗大でないWC粒子3aが接している場合があり、最大径0.2μm以上のコバルトプール5aに接しているWC粒子3aの平均粒径は、粗大WC粒子3aのみならず、粗大でないWC粒子3aも含めた平均粒径である。
本発明の超硬合金では組織中の大部分を占めている、コバルトプール5aに接していないWC粒子3bの平均粒径を0.1μm以下とすることで、強度、硬度を向上することができる。
超硬合金中のWC粒子3の平均粒径が0.2μm以下であるため、その原料粉末は当然0.2μm以下となり、原料混合時にコバルトが凝集し易く、焼結後に最大径0.2μm以上のコバルトプール5aが存在する。ここで、コバルトプール5aの最大径とは、超硬合金のある任意の断面では、WC粒子3の粒界に不定形のコバルトが存在するが、その最大長さをコバルトプール5aの最大径とした。
最大径0.2μm以上のコバルトプール5aは、断面の15000倍の電子顕微鏡写真における10μm角の視野中において、5〜30個存在することが望ましい。10μm角の視野中において30個以下であるため、高い硬度を維持できる。コバルトプール5aが5個よりも少ない場合には、コバルトプール5aの存在に伴い生成する粗大WC粒子3aが少ないため、クラックの進展抑制効果が小さく、破壊靱性、強度向上効果が小さい。
本発明の超硬合金を製造するに当たっては、原料として0.2μm以下のWC粉末、Co粉末、および粒成長抑制剤としてのVC粉末とCr3C2粉末、炭素量調整のために、カーボンブラック(C)を準備する。尚、粒成長抑制剤としては、VC粉末またはCr3C2粉末のいずれか一方を用いても良い。ここで、WC粉末、Co粉末は、WCの微粒化とCoの均一分散のため、WとCoの水溶性塩を水に溶かして乾燥し、熱処理して炭化することによって生成したWC−Co複合粉末を使用することが望ましい。
この場合に、最大径0.2μm以上のコバルトプール5aが、断面の15000倍の電子顕微鏡写真における10μm角の視野中において、5〜30個存在するためには、WとCoの水溶性塩を水に溶かして乾燥した後、酸化し、一旦WO3とCoO粉末を作製し、これを十分に、例えば72時間以上混合粉砕し、この後、炭化し、粉砕したWC−Co複合粉末を使用することが望ましい。
また、VC粉末とCr3C2粉末については、平均粒径1.0μm以下であることが望ましく、酸素含有量が0.5質量%以下であることが望ましい。WC粉末については、平均粒径0.2μm以下、酸素含有量が0.2質量%以下であることが望ましい。酸素含有量を低下させるには、WC粉末、VC粉末、Cr3C2粉末について、例えば炭化処理時の炭化雰囲気を強くすることで達成できる。酸素含有量については、赤外吸収法により測定できる。
尚、粒成長抑制剤としては、炭化タンタル(TaC)および/または炭化ニオブ(NbC)を用いることもできる。この場合にも、平均粒径1.0μm以下であることが望ましく、酸素含有量が0.5質量%以下であることが望ましい。
そして、WC粉末、Co粉末、カーボンブラック(C)をアセトンやプロパノールなどの有機溶剤を用いて所定時間湿式混合粉砕し、この後、これにVC粉末とCr3C2粉末を添加し、さらに、所定時間湿式混合粉砕する。WC粉末、Co粉末の混合粉砕によりCoの凝集が一部生じ、その周囲にWC粉末が存在する組織となり、この状態で粒成長抑制剤が添加されるため、Co凝集体の周囲のWC粉末の周囲には粒成長抑制剤を十分に供給できず、焼成時にCo凝集体に接するWC粉末が粒成長することになる。
湿式混合粉砕した後、乾燥し、プレス成形などの公知の成形方法により成形後、焼成し、さらにその後圧力をかけて(HIP)焼成する。なお、有機溶剤については、酸素の含有量の少ないアセトンやプロパノールが望ましい。また、有機溶剤を用いての湿式混合粉砕の回数も最小限とし、有機溶剤に浸漬する時間も最小とすることが望ましい。焼成は、焼成炉内を真空度10−1〜10−3Torrの真空とし1250〜1390℃の範囲で10分〜2時間焼成し、引き続き、焼成炉内をAr雰囲気で1〜10MPaの圧力とし、1230〜1380℃で(HIP)焼成する。
真空雰囲気での焼成は、昇温途中の925〜975℃で0.5〜2時間保持することが望ましい。焼結性の高い微粒の原料を925〜975℃という低温で、0.5〜2時間保持することにより、コバルトが流動してWC粒子の再配列が行われる前に、WC同士が焼結し骨格を形成し、その後高温で焼成することで凝集したコバルトの周囲のWC粒子3aを粒成長させ、コバルトプールに接していないWC粒子3bの平均粒径を0.1μm以下と微粒にできるとともに、コバルトプールに接しているWC粒子3aの平均粒径を、0.3μm以上と大きくできる。
本発明の切削工具は、上記超硬合金からなるもので、例えば、小径エンドミル、小径ドリル、小径パンチなど高硬度かつ高強度で、耐折損性が求められる切削工具、特にはミニチュアドリルに好適に用いることができる。特に、小径棒状に加工した超硬合金の直径が300μm以下、特には200μm以下、さらには100μm以下の場合には、折損し易くなるため、本発明の超硬合金を好適に用いることができる。さらに、小径棒状部分(直径が300μm以下)が、長さ1mm以上の場合に本発明を好適に用いることができる。
水溶性のタングステン原料(タングステン酸アンモニウム)、コバルト原料(硝酸コバルト)を、原料100gに対し水500mlの比で溶解させ、スプレードライヤにて乾燥させた。得られたスプレードライ粉末100gを、窒素雰囲気中において500℃で熱分解処理を行い、WO3−CoO複合酸化物粉末を得た。これらの複合酸化物粉末を回転ミルを用いて、表1に示す時間混合粉砕した。
この後、CO/H2雰囲気中で800℃の温度で浸炭処理を行い、WC−Co複合炭化物粉末(WC92質量%、Co8質量%)を得た。このWC−Co複合炭化物粉末は、WC粉末の周囲にCoが付着した構造であり、WC原料粉末の平均粒径をSEM画像の画像解析により求め、表1に記載した。尚、試料No.5については浸炭処理を830℃、試料No.6については浸炭処理を900℃で行った。
このWC−Co複合炭化物粉末100質量部と、焼結体のカーボン量を調整するために、混合粉末中の総カーボン量を5.75質量部となるように、微量のカーボンスラリーを添加した後、プロパノールからなる有機溶剤を加えてボールミル中で湿式混合処理を24時間行い、この後、WC−Co複合炭化物粉末100質量部に対して、平均粒径0.5μmのVC粉末を0.3質量部、平均粒径1μmのCr3C2粉末を0.6質量部添加し、湿式混合処理を168時間行った。
ボールミルで混合した原料スラリーは、パラフィンワックスを添加してからスプレードライで造粒乾燥し、プレス成形した後、真空焼成し、熱間静水圧処理(HIP)を行い、超硬合金焼結体を得た。なお、真空焼成までの昇温速度:5℃/min、真空焼成条件は時間:1時間、温度:1350℃、熱間静水圧処理は温度:1340℃、アルゴンガスで6MPaの条件で行った。
得られた焼結体の断面を研磨後、走査電子顕微鏡(SEM)の15000倍の写真により焼結体中のWC粒子の平均粒径を評価した。評価は、画像解析ソフト(日本ローパー製:ImagePro Plus)により行った。さらに、ビッカース硬度を加重9.8Nの条件で評価し、抗折強度は、スパン20mm、3点曲げにて評価した。試料形状を直径2mm、長さ30mmの円柱形状とした。
焼結体のある任意の断面の15000倍の電子顕微鏡写真における10μm角の視野中において、最大径0.2μm以上のコバルトプール数を算出した。尚、本発明の試料では、0.5μm以上のコバルトプールは存在していなかった。また、試料No.7は、熱分解処理をせずに浸炭処理を760℃で行った試料である。
また、最大径0.2μm以上のコバルトプールに接しているWC粒子3aが、コバルトプールに接していないWC粒子3bよりも粒径が大きいかどうか、15000倍の電子顕微鏡写真により、ある任意の断面のWC粒子3aと、WC粒子3bとの最大幅で比較し、WC粒子3aの最大幅が、WC粒子3bの最大幅よりも1.2倍より大きい場合に、WC粒子3aがWC粒子3bよりも粒径が大きいと判断し、粗大WC粒子有りと判定した。これらの結果を表1に記載した。
この表1によれば、本発明の試料No.1〜4から、WO3−CoO複合酸化物粉の粉砕時間を長くすることにより、最大径0.2μm以上のコバルトプール数が少なくなることが判る。これにより、最大径0.2μm以上のコバルトプール数をWO3−CoO複合酸化物粉の粉砕時間で制御できることが判る。
また、本発明の試料No.1〜5、7より、最大径0.2μm以上のコバルトプールに接して粗大WC粒子が存在する場合には、粗大WC粒子が存在しない場合よりも硬度、強度が向上することが判る。
実施例1と同様にしてWO3−CoO複合酸化物粉末を得た。これらの複合酸化物粉末をアトライタを用いて50時間粉砕した。この後、得られたWO3−CoO複合酸化物粉末をCO/H2雰囲気中で750℃の温度で浸炭処理を行い、WC−Co複合炭化物粉末(WC92質量%、Co8質量%)を得た。このようにして得られたWC−Co複合炭化物粉末を用いて、実施例1と同様の処理を行い、焼結体を得て評価した。尚、試料No.8、9、11、12では、真空焼成時に950℃で1時間保持した。
得られた焼結体の断面を研磨後、走査電子顕微鏡(SEM)の15000倍の写真により、実施例1と同様に焼結体中の最大径0.2μm以上のコバルトプールに接しているWC粒子(粗大WC粒子)と、コバルトプールに接していないWC粒子の平均粒径を評価した。また、同様に焼結体のある任意の断面の15000倍の電子顕微鏡写真における10μm角の視野中において、最大径0.2μm以上のコバルトプール数を計数した。さらに、ビッカース硬度を加重9.8Nの条件で評価し、抗折強度は、スパン20mm、3点曲げにて評価した。試料形状は直径2mm、長さ30mmの円柱形状とした。また、破壊靱性はIF法により49Nの条件で評価した。これらの結果を表2に記載した。
この表2によると、真空焼成時に950℃で1時間保持すると、最大径0.2μm以上のコバルトプールに接触しないWC粒子3bの平均粒径は0.1μm以下と小さく、硬度、強度を向上できるとともに、コバルトプールに接触するWC粒子3aの平均粒径を0.3μm以上と大きくすることができ、破壊靱性をも向上できることがわかる。
3:WC粒子
3a:最大径0.2μm以上のコバルトプールに接触するWC粒子
3b:最大径0.2μm以上のコバルトプールに接触しないWC粒子
5:結合相
5a:最大径0.2μm以上のコバルトプール
3a:最大径0.2μm以上のコバルトプールに接触するWC粒子
3b:最大径0.2μm以上のコバルトプールに接触しないWC粒子
5:結合相
5a:最大径0.2μm以上のコバルトプール
Claims (5)
- 硬質相成分として炭化タングステンを、結合相成分としてコバルトをそれぞれ含み、かつ粒成長抑制剤を含む超硬合金であって、炭化タングステン粒子の平均粒径が0.2μm以下であるとともに、断面の15000倍の電子顕微鏡写真における10μm角の視野中において最大径0.2μm以上のコバルトプールが存在し、該コバルトプールに接している前記炭化タングステン粒子は、前記コバルトプールに接していない前記炭化タングステン粒子よりも粒径が大きいことを特徴とする超硬合金。
- 断面の15000倍の電子顕微鏡写真における10μm角の視野中において、前記最大径0.2μm以上のコバルトプールが5〜30個存在することを特徴とする請求項1記載の超硬合金。
- 前記コバルトプールに接している前記炭化タングステン粒子の平均粒径が0.3μm以上であり、かつ、前記コバルトプールに接していない前記炭化タングステン粒子の平均粒径が0.1μm以下であることを特徴とする請求項1または2記載の超硬合金。
- 請求項1乃至3のうちいずれかに記載の超硬合金からなることを特徴とする切削工具。
- 請求項1乃至3のうちいずれかに記載の超硬合金からなることを特徴とするミニチュアドリル。
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