JP2008202074A - 微粒超硬合金 - Google Patents
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Abstract
【課題】粗大WC粒子の発生が少なく、硬さ及び強度に優れた微粒超硬合金を提供する事である。
【解決手段】WC基超硬合金のCo含有量は、質量%で、2%≦Co≦13%、Co含有量に対するCr含有量は、2%≦Cr/Co≦15%、Nd、Sm、Yから選択される1種以上の希土類元素を含有し、残部がWC及び不可避不純物からなり、WCの平均粒径は0.8μm以下であるWC基超硬合金において、該希土類元素はCo相内に固溶した状態で存在し、Co含有量に対する該希土類元素の含有量は、0.2〜2.0質量%であり、粒径が2μm以上の粗大WC粒子数は、300個/mm2以下であることを特徴とする微粒超硬合金である。
【選択図】なし
【解決手段】WC基超硬合金のCo含有量は、質量%で、2%≦Co≦13%、Co含有量に対するCr含有量は、2%≦Cr/Co≦15%、Nd、Sm、Yから選択される1種以上の希土類元素を含有し、残部がWC及び不可避不純物からなり、WCの平均粒径は0.8μm以下であるWC基超硬合金において、該希土類元素はCo相内に固溶した状態で存在し、Co含有量に対する該希土類元素の含有量は、0.2〜2.0質量%であり、粒径が2μm以上の粗大WC粒子数は、300個/mm2以下であることを特徴とする微粒超硬合金である。
【選択図】なし
Description
本願発明は、WC基超硬合金に関し、WCの平均粒径が0.8μm以下である希土類元素含有微粒超硬合金に関する。
WC基超硬合金に希土類元素を添加すること、添加方法が特許文献1〜3に開示されている。また微粒超硬合金の粗大粒子と強度の関する技術が、特許文献4、5に開示されている。
本願発明が解決しようとする課題は、粗大WC粒子の発生が少なく、硬さ及び強度に優れた微粒超硬合金を提供する事である。
本願発明は、WC基超硬合金のCo含有量は、質量%で、2≦Co≦13、Co含有量に対するCr含有量は、2≦Cr/Co≦15、Nd、Sm、Yから選択される1種以上の希土類元素を含有し、残部がWC及び不可避不純物からなり、WCの平均粒径は0.8μm以下であるWC基超硬合金において、該希土類元素はCo相内に固溶した状態で存在し、Co含有量に対する該希土類元素の含有量は、0.2〜2.0質量%であり、粒径が2μm以上の粗大WC粒子数は、300個/mm2以下であることを特徴とする微粒超硬合金である。上記の構成を採用することにより、微粒のWC粒子の分散性を向上させ、粗大なWC粒子数を減少させた、硬さ及び強度に優れた微粒超硬合金を実現できる。
本願発明の微粒超硬合金は、微粒超硬合金の飽和磁化値をR(μTm3/kg)、202×Co量(質量%)/100の値をS(μTm3/kg)、とした時、飽和磁化比R/S値が、0.80≦R/S≦0.89であることが好ましく、希土類元素が存在する領域の酸素量が0〜5質量%であることが好ましい。
本願発明の微粒超硬合金は、粗大WC粒子の発生が少なく、硬さ及び強度に優れた微粒超硬合金を提供する事ができた。
本願発明の微粒超硬合金は、WC粒子の平均粒径が0.8μmを超えて大きくなると、微粒超硬合金の硬さが大きく低下し、微粒超硬合金として耐摩耗性が大幅に低下する。従って、WCの平均粒径は0.8μm以下に規定する。Coは合金中で結合相を形成し、強度を向上させる働きがあるが、その含有量が質量%で2%未満であると微粒超硬合金として必要な強度が確保できず、耐折損性が極端に低下する。一方、Coの含有量が13%を超えて多いと、結合相が多くなりすぎ、微粒超硬合金として必要な硬さが確保できず、耐摩耗性が極端に低下する。従って、Coの含有量は質量%で、2≦Co≦13に規定する。Crは結合相成分であるCoに固溶することにより、焼結中のWC粒子の粒成長を抑制する効果があるが、Cr含有量が結合相に対する質量%で2%未満では、合金の焼結時におけるWC粒子の粒成長を十分に抑制できず、硬さが低下し、耐摩耗性が極端に低下する。反対に、Cr含有量が15%を超えて多いと、Co中にすべてのCrが固溶しきれず、合金中にCrと他の元素と化合物を形成し、合金の強度を著しく低下させる。従って、Crの含有量は、結合相に対する質量%で、2≦Cr/Co≦15、とする。
微粒超硬合金は、Co相が溶解して液相となった焼結温度付近におけるWC粒子の異常粒成長による粗大なWC粒子の生成が問題となっている。しかし、Crの含有によるWC粒子の粒成長抑制効果では不十分である。本願発明は、Nd、Sm、Yから選択される1種以上の希土類元素を含有することにより、このWC粒子の異常粒成長が効果的に抑制され、希土類元素を含有しない場合に比べて、粗大なWC粒子の生成が著しく抑制された高強度な合金が得られる。これは、希土類元素を含有させることにより、合金の焼成中に希土類元素のCo相中への固溶及びWC/Co界面への偏析が起こる。この希土類元素の効果により、微粒超硬合金を焼成するときに、原料粉末の混合及び粉砕過程により粉砕されて酸素元素が吸着した活性なWC粉末がCoへ固溶及び、再析出する過程で巨大粒子化するWCの異常成長過程が抑制されるため、粒径が2μm以上の粗大なWC粒子が生成され難くなると考えられる。また、希土類元素がCo相中に固溶していることにより、Co自体の機械強度と耐熱性が高まる効果がある。微粒超硬合金への希土類元素の含有は、Co相へ固溶出来る量である事が重要であり、従来の技術では、含有した希土類元素の一部が原料粉末の混合中等に酸化し、合金中に酸化物として存在することにより、合金の焼結性を低下させ、合金の強度を低下させる為、希土類元素の含有効果を十分に発揮させる事が出来る量を含有出来なかった。しかし、本願発明は、希土類元素をCoとの化合物の形で含有させる事により、希土類元素の酸化を極力抑え、希土類元素の含有効果を十分に発揮出来る量を含有させる事に成功した。希土類元素の含有量がCo相に対する質量%で0.2%未満では、希土類元素の含有効果が小さく、粗大なWC粒子の生成が十分に抑制できない。一方、含有量がCo相に対する質量%で2%を超えて多いと、Co相外に析出する希土類元素量が著しく増加し、他の元素と化合物等を多量に生成し、合金の強度を著しく低下させる。従って、希土類元素の含有量はCo相に対する質量%で0.2〜2.0%とする。更に、粒径が2μm以上の粗大WC粒子が300個/mm2を超えて多くなると、粗大WC粒子が合金中の破壊の起点となる確率が高くなり、強度が低下し、強度のばらつきが大きくなる。従って、合金の組織中における粒径2μm以上の粗大WC粒子数は、300個/mm2以下とする。
微粒超硬合金は、Co相が溶解して液相となった焼結温度付近におけるWC粒子の異常粒成長による粗大なWC粒子の生成が問題となっている。しかし、Crの含有によるWC粒子の粒成長抑制効果では不十分である。本願発明は、Nd、Sm、Yから選択される1種以上の希土類元素を含有することにより、このWC粒子の異常粒成長が効果的に抑制され、希土類元素を含有しない場合に比べて、粗大なWC粒子の生成が著しく抑制された高強度な合金が得られる。これは、希土類元素を含有させることにより、合金の焼成中に希土類元素のCo相中への固溶及びWC/Co界面への偏析が起こる。この希土類元素の効果により、微粒超硬合金を焼成するときに、原料粉末の混合及び粉砕過程により粉砕されて酸素元素が吸着した活性なWC粉末がCoへ固溶及び、再析出する過程で巨大粒子化するWCの異常成長過程が抑制されるため、粒径が2μm以上の粗大なWC粒子が生成され難くなると考えられる。また、希土類元素がCo相中に固溶していることにより、Co自体の機械強度と耐熱性が高まる効果がある。微粒超硬合金への希土類元素の含有は、Co相へ固溶出来る量である事が重要であり、従来の技術では、含有した希土類元素の一部が原料粉末の混合中等に酸化し、合金中に酸化物として存在することにより、合金の焼結性を低下させ、合金の強度を低下させる為、希土類元素の含有効果を十分に発揮させる事が出来る量を含有出来なかった。しかし、本願発明は、希土類元素をCoとの化合物の形で含有させる事により、希土類元素の酸化を極力抑え、希土類元素の含有効果を十分に発揮出来る量を含有させる事に成功した。希土類元素の含有量がCo相に対する質量%で0.2%未満では、希土類元素の含有効果が小さく、粗大なWC粒子の生成が十分に抑制できない。一方、含有量がCo相に対する質量%で2%を超えて多いと、Co相外に析出する希土類元素量が著しく増加し、他の元素と化合物等を多量に生成し、合金の強度を著しく低下させる。従って、希土類元素の含有量はCo相に対する質量%で0.2〜2.0%とする。更に、粒径が2μm以上の粗大WC粒子が300個/mm2を超えて多くなると、粗大WC粒子が合金中の破壊の起点となる確率が高くなり、強度が低下し、強度のばらつきが大きくなる。従って、合金の組織中における粒径2μm以上の粗大WC粒子数は、300個/mm2以下とする。
本願発明の微粒超硬合金は、合金の炭素量を飽和磁化比R/S値で表した時に、R/S値が0.80≦R/S≦0.89であることが好ましい。即ち、中、高炭素合金であることにより、希土類元素をCo中に固溶及び偏析させ、粗大なWC粒子の生成を抑制する効果が更に高くなり、好ましい。これは、微粒超硬合金の低炭素合金に比べて中、高炭素合金では、Co相中へCの固溶量が増加することにより、Wの固溶量が減少する。Wの固溶及び再析出が促進されることにより、合金の焼成中におけるWC粒子の粒成長がより進み、著しく粗大粒子数が増加するが、希土類元素の含有効果による粗大なWC粒子の生成抑制効果は合金の炭素量により変わらず、希土類元素を含有により、中、高炭素合金においても、効果的に粗大なWC粒子の生成を抑制でき、その効果が顕著に表れるためだと考えられる。R/S値が0.80未満では、希土類元素をCo中に固溶させる効果が小さくなり、しかも、脆性の高いη層が形成されやすくなる傾向が現れる。反対に、0.89を超えて大きくなると、合金炭素量が多くなりすぎ、合金中に炭素が析出することにより合金強度が低下する傾向が現れる。
本願発明の微粒超硬合金は、希土類元素が存在する領域の酸素量が0〜5質量%であることにより、希土類元素がCo相中により固溶し、粗大なWC粒子の生成を更に効果的に抑制できた微粒超硬合金が得られ、好ましい。酸素量が5質量%を超えて多くなると希土類元素の酸化物の割合が多くなり、Co相中に固溶する希土類元素量が減少し、粗大なWC粒子の生成を抑制する効果が低下する傾向が現れる。また、希土類元素の酸化物が析出することにより、微粒超硬合金の強度が低下する傾向が現れる。本願発明は、Crだけでなく、VをCo量に対する質量%で2〜10%、TaをCo量に対する質量%で2〜10%含有することにより、WC粒子の粒成長を抑制でき、高硬度、且つ、高強度の微粒超硬合金が得られ、好ましい。希土類元素は他のLa系希土類元素であっても効果が得られ良い。
本願発明の微粒超硬合金は、希土類元素が存在する領域の酸素量が0〜5質量%であることにより、希土類元素がCo相中により固溶し、粗大なWC粒子の生成を更に効果的に抑制できた微粒超硬合金が得られ、好ましい。酸素量が5質量%を超えて多くなると希土類元素の酸化物の割合が多くなり、Co相中に固溶する希土類元素量が減少し、粗大なWC粒子の生成を抑制する効果が低下する傾向が現れる。また、希土類元素の酸化物が析出することにより、微粒超硬合金の強度が低下する傾向が現れる。本願発明は、Crだけでなく、VをCo量に対する質量%で2〜10%、TaをCo量に対する質量%で2〜10%含有することにより、WC粒子の粒成長を抑制でき、高硬度、且つ、高強度の微粒超硬合金が得られ、好ましい。希土類元素は他のLa系希土類元素であっても効果が得られ良い。
本願発明は、基体表面にスパッタ法、アークイオンプレーティング法、化学蒸着(以下、CVDと記す。)法等により、少なくとも周期律表4a、5a、6a族金属及びAl、Siの1種以上の炭素、窒素、酸素、硼素等との化合物からなる皮膜や、酸化アルミニウム膜、酸化ジルコニウム膜等の単層や多層膜からなる硬質皮膜を被覆した微粒超硬合金でも有効である。これらの硬質皮膜を本願発明の微粒超硬合金部材に被覆することにより、表面の耐摩耗性や耐酸化性、摺動性等を更に高めることが出来る。本願発明は、刃径が0.3mm以下の小径工具、特に小径ドリルやルーター等に用いると顕著な効果が得られる。切削工具でなくとも径の小さい耐摩耗工具、押しピン、金型、摺動材等に適用しても同様の優れた効果が得られる。
(実施例1)
原料粉末として、夫々、平均粒径:0.3μmのWC粉末、平均粒径:1.2μmのCo粉末、平均粒径:1.5μmのCr3C2粉末を用いた。希土類元素は、希土類元素の酸化を避けるために、NdCo5合金を平均粒径:3.0μmに粉砕した粉末、平均粒径:3.0μmのSmCo5粉末、平均粒径:3.0μmのYCo5粉末、平均粒径:3.0μmのNdCo5粉末を夫々用いた。作製する微粒超硬合金中の炭素量を調整するため、炭素粉末を適宜加えた。配合した粉をアルコール中で12時間アトライター混合し、成型用の樹脂を添加し乾燥することにより混合粉末を作成した。このとき希土類元素の酸化を防ぐ為に、希土類元素をCoとの化合物としたNdCo5粉末を使用せず、Ndの単独粉末を用いることにより、混合粉末番号12に示す混合粉末を作製した。表1に、番号1から24の混合粉末の配合組成を示す。
原料粉末として、夫々、平均粒径:0.3μmのWC粉末、平均粒径:1.2μmのCo粉末、平均粒径:1.5μmのCr3C2粉末を用いた。希土類元素は、希土類元素の酸化を避けるために、NdCo5合金を平均粒径:3.0μmに粉砕した粉末、平均粒径:3.0μmのSmCo5粉末、平均粒径:3.0μmのYCo5粉末、平均粒径:3.0μmのNdCo5粉末を夫々用いた。作製する微粒超硬合金中の炭素量を調整するため、炭素粉末を適宜加えた。配合した粉をアルコール中で12時間アトライター混合し、成型用の樹脂を添加し乾燥することにより混合粉末を作成した。このとき希土類元素の酸化を防ぐ為に、希土類元素をCoとの化合物としたNdCo5粉末を使用せず、Ndの単独粉末を用いることにより、混合粉末番号12に示す混合粉末を作製した。表1に、番号1から24の混合粉末の配合組成を示す。
表1に示す混合粉末番号の混合粉末を用いて本発明例1〜17、及び、比較例18〜31に示す試料を作成した。これを表2に示す。
本発明例2、本発明例12〜15は、混合粉末番号2を使用したことを示す。比較例例22〜25は、混合粉末番号17を使用したことを示し、希土類元素を含有していない以外は本発明例12〜15と同じであるが、夫々に添加する炭素粉末量のみを変え、焼結後の微粒超硬合金の理論飽和磁化比を所望の値に調整した。
混合粉末を100MPaの圧力でプレス成形し、JIS抗折試験片(JIS−B−4053)用の成形体とした。これらの成形体を真空雰囲気中、1380℃で、30分間焼結し、アルゴンガスを用いて4.9MPaで30分間加圧焼結し、炉冷することにより、表2の本発明例2と4〜17、及び比較例20〜31を作製した。本発明例1と比較例18は1400℃、本発明例3と比較例19は1360℃で焼結した。その他の、製造条件は同じである。表2の本発明例において、Co含有量の影響を明らかにする為に、Co量が本願発明範囲である本発明例1〜3を作製した。Coに対するCr含有量の影響を明らかにする為に、Cr含有量が本願発明範囲内である本発明例4、5を作製した。Coに対する希土類元素含有量の影響、及び、微粒超硬合金中に存在する粒径2μm以上の粗大WC粒子数の影響を明らかにする為に、希土類元素量が本願発明範囲内である本発明例6〜9を作製した。含有する希土類元素の種類の影響を明らかにする為に、希土類元素がSmとYに変更して本発明例10、11を作製した。R/S値の影響を明らかにする為に、配合時に添加する炭素粉末量のみを変えて、その他の組成や製造プロセスは本発明例2と同じである本発明例12〜15を作製した。希土類元素が存在する領域の酸素量の影響を明らかにする為に、組成と製造プロセスは本発明例2と大略同じであるものの、希土類元素の原料粉として、本発明例2と同じNdCo5粉末とNd粉末とを1対1の割合で配合した混合粉末番号24を用いて、本発明例16を作製した。NdCo5粉末を全く用いずに、Nd粉末のみを用いて、本発明例17を作製した。
比較例として、Co含有量の効果、及び微粒超硬合金中に存在する粒径2μm以上の粗大WC粒子数の効果を明らかにする為に、Co含有量が本願発明範囲より少ない比較例18、本発明範囲を超えて多い比較例19を作製した。Coに対するCr含有量の効果を明らかにするため、Cr/Co含有量比が本願発明範囲より小さい比較例20、本願発明範囲を超えて大きい比較例21を作製した。Coに希土類元素を含有している効果を明らかにする為に、希土類元素を含有させず、添加炭素量を調整することにより、R/S値が異なっている比較例22〜25を作製した。希土類元素がNd、Sm、Yであり、希土類元素含有量/Co比が本願発明範囲より小さい比較例26〜28、及び、本願発明範囲を超えて大きい比較例29〜31を作製した。
混合粉末を100MPaの圧力でプレス成形し、JIS抗折試験片(JIS−B−4053)用の成形体とした。これらの成形体を真空雰囲気中、1380℃で、30分間焼結し、アルゴンガスを用いて4.9MPaで30分間加圧焼結し、炉冷することにより、表2の本発明例2と4〜17、及び比較例20〜31を作製した。本発明例1と比較例18は1400℃、本発明例3と比較例19は1360℃で焼結した。その他の、製造条件は同じである。表2の本発明例において、Co含有量の影響を明らかにする為に、Co量が本願発明範囲である本発明例1〜3を作製した。Coに対するCr含有量の影響を明らかにする為に、Cr含有量が本願発明範囲内である本発明例4、5を作製した。Coに対する希土類元素含有量の影響、及び、微粒超硬合金中に存在する粒径2μm以上の粗大WC粒子数の影響を明らかにする為に、希土類元素量が本願発明範囲内である本発明例6〜9を作製した。含有する希土類元素の種類の影響を明らかにする為に、希土類元素がSmとYに変更して本発明例10、11を作製した。R/S値の影響を明らかにする為に、配合時に添加する炭素粉末量のみを変えて、その他の組成や製造プロセスは本発明例2と同じである本発明例12〜15を作製した。希土類元素が存在する領域の酸素量の影響を明らかにする為に、組成と製造プロセスは本発明例2と大略同じであるものの、希土類元素の原料粉として、本発明例2と同じNdCo5粉末とNd粉末とを1対1の割合で配合した混合粉末番号24を用いて、本発明例16を作製した。NdCo5粉末を全く用いずに、Nd粉末のみを用いて、本発明例17を作製した。
比較例として、Co含有量の効果、及び微粒超硬合金中に存在する粒径2μm以上の粗大WC粒子数の効果を明らかにする為に、Co含有量が本願発明範囲より少ない比較例18、本発明範囲を超えて多い比較例19を作製した。Coに対するCr含有量の効果を明らかにするため、Cr/Co含有量比が本願発明範囲より小さい比較例20、本願発明範囲を超えて大きい比較例21を作製した。Coに希土類元素を含有している効果を明らかにする為に、希土類元素を含有させず、添加炭素量を調整することにより、R/S値が異なっている比較例22〜25を作製した。希土類元素がNd、Sm、Yであり、希土類元素含有量/Co比が本願発明範囲より小さい比較例26〜28、及び、本願発明範囲を超えて大きい比較例29〜31を作製した。
JIS試験片用成形体より得られた焼結体は、ダイヤモンド砥石で研削し、4mm×8mm×24mmの寸法を有するJIS抗折力試験片を作製した。これら試験片のWCの平均粒径、Co、Cr、Sm、Y、Ndの各含有量、抗折力、硬さを測定した。
WCの平均結晶粒径は、超硬合金の断面を鏡面研磨した後、村上試薬で0.5分、王水で0.5分間エッチングすることにより超硬合金の結晶粒界を明確にした後、走査電子顕微鏡(日立製作所製、S−4200、以下、SEMと記す。)により倍率10k倍で撮影した画像を拡大コピーし、これを画像解析ソフト(Image−Pro Plus Version 4.0、Media Cybernetics社製)により解析することにより算出した。Co含有量は、超硬合金の断面を鏡面研磨した後、蛍光X線分析装置(リガク製、ZSX−100E)により分析し、その含有量を定量的に求めた。Co中に含有されているCrと希土類の各元素は、各微粒超硬合金を微細に粉砕した粉をクエン酸アンモニウム50g/リットルと塩化ナトリウム5g/リットルの混合液を用いて電気分解することによりCoを選択的に溶解し、これに少量の硝酸を加えて、Co中に溶解している希土類元素成分とCrとをイオン化して、誘導結合高周波プラズマ分光法(以下、ICPと記す。)で分析することにより、Co中に含有されている希土類元素の種類を同定するとともに、その含有量とCr含有量とを定量的に求めた。希土類元素が存在する領域の酸素量は、電子プローブ微小領域X線分析装置(日本電子株式会社製、JXA−8200、以下、EPMAと記す。)を用いて、超硬合金の研磨面を50k倍で観察し希土類元素の面分布状況を測定した後、希土類元素が多く存在している直径約0.5μmの領域の酸素量を測定することにより求めた。超硬合金のR/S値は、飽和磁化値をσメーター(SETARAM製、SIGMAMETERD6025)を用いて求め、純Coの飽和磁化値である202μTm3/kgに対する割合を計算した。抗折力は、MetalTestingMachine(島津製作所製、EHF−ED20)を用いて、スパン20mm、クロスベッドスピード1mm/minの条件で3点曲げ試験により求めた。夫々の試験数は5点とし、平均値を求めた。微粒超硬合金に必要とされる抗折力は、加工工具への適用を考えた場合には最低3GPaが必要であり、3GPa以下の抗折力では加工工具としては不適である。反対に、3.5GPa以上になると、強度が高い加工工具が出来て好ましく、4GPaを超える抗折力を示す材料は加工工具として格段に優れた特性を示す。このため、本願発明では、微粒超硬合金の良否の判断基準を抗折力が3GPa以上であることとした。硬さは、ロックウェル硬度試験機(ミツトヨ製、HR−523)を用い、Aスケール、加重249.2Nの条件にて求めた。超微粒超硬合金として必要とされる硬さは、ロックウェル、Aスケールにて、93.0以上の硬さが必要であり、93.0未満の材料は耐摩耗性に劣り、加工工具として不適当である。このため、本願発明では、微粒超硬合金の良否の判断基準を硬度が93.0以上であることとした。また、硬度が93.5以上の材料は加工工具として耐摩耗性が格段に優れていると判断出来る。合金の組織中の粗大WC粒子数は、合金の断面を鏡面研磨した後、村上試薬で0.5分、王水で0.5分間エッチングすることにより超硬合金の結晶粒界を明確にした後、1k倍の光学顕微鏡を用いて100×100μmの領域を20領域観察し、各領域内に存在する内接円直径が2μm以上の粗大WC粒子数を測定し、これらの平均値を1mm2中の粗大粒子数に換算して算出した。これらの測定結果を表2にまとめて示した。
WCの平均結晶粒径は、超硬合金の断面を鏡面研磨した後、村上試薬で0.5分、王水で0.5分間エッチングすることにより超硬合金の結晶粒界を明確にした後、走査電子顕微鏡(日立製作所製、S−4200、以下、SEMと記す。)により倍率10k倍で撮影した画像を拡大コピーし、これを画像解析ソフト(Image−Pro Plus Version 4.0、Media Cybernetics社製)により解析することにより算出した。Co含有量は、超硬合金の断面を鏡面研磨した後、蛍光X線分析装置(リガク製、ZSX−100E)により分析し、その含有量を定量的に求めた。Co中に含有されているCrと希土類の各元素は、各微粒超硬合金を微細に粉砕した粉をクエン酸アンモニウム50g/リットルと塩化ナトリウム5g/リットルの混合液を用いて電気分解することによりCoを選択的に溶解し、これに少量の硝酸を加えて、Co中に溶解している希土類元素成分とCrとをイオン化して、誘導結合高周波プラズマ分光法(以下、ICPと記す。)で分析することにより、Co中に含有されている希土類元素の種類を同定するとともに、その含有量とCr含有量とを定量的に求めた。希土類元素が存在する領域の酸素量は、電子プローブ微小領域X線分析装置(日本電子株式会社製、JXA−8200、以下、EPMAと記す。)を用いて、超硬合金の研磨面を50k倍で観察し希土類元素の面分布状況を測定した後、希土類元素が多く存在している直径約0.5μmの領域の酸素量を測定することにより求めた。超硬合金のR/S値は、飽和磁化値をσメーター(SETARAM製、SIGMAMETERD6025)を用いて求め、純Coの飽和磁化値である202μTm3/kgに対する割合を計算した。抗折力は、MetalTestingMachine(島津製作所製、EHF−ED20)を用いて、スパン20mm、クロスベッドスピード1mm/minの条件で3点曲げ試験により求めた。夫々の試験数は5点とし、平均値を求めた。微粒超硬合金に必要とされる抗折力は、加工工具への適用を考えた場合には最低3GPaが必要であり、3GPa以下の抗折力では加工工具としては不適である。反対に、3.5GPa以上になると、強度が高い加工工具が出来て好ましく、4GPaを超える抗折力を示す材料は加工工具として格段に優れた特性を示す。このため、本願発明では、微粒超硬合金の良否の判断基準を抗折力が3GPa以上であることとした。硬さは、ロックウェル硬度試験機(ミツトヨ製、HR−523)を用い、Aスケール、加重249.2Nの条件にて求めた。超微粒超硬合金として必要とされる硬さは、ロックウェル、Aスケールにて、93.0以上の硬さが必要であり、93.0未満の材料は耐摩耗性に劣り、加工工具として不適当である。このため、本願発明では、微粒超硬合金の良否の判断基準を硬度が93.0以上であることとした。また、硬度が93.5以上の材料は加工工具として耐摩耗性が格段に優れていると判断出来る。合金の組織中の粗大WC粒子数は、合金の断面を鏡面研磨した後、村上試薬で0.5分、王水で0.5分間エッチングすることにより超硬合金の結晶粒界を明確にした後、1k倍の光学顕微鏡を用いて100×100μmの領域を20領域観察し、各領域内に存在する内接円直径が2μm以上の粗大WC粒子数を測定し、これらの平均値を1mm2中の粗大粒子数に換算して算出した。これらの測定結果を表2にまとめて示した。
表2の結果から、Coの含有量が本願発明の範囲内である本発明例1〜3は、Coの量が強度を確保する為に十分であり、4GPaを超える抗折力を示した。しかし、Coの含有量が少なく本願発明の範囲外である比較例18は、Coの量が少ない為に強度が下がり、2.1GPaと低く、3GPa未満の値しか示さなかった。Coの含有量が本願発明範囲より多い比較例19は、硬さがHRA92.4と低く、HRA93.0未満の値しか示さなかった。そこで、本願発明の微粒超硬合金におけるCoの含有量を2〜13%とした。
Cr含有量のCoに対する質量%が本願発明範囲内の2〜15%である本発明例2、4、5は、WCの粒成長抑制効果が十分に発揮され、WCの平均粒径が0.8μm以下である微粒超硬合金が得られ、HRA93.5以上の十分な硬さを示した。しかし、Cr含有量/Co比が1.8%と小さい比較例20はWC粒子の粒成長抑制効果が十分ではなく、WCの平均粒径が本願発明範囲を超えて1.2μmと大きくなり、硬さがHRA92.5と極端に低くなった。そこで、本願発明の微粒超硬合金におけるCr含有量は、Coに対する質量%で2以上とした。Cr含有量/Co比が16%と多い比較例21は、Co相にCrが全量固溶出来ずにCrがWC粒界に析出物となって存在し、抗折力が2.0GPaしか示さず、抗折力が極端に低下した。そこで、本願発明の微粒超硬合金におけるCr含有量を、Coに対する質量%で2〜15%とした。
希土類元素を含有していない比較例22〜25は、R/S値が0.79から0.90へと上昇するにつれて、粗大粒子数は174から307、391、424個/mm2と急激に上昇しているのに対して、希土類元素を含有している本願発明例12〜15は、R/S値が0.79から0.90へと上昇しても粗大粒子数は96から154個/mm2へ極めて増加数が少なく、しかも、比較例22〜25の抗折力は1.8〜2.2GPaと全体に低いのに対して、本発明例12〜15は、R/S値が比較例22〜25と大略同じであるにも拘らず、抗折力が3.0〜4.0GPaと全体に高く優れていた。そこで、本願発明の微粒超硬合金を、希土類元素を含有していることとした。これは、R/S値が0.79、0.85、0.90と比較的高い比較例22〜25はR/S値が高くなるにつれて、生成される粗大粒子数が336個/mm2以上と急増するため、粗大粒子が破壊の基点となる確率が急激に高まり、その結果、抗折力が2.0〜2.2GPaと低い値になったのである。これに対して、本発明例は、Co中に希土類元素を含有しているため、Co自体の機械強度が高く、抗折力が全体に高くなり、しかも、Co中に高温で固溶しているWCが析出し粗大化することを、Co中に含有されている希土類元素が抑制するため、R/S値が0.79〜0.90と高くなっても、本願発明例12〜14は生成される粗大粒子数が87〜154個/mm2と少なく、粗大粒子が破壊の基点となる確率が低くなった。その結果、抗折力が3.0〜4.0GPaと高い値を示したのである。
希土類元素含有量/Co比が本願発明範囲内の0.2〜2.0%である本発明例6〜9は、希土類元素の含有効果により、効果的に粗大WC粒子の生成が抑制され、粗大粒子数が300個/mm2以下であり、4.0GPaを超える高い抗折力を示した。これに対して、R/S値が本発明例12〜14と同じ0.74以上であるものの、希土類元素を含有していない比較例22〜24、及び、希土類元素の含有量が0.1%と本願発明の範囲外である比較例26〜28の粗大粒子数は326個/mm2以上と多く、2.8GPa以下の抗折力しか示さなかった。希土類元素含有量/Co比が2.13%と本願発明範囲を超えて多い比較例29〜31は、Co相中に希土類元素の全量は固溶出来ず、析出した希土類元素が合金中で破壊の起点となって合金の強度が低下し、2.7GPa以下の低い抗折力しか示さなかった。微粒超硬合金に必要とされる抗折力は最低3GPaが必要である。従って、本願発明の微粒超硬合金における希土類元素の含有量をCoに対する質量%で0.2〜2.0%とした。微粒超硬合金のR/S値が0.80以上であり、希土類元素を含有していない、又は、Coに対する希土類元素含有量が0.1%以下である比較例22〜24と26〜28とはいずれも粒径2μm以上の粗大WC粒子数が326個/mm2以上と多く、抗折力が2.8GPa以下であるのに対して、粗大WC粒子数が300個/mm2以下である本発明例1〜17はいずれも抗折力が3GPa以上であり、微粒超硬合金として優れていた。従って、本願発明の微粒超硬合金は粒径2μm以上の粗大WC粒子数を300個/mm2以下とした。
Cr含有量のCoに対する質量%が本願発明範囲内の2〜15%である本発明例2、4、5は、WCの粒成長抑制効果が十分に発揮され、WCの平均粒径が0.8μm以下である微粒超硬合金が得られ、HRA93.5以上の十分な硬さを示した。しかし、Cr含有量/Co比が1.8%と小さい比較例20はWC粒子の粒成長抑制効果が十分ではなく、WCの平均粒径が本願発明範囲を超えて1.2μmと大きくなり、硬さがHRA92.5と極端に低くなった。そこで、本願発明の微粒超硬合金におけるCr含有量は、Coに対する質量%で2以上とした。Cr含有量/Co比が16%と多い比較例21は、Co相にCrが全量固溶出来ずにCrがWC粒界に析出物となって存在し、抗折力が2.0GPaしか示さず、抗折力が極端に低下した。そこで、本願発明の微粒超硬合金におけるCr含有量を、Coに対する質量%で2〜15%とした。
希土類元素を含有していない比較例22〜25は、R/S値が0.79から0.90へと上昇するにつれて、粗大粒子数は174から307、391、424個/mm2と急激に上昇しているのに対して、希土類元素を含有している本願発明例12〜15は、R/S値が0.79から0.90へと上昇しても粗大粒子数は96から154個/mm2へ極めて増加数が少なく、しかも、比較例22〜25の抗折力は1.8〜2.2GPaと全体に低いのに対して、本発明例12〜15は、R/S値が比較例22〜25と大略同じであるにも拘らず、抗折力が3.0〜4.0GPaと全体に高く優れていた。そこで、本願発明の微粒超硬合金を、希土類元素を含有していることとした。これは、R/S値が0.79、0.85、0.90と比較的高い比較例22〜25はR/S値が高くなるにつれて、生成される粗大粒子数が336個/mm2以上と急増するため、粗大粒子が破壊の基点となる確率が急激に高まり、その結果、抗折力が2.0〜2.2GPaと低い値になったのである。これに対して、本発明例は、Co中に希土類元素を含有しているため、Co自体の機械強度が高く、抗折力が全体に高くなり、しかも、Co中に高温で固溶しているWCが析出し粗大化することを、Co中に含有されている希土類元素が抑制するため、R/S値が0.79〜0.90と高くなっても、本願発明例12〜14は生成される粗大粒子数が87〜154個/mm2と少なく、粗大粒子が破壊の基点となる確率が低くなった。その結果、抗折力が3.0〜4.0GPaと高い値を示したのである。
希土類元素含有量/Co比が本願発明範囲内の0.2〜2.0%である本発明例6〜9は、希土類元素の含有効果により、効果的に粗大WC粒子の生成が抑制され、粗大粒子数が300個/mm2以下であり、4.0GPaを超える高い抗折力を示した。これに対して、R/S値が本発明例12〜14と同じ0.74以上であるものの、希土類元素を含有していない比較例22〜24、及び、希土類元素の含有量が0.1%と本願発明の範囲外である比較例26〜28の粗大粒子数は326個/mm2以上と多く、2.8GPa以下の抗折力しか示さなかった。希土類元素含有量/Co比が2.13%と本願発明範囲を超えて多い比較例29〜31は、Co相中に希土類元素の全量は固溶出来ず、析出した希土類元素が合金中で破壊の起点となって合金の強度が低下し、2.7GPa以下の低い抗折力しか示さなかった。微粒超硬合金に必要とされる抗折力は最低3GPaが必要である。従って、本願発明の微粒超硬合金における希土類元素の含有量をCoに対する質量%で0.2〜2.0%とした。微粒超硬合金のR/S値が0.80以上であり、希土類元素を含有していない、又は、Coに対する希土類元素含有量が0.1%以下である比較例22〜24と26〜28とはいずれも粒径2μm以上の粗大WC粒子数が326個/mm2以上と多く、抗折力が2.8GPa以下であるのに対して、粗大WC粒子数が300個/mm2以下である本発明例1〜17はいずれも抗折力が3GPa以上であり、微粒超硬合金として優れていた。従って、本願発明の微粒超硬合金は粒径2μm以上の粗大WC粒子数を300個/mm2以下とした。
次に、同量のCo、Cr、希土類元素を含有しているものの、微粒超硬合金のR/S値のみが異なっている本発明例2と12〜15内を比較すると、R/S値が0.79と低い本発明例15と、0.90と高い本発明例12の両者は、抗折力が3.2、3.0GPaであるのに対して、0.80〜0.89の範囲内にある本発明例13、14、15は抗折力が4.0GPa以上と高く優れていた。従って、本願発明の微粒超硬合金における合金のR/S値は、0.80≦R/S≦0.89であることが好ましい。本発明例12の抗折力が比較的低いのは、特に合金中の炭素量が高いため、WCが異常成長し易くなり、観察された粗大粒子数も154個と、若干多くなったためである。いずれも同量のCo、Cr、希土類元素を含有し、R/S値も同じであるものの、希土類元素が存在する領域の酸素量のみが異なっている本発明例2と16、17内を比較すると、希土類元素が存在する領域の酸素量が6質量%と高い本発明例17の粗大粒子数が156個/mm2と多く、抗折力も3.0GPaであるのに対して、希土類元素が存在する領域の酸素量が5%以下である本発明例2と16の粗大粒子数は98個/mm2以下と少なく、抗折力も3.6GPa以上と高く、優れていた。従って、本願発明の微粒超硬合金における希土類元素が存在する領域の酸素量は5質量%以下であることが好ましい。その理由は、希土類元素が存在する領域の酸素量が5質量%を超えて多くなると、脆弱な希土類元素の酸化物が合金中に析出し易くなり、抗折力が低下する傾向が現れるためである。
同量のCo、Cr、希土類元素を含有量し、R/S値と、希土類元素が存在する領域の酸素量がそれぞれ同じであるものの、含有されている希土類元素の種類のみが異なっている本発明例2と10、11内を比較すると、含有している希土類元素がYの本発明例11の粗大粒子数が129個/mm2、抗折力も3.2GPaであるのに対して、含有している希土類元素がLa系のNdやSmである本発明例2と10とは粗大粒子数が91個/mm2以下と少なく、抗折力も4.4GPa以上と格段に優れていた。
同量のCo、Cr、希土類元素を含有量し、R/S値と、希土類元素が存在する領域の酸素量がそれぞれ同じであるものの、含有されている希土類元素の種類のみが異なっている本発明例2と10、11内を比較すると、含有している希土類元素がYの本発明例11の粗大粒子数が129個/mm2、抗折力も3.2GPaであるのに対して、含有している希土類元素がLa系のNdやSmである本発明例2と10とは粗大粒子数が91個/mm2以下と少なく、抗折力も4.4GPa以上と格段に優れていた。
(実施例2)
実施例1と同じ混合粉末と焼成条件を用いて、小径ドリルを作製し、穴あけ加工試験を行った。この試験は、微粒超硬合金が実用化されている例であり、小径ドリルは、刃部が細長いため、合金組織内に粗大なWC粒子が存在すると、この粗大WC粒子が破壊の起点となって折損しやすくなり、本願発明の微粒超硬合金の性能差が容易に比較できる。表1に示した混合粉末を用いて、プレス成形によりφ2.5mm、長さが35mmの丸棒成形体を作製した。この丸棒成形体を実施例1と同じ条件にて焼結を行い、得られた丸棒焼結体を、夫々研磨し、全長が31.8mm、シャンク径が2.0mm、刃先直径が0.15mm、溝長が5.5mmの小径ドリルを作製した。これらの小径ドリルを用いて、次の試験条件で穴開け加工試験を行い、ドリルが折損するまでの穴開け加工数を評価した。評価本数は5本とし、その平均値を求めた。これらの評価結果を表3に示す。
(試験条件)
被削材:板厚が0.1mmのガラスエポキシ厚さ5μmの銅張り6層積層板を2枚重ね
回転数:毎分300、000回転
送り量:5μm/回転
試験数:各5本
実施例1と同じ混合粉末と焼成条件を用いて、小径ドリルを作製し、穴あけ加工試験を行った。この試験は、微粒超硬合金が実用化されている例であり、小径ドリルは、刃部が細長いため、合金組織内に粗大なWC粒子が存在すると、この粗大WC粒子が破壊の起点となって折損しやすくなり、本願発明の微粒超硬合金の性能差が容易に比較できる。表1に示した混合粉末を用いて、プレス成形によりφ2.5mm、長さが35mmの丸棒成形体を作製した。この丸棒成形体を実施例1と同じ条件にて焼結を行い、得られた丸棒焼結体を、夫々研磨し、全長が31.8mm、シャンク径が2.0mm、刃先直径が0.15mm、溝長が5.5mmの小径ドリルを作製した。これらの小径ドリルを用いて、次の試験条件で穴開け加工試験を行い、ドリルが折損するまでの穴開け加工数を評価した。評価本数は5本とし、その平均値を求めた。これらの評価結果を表3に示す。
(試験条件)
被削材:板厚が0.1mmのガラスエポキシ厚さ5μmの銅張り6層積層板を2枚重ね
回転数:毎分300、000回転
送り量:5μm/回転
試験数:各5本
表3に示す各小径ドリルを構成する微粒超硬合金の諸特性、即ち、WC平均粒径、Co、Cr、希土類元素量、R/S値、希土類元素が存在する領域の酸素量及び粗大粒子数等は、焼成条件等の素材の作製条件がJIS抗折試験片と同じであるため、表2に示したJIS抗折試験片の原料粉末番号が同一のものと同値であると見なせるため、表1の粉末番号、表2の試料番号と同じ番号を用いた。表3の結果から、Coの含有量が1.0、14.0%と本願発明の範囲外である比較例18、19の穴あけ数が1623穴以下であるのに対して、Coの含有量が2〜13%である本発明例1〜3の穴あけ数は4889穴以上と、3倍以上多く、格段に優れていた。そこで、本願発明の微粒超硬合金におけるCoの含有量を2〜13%とした。Coに対するCr含有量が1.8、16.0%と本願発明の範囲外である比較例20、21の穴あけ数が1932穴以下であるのに対して、Cr/Co比が2〜15%である本発明例2、4、5の穴あけ数は4328穴以上と、2倍以上多く、格段に優れていた。そこで、本願発明の微粒超硬合金におけるCoに対するCrの含有量を2〜15%とした。希土類元素として同じNdを含有するものの、Coに対するNd含有量が0.1と2.13%と本願発明の範囲外である比較例26、29の穴あけ数が1843穴以下であるのに対して、Nd/Co比が0.2〜2.0%の範囲内である本発明例6〜9の穴あけ数は4365穴以上と、2倍以上多く、優れていた。そこで、本願発明の微粒超硬合金におけるCoに対する希土類元素の含有量を0.2〜2.0%とした。微粒超硬合金のR/S値が0.80以上であり、希土類元素を含有していない、又は、Coに対する希土類元素含有量が0.1%以下である比較例22〜24と26〜28とは、いずれも粒径2μm以上の粗大WC粒子数が326個/mm2以上と多く、穴あけ数が1843穴以下と少ないのに対して、粗大WC粒子数が300個/mm2以下である本発明例1〜17はいずれも穴あけ数が4017穴以上と、2倍以上多く、優れていた。そこで、本願発明の微粒超硬合金における粒径2μm以上の粗大WC粒子数は300個/mm2以下であるとした。
次に、いずれも同量のCo、Cr、希土類元素を含有しているものの、微粒超硬合金のR/S値のみが異なっている本発明例2と12〜15内を比較すると、R/S値が0.79と低い本発明例15と、0.90と高い本発明例12の、両者は穴あけ数が4034穴以下と少ないのに対して、0.74〜0.89の範囲内にある本発明例2、13及び14は穴あけ数が6054穴以上と、1.5倍以上多く、優れていた。従って、本願発明の微粒超硬合金における合金のR/S値は0.80〜0.89であることが好ましい。いずれも同量のCo、Cr、希土類元素を含有し、R/S値も同じであるものの、希土類元素が存在する領域の酸素量のみが異なっている本発明例2、16、17内を比較すると、希土類元素が存在する領域の酸素量が6質量%と高い本発明例17の穴あけ数が4017穴と少ないのに対して、希土類元素が存在する領域の酸素量が5%以下である本発明例2と16の穴あけ数は6044穴以上と、1.5倍以上多く、優れていた。従って、本願発明の微粒超硬合金における希土類元素が存在する領域の酸素量が0〜5質量%であることが好ましい。いずれも同量のCo、Cr、希土類元素を含有し、R/S値と、希土類元素が存在する領域の酸素量とがそれぞれ同じであるものの、含有している希土類元素の種類のみが異なっている本発明例2と10、11内を比較すると、含有している希土類元素がYである本発明例11の穴あけ数が4021穴に対して、希土類元素がNdやSmである本発明例2と10とは穴あけ数が6044穴以上と、1.5倍以上多く、優れていた。従って、本願発明の微粒超硬合金中に含有されている希土類元素はLa系希土類元素であることが好ましい。
Claims (3)
- WC基超硬合金のCo含有量は、質量%で、2≦Co≦13、Co含有量に対するCr含有量は、2≦Cr/Co≦15、Nd、Sm、Yから選択される1種以上の希土類元素を含有し、残部がWC及び不可避不純物からなり、WCの平均粒径は0.8μm以下であるWC基超硬合金において、該希土類元素はCo相内に固溶した状態で存在し、Co含有量に対する該希土類元素の含有量は、0.2〜2.0質量%であり、粒径が2μm以上の粗大WC粒子数は、300個/mm2以下であることを特徴とする微粒超硬合金。
- 請求項1に記載の微粒超硬合金において、該微粒超硬合金の飽和磁化値をR(μTm3/kg)、202×Co量(質量%)/100の値をS(μTm3/kg)、とした時、飽和磁化比R/S値が、0.80≦R/S≦0.89、であることを特徴とする微粒超硬合金。
- 請求項1、2に記載の微粒超硬合金において、該希土類元素が存在する領域の酸素量が0〜5質量%であることを特徴とする微粒超硬合金。
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RU2622186C1 (ru) * | 2016-09-12 | 2017-06-13 | Юлия Алексеевна Щепочкина | Спеченный твердый сплав на основе карбида вольфрама |
CN107254618A (zh) * | 2017-06-12 | 2017-10-17 | 无锡钻探工具厂有限公司 | 一种双镐轮用硬质合金及其应用 |
JP2020157453A (ja) * | 2019-03-28 | 2020-10-01 | 三菱マテリアル株式会社 | ダイヤモンド被覆超硬合金製工具 |
JP2020157454A (ja) * | 2019-03-28 | 2020-10-01 | 三菱マテリアル株式会社 | ダイヤモンド被覆超硬合金製工具 |
-
2007
- 2007-02-19 JP JP2007037463A patent/JP2008202074A/ja active Pending
Cited By (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
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JP7216915B2 (ja) | 2019-03-28 | 2023-02-02 | 三菱マテリアル株式会社 | ダイヤモンド被覆超硬合金製工具 |
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