JP7216916B2 - ダイヤモンド被覆超硬合金製工具 - Google Patents

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本発明は、切削刃先に高負荷が作用するCFRP(炭素繊維強化プラスチック)とAl合金等からなる難削複合材(以下、「CFRP/Al材」という)等の高速高送り切削加工であっても切削時のバリが低減し、工具寿命を改善したダイヤモンド被覆超硬合金製工具に関する。
従来、WC基超硬合金からなる工具基体に、ダイヤモンド皮膜を被覆したダイヤモンド被覆超硬合金製工具(以下、「ダイヤモンド被覆工具」ということがある)が知られており、工具としての特性を改善するために、種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、Coを3~6質量%含む炭化タングステン超硬合金製基体を村上試薬にてエッチングした後、硫酸と過酸化水素でエッチングした基体表面にダイヤモンド皮膜を有する多結晶ダイヤモンド被覆工具が記載されている。
また、例えば、特許文献2には、WCとCoからなる工具基体と、その上に適用された中間層と、前記中間層に適用されたCVD法によるダイヤモンド皮膜を備えた切削工具であって、前記中間層は、主に金属を含んだものであり、前記中間層の金属部分は、主にWおよび/またはCrからなり、前記中間層は、0.5μm-3.0μmのRz値によって規定される面粗度を有する、ことを特徴とするダイヤモンド被覆工具が記載されている。
さらに、例えば、特許文献3には、超硬合金の表面から100μmまでの間の結合相量を該超硬合金内部の結合相量に比較して減少させるとともに該超硬合金表面にダイヤモンド皮膜を被覆させたことを特徴とするダイヤモンド被覆工具が記載されている。
加えて、例えば、特許文献4には、WC粒子と3~15質量%のCo結合相を含むWC基超硬合金からなる工具基体表面に、平均膜厚3~30μmのダイヤモンド皮膜が被覆形成されたダイヤモンド被覆工具において、(a)前記WC粒子は、微粒WC粒子と粗粒WC粒子の混粒からなり、かつ、平均粒径は0.5~2.5μmであり、(b)前記工具の逃げ面に垂直な縦断面観察で逃げ面を1辺とする刃先の先端から50μm四方の縦断面観察において、少なくとも、逃げ面のダイヤモンド皮膜と工具基体の界面から、前記工具基体の内部へ1~5μmの深さ領域におけるCo結合相の一部が除去され、該Co結合相の一部が除去された領域では、WC粒子間の接合界面長がWC粒子の周囲長の0.20以上0.60以下であることを特徴とするダイヤモンド被覆工具が記載されている。
そして、例えば、特許文献5には、WC粒子を主体とする硬質相と、その硬質相を結合するCoを主体とする結合相と、Cr、Nb、Zr、V及びTiから選択される1種以上の元素とを含有し、前記WC粒子は、フィッシャー法で測定される平均粒子径が0.4μm~0.6μmの細粒と、フィッシャー法で測定される平均粒子径が1.2μm~1.4μmの粗粒とから実質的に構成され、前記細粒および前記粗粒は、質量比が前記細粒/前記粗粒=25/75~15/85であり、前記Coは、含有量が0.7質量%~2質量%であり、前記元素は、含有量が0.09質量%~0.9質量%であることを特徴とするダイヤモンド被覆工具が記載されている。
特許第3504675号公報 特表2013-532227号公報 特許第2539922号公報 特開2016-87726号公報 特開2017-39954号公報
近年の切削加工における面品位の要求は高まっており、例えば、CFRP/Al材の穴あけ加工やトリミング加工においてはバリ(アンカットファイバー)の発生は許されないものとなっている。
そのため、従来は、突発欠損の発生を抑制する目的で、切削工具には、ホーニングと呼ばれる刃先に丸みが付与されていたが、最近は、面品位を確保すべく切れ味向上のために、刃先のシャープエッジ化が進められている。
しかし、前記各特許文献に記載されたダイヤモンド被覆工具に対して、刃先のシャープエッジ化を行うと、以下に述べるような問題点があった。
すなわち、特許文献1に記載のダイヤモンド被覆工具は、酸に浸漬することにより工具基体表面のCoが除去されているため、工具基体表面近傍は脆化相となり、刃先の強度不足が発生して、特に、CFRP/Al材等の高速高送り切削加工においてダイヤモンド皮膜の脱落やチッピングが生じてしまう。
また、特許文献2に記載のダイヤモンド被覆工具は、PVD法により中間層を設けているが、工具基体と中間層との密着性が十分とはいえず、ダイヤモンド皮膜が剥離することがあり、特に、CFRP/Al材等の高速高送り切削加工において十分な工具寿命を有していない。
さらに、特許文献3に記載のダイヤモンド被覆工具は、ダイヤモンド皮膜と工具基体との密着強度向上と強度低下抑制をバランスさせることが難しく、CFRP/Al材等の難削材の高速高送り切削加工のように、刃先に短時間に繰り返し衝撃が強く作用する切削に用いた場合には、チッピング、欠損、剥離等の異常損傷が発生しやすく、早期に寿命に至ってしまう。また、この被覆工具を製造するに当たり、結合相の液相出現温度を超える1400℃の浸炭性の雰囲気で工具基体の処理を行っているため、この被覆工具は高精度な寸法精度を要求する加工への使用は難しい。
加えて、特許文献4に記載されているダイヤモンド被覆工具は、ダイヤモンド皮膜と工具基体との密着性が向上し長寿命を有するが、工具基体表面に存在するCoを珪化物にする処理を必要とし、ダイヤモンド被覆工具を形成する工程が煩雑である。
そして、特許文献5に記載されているダイヤモンド被覆工具は、工具基体表面に存在するCoを珪化物にする処理を必要とせず、ダイヤモンド被覆工具を形成する工程を簡素化できるものの、CFRP/Al材等の難削材の高速高送り切削加工のように、刃先に短時間に繰り返し衝撃が強く作用する切削条件に用いた場合には、チッピング、欠損、剥離等の異常損傷が発生しやすく、早期に寿命に至るという問題があった。
本発明は、刃先に高負荷が作用するCFRP/Al材等の難削材の高速高送り切削加工であっても、チッピング、欠損、剥離等を抑制し、優れた耐摩耗性を長期の使用にわって発揮することができるダイヤモンド被覆超硬合金製工具を提供することを目的とする。
本発明者は、CFRP/Al材等の難削材の高速高送り切削加工のように、切刃に高負荷が作用する切削条件に供した場合であっても、チッピング、欠損、剥離等を抑制し、耐摩耗性を発揮するダイヤモンド超硬合金製被覆工具を提供すべく、工具基体(WC超硬合金)の組成を検討したところ、WC超硬合金に含まれているCrの含有割合を従来の割合よりも大きくし、さらに、工具基体表面のCrは窒化物および/または炭窒化物として存在させて、ダイヤモンド皮膜と工具基体との界面直下の工具基体にCoを除去した領域を設けることなく、加えて、前記界面から500μm以上離れた工具基体内部のCo含有割合をMCo-i、前記界面から2μmまでの工具基体内部のCo含有割合をMCo-sとするとき、MCo-s/MCo-iが所定値にあれば、ダイヤモンド皮膜と工具基体との密着性が向上し、CFRP/Al材等の難削材の高速高送り切削加工のように切刃に高負荷が作用する切削条件に供した場合であっても、チッピング、欠損、剥離等を抑制し、優れた耐摩耗性を発揮するという新規な知見を得た。
本発明は、前記知見に基づいてなされたものであって、
「(1)WCを含む硬質相とCoを含む結合相を有し、WC:72.4~93.6質量%、Co:4.0~12.0質量%、Cr:2.4~15.6質量%、粒成長抑制剤:1.0質量%以下を含有し、残部が不可避的不純物である組成の工具基体に、ダイヤモンド皮膜が被覆されたダイヤモンド被覆超硬合金製工具であって、
前記Crは、前記工具基体の表面から3μmの範囲内で窒化物および/または炭窒化物として存在し、
前記工具基体と前記ダイヤモンド皮膜との界面から500μm以上離れた前記工具基体内部のCo含有割合をMCo-i(質量%)、前記界面から2μmまでの前記工具基体内部のCo含有割合をMCo-s(質量%)とするとき、0.7≦MCo-s/MCo-i≦1.3であることを特徴とするダイヤモンド被覆超硬合金製工具。
(2)前記工具基体にCoがMCo質量%、CrがMCr質量%、それぞれ、含有されるとき、0.6≦MCr/MCo≦1.3であることを特徴とする前記(1)に記載されたダイヤモンド被覆超硬合金製工具。
(3)工具刃先の任意の逃げ面に垂直な断面にて工具基体のすくい面と逃げ面とが交差する稜線の曲率半径が5μm以下であることを特徴とする前記(1)または(2)に記載されたダイヤモンド被覆超硬合金製工具。」
である。
本発明のダイヤモンド被覆超硬合金製工具は、CFRP/Al材等の難削材の高速高送り切削加工においても、ダイヤモンド皮膜の剥離を抑制し、工具の寿命が向上する。
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本明細書および特許請求の範囲において、数値範囲を「X~Y」のように表現する場合、その範囲は上限および下限の数値を含む(すなわち、X以上Y以下)ものとし、Xに単位の記載がなくYにのみ単位の記載がなされているときは、Xの単位はYの単位と同じである。
1.工具基体
本発明において、工具基体は、WCを含む硬質相とCoを含む結合相を含む組織を有しており、その組成について説明する。
硬質相:
硬質相を構成するWCの含有割合は、72.4~93.6質量%とする。この範囲とする理由は、WC含有量が72.4質量%未満となると、工具基体としての硬さが不足し、一方、93.6質量%を超えると、工具基体の靭性が低下し切削加工時にチッピングや欠損が発生するためである。WCの含有割合は、79.3~92.0質量%がより好ましい。
結合相:
結合相を構成するCoの含有割合は、4.0~12.0質量%とする。この範囲とする理由は、4.0質量%未満であると、工具基体の靭性が低下し切削加工時にチッピングや欠損が発生し、一方、12.0質量%を超えると工具基体の硬さが不足して脆弱になるためである。Coの含有割合は、5.0~9.0質量%がより好ましい。
工具基体とダイヤモンド皮膜との界面(以下、基材界面ということがある)の直下は、エッチング等によるCoが除去された領域を有していないため、脆化層がなく、シャープエッジであってもダイヤモンド皮膜の脱落やチッピングの発生が起こり難く、バリを低減した長寿命のダイヤモンド被覆工具を得ることができる。
また、前記界面から500μm以上離れた前記工具基体内部のCo含有割合をMCo-i(質量%)、前記界面から2μmまでの前記工具基体内部のCo含有割合をMCo-s(質量%)とするとき、0.7≦MCo-s/MCo-i≦1.3であることが好ましい。MCo-s/MCo-iをこの範囲とすることにより、切刃に高負荷が作用する切削条件に供した場合であっても、チッピング、欠損、剥離等を抑制し、優れた耐摩耗性を発揮する。
ここで、MCo-i、MCo-sは、それぞれ、次のように測定する。すなわち、刃先近傍の任意の逃げ面に垂直な方向の断面(膜厚方向の断面である縦断面)をCross-sectional Polisher(CP)にて加工し、加工した断面を走査電子顕微鏡により適切な倍率(例、倍率1000倍)にて工具基体表面近傍(ダイヤモンド皮膜と工具基体の界面(基材界面)を含んだ領域)を反射電子像にて撮影し、画像処理ソフト(例えば、ImageJ)にて工具基体表面のプロファイルをXY座標として出力し、その値を1次式(Y=aX+b)としてフィッティングしたときにその直線の傾きが±1°以下となるように、走査電子顕微鏡の走査領域を修正する。すなわち、走査領域の水平方向(X方向)が工具基体表面と平行となるように修正する。修正した走査領域にて基材界面を含む矩形領域を工具基体表面に垂直方向(工具基体の内部方向)へ2μmまた基材界面の方向に100μmに設定し、SEM-EDSを用いて前記矩形領域のCo含有割合(平均値)を測定しMCo-sが得られる。また工具基体表面に垂直方向(工具基体の内部方向)へ500μm以上内部で同様な矩形領域からCo含有割合(平均値)を測定することでMCo-iが得られる。
Crの含有割合:
従来のCrの含有目的は、硬質粒子(硬質相)の成長の抑制であって、工具基体には少量含有されているが、本発明では、工具基体とダイヤモンド皮膜との密着性を向上させる目的のために、従来の少量含有ではなく、2.4~15.6質量%と多量に含有させる。この多量の含有により工具基体とダイヤモンド皮膜との密着性が飛躍的に向上し、CFRP/Al材等の難削材の高速高送り切削加工においても、ダイヤモンド皮膜の剥離を抑制し、工具寿命が向上する。なお、Crの含有割合は4.5~15.0質量%がより好ましい。
ここで、Crは、工具基体表面の近傍(工具基体の表面から3μmの範囲内)で、工具基体成形後のガス窒化処理を行うことによって窒化物および/または炭窒化物として存在することが好ましい。Crが窒化物および/または炭窒化物として存在することにより、工具基体とダイヤモンド皮膜との密着性が向上する。
さらに、前記密着性の向上は、Crの含有量がCoの含有量に対して所定の割合にあるとき、すなわち、CoがMco質量%、CrがMcr質量%、それぞれ、工具基体に含有され、0.6≦Mcr/Mco≦1.3を満足するときにより一層確実に達成される。
粒成長抑制剤の含有割合:
粒成長抑制剤とは、硬質粒子(硬質相)の成長を抑制する働きを有するものであって、Nb、Zr、Ti、Taの1種または2種以上、あるいは、これら元素の1または2以上の炭化物、窒化物、炭窒化物の1種または複数種、例えば、NbC、TaC、(Ta、Nb)C、TiCNの1種または複数種である。粒成長抑制剤は含有しなくても(すなわち、0質量%であっても)よいが、含有するときは、1質量%以下とすることにより、粒の成長を抑制できる。含有割合は、0.05~0.90質量%がより好ましい。
不可避的不純物:
製造工程で不可避的に混入する不純物があり、これを不可避的不純物という。この不適的不純物は少ない方が好ましいが、含まれていたとしてもWC、Co、Crおよび粒成長抑制剤の含有割合が前記の範囲を満足し、MCo-s/MCo-iが所定の範囲を満足していれば、本発明が解決すべき課題は解決される。
工具基体刃先曲率:
工具基体刃先曲率は5μm以下のものが好ましい。その理由は、10μmを超えると、ダイヤモンド皮膜成膜後の刃先の曲率が大きくなりすぎ、加工面の品位が低下するためであり、本発明では、加工品位を確実なものとするために5μm以下とする。
ダイヤモンド皮膜を成膜した工具の工具基体の刃先の曲率は次のように測定する。すなわち、すくい面と逃げ面とが交差する稜線を含む刃先近傍の任意の逃げ面に垂直な方向の断面(膜厚方向の断面である縦断面)をCPにて加工し、加工した断面を走査電子顕微鏡により適切な倍率(例、倍率5000倍)にてすくい面と逃げ面とが交差する稜線を含む刃先近傍を反射電子像にて観察し、すくい面と逃げ面とが交差する稜線の曲率を画像解析により測定する。
なお、ダイヤモンド被覆工具を製造する工程中に測定する場合は、後述するダイヤモンド皮膜成膜前に実施する前処理後の刃先に対して、すくい面と逃げ面とが交差する稜線を含む刃先近傍をレーザー顕微鏡で観察し、すくい面と逃げ面とが交差する稜線に対して垂直な線分を分析する。
2.ダイヤモンド被覆層
ダイヤモンド被覆層の厚さは特に制約がないが、平均層厚が3~30μmのものが好ましい。その理由は、3μm未満では、長期の使用にわたって十分な耐摩耗性を発揮できず、一方、30μmを超えると、チッピング、欠損、剥離を生じやすくなり、刃先が丸みを帯びて加工精度が低下するためである。
ここで、ダイヤモンド皮膜の平均膜厚の測定は、工具基体に垂直な方向の断面(膜厚方向の断面である縦断面)をCPにて加工し、加工した断面を走査電子顕微鏡により適切な倍率(例、倍率5000倍)で膜厚を測定し、例えば、観察視野内の5点の膜厚を測定して平均して求めることができる。
3.製造方法
本発明のダイヤモンド被覆超硬合金製工具は、例えば、以下のようにして製造することができる。
(1)原料粉末の準備
原料粉末として、平均粒径が1μm以下のWC粉末、平均粒径が1~3μmのCo粉末、Cr粉末、および、必要に応じて粒成長抑制剤を準備する。
(2)粉砕・混合
本発明で規定する組成となるように、前記原料粉末をボールミルにより粉砕・混合し、焼結体原料粉末を得る。
(3)成形、焼結、切削加工
得られた焼結体原料粉末を、所定圧力で成形して成形体を作製し、これを真空下で仮焼結し、その後、本焼結により焼結体を得る。その後、この焼結体を研削加工して所定形状の工具基体を製作する。
(4)ガス窒化処理
このようにして得られた、所定形状の工具基体を1150~1250℃でガス窒化処理を行う。ここで、窒化処理温度がCoの液相出現温度に達しないため、所定の寸法精度を得ることができる。また、十分な高温で窒化処理を行うことで、Crの窒化物および/または炭窒化物が工具表面に生成される。
(5)ダイヤモンド被覆層の形成
前記工具基体上にダイヤモンド皮膜を形成する。
次に、実施例について説明する。
ここでは、本発明に係るダイヤモンド被覆工具の実施例としてダイヤモンド被覆ドリルについて述べるが、本発明はこれに限られるものではなく、ダイヤモンド被覆合金インサート、ダイヤモンド被覆エンドミルなどの各種のダイヤモンド被覆工具に適用できることは云うまでもない。
工具基体の製造:
原料粉末として、1μm以下の平均粒径を有するWC粉末、1~3μmの平均粒径を有するCo粉末、Cr粉末、および粒成長抑制剤を用意し、これらの原料粉末を表1に示される焼結後組成(SEM-EDS分析値)となるように配合し、ボールミルで96時間湿式混合して乾燥した後、100MPaの圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を仮焼結後、6Paの真空中、温度:1400~1500℃に1時間保持の条件で本焼結し、直径が10mmの工具基体形成用丸棒焼結体を形成し、さらに、前記丸棒焼結体から、研削加工にて、直径7mmのドリル形状の超硬合金製の工具基体(本発明工具基体)A~Fを製作した。なお、表1において、各成分の組成の和が100質量%とならないものがある理由は、不可避的不純物が存在するためである。
ガス窒化処理
この工具基体A~Fをエタノール中で超音波洗浄後、ガス処理室に載置して、以下の条件で窒化処理を行った。
ガス分圧:70~200Torr
炉内温度:1150~1250℃
処理時間:1.5~5.0時間
前処理:
引き続いて、この工具基体A~Fを粒径1~2μmのダイヤモンド粉末を含むイソプロピルアルコール液中で10分間の超音波処理を行なった。
刃先曲率の測定:
前記のとおり、工具基体A~Fに対して刃先曲率をレーザー顕微鏡にて測定し、5μm以下であることを確認した。
ダイヤモンド被覆層の形成:
前記前処理を施した工具基体A~Fを熱フィラメントCVD装置に装入した。そして、フィラメント温度を2000~2200℃、ガス圧2~6Torr(266.6~800.0Pa)の下で、水素ガスとメタンガスとの流量比を調整し、基体温度を750~900℃に所定の時間維持しダイヤモンド皮膜を成膜して、それぞれ、本発明のダイヤモンド被覆ドリル(以下、「本発明被覆工具」という)A1~F1を作製した。
成膜時間を調整し、前記した方法によりダイヤモンド皮膜の平均厚が12~14μmとなるようにした。
比較のために、1μm以下の平均粒径を有するWC粉末を含む原料粉を表1に示される焼結後の組成になるように配合し、工具基体(比較工具基体)a~fを前記工具基体A~Fと同様に製作して、前記本発明のダイヤモンド被覆ドリルを製造した工程と同様の工程により、それぞれ、比較例のダイヤモンド被覆ドリル(以下、「比較被覆工具」という)a1~f1を作製した。ここで、工具基体a~fに対して、刃先曲率をレーザー顕微鏡にて測定し、5μm以下であることを確認した。なお、ダイヤモンド皮膜の平均厚さが12~14μmとなるようにダイヤモンド皮膜の成膜時間を調整した。
表1に示すように、工具基体c、fはエッチング処理を行い工具基体表面のCoを除去し、工具基体a、c、eおよびfは窒化処理を行っていない。
Figure 0007216916000001
続いて、前記本発明被覆工具A1~F1および比較被覆工具a1~f1について、下記条件で穴開け回数の評価試験を行い、工具寿命を調べた。
被削材:CFRP(厚さ20mm)と
Al合金(A7075:厚さ7mm)からなる複合材
切削速度:VC=100m/分
送り量:fr=0.05mm/rev
工具寿命の判定方法:加工穴数50毎に、ドリルの刃先とワーク(被削材)を観察し、刃先に基体の露出、欠損、チッピングが生じた時点でドリルの寿命とした。また、加工精度を保つ基準として、被削材の加工面のバリ高さが0.3mmを超えない、層間剥離が加工面から1mm以内に抑えられた加工状態を合格判定とし、合格判定を満足しない加工穴数となった時点を穴数を表2に示す。
Figure 0007216916000002
表3に示される結果から、本発明被覆工具A1~F1は、本発明で規定する事項を満足する工具基体を用いているため長期にわたり安定した加工穴を得ることができた。
これに対して、本発明の規定する事項を一つでも満足しない工具基体を用いている比較被覆工具a1~f1においては、いずれも、欠損・チッピングが発生するばかりか、切削長が短い(加工穴の数が少ない)、または短時間で使用寿命に至っている。
前述のとおり、本発明のダイヤモンド被覆超硬合金製工具は、難削材であるCFRP/Al材等の切削において、長期の使用にわたり優れた耐溶着性、耐摩耗性を発揮するものであるから、切削加工装置のFA化、ならびに、切削加工の省力化および省エネ化、さらには、低コスト化に十分に満足できる対応ができるものである。

Claims (3)

  1. WCを含む硬質相とCoを含む結合相を有し、WC:72.4~93.6質量%、Co:4.0~12.0質量%、Cr:2.4~15.6質量%、粒成長抑制剤:1.0質量%以下を含有し、残部が不可避的不純物である組成の工具基体に、ダイヤモンド皮膜が被覆されたダイヤモンド被覆超硬合金製工具であって、
    前記Crは、前記工具基体の表面から3μmの範囲内で窒化物および/または炭窒化物として存在し、
    前記工具基体と前記ダイヤモンド皮膜との界面から500μm以上離れた前記工具基体内部のCo含有割合をMCo-i(質量%)、前記界面から2μmまでの前記工具基体内部のCo含有割合をMCo-s(質量%)とするとき、0.7≦MCo-s/MCo-i≦1.3であることを特徴とするダイヤモンド被覆超硬合金製工具。
  2. 前記工具基体にCoがMCo質量%、CrがMCr質量%、それぞれ、含有されるとき、0.6≦MCr/MCo≦1.3であることを特徴とする請求項1に記載されたダイヤモンド被覆超硬合金製工具。
  3. 工具刃先の任意の逃げ面に垂直な断面にて工具基体のすくい面と逃げ面とが交差する稜線の曲率半径が5μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載されたダイヤモンド被覆超硬合金製工具。
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