JP6171525B2 - 刃先強度を向上させたダイヤモンド被覆超硬合金製切削工具 - Google Patents

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Description

本発明は、CFRPなどの難削材の高速切削加工において、すぐれた靭性および強度を備えることによって、刃先がすぐれた耐欠損性を発揮するダイヤモンド被覆炭化タングステン基超硬合金製切削工具に関する。
従来、炭化タングステン基(WC基)超硬合金(以下、単に「超硬合金」という)からなる基体に、ダイヤモンド膜を被覆したダイヤモンド被覆超硬合金製切削工具が知られているが、従来のダイヤモンド被覆超硬合金製切削工具においては、超硬合金基体とダイヤモンド膜の密着性が十分でないため、これを改善するために超硬合金基体上にダイヤモンドを成膜する際に、ダイヤモンドの形成を阻害するコバルトを除去させた基体上に成膜するなどの種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1に示すように、ダイヤモンド被覆超硬合金製切削工具において、該超硬合金の表面から100μmまでの間の結合相を該超硬合金内部の結合相に比較して減少させ、一方、超硬合金表面から5〜100μmの間に存在する結合相富化層の結合相量を合金内部の結合相量に対して1.2〜5倍に富化することが提案されており、これによって、ダイヤモンド膜と超硬合金基体の密着性が改善されるとされている。
また、特許文献2に示すように、ダイヤモンド被覆超硬合金製切削工具において、熱処理により、超硬合金の表面からその内部に向って少なくとも1μm(好ましくは3〜100μm、特に好ましくは10〜50μm)の表面層における平均結合相量を、該合金内部における平均結合相量よりも減少させ、該表面層における結合相量を、該合金の表面で最小とするとともに、該合金の内部に向って漸増させて、内部の平均結合相量に達するようにすることによって、ダイヤモンド膜と超硬合金の密着性改善を図ることが提案されている。
さらに、例えば、特許文献3に示すように、WC基超硬合金製工具基体をダイヤモンドで被覆するにあたり、その表面を、ムラカミ(Murakami)試薬中でエッチングし、次いで、硫酸と過酸化水素の溶液中でエッチングすることにより、工具基体とダイヤモンド膜の密着性を改善することが提案されている。
特許第2539922号明細書 特開平3−115571号公報 特許第3504675号明細書
近年の切削加工の技術分野における省力化および省エネ化、さらに低コスト化に対する要求は強く、これに伴い、切削加工は益々高速化の傾向にあるが、前記従来ダイヤモンド被覆超硬合金製切削工具(以下、単に「ダイヤモンド被覆工具」という)を、例えば、CFRPなどの難削材のドリル加工の様な鋭利な刃先が要求される切削加工に供した場合には、超硬合金製工具基体の靭性が十分でないためチッピングを発生しやすく、早期に寿命に至る場合があった。また、CFRPなどの難削材を高速切削する場合には、特に高い刃先強度が要求されるが、従来ダイヤモンド被覆工具は、刃先強度が十分でなく、また、ダイヤモンド膜の剥離が生じやすいため、長期の使用に亘って、満足できる耐チッピング性および耐摩耗性を発揮することはできず、その結果、比較的短時間で使用寿命に至ることが多かった。
例えば、特許文献3に示すような処理を行った場合、ドリル加工のような鋭利な刃先が要求される切削では刃先基体の強度が低いためにチッピングなどを生じやすく、早期に寿命に至る場合があった。また、CFRPなどの被削材を高速切削する場合にも、高い刃先強度が要求されるが、早期にチッピングを生じ、工具寿命に至ることが多かった。
前述のようなダイヤモンド被覆工具の課題について本発明者らが鋭意、研究と実験を繰り返した結果、ダイヤモンド被覆工具においては、前述のようにダイヤモンド膜と工具基体との密着性を上げるために工具基体の最表面に存在する金属結合相中のコバルトを除去する処理を行っているが、その結果、刃先における靭性の低下を招き、刃先強度低下の原因となっていることを突き止めた。
そこで、本発明が解決しようとする技術的課題、すなわち本発明の目的は、ダイヤモンド被覆工具において、ダイヤモンド膜と工具基体との密着性を向上させるとともに刃先の靭性を向上させることにより、刃先強度を向上させ、耐チッピング性および耐摩耗性を向上させたダイヤモンド被覆工具を提供することである。
そこで、本発明者らは、例えば、CFRPなどの高速穴あけ加工や高速切削のように、切れ刃に高負荷が作用する切削条件に用いた場合でも、刃先近傍がすぐれた靭性を備えるとともに、長期の使用に亘って、すぐれた耐摩耗性を発揮するダイヤモンド被覆工具を提供すべく鋭意研究を重ねたところ、次のような知見を得た。
すなわち、(1)超硬合金基体の表面近傍のCoを化学的なエッチング(硫酸+過酸化水素)によって除去する。(2)WC粒子近傍でCr濃度を富化させる焼結後に徐冷(所定温度で焼結後に所定の冷却速度、例えば1〜4℃/minとなるようにヒータに流す電流を制御して冷却する、いわゆる通電冷却を行う)を行うと、徐冷時にWCが粒成長し、同時にWCの成長界面でCr濃度が濃化する。(3)前述の工程で得られた焼結体は、WC粒子近傍でCrが濃化したCo結合相がエッチングされにくくなり、刃先近傍のCo除去層は、Co−Cr−W合金によりWC粒界が強化された層とすることができる。(4)この方法で処理を行った基体上にはダイヤモンドの核生成密度が高く、ダイヤモンド膜の付着強度にもすぐれ、結果として刃先強度の高いダイヤモンド被覆工具を得ることが出来る。
本発明は、前記知見に基づいてなされたものであって、
「 炭化タングステンとコバルトを主成分とし、少なくとも3〜15質量%のコバルトおよび0.1〜2質量%のクロムを含有する炭化タングステン基超硬合金からなる工具基体にダイヤモンド膜を被覆形成したダイヤモンド被覆超硬合金製切削工具において、
前記ダイヤモンド膜が、平均膜厚3〜30μmの層厚を有し、
前記工具基体とダイヤモンド膜の界面から工具基体の内部方向へ大きくとも5μmの深さ領域に、コバルトを主成分とする金属結合相の一部が除去された金属結合相一部除去領域を有し、
当該工具の刃先近傍の逃げ面の直角断面における観察で前記金属結合相一部除去領域内のクロムのコバルトに対する質量割合が、0.05以上0.21以下の範囲であるとともに工具基体の100μm以上内部における金属結合相における前記質量割合と比較して、1.2〜3.0倍であることを特徴とするダイヤモンド被覆超硬合金製切削工具。」
を特徴とするものである。
ここで、本発明における「界面から工具基体の内部方向へ大きくとも5μmの深さ領域」とは、「界面から工具基体の内部方向へ1μmまでの深さの領域」であっても構わないし「界面から工具基体の内部方向へ3μmまでの深さの領域」であっても構わないし、大きくとも(最大限)「界面から工具基体の内部方向へ5μmまでの深さの領域」ということを意味している。
以下、本発明について詳細に説明する。
金属結合相一部除去領域の深さ:
基体表面の金属結合相(主としてコバルト/コバルト合金)の一部を除去する目的は、工具基体にダイヤモンド膜を成膜するためである。その深さについては、特に限定しないが、1μm未満であると残留しているコバルト/コバルト合金の影響が依然として大きく、耐剥離性が十分でないため好ましくない。一方、5μmを超えると、工具基体の表面から多量の結合金属が除去されることによって超硬合金の靭性の低下が大きくなり、その結果、耐チッピング性が低下する。そのため、金属結合相一部除去領域の深さは、工具基体の内部方向へ大きくとも5μmと定めた。
コバルトを主成分とする金属結合相の一部が除去された金属結合相一部除去領域:
本発明において、「コバルトを主成分とした金属結合相の一部が除去」されることの意義は、除去されるものとして主としてコバルトおよび/またはコバルト合金であることを意味しているが、超硬合金によっては、耐熱性を増すために炭化チタン(TiC)や炭化タンタルニオブ((TaNb)C)を混ぜたり、耐食性を増すためにコバルトの一部をニッケル(Ni)に置き換えたりすることがある。このような場合、「コバルトを主成分とした金属結合相の一部が除去」には、コバルトおよび/またはコバルト合金のみならず、炭化チタン(TiC)や炭化タンタルニオブ((TaNb)C)、Niなども包含される。
金属結合相一部除去領域におけるクロムのコバルトに対する質量比:
金属結合相一部除去領域において、クロムのコバルトに対する質量比が、0.05未満では刃先の靱性確保の点で不十分であり、0.21を超える場合、WCと金属結合相界面の強度が低下する傾向があり、残留した結合相が少ない場合には強化低下によって、CFRPの高送り切削ではチッピングが起きやすくなるため、0.05以上0.21以下とした。
工具基体の100μm以上内部における金属結合相におけるクロムのコバルトに対する質量割合に対する金属結合相一部除去領域におけるクロムのコバルトに対する質量割合:
クロム濃度の高いコバルト合金は靭性が高く、耐クラック進展性にすぐれる。一方、タングステン濃度が高いコバルト合金はヤング率が高く、剛性にすぐれる。そのため、内部はクロムよりタングステン濃度の高いコバルト合金で構成し、刃先などの表面はクロム濃度が高い合金で構成することで、工具としての性能が高くなる。
工具基体の表面近傍、すなわち、金属結合相一部除去領域のコバルトに対するクロムの質量比が内部に比べて1.2倍未満では靭性向上の効果が小さく、一方、3倍を超えると刃先の強度低下を招くため、1.2〜3.0倍とした。
工具基体の組成:
本発明のダイヤモンド被覆工具の工具基体は、硬質相成分としての炭化タングステン(WCで示す)と金属結合相成分としてのCoおよびCrを少なくとも含有し、かつ、Co含有量は3〜15質量%とし、Cr含有量は0.1〜2質量%とする。Co成分には、金属結合相を形成して基体の強度および靭性を向上させる作用があるが、WC基超硬合金中のCo含有量が3質量%未満では、特に靭性の向上が望めず、一方、Co含有量が15質量%を超えると、塑性変形が起り易くなって、偏摩耗の進行が促進されるようになることから、WC基超硬合金中のCo含有量は3〜15質量%と定めた。また、Cr成分には、金属結合相の強化および耐食性を向上させる作用があり、本発明における基体表面に特異な構造を形成してWC粒界を強化する効果を発現させる役割を担うが、0.1質量%未満では、基体表面の特異な構造を形成することが出来ず、一方、Cr含有量が2質量%を超えると、Cr炭化物が析出して、基体強度を低下させることがあることから、WC基超硬合金中のCr含有量は0.1〜2質量%と定めた。
ダイヤモンド膜の平均膜厚:
工具基体表面に被覆するダイヤモンド膜は、その厚さが3μm未満では、長期の使用に亘って十分な耐摩耗性を発揮することができず、一方、ダイヤモンド膜厚が30μmを超えると、チッピング、欠損、剥離が発生しやすくなることから、ダイヤモンド膜の平均膜厚は、3〜30μmと定めた。
前述したような本発明のダイヤモンド被覆工具の工具基体は、次のような製法で製造することができる。(1)まず、所定のコバルトとクロムを含有する超硬合金を焼結する際、焼結保持温度(1380〜1500℃)から所定の冷却速度、例えば、1.5〜3℃/minの範囲となるようにヒータに流す電流を制御して冷却する、いわゆる通電冷却により1200℃以下まで徐冷することで焼結体を得る。(2)次いで、前記焼結体を研磨加工して、超硬合金製ドリルを形成し、硫酸と過酸化水素と水を2:3:100に混合した溶液に数秒浸漬して表面近傍のCoをエッチングで除去したものを、熱フィラメントCVD装置に装入する。(3)さらに、フィラメント温度を2200℃、水素とメタンを100:1の流量比で流しながら、基板温度900℃にてダイヤモンド膜の成膜を平均膜厚が3〜30μmとなるまで行い製品とする。
こうしてできた本発明のダイヤモンド被覆工具の工具基体は、表面近傍がCr濃度の高いコバルト合金であることから靱性が高くなり、すぐれた耐クラック進展性を発揮する。一方、工具基体の内部がCrよりタングステン濃度の高いコバルト合金であることから、ヤング率が高く、剛性にすぐれる。
したがって、工具基体表面近傍のCoが除去されているため、この工具基体上へのダイヤモンドの成膜が阻害されないとともに、前述のようにCr濃度分布が、工具基体表面近傍と工具基体内部とでCoとの質量比によってバランスがとれているために、工具基体の折損を防ぐとともに刃先強度の高いダイヤモンド被覆工具を得ることが出来る。
すなわち、工具基体とダイヤモンド膜の接合強度(密着性)を上げるために工具基体表面の金属結合相(主としてCo合金)を除去すると、刃先強度が低下するというという、いわば、トレードオフの関係にあるダイヤモンド被覆工具の膜の密着性と刃先強度の問題を工具基体表層近傍の金属結合相におけるCrとCoの質量比と工具基体内部のCrとCoの質量比を制御することにより、靭性とヤング率の深さ方向におけるバランスを図るという新規な技術的思想により解決を図ったものである。
本発明のダイヤモンド被覆超硬合金製切削工具は、炭化タングステンとコバルトを主成分とし、少なくとも3〜15質量%のコバルトおよび0.1〜2質量%のクロムを含有する炭化タングステン基超硬合金からなる工具基体にダイヤモンド膜を被覆形成したダイヤモンド被覆超硬合金製切削工具において、ダイヤモンド膜が、平均膜厚3〜30μmの層厚を有し、工具基体とダイヤモンド膜の界面から工具基体の内部方向へ大きくとも5μmまでの深さ領域に、コバルトを主成分とする金属結合相の一部が除去された金属結合相一部除去領域を有し、当該工具の刃先近傍の逃げ面の直角断面における観察で金属結合相一部除去領域内のクロムのコバルトに対する質量割合が、0.05以上0.21以下の範囲であるとともに工具基体の100μm以上内部における金属結合相における質量割合と比較して、1.2〜3.0倍であることによって、工具基体とダイヤモンド膜との密着性を向上させるとともに刃先強度を向上させたものであって、CFRPなどの切削加工において、すぐれた耐チッピング性、刃先強度、耐摩耗性を発揮するものであって、その効果は絶大である。
本発明のダイヤモンド被覆膜および超硬基体の断面を模式的に表した模式図である。
つぎに、本発明のダイヤモンド被覆工具について、実施例により具体的に説明する。
なお、ここでは、ダイヤモンド被覆工具の具体例としてダイヤモンド被覆超硬合金製ドリルについて述べるが、本発明はこれに限られるものではなく、ダイヤモンド被覆超硬合金製インサート、ダイヤモンド被覆超硬合金製エンドミル等、各種のダイヤモンド被覆工具に適用できるものである。
(a)原料粉末として、いずれも0.5〜3μmの範囲内の所定の平均粒径を有するWC粉末、Co粉末、Cr粉末、VC粉末、TaC粉末、NbC粉末、TiC粉末およびZrC粉末を、表1に示されるドリル基体1〜5として示される割合に配合し、さらにバインダーと溶剤を加えてアセトン中で24時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、いずれも100MPaの圧力でプレス成形して、直径が10mmの丸棒圧粉体とし、これらの丸棒圧粉体を、1Paの真空雰囲気中、1380〜1500℃の温度で1〜2時間保持後、1.5〜3℃/minの冷却速度で1200℃以下まで徐冷することで焼結体を得た後、該焼結体を研磨加工することにより、WC基超硬合金焼結体1〜5を製造した。
ついで、前記WC基超硬合金焼結体1〜5を、溝形成部の外径寸法が8mmとなるように研削加工することにより、WC基超硬合金製ドリル基体(以下、単に「ドリル基体」という)1〜5を製造した。
(b)ついで、前記ドリル基体1〜5を、硫酸と過酸化水素と水を2:3:100(容積比)で混合したエッチング液に3〜10秒浸漬して、ドリル基体1〜5の表面近傍のCoを主成分とする金属結合相の一部を数ミクロンの深さまでエッチングで除去する。
(c)さらに、このドリル基体1〜5を、熱フィラメントCVD装置に装入し、フィラメント温度を2200℃、水素ガスとメタンガスを100:1の流量比で流しながら、基体温度を900℃に維持して3〜30μmの膜厚のダイヤモンド膜を成膜する。
前記製造工程により、表2に示す本発明のダイヤモンド被覆WC基超硬合金製ドリル(以下、単に、「本発明ドリル」という)1〜5を製造した。
前記製造工程によれば、(a)の工程の徐冷の際に、工具基体表面近傍におけるWCが粒成長し、同時にWCの成長界面(但し、WC同士およびWCと他の炭化物との接合粒界は除く)でCrの濃度が高くなる。(b)の工程で生じた工具基体の表面近傍の金属結合相の一部が除去された領域(金属結合相一部除去領域)におけるCrとCoの質量比が工具基体内部のCrとCoとの質量比に対して、1.2〜3.0倍に制御される。
比較のため、原料粉末として、いずれも0.5〜3μmの範囲内の所定の平均粒径を有するWC粉末、Co粉末、Cr粉末、VC粉末、TaC粉末、NbC粉末、TiC粉末およびZrC粉末を、表1に示されるドリル基体1〜6として示される割合に配合し、さらにバインダーと溶剤を加えてアセトン中で24時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、いずれも100MPaの圧力でプレス成形して、直径が10mmの丸棒圧粉体とし、これらの丸棒圧粉体を、1Paの真空雰囲気中、1380〜1500℃の温度で1〜2時間保持して焼結体を得た後、該焼結体を研磨加工することにより、WC基超硬合金焼結体1〜6を製造した。
ついで、前記WC基超硬合金焼結体1〜6を、溝形成部の外径寸法が8mmとなるように研削加工することにより、比較例WC基超硬合金製ドリル基体(以下、単に「比較例ドリル基体」という)1〜6を製造した。さらに、前記ドリル基体3に対して前述の(a)における徐冷工程を0.5℃/minの冷却速度で1200℃以下まで徐冷することで、比較例ドリル基体7を製造し、表3に示す比較例のダイヤモンド被覆WC基超硬合金製ドリル(以下、単に、「比較例ドリル」という)1〜7を製造した。
ついで、前述のようにして製造した本発明ドリル1〜5および比較例ドリル1〜7について、ダイヤモンド膜とドリル基体界面近傍をクロスセクションポリッシャーによって表面に対して垂直に断面研磨を行い、ダイヤモンド膜とドリル基体界面近傍において、金属結合相の一部が化学処理によって除去された領域、すなわち、金属結合相一部除去領域の平均厚みをX(μm)とした場合、0.5X(μm)×0.5X(μm)のエリアを前記金属結合相一部除去領域内で3箇所を無作為に選定し、オージェ電子分光による元素マッピングおよび定量分析により、クロムとコバルトの質量比Aを測定した。
また、同様にドリル基体の表面から100μm以上内部の領域において、1(μm)×1(μm)のエリアを前記ドリル基体の表面から100μm以上内部の領域内で3箇所を無作為に選定し、オージェ電子分光による元素マッピングおよび定量分析により、クロムとコバルトの質量比Bを測定した。そして、A/Bを計算した。
なお、測定値は3箇所の平均とした。また、金属結合相一部除去領域の平均厚みXについては、前記ドリル基体の表面に対して垂直な断面で基体表面の10ミクロン以上が略直線とみなされる部位において、結合相の一部が除去された領域の幅を3点測定し、これを平均厚みXとした。
本発明ドリル1〜5および比較例ドリル1〜7のダイヤモンド膜の膜厚を、走査型電子顕微鏡(倍率5000倍)を用いて測定し、観察視野内の5点の層厚を測って平均して平均膜厚を測った。
表2、3にこれらの値を示す。
つぎに、本発明ドリル1〜5および比較例ドリル1〜7(いずれも、ドリル径はφ8mm)を用いて、以下の条件で、CFRPの高送りドリル穴開け試験を行った。
切削速度:180m/min,
送り:0.28mm/rev,
穴深さ:20mm(貫通穴),
前記切削試験において、正常摩耗の場合は被削材の穴の入り口側もしくは出口側に発生するバリが0.5mmを超えた時点で使用寿命とし、それまでの穴あけ加工数を測定した。
また、ドリル折損等が原因で使用寿命に至った場合には、それまでの穴あけ加工数を測定した。
表4にこれらの測定結果を示す。
表2〜4の結果からも明らかなように、本発明ドリル1〜5は、ダイヤモンド膜が平均膜厚3〜30μmの層厚を有し、炭化タングステン基超硬合金基体とダイヤモンド膜の界面から基体内部方向へ大きくとも5μmの深さにおける金属結合相の一部が除去された金属結合相一部除去領域を有し、工具の刃先近傍の逃げ面の直角断面における観察で金属結合相一部除去領域内のCrとCoに対する質量比が0.05以上0.21以下であるとともに基体内部のCrのCoに対する質量比よりも1.2〜3.0倍大きいことによって、CFRP等の難削材の高送りドリル穴開け切削加工において、すぐれた刃先強度を示すとともに、長期の使用に亘ってぐれた耐摩耗性を発揮している。
これに対して、本発明ドリルのような金属結合相一部除去領域内のCrとCoの質量比が所定の範囲に入っていないか、基体内部のCrとCoの質量比との関係が所定の関係を満たしていない比較ドリル1〜7は、刃先強度が劣り、短期に寿命に至ることが明らかである。
本発明のダイヤモンド被覆超硬合金製切削工具は、ダイヤモンド被覆超硬合金製ドリルばかりでなく、ダイヤモンド被覆超硬合金製インサート、ダイヤモンド被覆超硬合金製エンドミル等、各種のダイヤモンド被覆工具に適用できるものであり、すぐれた刃先強度と耐摩耗性を発揮することから、切削加工の省エネ化、低コスト化に十分満足に対応できるものである。

Claims (1)

  1. 炭化タングステンとコバルトを主成分とし、少なくとも3〜15質量%のコバルトおよび0.1〜2質量%のクロムを含有する炭化タングステン基超硬合金からなる工具基体にダイヤモンド膜を被覆形成したダイヤモンド被覆超硬合金製切削工具において、
    前記ダイヤモンド膜が、平均膜厚3〜30μmの層厚を有し、
    前記工具基体とダイヤモンド膜の界面から工具基体の内部方向へ大きくとも5μmの深さ領域に、コバルトを主成分とする金属結合相の一部が除去された金属結合相一部除去領域を有し、
    当該工具の刃先近傍の逃げ面の直角断面における観察で前記金属結合相一部除去領域内のクロムのコバルトに対する質量比が、0.05以上0.21以下の範囲であるとともに工具基体の100μm以上内部における金属結合相における前記質量比と比較して、1.2〜3.0倍であることを特徴とするダイヤモンド被覆超硬合金製切削工具。
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