JP2007162065A - 被覆超硬合金部材及び希土類元素含有超硬合金の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐摩耗性と耐熱・耐塑性変形性が優れ、しかも、強度、靭性も優れている被覆超硬合金部材を実現し、提供することである。また、元来酸化されやすい希土類元素を実質的に酸化させることなく結合相中に含有させる希土類元素含有超硬合金の製造方法を提供することである。
【解決手段】超硬合金のWCの平均粒径が1.5μm以上であり、且つ、結合相中に希土類元素が含有され、希土類元素が存在する領域の酸素量が0〜5質量%であることを特徴とする被覆超硬合金部材である。また、本発明は、希土類元素用原料粉末として、希土類元素とCoのモル比が1:2〜1:8.5であり、しかも酸素含有量が0.01〜1質量%である希土類元素とCoとからなる合金の粉末を用いることを特徴とする希土類元素含有超硬合金の製造方法である。
【選択図】なし
【解決手段】超硬合金のWCの平均粒径が1.5μm以上であり、且つ、結合相中に希土類元素が含有され、希土類元素が存在する領域の酸素量が0〜5質量%であることを特徴とする被覆超硬合金部材である。また、本発明は、希土類元素用原料粉末として、希土類元素とCoのモル比が1:2〜1:8.5であり、しかも酸素含有量が0.01〜1質量%である希土類元素とCoとからなる合金の粉末を用いることを特徴とする希土類元素含有超硬合金の製造方法である。
【選択図】なし
Description
本発明は、超硬合金材の表面に皮膜が形成されている被覆超硬合金部材と、希土類元素含有超硬合金の製造方法に関する。
超硬合金部材の強度と耐熱性の両者を更に高める方策として、希土類元素を添加することが考えられ、その具体的例として、特許文献1〜4が開示されている。
特許文献1は、Moが酸化しMoO3として揮発することを防ぐため、Moを主成分とする硬質合金の結合金属中に、希土類元素を結合金属の0.1〜10重量%含有させることを開示している。しかし、特許文献1は酸化物が揮発し易いMoを主とする硬質合金でのみ有効であり、しかも、希土類元素が酸化される欠点を全く考慮していない。また、原料粉末として希土類金属を添加しているため、混合粉末をボールミルを用いてアルコール溶媒中で混合するときに酸化されてしまい、硬質合金中に希土類酸化物が析出し、合金の強度を大きく低下させてしまう欠点がある。
特許文献2は、結合相中に微細なNi3Al相を微細均一に析出させることにより高温強度と耐酸化性および高温耐食性に優れた炭化タングステン基超硬合金を開示している。また、0.01〜0.5%の希土類元素が結合相に固溶していることにより、耐酸化性(耐熱性)および高温耐食性を向上させる作用があること、および、希土類元素を窒化物またはCoおよびNiなどとの化合物の形で配合するのが望ましいと記載している。しかし、希土類元素は酸化されやすく、酸化物を形成することにより超硬合金材の強度を急激に低下させることは全く考慮していない。しかも、希土類金属とCoとの金属間化合物は靭性を低下させるためようになることから避けるべきものとしており、実施例において、希土類窒化物または希土類金属のみを用い、希土類金属とCoとの金属間化合物を原料粉末に用いることは全く検討していない。ましてや、該金属間化合物を構成する希土類金属とCoのモル比や、該金属間化合物からなる粉末の含有酸素量は全く考慮もしていない。
特許文献3は、Ti、Zr、Hf、Ta、Nb、V、Cr、Mo、希土類元素等からなる改質物質を焼結合金の表面から濃度勾配を持たせて拡散させることにより、焼結合金表面の耐塑性変形性と耐摩耗性を向上させることを開示している。しかし、希土類元素が酸化される欠点は全く考慮もしていない。また、希土類元素とTi、Zr、Hf、Ta、Nb、V、Cr、Mo等の硬質相形成成分との相互合金や相互固溶体を用いることは検討しているが、希土類元素とCo等の結合相形成金属との金属化合物を原料粉に用いることは全く検討もしていない。
特許文献4は、希土類元素とイオウ元素及び/又は希土類元素とイオウ元素と酸素元素とでなる分散物質を硬質焼結合金中に含有させることにより潤滑性と耐溶着性を付加することが開示されており、結合相中に希土類元素を固溶または金属間化合物として存在させることにより、焼結合金の強度、耐熱性、耐酸化性などの特性を向上させる効果があることが開示されている。しかし、希土類元素が酸化される欠点は全く考慮もしていない。また、希土類元素とCo等の結合相形成金属との金属化合物を原料粉に用いることは全く検討もしていない。
このように、特許文献1〜4に開示されている従来技術では、希土類元素は酸化されやすく、希土類元素の酸化物が超硬合金材の強度を急激に低下させる欠点を有していること、および、この欠点を避けるための有効な手段が検討されておらず、配合粉の混合工程等で希土類元素が酸化してしまい、所期の特性が得られなくなる欠点があった。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、耐摩耗性と耐熱・耐塑性変形性が優れ、しかも、強度、靭性も優れている被覆超硬合金部材を実現し、提供することである。また、元来酸化されやすい希土類元素を実質的に酸化させることなく結合相中に含有させる希土類元素含有超硬合金の製造方法を提供することである。
特許文献2は、結合相中に微細なNi3Al相を微細均一に析出させることにより高温強度と耐酸化性および高温耐食性に優れた炭化タングステン基超硬合金を開示している。また、0.01〜0.5%の希土類元素が結合相に固溶していることにより、耐酸化性(耐熱性)および高温耐食性を向上させる作用があること、および、希土類元素を窒化物またはCoおよびNiなどとの化合物の形で配合するのが望ましいと記載している。しかし、希土類元素は酸化されやすく、酸化物を形成することにより超硬合金材の強度を急激に低下させることは全く考慮していない。しかも、希土類金属とCoとの金属間化合物は靭性を低下させるためようになることから避けるべきものとしており、実施例において、希土類窒化物または希土類金属のみを用い、希土類金属とCoとの金属間化合物を原料粉末に用いることは全く検討していない。ましてや、該金属間化合物を構成する希土類金属とCoのモル比や、該金属間化合物からなる粉末の含有酸素量は全く考慮もしていない。
特許文献3は、Ti、Zr、Hf、Ta、Nb、V、Cr、Mo、希土類元素等からなる改質物質を焼結合金の表面から濃度勾配を持たせて拡散させることにより、焼結合金表面の耐塑性変形性と耐摩耗性を向上させることを開示している。しかし、希土類元素が酸化される欠点は全く考慮もしていない。また、希土類元素とTi、Zr、Hf、Ta、Nb、V、Cr、Mo等の硬質相形成成分との相互合金や相互固溶体を用いることは検討しているが、希土類元素とCo等の結合相形成金属との金属化合物を原料粉に用いることは全く検討もしていない。
特許文献4は、希土類元素とイオウ元素及び/又は希土類元素とイオウ元素と酸素元素とでなる分散物質を硬質焼結合金中に含有させることにより潤滑性と耐溶着性を付加することが開示されており、結合相中に希土類元素を固溶または金属間化合物として存在させることにより、焼結合金の強度、耐熱性、耐酸化性などの特性を向上させる効果があることが開示されている。しかし、希土類元素が酸化される欠点は全く考慮もしていない。また、希土類元素とCo等の結合相形成金属との金属化合物を原料粉に用いることは全く検討もしていない。
このように、特許文献1〜4に開示されている従来技術では、希土類元素は酸化されやすく、希土類元素の酸化物が超硬合金材の強度を急激に低下させる欠点を有していること、および、この欠点を避けるための有効な手段が検討されておらず、配合粉の混合工程等で希土類元素が酸化してしまい、所期の特性が得られなくなる欠点があった。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、耐摩耗性と耐熱・耐塑性変形性が優れ、しかも、強度、靭性も優れている被覆超硬合金部材を実現し、提供することである。また、元来酸化されやすい希土類元素を実質的に酸化させることなく結合相中に含有させる希土類元素含有超硬合金の製造方法を提供することである。
本発明の第1の発明は、主に鉄族金属からなる結合相と、周期律表4a、5a、6a族金属から選択される少なくとも1種以上の炭化物固溶体、窒化物固溶体、炭窒化物固溶体の少なくとも1種以上を含有する硬質相、及び残WCと不可避不純物とから成る炭化タングステン基超硬合金の表面に、硬質皮膜が単層又は多重層被覆されており、該超硬合金のWCの平均粒径が1.5μm以上であり、且つ、該結合相中に希土類元素が含有され、希土類元素が存在する領域の酸素量が0〜5質量%であることを特徴とする被覆超硬合金部材である。この構成を採用することによって、耐摩耗性と耐熱・耐塑性変形性が優れ、しかも、強度、靭性も優れている被覆超硬合金部材を実現できることを見いだした。
本発明の第2の発明は、WCの平均粒径が1.5μm以上であり、しかも結合相中に希土類元素が含有されている希土類元素含有超硬合金の製造方法であり、該製造方法は、希土類元素用原料粉末として、希土類元素とCoのモル比が1:2〜1:8.5であり、しかも酸素含有量が0.01〜1質量%である希土類元素とCoとからなる合金粉末を湿式混合処理する第1の工程と、該湿式混合処理した粉末を乾燥し、所定の形状の圧粉体にプレス成形する第2の工程と、該圧粉体を真空雰囲気中で焼結する第3の工程とを有し、該第1の工程から該第3の工程によることを特徴とする希土類元素含有超硬合金の製造方法である。この方法を採用することによって、極めて酸化されやすい欠点を有している希土類元素を、超硬合金の製造工程中で実質的に酸化させることなく、結合相中に含有させることが出来るようになり、その結果、原子半径の大きい希土類元素を結合相中に含有しているため結合相の耐熱・耐塑性変形性と強度が優れ、しかも、希土類元素酸化物等からなる異物が超硬合金中に実質的に析出しておらず、局所的にも強度を大きく低下させることのない、極めて、強度と靭性、耐摩耗性、及び耐熱安定性が優れた均質な被覆超硬合金部材を製造する方法を見いだした。
本発明の第2の発明は、WCの平均粒径が1.5μm以上であり、しかも結合相中に希土類元素が含有されている希土類元素含有超硬合金の製造方法であり、該製造方法は、希土類元素用原料粉末として、希土類元素とCoのモル比が1:2〜1:8.5であり、しかも酸素含有量が0.01〜1質量%である希土類元素とCoとからなる合金粉末を湿式混合処理する第1の工程と、該湿式混合処理した粉末を乾燥し、所定の形状の圧粉体にプレス成形する第2の工程と、該圧粉体を真空雰囲気中で焼結する第3の工程とを有し、該第1の工程から該第3の工程によることを特徴とする希土類元素含有超硬合金の製造方法である。この方法を採用することによって、極めて酸化されやすい欠点を有している希土類元素を、超硬合金の製造工程中で実質的に酸化させることなく、結合相中に含有させることが出来るようになり、その結果、原子半径の大きい希土類元素を結合相中に含有しているため結合相の耐熱・耐塑性変形性と強度が優れ、しかも、希土類元素酸化物等からなる異物が超硬合金中に実質的に析出しておらず、局所的にも強度を大きく低下させることのない、極めて、強度と靭性、耐摩耗性、及び耐熱安定性が優れた均質な被覆超硬合金部材を製造する方法を見いだした。
本発明の被覆超硬合金部材は、超硬合金を構成する結合相中の希土類元素含有量が、Co量の0.1〜10質量%であることが好ましく、また、希土類元素に少なくともSm又はGdのいずれかが含まれていることが好ましい。また、結合相中にCrがCo量の1〜10質量%含有されていることが好ましい。また、超硬合金を構成する硬質相中にZr又はTaのいずれかが含有されていることが好ましく、また、硬質皮膜直下の硬質相減少領域における該硬質相の量Kと、超硬合金部材内部における該硬質相の量Jとの比K/Jが0.95以上であることが好ましい。また、本発明の製造方法は、硬質皮膜直下の硬質相減少領域における該硬質相の量Kと、超硬合金部材内部における該硬質相の量Jとの比K/Jが0.95以上である希土類元素含有超硬合金を製造する方法であることが好ましい。
本発明の被覆超硬合金部材は、耐摩耗性と耐熱・耐塑性変形性が優れ、しかも、強度、靭性も優れている被覆超硬合金部材を提供することができた。また、本発明の希土類元素含有超硬合金の製造方法により、酸化されやすい希土類元素を実質的に酸化させることなく結合相中に含有させる希土類元素含有超硬合金の製造方法を提供することができた。
超硬合金は、硬度・耐摩耗と靭性のバランスが良く、切削工具や耐摩耗工具、金型、耐熱耐摩耗用部材等に重用されている。更に、超硬合金部材の表面に炭窒化チタンや窒化チタンアルミニウム、酸化アルミニウムなどの皮膜を被覆した被覆超硬合金工具は、部材の靭性と皮膜の耐摩耗性とが兼備されているため、鋼、鋳物などの切削加工用高能率切削工具として広く用いられている。近年、切削加工の高効率化と高速化が進むにつれて、切削工具には高温における耐摩耗性と耐塑性変形性、耐欠損性が要求されている。
そこで本発明は、超硬合金を構成する硬質相が周期律表4a、5a、6a族金属から選択される少なくとも1種以上の炭化物固溶体、窒化物固溶体、炭窒化物固溶体の少なくとも1種以上より形成されていることにより、耐摩耗性の優れる超硬合金が得られ、WCの平均粒径が1.5μm以上であることにより優れた靭性と耐摩耗性がバランス良く得られる。そして、主に鉄族金属からなる結合相中に希土類元素が含有され、且つ、希土類元素が存在する領域の酸素量が0〜5質量%であることにより、原子半径がCoの約1.2倍と大きい希土類元素が鉄族元素中に固溶し易くなり、結合相の耐熱・耐塑性変形性が飛躍的に高く、格段に優れた強度と靭性を有する超硬合金が得られる。WCの平均粒径が1.5μm未満では強度が劣る欠点が現れる。そして、希土類元素が存在する領域の酸素量が5質量%を越えて大きいと、希土類元素が酸化され異物として析出し易くなり、結合相の強度や、結合相とWC結晶粒間の接合力が著しく低下し、超硬合金の強度と靭性が大きく低下する欠点が現れる。
そこで本発明は、超硬合金を構成する硬質相が周期律表4a、5a、6a族金属から選択される少なくとも1種以上の炭化物固溶体、窒化物固溶体、炭窒化物固溶体の少なくとも1種以上より形成されていることにより、耐摩耗性の優れる超硬合金が得られ、WCの平均粒径が1.5μm以上であることにより優れた靭性と耐摩耗性がバランス良く得られる。そして、主に鉄族金属からなる結合相中に希土類元素が含有され、且つ、希土類元素が存在する領域の酸素量が0〜5質量%であることにより、原子半径がCoの約1.2倍と大きい希土類元素が鉄族元素中に固溶し易くなり、結合相の耐熱・耐塑性変形性が飛躍的に高く、格段に優れた強度と靭性を有する超硬合金が得られる。WCの平均粒径が1.5μm未満では強度が劣る欠点が現れる。そして、希土類元素が存在する領域の酸素量が5質量%を越えて大きいと、希土類元素が酸化され異物として析出し易くなり、結合相の強度や、結合相とWC結晶粒間の接合力が著しく低下し、超硬合金の強度と靭性が大きく低下する欠点が現れる。
本発明の被覆超硬合金部材は、結合相中に含有されている希土類元素量がCoの0.1〜10質量%であることにより、結合相の耐塑性変形と硬度、及び、強度が更に高まり、更に優れた耐久特性を有する被覆超硬合金部材が得られ、好ましい。結合相中に含有されている希土類元素に少なくともSm又はGdのいずれかが含まれていることにより、結合相中に希土類元素がより固溶し易くなり、更に優れた耐熱性と硬度、及び、強度とが得られ、好ましい。本発明は、結合相中にCrがCoの1〜10質量%含有されていることにより、結合相自体の強度と耐酸化性が更に高まり、好ましい。本発明は、硬質相中にZr又はTaのいずれかが含有されていることにより、超硬合金の耐塑性変形性と耐熱衝撃性が更に高まり、好ましい。本発明は、硬質皮膜直下の硬質相減少領域における該硬質相の量Kと、超硬合金部材内部における該硬質相の量Jとの比K/Jが0.95以上であることにより、超硬合金全体に優れた耐摩耗が得られ、好ましい。一方、K/J比が0.9以下である、即ち、超硬合金の表面に、所謂、脱β層やCo富化層が形成されていると、超硬合金材表面の硬度と耐摩耗性が低下すると共に、脱β層やCo富化層と超硬合金部材内部との境界付近にクラックが発生し易くなり、この部分から、欠損し易くなる傾向が現れる。また、結合相形成金属中にWが含有されていると、結合相の耐熱、耐塑性変形が更に高まり、更に優れた特性を有する被覆超硬合金部材が実現でき、好ましい。
本発明の製造方法は、WCの平均粒径が1.5μm以上、Co含有量が2〜15質量%であり、しかも、結合相中に希土類元素が含有されている希土類元素含有超硬合金を製造する方法であり、希土類元素用原料粉末として、希土類元素とCoのモル比が1:2〜1:8.5の範囲内にあり、しかも酸素含有量が0.01〜1質量%である希土類元素とCoとからなる合金を用いることを特徴とする希土類元素含有超硬合金の製造方法である。WCの平均粒径が1.5μm以上で、Co含有量が2〜15質量%であることにより、優れた強度と耐摩耗性を有する炭化タングステン基超硬合金が実現出来る。WCの平均粒径が1.5μm未満、または/及び、Co含有量が2質量%未満だと、強度が大幅に劣る欠点が現れ、Co含有量が15質量%を越えて大きいと硬度と耐摩耗性が大幅に劣る欠点が現れる。そして、希土類元素用原料粉末として、希土類元素とCoのモル比が1:2〜1:8.5であり、しかも酸素含有量が0.01〜1質量%である希土類元素とCoとからなる合金の粉末を用いることにより、元来酸化されやすい希土類元素を実質的に酸化させることなく結合相中に含有させることができるようになり、結合相の耐塑性変形と強度とが飛躍的に高まり、優れた耐熱、耐久特性を有する被覆超硬合金が実現できる。希土類元素とCoの比が1:2〜1:8.5の範囲外だと希土類元素の分布の均一性が低下するとともに、本合金粉末を用いて超硬合金を製作する過程で希土類元素が酸化され易くなり、超硬合金の靭性が大幅に低下する欠点が現れる。希土類元素用原料粉末に含有される酸素量が1質量%を越えて大きいと結合相中、及び、WCや硬質相との界面に析出する希土類元素化合物が多くなり、強度が低下する欠点が現れる。合金粉末中の酸素含有量が0.01質量%未満では、本合金粉末を更に高品質の非酸化雰囲気中で製造することが必要になり、合金粉末の製造方法が極端に高価になり産業的価値が低下する欠点が現れる。
本発明の希土類元素用原料粉末は非酸化雰囲気中で製造することが必要である。具体的には、アーク溶解法やインダクションメルト鋳造法、ストリップキャスト法等で製造できるが、本発明はこれら合金の製造方法に関わらず有効である。また、本発明の製造方法は、硬質皮膜直下の硬質相減少領域における該硬質相の量Kと、超硬合金部材内部における該硬質相の量Jとの比K/Jが0.95以上である希土類元素含有超硬合金を製造する方法であることが好ましい。
本発明の希土類元素用原料粉末は非酸化雰囲気中で製造することが必要である。具体的には、アーク溶解法やインダクションメルト鋳造法、ストリップキャスト法等で製造できるが、本発明はこれら合金の製造方法に関わらず有効である。また、本発明の製造方法は、硬質皮膜直下の硬質相減少領域における該硬質相の量Kと、超硬合金部材内部における該硬質相の量Jとの比K/Jが0.95以上である希土類元素含有超硬合金を製造する方法であることが好ましい。
本発明の超硬合金におけるWCの平均結晶粒径は、超硬合金の断面を鏡面研磨した後、村上試薬で0.5分、王水で0.5分間エッチングすることにより超硬合金の結晶粒界を明確にした後、走査電子顕微鏡(日立製作所製、S−4200、以下、SEMと記す。)によって倍率10、000倍で撮影した画像を拡大コピーし、これを画像解析ソフト(Image−Pro Plus Version4.0 for Windows、Media Cybernetics社、Windowsは、登録商標。)により解析することにより算出した。また、結合相中に希土類元素が含有されていることは、例えば、超硬合金の断面を研磨した後、SEMにより観察し、エネルギー分散型X線分析装置(堀場製作所製S−792X1、以下、EDXと記す。)により面分析した時、WC結晶粒の回りに鉄族金属と希土類元素とがほぼ同じ領域に分布していることからわかる。また、希土類元素が存在する領域の酸素量は、電子プローブ微小領域X線分析装置(日本電子株式会社製、JXA−8200、以下、EPMAと記す。)を用いて、超硬合金の研磨面を50k倍で観察し希土類元素の面分布状況を測定した後、希土類元素が多く存在している直径約0.5μmの領域の酸素量を測定することにより求めた。
結合相中に含有されている希土類元素量とCr元素量は次の方法で分析した。即ち、各超硬合金を微細に粉砕した粉をクエン酸アンモニウム50g/リットルと塩化ナトリウム5g/リットルの混合液を用いて電気分解することによりCoを選択的に溶解し、これに少量の硝酸を加えて、Co中に溶解している希土類元素成分とCrとをイオン化して、誘導結合高周波プラズマ分光(以下、ICPと記す。)分析することにより、結合相を構成しているCo中に含有されている希土類元素の種類を同定するとともに、その含有量とCr含有量とを定量的に求めた。硬質相の組成は、超硬合金の断面を研磨した後、SEM−EDXにより硬質相部分の組成を定量分析することにより求めた。硬質皮膜直下の硬質相減少領域における硬質相の量Kと、超硬合金部材内部における硬質相の量Jとは、それぞれの箇所で、超硬合金の表面と略平行方向に15μm、同、略垂直方向に5μmの略平行四辺形の領域の組成をEDXにより測定し、(Wを除く周期律表4a、5a、6a族金属の総量)/(全金属元素量)の比を硬質相量K、Jとした。
結合相中に含有されている希土類元素量とCr元素量は次の方法で分析した。即ち、各超硬合金を微細に粉砕した粉をクエン酸アンモニウム50g/リットルと塩化ナトリウム5g/リットルの混合液を用いて電気分解することによりCoを選択的に溶解し、これに少量の硝酸を加えて、Co中に溶解している希土類元素成分とCrとをイオン化して、誘導結合高周波プラズマ分光(以下、ICPと記す。)分析することにより、結合相を構成しているCo中に含有されている希土類元素の種類を同定するとともに、その含有量とCr含有量とを定量的に求めた。硬質相の組成は、超硬合金の断面を研磨した後、SEM−EDXにより硬質相部分の組成を定量分析することにより求めた。硬質皮膜直下の硬質相減少領域における硬質相の量Kと、超硬合金部材内部における硬質相の量Jとは、それぞれの箇所で、超硬合金の表面と略平行方向に15μm、同、略垂直方向に5μmの略平行四辺形の領域の組成をEDXにより測定し、(Wを除く周期律表4a、5a、6a族金属の総量)/(全金属元素量)の比を硬質相量K、Jとした。
本発明の被覆超硬合金部材の表面に被覆する硬質皮膜としては、少なくとも周期律表4a、5a、6a族金属及びAl、Siの1種以上の炭素、窒素、酸素、硼素等との化合物からなる皮膜や酸化アルミニウム膜、酸化ジルコニウム膜等の単層や多層膜を用いることができる。これらの硬質皮膜を本発明の被覆超硬合金部材に被覆することにより、表面の耐摩耗性や耐酸化性、摺動性等を高めることが出来る。
本発明の被覆超硬合金部材は、特にクランクシャフトのクランクピン部や軸部(ジャーナル部)をミーリング切削加工するためのピンミーリング体カッターにセットして用いる切削用チップや、フライス用チップであること、あるいは、所謂脱β層やCo富化層のない、鋳物やAl等を旋削するための旋削用工具であることが、高温における耐塑性変形性と高強度の両特性の良さを発揮でき、好ましい。次に、本発明の被覆工具を実施例により具体的に説明するが、それら実施例により本発明が限定されるものではない。
本発明の被覆超硬合金部材は、特にクランクシャフトのクランクピン部や軸部(ジャーナル部)をミーリング切削加工するためのピンミーリング体カッターにセットして用いる切削用チップや、フライス用チップであること、あるいは、所謂脱β層やCo富化層のない、鋳物やAl等を旋削するための旋削用工具であることが、高温における耐塑性変形性と高強度の両特性の良さを発揮でき、好ましい。次に、本発明の被覆工具を実施例により具体的に説明するが、それら実施例により本発明が限定されるものではない。
希土類元素を超硬合金の結合相中に含有させることを目的に、先ず、表1に示す希土類元素とCoとの合金(以下、希土類Co合金と記す。)からなる希土類Co合金粉末を作製した。
希土類Co合金粉末番号1〜5は、まず、99.9%以上の純度を有するSm金属を1モル、同Co金属を5モルの割合で混合し、Ar雰囲気中アーク溶解法によりSmCo5合金を作製した。そして、この合金を水素雰囲気中で550℃近傍に昇温することによりH2ガスを吸収させた後、真空中で冷却することによりH2ガスを放出させる所謂HDプロセスにより粗粉化した。これを更に、窒素雰囲気中で1〜2mmの小粒に機械的に粉砕した後、表1に示す含有酸素量の異なる窒素ガスを用いて、ジェットミル法により略3μmの大きさに粉砕した。作製した希土類Co合金粉末番号1〜5中の酸素含有量をガス分析装置で評価した結果を表1に示す。同様にして、Gd、Y、PrとCoとの比がいずれも1:5であるGdCo5、YCo5、PrCo5の希土類Co合金を作製し、粉末番号3と同じ条件で粉砕することにより希土類Co合金粉末番号6〜8を作製した。それぞれの酸素含有量はいずれも0.5質量%であった。SmとCoのモル比が1:2であるSmCo2の希土類Co合金を作製し、粉末番号3と同じ条件で粉砕することにより希土類Co合金粉末番号9を作製した。その酸素含有量は1.0質量%であった。SmとCoのモル比が2:17であるSm2Co17の希土類Co合金を作製し、粉末番号2と同じ条件で粉砕することにより希土類Co合金粉末番号10を作製した。その酸素含有量は0.01質量%であった。また、比較のために、Sm金属とCo金属とをそれぞれ1:10と1:1の割合で配合し、粉末番号3と同じ条件でアーク溶解し、粉砕することにより希土類Co合金粉末番号11、12を作製した。これら粉末の酸素含有量はそれぞれ1.2質量%と2.3質量%であった。
このようにして作製した希土類Co合金粉末番号1〜10と、平均粒径がそれぞれ、7.5、2.0、1.7、2、1.5、1.7、1.2μmのWC粉末、Cr3C2粉末、TaC粉末、ZrC粉末、ZrN粉末、TiC粉末、Co粉末を後述の所定量に配合し、アトライターで所定時間湿式混合後、乾燥し、所定形状の圧粉体にプレス成形し、真空雰囲気中、1350〜1450℃で1時間保持することにより超硬合金焼結体を作製した。これら焼結体に仕上げ加工及びホーニング加工を施すことにより、ピンミーリング体カッター用の縦刃型特殊形状を持った超硬合金製チップを作製した。その後、次の工程で化学蒸着(以下、CVDと記す。)膜を被覆することにより、本発明例1〜28の被覆超硬合金部材を作製した。被覆は次の工程で行った。即ち、各超硬合金をCVD装置内にセットし、H2キヤリヤーガスとTiCl4ガスとN2ガスとを原料ガスに用いて900℃でTiN膜を0.5μm厚形成し、その後、H2キャリヤーガスとTiCl4ガス、N2ガス、CH3CNガスを原料ガスに用いて890℃でTi(CN)膜を6μm厚形成した。そして、1000℃でH2キヤリヤーガスとTiCl4ガス、CH4ガスとを原料ガスに用いてTiC膜を15分間成膜し、そのまま連続して本構成ガスにCO2ガスとCOガスとを追加し15分間成膜することのよりTi(CO)膜を形成した。そして、H2キャリヤーガス、AlCl3ガス、CO2ガスを原料ガスに用いてα型Al2O3膜を1020℃で1μm厚形成し、更に、H2キヤリヤーガスとTiCl4ガスとN2ガスとを原料ガスに用いてTiN膜を1010℃で0.5μm厚さ形成し、その後室温まで冷却することにより硬質膜を被覆した。各試料の製作条件を表2にまとめて記す。
それぞれ表1に示す酸素含有量が異なる希土類Co合金粉末を用い、全Co量を11.5質量%に設定して本発明例1から28、比較例29から34を作成した。本発明例1〜5の超硬合金は、それぞれ粉末中の酸素含有量が異なる希土類Co合金粉末番号1〜5を用いた。Co中のSm含有量をCoの2.5質量%、Co中のCr含有量をCoの6.0質量%、Ta量を全組成の2質量%、Zr量を全組成の1質量%、残WCの配合から本発明例1〜5の超硬合金を作製した。全Co量は希土類Co合金粉末番号1〜5中に含有されるCo量と、別途加えるCo粉末の両者を調整することにより、所望の値にあわせた。また、Zrは全てZrC粉末で添加した。次に、本発明例6〜11の超硬合金を、本発明例3を基準にして、全Co量に対する希土類Co合金粉末番号3の使用比率のみを変化させることにより、Co中に含有されるSm量をそれぞれ、0.05、0.1、1.0、8.0、10.0、12.0質量%と変化させ、その他は本発明例3と同じ配合、製造条件で作製した。本発明例12〜17用超硬合金は、本発明例3を基準にして、Crの添加量のみを、全Co量の0.5、1、2、9、10、11質量%に変化させて作製した。本発明例18〜20は、本発明例3を基準にして、それぞれ、Taを添加せず、また、Zrを添加せず、及び、TaとZrの両者を添加せず代わりにTiを3質量%添加して、作製した。本発明例21〜23の超硬合金は本発明例3を基準にして、希土類元素としてSmに換えて、Gd、Y、PrをCoと1:5の比率で合金化した表1中の希土類Co合金粉末番号6、7、8を用い、Smに換えて、Gd、Y、Prをそれぞれ、全Co量の2.5質量%だけCo中に含有させることにより作製した。本発明例24〜26の超硬合金は本発明例3を基準にして、それぞれ、合金中のSmとCoの比が1:5である希土類Co合金粉末3、同、1:2である希土類Co合金粉末番号9、及び、同2:17である希土類Co合金粉末番号10を用い、本発明例3と全く同じ組成になるように配合し、配合済み粉のアトライター時間を6時間にする以外、その他は本発明例3と同じ製造条件で作製した。本発明例3と全く同じ条件で超硬合金を作製するものの、Zr用原料として、ZrC粉末に換えて、ZrC粉とZrN粉とを1:1の割合で混合した原料粉を用いた本発明例27、及び、ZrC粉末の全てをZrN粉末に替えて配合した本発明例28を作製した。
また、比較の目的で、超硬合金を構成するWCの平均結晶粒径の影響を明らかにするため、本発明例3と全く同じ条件で超硬合金と被覆超硬合金部材を作製するものの、配合済み粉のアトライター時間のみを8時間にのばした比較例29を作製した。本発明例3と全く同じ条件で超硬合金と被覆超硬合金部材を作製するものの、原料粉末としてSm等の希土類元素を全く加えずに比較例30を作製した。希土類元素が存在する領域の酸素量が0〜5質量%であることの効果を明らかにするため、本発明例3と全く同じ条件で超硬合金と被覆超硬合金部材を作製するものの、希土類元素用原料粉末として、含有酸素量が0.5質量%である希土類Co合金粉末番号3を用いずに、これに替えて、含有酸素量がそれぞれ1.2と2.3質量%である表1中の希土類Co合金粉末番号11と12を用いて、それぞれ比較例31と32を作製した。希土類元素用原料粉末として、希土類元素とCoのモル比が1:2〜1:8.5でありしかも酸素含有量が0.01〜1質量%である希土類元素Co合金粉末を用いて、WCの平均粒径が1.5μm以上の希土類元素含有超硬合金を製造する方法の効果を明らかにするため、本発明例24〜26と全く同じ条件で超硬合金と被覆超硬合金部材を作製するものの、希土類元素用原料粉末として、希土類元素とCoのモル比が1:10と1:1であり、含有酸素量がそれぞれ1.2と2.3質量%である表1中の希土類Co合金粉末番号11と12をそれぞれ用いて比較例33と34を作製した。
作製した微粒超硬合金部材の断面を研磨し、光学顕微鏡で超硬合金の組織を観察し、SEM−EDXでその組成を分析した結果、本発明例1〜17と21〜28と比較例29〜34は、いずれも硬質相中にZr、Ta、Wが含有されており、本発明例18はZrとWを含有しているがTaを含有しておらず、本発明例19はTaとWを含有しているがZrを含有しておらず、本発明例20はTiとWを含有しているがZrとTaの両者を含有していなかった。作製した微粒超硬合金部材のWCの平均結晶粒径を測定した結果、本発明例1〜23と27、28、及び比較例30〜32は1.7μmであるのに対して、本発明例24〜26と比較例33、34は1.5μmであり、比較例29は1.3μmであった。作製した超硬合金の結合相中に含有されている希土類元素量とCr元素量を定量分析した結果、本発明例1〜20と24〜28、および比較例29と31〜34は結合相中にSmが含有されており、本発明例21、22、23は、それぞれGd、Y、Prが含有されており、比較例30には希土類元素が含有されていなかった。それぞれの結合相中の希土類元素含有量は、本発明例1〜5と12〜28、及び比較例29と31〜34はCoの2.5質量%であり、本発明例6〜11は、それぞれ0.05、0.1、1、8、10、12質量%であったが、比較例30からは希土類元素が検出されなかった。結合相中に含有されているCr量は、本発明例1〜11と18〜28、及び比較例29〜32はCoの6質量%であり、本発明例12〜17は、それぞれ0.5、1、2、9、10、11質量%であった。超硬合金の組織を、EPMAにより50k倍で観察し希土類元素のマッピングをとった後、希土類元素が存在している直径約0.5μmの領域の酸素量を加速電圧10kVで測定した結果、本発明例1〜5の希土類元素が存在する領域の酸素量はそれぞれ0、0.5、1、3、5質量%であり、本発明例6〜28と比較例29、30はいずれも1質量%であり、比較例31と33は7質量%、比較例32と34は13質量%であった。EDXにより、硬質皮膜直下の硬質相減少領域における硬質相量Kと、超硬合金部材内部における硬質相量Jとの比K/Jを測定した結果、発明例1〜26と比較例29〜34はいずれも1.0であったが、本発明例27は0.95、本発明例28は0.9であった。これらの分析結果を表3にまとめて記す。
作製した被覆超硬合金部材の工具特性を評価するため、インターナル(内周刃)タイプで、切削チップ取り付け部の直径が220mm、外径が320mm、厚さ33mmの寸法をもち、切削チップを取り付け数が40個であるSCM4215製のリング状本体に、本発明例1〜28と比較例29〜32の切削チップを取り付け、ピンミーリング切削用カッターを作製した。本カッターを用いて、下記条件で、切削試験をおこない、各チップの切刃の逃げ面摩耗幅が0.2mmに至るまでのピン部の加工可能数を求めた。これらの評価結果を表3にあわせて示した。
(切削条件)
被削材:500mmの長さを有する炭素鋼(S45C)製4気筒クランクシャフトのピン部、
切削速度:220m/min、
送り:0.04〜0.13mm/刃、
ピン部の取り代:2〜3mm、
切削液:使用せず(乾式)
(切削条件)
被削材:500mmの長さを有する炭素鋼(S45C)製4気筒クランクシャフトのピン部、
切削速度:220m/min、
送り:0.04〜0.13mm/刃、
ピン部の取り代:2〜3mm、
切削液:使用せず(乾式)
表3において、略同じ組成で、WCの平均粒径のみが異なっている超硬合金の表面に、同じ硬質皮膜を被覆した本発明例24と比較例29とを比較する。比較例29はWC平均粒径が1.3μmと小さく、ピン部加工数が340個であるのに対して、WC平均粒径が1.5μmである本発明例24のピン部加工数は750個と2.2倍以上長く、格段に優れていた。超硬合金が略同じ組成を持つものの結合相中に希土類元素が含まれているかどうかが異なっている本発明例6と比較例30とを比較する。比較例30の結合相中には希土類が含有されておらず、ピン部加工数が320個であるのに対して、希土類元素であるSmがCo中に0.05質量%含有されている本発明例6は、ピン部加工数720個と2.2倍以上長く、格段に優れていた。略同じ組成もち、共に、結合相中にSmを2.5質量%含有しているものの、希土類元素が存在する領域の酸素量が異なっている超硬合金の表面に同じ硬質皮膜を被覆した本発明例1〜5と比較例31、32とを比較する。希土類元素が存在する領域の酸素量がそれぞれ7、13質量%と多い比較例31、32のピン部加工数がそれぞれ350、290個であるのに対して、同酸素量が0〜5質量%と本発明の範囲内にある本発明例1〜5はピン部加工数が840個以上と2.4倍以上多く、格段に優れていた。
そこで、本発明の範囲を、主に鉄族金属からなる結合相と、周期律表4a、5a、6a族金属から選択される少なくとも1種以上の炭化物固溶体、窒化物固溶体、炭窒化物固溶体の少なくとも1種以上を含有する硬質相、及び残WCと不可避不純物とから成る炭化タングステン基超硬合金の表面に、硬質皮膜が単層又は多重層被覆されており、該超硬合金のWCの平均粒径が1.5μm以上であり、且つ、該結合相中に希土類元素が含有され、希土類元素が存在する領域の酸素量が0〜5質量%であることを特徴とする被覆超硬合金部材にした。
そこで、本発明の範囲を、主に鉄族金属からなる結合相と、周期律表4a、5a、6a族金属から選択される少なくとも1種以上の炭化物固溶体、窒化物固溶体、炭窒化物固溶体の少なくとも1種以上を含有する硬質相、及び残WCと不可避不純物とから成る炭化タングステン基超硬合金の表面に、硬質皮膜が単層又は多重層被覆されており、該超硬合金のWCの平均粒径が1.5μm以上であり、且つ、該結合相中に希土類元素が含有され、希土類元素が存在する領域の酸素量が0〜5質量%であることを特徴とする被覆超硬合金部材にした。
次に、超硬合金の結合相中に含有されている希土類元素量が異なっている本発明例6〜11内を比較する。本発明例6は希土類元素含有量が0.05質量%であり、ピン部加工数が720個であるのに対し、本発明例7は0.1質量%で、960個とピン部加工数が1.3倍以上多く優れていた。本発明例11は希土類元素含有量が12質量%であり、ピン部加工数が730個であるのに対し、本発明例10は10質量%で、960個とピン部加工数が1.3倍以上多く優れていた。そこで、本発明は、結合相中に含有される希土類元素量が0.1〜10質量%であることが好ましい。
また、超硬合金の結合相中に含有されているCr量が異なっている本発明例12〜17内を比較する。本発明例12はCr含有量が0.5質量%であり、ピン部加工数が710個であるのに対し、本発明例13は1質量%で、930個とピン部加工数が1.3倍以上多く優れている。また、本発明例17はCr含有量が11質量%であり、ピン部加工数が700個であるのに対し、本発明例16は10質量%で、920個とピン部加工数が1.3倍以上多く優れていた。そこで、本発明は、結合相中に含有されるCr量が1〜10質量%であることが好ましい。
超硬合金の硬質相に含有されている元素が異なっている本発明例3及び18〜20内を比較する。本発明例20は硬質相中にWとTiとを含有しているものの、ZrとTaのいずれの元素も含有しておらずピン部加工数が710個であるのに対して、少なくともZr又はTaが硬質相中に含有されている本発明例3、18、19はピン部加工数がそれぞれ、980、940、930個であり、本発明例20に比べて1.3倍以上多く優れていた。そこで、本発明は、硬質相中にZr及び/又はTaを含有していることが好ましい。
結合相中に含有される希土類元素の種類が異なっている本発明例3と21〜23間を比較する。本発明例24と25は結合相中に希土類元素としてYやPrを含有しSmやGdを含有しておらず、ピン部加工数が750と740個であるのに対して、本発明例3と21とは結合相中にSmまたはGdのいずれかを含有しており、ピン部加工数が980個と990個であり、1.3倍以上多く優れていた。そこで、本発明は、結合相中に少なくとSm又はGdのいずれかを含有していることが好ましい。
超硬合金表面部の硬質相量が異なっている本発明例3、及び、27、28間を比較する。超硬合金の表面部と中央部における硬質相量の比K/Jが0.9と小さい本発明例28はピン部加工数が720個であるのに対して、K/Jが1と0.95である本発明例3と27のピン部加工数は980個と940個であり、1.3倍以上長い。そこで、本発明は、超硬合金の表面部と中央部における硬質相量の比K/Jが0.95以上であることが好ましい。
また、超硬合金の結合相中に含有されているCr量が異なっている本発明例12〜17内を比較する。本発明例12はCr含有量が0.5質量%であり、ピン部加工数が710個であるのに対し、本発明例13は1質量%で、930個とピン部加工数が1.3倍以上多く優れている。また、本発明例17はCr含有量が11質量%であり、ピン部加工数が700個であるのに対し、本発明例16は10質量%で、920個とピン部加工数が1.3倍以上多く優れていた。そこで、本発明は、結合相中に含有されるCr量が1〜10質量%であることが好ましい。
超硬合金の硬質相に含有されている元素が異なっている本発明例3及び18〜20内を比較する。本発明例20は硬質相中にWとTiとを含有しているものの、ZrとTaのいずれの元素も含有しておらずピン部加工数が710個であるのに対して、少なくともZr又はTaが硬質相中に含有されている本発明例3、18、19はピン部加工数がそれぞれ、980、940、930個であり、本発明例20に比べて1.3倍以上多く優れていた。そこで、本発明は、硬質相中にZr及び/又はTaを含有していることが好ましい。
結合相中に含有される希土類元素の種類が異なっている本発明例3と21〜23間を比較する。本発明例24と25は結合相中に希土類元素としてYやPrを含有しSmやGdを含有しておらず、ピン部加工数が750と740個であるのに対して、本発明例3と21とは結合相中にSmまたはGdのいずれかを含有しており、ピン部加工数が980個と990個であり、1.3倍以上多く優れていた。そこで、本発明は、結合相中に少なくとSm又はGdのいずれかを含有していることが好ましい。
超硬合金表面部の硬質相量が異なっている本発明例3、及び、27、28間を比較する。超硬合金の表面部と中央部における硬質相量の比K/Jが0.9と小さい本発明例28はピン部加工数が720個であるのに対して、K/Jが1と0.95である本発明例3と27のピン部加工数は980個と940個であり、1.3倍以上長い。そこで、本発明は、超硬合金の表面部と中央部における硬質相量の比K/Jが0.95以上であることが好ましい。
次に、WCの平均粒径が1.5μm以上である希土類元素含有超硬合金の製造方法として、希土類元素とCoのモル比、及び酸素含有量が本発明の範囲内にある希土類元素Co合金粉末を用いて作製した本発明例1〜28と、用いた希土類元素Co合金粉末が本発明の範囲外である比較例33、34とを比較する。いずれもWCの平均粒径が1.5μmであるにも係わらず、希土類元素とCoの比が1:10であり酸素含有量が1.2質量%と多い希土類元素用原料粉末を用いて作製した比較例33と、希土類元素とCoの比が1:1であり酸素含有量が2.3質量%と多い希土類元素用原料粉末を用いて作製した比較例34のピン部加工数がそれぞれ310個と260個であるのに対して、希土類元素とCoの比がそれぞれ、1:5、1:2、2:17であり、しかも、酸素含有量が0.01〜1質量%の範囲内である希土類Co合金粉末を用いて作製した本発明例24、25、26はピン部加工数がそれぞれ890、740、750個と比較例33、34の2.3倍以上多く、格段に優れていた。そこで、比較例29〜32の結果とあわせて、本発明の製造方法を、主WCの平均粒径が1.5μm以上でありしかも結合相中に希土類元素が含有されている希土類元素含有超硬合金を製造する方法であり、希土類元素用原料粉末として、希土類元素とCoのモル比が1:2〜1:8.5であり、しかも酸素含有量が0.01〜1質量%である希土類元素とCoとからなる合金を用いることを特徴とする希土類元素含有超硬合金の製造方法とした。
Claims (7)
- 主に鉄族金属からなる結合相と、周期律表4a、5a、6a族金属から選択される少なくとも1種以上の炭化物固溶体、窒化物固溶体、炭窒化物固溶体の少なくとも1種以上を含有する硬質相、及び残WCと不可避不純物とから成る炭化タングステン基超硬合金の表面に、硬質皮膜が単層又は多重層被覆されており、該超硬合金のWCの平均粒径が1.5μm以上であり、且つ、該結合相中に希土類元素が含有され、希土類元素が存在する領域の酸素量が0〜5質量%であることを特徴とする被覆超硬合金部材。
- 請求項1に記載の被覆超硬合金部材において、該結合相中の希土類元素含有量が、Co量の0.1〜10質量%であることを特徴とする被覆超硬合金部材。
- 請求項1又は2に記載の被覆超硬合金部材において、該希土類元素に少なくともSm又はGdのいずれかが含まれていることを特徴とする被覆超硬合金部材。
- 請求項1から3のいずれかに記載の被覆超硬合金部材において、該結合相中にCrがCo量の1〜10質量%含有されていることを特徴とする被覆超硬合金部材。
- 請求項1から4のいずれかに記載の被覆超硬合金部材において、該硬質相中にZr又はTaのいずれかが含有されていることを特徴とする被覆超硬合金部材。
- 請求項1から5のいずれかに記載の被覆超硬合金部材において、硬質皮膜直下の硬質相減少領域における該硬質相の量Kと、超硬合金部材内部における該硬質相の量Jとの比K/Jが0.95以上であることを特徴とする被覆超硬合金部材。
- WCの平均粒径が1.5μm以上であり、しかも結合相中に希土類元素が含有されている希土類元素含有超硬合金の製造方法であり、該製造方法は、希土類元素用原料粉末として、希土類元素とCoのモル比が1:2〜1:8.5であり、しかも酸素含有量が0.01〜1質量%である希土類元素とCoとからなる合金粉末を湿式混合処理する第1の工程と、該湿式混合処理した粉末を乾燥し、所定の形状の圧粉体にプレス成形する第2の工程と、該圧粉体を真空雰囲気中で焼結する第3の工程とを有し、該第1の工程から該第3の工程によることを特徴とする希土類元素含有超硬合金の製造方法。
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Legal Events
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Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20091202 |
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A761 | Written withdrawal of application |
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