JP3952209B2 - Wc基超硬合金部材 - Google Patents
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Description
特許文献1は電子顕微鏡による組織観察で硬質分散相の面積率が70〜93面積%で該硬質分散相は、WCをVとWとCrの析出複合炭化物の薄層で全面被覆及び/又は部分被覆してなる被覆WCからなり、かつ1.0μm以下の平均粒径を有する超硬合金製ミニチュアドリルを開示している。特許文献2は特許文献1と同様の組織を有する表面被覆超硬合金製エンドミルを開示している。特許文献3は電子顕微鏡による組織観察で第一硬質分散相65〜92.5面積%、第2硬質分散相0.5〜5面積%、Coを主体とする結合相からなり、該第1硬質分散相は、WCをVとWとCrの析出複合炭化物の薄層で全面被覆及び/又は部分被覆してなる被覆WCからなる靭性の高い超硬合金製ミニチュアドリルを開示している。特許文献4は特許文献3と同様の組織を有する靭性の高い表面被覆超硬合金製エンドミルを開示している。特許文献5は第1硬質分散相の面積率が67〜94面積%、第2硬質分散相の面積率が0.01〜0.5面積%、残部Co及び/又はNiを含む金属結合相からなる組織を示し、該第1硬質分散相はWCをVとWとCrの析出複合炭化物の薄層で全面被覆及び/又は部分被覆してなる被覆WCからなる強靭性微粒超硬合金を開示している。特許文献6は粒径0.9μm以下のWCを主成分とし粒成長抑制剤として0.2〜2.0重量%のVN単独又は、その他の粒成長抑制剤として更にNb、Ta、Crの炭化物又は窒化物を1種又は2種以上用いる高強度、高靭性、高硬度の超硬合金を開示している。
本発明が解決しようとする課題は、微粒超硬合金が具備する高靭性、耐折損性に加え、難削性を示す被加工物に対応するための高硬度、耐摩耗性をもつWC基超硬合金部材を提供することである。特にエンドミル、ドリルなどの小径化を可能とすることである。
WCの平均粒径を0.8μm以下にした理由は、超硬合金の硬さを硬くするために有効であるからである。一方、0.8μmを超えて大きい場合、Co量を少なくして硬さを上げようとしても、耐摩耗性を確保するための硬さを確保することができないためである。WC基超硬合金部材の耐摩耗性を向上させるためには、硬さを一定以上に硬くしておく必要があり、WC平均粒径を0.8μm以下とすることが必要である。
Coは焼結性向上に寄与し、結合相を形成して靭性を改善させ、耐欠損、耐折損性を向上する作用をもつ。しかしCo含有量が4%未満では十分な靭性、耐折損性を得ることが出来ず、またCo含有量が11%を超えると、硬さの低下が顕著となり、耐摩耗性が著しく低下する。従ってCo含有量を4〜11%とした。好ましくは5〜10%である。
CrはWCの粒成長を抑制する効果をもつほか、結合相Co中に固溶し、その強度を向上させ、耐食性の向上にも寄与する。Cr含有量が0.3%未満では目的の改善効果を得ることが出来ず、またCrの含有量が1%を超えると、結合相中の一部を置換する形態で存在するVとWとCrを含む複炭化物相の粒径が粗大化し、靭性を著しく低下させる。従ってCr含有量を0.3〜1%とした。
VはWCの粒成長抑制に最も効果の大きい元素であり、V添加によりWCの粒径を0.8μm以下とすることが可能となる。また本発明の結合相の一部を置換した形態をしたVとWとCrを含む複炭化物相の構成元素であり、これらを構成することにより、硬さ、耐摩耗性の改善に寄与するものである。V含有量が0.2%未満では粒成長抑制作用を十分に発揮させることが困難となる。原料のWC粉末の粒径を0.8μmとしても、焼結時に粒成長することにより、焼結体中のWC粒径が0.8μmを超えてしまう。またV含有量が0.5%を超えると、結合相の一部を置換した形態をしたVとWとCrを含む複炭化物相の粒径が粗大化し、その量も増加するため靭性を著しく低下させる。よってV含有量は0.2〜0.5%とした。
本発明のWC基超硬合金部材は、VとWとCrを含む複炭化物相(VxWyCrz)Cを有し、但し該複炭化物相の金属成分は重量%で、47≦X≦70、20≦Y≦52、1≦Z≦30、X+Y+Z=100からなる。Xが47%未満では、複炭化物相の硬さが低くなり耐摩耗性向上の効果が少なくなる。一方、70%を超えて大きい場合は、複炭化物相が脆化し不都合である。従って、Xは47≦X≦70に規定する。Yが20%未満では、複炭化物相の硬さが低くなり耐摩耗性向上の効果が少なくなる。一方、52%を超えて大きい場合は、炭化物が脆化し不都合である。従って、Yは20≦Y≦52に規定する。Zが1%未満では、複炭化物相の硬さが低くなり耐摩耗性向上の効果が少なくなる。一方、30%を超えて大きい場合は、複炭化物相が脆化し不都合である。従って、Zは1≦Z≦30に規定する。即ち複炭化物相の金属成分の重量%が本発明範囲にあるときに、耐摩耗性向上の効果が顕著に現れるものである。
本発明のWC基超硬合金部材は、電子顕微鏡による組織観察により、複炭化物相がWC粒子と隣接して存在する。或いは複炭化物相が結合相及び該WC粒子と隣接して存在する。この存在形態を図1の模式図に示す。図1では複炭化物相1がWC粒子2と結合相3に隣接して存在する。VとWとCrを含む複炭化物相1が、結合相3の一部を置換した形態で存在している。そこで以降は、複炭化物相1の存在形態を置換形態と記す。本発明の置換形態は、複炭化物相1がWC粒子とWC粒子との間の領域にあり、通常Co相が存在する領域の一部に存在し、WC粒子とWC粒子の間を埋めるような形態をいう。複炭化物相1が置換形態で存在することにより、硬さ、耐摩耗性の改善に寄与する。ここで言う複炭化物相1の置換形態は、図2の模式図に示す様に、微細分散複炭化物相4が結合相3に分散分布した形態でも、或いはWC粒子2の表面の少なくとも1部を被覆した表面被覆複炭化物相5の様な形態でもない。図2の様に、微細分散複炭化物相4が結合相3に微細に分散分布した状態は、WC粒子とWC粒子の間の領域に存在するCo相の中に、微細分散複炭化物相4がCo相に囲まれた状態で存在する形態である。また表面被覆複炭化物相5がWC粒子の表面の少なくとも一部を被覆した形態とは、数原子レベル程度の極めて薄い被覆である。これより本発明の複炭化物相1の置換形態と、従来例の微細分散複炭化物相4が分散分布した形態、或いは表面被覆複炭化物相5が被覆した形態とは全く異なるものである。但し、本発明の複炭化物相が結合相の一部を置換した形態に加え、V、W、Crを含む複炭化物相がWC粒子の表面の少なくとも一部を被覆した形態として存在してもかまわない。
複炭化物相の粒径は0.8μm以下とする。0.8μmを超えるとWCの粒径と同等又は大きくなるため、靭性が低下する。複炭化物相の面積率M(%)は、30μm×30μmを1視野として、20視野以上の画像より求めた平均値で0<M<0.5とする。M値が0の場合はその効果がなく、また0.5%以上となると複炭化物相の量が多くなるため靭性が低下する。
本発明に用いた面積率の測定方法は、WC基超硬合金を研摩し、その研摩面を撮像し、その画像からWC基超硬合金に存在するVとWとCrを含む複炭化物相の面積率を測定する方法であって、(1)〜(4)の手順による。
(1)EPMAの元素マッピング機能により複炭化物相を特定し、該複炭化物相のラインプロファイルを採取する。この時の観察倍率は2000〜3000倍が好ましい。
(2)該複炭化物相の形態をTEM観察により観察し、その寸法値を測定する。この時の観察試料は、EPMAで特定した複炭化物相を、電界放射型走査顕微鏡(以下、FE−SEMと記す。)にて場所を確認後、試料中から集束イオンビーム(以下、FIBと記す。)加工により切り出して作成する。
(3)(1)の複炭化物相のEPMAラインプロファイルと(2)のTEMによる複炭化物相の測定寸法とを照合し、複炭化物相に相当するラインプロファイルのカウント数である閾値を設定する。更に別の複炭化物相にて(1)〜(3)を繰り返し、閾値にばらつきのないことを確認し、それらの平均値として閾値を設定することが好ましい。EPMAマッピングを無作為に多数視野実施する。例えば2000倍の場合30μm×30μmを1視野としてマッピングし、130μm横へ移動後次のマッピングをするという方法により無作為に100μm離れた視野をマッピングする。これを4回繰り返し、合計5視野のマッピングを行い、続いて最初の視野に戻り、そこから下へ130μm移動し、上記と同じ方法にて5視野のマッピングを行う。これらを連続しておこなうことにより無作為に選んだ複数視野のマッピング像を得る。視野数は20視野以上実施することが好ましい。
(4)前記画像手段により得られた複数の画像を(3)で設定した閾値により2値化し、画像処理することにより複炭化物相の面積率を演算することによって求める。面積率は複数の画像から求め、平均値を用いることが好ましい。
原料粉末として、平均粒径約0.4μmのWC粉末、同約1〜2μmのCo、VC、VN、Cr3C2、Cr2N各原料粉末を用いて所定の組成に配合した。粉末は成形バインダーを含んだアルコール中アトライターで12時間混合し、スプレードライヤーで造粒乾燥した。得られた造粒粉末を押出し成形して圧粉体とした。この圧粉体を10Paの真空雰囲気中において1400〜1450℃で焼結し、焼結体を作製した。得られた焼結体を研摩し、研摩面にてロックウェルAスケールにて硬さを測定した。更に、本発明で示した方法にてVとWとCrを含む複炭化物相の組成、形態、寸法及び面積率を求めた。それらの測定結果を、配合組成と併せて表1に示す。
図3は本発明例1について、複炭化物相の面積率を測定する方法の手順(1)のEPMAの元素マッピング機能によるミクロ組織である。EPMAの測定条件は対象元素をVとし、加速電圧:25kV、ビーム径:1μm、スキャン方法:ステップスキャン、ステップサイズ:x:0.2μm、y:0.2μm、サンプリングタイム:10ms、データポイント:150×150、分析エリア:30μm×30μm、マッピング:各点におけるカウント数の積算値を表示した。次に手順(2)によって、同一視野内の複炭化物相の形態をTEM観察により観察し、その寸法値を測定した。更に手順(3)によって閾値を設定した。同一視野内の30μm×30μmのEPMAの元素マッピング機能によるミクロ組織より、WC平均粒径とほぼ同じ大きさの複炭化物相を通るラインを設定した。次に、図3のラインプロファイルにおいて、縦軸の目盛27付近の横軸に平行な細い実線で表示したラインを設定し、ライン上の各点におけるカウント数の積算値を求めた。図3のEPMAのラインプロファィルでは、複炭化物相の存在する箇所に縦軸のカウント数が略66程度と大きな値を示す所と、バックグラウンドの極大点で、縦軸のカウント数が20から28のノイズと同程度のものとがあった。先に手順(2)で求めた寸法値を、図3のラインプロファィルのデータと照合した。ここで、複炭化物相の寸法値が0.6μmの場合には、EPMAのステップサイズの測定条件より、3ステップ分のピーク幅を有する事となる。そこで3ステップ分のピーク幅の縦軸のカウント数を閾値として求めた。その結果を図3内に、縦軸の目盛40付近の横軸に平行な太い実線で表示した。最後に手順(4)によって、手順(2)により得られた複数の画像を手順(3)で設定した閾値により2値化し、画像処理することにより複炭化物相の面積率を演算によって求めた。その結果を表1に併記した。
次にこれらの焼結体を加工して、φ4.0×45mmの丸棒からφ1.0mm(R0.5mm)の高硬度材加工用ボールエンドミルを作製した。得られたエンドミルにアークイオンプレーティングにて(TiAl)N皮膜を3.0μm、(TiSi)N皮膜を1.0μmとして成膜した。これらのエンドミルを用いて下記の条件にて底面切削加工を行い、刃先逃げ面摩耗量が0.015mmになるまでの切削距離で評価した。結果を併せて表1に示す。
(加工条件1)
被削材:SKD11(熱処理材 硬さHRC60)
回転数:13000回転/分
送り量:560mm/min
切込量:径方向0.07mm、深さ方向 0.21mm
原料粉末として、平均粒径約0.6μmのWC粉末、実施例1の原料粉末を用い、表2に示す組成に配合し、成形バインダーを含んだアルコール中アトライターで12時間混合後、スプレードライヤーで造粒乾燥した。得られた造粒粉末を押出しプレス成形して圧粉体とした。これらの圧粉体を10Paの真空雰囲気中において1400〜1450℃で焼結したのち、同一温度に保持したまま4.9MPaでガス加圧し焼結体を作製した。得られた焼結体につき実施例1と同様の方法にて各種の測定を実施した。それらの測定結果を配合組成と併せて表2に示す。
(加工条件2)
基板:0.1mmt、両面板、銅厚さ5μm×6枚重ね
回転数:300、000回転/分
送り量:5μm/回転
原料粉末として、平均粒径約0.4μmのWC粉末、実施例1の原料粉末を用い、表3に示す組成に配合し、成形バインダーを含んだアルコール中アトライターで12時間混合後、スプレードライヤーで造粒乾燥した。得られた造粒粉末を押出しプレス成形して圧粉体とした。これらの圧粉体を10Paの真空雰囲気中において1400〜1450℃で焼結したのち、同一温度に保持したまま4.9MPaでガス加圧し焼結体を作製した。得られた焼結体につき実施例1と同様の方法にて各種の測定を実施した。それらの測定結果を配合組成と併せて表3に示す。
(加工条件3)
基板:1.6mmt、銅なし、FR4×2枚重ね
回転数:30、000回転/分
送り量:1000mm/min、
Z軸切込速度:200mm/min
2:WC粒子
3:結合相
4:微細分散複炭化物相
5:表面被覆複炭化物相
Claims (8)
- WCの平均粒径は0.8μm以下であり、Co含有量は重量%で、4〜11%、Cr含有量は0.3〜1.0%、V含有量は0.2〜0.5%、更に、該Cr、Vは、窒化物、炭窒化物等窒素を含む化合物を用い、残部がWC及び不可避不純物からなるWC基超硬合金であって、該WC基超硬合金は、Coを主体とした結合相と、WCを主体とした炭化物相と、VとWとCrを含む複炭化物相(VxWyCrz)Cとを有し、該複炭化物相の金属成分は、重量%で、47≦X≦70、20≦Y≦52、1≦Z≦30、X+Y+Z=100からなり、該複炭化物相は、前記結合相中への窒素の溶解により、冷却過程における液相存在下の複炭化物の晶出、析出が早められ、該複炭化物相は該炭化物相と隣接し、WC粒子とWC粒子との間の領域にあり、通常結合相が存在する領域の一部に存在し、且つ該炭化物相のWC粒子とWC粒子の間を埋めるような置換形態で存在して、その平均粒径は0.8μm以下、その面積率M(%)は、30μm×30μmを1視野として、20視野以上の画像より求めた平均値で0<M<0.5であることを特徴とするWC基超硬合金部材。
- WCの平均粒径は0.8μm以下であり、Co含有量は重量%で、4〜11%、Cr含有量は0.3〜1.0%、V含有量は0.2〜0.5%、更に、該V、Crは、窒化物、炭窒化物等窒素を含む化合物を用い、残部がWC及び不可避不純物からなるWC基超硬合金であって、該WC基超硬合金は、Coを主体とした結合相と、WCを主体とした炭化物相と、VとWとCrを含む複炭化物相(V x W y Cr z )Cとを有し、該複炭化物相の金属成分は、重量%で、47≦X≦70、20≦Y≦52、1≦Z≦30、X+Y+Z=100からなり、該複炭化物相は、前記結合相中への窒素の溶解により、冷却過程における液相存在下の複炭化物の晶出、析出が早められ、該複炭化物相は該結合相、該炭化物相と隣接し、WC粒子とWC粒子との間の領域にあり、通常結合相が存在する領域の一部に存在し、且つ該炭化物相のWC粒子とWC粒子の間を埋めるような置換形態で存在して、その平均粒径は0.8μm以下、その面積率M(%)は、30μm×30μmを1視野として、20視野以上の画像より求めた平均値で0<M<0.5であることを特徴とするWC基超硬合金部材。
- 請求項1又は2記載のWC基超硬合金部材において、該WC基超硬合金部材のロックウェルAスケールでの硬さが93以上、95以下であることを特徴とするWC基超硬合金部材。
- 請求項1乃至3何れかに記載のWC基超硬合金部材において、該WC基超硬合金部材は、ドリル、小径ドリル、エンドミル、エンドミル加工用刃先交換型チップ、フライス加工用刃先交換型チップ、旋削用刃先交換型チップ、メタルソー、歯切り工具、ガンドリル、リーマ、ブローチ及びタップの何れかであること特徴とするWC基超硬合金部材。
- 請求項4記載のWC基超硬合金部材において、該エンドミルの直径が2mm以下であることを特徴とするWC基超硬合金部材。
- 請求項4記載のWC基超硬合金部材において、該エンドミルの直径が1.5mm以下のプリント基板用ルーターエンドミルであることを特徴とするWC基超硬合金部材。
- 請求項4記載のWC基超硬合金部材において、該ドリルの直径が0.2mm以下のプリント基板用ドリルであることを特徴とするWC基超硬合金部材。
- 請求項1乃至7何れかに記載のWC基超硬合金部材において、該WC基超硬合金部材は硬質皮膜が被覆され、該硬質皮膜は、金属成分に周期律表4a、5a、6a族元素、Al、Siから選択される1種以上の元素を有し、非金属成分にC、N、O、Bから選択される1種以上の元素を有することを特徴とする被覆WC基超硬合金部材。
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