JP2004315904A - 微粒超硬合金 - Google Patents

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Kazuhiro Hirose
和弘 広瀬
Naoya Omori
直也 大森
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Abstract

【課題】合金組織の均一的な微細化と共に硬質相の粒成長をより抑制して、強度と靭性との双方に優れる微粒超硬合金を提供する。
【解決手段】硬質相と、残部が結合相、添加剤及び不可避的不純物からなる微粒超硬合金であり、前記硬質相として、平均粒径1.2μm以下のWCを含有し、前記結合相として、Coを2重量%〜15重量%含有する。前記添加剤として、Ti、Zr、Hf、Nb、Alから選択される1種以上の第一金属と、Cr、Ta、Vから選択される1種以上の第二金属との双方を含有する。前記第一金属は、総量で0.01重量%〜5重量%とし、金属単体、これらの固溶体、炭素、窒素、酸素、硼素から選択される1種以上との化合物及び複合化合物から選択される1種以上で添加させる。前記第二金属の総量の結合相に対する重量比を0.02〜0.5とする。
【選択図】なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、微粒超硬合金及びこの超硬合金を利用した切削工具に関するものである。特に、組織を均一的に微細化して強度を向上させると共に、硬質相の粒成長を抑制して突発的な破損や欠損を低減することができる微粒超硬合金、及びこの超硬合金を利用した切削工具に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、合金組織の平均粒径が1μm未満である、いわゆる微粒超硬合金は、強度が高いため、広く使用されている。しかし、微粒の超硬合金原料を用いて微粒超硬合金を作製しても、使用によっては、突発的な破損や欠損が発生することがある。この主要な原因として、WCなどの硬質相の粒度を極度に微小にして硬度を向上させることで、トレードオフの関係にある破壊靱性が低下することが知られている。また、もうひとつの主要な要因として、粒成長した粗大な硬質相が欠陥となり、合金特性、工具においては切削特性を著しく低下させることが知られている。超硬合金は、通常、液相焼結であり、焼結中に結合相が液相状態になり、この液相中に固溶、拡散した硬質相が冷却工程で2μm以上といった粗大な粒で再析出する、いわゆるオストワルド成長による粒成長を起こすことがある。この粒成長は、1μm未満の超微粒原料を用いた場合、抑制がより困難であり、合金組織が不均一になるだけでなく、粗大な硬質相が破壊の起点となり易い。
【0003】
そこで、従来、種々の粒成長の抑制剤を合金組成に添加する検討がなされている。一般に、V、Cr、Taが最も粒成長抑制の効果が大きく、これらの元素を単体、又は炭化物、窒化物などの化合物で適量添加することで、粒成長の抑制が図られている(例えば、特許文献1、2、3参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−115229号公報(特許請求の範囲参照)
【特許文献2】
特開2001−335876号公報(特許請求の範囲参照)
【特許文献3】
特開2001−269809号公報(特許請求の範囲参照)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、V、Cr、Taの適量添加では、合金組織の平均粒径を微細化することに対して効果がみられるものの、粗大な硬質相の粒成長を完全に抑制することが困難であり、粒成長をより効果的に抑制することが求められている。
【0006】
そこで、本発明の主目的は、合金組織の均一的な微細化と共に硬質相の粒成長をより抑制して、強度と靭性との双方に優れる微粒超硬合金を提供することにある。また、本発明の別の目的は、この微粒超硬合金を利用した切削工具を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、硬質相の平均粒径を規定すると共に、合金組織の微細化を促す添加剤として、V、Cr、Taから選択される少なくとも1種に加えて、Ti、Zr、Hf、Nb、Alから選択される少なくとも1種を含有させることで上記の目的を達成する。
【0008】
即ち、本発明は、硬質相と、残部が結合相、添加剤及び不可避的不純物からなる微粒超硬合金であって、以下を特徴とする。前記硬質相として、平均粒径1.2μm以下のWCを含有し、前記結合相として、Coを2重量%〜15重量%含有する。更に、前記添加剤として、Ti、Zr、Hf、Nb、Alから選択される1種以上の第一金属と、Cr、Ta、Vから選択される1種以上の第二金属との双方を含有する。前記第一金属は、総量で0.01重量%〜5重量%とし、金属単体、これらの固溶体、炭素、窒素、酸素、硼素から選択される1種以上との化合物及び複合化合物から選択される1種以上で添加させる。また、前記第二金属の総量の結合相に対する重量比を0.02〜0.5とする。
【0009】
発明者らは、粗大な硬質相の抑制について様々な粒成長の抑制剤、及びその組合せと結合相量との関係について検討を繰り返した結果、以下の知見を得た。即ち、従来知られているV、Cr、Taといった粒成長抑制剤に加えて、Ti、Zr、Hf、Nb、Alといった金属元素を特定量含有させることで、粗大な硬質相の生成を効果的に抑えるだけでなく、更には、これら金属元素を含有しない場合と比較して合金組織の平均粒径をも格段に小さくできる、というものである。従来、V、Cr、Ta以外の金属元素は、粒成長抑制の効果が小さい、或いはほとんどなく、微粒超硬合金に含有されることがなかった。これに対し、本発明者らは、添加剤として最適な元素、最適な量、最適な元素の添加方法を見出し、これまでに成し得なかったような異常な粒成長抑制の効果を発揮することを実現する。
【0010】
本発明は、上記知見に基づくものであり、添加剤として上記第一金属及び第二金属の双方を含有することで、局所的に発生する粗大な硬質相の存在個数をより低減すると同時に、合金組織の平均粒径の微細化をも図る。従って、本発明微粒超硬合金は、合金組織が均一的に微細化された状態であり、かつ粗大な粒子の存在数が少ない状態であることから、強度の向上を可能にすると共に、突発的な破損や欠損の発生を低減することができ、優れた強度と靭性との両立を実現する。以下、本発明をより詳しく説明する。
【0011】
本発明微粒超硬合金は、硬質相としてWC(炭化タングステン)を含有する。特に、合金組織中のWCの平均粒径は、1.2μm以下であることが重要である。1.2μm超であると、第一金属(Ti、Zr、Hf、Nb、Alから選択される少なくとも1種の金属)を添加させる効果が明確に現れにくく、第一金属を添加していない場合と比較して合金組織の平均粒径の微細化が確認されにくい。特に好ましくは、1.0μm以下である。合金組織中のWCの平均粒径は、特定の範囲に存在するWCの粒径を測定し、これらの平均を計算により求めるとよい。WCの粒径の測定は、例えば、画像解析による方法や、直接長さを測定する方法などが挙げられる。前者の場合、例えば、超硬合金の表面又は切断面をSEMにて5000倍〜10000倍程度で観察し、その観察画像をコンピューターに取り込み、画像解析装置にて解析して、測定することが挙げられる。後者の場合、例えば、超硬合金の表面又は切断面を顕微鏡写真に撮り、写真観察にてWCの長手方向の長さ(最長部の長さ)を測定することが挙げられる。合金原料となるWCも、粒成長による粗大化を低減するために、平均粒径がより小さいものを用いることが好ましい。例えば、平均粒径が1.2μm以下、特に、1.0μm以下のものを用いることが好ましい。
【0012】
本発明超硬合金は、結合相として鉄系金属、特にCo(コバルト)を含有する。結合相は、Coのみとしてもよいが、その一部をNiに置換してもよい。本発明では、Coの含有量を2重量%以上15重量%以下と規定する。2重量%未満であると、従来用いられている粒成長抑制剤(第二金属)の他に第三の元素(第一金属)を含有させることで、逆に強度が低下する傾向にある。15重量%超であると、Ti、Zr、Hf、Nb、Alから選択される少なくとも1種を含有させても、粗大な硬質相(WC)の発生頻度を低下させにくく、粗大な硬質相の存在低減の効果が小さい。これは、強度の低下を引き起こさない程度に第三の元素(第一金属)を添加しても、Coが多いことでCo中にWが多分に固溶し、再析出現象を引き起こすためであると考えられる。
【0013】
本発明超硬合金では、更に、合金組織中におけるWCの粒成長の抑制をより図るべく、添加剤として第一金属を含有する。第一金属は、Ti、Zr、Hf、Nb、Alから選択される1種以上の金属とする。また、本発明では、上記金属の含有量を総量で0.01重量%以上5重量%以下と規定する。0.01重量%未満であると、粗大なWCの存在頻度の低減効果が得られにくい。5重量%超であると、合金組織中にTi、Zr、Hf、Nb、Alの化合物(炭化物、窒化物、炭窒化物、炭酸窒化物、硼化物など)、特に粗大な化合物が析出して、強度の低下を引き起こし易い。この理由は明らかではないが、5重量%超では、Co中への各元素の固溶サイトが飽和するためであると考えられる。そして、本発明において第一金属は、合金組織中において後述する第二金属と同時に存在することが重要である。また、第一金属は、金属単体、これらの固溶体、炭素、窒素、酸素、硼素から選択される1種以上との化合物及び複合化合物から選択される1種以上で添加することが好適である。即ち、合金原料として、金属単体を用いてもよいし、第一金属からなる固溶体を用いてもよいし、第一金属と炭素などとの化合物や複合化合物を用いてもよい。
【0014】
第一金属は、特にTiが好ましい。Tiを0.01重量%〜5重量%含有することで、本発明に規定する特定のWC、Coを含有する微粒超硬合金において、合金組織の平均粒径を著しく小さくすることができ、2μmを超える粗大なWCの個数も減少させ、切削工具に用いた際、工具強度の向上が可能である。
【0015】
本発明超硬合金では、更に、合金組織の平均粒径の微細化をより図るべく、添加剤として第二金属を含有する。第二金属は、Cr、Ta、Vから選択される1種以上の金属とする。また、本発明では、結合相(例えば、Co)(重量%)に対する第二金属の総量(重量%)の重量比を0.02以上0.5以下に規定する。重量比が0.02より小さいと、粒成長抑制の効果が得られにくく、粗大な硬質相が生成されて、切削工具に用いた場合、工具強度が低下してしまう恐れがある。重量比が0.5よりも大きくても、工具強度が著しく低下する。これは、第二金属が多すぎることで、脆化相を形成して析出することが原因であると考えられる。また、第二金属は、金属単体、炭素、窒素から選択される1種以上との化合物から選択される1種以上で添加することが好適である。即ち、合金原料として、金属単体を用いてもよいし、第二金属の炭化物、窒化物、炭窒化物を用いてもよい。
【0016】
本発明超硬合金は、切削工具の母材に用いることが好適である。例えば、ドリル、エンドミル、ルーター、リーマーなどの回転工具、マイクロドリルなどのプリント基板加工用回転工具、アルミニウムや鋼などの旋削加工を行うスローアウェイチップなどの旋削加工用工具が挙げられる。本発明超硬合金を母材に用いた切削工具は、母材の部分的にではなく全体において粗大な硬質相が低減されることで破壊の起点が少なく、耐折損性、耐欠損性の向上が望まれると共に、母材の全体に亘る合金組織の均一的な微細化により、強度の向上をも望まれるため、良好な切削性能を発揮する。特に、マイクロドリルは、プリント基板の穴あけなどに用いられる工具であり、ドリル径:φ0.1〜0.3mmといった極小径のものが従来主に使用されている。このように極小径であることで、母材全体の合金組織が微細でかつ均質でないと、組織中の粗大な硬質相を起点とした破壊や折損が生じ易い。従って、マイクロドリルの母材として本発明微粒超硬合金を用いると、本発明超硬合金の性能が活かされ、従来と比較して良好な結果が期待される。また、本発明超硬合金を用いた旋削加工用工具も、突発的な刃先の飛びなどを防止することで耐チッピング性の向上が望まれると共に、高強度による耐摩耗性の向上も望まれるため、優れた切削性能を発揮する。
【0017】
上記切削工具において、更に安定した切削性能を発揮するべく、工具表面には、少なくとも一層の硬質膜を被覆することが好ましい。特に、硬質膜は、周期律表の4a、5a、6a族金属、A1及びSiから選択される1種以上の元素と炭素、窒素、酸素及び硼素から選択される1種以上の非金属元素との化合物、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)及びダイヤモンドよりなる群から選択される1種であることが望ましい。即ち、セラミック膜、DLC膜、ダイヤモンド膜の少なくとも1種の層を被覆することが好ましい。セラミック膜としては、例えば、TiC、TiN、TiCN、TiSiN、TiAlN、CrN、TiB、TiBN、ZrC、ZrO、HfC、HfN、Al、SiC、SiO、Siなどが挙げられる。また、セラミック膜の総平均厚み、DLC膜の平均厚み、ダイヤモンド膜の平均厚みは、いずれも0.1μm以上が好ましい。セラミック膜の総平均厚み、DLC膜の平均厚み、ダイヤモンド膜の平均厚みが0.1μm未満では、コーティングすることによる耐摩耗性の改善効果が少ないからである。このような硬質膜は、公知のCVD法またはPVD法により形成すればよい。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
(実施例1)
平均粒径1.0μmのWC原料粉末、Co原料粉末、表1〜3に示す組成のCr、V、Taの化合物粉末、Ti、Zr、Hf、Nb、Alの化合物粉末、及び適当量の粉末Cを表1〜3に示す添加量(重量%)で配合し、ボールミルで24時間粉砕、混合した。それから、スプレードライヤーを用いて乾燥、造粒を行った後、プレス成形し、1400℃で焼結して20mmスパンのJIS試験片に加工した。試験片は、表1〜3に示す組成の各試料に対して、複数本作製した。
試料No.21〜30は、それぞれ試料No.1〜10と同様の種類の原料粉末を用い、添加量を異ならせた試料であり、末尾が同じ番号の試料(例えば、試料No.1と試料No.21)は、同じ条件で、混合、粉砕、焼結を行った。試料No.31〜50はTi、Zr、Hf、Nb、Alの化合物粉末を用いなかった試料であり、試料No.31〜40は、試料No.1〜10と末尾が同じ番号の試料と同じ条件で、混合、粉砕、焼結を行った。試料No.41〜50は、試料No.11〜20と末尾が同じ番号の試料と同じ条件で、混合、粉砕、焼結を行った。試料No.51〜55は、平均粒径4〜6μmの粗粒のWC原料粉末を使用し、ボールミルにより12〜36時間の適当な時間で粉砕を行い、WCの平均粒径を変化させた試料である。
【0019】
【表1】
Figure 2004315904
【0020】
【表2】
Figure 2004315904
【0021】
【表3】
Figure 2004315904
【0022】
得られた試験片において、Cr、Ta、Vの総含有量、Coの含有量、Ti、Zr、Hf、Nb、Alの総含有量を調べるべく、各試料の試験片の1本をとり、それぞれICP(誘導結合プラズマ発光分析)にて分析した。各分析値(重量%)を表4〜6に示す。また、各試験片の表面をSEMにて8000倍で観察し、その観察画像をコンピューターに取り込み、画像解析装置にて解析して、25mmの範囲に存在するWCの粒径(μm)を測定し、これらの平均を求めた。また、25mmの範囲に存在する2μm以上のWCの数を測定した。求めたWCの平均粒径(μm)も併せて表4〜6に示す。
【0023】
【表4】
Figure 2004315904
【0024】
【表5】
Figure 2004315904
【0025】
【表6】
Figure 2004315904
【0026】
得られた各試料に対して、試験片をそれぞれ6本ずつとり、各試験片に抗折力試験を行い、6本の抗折力の平均値TRS(GPa)と、標準偏差σ(値のばらつき)を求めた。また、合わせて硬度Hv(GPa)を求めた。その結果を表7に示す。この試験における評価では、抗折力の平均値が高く、かつ標準偏差が小さいほど良好な合金、即ち強度が高い合金といえる。
【0027】
【表7】
Figure 2004315904
【0028】
表7に示すようにTi、Zr、Hf、Nb、Alから選択される1種以上の第一金属と、Cr、Ta、Vから選択される1種以上の第二金属との双方を特定量含有する試料No.1〜20は、第二金属のみを含有する試料No.31〜50と比較して、抗折力の平均値が高く、かつ標準偏差が小さいことがわかる。通常、硬質相の粒度が小さくなると、硬度が向上する反面、抗折強度が低下する傾向にある。しかし、試料No.1〜20は、硬度と同様に抗折強度をも向上し、かつ安定させていることから、優れた強度の合金であるといえる。また、試料No.1〜20は、WCの平均粒径がより小さく、かつ一定の範囲(25mm)において2μm以上の粗大なWC粒子がほとんど見られなかった。これに対し、試料No.21〜50では、WCの平均粒径は1μm前後であるが、同様の条件で作製したにもかかわらず、上記同範囲において2μm以上の粗大なWC粒子が表5、6に示すように複数個見られた。
【0029】
更に、第一金属及び第二金属の双方を含有していても、Coが2重量%未満である試料No.24、Coが15重量%超である試料No.25、第一金属の総含有量が0.01重量%未満である試料No.21、第一金属の総含有量が5重量%超の試料No.22、23、第二金属の含有重量比((Cr+Ta+V)/Co)が0.02未満の試料No.26、27、第二金属の含有重量比が0.5超の試料No.28〜30では、同等の硬度で比較した場合、抗折力の平均値が高くても、標準偏差が大きかったり、逆に標準偏差が小さくても、抗折力の平均値が低いことがわかる。従って、これらの試料は、試料No.1〜20と比較して、強度が低いことがわかる。また、WCの平均粒径が1.2μm超である試料No.51〜55は、抗折力の平均値が低い上に、標準偏差も大きく、試料No.1〜20と比較して、強度が低いことがわかる。
【0030】
(実施例2)
実施例1と同様の組成の原料粉末を用いて、φ11.0mmのドリルを作製した。ドリルは、実施例1と同様に粉砕、混合した後、乾燥、造粒を行い、φ15mmの丸棒にプレス成形し、1400℃で焼結した後、1320℃でHIP処理を施し、外周加工(溝加工)を行うことで作製した。
【0031】
作製したドリルにより穴あけ試験を行い、切削評価を行った。被削材は、SUS304とし、切削条件は、切削速度V=60m/min(回転数N=1737/min)、送り量f=0.20mm/rev.、切込み深さd=15mm(貫通)、切削油使用(湿式)とした。切削評価は、折損するまでの切削長(m)で行った。その結果を表8に示す。
【0032】
【表8】
Figure 2004315904
【0033】
表8に示すように、第一金属及び第二金属を特定量含有している試料No.1〜20のドリルは、第二金属のみを含有している試料No.31〜50のドリルと比較して優れた穴あけ加工性を有していることがわかる。特に、試料No.1〜20のドリルは、折損が生じにくく、耐折損性に優れる、即ち、靭性に優れるものであることがわかる。これは、試料No.1〜20のドリルは、粗大なWCがほとんど存在しなかったためであると推測される。
【0034】
また、第一金属及び第二金属の双方を含有していても、Coが2重量%未満である試料No.24のドリル、Coが15重量%超である試料No.25のドリルや、第一金属の総含有量が0.01重量%未満である試料No.21のドリル、第一金属の総含有量が5重量%超の試料No.22、23のドリル、第二金属の含有重量比((Cr+Ta+V)/Co)が0.02未満の試料No.26、27のドリル、第二金属の含有重量比が0.5超の試料No.28〜30のドリルでは、試料No.1〜20のドリルと比較して、切削長が短く、耐折損性に劣ることがわかる。なお、試料No.51〜55では、強度が低いため本試験を行うに値せず、試験を行っていない。
【0035】
(実施例3)
実施例1と同様の組成の原料粉末を用いて、φ0.3mmのマイクロドリルを作製した。マイクロドリルは、実施例1と同様に粉砕、混合した後、乾燥、造粒を行い、φ3.5mmの丸棒にプレス成形し、1400℃で焼結した後、1320℃でHIP処理を施し、外周加工(溝加工)を行うことで作製した。
【0036】
作製したマイクロドリルにより穴あけ試験(貫通穴)を行い、切削評価を行った。被削材は、ガラス層とエポキシ樹脂層との交互4層積層板(アメリカ規格協会が規定する銅張り積層板のグレード:FR−4)からなるプリント基板(厚さ1.6mm)を2枚重ねにしたもの(合計厚さ3.2mm)とし、切削条件は、回転数N=150,000r.p.m、送り量f=15μm/rev.、切削油不使用(乾式)とした。切削評価は、折損するまでの穴あけ加工数で行った。その結果を表9に示す。
【0037】
【表9】
Figure 2004315904
【0038】
表9に示すように、実施例2と同様に第一金属及び第二金属を特定量含有している試料No.1〜20のマイクロドリルは、第二金属のみを含有している試料No.31〜50のマイクロドリルと比較して優れた穴あけ加工性を有していることがわかる。特に、試料No.1〜20のマイクロドリルは、折損が生じにくく、耐折損性に優れる、即ち、靭性に優れるものであることがわかる。これは、試料No.1〜20のマイクロドリルは、粗大なWCがほとんど存在しなかったためであると推測される。
【0039】
また、第一金属及び第二金属の双方を含有していても、Coが2重量%未満である試料No.24のマイクロドリル、Coが15重量%超である試料No.25のマイクロドリルや、第一金属の総含有量が0.01重量%未満である試料No.21のマイクロドリル、第一金属の総含有量が5重量%超の試料No.22、23のマイクロドリル、第二金属の含有重量比((Cr+Ta+V)/Co)が0.02未満の試料No.26、27のマイクロドリル、第二金属の含有重量比が0.5超の試料No.28〜30のマイクロドリルでは、試料No.1〜20のマイクロドリルと比較して、加工数が少なく、耐折損性に劣ることがわかる。なお、試料No.51〜55では、硬質相の平均粒径が大きいため本試験を行うに値せず、試験を行っていない。特に平均粒径が2、3μmの試料では、ドリル加工の際に欠けが発生してマイクロドリルを作製できなかった。
【0040】
(実施例4)
実施例1と同様の組成の原料粉末を用いて、CNMG120408−全周ブレーカのスローアウェイチップを作製した。チップは、実施例1と同様に粉砕、混合した後、乾燥、造粒を行ってプレス成形し、1400℃で焼結した後、研削加工を行うことで作製した。
【0041】
作製したスローアウェイチップにより切削試験を行い、切削評価を行った。被削材は、SCM435とし、切削条件は切削速度V=200m/min、送り量f=0.3mm/rev.、切込み深さd=15mm、切削油使用(湿式)とした。切削評価は、10分間切削を行った後の逃げ面摩耗量(V摩耗量)で行った(表10では摩耗幅(mm)を記載)。その結果を表10に示す。
【0042】
【表10】
Figure 2004315904
【0043】
表10に示すように、第一金属及び第二金属を特定量含有している試料No.1〜20のスローアウェイチップは、第二金属のみを含有している試料No.31〜50のチップと比較して優れた切削特性を有していることがわかる。特に、試料No.1〜20のスローアウェイチップは、摩耗が少なく、優れた強度を有するものであることがわかる。これは、試料No.1〜20のチップの合金組織が均一的に微細化されているためであると推測される。
【0044】
また、第一金属及び第二金属の双方を含有していても、Coが2重量%未満である試料No.24のチップ、Coが15重量%超である試料No.25のチップや、第一金属の総含有量が0.01重量%未満である試料No.21のチップ、第一金属の総含有量が5重量%超の試料No.22、23のチップ、第二金属の含有重量比が0.02未満の試料No.26、27のチップ、第二金属の含有重量比が0.5超の試料No.28〜30のチップでは、試料No.1〜20のチップと比較して、概ね逃げ面摩耗量が多く、強度が劣ることがわかる。特に、同等の硬度で比較した場合、試料No.1〜20のチップは、逃げ面摩耗量が少なく、強度に優れることがわかる。なお、試料No.51〜55のチップは、強度が低いため本試験を行うに値せず、試験を行っていない。
【0045】
(実施例5)
さらに、実施例2、4で作製したドリル、スローアウェイチップのうち、試料No.1〜20に該当するものを別途用意し、各工具表面に表11に示すA〜Dの被覆処理を施した。また、実施例3で作製したマイクロドリルのうち、試料No.1〜20に該当するものを別途用意し、各工具表面に表11に示すF、Gの被覆処理を施した。A〜C、E、F、Gは公知のPVD法で、Dは公知のCVD法にて被覆処理を行った。これらの硬質膜を有する切削工具に対して、実施例2〜4と同様の切削試験を行い、同様の切削評価を行った。
【0046】
【表11】
Figure 2004315904
【0047】
その結果、硬質膜を有するドリルは、上記実施例2で用いた被覆処理を行っていないドリルに対して、いずれも切削長が2〜3割程度向上していた。硬質膜を有するマイクロドリルは、上記実施例3で用いた被覆処理を行っていないマイクロドリルに対して、いずれも穴あけ加工数が2〜4割程度向上していた。硬質膜を有するスローアウェイチップは、上記実施例4で用いた被覆処理を行っていないチップに対して、いずれも10分切削後の逃げ面摩耗量が0.5〜2割程度抑制されることがわかった。従って、工具表面に硬質膜を設けると、より好ましい切削性能を有することがわかる。
【0048】
【発明の効果】
以上、説明したように本発明微粒超硬合金によれば、添加剤としてTi、Zr、Hf、Nb、Alから選択される1種以上と、Cr、Ta、Vから選択される1種以上との双方を特定量含有することで、硬質相の粒成長を効果的に抑制すると共に、組織の平均粒径をも微細化することができるという優れた効果を奏し得る。そのため、本発明超硬合金を用いた切削工具では、組織中に粗大な硬質相が存在することで発生していた突発的な破壊、欠損が抑制されると共に、組織の均一的な微細化による強度(例えば、抗折強度)を向上させることができる。従って、本発明は、回転切削加工、精密加工、旋削加工などの分野において有用である。

Claims (4)

  1. 硬質相と、残部が結合相、添加剤及び不可避的不純物からなる微粒超硬合金であって、
    前記硬質相として、平均粒径1.2μm以下のWCを含有し、
    前記結合相として、Coを2重量%〜15重量%含有し、
    前記添加剤として、Ti、Zr、Hf、Nb、Alから選択される1種以上の第一金属と、Cr、Ta、Vから選択される1種以上の第二金属との双方を含有し、
    前記第一金属は、総量で0.01重量%〜5重量%であり、金属単体、これらの固溶体、炭素、窒素、酸素、硼素から選択される1種以上との化合物及び複合化合物から選択される1種以上で添加され、
    前記第二金属の総量の結合相に対する重量比が0.02〜0.5であることを特徴とする微粒超硬合金。
  2. 第一金属は、Tiであることを特徴とする請求項1に記載の微粒超硬合金。
  3. 請求項1又は2に記載の微粒超硬合金により製造された切削工具であり、回転工具、プリント基板加工用回転工具、旋削加工用工具のいずれかであることを特徴とする切削工具。
  4. 更に、工具表面には、一層以上の硬質膜が被覆され、
    前記硬質膜は、周期律表の4a、5a、6a族金属、Al及びSiから選択される1種以上の金属元素と炭素、窒素、酸素及び硼素から選択される1種以上の非金属元素との化合物、DLC及びダイヤモンドよりなる群から選択される1種であることを特徴とする請求項3に記載の切削工具。
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