JP2018154917A - 超硬合金及びその製造方法、並びにそれを用いた切削工具 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐チッピング性に優れた超硬合金及びその製造方法、並びにそれを用いた切削工具の提供。【解決手段】10.0〜14.0質量%のCoと、Coに対する質量比で3.0〜10.0%のCrを含有し、WC粒子がCoを主体とする結合相により結合され、界面近傍の結合相のW含有量が結合相の中心のW含有量よりも高い超硬合金及びその製造方法、ならびにそれを用いた切削工具。【選択図】図2

Description

本発明は、例えば、Ni基耐熱合金、Ti合金及びステンレス鋼等の難削材、高硬度鋼等の高速切削等に有用である耐チッピング性に優れた超硬合金及びその製造方法、並びにそれを用いた切削工具に関する。
従来から耐熱合金やステンレス鋼等の難削材(被削材)の切削工具用基体として超硬合金が多用されている。近年、被削材の高硬度化や切削工具への高能率加工等の要求が非常に過酷になってきており、超硬合金の益々の性能向上が求められている。例えば、以下の特許文献1〜3に示される技術が知られている。
特開2011-235410号公報(特許文献1)は、結合相成分としてCoを含有し、残部が硬質相成分としてのWCおよび不可避不純物からなるWC基超硬合金を工具基体とするWC基超硬合金製切削工具において、結合相成分であるCoの含有量は4〜12質量%であり、また、結合相中にはReが固溶しており、結合相中の平均Re含有量は3〜20質量%であり、さらに、硬質相を構成するWC粒子表面には、該WC粒子の表面から、該WC粒子の粒径の1〜10%の深さ領域にわたってReの拡散薄層が形成され、かつ、該深さ領域における固溶Re含有量は0.2〜7質量%であり、一方、該WC粒子の内部側では、固溶Re含有量は0.2質量%未満であるWC基超硬合金製切削工具を開示している。この切削工具のWC基超硬合金は、所定性状の成形体を1380〜1500℃で液相焼結後、少なくとも1150℃までを1℃/分以下の冷却速度で徐冷し、その後室温まで炉冷することにより製造されている。
特許第4351453号公報(特許文献2)は、コバルトを主体とする結合相5〜15質量%にて炭化タングステン粒子間を結合してなる超硬合金であって、前記結合相中に少なくともクロムを炭化クロム換算で0.4〜0.8質量%含有し、前記結合相中のクロム濃度が炭化タングステン粒子との界面に向かって漸次増加することを含むものを開示している。この超硬合金は、所定の原料粉末を用いてプレス成形し、得られた成形体を1330〜1375℃で焼成後、前記焼成温度より5〜100℃低い温度で熱間静水圧プレス焼成(HIP処理)を施し、その後、5〜10℃/分の冷却速度で1000℃以下まで冷却することにより製造されている。
特開2016-180183号公報(特許文献3)は、WC粒子の平均粒径が0.4μm未満、分散度数が0.50以下、及び平均円形度が0.68以上であるWC基超硬合金を開示している。このWC基超硬合金は、焼結前の原料粉末中のWC粒子が過度に微粉砕されないように、[解砕工程・混合工程]のうちの少なくともどちらか一方に[弱撹拌]を採用して得られた所定性状の原料粉末を用いて成形、焼結、及びHIP処理を行うことにより製造されている。
特開2011-235410号公報 特許第4351453号号公報 特開2016-180183号公報
しかし、本発明者の検討によれば、特許文献1〜3に記載の超硬合金を切削工具に用いると、前記難削材、熱処理後の高硬度鋼等の高速切削における耐チッピング性は、必ずしも満足できず、改良の余地があることが分かった。
さらに、特許文献3に記載の[弱撹拌]の解砕・混合条件を採用すると、超硬合金の製造工程のサイクルタイムが長くなり、実用性(生産性)が低下する。
そこで、本発明が解決しようとする課題、すなわち、本発明の目的は、第一に、切削工具として用いたときに優れた耐チッピング性を有する長寿命の超硬合金を提供することである。
第二に、かかる超硬合金に硬質皮膜を被覆した切削工具を提供することである。
第三に、かかる超硬合金の実用的な製造方法を提供することである。
本発明者は、WC基超硬合金の結合相中の組成とWの濃度分布に注目したところ、特定の組成とW濃度分布を有するとき、切削工具として用いると、耐チッピング性が顕著に優れ長寿命となるWC基超硬合金を得ることができること、そして、当該WC基超硬合金は焼結後の冷却条件を制御することにより製造できることを知見した。
本発明は、前記知見に基づくものであって、本発明の超硬合金は、次の複数の態様を含むものである。すなわち、
(1)10.0〜14.0質量%のCoと、該Coに対する質量比で3.0〜10.0%のCrと、硬質相を構成するWC粒子が前記Coを主体とする結合相により結合されており、
前記WC粒子と前記結合相との界面近傍における結合相は、Co、W、Crに着目したとき、一般式:Co100-a-bWaCrb[ただし、Co、W及びCrの含有量(原子%)を表す(100-a-b)、a及びbは、それぞれ85≦100-a-b≦93、6≦a≦10、及び1≦b≦5の条件を満たす。]により表される金属組成を有し、
前記結合相の中心では、Co、W、Crに着目したとき、一般式:Co100-x-yWxCry[ただし、Co、W及びCrの含有量(原子%)を表す(100-x-y)、x及びyは、それぞれ86≦100-x-y≦94、4≦x≦8、及び2≦y≦6の条件を満たす。]により表される金属組成を有し、
前記界面近傍における結合相のW含有量(a)が前記結合相の中心のW含有量(x)よりも高いことを特徴とする超硬合金である。
(2)前記(1)の超硬合金において、前記界面近傍における結合相のW含有量(a)が前記結合相の中心のW含有量(x)よりも1原子%以上高いことが好ましい。
(3)前記(2)の超硬合金において、後方散乱電子回折により得られたWC粒子の粒度分布における累積%が91%となるWC粒径D91から前記累積%が100%となるWC粒径D100までの累積値の平均が0.50〜1.15μm未満であることが好ましい。
また、本発明の別の態様として、
(4)前記(1)〜(3)のいずれかの超硬合金に硬質皮膜を被覆してなる切削工具である。
さらに、本発明の別の態様として、
(5)10.0〜14.0質量%のCo粉末と、Coに対する質量比で3.0〜10.0%のCrを含有するCr3C2粉末と、残部としてフィッシャー法による平均粒径が0.8〜2.0μmのWC粉末とを準備する工程と、前記各粉末を混合する混合工程と、得られた混合粉末を造粒する造粒工程と、得られた造粒粉末を成形する成形工程と、得られた成形体を焼成する焼成工程とを有する超硬合金の製造にあたり、前記焼成工程において前記成形体を1380〜1420℃で焼結後、1300〜1350℃まで1.0〜3.3℃/分の冷却速度で徐冷する徐冷工程、及び前記徐冷工程後に前記徐冷工程の終了温度1300〜1350℃から60℃まで80〜130℃/分の冷却速度で急冷する急冷工程を有することにより、当該超硬合金におけるWC粒子と前記Coを主体とする結合相との界面近傍における結合相のW含有量を、前記結合相の中心のW含有量よりも、高くしたことを特徴とする超硬合金の製造方法である。
(6)前記(5)の超硬合金の製造方法において、前記WC粉末の(101)面のX線回折ピークが2つのピークを有することが好ましい。
本発明の一実施形態によれば、優れた耐チッピング性を有する超硬合金が提供される。
また、本発明の一実施形態によれば、優れた耐チッピング性を有する切削工具が提供される。
さらに、本発明の一実施形態によれば、優れた耐チッピング性を有し、長寿命の超硬合金を実用的に製造することができる。
実施例1の超硬合金の研磨断面(焼結肌の表面下400μmの位置)を電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)により撮影した写真である。 図1中の矢印で示す結合相の部分を電界放射型透過電子顕微鏡(FE-TEM)により拡大した写真(倍率150,000倍)である。 図2において界面を記載した模式図である。 実施例1及び4で使用したWC粉末の(101)面のX線回折ピークを示す図である。 実施例1の超硬合金の粒度分布の測定領域を示す図である。 実施例1の超硬合金の粒度分布の測定結果を示すグラフである。 本発明の切削工具が適用されるミーリング用インサートの一例を示す図である。 本発明の切削工具が適用される刃先交換式回転工具の一例を示す図である。
以下、本発明の実施形態に係る超硬合金、当該超硬合金に硬質皮膜を被覆した切削工具、及び、前記超硬合金の製造方法について、詳細に説明する。
[1] 超硬合金
(a) 硬質相
硬質相は、構成する成分であり不可避的不純物を除き、WCからなる。
(b) 結合相
硬質相(WC粒子)を結合させる結合相は、不可避的不純物を除き、Co、Cr、Cからなる。ここで、Cは、Cr源としてCr3C2を用いたときにもたらされるものであるが、本発明においては、結合相のW分布を検討するに当たって、考慮しない。
(c) 全体の組成
本発明の超硬合金の組成は、「Coの質量%+Crの質量%+WCの質量%+不可避的不純物の質量%=100質量%」(Cr3C2のCは不可避的不純物の一成分として扱う)としたときに、10〜14質量%のCoと、Coに対する質量比で3〜10%のCrを含有する。Coの含有量が、10質量%未満では靱性が劣るため、突発欠損により工具寿命が低下し、14質量%超では抗折力の低下により耐チッピング性が低下する。Coの含有量は10.5〜13.5質量%がさらに好ましい。また、Coに対するCrの質量比が3%未満では粒成長抑制効果が小さく、粗大なWC粒子により耐チッピング性が低下し、10%超では抗折力の低下に結び付く粗大な炭化物相が形成されるため、耐チッピング性に劣るといった不都合が生じてしまう。Coに対するCrの質量比は4〜9%がさらに好ましい。本発明の超硬合金の組成は蛍光X線法により測定することができる。
(d) ミクロ組織の組成
本発明の超硬合金において、上記硬質相のWC粒子と上記結合相との界面近傍における結合相では、Co、W、Crの3成分のみに注目すると、一般式:Co100-a-bWaCrb[ただし、Co、W及びCrの含有量(原子%)を表す(100-a-b)、a及びbは、それぞれ85≦100-a-b≦93、6≦a≦10、及び1≦b≦5の条件を満たす数字である。]により表される金属組成を有し、上記結合相の中心では、Co、W、Crの3成分のみに注目すると、一般式:Co100-x-yWxCry[ただし、Co、W及びCrの含有量(原子%)を表す(100-x-y)、x及びyは、それぞれ86≦100-x-y≦94、4≦x≦8、及び2≦y≦6の条件を満たす数字である。]により表される金属組成を有する。さらに、上記界面近傍における結合相のW含有量(a)が上記結合相の中心におけるW含有量(x)よりも高い。このことにより優れた耐チッピング性を有する。a、b、x及びyが前記組成範囲外では耐チッピング性が向上しない。上記一般式においてa、bはそれぞれ87≦100-a-b≦91、7≦a≦9、及び2≦b≦4の条件を満たし、x及びyはそれぞれ88≦100-x-y≦92、5≦x≦7、及び3≦y≦5の関係を満たすことが好ましい。また、上記界面近傍における結合相のW含有量(a)が上記結合相の中心におけるW含有量(x)よりも1原子%以上高いことがより好ましい。
なお、本発明において、結合相の中心及び界面近傍とは、実施例において図3をもとに詳述するように、本発明の超硬合金では必ず存在する、結合相のうち当該結合相とWC粒子との重複領域を除いた結合相(略三角形形状)と、WC粒子との界面に内接する最大の円の半径をrとするとき、結合相の中心とはその円の中心をいい、界面近傍とは当該内接円の界面との接点から15nm離れた内接円内の点をいう。
(e) 結合相内のW含有量の分布(W濃度勾配)
本発明の超硬合金において、結合相内のW含有量(W濃度ともいう。)の分布について、結合相の中心から上記界面近傍における結合相の位置まで(実施例の説明で詳述するように、図3中の中心位置1から結合相の外殻部における位置2、3まで)、プラスのW濃度勾配を有することにより、切削工具が長寿命化する。ここで、W濃度勾配とは、「(位置2または3におけるW含有量−位置1におけるW含有量)/(位置2または3と位置1との距離)」の算術平均により定義されるものであって、プラスのW濃度勾配の値としては、0.01〜0.10(原子%/nm)が好ましく、0.02〜0.10(原子%/nm)がより好ましい。前記W濃度勾配が前記数値範囲を外れると本発明の有利な効果を得ることができない。
(f) WC粒子の粒度分布
本発明の超硬合金は、後方散乱電子回折(EBSD分析)により得られたWC粒子の円相当径の粒度分布が、累積%が91%となるWC粒径をD91、及び前記累積%が100%となるWC粒径をD100としたとき、D91からD100までの累積%の平均(算術平均値で、最大平均WC粒径ともいう。)は0.50〜1.15未満μmが好ましい。この範囲とする理由は、0.5μm未満では微細なWC粒子が破壊の起点となるため超硬合金の抗折力、耐欠損性が低下し、1.15μm以上では粗大なWC粒子となるため超硬合金の耐チッピング性が低下するためである。なお、本発明の超硬合金におけるWC粒子の円相当径の分布の一例として図5(b)に示すものがあり、これは超硬合金の縦16μm×横32μmの領域(例えば、図5(a)の四角形の枠内)でEBSD分析を行ったものである。
[2] 硬質皮膜
本発明の超硬合金上に形成される切削工具の硬質皮膜として、例えば物理蒸着法又は化学蒸着法により、Ti、Al、Cr、B及びZrからなる群から選ばれた少なくとも一種の元素と、C、N及びOからなる群から選ばれた少なくとも一種の元素とを必須とする単層又は多層の硬質皮膜が有用である。具体的には、例えばTiC、CrC、SiC、VC、ZrC、TiN、AlN、CrN、Si3N4、VN、ZrN、Ti(CN)、(TiSi)N、(TiB)N、TiZrN、TiAl(CN)、TiSi(CN)、TiCr(CN)、TiZr(CN)、Ti(CNO)、TiAl(CNO)、Ti(CO)、(TiCr)N、(TiAlCr)N、(AlCr)N、(AlCrSi)N、Al2O3及びTiB2等の単層又は積層の皮膜が挙げられる。硬質皮膜の膜厚は1〜15μmが好ましい。
[3] 超硬合金の製造方法
本発明の超硬合金は、原料粉末の配合工程、解砕・混合工程、造粒工程、成形工程、及び焼結・冷却工程を経て製造される。
(a) 原料粉末の配合工程
配合に供される原料粉末は、10.0〜14.0質量%のCo粉末、Coに対する質量比で3.0〜10.0%のCrを含有するCr3C2粉末、残部は平均粒径(フィッシャー法:FSSS)0.8〜2.0μmのWC粉末である。「Coの質量%+Crの質量%+WCの質量%+不可避的不純物の質量%=100質量%」として前記原料粉末を配合した。Co粉末の平均粒径(FSSS)は0.1〜3.0μmが好ましく、Cr3C2粉末の平均粒径(FSSS)は0.1〜4.0μmが好ましいが、この範囲を満足しなくてもよい。
Co粉末の含有量は、10.0〜14.0質量%にすることが好ましい。その理由は、Co粉末の含有量が、10.0質量%未満では靱性が劣るため、突発欠損により工具寿命が低下し、14.0質量%超では抗折力の低下により耐チッピング性が低下するからである。なお、Co粉末の含有量は、10.5〜13.5質量%にすることがより好ましい。
Cr3C2粉末は、Coに対する質量比で3.0〜10.0%のCrを含有する相当量が配合されることが好ましい。その理由は、Coに対する質量比で、3.0%のCrを含有する相当量未満の配合では、粒成長抑制効果が小さく、粗大なWC粒子により耐チッピング性が低下し、10.0%のCrを含有する相当量超の配合では、抗折力の低下に結び付く粗大な炭化物相が形成されるため、耐チッピング性に劣るといった不都合が生じてしまうためである。なお、Cr3C2粉末は、Coに対する質量比で4.0〜9.0%のCrを含有する相当量を配合することがより好ましい。
WC粉末は、(101)面のX線回折ピークが2つのピークを有し、かつ、例えば、図4に示すようなシャープな粒度分布を持つものが本発明の超硬合金の耐チッピング性の向上のために好ましい。
(b) 解砕・混合工程
上述の原料粉末を配合した後、解砕・混合工程を行う。解砕・混合工程は、特に制限されない。しかし、特に、原料粉末として、上記の(101)面のX線回折ピークが2つのピークを有し、かつシャープな粒度分布を持つWC粉末を用いた場合は、汎用のアトライタ又はボールミル等による生産性の高い条件で解砕・混合処理を行っても本発明の超硬合金を製造することが可能であり、実用的な製造法を得ることができる。
(c) 焼結・冷却工程
成形工程を経た本発明に係る成形体は、例えば、脱脂処理後、1〜50Paの真空中で焼結温度1380〜1420℃に0.5〜5時間保持して焼結後、1300〜1350℃まで1.0〜3.3℃/分の冷却速度で徐冷する徐冷工程、及び前記徐冷工程後に前記徐冷工程の終了温度1300〜1350℃から60℃まで80〜130℃/分の冷却速度で急冷する急冷工程を経ることにより、本発明の超硬合金における結合相が上述の所定のW濃度分布を得ることができる。
前記各温度は、焼結炉内にセットされたワークの近傍に配置された熱電対により、前記焼結炉内の雰囲気温度を測定することにより求めることができる。
焼結温度及び保持時間が上記範囲外では焼結体の密度不足及び/又はWC粒子の粗大化を招く。また、徐冷工程の終了温度が1300℃未満では、結合相の凝固開始温度より低温になるから結合相中のW原子の拡散が十分にすすまず、結合相の中心から外殻部までのW濃度勾配がプラスにはならないため、WC粒子と結合相との親和性が劣り、焼結体の密度が低下し、切削工具として用いたとき、WC粒子が脱落しやすくなり、耐チッピング性が劣る。徐冷工程の終了温度が1350℃超では、結合相中のW拡散が過度にすすんでWC粒子表面へのWC粒子の析出が促進されるから、上記結合相中にプラスのW濃度勾配が得られず、耐チッピング性が劣る。徐冷工程の冷却速度が、1.0℃/分未満では工業生産性に乏しく、3.3℃/分超では結合相中のW拡散が十分にすすまず、結合相にプラスの濃度勾配を有するW濃度分布は得られない。なお、徐冷工程の終了温度は1315〜1345℃がより好ましく、徐冷工程の冷却速度は1.5〜3.2℃/分がより好ましい。
また、上記徐冷工程の終了温度1300〜1350℃から60℃までの急冷速度は80〜130℃/分が好ましい。急冷速度が、80℃/分未満ではWC粒子が粗大化して耐チッピング性が低下し、130℃/分超では急激な温度変化に伴い、切削工具を構成したときの形状の変形が大きくなる。
[4] 本発明の超硬合金の結合相おけるWの分布と耐チッピング性
本発明の超硬合金の結合相におけるWの分布が良好な耐チッピング性を与える理由は定かではないが、以下のように推定している。本発明の超硬合金は、Coを主体とする結合相とWC粒子(硬質相)との界面近傍の結合相のW含有量が、結合相の中心のW含有量より高い(プラスのW濃度勾配を有している。)。すなわち、従来の超硬合金に比べて、W含有量が高い前記界面近傍の結合相と隣接するWC粒子(前記界面近傍の結合相中のW含有量より高いW含有量を有する。)との間のW含有量の差(W濃度勾配)が小さい。このため前記界面及び前記界面近傍の強度が向上し、耐チッピング性が顕著に改善されると考えられる。また、前記界面近傍の結合相中のW含有量が高くなる理由は、焼結後1300〜1350℃まで1.0〜3.3℃/分の冷却速度で徐冷する徐冷工程において、前記結合相中に固溶するW、C元素が近接するWC粒子に向かって適度に拡散してW元素が前記結合相の外殻部に濃縮される結果、前記界面近傍の結合相中のW含有量が前記結合相の中心のW含有量より高いミクロ組織が形成され、その後前記徐冷工程の終了温度1300〜1350℃から60℃まで80〜130℃/分の冷却速度で急冷することにより前記ミクロ組織が室温まで維持されるためと考えられる。
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、勿論本発明はこれらに限定されるものではない。以下の実施例及び比較例において、厚さは平均値である。
<実施例1>
(1) WC基超硬合金の形成
表1-1に示す焼結体組成を与えるCo粉末(平均粒径(FSSS)1.20μm)、Cr3C2粉末(平均粒径(FSSS)1.00μm)、WC粉末(平均粒径(FSSS)1.10μm)の各原料粉末、及び該各原料粉末の総量(100質量%)に対して2質量%のパラフィンワックスをアトライターに投入し、エチルアルコール(水分含有量10%未満)を助剤として、湿式混合した。湿式混合後、スプレードライヤにて造粒・乾燥を行い、得られた造粒粉末により成形体を成形した。得られた成形体を焼結炉にセットして室温から100℃/時間の加熱速度にて1400℃まで昇温し、1400℃において30分間保持して焼結した後、1.7℃/分の冷却速度にて1350℃まで徐冷し、続いて1350℃から60℃まで92℃/分の冷却速度にて急冷し、本発明の超硬合金を製作した。
(2) 超硬合金のミクロ組織
図1に、上記本発明の超硬合金(焼結体)を切断し、集束イオンビーム(FIB)により加工し、鏡面研磨した試料の断面(焼結肌の表面下400μmの深さ)を電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM、ZEISS製XVision200TB)により撮影した写真を示す。図1において、白色部はWC粒子を主成分とする硬質相、灰色部はCoを主体とする結合相である。
図2に、図1中の「←」で示す略三角形状の結合相を電界放射型透過電子顕微鏡(FE-TEM、日本電子株式会社製JEM-2010F)により拡大(倍率150,000倍)して撮影した写真を示す。この図に界面位置を加筆した図が図3である。この図3において、以下に説明する略三角形形状の結合相の領域における、一般式:Co100-α-βWαCrβによって表される金属組成を検討する。
図3において、近接する3つのWC粒子S、T、Uに囲まれた略三角形状の結合相と前記WC粒子S、T、Uとの間の3つの界面(P、Q、R)を「←」でそれぞれ示す。前記結合相と右側の界面Pとの間にのみ、略台形状の「結合相とWC粒子との重複領域」が存在した。ここで、「結合相とWC粒子との重複領域」とは、EDS分析によるWCの定量値がWC粒子そのものとほぼ同じ値を示す結合層内の領域をいう。一方、図3において、前記結合相と上側及び左側の界面Q、Rとの間には「結合相とWC粒子との重複領域」はない。このため、前記重複領域を除外した略三角形状の結合相の領域において、界面Q、R及び重複領域の境界面に内接する円(点線で示す。)を描いてEDS分析範囲とした。ここで、前記円の中心位置1を中心部、及び前記円の界面との接点から前記円の中心に向かって半径方向へ15nm離れた前記結合相内の外殻部における位置を外殻部における位置2、3とする。「結合相とWC粒子との重複領域」を除外した略三角形状の結合相は、本発明の超硬合金では必ず存在するため、この略三角形状の結合相をもとにWの濃度分布濃度勾配を測定する。測定は、FE-TEM(JEM-2010F)に搭載のエネルギー分散型X線分光器(EDS、NORAN社製UTW型Si(Li)半導体検出器、ビーム径:約1 nm)を用いて、前記結合相の中心部として中心位置1、外殻部として界面Q近傍(前記円の界面との接点から15nm)における結合相の位置2、及び界面R近傍における結合相の位置3において、金属元素(Co、W、Cr)について各位置ごとに3回ずつEDS分析を行い、得られた測定値を算術平均し、分析値とした。測定結果を表1-3に示す。また、後述するように、結合相と隣接するWC粒内におけるWの含有量を測定すべく、当該WC粒子中に位置6、7を、それぞれ、前記内接円と前記界面との接点において、該内接円の半径の延長方向へ界面から57nm離れた位置とする。なお、本来は、外殻部の測定位置は2または3の何れか一方であればよいが、本発明では濃度分布がプラスになっていることを確認的に示すために、外殻部の測定位置は2点で測定している。
(4) D91、D100の測定
図1で示された断面を有する、本発明の超硬合金のの鏡面研磨した断面(図5(a)の四角枠内の縦16μm×横32μmの領域)において、電子プローブマイクロ分析装置EPMA(日本電子株式会社製JXA-8500F)に搭載された後方散乱電子回折検出器(株式会社TSLソリューションズ製、OIM:EBSD法)により、WC粒子の粒度分布を測定し、前記粒度分布における累積%が91%となるWC粒径(D91)、及び前記累積%が100%となるWC粒径(D100)、及びD91からD100までの累積%の算術平均(最大平均WC粒径)を求めた。測定結果を表1-3、図5(b)に示す。
(5) 原料WC粉末の(101)面のX線回折ピーク
上記WC粉末の(101)面のX線回折ピークを測定するため、X線回折装置(PANalytical社製のEMPYREAN)を使用し、以下の条件でCuKα1線(波長λ:0.15405 nm)を上記WC粉末に照射した。得られたX線回折パターンから、2θが47.7〜48.9°の範囲を抜粋したものを図5中の実線で示す。
管電圧:45 kV
管電流:40 mA
入射角:ω:3°
2θ:30〜60°
図4中の(101)面のX線回折ピークは、2θが48.3°付近で2つのピークからなることが分かる。
(6) 硬質皮膜の形成
上記超硬合金を図6に示すミーリング用インサート(三菱日立ツール株式会社社製:APMT120508R-RS)30に対応する素材形状に加工後、その上に物理蒸着法により、総膜厚1.5μmのTiAlWN皮膜とAlCrN皮膜との積層皮膜を被覆したミーリング用インサート30を形成した。
<実施例2〜4、及び比較例1、2>
実施例2〜4及び比較例1、2は、表1-1で示される各原料粉末を用いた。実施例2及び3では、それぞれ表1-2に示すように、徐冷終了温度を1320℃(実施例2)及び1300℃(実施例3)とした以外は実施例1と同様にして本発明の超硬合金及び切削工具(ミーリング用インサート)を製作した。実施例4では、図4中破線で示す(101)面の1つのX線回折ピークを有するWC粉末(平均粒径(FSSS)1.10μm)を使用した以外、実施例1と同様にして本発明の超硬合金及び切削工具(ミーリング用インサート)を製作した。比較例1では徐冷終了温度を1370℃とし、及び比較例2では徐冷終了温度を1280℃とした以外、それぞれ実施例1と同様にした。
ここで、実施例1〜4、及び比較例1、2において、使用したWC粉末の性状及び原料粉末、及び焼結体組成について表1-1に示し、焼結温度、徐冷速度、徐冷終了温度、及び急冷速度を表1-2に示す。実施例2〜4及び比較例1、2においても、前述のとおりの図2、図3に示される結合相領域に内接する円を定義してEDS分析を行った。そのようにして得られた結合相の中心位置1、WC粒子Tと結合相との界面Q近傍における結合相中の位置2、及びWC粒子Uと結合相との界面R近傍における結合相中の位置3におけるEDS分析値を焼結体組成とともに表1-3に示し、D91〜D100の累積値の算術平均を表1-3に示し、並びに、位置1-2間及び位置1-3間のW濃度勾配の算術平均を表1-4に示す。

注:(1) (101)面のX線回折ピークが2つのピークからなるWC粉末を使用。
(2) (101)面のX線回折ピークが1つのピークからなるWC粉末を使用。
(3) フィッシャー法により測定。
(4) 不可避的不純物も含んでいる。

注:(1) 焼結温度から徐冷終了温度までの冷却速度。
(2) 徐冷終了温度から60℃までの冷却速度。

注:(1) EDS分析値の小数点以下を四捨五入した値。
(2) 算術平均であり、最大平均WC粒径ともいう。

注:(1) 算術平均。
表1-1〜表1-3から、実施例1〜4の各超硬合金はいずれも、結合相の中心位置1のW含有量よりも、WC粒子と結合相との界面Q、R近傍の結合相中の位置2、3のW含有量が高いことが分かる。表1-4から、実施例1〜4の各超硬合金では、結合相の中心から界面Q、R近傍の結合相までのW含有量の濃度勾配は、0.05、0.06(原子%/nm)であった。これに対し、比較例1、2の各超硬合金ではいずれも、結合相の中心位置1のW含有量よりも、WC粒子と結合相との界面Q、R近傍の結合相中の位置2、3のW含有量が低く、結合相の中心から界面Q、R近傍の結合相までのW含有量の濃度勾配はマイナスであった。
(7) 工具寿命の測定
上記実施例1〜4及び比較例1〜2、それぞれのミーリング用インサート30を合計4個ずつ、図7に示す刃先交換式回転工具(三菱日立ツール株式会社製:AMEB1250RS-32-4NT)70の工具本体71の先端部72側に止めねじ73で装着し、以下のミーリング条件で被削材を切削加工して工具寿命を評価した。切削加工の進行に伴う前記刃先交換式回転工具70の逃げ面摩耗幅を、倍率100倍の光学顕微鏡で観察することにより測定した。工具寿命は、前記逃げ面の最大摩耗幅が0.300 mmを超えたときの総切削時間(分)とした。結果を表1-5に示す。
切削加工条件
加工方法:肩削り加工
被削材組成:Ti-6Al-4V
使用インサート:APMT120508R-RS(ミーリング用)
切削速度:40 m/分
回転数:255 rpm
一刃当たりの送り:0.13 mm/刃
送り速度:33 mm/分
軸方向の切り込み量:10 mm
径方向の切り込み量:37 mm
切削方法:湿式切削
表1-2と表1-3より、実施例1〜3において、各超硬合金のD91〜D100の累積値の算術平均(最大平均WC粒径)は徐冷終了温度が高いほど小さくなり、かつ工具寿命が長いことが分かる。これは最大平均WC粒径が小さいほど耐欠損性が向上したためであると考えられる。さらに、実施例1及び4の比較から、(101)面が1つのX線回折ピークからなるWC粉末を使用した実施例4の超硬合金よりも(101)面が2つのX線回折ピークからなるWC粉末を使用した実施例1の超硬合金の方が最大平均WC粒径が小さく、もって工具寿命は実施例4に比べて実施例1の方が顕著に長寿命であった。
ここで、念のために、本発明の超硬合金の結合相におけるWの分布が良好な耐チッピング性を与える推定の妥当性について、測定結果を基に検討する。表1-6に、実施例1と比較例1について、図3の位置4及び5における金属元素(Co、W、Cr)に対して、EDS分析を行った結果を示す。ここで、図3の位置4及び5とは、図3における内接円と界面との接点(内接点)から、内接円の半径方向WC粒子側に15nm延長した当該WC粒子内の位置をいう。
同図と表1-6によれば、位置6及び7において、比較例1と実施例1のW濃度は実質的に同じとみることができるにもかかわらず、位置4と2及び位置5と3のそれぞれのW濃度の差をもとめてみると、実施例1は比較例1に対して、いずれの位置においてもW濃度差も小さくなっていることがわかる。すなわち、W含有量の差(W濃度勾配)が小さいため、界面及び前記界面近傍の強度が向上し、耐チッピング性が顕著に改善される、という上記推定は、この表1-6のWの濃度分布によって裏付けられているといえ、この推定は一応妥当なものであろう。
<実施例5、6、及び比較例3>
実施例5及び6では、それぞれ、表2-2の焼結体組成になるように各原料粉末を混合し、表2-1に示すように、焼結温度1400℃から徐冷終了温度1350℃までの徐冷速度を3.3℃/分(実施例5)及び1.0℃/分(実施例6)とした以外は実施例1と同様にして本発明の超硬合金及び切削工具(ミーリング用インサート)を製作した。比較例3では徐冷工程の冷却速度を4.4℃/分とした以外、使用したWC粉末の性状及び原料粉末の配合組成を含めて実施例1と同様にした。また、前述と同様の切削加工条件による工具寿命を求めた。
実施例5、6、及び比較例3について、焼結温度、徐冷速度、徐冷終了温度、及び急冷速度を表2-1に、焼結体組成、結合相の中心位置1、WC粒子と結合相との界面Q,R近傍における結合相中の位置2、3におけるEDS分析値を表2-2に、D91〜D100の累積値の算術平均を表2-2に、さらに、位置1-2間及び位置1-3間のW濃度勾配の算術平均を表2-3に、加えて、工具寿命を表2-4に、それぞれ、示す。

注:(1) 焼結温度から徐冷終了温度までの冷却速度。
(2) 徐冷終了温度から60℃までの冷却速度。

注:(1) EDS分析値の小数点以下を四捨五入した値。
(2) 不可避的不純物も含んでいる。
(3) 算術平均であり、最大平均WC粒径ともいう。

注:(1) 算術平均。
表2-1〜表2-3より、実施例5、6の各超硬合金はいずれも、結合相の中心位置1のW含有量よりも、WC粒子と結合相との界面Q,R近傍の結合相中の位置2、3のW含有量が高いことが分かる。さらに表2-3から、結合相の中心から界面Q,R近傍の結合相までのW含有量の濃度勾配は、0.03、0.07(原子%/nm)であった。これに対し、比較例3の超硬合金では、結合相の中心から界面Q,R近傍の結合相までのW含有量の濃度勾配はマイナスであった。また、表2-4を併せみると、徐冷速度が遅いほど最大平均WC粒径が小さくなり、耐欠損性に優れる結果、工具寿命が改善されたと考えられる。
<実施例7、8>
実施例7及び8では、それぞれ、表3-2の焼結体組成になるように原料粉末を混合し、表3-1に示すように、徐冷終了温度1350℃から60℃までの急冷速度を129℃/分(実施例7)及び83℃/分(実施例8)とした以外は、使用したWC粉末の性状及び原料粉末の配合組成を含めて実施例1と同様にして本発明の超硬合金及び切削工具(ミーリング用インサート)を製作し、前述と同様の切削加工条件による工具寿命を求めた。
実施例7及び8について、焼結温度、徐冷速度、徐冷終了温度、及び、急冷速度を表3-1に、結合相の中心位置1、及びWC粒子と結合相との界面Q,R近傍における結合相中の位置2、3におけるEDS分析値を表3-2に、D91〜D100の累積値の算術平均を表3-2に、さらに、位置1-2間及び位置1-3間のW濃度勾配の算術平均を表3-3に、加えて、工具寿命を表3-4に、それぞれ、示す。

注:(1) 焼結温度から徐冷終了温度までの冷却速度。
(2) 徐冷終了温度から60℃までの冷却速度。

注:(1) EDS分析値の小数点以下を四捨五入した値。
(2) 不可避的不純物も含んでいる。
(3) 算術平均であり、最大平均WC粒径ともいう。

注:(1) 算術平均。
表3-1〜表3-3より、実施例7、8の各超硬合金はいずれも、結合相の中心位置1のW含有量よりも、WC粒子と結合相との界面近傍Q,Rの結合相中の位置2、3のW含有量が高いことが分かる。さらに表3-3から、結合相の中心から界面Q,R近傍の結合相までのW含有量の濃度勾配は、0.05、0.06(原子%/nm)であった。また急冷速度が大きいほど最大平均WC粒径が小さくなっており、耐欠損性に優れる結果、表3-4に示すように工具寿命が改善されたと考えられる。
<実施例9、10>
実施例9及び10では、それぞれ、表4-2の焼結体組成になるように原料粉末を混合し、表4-1に示すように、焼結温度を1380℃(実施例9)及び1420℃(実施例10)とした以外は、使用したWC粉末の性状及び原料粉末の配合組成を含めて実施例1と同様にして本発明の超硬合金及び切削工具(ミーリング用インサート)を製作し、前述と同様の切削加工条件による工具寿命を求めた。
実施例9、10において、焼結温度、徐冷速度、徐冷終了温度、及び、急冷速度を表4-1に、結合相の中心位置1、及びWC粒子と結合相との界面近傍における結合相中の位置2、3におけるEDS分析値を表4-2に、また、D91〜D100の累積値の算術平均を表4-2に示し、位置1-2間及び位置1-3間のW濃度勾配の算術平均を表4-3に、工具寿命を表4-4に、それぞれ、示す。

注:(1) 焼結温度から徐冷終了温度までの冷却速度。
(2) 徐冷終了温度から60℃までの冷却速度。

注:(1) EDS分析値の小数点以下を四捨五入した値。
(2) 不可避的不純物も含んでいる。
(3) 算術平均であり、最大平均WC粒径ともいう。

注:(1) 算術平均。
表4-1〜表4-3より、実施例9、10の各超硬合金はいずれも、結合相の中心位置1のW含有量よりも、WC粒子と結合相との界面Q,R近傍の結合相中の位置2、3のW含有量が高いことが分かる。さらに表4-3から、結合相の中心から界面Q,R近傍の結合相までのW含有量の濃度勾配は、0.04、0.09(原子%/nm)であった。また焼結温度が低いほど最大平均WC粒径が小さくなっており、耐欠損性に優れる結果、表4-4に示すように工具寿命が改善されたと考えられる。
表5に各実施例及び各比較例の超硬合金の耐チッピング性に影響を与える抗折力をJIS規格(JIS B 4053:2013)に基づいて測定した結果を示す。

注:(1) JIS B 4053:2013により測定。
表5より、実施例1〜10の各超硬合金の抗折力は比較例1〜3の各超硬合金の抗折力に比べて大きく、このことが優れた耐チッピング性を与えていることが分かる。
上記各実施例では、超硬合金の焼結肌の表面から400μmの深さの断面組織のW濃度分布を測定したが、測定する断面はこれに限定されない。その理由は、本発明の超硬合金の焼結肌の表面直下から厚さ方向の中心(例えば実施例1のインサートでは前記表面から2.5mm深さの位置が中心位置である。)までは、この400μmの深さの断面とほぼ同様のミクロ組織を有するからである。
上記実施例ではインサートによりTi合金(被削材)を肩削り加工した場合を記載したが、切削工具や切削対象はこれに限定されない。本発明の切削工具は、ソリッドエンドミル、ドリル及びねじ切り工具等の切削工具の広範囲な分野に適用することができ、特に金型加工及び部品加工(乾式切削及び湿式切削、連続切削及び断続切削等)の分野に有用であり、適用可能な被削材としてはTi合金、Ni基耐熱合金、ステンレス鋼、高硬度鋼、合金鋼、炭素鋼又は軟鋼等が挙げられる。
1:結合相の中心
2、3:WC粒子(硬質相)と結合相との界面近傍における結合相部(結合相の外殻部)内の位置
4、5:WC粒子(硬質相)と結合相との界面近傍におけるWC粒子(硬質相)内の位置
6、7:WC粒子(硬質相)内部の位置
30:ミーリング用インサート
70:刃先交換式回転工具
71:工具本体
72:先端部
73:止めねじ
P,Q,R:WC粒子(硬質相)と結合相との界面
S,T,U:WC粒子(硬質相)

Claims (6)

10.0〜14.0質量%のCoと、該Coに対する質量比で3.0〜10.0%のCrを含有し、硬質相を構成するWC粒子が前記Coを主体とする結合相により結合されてなる超硬合金であって、
前記WC粒子と前記結合相との界面近傍における結合相では、Co、W、Crに着目したとき、一般式:Co100-a-bWaCrb[ただし、Co、W及びCrの含有量(原子%)を表す(100-a-b)、a及びbは、それぞれ85≦100-a-b≦93、6≦a≦10、及び1≦b≦5の条件を満たす数字である。]により表される金属組成を有し、
前記結合相の中心では、Co、W、Crに着目したとき、一般式:Co100-x-yWxCry[ただし、Co、W及びCrの含有量(原子%)を表す(100-x-y)、x及びyは、それぞれ86≦100-x-y≦94、4≦x≦8、及び2≦y≦6の条件を満たす数字である。]により表される金属組成を有し、
前記界面近傍における結合相のW含有量(a)が前記結合相の中心のW含有量(x)よりも高いことを特徴とする超硬合金。
請求項1に記載の超硬合金において、前記界面近傍における結合相のW含有量(a)が前記結合相の中心のW含有量(x)よりも1原子%以上高いことを特徴とする超硬合金。
請求項1又は2に記載の超硬合金において、後方散乱電子回折により得られたWC粒子の粒度分布における累積%が91%となるWC粒径D91から前記累積%が100%となるWC粒径D100までの累積値の平均が0.50〜1.15未満μmであることを特徴とする超硬合金。
請求項1乃至3のいずれかに記載の超硬合金に硬質皮膜を被覆したことを特徴とする切削工具。
10.0〜14.0質量%のCo粉末と、Coに対する質量比で3.0〜10.0%のCrを含有するCr3C2粉末と、フィッシャー法による平均粒径が0.8〜2.0μmのWC粉末とを含む粉末を準備する工程と、
前記各粉末を混合する混合工程と、
得られた混合粉末を造粒する造粒工程と、
得られた造粒粉末を成形する成形工程と、
得られた成形体を焼成する焼成工程とを有する超硬合金の製造方法において、
前記焼成工程において前記成形体を1380〜1420℃で焼結後、1300〜1350℃まで1.0〜3.3℃/分の冷却速度で徐冷する徐冷工程、及び前記徐冷工程後に前記徐冷工程の終了温度1300〜1350℃から60℃まで80〜130℃/分の冷却速度で急冷する急冷工程を有することにより、当該超硬合金におけるWC粒子と前記Coを主体とする結合相との界面近傍における結合相のW含有量を、前記結合相の中心のW含有量よりも、高くしたことを特徴とする超硬合金の製造方法。
請求項5に記載の超硬合金の製造方法において、前記WC粉末の(101)面のX線回折ピークが2つのピークを有することを特徴とする超硬合金の製造方法。
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