JP2011208268A - 超微粒超硬合金 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、例えば、穴あけ加工やフライス加工、PCBドリル等の切削加工に使用される超微粒超硬合金に関する。
【解決手段】
平均粒径が0.3μm以下の炭化タングステン粒子間を、Coを主体とする結合相により結合した超硬合金であって、Coを2.0〜8.0質量%、Vを0.10〜0.90質量%及びCrを0.06〜0.80質量%の範囲で含み、更にV含有量とCo含有量との質量比(V/Co)を0.05〜0.12としCr含有量とCo含有量との質量比(Cr/Co)を0.03〜0.10とし、V含有量とCr含有量との合計とCo含有量との質量比(V+Cr)/Coを0.11〜0.20とし、及びV含有量とCr含有量との質量比(V/Cr)を1.10〜1.90としたものであり、最大粒径が0.3μm以下(0を含まない。)であるV濃化相が分散した組織を有する超微粒超硬合金。
【選択図】図1

Description

本発明は、例えば、穴あけ加工やフライス加工、PCBドリル等の切削加工に使用される超微粒超硬合金に関する。
炭化タングステン(以下、WCと記述する)基超硬合金の中でも、WC平均粒径が0.5μm以下の超微粒硬合金は優れた硬度と強度とを持ち合わせているため、例えば、エンドミルやPCBドリル等の耐摩耗性と耐折損性が必要とされる分野で広く使用されている。
超微粒超硬合金の作製では一般的に、焼結過程でのWC粒成長を抑制することを目的に、WC粒成長抑制元素であるバナジウム(以下、Vと記述する)とクロム(以下、Crと記述する)が複合添加されている。Vは最もWC粒成長抑制効果が強く作用するが、その添加量が多いと、脆弱なV濃化相(V濃度が、マトリックスより相対的に高い、Vを含む複合炭化物相)が粗大に析出する。V濃化相が粗大になると、エンドミルやPCBドリル等の切削工具での使用時に折損やチッピング等を引き起こす。そのため、超微粒超硬合金の作製では、V濃化相を粗大化させない上で微粒化することが必要である。特許文献2、3ではV濃化相の面積率を規定した超微粒超過合金が開示されている。
また、特許文献1には、ダイスやパンチ等の耐摩耗性工具用として、V濃化相の最大粒径を0.3μm以下した、従来の超微粒超硬合金よりも微粒で高硬度な、WC平均粒径が0.1μmである超微粒超硬合金が開示されている。
高硬度な超微粒超硬合金に関する技術情報は特許文献1〜3に開示されている。
特開2008−38242号公報 特開2007−92090号公報 特開2000−38638号公報
近年、被削材の高硬度化、高能率加工による切削条件の高速化、そしてエンドミルやPCBドリル等の工具の小径化が進んでおり、それに使用される超微粒超硬合金には高い硬度と強度と靭性を併せ持つことが必要になってきており、微粒化と均粒化が両立した超微粒超硬合金素材が求められている。
超硬合金の組織を微粒化するには、使用するWC原料粉末を微粒化すればよいが、平均粒径が0.2μm以下の超微粒WC原料粉末を使用した場合には、焼結過程でのWC粒成長が著しく、PCBドリル等での折損の起点となる3μm以上の異常成長WC粒子の発生頻度が高くなる。特に、焼結温度が高くなるとそのサイズ、数とも大きくなる。
超微粒WC原料粉末の焼結過程での粒成長を抑制するためにはWC粒成長抑制剤の多量添加が必要であるが、V濃化相の粗大化が問題となる。また、粒成長抑制剤の多量添加は焼結性を阻害する。そのため、組織を微粒化した上でV濃化相と異常成長WC粒子の組織欠陥を同時に抑制することには課題があった。
本発明者が検討したところ、特許文献1の超微粒超硬合金では、微粒でV濃化相の粗大化は抑制されているが、異常成長WC粒子が多く均粒化には改善すべき余地がある。また、特許文献2,3では、V濃化相の面積率を規定してあるが、微粒化と均粒化の両立には改善すべき余地がある。
本発明の目的は、微粒組織でV濃化相や異常成長WC粒子の組織欠陥が極めて少ない、PCBドリル等の極小径工具や高硬度材の切削に最適なWC基超微粒超硬合金部材を提供することにある。
本発明者は、V濃化相と異常成長WC粒子の組織欠陥が少ない、より微粒な超微粒超硬合金を作製するため、微粒化と組織の均一性を両立させる鋭意研究をした。そして、それを実現する最適な組成比を見出し、本発明に到達した。
すなわち本発明は、平均粒径が0.3μm以下の炭化タングステン粒子間を、Coを主体とする結合相により結合した超硬合金であって、Coを2.0〜8.0質量%、Vを0.10〜0.90質量%及びCrを0.06〜0.80質量%の範囲で含み、更にV含有量とCo含有量との質量比(V/Co)を0.05〜0.12とし、Cr含有量とCo含有量との質量比(Cr/Co)を0.03〜0.10とし、V含有量とCr含有量との合計とCo含有量との質量比(V+Cr)/Coを0.11〜0.20とし、及びV含有量とCr含有量との質量比(V/Cr)を1.10〜1.90としたものであり、最大粒径が0.3μm以下(0を含まない。)であるV濃化相が分散した組織を有する超微粒超硬合金である。
また、好ましくは、硬度がHV30で2150以上である。更に好ましくは光学顕微鏡観察により1,000倍の倍率で100μm×100μmの任意の視野を30箇所観察したとき、3μm以上のWC粒子の総数が20個以下である。
本発明によれば、V濃化相や異常成長WC粒子の組織欠陥が極めて少ない均粒組織を有し、PCBドリル等の極小径工具や高硬度材の切削に最適な高硬度WC基超微粒超硬合金部材を提供することができる。
比較合金のV分布を示すEDXによるVマッピング分析写真である。 本発明合金のV分布を示す一例であるEDXによるVマッピング分析写真である。 従来合金の粗大WC粒子の分布を示す光学顕微鏡観察写真である。 本発明合金の粗大WC粒子の分布を示す一例である光学顕微鏡観察写真である。 本発明合金の組織を示す一例であるFE−SEMによる反射電子画像写真である。
本発明の特徴の一つは、各WC粒子上に析出するV濃化相は数ナノメートル程度であり、WC表面積の総和を増大させることにより、V濃化相が粗大に析出し難くなることを見出したことにある。そして、V濃化相が析出し難く、かつ、焼結性を低下させずに、異常成長WC粒子の発生を抑制できる、粒成長抑制剤の最適な組成比を見出したことにある。つまり、本発明では、粒成長抑制効果の強いVをCrに比べて多く添加し、かつVとCrのそれぞれの添加量及びその合計の添加量とCo量との関係を最適化したことにある。
本発明の超微粒超硬合金における各組成範囲の限定理由は次の通りである。
本発明において、「Coが主体」とは、結合相におけるCo含有量が50質量%以上の場合をいう。実用上、結合相がCo及び不可避的不純物から実質的になることが好ましい。本発明合金の粒成長抑制剤添加量とCo含有量の関係から、Co含有量が多いと相対的にWCの表面積の総和が減少し、Co相の厚みが大きくなるため、V濃化相が粗大化し易くなる。また、Co含有量が少ないと焼結性が悪く微粒化が容易ではない。従って、Co含有量は2.0〜8.0質量%とすることが必要である。
V含有量は0.10〜0.90質量%とすることが必要である。これよりも少ない場合は、十分なWC粒成長抑制効果が得られず微粒化出来ない。これよりも多い場合はV濃化相が粗大に析出し易くなる。また、焼結性が阻害される。
更にV含有量とCo含有量との質量比(V/Co)は0.05〜0.12とすることが必要である。0.05よりも少ない場合は、たとえV添加量が多くても、十分なWC粒成長抑制効果が得られず微粒化出来ない。0.12よりも多い場合はV濃化相が粗大化し易くなる。
Cr含有量は0.06〜0.80質量%とすることが必要である。これよりも少ない場合は、十分なWC粒成長抑制効果が得られず微粒化出来ない。これよりも多い場合、本発明においては相対的にV含有量も増加するのでV濃化相が粗大化する。
Cr含有量とCo含有量との質量比(Cr/Co)は0.03〜0.10とすることが必要である。0.03よりも少ない場合は、十分なWC粒成長抑制効果が得られず微粒化出来ない。0.10より多い場合は相対的にV量も増加するためV濃化相が粗大化する。
V含有量とCr含有量との合計とCo含有量との質量比(V+Cr)/Coは0.11〜0.20とすることが必要である。これよりも少ない場合、十分なWC粒成長抑制効果を得られず微粒化出来ない。これよりも多い場合は、本発明においてはCrよりV添加量が多くなるので、V濃化相が粗大化する。また、焼結性が阻害される。
V含有量とCr含有量との質量比(V/Cr)は、1.10〜1.90とすることが必要である。これよりも少ない場合はWC粒成長抑制効果が十分に得られない。また、異常成長WC粒子の発生も多くなる。VはCrに比べて室温と高温でのCo中への固溶量が少なく、V/Crが1.90より大きくなると、焼結過程でCo中に固溶できないVが発生し、V濃化相が粗大化する。
本発明では、V濃化相の最大粒径は0.3μm以下(0を含まない。)とする。これよりも粗大化すると小径工具に使用した場合にチッピングが発生し易くなり工具寿命が短くなる。
WC平均粒径は0.3μm以下とする。これ以上粗大になると硬度が低下し、十分な耐摩耗性が得られない。また、WC表面積の総和が低下し、V濃化相が粗大化する。
本発明合金の好まし硬度はHV30で2150以上である。これより低硬度であると高硬度な被削材の高速加工中の工具摩耗が著しくなる。
また、更に好ましくは光学顕微鏡観察により1,000倍の倍率で100μm×100μmの任意の視野を30箇所観察したとき、3μm以上のWC粒子の総数が20個以下である。1,000倍で観察することが3μm以上のWC粒子の分散状態を観察するには好ましい。これよりも低倍だと3μm以上のWC粒子の観察が困難であり、高倍であると3μm以上のWC粒子の分散状態を確認するのが困難である。また、100μm×100μmの任意の視野を30箇所観察することで、平均的な合金組織を評価できる。そして、上記の条件で観察したときに、平均粒径よりも10倍以上である3μm以上のWC粒子が20個よりも多い場合は、PCBドリル等の小径工具の高速加工ではチッピングや折損等の発生頻度が高くなる。
上述の合金を製造するためには、配合粉の混合工程では、焼結性を阻害する酸素量を低減した上で、WC原料粉末中に含有する強固なWC凝集体を粉砕し、CoとWC粒成長抑制剤を均一分散させる必要がある。
まず、混合前処理として、酸素量を増加させずにWC粒成長抑制剤の均一分散を行うため、各組成に調整した配合粉のみを粉砕メディアを使用しない、密閉式の乾式混合を行う。その後、湿式ボールミルで粉砕効率の良い微粒な真球の超硬製ボールを使用し、配合粉を微細均一分散させる。また、焼結性を阻害する酸素を低減させるために、ボールミル容器は溶媒量を増やしてスラリーで満たすことが必要である。使用するWC原料粉末はBET換算値粒径で0.2μm以下であることが好ましい。
乾燥後はプレス成形を行い1400℃以下の温度で緻密化しかつ焼結後の冷却では1200℃までの温度範囲を、冷却ガスを使用して冷却速度30℃/min以上で冷却する。焼結温度が1400℃より高いと、WC粒成長が促進されWC粒子が粗大化する。ここで、WC表面積が小さくなり、V添加量が多くなるとV濃化相が析出する。
また、S−HIPやHIP処理を実施しても良い。
以下、本発明を実施例により説明するが、下記の実施例により本発明が限定されるものではない。
本発明及び比較例合金はBET換算値の平均粒径が0.1〜0.3μm相当のWC原料粉末を使用した。その他の原料粉末は平均粒径0.5〜1.0μm相当のCo粉末、1.0μm相当のVC粉末、1.5μm相当のCr粉末を用いた。合金炭素量の調整には微粒カーボン粉末を使用した。そして、成形バインダーを添加して所定の組成に配合した。従来合金は特許文献1の組成を参考に作製した。各組成において、配合粉の乾式混合を行い、その後、ボールミル湿式混合を実施した。ボールミル混合では平均粒径が1mmの超硬製の真球ボールを使用し、ボールミル容器は溶媒であるサイクロヘキサンで充満した。ボール質量は粉末質量に比べて6倍にし、70〜130rpmの回転数で50〜120時間混合を行った。比較合金及び従来合金では乾式混合はせずに、5mmボールを使用し、スラリーで容器内を満たさずに混合を行った。
混合後は、減圧乾燥後でスラリーを乾粉にし、造粒を行い、50〜200MPaの圧力を印加してプレス成形した。この成形体を真空中で、1320℃〜1450℃で30min〜60min保持した。焼結温度は各試料が緻密化しCo分散が均一になる温度を選択した。焼結終了後の冷却では1200℃までの温度範囲をArや窒素の冷却ガスを用いて冷却速度30℃/min以上で冷却した。焼結後の試料は鏡面加工して硬度測定及び組織観察を実施した。
本発明合金と比較合金、従来合金の組成一覧を表1に示す。表1中、Co,V及びCrはそれぞれ質量%を表す。また、表1中、V/Co、Cr/Co、(V+Cr)/Co及びV/Crはそれぞれ質量比を表す。
硬度測定は30kg加重のビッカース硬度測定を実施した。粗大WC粒子の観察は光学顕微鏡を用いて1,000倍の倍率で100μm×100μmの任意の視野を30箇所観察してその総数をカウントした。WC粒子の平均粒径はFE−SEMを使用して50,000倍の倍率で数視野の組織観察して画像解析ソフトを使用し求めた。V濃化相の観察は5,000倍以上の倍率でEDX分析にて数視野のマッピング分析を実施し、V濃化部分の最大粒径を測定した。
図1に比較合金No.10のV元素のEDXマッピング分析結果を示す。マトリックスよりV濃度が高い箇所が多数観察され、そのなかでも相対的にV濃度が高い部分と低い部分が確認される。表2にV濃度が高い部分と低い部分の分析結果例を示す。
図2に本発明合金No.6のV元素のEDXマッピング分析結果を示す。比較合金No.9で観察される粗大なV濃化部分は確認されなかった。
図3に比較合金No.17の光学顕微鏡組織観察写真を示す。粗大WC粒子が数多く観察される。No.18の合金も同様な組織であった。図4に本発明合金No.6の光学顕微鏡組織観察を示す。粗大な異常成長WC粒子はほとんど観察されない。図5に本発明合金のNo.6のFE−SEMによる反射電子画像を示す。0.1μm以下のWC粒子も存在した。数視野の組織観察写真から画像解析ソフトを用いて求めた平均粒径は0.2μmであった。
表3に硬度測定と組織観察結果のまとめを示す。
本発明合金は、V濃化相の最大粒径が0.3μm以下で、WC平均粒径は0.3μm以下である。中でもNo.2〜No.8は、硬度がHV30で2150以上あり、粗大WC粒子の総数も少ない。
一方、比較合金のNo.9では、Co量が多く、WCの表面積の総和が減少してCo相の厚みが大きくなるためV濃化相が粗大化した。
比較合金No.10ではV/Crが大きいため焼結中に全てのVがCo中に固溶しきれず、V濃化相が粗大化した。
また、比較合金No.11〜No.16では緻密化しCo分散が均一になるまでの焼結温度が本発明合金よりも高くなり、また、WC粒成長抑制効果が本発明に比べて弱く、WC平均粒径が大きくなり低硬度となった。
No.17、18では、Coに対する粒成長抑制剤の添加総量が多く、本発明に比べて焼結温度が高くなり、V濃化相が粗大になり、粗大WC粒子が多くなった。
本発明の超微粒超硬合金は、金属材料等の切削に使用される切削工具に適する。更に、PCBドリル等の極小径工具や高硬度材の切削工具に適する。

Claims (3)

  1. 平均粒径が0.3μm以下の炭化タングステン粒子間を、Coを主体とする結合相により結合した超硬合金であって、
    Coを2.0〜8.0質量%、Vを0.10〜0.90質量%及びCrを0.06〜0.80質量%の範囲で含み、
    更にV含有量とCo含有量との質量比(V/Co)を0.05〜0.12とし、Cr含有量とCo含有量との質量比(Cr/Co)を0.03〜0.10とし、V含有量とCr含有量との合計とCo含有量との質量比(V+Cr)/Coを0.11〜0.20とし、及びV含有量とCr含有量との質量比(V/Cr)を1.10〜1.90としたものであり、
    最大粒径が0.3μm以下(0を含まない。)であるV濃化相が分散した組織を有することを特徴とする超微粒超硬合金。
  2. 請求項1に記載の超微粒超硬合金において、硬度がHV30で2150以上であることを特徴とする超微粒超硬合金。
  3. 請求項1または2に記載の超微粒超硬合金において、光学顕微鏡観察により1,000倍の倍率で100μm×100μmの任意の視野を30箇所観察したとき、3μm以上のWC粒子の総数が20個以下であることを特徴とする超微粒超硬合金。
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