JP3028711B2 - 潜在捲縮性ポリエステル複合繊維よりなる不織布 - Google Patents

潜在捲縮性ポリエステル複合繊維よりなる不織布

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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、潜在捲縮性ポリエステ
ル複合繊維を含有する不織布に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ポリエステル繊維は、力学的性質、熱安
定性、ウオッシャブル性等に優れているために、現在で
は衣料用、産業資材用インテリア用など極めて広い用途
に使用されている。
【0003】その中で衣料用途、特に、スポーツ衣料等
の織編物や不織布などには機能性、フィット性の要求か
ら伸縮性および弾性回復性に富んだ繊維が求められてい
る。従来より、伸縮性を付与する方法として、潜在捲縮
能を有するポリエステル複合繊維によるものが知られて
いる。例えば、特開平3−161519号公報にはイソ
フタル酸による共重合率が7モル%以上15モル%以下
の共重合ポリエステルを使用した複合繊維が開示されて
いる。
【0004】しかし、このようなイソフタル酸1成分だ
けを共重合したポリエステルでは、延伸後の弾性回復が
まだ不足しており潜在捲縮能が不充分である。
【0005】また、特開平4−24114号公報には、
2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル] プロパ
ンを2〜10モル%及び5−ナトリウムスルホイソフタ
ル酸(以下、5−SIPA)を1〜3モル%を共重合し
た高スパイラル捲縮発現能を有するポリエステル複合繊
維が示されている。しかし、このような複合成分ポリマ
ーとして金属スルホネート基を有する構成単位を共重合
したポリエステルを用いたものは、ポリマーの重合触媒
として一般的に用いられる重金属が繊維表面に析出する
という問題があった。さらに前記複合繊維は、薬剤を塗
布した衛生材の場合、薬剤と金属スルホネート基とが反
応して薬効を損なうという問題もあった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の欠点
を解決し、潜在捲縮能を有するポリエステル複合繊維を
用いて、伸縮性、伸長回復性の優れた不織布を提供する
ことを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の不織布は、上記
問題点を解決するために次の構成を有する。すなわち、
2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパ
ン(以下、BHPP)2〜7モル%とイソフタル酸(以
下、IPA)5〜13モル%とを共重合したエチレンテ
レフタレート単位主体の共重合ポリエステル(A)と、実
質的にエチレンテレフタレート単位よりなるポリエステ
ル(B)とからなり、180℃における無荷重下熱処理時
の発現捲縮数が50コ/25mm以上の潜在捲縮性ポリエ
ステル複合繊維を70重量%以上含有し、伸長率70%
以上、伸長回復率65%以上であることを特徴とする不
織布である。
【0008】
【0009】本発明の繊維は、ポリエステル(A)と
(B)とがサイドバイサイドに接合した複合繊維であっ
て、弛緩熱処理によってスパイラル捲縮を発現する潜在
捲縮繊維である。そして、ポリエステル(A)はエチレ
ンテレフタレート単位を主たる構成単位とする共重合ポ
リエステルであり、共重合成分としてBHPPまたはそ
のエステル形成誘導体(以下、エステル形成誘導体も含
めてBHPPということがある)とIPAを用いて改質
されたポリエチレンテレフタレート系共重合ポリエステ
ルである。ここで、BHPPは、次の構造式で示される
ものである。
【0010】
【化1】 本発明において、ポリエステル(A)中のBHPPの共
重合割合は2〜7モル%とするものである。BHPPの
共重合割合が2モル%未満では、収縮特性が不十分とな
り、不織布にした場合、その伸長率、伸長回復率が小さ
く十分な伸縮機能が得られない。一方、7モル%を越え
ると、ポリマーの融点低下、繊維の強力低下が著しいた
め、不織布用途には適さなくなる。
【0011】ポリエステル(A)中のIPAの共重合割
合は5〜13モル%とするものである。IPAの共重合
割合が5モル%未満では、実質的に大きな捲縮が得られ
ず、一方、13モル%を越えると、ポリマーの融点が低
下するため、熱安定性が損われる。
【0012】本発明の複合繊維において、ポリエステル
成分(A)及び(B)の固有粘度は溶融紡糸を円滑に行
なう観点からは、夫々0.55〜0.70及び0.45
〜0.60程度であればよい。また、捲縮発現を十分な
ものとし、しかも紡糸安定性を損わないようにする観点
からは2種のポリマーの固有粘度の差が0.25以下
するのが好ましい。
【0013】また、ポリエステル成分(A)及び(B)
には、本発明の目的効果を損なわない範囲内で、他の共
重合成分を含んでいてもよい。さらに、本発明の複合繊
維においては(A)及び/または(B)成分に難燃剤、
抗菌剤、芳香剤、顔料、セラミックス等種々の特性付与
剤や添加物を任意に配合することができる。その他の紡
糸条件は従来のポリエステル複合繊維の紡糸条件を採用
することができる。
【0014】さらに、伸縮性伸長回復性を有する織物、
編物あるいは不織布を得るために、180℃における無
荷重下熱処理時の発現捲縮数が50コ/25mm以上とす
るものである。捲縮数50コ/25mm未満では伸縮性が
著しく低下し、伸長回復率の低いものとなる。捲縮数の
上限は特にないが、不織布にした時の風合いを特に良好
にしようとする観点からは、90コ/25mm以下にする
ことが好ましい。
【0015】また、本発明の複合繊維には、梳綿工程通
過時、ネップや未開繊トラブルが発生しない程度に、通
常の押し込み式捲縮機などにより機械捲縮8〜20コ/
25mmを付与した原綿とするのが好ましい。
【0016】本発明の不織布は、前記した本発明の複合
繊維を70重量%以上含有するものである。複合繊維が
70重量%に満たないと本発明で目的とする伸縮率に優
れた不織布は得られない。
【0017】また、本発明の繊維以外に30重量%未満
の範囲で、通常のポリエステル繊維、熱接着性バインダ
ー繊維や、木綿、ウール、麻等の天然繊維等を適宜混綿
することもできる。
【0018】本発明の不織布は前記した本発明の複合繊
維よりなる原綿を単独でまたは必要に応じて通常のポリ
エステル繊維や熱接着バインダー繊維と混綿して、カー
ドにかけウェブを作製し、得られたウェブを必要に応じ
て、ニードルパンチを施した後、フリーな状態で熱処理
して潜在捲縮を顕在化させることにより繊維同志の絡み
を生ぜしめ、伸縮回復性に極めて優れた不織布を得るこ
とができる。
【0019】本発明の不織布の伸長率は70%以上とす
るものである。伸長率が70%に満たない場合には、伸
縮性を要する用途には適用できない。
【0020】また、本発明の不織布の伸長回復率は65
%以上とするものである。伸長回復率が65%に満たな
い場合には、外力により変形しやすくなる。
【0021】
【実施例】以下、実施例によって本発明を詳しく説明す
る。
【0022】なお、実施例における特性値等の測定法は
次のとおりである。
【0023】<原綿の評価> (1)極限粘度 o−クロロフェノール溶液中、25℃で常法に従い測
定。
【0024】(2)繊度 JIS−L1015−7−5−1Aの方法により測定。
【0025】(3)捲縮数 JIS−L1015−7−12−1の方法により測定。
【0026】(4)自由収縮率 JIS−L1015−7−15方法に準じ、デニール当
たり300mgの荷重をかけて測定。
【0027】<不織布の評価> (1)目付け JIS−L1085の方法により20cm×20cmの試料重量
を測定し、cm2 あたりの重量として求めた。
【0028】(2)伸縮率 不織布試験片(5cm幅×約60cm長さ)につき、引張り
試験機を用い、試験片の一端を上部クランプで固定し、
他端に初加重30gをかける。
【0029】次いで、20cmまたは50cm間隔に印を付
け、静かに240gの荷重をかける。1分間放置後の印
間の長さを測り、次の式で伸長率(%)を求め、3回以
上の平均値で表わす(小数点以下1桁まで)。
【0030】 伸長率(%)={(L1 −L0 )/L0 }×100 ただし、L0 :もとの印間の長さ(20cmまたは50c
m) L1 :240gの荷重をかけ1分間放置後の印間の長さ
(cm) (3)伸長回復率 上記伸長率測定用と同様な試験片につき、自記記録装置
付定速伸長形引張試験機を用い、初荷重30gのもと
で、つかみ間の距離を20cmまたは50cmとなるように
試験片を取り付け、1分間当たりつかみ間隔の100%
の引張速度で求めた。荷重240g時の伸びの80%ま
で試験片を伸ばして次の式で定荷重240gにおける伸
長回復率(%)を求め、それぞれ3回以上の平均値で表
す。
【0031】 伸長率(%)={(L10−L11)/L10}×100 ただし、L10:1分間当たりつかみ間隔の100%引張
り速度で求めた荷重240g時の伸びの80%の伸び
(cm) L11:5回繰り返し荷重した後の残留の伸び(cm) (4)風合い ◎:柔軟性・伸縮性の両方が良好 ○:一方が良好で、他方が若干劣る ×:両方、あるいは一方が著しく劣る (実施例1)ポリエステル成分(A)としてエチレンテ
レフタレートを主成分とし、IPA7.1モル%と、B
HPP4.4モル%とを共重合したポリエステルと、ポ
リエステル成分(B)として、実質的にエチレンテレフ
タレートのみからなるポリエステルを用いて、複合溶融
紡糸装置によって丸断面口金孔から290℃で複合比率
50:50とし、275g/分の吐出量、1200m/分の
速度で巻き取り、サイドバイサイド型未延伸糸を得た。
これらの未延伸糸を収束後、延伸倍率3.0倍、延伸温
度90℃で延伸し、緊張熱処理温度140℃で熱処理を
行い、押し込み式捲縮機で機械捲縮を付与した後、切断
して捲縮数14コ/25mmの短繊維を得た。
【0032】別途、熱接着繊維として、イソフタル酸4
0重量%共重合させた、繊度4デニール、カット長51
mmの共重合ポリエチレンテレフテレート繊維を作製し
た。
【0033】次に、上記短繊維と熱接着繊維を95:5
の重量割合でオープナーにて開繊混綿し、ローラー型梳
綿機に2回通して目付け120g/cm2 のウェブを160
℃のオーブン中で5分間自由収縮熱処理を行ない、続い
て表面温度160℃の熱ロールで1分間熱接着処理を行
ない不織布を作製した。
【0034】用いた短繊維(原綿)物性、得られた不織
布の評価結果を表1に併せて示す。
【表1】 (実施例2) ポリエステルの重縮合反応時間を変えることによって、
異なる溶融粘を有するポリエステル成分(A)と、ポ
リエステル成分(B)を製造し、複合比率50:50の
サイドバイサイド型複合繊維を紡糸し、共重合成分を表
1に示すごとくすること以外は、実施例1と同じ条件で
延伸し、機械捲縮を付与した後切断して捲縮数14コ/
25mmの短繊維を得た。この短繊維特性およびこれを用い
て実施例1と同様にして作製した不織布の評価結果を表
1に併せて示す。
【0035】(比較例1〜3)ポリエステル成分(A)
としてテレフタル酸を主たるカルボン酸成分とし、IP
Aを9.1モル%共重合したポリマー(比較例1)、5
−ナトリウムイソフタル酸を5.1モル%共重合したポ
リマー(比較例2)、IPA3.4モル%と5−ナトリ
ウムイソフタル酸2.4モル%を共重合したポリマー
(比較例3)の3種のポリマーを用い、他の条件は実施
例1と同じ条件で、紡糸、延伸し、機械捲縮を付与した
後切断して捲縮数11〜14コ/25mmの3種の短繊維を
得た。
【0036】次に、前記各比較例で得られた短繊維と実
施例1で用いたと同じ熱接着繊維を95:5の重量割合
で混綿し、実施例1と同様にして不織布を作製した。
【0037】用いた短繊維(原綿)物性、得られた不織
布の評価結果を表1に併せて示す。
【0038】
【発明の効果】本発明によれば、潜在捲縮能を有するポ
リエステル複合繊維を用いて、伸縮性、伸長回復性の優
れた不織布を提供できる。
【0039】本発明の優れた特性を有する繊維はスポー
ツ用、医療用不織布、特に皮膚貼付剤用の基布の性能ア
ップに寄与するところが非常に大きい。またこの特性を
利用して織編物にすると伸縮性に非常に富むばかりでな
く、ソフトタッチのものが得られ、風合いを改良する事
も可能である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平4−327225(JP,A) 特開 平5−295634(JP,A) 特開 昭63−219628(JP,A) 特開 平2−139415(JP,A) 特開 平4−241114(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) D04H 1/42 D01F 8/14

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フ
    ェニル]プロパン2〜7モル%とイソフタル酸5〜13
    モル%とを共重合したエチレンテレフタレート単位主体
    の共重合ポリエステル(A)と、実質的にエチレンテレフ
    タレート単位よりなるポリエステル(B)とからなり、1
    80℃における無荷重下熱処理時の発現捲縮数が50コ
    /25mm以上の潜在捲縮性ポリエステル複合繊維を70
    重量%以上含有し、伸長率70%以上、伸長回復率65
    %以上であることを特徴とする不織布。
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