JP4905954B2 - 繊維シート並びにその製造方法及びそれを用いた吸収性物品 - Google Patents

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Description

本発明は、繊維シート並びにその製造方法及びそれを用いた吸収性物品に関する。
従来より、生理用ナプキン等の吸収性物品において、着用者の体へのフィット性を向上させるために、吸収層を中高構造にしたものが知られている(例えば、下記特許文献1,2参照)。中高構造を形成する吸収層としては、着用者の体の形状にフィットするようにふんわりと柔らかなクッション性と、着用者から排泄された排泄物を速やかに吸収する吸収性とを兼ね備えていることが望まれている。
特開2005−152250号公報 実用新案登録第2526555号公報
しかし、特許文献1記載の吸収性物品においては、発泡体からなるシート状物を吸収層に配設することにより中高構造を形成している。また、特許文献2記載の吸収性物品においては、吸収シートが疎水性のクッション材で被覆されてなる肉厚層を、吸収層に形成することにより中高構造を形成している。そのため、特許文献1,2に記載の吸収性物品においては、クッション性は優れているが、吸収性が優れていない。
従って、本発明の目的は、クッション性及び吸収性を兼ね備え、吸収性物品の中高構造を形成するのに適した繊維シートを提供することにあり、また、該繊維シートを効率的に製造できる繊維シートの製造方法及び該繊維シートを備えた吸収性物品を提供することにある。
本発明は、非熱収縮性繊維と、潜在捲縮性繊維の捲縮が発現して形成されたコイル状繊維との混合層を少なくとも含み、該非熱収縮性繊維同士の繊維間結合が、主として、該非熱収縮性繊維への該コイル状繊維の絡み付きによって形成されており、主として前記非熱収縮性繊維に前記コイル状繊維が寄り集まってなる密部分と、該非熱収縮性繊維に囲まれ且つ該コイル状繊維及び該非熱収縮性繊維が実質的に存在していない粗部分とを備えた繊維シートを提供することにより前記目的を達成したものである。
また、本発明は、前記非熱収縮性繊維と前記潜在捲縮性繊維とを混合積繊し、得られた混合積繊物を、該潜在捲縮性繊維の捲縮開始温度以上、両繊維の融点以下の温度で熱処理して、前記繊維シートを製造する繊維シートの製造方法を提供することにより前記目的を達成したものである。
また、本発明は、表面シート、裏面シート及び該両シート間に介在された吸収層を備えており、前記繊維シートを少なくとも前記吸収層の一部に用いた吸収性物品を提供するものである。
本発明の繊維シートによれば、クッション性及び吸収性を兼ね備え、吸収性物品の中高構造を形成するのに適している。また、本発明の繊維シートの製造方法によれば、該繊維シートを効率的に製造することができる。また、本発明の吸収性物品によれば、クッション性及び吸収性を兼ね備えている。
以下、本発明の繊維シート及びそれを用いた吸収性物品について、その好ましい一実施形態に基づき、図面を参照しながら説明する。
まず、本発明の吸収性物品の一実施形態について説明する。本実施形態の吸収性物品は、図1に示すように、全体視で縦長の生理用ナプキン1である。本実施形態の生理用ナプキン1は、図1及び図2に示すように、液透過性の表面シート2、液不透過性又は液難透過性の裏面シート3及び両シート2,3間に介在配置された液保持性の吸収層4を備えた縦長の吸収性本体11を有している。吸収性本体11の両側部には、幅方向外方に延出する一対のウイング部12,12が設けられている。
吸収層4は、上部吸収層41と下部吸収層42とが積層されて形成されている。上部吸収層41は、本発明の繊維シートの一実施形態から形成されている。
尚、「長手方向」及び「幅方向」というときは、それぞれ「吸収性物品の長手方向」及び「吸収性物品の幅方向」を意味する。「上面」及び「下面」というときは、それぞれ「肌当接面(側の面)」及び「非肌当接面(側の面)」を意味する。
表面シート2は、図2に示すように、吸収層4の上面の全域を被覆し、更に吸収層4の両側縁部から幅方向に延出して、長手方向に延びるシール部53によって、裏面シート3に接合されている。表面シート2の両側縁部は、長手方向に沿う直線状であり、裏面シート3の両側縁部よりも幅方向内方に後退している。
裏面シート3は、図2に示すように、吸収層4の下面の全域を被覆し、更に吸収層4の両側縁部から幅方向外方に延出して、長手方向に延びるシール部53によって、表面シート2に接合されている。裏面シート3の両側縁部は、表面シート2の両側縁部よりも幅方向外方に延出している。裏面シート3は、吸収性本体11の排泄ポイントの位置において一対のウイング12,12の下層を形成している。
表面シート2及び裏面シート3の前後縁部は、図1に示すように、略円弧状で、それぞれ吸収層4の前後縁部(図示せず)それぞれから長手方向に延出し、その延出部分においてシール部54によって互いに接合されている。
サイドシート13は、図1及び図2に示すように、吸収性本体11の肌当接面側の両側部それぞれを被覆するシートで、吸収性本体11の肌当接面側における両側部それぞれに、吸収性本体11の長手方向に沿ってその略全長に亘るように設けられている。サイドシート13の内側縁近傍は、長手方向に延びるシール部53によって、表面シート2及び裏面シート3に接合されている。サイドシート13は、表面シート2の両側縁部から延出し、更に裏面シート3の両側縁部の位置まで延出しており、ウイング部12の上層を形成している。従って、ウイング部12は、サイドシート13と裏面シート3との積層体を主体として形成されている。
吸収性本体11、ウイング部12及びサイドシート13を主体とする生理用ナプキン1の周縁部は、シール部54によって接合されている。
吸収層4は、図2に示すように、上部吸収層41及び下部吸収層42からなる2層構造を有している。上部吸収層41は、下部吸収層42より長さが短く、幅も狭くなっており、また、下部吸収層42には接合されておらず、吸収性本体11における幅方向中央部に位置している。上部吸収層41は、吸収性本体11におけるいわゆる中高領域を形成する。
表面シート2の上面側には、表面シート2と下部吸収層42とが一体的に圧密化されて形成された第1中央シール部51及び第2中央シール部52が設けられている。
第1中央シール部51は、表面シート2の上面(サイドシート13により被覆された面を除く)の外周近傍に、後方に開いた略U字状に設けられている。第2中央シール部52は、第1中央シール部51の一部及び後端側のシール部54も利用して、上部吸収層41を略包囲するように形成されたものである。
第1中央シール部51は、吸収性物品の長手方向略中央部に括れを有する幅方向に一対の曲線を描いており、前記中高領域の両側部の形状を形成している。第2中央シール部52(及び後端側のシール部54)は、該中高領域の前後部の形状を形成している。
上部吸収層41は、後述するように柔軟で変形性に富み、第1中央シール部51及び第2中央シール部52によって包囲される領域よりも大きな矩形の大きさのものを、下部吸収層42に設置した後、シールがなされる。これにより、第1中央シール部51及び第2中央シール部52によって包囲される、任意の曲線形状を有する立体的で曲線的な中高領域を形成することができる。このような中高領域は、鼠径部や臀部に対して特に優れたフィット性を発現する点で、特に好ましい。
表面シート2、裏面シート3及び下部吸収層42としては、生理用ナプキン等の吸収性物品において従来から用いられている各種材料を特に制限なく用いることができる。
表面シート2としては、例えば、親水化処理が施された各種不織布や開孔フィルム等の液透過性のシートを用いることができる。裏面シート3としては、例えば、熱可塑性樹脂のフィルムや、該フィルムと不織布とのラミネート等の液不透過性又は撥水性のシートを用いることができ、水蒸気透過性を有するものを用いることもできる。下部吸収層42としては、パルプ繊維を堆積させて得られた積繊層、パルプ繊維を原料とする不織布からなるものを用いることができ、吸収性ポリマーを併用することができる。
尚、前述した任意の曲線的な中高領域を形成する場合には、表面シート2として、曲線形状の第1中央シール部51及び第2中央シール部52による微妙かつ多方向性を有する伸長力に対応が可能となる(しわの発生のなさ、だぶつきのなさ等)点から、伸長性又は伸縮性を有するシートを用いることが好ましい。特に多方向に伸縮性を有する場合には、前述した微妙かつ多方向性を有する伸長力によっても、表面シート2と上部吸収層41及び下部吸収層42との密着性が、使用者の動作の有無によらず達成できるため、肌触り、柔軟性、更には吸収性が良好となり、より好ましい。
伸長性を有する表面シート2としては、繊維結合のないスパンレース不織布、開孔を有するポリエチレンフィルムやエアスルー不織布が好ましく用いられ、伸縮性を有する表面シートとしては、ウレタンフィルムなどのエラスティックフィルムに所定のパターンで開孔した開孔フィルムの他、縦横両方向に伸縮可能なシートが好ましく使用できる。該縦横両方向に伸縮可能なシートは、エアスルー不織布上に潜在捲縮性繊維を積層し、ピンエンボスなどの離散的なパターンでエンボス一体化し、ピンテンターを用いて任意の収縮率で熱風収縮させて得られ、エアスルー不織布側を肌当接面側として使用される。
吸収性本体11の非肌当接面側には、吸収性本体11とショーツのクロッチ部の上面(内面)とを止着するためのズレ止め剤(図示せず)が設けられている。
ウイング部12の非肌当接面側にも、ズレ止め剤(図示せず)が設けられており、ウイング部12は、ナプキンの使用時にショーツのクロッチ部の下面(外面)側に折り返されて該ズレ止め剤によりクロッチ部に止着できるようになっている。
次に、上部吸収層41を形成する本発明の繊維シートの一実施形態について説明する。本実施形態の繊維シートは、図3に示すように、非熱収縮性繊維61と、潜在捲縮性繊維が捲縮して形成されたコイル状繊維62との混合層からなる。本発明の繊維シートは、このような混合層からなることで、少なくとも非熱収縮性繊維61同士の交点でコイル状繊維62が絡み、繊維ネットワークを形成して不織布状に形成されている。このため、ウエブ状態に近い形態で不織布となっていることから、嵩高さが付与される。また、このような繊維ネットワークでは、交点において結合部分がないため、圧縮のような外力が加わっても、交点における変形が自由であり、変形後はコイル状繊維62の働きによって、容易に元の状態に戻る。そのため、本発明の繊維シートは、厚み方向のクッション性や弾性が良好になる。
一方、交点で結合を有する従来の不織布では、接着結合による変形の自由度の阻害により圧縮等の外力によって変形の程度が低く、変形可能域よりも大きな変形量の力が加わると、結合点の剥離や結合点以外の繊維部分での折れなどが生じ、外力解放後の不織布の変形が回復しなかったり、折りジワ等の発生につながる。コイル状繊維62を含んで構成されていることによって、嵩高さが付与される。また、コイル状繊維62には圧縮されると、それに抗して元の状態に戻ろうとする性質があるので、本発明の不織布は、厚み方向のクッション性や弾性が良好になる。
非熱収縮性繊維61同士の繊維間結合は、非熱収縮性繊維61にコイル状繊維62が絡み付くことのみによって形成されていることが好ましいが、それ以外の要素によって繊維間結合が形成されていてもよい。例えば、コイル状繊維62がコイル状に捲縮する前に、ピンエンボスなどの離散的なパターンで熱的に(又は超音波によって)エンボス加工して、部分的に結合を補っても良い(補助的な結合)。この場合、この補助的に結合された部分では、繊維同士は融着して、前述した硬い結合点を形成する。このような結合点を補助的に加える利点は、繊維構造が安定して引っ張り方向の力が加わったときに繊維シートが断裂しにくくなること、吸収性物品の製造時に繊維シートの搬送特性が向上すること(引っ張って搬送しても形状が崩れにくい)等にある。この結合点が多すぎると、硬く、弾性回復性に劣るようになる他、繊維シートの厚み(嵩)も出にくくなるため、エンボス面積率(シート面積に対するエンボス加工部分の総面積の比率)は、20%以内であることが必要で、10%以内であることが好ましく、7%以内であることが更に好ましい。
本発明の繊維シートの嵩高性を損なうことなく繊維間結合を高める他の方法としては、コイル状繊維62が繊維ネットワークを形成した後で、結合剤の溶液を少量添加し、レジンボンドで補強する方法がある。当該用途に適用可能な結合剤としては、ポリビニルアルコール(PVA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリ酢酸ビニル、デンプン、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、これらの誘導体、その他当業者に公知のレジンボンド用結合剤を適宜用いることが可能であるが、結合剤の樹脂自体に好ましい弾性があることから、ポリ酢酸ビニルが特に有効である。
ただし、これらの結合剤は、繊維が緻密で、毛管力の高い部分に浸透しやすい性質があるため、本発明の繊維シートでは、結合点を形成する、図3に示す密部分Aに結合剤が集まりやすく、弾性結合を硬くする欠点がある点に注意を要する。従って、結合剤の添加量は、補助的な結合のため最小量に留めることが必要で、添加前の繊維の重量に対し、1.0wt%以内にすることが好ましく、0.5wt%以内にすることが更に好ましい。
また、本発明の繊維シートは、主として非熱収縮性繊維61にコイル状繊維62が寄り集まってなる密部分Aと、非熱収縮性繊維61に囲まれ且つコイル状繊維62及び非熱収縮性繊維61が実質的に存在していない粗部分Bとを備えている。このような密部分A及び粗部分Bは、以下の原理によって形成されると考えられる。コイル状繊維62の素材である捲縮前の潜在捲縮性繊維は、非熱収縮性繊維61の集合体の中にランダムに存在している。潜在捲縮性繊維にその捲縮開始温度以上の温度で熱処理がなされると、潜在捲縮性繊維は、非熱収縮性繊維61を巻き込みながら捲縮を始め、非熱収縮性繊維61同士の交点を形成する。これが図3に示す密部分Aに相当する。後述するように、コイル状になると繊維が非常にコンパクトにまとまるため、繊維が絡み合って一旦交点が形成されると、該交点の周辺に、主として非熱収縮性繊維61にコイル状繊維62が寄り集まってなる密部分Aが形成されることになる。
一方、密部分Aの周辺では、コイル状繊維62が抜けると同時に非熱収縮性繊維61も絡め取られてなくなって、非熱収縮性繊維61に囲まれた領域において、コイル状繊維62及び非熱収縮性繊維61が実質的に存在しなくなり、空隙(粗部分B)が形成されることになる。粗部分Bは、図4に示すように、コイル状繊維62が集中した密部分Aの間で非熱収縮性繊維61が大きく歪んで形成されることもある。例えば、潜在捲縮性繊維の配合量が充分に多く、かつ非熱収縮性繊維61があまり太くなくて柔軟性が高い場合、次のようなことが起こる。
まず、前述の如く密部分Aが各所に形成される。コイル状繊維62はコンパクトに収縮するため、非熱収縮性繊維61:1本に、何箇所かの交点が形成されることも頻繁に起こる。コイル状繊維62が充分多い場合には、このときに交点間を連結するようにコイル状繊維62同士が絡み合う場所が多々発生する。この状態で更に熱収縮が進行すると、コイル状繊維62の縮みに伴って、交点同士が接近するような変形が起こり、このときに非熱収縮性繊維61が(相対的に)柔軟であれば、繊維が折り畳まれるように大きく変形し(歪み)、周辺の繊維を排除する。このような歪んだ繊維は、歪みエネルギーを内部に蓄えているため、外力に対する弾性回復性が特に大きくなる。つまり、何れの場合も、粗部分Bとは、コイル状繊維62及び非熱収縮性繊維61が実質的に存在していない部分のことである。ここでいう「実質的に存在しない」とは、全く存在していない場合のみならず、密部分Aと比べ、コイル状繊維62及び非熱収縮性繊維61の量が圧倒的に少ない(無視できる程少ない)場合も含む意味である。
上記の繊維集合状態が、前述した物理特性の発現の要となっている。
1)特別の嵩高性は、元の繊維ウェブに比べ、熱処理によるコイル形成時に繊維が緻密に集まった密部分Aが形成される一方で、繊維が抜け去った粗部分Bと、繊維が撓んだ粗部分B(往々にして両者は同義となる)が形成されることに起因して発現する。装着・吸液等で繊維シートが変形しようとするとき(いわゆるヨレ、へたり)、非熱収縮性繊維61は、その太さのゆえに変形や収縮に抵抗すると共に、撓んで変形や収縮のエネルギーを蓄え、外力が緩和したときに速やかに元の形状に復元する機能を発現し、繊維シート全体の収縮を阻止するように機能するため、元の厚みや体積が減少せず、その分、空隙に富んだ構造となる。
2)繊維シートの特別な弾性回復性は、先に詳述した通り、弾性回復性に富んだ柔らかな結合点(バネの交点である密部分A)に起因する他、図4に示すように、非熱収縮性繊維が大きく撓んでバネとなる効果も相乗している。
3)本発明の繊維シートが嵩高でありながら高い吸水性(クレム吸水度)を示すのは、全体としては空隙が多く嵩高な構造ながら、密部分Aでは、コイル状繊維62が緻密に連なった密な構造を有し、密部分Aが図3示すように連結していることによって、液を受け渡す通路が形成されていることに起因する。このように、1枚の繊維シートの中に少なくともコイル状繊維を殆ど含まない粗部分Bと、短いバネが緻密に連なって形成される密部分Aを備え、あたかも海綿のような複雑な2重構造を有することで、柔らかで弾性回復性を有する液吸収性の繊維シートが得られる。
コイル状繊維62を含むことに起因する前述の各種効果を有効に発現させるためには、コイル状繊維62は、本発明の繊維シート中に15〜83重量%含まれていることが好ましく、25〜75重量%含まれることが更に好ましい。また、同様の理由から、コイル状繊維62の繊度は、好ましくは1.8〜12dtex、更に好ましくは2.0〜8.0dtex、最も好ましくは2.8〜6.9dtexである。コイル状繊維62の断面形状に特に制限はなく、例えば円形、楕円形、亜鈴形が挙げられる。
一方、非熱収縮性繊維61は、本発明の繊維シート中に85〜17重量%含まれていることが好ましく、25〜75重量%含まれることが更に好ましい。
非熱収縮性繊維61の繊度は、好ましくは1.8〜20dtex、更に好ましくは4〜12dtexである。
非熱収縮性繊維61の繊度は、コイル状繊維62の繊度よりも大きいことが好ましく、コイル状繊維62の繊度の1.5倍以上であることが更に好ましい。このように非熱収縮性繊維61の繊度がコイル状繊維62の繊度よりも大きいと、コイル状繊維62が熱収縮して交点を形成するときに、コイル状繊維62の変形に負けて繊維シート全体が縮小することを防ぐことができる他、繊維がしっかりして元の形態への復元性を高め、形成された繊維シートが(柔らかいだけで)すぐに変形して元に戻らないことを防止できる。また、非熱収縮性繊維61がコイル状繊維62の1.5倍以上と充分に太いと、特に、シートの変形は、交点を形成したコイル状繊維62の弾性変形に主に起因して起こることになり(非熱収縮性繊維61の部分は圧倒的に太く、変形しにくいため)、必ず弾性回復できるような変形となるため、柔らかくクッション性に富んだ触感を得やすい。
コイル状繊維62が含まれていることに起因して本発明の繊維シートの嵩は、前述の通り高くなっているが、この嵩高さに起因して、本発明の繊維シートはその密度が小さくなっている。具体的には、繊維シートの密度は0.001〜0.05g/cm3であることが好ましく、0.007〜0.02g/cm3であることが更に好ましい。
いわゆる快適なクッション感は、主として次の1)〜3)の3つの因子で規定できる。1)元の厚み感、嵩があること、2)圧縮したときに、基本的には容易に変形して潰れること、3)圧縮力がなくなったときに、速やかに厚みが回復して元の厚みに復元すること。
このため、本発明の繊維シートは、1)初期厚みとして0.5g/cm2荷重下における厚みが4mm以上であることが好ましく、6mm以上であることが更に好ましい。この厚みの測定は、KES−G5(カトーテック株式会社製)により行う。
また、本発明の繊維シートは、2)その厚みを50%に圧縮したときの応力が40g/cm2以下であることが好ましく、20g/cm2以下であることが更に好ましい。
また、本発明の繊維シートは、3)50g/cm2の荷重を加えてから1分経過後に、荷重を0.5g/cm2まで戻した後の厚み回復性が、元の厚み(0.5g/cm2荷重時の厚み)の80%以上であることが好ましく、87%以上であることが更に好ましい。
また、本発明の繊維シートは、クッション性に富みながら体液を残さずに吸収できる点から、生理食塩水を使用した場合において、1分後のクレム吸水度が5mm以上であることが好ましく、10mm以上であることが更に好ましく、15mm以上であることが最も好ましい。クレム吸水度は、JIS P8141を基にして測定される。
クッション性発現の一つの重要な要因として、繊維シートが嵩高であることが挙げられるが、内部構造が比較的均一な従来の不織布では、仮にこのような嵩高な不織布を形成したとしても、上記クレム吸水度が計測不能なほど低くなる。従って、本発明においては、嵩高性及び高いクレム吸水度を同時に満足していることが一つの重要な要件である。
次に、本発明の繊維シートの構成材料について説明する。
非熱収縮性繊維61は、熱収縮性を全く示さないか又はほとんど示さない繊維、及び潜在捲縮性繊維の捲縮開始温度以下では実質的に熱収縮しない熱収縮性繊維を包含する。
非熱収縮性繊維61としては、レーヨン、コットン、アクリル系繊維や熱可塑性ポリマー材料からなる繊維が好適に用いられる。熱可塑性ポリマー材料としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリアミドなどが挙げられる。またこれらの熱可塑性ポリマー材料の組み合わせからなる芯鞘型複合繊維やサイド・バイ・サイド型複合繊維を用いることができる。
中でも、高いクッション性と素早い吸液性とを両立させるには、非熱収縮性繊維61として、本質的に親水性で、太い繊維を選択することが最も効果的であり、レーヨン、ポリビニルアルコール、アクリル系から選択された(複数種の混合も可)、繊度が3.3〜12dtex、好ましくは4.6〜11dtexの繊維が特に好適に使用される。
非熱収縮性繊維61の繊維長は、繊維シートの製造方法に応じて適切な長さが選択される。例えば、不織布が、最も一般的で安価に製造可能な方法であるカード方式によって製造される場合、非熱収縮性繊維61の繊維長は、好ましくは35〜100mm、更に好ましくは45〜80mmである。
コイル状繊維62は、潜在捲縮性繊維が捲縮して形成される。潜在捲縮性繊維とは、加熱される前においては捲縮を発現していないが、所定の捲縮開始温度以上の加熱によって螺旋状の捲縮が発現して収縮する性質を有する繊維である。
潜在捲縮性繊維は、例えば、収縮率の異なる2種類の熱可塑性ポリマー材料を成分とする偏心芯鞘型複合繊維又はサイド・バイ・サイド型複合繊維からなり、具体的には、特開平9−296325号公報や特許第2759331号公報に記載のものが挙げられる。収縮率の異なる2種類の熱可塑性ポリマー材料の例としては、例えば、エチレン−プロピレンランダム共重合体(EP)とポリプロピレン(PP)との組み合わせが好適に挙げられる。
潜在捲縮性繊維の繊維長は、繊維シートの製造方法に応じて適切な長さが選択される。例えば不織布が同様にカード方式によって製造される場合、潜在捲縮性繊維の繊維長は、好ましくは40〜100mm、更に好ましくは45〜75mmである。そして捲縮後のコイル状繊維62では、捲縮前の繊維長の5〜20%の見掛け繊維長となることが好ましく、7〜17%の見掛け繊維長となることが更に好ましい。
本発明の繊維シートには、非熱収縮性繊維61及びコイル状繊維62との混合層以外の層があってもよく、また、両繊維61,62以外の繊維や、吸収性ポリマー等が混合されていてもよい。非熱収縮性繊維61及びコイル状繊維62以外の繊維としては、例えば、綿状パルプや通常のエアスルー不織布が挙げられる。
次に、本発明の繊維シートの製造方法の好ましい一実施形態について説明する。本実施態様の繊維シートの製造方法は、非熱収縮性繊維61と潜在捲縮性繊維とを混合積繊し、得られた混合積繊物を、該潜在捲縮性繊維の捲縮開始温度以上、両繊維の融点以下の温度で熱処理して、非熱収縮性繊維61とコイル状繊維62との混合層を含む前記繊維シートを製造する方法である。
詳述すると、非熱収縮性繊維61、及びコイル状繊維62の素材となる潜在捲縮性繊維を原料として用いる。必要に応じて他の原料を含めてもよい。これらの原料をカード方式によって混合積繊させて混合積繊物であるウエブを得る。次いで、得られたウエブに熱処理を行い、潜在捲縮性繊維に螺旋状の捲縮を発現させて、コイル状繊維62を形成する。この熱処理においては、得られたウエブを、潜在捲縮性繊維の捲縮開始温度以上、両繊維の融点以下の温度で熱処理する。この温度は、潜在捲縮性繊維の捲縮開始温度よりも2℃以上高く、少なくとも両繊維の融点と同等であることが好ましく、両繊維の融点よりも2℃以上低いことが更に好ましい。
潜在捲縮性繊維は少なくとも2種の樹脂を含み(サイド・バイ・サイド型複合繊維)、非熱融着性繊維61も、場合によって2種の樹脂を含む(サイド・バイ・サイド型やコアシェル型の複合繊維)が、ここで言う「両繊維の融点」とは、これらの樹脂のうちの最も低い融点の数字を指す。ただし、この融点以上の温度でも、それぞれの繊維の構造は(高融点側の樹脂が溶けないために)維持されるので、熱処理温度を更に高めることも可能である。もっとも、熱処理温度を上げるほど熱結合による風合いの悪化(感触が固くなる)を招くため、熱処理温度は、最も低い融点以下にとどめる方が良い。
熱処理における熱の付与には、熱風の吹き付けや赤外線の照射等が用いられる。非熱収縮性繊維61のネットワーク構造が形成されやすい観点から、熱風の吹き付けを用いることが好ましい。
前記ウエブ内では前記原料が混合された状態になっており、この状態下に潜在捲縮性繊維の捲縮が生じる。潜在捲縮性繊維は、非熱収縮性繊維61の交点で絡み付き、該交点に向けて収縮しながら捲縮する。その結果、非熱収縮性繊維61のネットワーク構造が形成されると共に、主としてコイル状繊維62が寄り集まってなる密部分Aと、非熱収縮性繊維61に囲まれ且つコイル状繊維62及び非熱収縮性繊維61が実質的に存在していない粗部分Bが形成され、本発明の繊維シートが得られる。
このようにして得られた本発明の繊維シートは、生理用ナプキン、パンティライナー(おりものシート)、失禁パッド、使い捨ておむつ等の各種吸収性物品における吸収層の一部又は全部、表面シート等の各種構成部材に用いることができる。また、外科用衣類、清掃シート等の吸収性物品以外の各種用途に用いることができる。
本発明の繊維シートを例えば吸収層に用いる場合には、厚み(嵩)が不足する場合がある。その場合には、例えば、繊維シートを積層したり、折り重ねたり、丸めたりして、全体の厚みを高くして用いることができる。
また、より高い吸収性及び液の引き込み性を達成するため、組成の異なる繊維シートを積層することも良好である。具体的には、(1)表面シート2側には、コイル状繊維62の配合量が少ない繊維シートを用い、下部吸収層42側には、コイル状繊維62の配合量が多い繊維シートを用いる、(2)同様に、厚み方向の上から下に非熱収縮性繊維61の繊度を順次細くする、等の工夫が好適に用いられる。
本実施形態の繊維シートによれば、前述の通り、クッション性及び吸収性を兼ね備えている。そのため、本実施形態の生理用ナプキン1のように、中高構造を形成する上部吸収層41に用いると、クッション性及び吸収性を兼ね備えた中高構造を構成することができる。尚、本発明の繊維シートは、前述したように他の用途に用いることができる。
また、本実施形態の繊維シートの製造方法によれば、該繊維シートを効率的に製造することができる。
本発明は、前述した実施形態又は実施態様に制限されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更が可能である。
例えば、吸収性物品において吸収層及び表面シートの両方を、本発明の繊維シートから形成することができる。
また、吸収性物品において、クッション性の高い上部吸収層41を、表面シート2と下部吸収層42とからなる閉鎖空間に略封入しても良い。即ち、第1中央シール部51及び第2中央シール部52によって、表面シート2と下部吸収層42とを接合しているが、表面シート2と上部吸収層41とは接合していないようにシールすることも可能である。尚、「略」封入されているとは、上記のごとく、上部吸収層41は、その大部分が閉鎖空間内にシールで固定されずに封入されているが、部分的にシールで固定されることを許容する意味である。例えば、上部吸収層41が第2中央シール部52の後部に重なることによって、臀部に向かって曲線的にすぼまった、フィット性に富む中高領域を形成することも可能となる。
また、上部吸収層41は、閉鎖空間に封入された状態にあること及び/又は第1中央シール部51、第2中央シール部52にシールされることによって、吸収性物品の所定の位置に固定保持されていることが好ましいが、当業者に公知のホットメルト接着剤や、補助的なシール手段(ピンエンボスシール他)によって、表面シート2側又は下部吸収層42側の一方又は両方と、補助的に結合されていても良い。
図1は、本発明の繊維シートを備えた、本発明の吸収性物品の一実施形態である生理用ナプキンを示す平面図である。 図2は、図1に示すII−II線断面図である。 図3は、本発明の繊維シートの一繊維構造の模式図である。 図4は、本発明の繊維シートの別の繊維構造の模式図である。
符号の説明
1 生理用ナプキン(吸収性物品)
11 吸収性本体
12 ウイング部
13 サイドシート
2 表面シート
3 裏面シート
4 吸収層
41 上部吸収層
42 下部吸収層
51 第1中央シール部
52 第2中央シール部
53,54 シール部
61 非熱収縮性繊維
62 コイル状繊維
A 密部分
B 粗部分

Claims (3)

  1. 熱可塑性ポリマー材料からなる非熱収縮性繊維と、潜在捲縮性繊維の捲縮が発現して形成されたコイル状繊維との混合層を少なくとも含み、該非熱収縮性繊維同士の繊維間結合が、該非熱収縮性繊維への該コイル状繊維の絡み付きによってのみ形成されており、
    前記非熱収縮性繊維のネットワーク構造が形成されていると共に、主として前記非熱収縮性繊維に前記コイル状繊維が寄り集まってなる密部分と、該非熱収縮性繊維に囲まれ且つ該コイル状繊維及び該非熱収縮性繊維が実質的に存在していない粗部分とを備え、
    前記非熱収縮性繊維の繊度は、前記コイル状繊維の繊度よりも大きく、
    前記非熱収縮性繊維の繊度は、前記コイル状繊維の繊度の1.5倍以上である繊維シート。
  2. 前記非熱収縮性繊維と前記潜在捲縮性繊維とを混合積繊し、得られた混合積繊物を、該潜在捲縮性繊維の捲縮開始温度以上、両繊維の融点以下の温度で熱処理して、該非熱収縮性繊維及び該潜在捲縮性繊維それぞれの繊維の構造を維持しながら該潜在捲縮性繊維の捲縮を生じさせて、請求項1記載の繊維シートを製造する繊維シートの製造方法。
  3. 表面シート、裏面シート及び該両シート間に介在された吸収層を備えており、請求項1記載の繊維シートを少なくとも前記吸収層の一部に用いた吸収性物品。
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