JP3016883B2 - 発酵法による5’−キサンチル酸の製造法 - Google Patents

発酵法による5’−キサンチル酸の製造法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、発酵法による5’−キ
サンチル酸の製造法に関する。5’−キサンチル酸は、
呈味物質として有用である。
【0002】
【従来の技術】従来、5’−キサンチル酸を発酵生産す
る方法としては、コリネバクテリウム属に属する微生物
をデコイニンを含む培地で培養する方法(特公昭40−
115784)、アデニン要求性もしくは、グアニン要
求性を有するコリネバクテリウム属に属する変異株を用
いる方法(特公昭43−20932)などが知られてい
る。
【0003】また、コリネバクテリウム属に属し細胞壁
合成阻害抗生物質に耐性を有する微生物を用いる方法が
知られている(特公昭60−107916)。なお、本
明細書中では、ブレビバクテリウム・アンモニアゲネス
と命名されている菌株をコリネバクテリウム・アンモニ
アゲネスに変更して記載する。本菌株属名の変更はイン
ターナショナル・ジャーナル・オブ・システマティック
・バクテリオロジー(International Journal of Syste
matic Bacteriology,442−443,10月, 1987年)に基づく
ものとする。
【0004】
【問題を解決するための手段】本発明によれば、コリネ
バクテリウム属に属し、脂肪族アミノ酸アナログに耐性
を有し、かつ5’−キサンチル酸生産能を有する微生物
を培地に培養し、培養物中に5’−キサンチル酸を生成
蓄積させ、該培養物より5’−キサンチル酸を採取する
ことを特徴とする発酵法による5’−キサンチル酸の製
造法を提供することができる。
【0005】以下に本発明を詳細に説明する。用いられ
る微生物としては、コリネバクテリウム属に属し、脂肪
族アミノ酸アナログに耐性を有し、かつ5’−キサンチ
ル酸生産能を有するものであればいずれでもよい。脂肪
族アミノ酸アナログに耐性を有する微生物とは、親株が
生育阻害を示す濃度の脂肪族アミノ酸アナログを含む培
地でも生育することのできる変異株のことをいう。
【0006】本発明において脂肪族アミノ酸アナログと
は最少培地寒天平板中に該アナログを添加し、コリネバ
クテリウム属に属する5’−キサンチル酸生産菌を培養
したとき、該生産菌の生育を阻害するが、この阻害が脂
肪族アミノ酸たとえばバリン、イソロイシン、ロイシン
などが存在することにより解除されるような化合物をい
う。脂肪属アミノ酸アナログとしては例えば、バリンハ
イドロキサメート、N−メチル−DL−バリン、DL−
4−チアイソロイシン、イソロイシンハイドロキサメー
ト、ロイシンメチルエステル、ロイシンハイドロキサメ
ートなどがあげられる。培地に添加される脂肪族アミノ
酸アナログの量は、1−5g /l が適当である。
【0007】上記したような変異株は、コリネバクテリ
ウム属に属する5’−キサンチル酸生産菌に脂肪族アミ
ノ酸アナログ耐性を付与したり、コリネバクテリウム属
に属し脂肪族アミノ酸アナログ耐性を有している菌株に
5’−キサンチル酸生産能を付与したりすることにより
得ることができる。本発明の変異株は、コリネバクテリ
ウム・アンモニアゲネス(Corynebacterium ammoniage
nes) ATCC21075を親株として、これにN−メチル−N’
−ニトロ−N−ニトロソグアニジン処理、紫外線照射、
X線照射など通常の変異処理を施すことにより得られ
る。
【0008】以下に本発明で用いられる変異株の具体的
取得方法を示す。親株として ATCC21075株を用い、該菌
株 108個/mlをN−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロ
ソグアニジン 130mg/lで30℃、30分処理した後、親株
が生育阻害を示す濃度(3g/l )のバリンハイドロキ
サメートを含む最少培地寒天平板(グルコース20g /
l,塩化アンモニウム3g /l,KH2PO4 0.1g/l,K2
PO4 0.3 g/l,MgCl2 ・2H2 O 0.3g/l,
尿素2g/l,FeSO4 ・7H2 O 10mg /l,Mn
SO4 ・4−6H2 O4mg/l,ZnSO4 ・7H 2
1mg/l,CuSO4 ・5H2 O 0.2mg/l, CaCl
2 ・2H2 O 10mg /l,L−システイン40mg/l,サ
イアミン塩酸塩10mg/l,パントテン酸カルシウム20mg
/l,ビオチン 60 μg/l,アデニン 20mg /l,グ
アニン20mg/l,寒天 20 g/l,pH7.2)上に塗布す
る。30℃で7〜10日間培養後、生育してくるコロニ
ーのうち、親株より5’−キサンチル酸の生産能が優れ
ている菌株を選んだ。そのうちとくに優れている一株を
コリネバクテリウム・アンモニアゲネスH−8077
(以下、H−8077株という。)と命名した。
【0009】また、バリンハイドロキサメートの代わり
にイソロイシンハイドロキサメートを用いる以外は上記
と同様の方法をおこなって、得られた菌株のうち、とく
に5’−キサンチル酸生産性の優れた一株をコリネバク
テリウム・アンモニアゲネスH−8078(以下、H−
8078株という。)と命名した。また、バリンハイド
ロキサメートの代わりにロイシンハイドロキサメートを
用いる以外は上記と同様の方法をおこなって、得られた
菌株のうち、とくに生産性の優れた一株をコリネバクテ
リウム・アンモニアゲネスH−8079(以下、H−8
079株という。)と命名した。
【0010】H−8077株、H−8078株およびH
−8079株は、ブダペスト条約に基づいて、平成3年
2月16日付で工業技術院微生物工業技術研究所にそれ
ぞれ微工研条寄第3282号(FERM BP−3282)、第
3283号(FERM BP−3283)および第3284号(FE
RM BP−3284)として寄託されている。ATCC2
1075株、H−8077株、H−8078株およびH
−8079株を、それぞれ第1表記載の濃度で脂肪族ア
ミノ酸アナログを含む最少培地寒天平板上で30℃5日
間培養したときの生育度を第1表に示す。
【0011】
【表1】
【0012】本発明で用いられる微生物の培養に際して
は、一般に核酸の発酵生産に用いられる培地が使用され
る。微生物が資化しうる炭素源、窒素源、無機塩類、生
育因子などを含有する培地であれば、合成培地、天然培
地などいかなる培地でも使用できる。炭素源としては、
グルコース、フラクトース、シュクロースあるいは、糖
蜜、澱粉などの加水分解物のほか、酢酸、フマール酸、
クエン酸などの各種有機酸、エタノール、グリセロール
などのアルコール類などが使用できる。
【0013】窒素源としては、アンモニア、塩化アンモ
ニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、燐酸ア
ンモニウムなどの各種無機酸のアンモニウム塩、フマー
ル酸アンモニウムなどの有機酸のアンモニウム塩、エチ
ルアミンなどのアミン類、尿素などの含窒素化合物、な
らびにペプトン、肉エキス、酵母エキス、コーン・ステ
ィープ・リカー、カゼイン加水分解物、大豆粕またはそ
の加水分解物、アミノ酸発酵、核酸発酵などの各種発酵
菌体およびその消化物などが用いられる。
【0014】無機物としては、燐酸第一カリウム、燐酸
第二カリウム、燐酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫
酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、炭酸カルシウムなど
が用いられる。そのほか、必要に応じてビオチン、サイ
アミン、ニコチン酸、β−アラニンなどのビタミン類や
グルタミン酸などのアミノ酸類を添加することもでき
る。
【0015】培養は、振とう、深部攪拌などの好気的条
件下、温度20−40℃好ましくは25−38℃で、p
H5−9、好ましくは中性付近に保持しておこなわれ、
通常2−7日間で完了する。培地のpHは炭酸カルシウ
ム、無機または有機の酸、アルカリ溶液、アンモニア、
pH緩衝液などによって調整される。培養終了後、培養
液から菌体などの沈澱物を除去し、イオン交換処理、吸
着法、抽出法、沈澱法などを併用することにより、培養
液から5’−キサンチル酸を採取することができる。
【0016】以下に本発明の実施例を示す。
【0017】
【実施例】
【0018】実施例1 ATCC21075株、H−8077株、H−8078
株およびH−8079株を種菌として用いた。第2表に
示す組成からなる培地10mlを大型試験管に分注し、1
20℃で20分間加熱滅菌した。
【0019】
【表2】
【0020】この培地に、上記種菌をブイヨンスラント
上で30℃、24時間培養して得られた菌体を1白金耳
接種し、30℃で4日間培養した。培養中pHが 6.0−
7.0 になったとき、尿素3g/lを添加した。培養中蓄
積された5’−キサンチル酸を第3表に示す。
【0021】
【表3】
【0022】実施例2 種菌として第3表に示す菌株を用いる。第2表の液体培
地(但しグルコース18g/l)750mlを2リットル
容ジャーファメンターに張り込み、120℃、10分間
加熱滅菌した。これに実施例1と同様の方法で調製した
種菌体(それぞれスラント6本の菌体)を接種し、30
℃で72時間、通気1リットル/min 、攪拌800rpm
で培養した。尚、培養期間中の培養液のpHはアンモニ
ア水を用いて 6.5−7.5 に維持した。その結果、ATC
C21075株、H−8077株、H−8078株およ
びH−8079株の培養液中の5’−キサンチル酸生成
量はそれぞれ30g/l、38g/l,40g/lおよ
び36g/lであった。
【0023】このH−8078株の培養終了液より菌体
を除去して得られた濾液500mlを1NHClでpH
0.8として強酸性カチオン交換樹脂ダイヤイオンSK#
1(H型)に通した後、水でレジンを洗浄した。この流
出液および水洗による最初の流出液を合わせて、飽和水
酸化バリウム液でpH7.2に調節した後、30℃で減圧
濃縮した。濃縮液100mlにエタノール200mlを滴下
して0℃一昼夜放置し、、5’−キサンチル酸バリウム
塩の結晶を得た。これを濾別採取後常法によりキサンチ
ル酸ナトリウム塩にかえ5’−キサンチル酸・2ナトリ
ウム塩の7水塩の結晶15gが得られた。
【0024】
【発明の効果】本発明によれば、5’−キサンチル酸を
工業的に安価に効率よく製造することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C12R 1:15) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C12P 19/00 - 19/64 C12N 1/00 - 1/38 BIOSIS(DIALOG) WPI(DIALOG)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 コリネバクテリウム属に属し、脂肪族ア
    ミノ酸アナログに耐性を有し、かつ5’−キサンチル酸
    生産能を有する微生物を培地に培養し、培養液中に5’
    −キサンチル酸を生成蓄積させ、該培養物より5’−キ
    サンチル酸を採取することを特徴とする発酵法による
    5’−キサンチル酸の製造法。
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