JP3014088B2 - 鋼橋プレキャストコンクリート床版用支承部材及び、支承構造 - Google Patents

鋼橋プレキャストコンクリート床版用支承部材及び、支承構造

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、鋼橋プレキャスト
コンクリート床版の支承部材と支承構造に係り、特にゴ
ム系ライナー材からなる支承部材とこれを用いた支承構
造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】鋼橋プレキャスト床版は、現場工事の省
力化、工期の短縮、床版品質の安定化等を図ることを期
待して施工実績が増加しつつある。今後、プレキャスト
床版の施工数の拡大の条件としては、コストダウンへの
取り組みや設計・施工の技術基準の整備が必要となって
きている。
【0003】特に、技術的な課題としては、鋼桁とプレ
キャスト床版との接合部の問題や、プレキャスト床版同
士の目地処理の問題等が挙げられるが、本発明は、前記
鋼桁とプレキャスト床版との接合部の技術的改良を発明
対象としている。
【0004】つまり、従来のプレキャストコンクリート
床版と鋼桁の接合部は、設計的には、完全合成,弾性合
成,非合成と区分されるが、実際の施工においては、鋼
桁に取付けられたハンチプレートや調整治具等によって
高さ調整を行い、空隙にモルタルを注入することによっ
て、スタッドジベルを固定する構造が一般的である。
【0005】すなわち、図12に示すように、鋼桁1の
上面にスタッドジベル2が植設されていて、鋼桁1によ
り支持されるプレキャストコンクリート床版3の前記ス
タッドジベル配置位置に開口部4を設けて、この開口部
4と、開口部下端周縁の鋼桁1とプレキャストコンクリ
ート床版3下面との間隙5に無収縮モルタル6を充填
し、開口部4内において無収縮モルタル6とスタッドジ
ベル2とを一体化することで、プレキャストコンクリー
ト床版3と鋼桁1を固定接合している。
【0006】前記の構造は、鋼桁1とプレキャストコン
クリート床版3の動的挙動の差異が無収縮モルタル部6
に集中し、繰り返し荷重によりモルタル部の破損が発生
する等、床版の耐久性に悪影響を及ぼす可能性が大であ
る。
【0007】本発明は、前記従来技術の問題点に鑑みて
提案されたもので、ゴム系の支承部材を用いてプレキャ
ストコンクリート床版を支持することにより、鋼桁とプ
レキャストコンクリート床版の挙動を分離し、プレキャ
ストコンクリート床版の耐久性向上を図るとともに、制
振効果や防音効果なども期待できる支承部材と支承構造
を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】前記の目的を達成するた
め、本発明に係る鋼橋プレキャスト床版用支承部材は、
鋼桁と、鋼桁上に設置されるプレキャストコンクリート
床版との間に配設される支承部材であって、、この支承
部材は、前記鋼桁に当接される不陸調整用軟質ゴムと、
この軟質ゴムと一体に接合され、かつ前記プレキャスト
コンクリート床版との当接面に上方に凸の曲面が形成さ
れている桁撓み調整用硬質ゴムとから構成されているこ
とを特徴とする。また、本発明は、前記支承部材は長尺
であって、前記軟質ゴムと前記硬質ゴムとの接合面が長
手方向に延長する凹凸部を介して接合されていることを
特徴とする。 また、本発明は、長尺に構成した前記支
承部材を、鋼桁上面の幅方向と長手方向に所定の間隔で
2列植設したスタッドボルトの間に載置し、この支承部
材上に設置するプレキャストコンクリート床版に開設の
開口部に前記スタッドボルトを挿入し、そのスタッドボ
ルトに取付けた床版浮上り防止板で前記プレキャストコ
ンクリート床版を押さえ、かつ、この開口部に経時硬化
性軟質充填材を充填したことを特徴とする。また、本発
明は、長尺に構成すると共に、所定の間隔で貫通孔を設
けた支承部材を鋼桁の上面に載置し、かつ前記貫通孔に
鋼桁上面に植設のボルト,ナット部材を挿入位置させ、
前記支承部材上に設置するプレキャストコンクリート床
版に開設の開口部に前記ボルト,ナット部材を挿入し、
このボルト部材に取付けた床版浮上り防止板で前記プレ
キャストコンクリート床版を押さえ、かつこの開口部に
経時硬化性軟質充填材を充填したことを特徴とする。
【0009】本発明によると、支承部材の不陸調整用軟
質ゴムが、鋼桁上面の不陸とよく馴染んで、安定してこ
の鋼桁上面に載置でき、しかもプレキャストコンクリー
ト床版の荷重は桁撓み調整用硬質ゴムでしっかりと支持
することができ、かつ、硬質ゴムに上方が凸の曲面が存
在することで、隣り合う鋼桁の高さのずれに対してゴム
弾性変形による面接触幅の変化で円滑に対応でき、結
果、この支承部材を介して鋼桁上面にプレキャストコン
クリート床版を安定に支持でき、しかも、このプレキャ
ストコンクリート床版の振動等は鋼桁に伝達されること
なく前記支承部材によって円滑に吸収される。
【0010】
【発明の実施の形態】以下本発明を図を参照して説明す
る。図1〜図7は本発明の第1実施形態を示し、図1に
は鋼橋8において、鋼桁10の上面11に長尺の支承部
材7を載置し、この支承部材7でプレキャストコンクリ
ート床版13が支持された状態が示されている。
【0011】さらに説明すると、H形鋼を用いてなる鋼
桁10は橋軸方向(イ)に伸長するよう配設され、かつ
この鋼桁10が橋軸直角(ロ)方向に所定の間隔をおい
て複数本平行に設置されている。鋼桁10の上面11は
所定の幅寸法(L)を有し、この上面11に本発明に係
る長尺の支承部材7が載置されている。支承部材7は下
側の不陸調整用軟質ゴム7aと上側の桁撓み調整用硬質
ゴム7bを一体的に接合して構成される。
【0012】軟質ゴム7aの材料は、道路橋支承便覧
(NR,SBR)及び日本工業規格(JIS K638
6 A08)の規定に準じたものを使用し、硬質ゴム7
bの材料は同じく日本工業規格(JIS K6386
D05)の規定に準じたものを使用する。そして、この
軟質ゴム7aと硬質ゴム材7bを後述の接合手段により
一体化して支承部材7を構成したうえ、使用性確認実験
(静的圧縮試験,持続載荷試験,疲労試験)を経たもの
を使用する。
【0013】次に、不陸調整用軟質ゴム7aと、桁撓み
調整用硬質ゴム7bとの接合部構造を説明すると、両ゴ
ム材の接合面において、図5〜図7に示すように軟質ゴ
ム7aは上下表面がフラットな長尺の帯板材を使用す
る。また、硬質ゴム7bは、その上面に上方に凸で所定
の曲率の曲面12を有し、下面には長手方向に伸長する
複数本の溝14を有する長尺のゴム材料を使用する。軟
質ゴム7bの幅は、硬質ゴム7bの幅より若干狭くして
おく。
【0014】支承部材7の成形手段は任意でよいが、そ
の一例として、不陸調整用軟質ゴム7aと桁撓み調整用
硬質ゴム7bを成形機で加熱押出し成形し、その際軟質
ゴム7aの一部が硬質ゴム7bの溝14に充填されるこ
とで、軟質ゴム7aと硬質ゴム7bとが一体に接合され
た支承部材7が構成される。
【0015】前記溝14の配設本数は図1,図5,図7
等に示されるように3本溝に限らず、図8に示すように
5本溝にしてもよく、溝の本数や間隔,幅,溝深さなど
は自由に変更して構わない。また、溝14の形状は図示
の角波形状に限らず、通常の波形状や底面拡径溝などで
もよいし、さらに、硬質ゴム7bの接合面に任意形状の
凹部(図示省略)を点在させ、加熱押出し成形により軟
質ゴム7aの一部が前記凹部に充填されることで両ゴム
部材が接合一体化される構成としてもよい。
【0016】さらに、軟質ゴム7aと硬質ゴム7bの接
合手段として、前記加熱押出し成形以外にも、加熱プレ
ス、あるいは接着材を用いることも可能である。また、
両ゴム部材を凹凸面接合ではなく、フラット面で加熱プ
レス又は接着材で接合一体化することも可能である。
【0017】前記構成の支承部材7は、図1に示される
よう鋼桁10の上面11に載置されたとき、この鋼桁上
面11に植設された左右のスタッドボルト15の間に位
置し、それにより、鋼桁上面11で支承部材7が左右に
ずれ動かないように設けられている。
【0018】スタッドボルト15は図1に示されるよう
に鋼桁上面11において、支承部材7の両側を軽く挾め
る程度の幅寸法に設けられ、かつ長手方向に所定の間隔
をあけて複数本植設される。このスタッドボルト15の
配置位置に対応して、鋼桁10上に設置の複数のプレキ
ャストコンクリート床版13に前記スタッドボルト挿入
用の開口部16が開設されている。
【0019】プレキャストコンクリート床版13は図示
のように橋軸方向に複数枚連接されて鋼桁10に支持さ
れ、このとき前記鋼桁10とプレキャストコンクリート
床版13の間に支承部材7が介在される。さらに、この
とき、鋼桁上面11に植設されるスタッドボルト15は
図1,図3に示されるようにプレキャストコンクリート
床版13の開口部16に位置するよう設けられる。
【0020】鋼桁10上面に支承部材7を介してプレキ
ャストコンクリート床版13を設置した後、図3の状態
で開口部16内に所定の量の経時硬化性軟質充填材17
を充填する。この軟質充填材17としては、例えば硬化
性軟質合成樹脂モルタルやゴム系充填材など、止水材と
しても機能するものがよい。また、開口部16に前記の
軟質充填材17を充填するとき、開口部16の底部の隙
間は適当な手段で閉じておくのがよい。
【0021】開口部16に所定量の経時硬化性軟質充填
材17を充填した後、図3に示すようにスタッドボルト
15に床版浮上り防止板18のボルト挿入孔19を嵌合
し、さらに床版浮上り防止板18の端縁部を開口部16
の係合段部20に係合させたうえ、スタッドボルト15
のネジ部にナット21を締結する。これにより、床版浮
上り防止板18でプレキャストコンクリート床版13を
押さえ、支承部材7を介してプレキャストコンクリート
床版13を鋼桁10に弾性的に結合することができる。
【0022】また、スタッドボルト15は開口部16に
おいて経時硬化性軟質充填材17と付着結合しているこ
とにより、プレキャストコンクリート床版13の振動が
スタッドボルト15に直接伝わることが少なく、それ
故、スタッドボルト15に無理な繰返し応力が作用しな
い。また開口部16は止水機能を有するこの経時硬化性
軟質充填材17で水密的に密閉され、雨水が鋼桁1側に
漏洩しない。
【0023】前記の支承部材7を介して鋼桁10の上面
11に設置されるプレキャストコンクリート床版13に
は図7に示すようにシース22を介して複数のPC鋼材
挿入孔23が開設されていて、複数のプレキャストコン
クリート床版13の各PC鋼材挿入孔23にPC鋼材2
4を挿入し、その両端においてPC鋼材24にプレスト
レスを与え、その状態に定着することで複数のプレキャ
ストコンクリート床版13に橋軸方向にプレストレスを
与えて一体化される。
【0024】図9〜図11には、本発明の第2実施形態
に係るプレキャストコンクリート床版13の支承構造が
示されている。この第2実施形態では、第1実施形態の
支承部材7と同じ軟質ゴム7aと硬質ゴム7bからなる
支承部材7に所定間隔で複数の貫通孔25が上下方向に
開設されている。また、鋼桁上面11には一定の間隔で
所定長のナット部材26が溶接されている。
【0025】第2実施形態では、図10に示されるよう
に、支承部材7を鋼桁の上面11に載置し、かつ前記貫
通孔25に鋼桁上面11に溶接のナット部材26を挿入
位置させ、支承部材7上にプレキャストコンクリート床
版13を設置する。
【0026】次に、ナット部材26に螺合する長尺のボ
ルト28に床版浮上り防止板27のボルト挿入孔29を
嵌合して、この長尺のボルト28をナット部材26に仮
締めする。つづいてプレキャストコンクリート床版13
の開口部16内に若干の隙間(図示せず)を介して経時
硬化性軟質充填材17を充填し、この軟質充填材17が
硬化する前に長尺ボルト28を本締めすることで、床版
浮上り防止板27の端縁部で開口部16の係合段部20
を押さえる。これにより床版浮上り防止板27と支承部
材7を介してプレキャストコンクリート床版13は鋼桁
10に弾性的に結合される。他の構造と、施工手順は第
1実施形態と同じであるので、同等要素には同一符号を
付して説明を省略する。
【0027】
【発明の効果】本発明によると次の効果がある。 従来は、鋼桁上面にプレキャストコンクリート床版
を取付ける際に発生する不陸をモルタルによって処理し
ていた。そのため。繰返し荷重によりモルタル部の破損
が発生し、プレキャストコンクリート床版の耐久性が劣
化する原因となっていたが、本発明では、不陸調整用軟
質ゴムと桁撓み調整用硬質ゴムとを接合してなる支承部
材でプレキャストコンクリート床版を支持するので、プ
レキャストコンクリート床版と鋼桁との挙動を分離する
ことができ、プレキャストコンクリート床版の耐久性の
向上が図れると共に、制振効果や防音効果の向上を期待
できる。よって、従来のモルタルによる不具合が解消さ
れる。 従来は、プレキャストコンクリート床版と鋼桁間に
型枠を組んでモルタルを注入していたが、本発明ではゴ
ム材料からなる支承部材を鋼桁上面に載置するだけで施
工でき、従来に比べ作業性が著るしく向上する。 本発明のゴム材料からなる支承部材は、従来のよう
なモルタルの割れ等による補修の必要がなく、メンテナ
ンス上も優れている。 本発明の支承部材は、桁撓み調整用硬質ゴムが上方
に凸の曲面を有しているので、鋼桁を橋軸直角方向に配
設した際に生じる鋼桁段差を、支承部材の前記凸曲面の
弾性変形によるとプレキャストコンクリート床版との接
触面積の変化として円滑に吸収でき、さらに鋼桁上面の
橋軸方向の不陸は、不陸調整用軟質ゴムで容易に調整で
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態に係る鋼橋用プレキャストコンク
リート床版の支承構造の斜視図である。
【図2】図1における鋼桁と支承部材との配置関係を示
す一部拡大斜視図である。
【図3】プレキャストコンクリート床版開口部における
スタッドボルトの第1接合工程を示す断面図である。
【図4】前記床版開口部におけるスタッドボルトの第2
接合工程を示す断面図である。
【図5】(A),(B)は支承部材の硬質ゴムの平面図
と断面図である。
【図6】(A),(B)は支承部材の軟質ゴムの平面図
と断面図である。
【図7】図1の支承部材の端部斜視図である。
【図8】他の変形例に係る支承部材の端部斜視図であ
る。
【図9】第2実施形態に係る鋼橋用プレキャストコンク
リート床版の支承構造の斜視図である。
【図10】プレキャストコンクリート床版開口部におけ
るボルト,ナット部材の第1接合工程を示す断面図であ
る。
【図11】前記床版開口部におけるボルト,ナット部材
の第2接合工程を示す断面図である。
【図12】従来の鋼橋用プレキャストコンクリート床版
の支承構造の断面図である。
【符号の説明】
1 鋼桁 2 スタッドジベル 3 プレキャストコンクリート床版 4 開口部 5 間隙 6 無収縮モルタル 7 支承部材 7a 不陸調整用軟質ゴム 7b 桁撓み調整用硬質ゴム 8 鋼橋 10 鋼桁 11 上面 12 曲面 13 プレキャストコンクリート床版 14 溝 15 スタッドボルト 16 開口部 17 経時硬化性軟質充填材 18 床版浮上り防止板 19 ボルト挿入孔 20 係合段部 21 ナット 22 ミース 23 PC鋼材挿入孔 24 PC鋼材 25 貫通孔 26 ナット部材 27 床版浮上り防止板 28 長尺ボルト 29 ボルト挿入孔
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 合田 裕一 東京都東京都世田谷区成城8−31−29− 204 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) E01D 19/04

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鋼桁と、鋼桁上に設置されるプレキャス
    トコンクリート床版との間に配設される支承部材であっ
    て、この支承部材は、前記鋼桁に当接する不陸調整用軟
    質ゴムと、この軟質ゴムと一体に接合され、かつ前記プ
    レキャストコンクリート床版との当接面に上方に凸の曲
    面が形成されている桁撓み調整用硬質ゴムとから構成さ
    れていることを特徴とする鋼橋プレキャスト床版用支承
    部材。
  2. 【請求項2】 前記支承部材は長尺であって、前記軟質
    ゴムと前記硬質ゴムとの接合面が長手方向に延長する凹
    凸部を介して接合されていることを特徴とする請求項1
    記載の鋼橋プレキャスト床版用支承部材。
  3. 【請求項3】 長尺に構成した請求項1記載の支承部材
    を、鋼桁上面の幅方向と長手方向に所定の間隔で2列植
    設したスタッドボルトの間に載置し、この支承部材上に
    設置するプレキャストコンクリート床版に開設の開口部
    に前記スタッドボルトを挿入し、このスタッドボルトに
    取付けた床版浮上り防止板で前記プレキャストコンクリ
    ート床版を押さえ、かつ、その開口部に経時硬化性軟質
    充填材を充填したことを特徴とする鋼橋プレキャストコ
    ンクリート床版用支承構造。
  4. 【請求項4】 長尺に構成すると共に、所定の間隔で貫
    通孔を設けた請求項1記載の支承部材を鋼桁の上面に載
    置し、かつ前記貫通孔に鋼桁に植設のボルト,ナット部
    材を挿入位置させ、前記支承部材上に設置するプレキャ
    ストコンクリート床版に開設の開口部に前記ボルト,ナ
    ット部材を挿入し、このボルト部材に取付けた床版浮上
    り防止板で前記プレキャストコンクリート床版を押さ
    え、かつこの開口部に経時硬化性軟質充填材を充填した
    ことを特徴とする鋼橋プレキャストコンクリート床版用
    支承構造。
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