JP3005247B2 - 水素吸蔵合金 - Google Patents

水素吸蔵合金

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JP3005247B2 JP2142300A JP14230090A JP3005247B2 JP 3005247 B2 JP3005247 B2 JP 3005247B2 JP 2142300 A JP2142300 A JP 2142300A JP 14230090 A JP14230090 A JP 14230090A JP 3005247 B2 JP3005247 B2 JP 3005247B2
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Description

【発明の詳細な説明】 (イ)産業上の利用分野 本発明は、熱駆動型冷凍システムに用いる希土類系水
素吸蔵合金に関するものである。
(ロ)従来の技術 化石資源枯渇によるエネルギー事情の悪化及び炭酸ガ
スによる地球温暖化現象の顕在化等の環境問題により、
現在の石油,電力を中心とするエネルギーシステムの代
替として資源的に無尽蔵,かつクリーンな水素を用いた
エネルギーシステムが有望視され、種々の水素エネルギ
ー技術開発が盛んに行われている。
この中で、とりわけ大量の反応熱を伴って水素を大量
に吸収・放出する水素吸蔵合金材料の開発は、水素エネ
ルギーシステム要素技術である水素の貯蔵,輸送及び熱
・機械エネルギー変換用の機能材料として極めて重要で
ある。
ところで、上記の水素吸蔵合金に要求される特性の中
で、水素の貯蔵、輸送用に対しては、安全上比較的低い
圧力(常温付近で5atm以下)で水素吸蔵量が大きいこと
が重要である。一方水素コンプレッサー、アクチュエー
ターあるいは冷熱発生型ヒートポンプ等の熱・機械エネ
ルギー変換用に対しては、比較的高い平衡圧力(常温付
近で5〜10atm以上)で水素吸蔵量が大きく、水素吸収
・放出の繰り返しに対する耐久性が重要である。
公知の水素吸蔵合金の中で、平衡圧力及び水素吸蔵量
の面から水素の貯蔵、輸送用に適した合金として、例え
ば特公昭56−52109号に示されるMg系、特公昭56−52841
号にしめされるTi系あるいは特開昭60−70154号、USP−
4242315に示される希土類−Ni系合金が挙げられる。一
方、熱・機械エネルギー変換用としては特開昭60−1978
35号、USP−4242315に示される希土類系が挙げられる。
しかしながら、熱・機械エネルギー変換用として水素
吸収・放出の繰り返しに対する耐久性にも優れた合金系
は未だに出現していない。
(ハ)本発明が解決しようとする課題 本発明は、上記の点に鑑みなされたものであって、水
素コンプレッサー,アクチュエータあるいは冷熱発生型
ヒートポンプ等の熱・機械エネルギー変換用に対して要
求される高い平衡水素圧力(常温付近で5〜10atm以
上),大きい水素吸蔵量及び優れた水素吸収・放出の繰
り返しに対する耐久性を兼ね備えた水素吸蔵合金材料を
提供することを目的とする。
(ニ)問題を解決するための手段 本発明の水素吸蔵合金は、CaCu5型の六方晶構造をも
ち、組成がRE1-xYx(Ni5-yGyで表わされ、REはLa、
Ce、Nd、Prもしくはこれらの混合物であるMm[ミッシュ
メタル]、LRM[ランタンリッチミッシュメタル]のい
ずれか、GはNiと金属間化合物を形成するか、もしくは
全率固溶体を形成する元素より選ばれ、且つ0.3≦x≦
0.6、0<y≦1、0.8≦z≦1.2であることを特徴とす
る。
ここでREが、LRMであることを特徴とする。また、G
が、B、Al、V、Cr、Mn、Fe、Co、Cu、Znの少なくとも
1種より選ばれることを特徴とする。
(ホ)作用 大量の水素吸収・放出能力を持つCaCu5型六方晶構造
のRENi5合金(REは希土類)のNiに対し、Niと金属間化
合物を形成するか、もしくは全率固溶体を形成する元素
を置換することにより、水素吸収・放出の繰り返し時に
起こるNiの単体遊離による合金の劣化を防止し、耐久性
の向上が図れる。
一方、Niに対する上記元素の置換により、その平衡水
素圧力は大きく低下する。このためREに対し、平衡水素
圧力を大きく上昇させ、しかも大量の水素吸収・放出能
力を維持しうるYを更に置換することにより、水素コン
プレッサー,アクチュエータあるいは冷熱発生型ヒート
ポンプ等の熱・機械エネルギー変換用に対して要求され
る高い平衡水素圧力(常温付近で5〜10atm以上),大
きい水素吸蔵量及び優れた水素吸収・放出の繰り返しに
対する耐久性を兼ね備えた水素吸蔵合金が得られる。
尚、大量の水素吸収・放出能力を維持する点からは、
REに対するYの置換基(x)は0.3〜0.6の範囲とする必
要がある。また、Niに対する置換量(y)及びREとYの
総量に対するNiとその置換元素(G)の総量の化学量論
比(z)は0〜1.0、0.8〜1.2とする必要がある。
更には、REとしてLRMを、Niの置換元素(G)とし
て、B、Al、V、Cr、Mn、Fe、Co、Cu、Znの少なくとも
1種より選ばれることが好ましい。
(ヘ)実施例 実施例1及び参考例1 所定量のLa,LRM,Mm,Y,Sm,Ni及びAlの粉末混合体をプ
レスした後、アルゴンアーク溶解炉にてこれを溶解し、
第1図のA、Bに示す本発明の水素吸蔵合金に関わるボ
タン状合金鋳塊を得た。また、本発明の合金の秀逸性を
説明するための参考例の水素吸蔵合金C〜Fの合金鋳塊
を得た。尚、ここで用いた合金原料はLa,Y,Sm及びNiは9
9.9%の純度、LRMは、La 41%,Ce 7%,Nd 39%,Pr
12%,その他 1%、MmはLa 25%,Ce 51%,Nd 17
%,Pr 6%,その他 1%を持つ。また、これらの合
金は、粉末X線回折により、いずれも実質的にCaCu5
六方晶構造であることが確認された。
比較例1 実施例1と同様にして、所定量のLa,Ce,Nd,Sm,Y,Niの
粉末混合体をプレスした後、アルゴンアーク溶解炉にて
これを溶解し、第1図のG〜Jに示す公知の水素吸蔵合
金(USP−4242315,特開昭60−197835)の組成を持つボ
タン状合金鋳塊を得た。尚、ここで用いた合金原料はい
ずれも99.9%の純度を持つ。
以上のようにして得た実施例1,参考例1及び比較例1
に係る合金鋳塊を100メッシュ程度に粉砕し、水素化平
衡特性試験及び水素吸収・放出サイクル特性試験に供し
た。これらの試験に先立ち、活性化処理を行ったとこ
ろ、いずれの合金も80℃での真空排気及び常温での30at
mの水素加圧により水素吸収を開始した。
水素化平衡特性試験は、公知のシーベルツ装置を用い
た圧力−水素吸収量等温線図の測定により行った。また
水素吸収・放出サイクル特性試験は、常温で10〜30atm
の水素加圧,真空排気の繰り返しにより行った。以上の
特性試験の結果をまとめて第1図に示す。また、実施例
1及び比較例1に係る合金の特性試験結果から代表例と
してLa0.50.5Ni4.8Al0.2合金及びLa0.5Nd0.5Ni5合金
の25℃における平衡水素放出圧力と水素吸収量の関係、
及び水素吸収・放出サイクル寿命特性を各々、第2図
(a)(b)に示す。
第1図及び第2図より、本発明の実施例1に係る水素
吸蔵合金は、比較例1に示す公知のものに比べて、1wt
%以上の大きな水素吸収量,5atm以上の高い平衡水素圧
力を維持しつつ水素吸収・放出サイクル寿命特性の向上
が認められる。
尚、実施例1において、AlをB,V,Cr,Mn,Fe,Co,Cu,Zn
等のNiと金属間化合物を形成するか、もしくは全率固溶
体を形成する元素の少なくともいずれか1種に置き替え
ても、同様の結果が得られた。また、REとしてCe,Nd,Pr
を、選択した場合も同様の結果が得られた。
実施例2 実施例1と同様にして、所定量のLa,Y,Ni,B,Al,Sn,V,
Cr,Mn,Fe,Co,Cu,Znの粉末混合物をプレスした後、アル
ゴンアーク溶解炉にてこれを溶解し、第3図のK〜Sに
示す本発明の水素吸蔵合金に係る組成のボタン状合金鋳
塊を得た。尚、ここで用いた合金原料はいずれも99.9%
の純度を持つ。また、これらの合金は、粉末X線回折に
より、いずれも実質的にCaCu5型六方晶構造であること
が確認された。
比較例2 実施例1と同様にして、所定量のLa,LRM,Ni,Al,Fe,C
r,Mnの粉末混合体をプレスした後、アルゴンアーク溶解
炉にてこれを溶解し、第3図のT〜Wに示す公知の水素
吸蔵合金(特公昭60−70154)に係る組成のボタン状合
金鋳塊を得た。尚、ここで用いた合金原料はLRMは、La4
1%,Ce7%,Nd39%,Pr12%,その他1%であり、他はい
ずれも99.9%の純度を持つ。
以上のようにして得た実施例2及び比較例2に係る合
金鋳塊を100メッシュ程度に粉砕し、水素化平衡特性試
験及び水素吸収・放出サイクル特性試験に供した。これ
らの試験に先立ち、活性化処理を行ったところ、いずれ
の合金も80℃での真空排気及び常温での30atmの水素加
圧により水素吸収を開始した。
水素化平衡特性試験は、公知のジーベルツ装置を用い
た圧力−水素吸収量等温線図の測定により行った。また
水素吸収・放出サイクル特性試験は、常温で10〜30atm
の水素加圧,真空排気の繰り返しにより行った。以上の
特性試験の結果をまとめて第3図に示す。
第3図より、本発明の実施例2に係る水素吸蔵合金
は、比較例2に示す公知のものに比べて、優れた水素吸
収・放出サイクル特性を維持しつつ、平衡水素放出圧力
の大きな上昇が認められる。
尚、実施例2において、LaをMm,LRMのいずれかで置き
換えても、同様の結果が得られた。また、REとしてCe,N
d,Prを選択した場合も同様の結果が得られた。
実施例3 実施例1と同様にして、所定量のLa,Y,Ni,及びAlの粉
末混合体をプレスした後、アルゴンアーク溶解炉にてこ
れを溶解し、本発明の水素吸蔵合金に係るLa0.50.5Ni
5-YAlYの組成のボタン状合金鋳塊を得た。尚、ここで用
いた合金原料はいずれも99.9%の純度を持つ。また、こ
れらの合金は、粉末X線回折により、いずれも実質的に
CaCu5型六方晶構造であることが確認された。
以上のようにして得た実施例3に係る合金鋳塊を100
メッシュ程度に粉砕し、実施例1及び比較例1と同様の
水素化平衡特性試験により、Niに対するAl置換量(Y)
と水素吸収量の関係を調べた。
その結果、第4図に示すようにNiに対するAl置換量
(Y)が1.0を越えると、その水素吸収量が実用上望ま
しい1wt%を維持できなくなることが分かる。
尚、実施例3において、AlをB,Al,V,Cr,Mn,Fe,Co,Cu,
Zn等のNiと金属間化合物を形成するか、もしくは全率固
溶体を形成する元素の少なくともいずれか1種に置き替
えても、同様の結果が得られた。また、LaをMm,LRMのい
ずれかで置き替えても、同様の結果が得られた。また、
REとしてCe,Nd,Prを選択した場合も同様の結果が得られ
た。
実施例4 実施例1と同様にして、所定量のLa,Y,Ni,及びAlの粉
末混合体をプレスした後、アルゴンアーク溶解炉にてこ
れを溶解し、本発明の水素吸蔵合金に係るLa0.5
0.5(Ni4.8Al0.2の組成のボタン状合金鋳塊を得
た。尚、ここで用いた合金原料はいずれも99.9%の純度
を持つ。また、これらの合金は、粉末X線回折により、
いずれも実質的にCaCu5型六方晶構造であることが確認
された。
以上のようにして得た実施例4に係る合金鋳塊を100
メッシュ程度に粉砕し、実施例1及び比較例1と同様の
水素化平衡特性試験により、LaとY(A)の総量に対す
るNiとその置換元素(G)の総量の化学量論比(Z)
と、水素吸収量の関係を調べた。
その結果、第5図に示すように化学量論比(Z)が0.
8より小さいか、著しくは1.2を越えると水素吸収 量が実用上望ましい1wt%以上に維持できなくなること
が分かる。
尚、実施例4において、AlをB,V,Cr,Mn,Fe,Co,Cu,Zn
等のNiと金属間化合物を形成するか、もしくは全率固溶
体を形成する元素の少なくともいずれか1種に置き替え
ても、同様の結果が得られた。また、LaをMm,LRMのいず
れかで、更にYをSm若しくはYとSmの混合物に置き替え
ても、同様の結果が得られた。また、REとしてCe,Nd,Pr
を選択した場合も同様の結果が得られた。
尚、実施例1〜実施例4において、合金の溶解方法は
アーク溶解に限らず、公知の高周波誘導溶解等であって
もよい。また、合金原料は粉末に限らず、破片状,ツブ
状あるいは短冊状等であってもよい。
また、REとしてLRMを選択した場合には、La,Mmを選択
した場合に比べて、水素吸収量が数%大きくなる傾向が
認められた。更に、Niに置換する元素(G)としてB,A
l,V,Cr,Mn,Fe,Co,Cu,Znの少なくとも1種を選択した場
合には、他の元素を選択した場合に比べて、水素吸収量
が水素吸収量が数%大きくなる傾向が認められた。
更に、REに対するYの置換量(X)が0.6を越えると
水素吸収量が実用上望ましい1wt%より小さくなった。
以上のように本発明の水素吸蔵合金は水素コンプレッ
サー,アクチュエータあるいは冷熱発生型ヒートポンプ
等の熱・機械エネルギー変換用に対して要求される比較
的高い平衡水素圧力(常温付近で5〜10atm以上),大
きい水素吸蔵量及び優れた水素吸収・放出の繰り返しに
対する耐久性を兼ね備えた優れた特性を持つ。
(ト)発明の効果 本発明の水素吸蔵合金により、初めて、実用的な水素
コンプレッサー,アクチュエータあるいは冷熱発生型ヒ
ートポンプ等の熱・機械エネルギー変換機器の構成が可
能となり、水素エネルギーシステムの要素技術確立に対
する寄与は極めて大きい。
【図面の簡単な説明】 第1図及び第3図は本発明の水素吸蔵合金及び従来(比
較例)の水素吸蔵合金の特性を比較する対応図、第2図
(a)及び(b)は、本発明の水素吸蔵合金の実施例1
及び比較例1に係るLa0.50.5Ni4.8Al0.2合金及びLa
0.5Nd0.5Ni5合金の25℃における平衡水素放出圧力と水
素吸収量の関係を示す関係図、同図(b)は実施例1及
び比較例1に係るLa0.50.5Ni4.8Al0.2合金及びLa0.5N
d0.5Ni5合金の25℃における水素吸収・放出サイクル特
性の比較図、第4図は、本発明の水素吸蔵合金の実施例
3に係るLa0.50.5Ni5-YAlY合金におけるNiに対するAl
置換量(Y)と水素吸収量の関係を示す関係図、第5図
は、本発明の水素吸蔵合金の実施例4に係るLa0.50.5
(Ni4.8Al0.2合金におけるLaとY(A)の総量に対
するNiとその置換元素(G)の総量の化学量論比(Z)
と、水素吸収量の関係を示す関係図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 米津 育郎 大阪府守口市京阪本通2丁目18番地 三 洋電機株式会社内 (72)発明者 齋藤 俊彦 大阪府守口市京阪本通2丁目18番地 三 洋電機株式会社内 (56)参考文献 特開 昭60−70154(JP,A) 特開 昭59−143036(JP,A) 特開 平2−291665(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 19/00 - 19/03 H01M 4/38

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】CaCu5型の六方晶構造をもち、組成がRE1-x
    Yx(Ni5-yGyで表わされ、REはLa、Ce、Nd、Prもし
    くはこれらの混合物であるMm[ミッシュメタル]、LRM
    [ランタンリッチミッシュメタル]のいずれか、GはNi
    と金属間化合物を形成するか、もしくは全率固溶体を形
    成する元素より選ばれ、且つ0.3≦x≦0.6、0<y≦
    1、0.8≦z≦1.2であることを特徴とする水素吸蔵合
    金。
  2. 【請求項2】前記REが、LRMであることを特徴とする請
    求項記載の水素吸蔵合金。
  3. 【請求項3】前記Gが、B、Al、V、Cr、Mn、Fe、Co、
    Cu、Znの少なくとも1種より選ばれることを特徴とする
    請求項記載の水素吸蔵合金。
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