JP2997145B2 - 常温遅時効性アルミニウム合金薄板の製造方法 - Google Patents
常温遅時効性アルミニウム合金薄板の製造方法Info
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、アルミニウム合金薄
板の製造方法に関し、特に、プレス成形性及び塗装焼付
硬化性に優れ、かつ常温遅時効性を有しており、自動車
車体等に好適なアルミニウム合金薄板の製造方法に関す
る。
板の製造方法に関し、特に、プレス成形性及び塗装焼付
硬化性に優れ、かつ常温遅時効性を有しており、自動車
車体等に好適なアルミニウム合金薄板の製造方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】従来より自動車ボディーパネル用板材と
して表面処理冷間圧延鋼板が多用されているが、近年、
自動車の燃費向上のための軽量化の要望が高まってお
り、その要望を満たすべく自動車ボディーパネル用板材
にアルミニウム合金板が使用され始めてきている。
して表面処理冷間圧延鋼板が多用されているが、近年、
自動車の燃費向上のための軽量化の要望が高まってお
り、その要望を満たすべく自動車ボディーパネル用板材
にアルミニウム合金板が使用され始めてきている。
【0003】最近では、プレス加工メーカーの要求も厳
しくなりつつあり、形状凍結性の点からプレス前の降伏
強度が低く(自動車技術Vol.45,No.6(1991),45) 、なお
かつ、深絞り、張り出し等の成形性及び耐デント性の点
から塗装焼付により強度が向上する材料が要求されてい
る。
しくなりつつあり、形状凍結性の点からプレス前の降伏
強度が低く(自動車技術Vol.45,No.6(1991),45) 、なお
かつ、深絞り、張り出し等の成形性及び耐デント性の点
から塗装焼付により強度が向上する材料が要求されてい
る。
【0004】そこで、アルミニウム合金の中でも、特
に、成形性に優れる非熱処理型のAl−Mg系合金に対
し、CuやZnを添加し、時効硬化によって強度を高め
る工夫がなされている。例えばAl−Mg−Cu系合金
(特公昭62−42985、特開平1−22573
8)、Al−Mg−Cu−Zn系合金(特公昭56−3
1860)等がある。しかし、これらはAl−Mg−S
i系合金に比べて成形性が優れているものの、従来の表
面処理冷間圧延鋼板よりも劣り、プレス成形前の強度が
高いため形状凍結性にも劣る。さらには塗装焼付工程に
よる硬化は小さく、プレス時の加工硬化分の低下を防ぐ
程度である。特に、特公昭62−42985では、塗装
焼付時に強度上昇を目的としてAl−Cu−Mg系化合
物の析出を図っているが、まだ不十分である。なお、従
来、焼付硬化に対するSiの効果は認められていないた
め、Siを微量に規制している。
に、成形性に優れる非熱処理型のAl−Mg系合金に対
し、CuやZnを添加し、時効硬化によって強度を高め
る工夫がなされている。例えばAl−Mg−Cu系合金
(特公昭62−42985、特開平1−22573
8)、Al−Mg−Cu−Zn系合金(特公昭56−3
1860)等がある。しかし、これらはAl−Mg−S
i系合金に比べて成形性が優れているものの、従来の表
面処理冷間圧延鋼板よりも劣り、プレス成形前の強度が
高いため形状凍結性にも劣る。さらには塗装焼付工程に
よる硬化は小さく、プレス時の加工硬化分の低下を防ぐ
程度である。特に、特公昭62−42985では、塗装
焼付時に強度上昇を目的としてAl−Cu−Mg系化合
物の析出を図っているが、まだ不十分である。なお、従
来、焼付硬化に対するSiの効果は認められていないた
め、Siを微量に規制している。
【0005】また、従来からボディーパネル用材料とし
て用いられていた5052−0材は、プレス成形前の降
伏強度が低く形状凍結性に優れるが塗装焼付硬化性を有
しないため強度が低く耐デント性に劣るという問題があ
った。
て用いられていた5052−0材は、プレス成形前の降
伏強度が低く形状凍結性に優れるが塗装焼付硬化性を有
しないため強度が低く耐デント性に劣るという問題があ
った。
【0006】上記のAl−Mg系にCu、あるいはCu
及びZnを添加した焼付硬化タイプの合金は共通して、
最終熱処理後の常温時効によるプレス前の強度の経時変
化(住軽技報、32,1(1991),20 、軽金属学会第31回シ
ンポジウム、31ページ)の問題があり、素材の製造、
熱処理時期、実際のプレス加工までの期間のコントロー
ルが必要である。
及びZnを添加した焼付硬化タイプの合金は共通して、
最終熱処理後の常温時効によるプレス前の強度の経時変
化(住軽技報、32,1(1991),20 、軽金属学会第31回シ
ンポジウム、31ページ)の問題があり、素材の製造、
熱処理時期、実際のプレス加工までの期間のコントロー
ルが必要である。
【0007】この問題を改善した技術の一つに、Al−
Mg−Cu−Zn系において、常温時効を大きく支配す
るZn量を低下させて時効を抑制したものがある(特公
平4−69220)。しかし、いずれの合金も比較的鋼
板に近い成形性を有するものの、焼付硬化性又は形状凍
結性が満足されず、あるいは常温時効が生じてしまう。
Mg−Cu−Zn系において、常温時効を大きく支配す
るZn量を低下させて時効を抑制したものがある(特公
平4−69220)。しかし、いずれの合金も比較的鋼
板に近い成形性を有するものの、焼付硬化性又は形状凍
結性が満足されず、あるいは常温時効が生じてしまう。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】この発明はかかる事情
に鑑みてなされたものであって、プレス成形性及び塗装
焼付硬化性に優れ、かつ良好な常温遅時効性を有するア
ルミニウム合金薄板の製造方法を提供することを目的と
する。
に鑑みてなされたものであって、プレス成形性及び塗装
焼付硬化性に優れ、かつ良好な常温遅時効性を有するア
ルミニウム合金薄板の製造方法を提供することを目的と
する。
【0009】
【課題を解決するための手段及び作用】本発明者等は、
上記目的を達成するために種々検討を重ねた結果、特定
組成のAl−Mg−Cu系にSiを添加した合金素材
に、溶体化処理を目的とした高温焼鈍を施した後、10
0℃以下に2℃/秒以上の速度で冷却し、さらに、18
0〜300℃の比較的低温に短時間保持することによ
り、プレス成形性及び塗装焼付硬化性を良好に保ったま
ま常温時効の進行を遅らせることができることを見出し
た。この発明は本発明者らのこのような知見に基づき、
さらに他の条件について詳細に研究を重ねた結果完成さ
れたものである。
上記目的を達成するために種々検討を重ねた結果、特定
組成のAl−Mg−Cu系にSiを添加した合金素材
に、溶体化処理を目的とした高温焼鈍を施した後、10
0℃以下に2℃/秒以上の速度で冷却し、さらに、18
0〜300℃の比較的低温に短時間保持することによ
り、プレス成形性及び塗装焼付硬化性を良好に保ったま
ま常温時効の進行を遅らせることができることを見出し
た。この発明は本発明者らのこのような知見に基づき、
さらに他の条件について詳細に研究を重ねた結果完成さ
れたものである。
【0010】すなわち、本発明は、重量%で、Mgを
1.5〜3.5%、Cuを0.3〜1.0%、Siを
0.05〜0.6%の範囲で含有し、かつMg/Cuの
値が2〜7であり、残部がAl及び不可避的不純物から
なるアルミニウム合金の鋳塊に対し、400〜580℃
の範囲内の温度で1段又は多段の均質化処理を施した
後、この鋳塊を熱間圧延及び冷間圧延することにより所
望の板厚とし、次いで500〜580℃の範囲内の温度
まで3℃/秒以上の加熱速度で加熱してその温度で0〜
60秒間保持し、ひき続き100℃まで2℃/秒以上の
冷却速度で冷却した後、180〜300℃の温度で3〜
60秒間保持することを特徴とする常温遅時効性アルミ
ニウム合金薄板の製造方法を提供するものである。
1.5〜3.5%、Cuを0.3〜1.0%、Siを
0.05〜0.6%の範囲で含有し、かつMg/Cuの
値が2〜7であり、残部がAl及び不可避的不純物から
なるアルミニウム合金の鋳塊に対し、400〜580℃
の範囲内の温度で1段又は多段の均質化処理を施した
後、この鋳塊を熱間圧延及び冷間圧延することにより所
望の板厚とし、次いで500〜580℃の範囲内の温度
まで3℃/秒以上の加熱速度で加熱してその温度で0〜
60秒間保持し、ひき続き100℃まで2℃/秒以上の
冷却速度で冷却した後、180〜300℃の温度で3〜
60秒間保持することを特徴とする常温遅時効性アルミ
ニウム合金薄板の製造方法を提供するものである。
【0011】常温時効を一層遅延させる観点からは、M
gを1.5〜3.5%、Cuを 0.3〜0.7%、S
iを0.05〜0.35%の範囲で含有し、かつMg/
Cuの値が2〜7であり、残部がAl及び不可避的不純
物からなるアルミニウム合金の鋳塊を用いることが好ま
しい。
gを1.5〜3.5%、Cuを 0.3〜0.7%、S
iを0.05〜0.35%の範囲で含有し、かつMg/
Cuの値が2〜7であり、残部がAl及び不可避的不純
物からなるアルミニウム合金の鋳塊を用いることが好ま
しい。
【0012】また、0.03〜0.50%のFe、0.
005〜0.15%のTi、0.0002〜0.05%
のB、0.01〜0.50%のMn、0.01〜0.1
5%のCr、0.01〜0.12%のZr、0.01〜
0.18%のV、及び0.5%以下のZnのうち1種又
は2種以上を含有することにより、この発明の効果を損
なうことなく一層良好な特性のアルミニウム合金薄板を
得ることができる。
005〜0.15%のTi、0.0002〜0.05%
のB、0.01〜0.50%のMn、0.01〜0.1
5%のCr、0.01〜0.12%のZr、0.01〜
0.18%のV、及び0.5%以下のZnのうち1種又
は2種以上を含有することにより、この発明の効果を損
なうことなく一層良好な特性のアルミニウム合金薄板を
得ることができる。
【0013】さらに、0.01〜0.50%のSn、
0.01〜0.50%のCd、及び0.01〜0.50
%のInのうち1種又は2種以上を含有することによ
り、常温時効の影響が実質的に存在しなくなる程度に常
温時効を遅延させることができる。以下、この発明につ
いて詳細に説明する。
0.01〜0.50%のCd、及び0.01〜0.50
%のInのうち1種又は2種以上を含有することによ
り、常温時効の影響が実質的に存在しなくなる程度に常
温時効を遅延させることができる。以下、この発明につ
いて詳細に説明する。
【0014】本発明における合金組成は、Al−Mg−
Cu系にSiを添加した合金を基本としており、Al−
Cu−Mg系化合物析出相の析出前段階の変調構造(G
PBゾーン)を形成させることによって焼付硬化性を優
れたものとし、プレス成形性及び塗装焼付硬化性を両立
させている。次に、個々の成分の限定理由について説明
する。なお、%表示は全て重量%を示す。
Cu系にSiを添加した合金を基本としており、Al−
Cu−Mg系化合物析出相の析出前段階の変調構造(G
PBゾーン)を形成させることによって焼付硬化性を優
れたものとし、プレス成形性及び塗装焼付硬化性を両立
させている。次に、個々の成分の限定理由について説明
する。なお、%表示は全て重量%を示す。
【0015】Mg: Mgは上述したAl−Cu−Mg
系変調構造の構成元素である。しかし、その含有量が
1.5%未満では変調構造の生成が遅くなり、目標とす
る焼付け温度120〜180℃、焼付け時間5〜40分
間の低温短時間焼付け処理では変調構造が生成しない。
また、1.5%未満では延性が低下する。一方、その含
有量が3.5%を超えるとやはり変調構造の生成が遅く
なり、焼付け温度120〜180℃、焼付け時間5〜4
0分間の焼付け処理条件では変調構造が生成しない。従
って、Mgの含有量は1.5〜3.5%の範囲に規定さ
れる。
系変調構造の構成元素である。しかし、その含有量が
1.5%未満では変調構造の生成が遅くなり、目標とす
る焼付け温度120〜180℃、焼付け時間5〜40分
間の低温短時間焼付け処理では変調構造が生成しない。
また、1.5%未満では延性が低下する。一方、その含
有量が3.5%を超えるとやはり変調構造の生成が遅く
なり、焼付け温度120〜180℃、焼付け時間5〜4
0分間の焼付け処理条件では変調構造が生成しない。従
って、Mgの含有量は1.5〜3.5%の範囲に規定さ
れる。
【0016】Cu: Cuも上述のAl−Cu−Mg系
変調構造の構成元素であるが、その含有量が0.3%未
満では変調構造が生成せず、一方1.0%を超えると耐
食性が著しく劣化する。従って、Cuの含有量は0.3
〜1.0%に規定される。この場合に、Cuの含有量が
0.7%を超えると常温においてもAl−Cu−Mg系
変調構造が生成して強度が上昇し、経時変化を生じる。
また、耐食性も多少劣化する。従って、常温遅時効性及
び耐食性の観点から、0.3〜0.7%が望ましい。
変調構造の構成元素であるが、その含有量が0.3%未
満では変調構造が生成せず、一方1.0%を超えると耐
食性が著しく劣化する。従って、Cuの含有量は0.3
〜1.0%に規定される。この場合に、Cuの含有量が
0.7%を超えると常温においてもAl−Cu−Mg系
変調構造が生成して強度が上昇し、経時変化を生じる。
また、耐食性も多少劣化する。従って、常温遅時効性及
び耐食性の観点から、0.3〜0.7%が望ましい。
【0017】なお、Mgの含有量とCuの含有量との比
Mg/Cuは、2〜7の範囲に規定される。この範囲内
においてAl−Cu−Mg系変調構造を生成させること
ができる。
Mg/Cuは、2〜7の範囲に規定される。この範囲内
においてAl−Cu−Mg系変調構造を生成させること
ができる。
【0018】Si: SiはAl−Cu−Mg系変調構
造の生成を促進させて硬化能を高めつつ常温時効を抑制
する元素であり、その機能を発揮するためにはその含有
量が0.05%以上必要である。一方、その含有量が
0.6%を超えた場合には、上記変調構造は生成される
ものの、一方でMg2 SiのGP(1)変調構造を生成
し、常温時効を促進し、焼付け前の強度が時効と共に顕
著に増大するため、焼付け硬化量がかえって減少してし
まう。従って、Siの含有量は0.05〜0.6%に規
定される。この場合に、Mg2 SiのGP(1)変調構
造を生成させずに常温時効を遅延させる観点からは、S
iの含有量は0.35%以下が望ましい。これら基本成
分の他、上述の選択成分のうち1種又は2種以上が含有
されるが、これら選択成分の限定理由は以下の通りであ
る。
造の生成を促進させて硬化能を高めつつ常温時効を抑制
する元素であり、その機能を発揮するためにはその含有
量が0.05%以上必要である。一方、その含有量が
0.6%を超えた場合には、上記変調構造は生成される
ものの、一方でMg2 SiのGP(1)変調構造を生成
し、常温時効を促進し、焼付け前の強度が時効と共に顕
著に増大するため、焼付け硬化量がかえって減少してし
まう。従って、Siの含有量は0.05〜0.6%に規
定される。この場合に、Mg2 SiのGP(1)変調構
造を生成させずに常温時効を遅延させる観点からは、S
iの含有量は0.35%以下が望ましい。これら基本成
分の他、上述の選択成分のうち1種又は2種以上が含有
されるが、これら選択成分の限定理由は以下の通りであ
る。
【0019】Fe: Feの含有量が0.50%を超え
るとAlとの共存により成形性に悪影響を及ぼす粗大な
晶出物が生成されやすく、また、Siと結び付いて変調
構造の生成に有用なSiの量を低下させる。しかし、微
量添加することにより成形性の向上に寄与し、0.03
%未満になるとその効果が得られない。従って、Feを
添加する場合にはその含有量は0.03〜0.50%に
規定される。
るとAlとの共存により成形性に悪影響を及ぼす粗大な
晶出物が生成されやすく、また、Siと結び付いて変調
構造の生成に有用なSiの量を低下させる。しかし、微
量添加することにより成形性の向上に寄与し、0.03
%未満になるとその効果が得られない。従って、Feを
添加する場合にはその含有量は0.03〜0.50%に
規定される。
【0020】Ti,B: Ti及びBはTiB2 等とし
て存在し、鋳塊の結晶粒を微細化して熱間での加工性等
を改善する効果を有する。従って、これらを複合添加す
ることが重要である。しかしながら、これらを過剰に添
加すると粗大な晶出物を生成し、成形性を劣化させる。
従って、これらを添加する場合には、これらの含有量を
上記効果を有効に得ることができる範囲、すなわちTi
が0.005〜0.15%及びBが0.0002〜0.
05%の範囲に規定される。
て存在し、鋳塊の結晶粒を微細化して熱間での加工性等
を改善する効果を有する。従って、これらを複合添加す
ることが重要である。しかしながら、これらを過剰に添
加すると粗大な晶出物を生成し、成形性を劣化させる。
従って、これらを添加する場合には、これらの含有量を
上記効果を有効に得ることができる範囲、すなわちTi
が0.005〜0.15%及びBが0.0002〜0.
05%の範囲に規定される。
【0021】Mn,Cr,Zr,V: これらの元素は
再結晶抑制元素であるから、異常粒成長を抑制する目的
で適量添加してもよい。しかし、これらの合金成分は、
再結晶粒の等軸化に対し負の効果があり成形性を低下さ
せるため、これらの含有量は従来のアルミニウム合金よ
りも少ない範囲に規定する必要がある。従って、これら
を添加する場合には、Mn,Cr、Zr、及びVの含有
量は夫々0.01〜0.50%、0.01〜0.15
%、0.01〜0.12%、及び0.01〜0.18%
に規定される。
再結晶抑制元素であるから、異常粒成長を抑制する目的
で適量添加してもよい。しかし、これらの合金成分は、
再結晶粒の等軸化に対し負の効果があり成形性を低下さ
せるため、これらの含有量は従来のアルミニウム合金よ
りも少ない範囲に規定する必要がある。従って、これら
を添加する場合には、Mn,Cr、Zr、及びVの含有
量は夫々0.01〜0.50%、0.01〜0.15
%、0.01〜0.12%、及び0.01〜0.18%
に規定される。
【0022】Zn: Znは強度の向上に寄与する元素
であるが、0.5%を超えると焼付け硬化量が低下して
しまう。すなわち、0.5%を超えるとAl−Zn系化
合物の析出前段階の変調構造を生成するが、この変調構
造は常温においても生成し、焼付け前の強度が時効に伴
って顕著に増大するため、焼付け硬化量がかえって低下
するのである。従って、Znを添加する場合には0.5
%を超えないことが必須である。
であるが、0.5%を超えると焼付け硬化量が低下して
しまう。すなわち、0.5%を超えるとAl−Zn系化
合物の析出前段階の変調構造を生成するが、この変調構
造は常温においても生成し、焼付け前の強度が時効に伴
って顕著に増大するため、焼付け硬化量がかえって低下
するのである。従って、Znを添加する場合には0.5
%を超えないことが必須である。
【0023】Sn,In,Cd: これらの合金成分は
溶体化処理後の焼入れによって生じる凍結原子空孔と強
く結合する元素である。そのため、常温においてAl−
Cu−Mg系変調構造の形成を促進させる原子空孔の数
が減少し、常温での時効を遅延させることができる。し
かし、これらの含有量が各々0.01%未満ではその効
果を発揮させることができず、また0.50%を超える
と効果が飽和し、添加量に応じた効果が得られずコスト
高となってしまう。従って、これらを添加する場合に
は、いずれも0.01〜0.50%の範囲に規定され
る。
溶体化処理後の焼入れによって生じる凍結原子空孔と強
く結合する元素である。そのため、常温においてAl−
Cu−Mg系変調構造の形成を促進させる原子空孔の数
が減少し、常温での時効を遅延させることができる。し
かし、これらの含有量が各々0.01%未満ではその効
果を発揮させることができず、また0.50%を超える
と効果が飽和し、添加量に応じた効果が得られずコスト
高となってしまう。従って、これらを添加する場合に
は、いずれも0.01〜0.50%の範囲に規定され
る。
【0024】上記元素の他、通常のアルミニウム合金と
同様、不可避的不純物が含有されるが、その量は本発明
の効果が損なわれない範囲であれば許容される。例え
ば、Na,K等は、それぞれ0.001%以下程度なら
含有していても特性上の支障はない。
同様、不可避的不純物が含有されるが、その量は本発明
の効果が損なわれない範囲であれば許容される。例え
ば、Na,K等は、それぞれ0.001%以下程度なら
含有していても特性上の支障はない。
【0025】次に、上述のように成分・組成が規定され
たアルミニウム合金を常法により溶解・鋳造し、その鋳
塊に対して400〜580℃の範囲内の温度で1段又は
多段の均質化熱処理を施す。このような均質化処理を施
すことにより、鋳造時に晶出した共晶化合物の拡散固溶
を促進し、局部的ミクロ偏析を軽減する。また、この処
理により、最終製品の結晶粒の異常粒成長を抑制し、均
一化を図るうえで重要な役割を果たすMn,Cr,Z
r,Vの化合物を微細に析出させることができる。しか
し、この処理の温度が400℃未満の場合には上述した
ような効果が不十分であり、一方580℃を超えると共
晶融解が生じる。従って、均質化処理の温度を400〜
580℃の範囲とした。なお、この温度範囲内での保持
時間が1時間未満では上述の効果が十分に得られず、7
2時間を超える長時間の加熱はその効果が飽和してしま
うため、この均質化処理の保持時間は1〜72時間が望
ましい。
たアルミニウム合金を常法により溶解・鋳造し、その鋳
塊に対して400〜580℃の範囲内の温度で1段又は
多段の均質化熱処理を施す。このような均質化処理を施
すことにより、鋳造時に晶出した共晶化合物の拡散固溶
を促進し、局部的ミクロ偏析を軽減する。また、この処
理により、最終製品の結晶粒の異常粒成長を抑制し、均
一化を図るうえで重要な役割を果たすMn,Cr,Z
r,Vの化合物を微細に析出させることができる。しか
し、この処理の温度が400℃未満の場合には上述した
ような効果が不十分であり、一方580℃を超えると共
晶融解が生じる。従って、均質化処理の温度を400〜
580℃の範囲とした。なお、この温度範囲内での保持
時間が1時間未満では上述の効果が十分に得られず、7
2時間を超える長時間の加熱はその効果が飽和してしま
うため、この均質化処理の保持時間は1〜72時間が望
ましい。
【0026】次いで、このような均質化処理が施された
鋳塊に対し、常法に従って所定の板厚を得るために熱間
圧延及び冷間圧延を行う。また、歪矯正又は表面粗度調
整のため、次に行われる熱処理の前後両方又はいずれか
で5%以下のレベリング、ストレッチング、あるいはス
キンパス圧延を実施してもよい。
鋳塊に対し、常法に従って所定の板厚を得るために熱間
圧延及び冷間圧延を行う。また、歪矯正又は表面粗度調
整のため、次に行われる熱処理の前後両方又はいずれか
で5%以下のレベリング、ストレッチング、あるいはス
キンパス圧延を実施してもよい。
【0027】圧延終了後、このような圧延板材に対し、
500〜580℃の範囲内の温度に3℃/秒以上の加熱
速度で加熱して、その温度に達した後即座に、又は60
秒間以下の期間保持した後、100℃まで2℃/秒以上
の冷却速度で急速冷却するといった条件の熱処理を施
す。この熱処理は、Al−Cu−Mg系化合物の変調構
造を構成するCu,Mgの溶体化を図り、十分な焼付け
硬化を得るために行うものである。この場合に、加熱温
度が500℃未満では、上述のような効果を十分に得る
ことができない。また、加熱温度が580℃を超えた
り、加熱速度が3℃/秒未満であったり、保持時間が6
0秒を超えると、結晶粒の一部が異常粒成長を起こしや
すなる。さらに、100℃までの冷却速度が2℃/秒未
満では、冷却中に粗大なAl−Cu−Mg化合物が析出
し焼付硬化性を向上させる点から好ましくない。
500〜580℃の範囲内の温度に3℃/秒以上の加熱
速度で加熱して、その温度に達した後即座に、又は60
秒間以下の期間保持した後、100℃まで2℃/秒以上
の冷却速度で急速冷却するといった条件の熱処理を施
す。この熱処理は、Al−Cu−Mg系化合物の変調構
造を構成するCu,Mgの溶体化を図り、十分な焼付け
硬化を得るために行うものである。この場合に、加熱温
度が500℃未満では、上述のような効果を十分に得る
ことができない。また、加熱温度が580℃を超えた
り、加熱速度が3℃/秒未満であったり、保持時間が6
0秒を超えると、結晶粒の一部が異常粒成長を起こしや
すなる。さらに、100℃までの冷却速度が2℃/秒未
満では、冷却中に粗大なAl−Cu−Mg化合物が析出
し焼付硬化性を向上させる点から好ましくない。
【0028】このような溶体化熱処理後、その板材に対
し、180〜300℃の温度で3〜60秒間保持する。
この低温加熱処理は、Al−Cu−Mg化合物の変調構
造であるGPBゾーンを常温において安定にさせるため
に行うものである。この場合、加熱温度が180℃未満
であったり、保持時間が3秒間未満であると上述のよう
な効果を十分に得ることができない。また、加熱温度が
300℃を超えたり、保持時間が60秒間を超えると、
粗大なAl−Cu−Mg化合物が析出し、焼付硬化性を
低下させるため好ましくない。図1に溶体化処理後の常
温時効特性に及ぼす低温加熱処理の影響を示す。この図
から明らかなように、低温加熱を行うことにより常温時
効をほとんどなくすることができる。
し、180〜300℃の温度で3〜60秒間保持する。
この低温加熱処理は、Al−Cu−Mg化合物の変調構
造であるGPBゾーンを常温において安定にさせるため
に行うものである。この場合、加熱温度が180℃未満
であったり、保持時間が3秒間未満であると上述のよう
な効果を十分に得ることができない。また、加熱温度が
300℃を超えたり、保持時間が60秒間を超えると、
粗大なAl−Cu−Mg化合物が析出し、焼付硬化性を
低下させるため好ましくない。図1に溶体化処理後の常
温時効特性に及ぼす低温加熱処理の影響を示す。この図
から明らかなように、低温加熱を行うことにより常温時
効をほとんどなくすることができる。
【0029】以上のような工程に加えて、中間板厚まで
圧延した後、500〜580℃の範囲内の温度まで3℃
/秒以上の加熱速度で加熱してその温度で0〜60秒間
保持し、その後100℃まで2℃/秒以上の冷却速度で
冷却する中間焼鈍を行い、その後に圧延率5〜45%の
範囲内で冷間圧延を施して所望の板厚とすることが好ま
しい。このような工程を付加することにより、Al−C
u−Mg系化合物の変調構造の生成が促進され、焼付硬
化性が増大する。図2は中間焼鈍を行う際の中間板厚
(中間焼鈍後の冷間圧延の圧延率)と焼付け硬化量(焼
付け処理後の降伏強度から処理前の降伏強度を引いた
値)との関係を示す図であり、最終板厚を1.0mmと一
定にした場合について示すものである。この図から明ら
かなように、最終圧延率が5〜45%になるような中間
板厚で中間焼鈍を行うことにより焼付け硬化量が7kg/
mm2 程度と極めて高い値となる。この場合、最終圧延率
が5%未満ではAl−Cu−Mg系の化合物の変調構造
の生成が促進されず、焼付硬化能は低く、異常粒成長も
生じて成形性を害する。また、最終圧延率が45%を超
えるとAl−Cu−Mg化合物が不均一に析出し、焼付
け硬化能が低下する。なお、この中間焼鈍の条件は、圧
延後の熱処理条件と同じである。この際の加熱速度及び
冷却速度が下限値未満の場合には、粗大なAl−Cu−
Mg化合物が析出して焼付け硬化能が低下する。このよ
うにして得られたアルミニウム合金板は、プレス成形性
及び塗装焼付硬化性に優れ、かつ常温遅時効性を有して
いるため、自動車車体等に好適である。
圧延した後、500〜580℃の範囲内の温度まで3℃
/秒以上の加熱速度で加熱してその温度で0〜60秒間
保持し、その後100℃まで2℃/秒以上の冷却速度で
冷却する中間焼鈍を行い、その後に圧延率5〜45%の
範囲内で冷間圧延を施して所望の板厚とすることが好ま
しい。このような工程を付加することにより、Al−C
u−Mg系化合物の変調構造の生成が促進され、焼付硬
化性が増大する。図2は中間焼鈍を行う際の中間板厚
(中間焼鈍後の冷間圧延の圧延率)と焼付け硬化量(焼
付け処理後の降伏強度から処理前の降伏強度を引いた
値)との関係を示す図であり、最終板厚を1.0mmと一
定にした場合について示すものである。この図から明ら
かなように、最終圧延率が5〜45%になるような中間
板厚で中間焼鈍を行うことにより焼付け硬化量が7kg/
mm2 程度と極めて高い値となる。この場合、最終圧延率
が5%未満ではAl−Cu−Mg系の化合物の変調構造
の生成が促進されず、焼付硬化能は低く、異常粒成長も
生じて成形性を害する。また、最終圧延率が45%を超
えるとAl−Cu−Mg化合物が不均一に析出し、焼付
け硬化能が低下する。なお、この中間焼鈍の条件は、圧
延後の熱処理条件と同じである。この際の加熱速度及び
冷却速度が下限値未満の場合には、粗大なAl−Cu−
Mg化合物が析出して焼付け硬化能が低下する。このよ
うにして得られたアルミニウム合金板は、プレス成形性
及び塗装焼付硬化性に優れ、かつ常温遅時効性を有して
いるため、自動車車体等に好適である。
【0030】
【実施例】以下、この発明の実施例について説明する。 (実施例1)
【0031】表1、表2に示すような成分・組成を有す
る合金を溶解−連続鋳造し、得られた鋳塊を面削した
後、440℃で4時間その後510℃で10時間の2段
均質化処理を実施し、次いで鋳片を460℃に加熱し、
板厚4mmまで熱間圧延を行い、室温に冷却した後、板厚
1.4mmまで冷間圧延を行った。その後、加熱温度3℃
/秒で550℃まで加熱し、その温度で10秒間保持し
た後、100℃まで20℃/秒の冷却速度で強制空冷す
るという中間焼鈍を行った。次いで、室温に冷却した後
最終板厚まで冷間圧延を行って厚さ1mmの板材とした。
なお、熱間圧延の仕上り温度は280℃であった。この
厚さ1mmの板材を550℃まで10℃/秒の速度で加熱
し、10秒間保持後、100℃まで20℃/秒の冷却速
度で強制空冷を行った。この熱処理の後、240℃で1
0秒間保持の低温安定化処理を行った。この熱処理の
後、板材を常温で夫々1日及び90日間放置して、所定
形状に切出し、引張試験(JIS5号,引張方向:圧延
方向)及びコニカルカップ試験(JIS Z2249:
試験工具17型)を実施し、常温時効特性及び成形性を
評価した。コニカルカップ値(CCV)は、張出しと深
絞りとの複合成形性を示すものであり、この値が小さい
ほど成形性に優れている。
る合金を溶解−連続鋳造し、得られた鋳塊を面削した
後、440℃で4時間その後510℃で10時間の2段
均質化処理を実施し、次いで鋳片を460℃に加熱し、
板厚4mmまで熱間圧延を行い、室温に冷却した後、板厚
1.4mmまで冷間圧延を行った。その後、加熱温度3℃
/秒で550℃まで加熱し、その温度で10秒間保持し
た後、100℃まで20℃/秒の冷却速度で強制空冷す
るという中間焼鈍を行った。次いで、室温に冷却した後
最終板厚まで冷間圧延を行って厚さ1mmの板材とした。
なお、熱間圧延の仕上り温度は280℃であった。この
厚さ1mmの板材を550℃まで10℃/秒の速度で加熱
し、10秒間保持後、100℃まで20℃/秒の冷却速
度で強制空冷を行った。この熱処理の後、240℃で1
0秒間保持の低温安定化処理を行った。この熱処理の
後、板材を常温で夫々1日及び90日間放置して、所定
形状に切出し、引張試験(JIS5号,引張方向:圧延
方向)及びコニカルカップ試験(JIS Z2249:
試験工具17型)を実施し、常温時効特性及び成形性を
評価した。コニカルカップ値(CCV)は、張出しと深
絞りとの複合成形性を示すものであり、この値が小さい
ほど成形性に優れている。
【0032】また、プレス成形後の焼付塗装をシミュレ
−トするために、170℃で20分間の熱処理(焼付に
対応)を行い、引張試験(熱処理後の試験と同一条件)
を実施した。その後もう一度、上述の試験と同一条件で
引張試験を行った。これらの試験結果を表3、4に示
す。なお、「焼付硬化」の欄は、焼付シミュレ−ト後の
降伏強度から、最終熱処理後の降伏強度を引いた値を示
している。
−トするために、170℃で20分間の熱処理(焼付に
対応)を行い、引張試験(熱処理後の試験と同一条件)
を実施した。その後もう一度、上述の試験と同一条件で
引張試験を行った。これらの試験結果を表3、4に示
す。なお、「焼付硬化」の欄は、焼付シミュレ−ト後の
降伏強度から、最終熱処理後の降伏強度を引いた値を示
している。
【0033】なお、表1の番号1〜16は本発明の基本
成分及び選択成分のいずれも満たしているものであり、
表2の番号17〜33はこれらのいずれかが規定する範
囲から外れるものである。なお、番号31、32、33
は、従来からボディーパネルとして用いられている合金
であり、夫々2036、5182、6010に相当する
ものである。
成分及び選択成分のいずれも満たしているものであり、
表2の番号17〜33はこれらのいずれかが規定する範
囲から外れるものである。なお、番号31、32、33
は、従来からボディーパネルとして用いられている合金
であり、夫々2036、5182、6010に相当する
ものである。
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】
【表3】
【0037】
【表4】
【0038】表3から明らかなように、番号1〜16
は、熱処理後1日及び90日のサンプルとも伸びが30
%以上であり、CCVも良好で優れた成形性が得られる
ことが確認された。また、焼付け処理により降伏強度で
6.5kgf /mm2 以上の高い焼付硬化を有し、優れた伸
び−強度バランスを有していることが確認された。
は、熱処理後1日及び90日のサンプルとも伸びが30
%以上であり、CCVも良好で優れた成形性が得られる
ことが確認された。また、焼付け処理により降伏強度で
6.5kgf /mm2 以上の高い焼付硬化を有し、優れた伸
び−強度バランスを有していることが確認された。
【0039】一方、表2に示す番号17〜33は、表4
から明らかなように、成形性、焼付硬化性、常温遅時効
性のいずれかが不十分であった。例えば、焼付硬化に寄
与する成分であるMg、Si、Cuのいずれかの含有量
が低い番号17,19,21、あるいはMgが高い番号
18は、焼付硬化が高々4kgf /mm2 程度であった。ま
た、Si,Cu,Znが高い番号20,22,25は焼
付硬化性が低く0.6kgf /mm2 程度であった。Fe,
Ti−B,Mn,Cr,Zr,Vの量のいずれかの量が
規定されている範囲から外れている番号23,24,2
6,27,28,29は成形性が低くかった。さらに、
Mg/Cuが2〜7の範囲から外れている番号30は焼
付硬化が3.4kgf /mm2 であった。なお、番号31〜
33の従来材はいずれも成形性及び焼付硬化性が低く、
中でも番号31は焼付けにより軟化した。 (実施例2)
から明らかなように、成形性、焼付硬化性、常温遅時効
性のいずれかが不十分であった。例えば、焼付硬化に寄
与する成分であるMg、Si、Cuのいずれかの含有量
が低い番号17,19,21、あるいはMgが高い番号
18は、焼付硬化が高々4kgf /mm2 程度であった。ま
た、Si,Cu,Znが高い番号20,22,25は焼
付硬化性が低く0.6kgf /mm2 程度であった。Fe,
Ti−B,Mn,Cr,Zr,Vの量のいずれかの量が
規定されている範囲から外れている番号23,24,2
6,27,28,29は成形性が低くかった。さらに、
Mg/Cuが2〜7の範囲から外れている番号30は焼
付硬化が3.4kgf /mm2 であった。なお、番号31〜
33の従来材はいずれも成形性及び焼付硬化性が低く、
中でも番号31は焼付けにより軟化した。 (実施例2)
【0040】ここでは、表1、2に示す番号1〜30と
同一の組成を用いて、中間焼鈍を行わないこと以外は、
実施例1と同様の条件で製造した合金板について、実施
例1と同様の試験を行った。その結果を表5、6に示
す。なお、表5、6では番号1〜30と同様の組成に対
応して番号1´〜30´で示した。
同一の組成を用いて、中間焼鈍を行わないこと以外は、
実施例1と同様の条件で製造した合金板について、実施
例1と同様の試験を行った。その結果を表5、6に示
す。なお、表5、6では番号1〜30と同様の組成に対
応して番号1´〜30´で示した。
【0041】
【表5】
【0042】
【表6】
【0043】表5に示すように、番号1´〜16´は番
号1〜16と同様30%以上の高い伸びを有しているこ
とが確認された。また、焼付硬化が中間焼鈍ありの場合
よりも低いものの、降伏強度で5.2kgf /mm2 以上と
高い値を有していることが確認された。また、番号17
´〜30´についても表6で示すように、焼付硬化性が
番号17〜30よりも低下することが確認された。 (実施例3)
号1〜16と同様30%以上の高い伸びを有しているこ
とが確認された。また、焼付硬化が中間焼鈍ありの場合
よりも低いものの、降伏強度で5.2kgf /mm2 以上と
高い値を有していることが確認された。また、番号17
´〜30´についても表6で示すように、焼付硬化性が
番号17〜30よりも低下することが確認された。 (実施例3)
【0044】次に、表1に示した合金のうち、番号1に
対応する組成を有する鋳塊を使用し、表7に示す製造条
件で合金板材を製造した。なお、表7に特に記載されて
いない処理については実施例1の条件を採用した(圧延
条件等)。なお、実施例1と同様の評価試験を行った結
果も表7に併記した。表7中記号A〜Gは本発明に係る
製造方法の範囲内のものであり、記号H〜Rはその範囲
から外れるものである。このようにして製造した板材に
ついて実施例1と同様の評価試験を行った。その結果も
表7に併記する。
対応する組成を有する鋳塊を使用し、表7に示す製造条
件で合金板材を製造した。なお、表7に特に記載されて
いない処理については実施例1の条件を採用した(圧延
条件等)。なお、実施例1と同様の評価試験を行った結
果も表7に併記した。表7中記号A〜Gは本発明に係る
製造方法の範囲内のものであり、記号H〜Rはその範囲
から外れるものである。このようにして製造した板材に
ついて実施例1と同様の評価試験を行った。その結果も
表7に併記する。
【0045】
【表7】 表7から明らかなように、本発明の条件を満足しない記
号H〜Rは、伸び及び成形性、あるいは焼付硬化性が不
十分であることが確認された。
号H〜Rは、伸び及び成形性、あるいは焼付硬化性が不
十分であることが確認された。
【0046】例えば、比較例のH,L,I,Kのように
均質化温度、熱処理温度が高かったり、あるいは中間焼
鈍後の冷間圧延率が低い、熱処理の加熱速度が小さい場
合には異常粒成長が生じ、伸び及び成形性が劣る。ま
た、Jのように中間焼鈍後の冷間圧延率が高かったり、
Nのように溶体化焼入れ条件における冷却速度が低い場
合には、焼付硬化性に劣る。また、Mのように溶体化焼
入条件の加熱保持温度が低い場合には、伸びが低いため
成形性に劣り、また十分な焼付硬化が得られない。さら
に、記号Oのように低温加熱処理の温度が低い場合、及
びPのようにその保持時間が短い場合には、常温保持特
性(常温遅時効性)に劣る。また、記号Qのように低温
加熱処理の温度が高い場合、及びRのようにその保持時
間が長い場合には十分な焼付硬化性が得られない。 (実施例4)
均質化温度、熱処理温度が高かったり、あるいは中間焼
鈍後の冷間圧延率が低い、熱処理の加熱速度が小さい場
合には異常粒成長が生じ、伸び及び成形性が劣る。ま
た、Jのように中間焼鈍後の冷間圧延率が高かったり、
Nのように溶体化焼入れ条件における冷却速度が低い場
合には、焼付硬化性に劣る。また、Mのように溶体化焼
入条件の加熱保持温度が低い場合には、伸びが低いため
成形性に劣り、また十分な焼付硬化が得られない。さら
に、記号Oのように低温加熱処理の温度が低い場合、及
びPのようにその保持時間が短い場合には、常温保持特
性(常温遅時効性)に劣る。また、記号Qのように低温
加熱処理の温度が高い場合、及びRのようにその保持時
間が長い場合には十分な焼付硬化性が得られない。 (実施例4)
【0047】この実施例では、番号1に対応する組成の
鋳塊を用い、中間焼鈍を行わない他は、実施例3のA〜
Rと同様の条件にて合金板を製造し、実施例3と同様の
試験を行った。その結果を表8に示す。なお、表8では
記号A〜Rに対応してA´〜R´で示した。
鋳塊を用い、中間焼鈍を行わない他は、実施例3のA〜
Rと同様の条件にて合金板を製造し、実施例3と同様の
試験を行った。その結果を表8に示す。なお、表8では
記号A〜Rに対応してA´〜R´で示した。
【0048】
【表8】
【0049】表8に示すように、記号A´〜G´はいず
れも焼付硬化性がA〜Gよりも若干劣るものの、依然と
して高い値を示していることが確認された。また、記号
H´〜R´についても、H〜Rよりも若干低い焼付硬化
性を示した。 (実施例5)
れも焼付硬化性がA〜Gよりも若干劣るものの、依然と
して高い値を示していることが確認された。また、記号
H´〜R´についても、H〜Rよりも若干低い焼付硬化
性を示した。 (実施例5)
【0050】この実施例では、表1の番号1と同一の組
成で、表8の記号A´の条件で製造した合金板及び番号
33の従来材を用い、常温時効に及ぼす低温加熱処理の
影響について実験を行った。をの結果を図3に示す。
成で、表8の記号A´の条件で製造した合金板及び番号
33の従来材を用い、常温時効に及ぼす低温加熱処理の
影響について実験を行った。をの結果を図3に示す。
【0051】図3から明らかなように、低温加熱処理を
行った本発明方法の場合には、成形性及び常温遅時効性
に優れていることが確認された。これに対し、低温加熱
処理を行わない場合には、常温遅時効性に劣り、成形性
が低下することが確認された。また、従来材の番号33
の場合には、低温加熱処理により優れた常温遅時効性を
示すものの、成形性に劣っていた。 (実施例6)
行った本発明方法の場合には、成形性及び常温遅時効性
に優れていることが確認された。これに対し、低温加熱
処理を行わない場合には、常温遅時効性に劣り、成形性
が低下することが確認された。また、従来材の番号33
の場合には、低温加熱処理により優れた常温遅時効性を
示すものの、成形性に劣っていた。 (実施例6)
【0052】この実施例では、鋳塊の成分をMg:1.
5〜3.5%、Cu:0.3〜0.7%、Si:0.0
5〜0.35%に規定した効果を把握した。既述した合
金のうち、この範囲内に含まれる合金番号1,4,6及
びこの範囲からは外れる合金番号5,7について、実施
例1と同様の条件で厚さ1mmの板材とし、実施例1と
同様の条件で熱処理を行った。
5〜3.5%、Cu:0.3〜0.7%、Si:0.0
5〜0.35%に規定した効果を把握した。既述した合
金のうち、この範囲内に含まれる合金番号1,4,6及
びこの範囲からは外れる合金番号5,7について、実施
例1と同様の条件で厚さ1mmの板材とし、実施例1と
同様の条件で熱処理を行った。
【0053】この熱処理後、室温で1日間及び常温時効
の影響を調査するために3ケ月及び6ケ月間放置し、実
施例1と同様に引張試験及びコニカルカップ試験を実施
した。表9にその結果を示す。
の影響を調査するために3ケ月及び6ケ月間放置し、実
施例1と同様に引張試験及びコニカルカップ試験を実施
した。表9にその結果を示す。
【0054】
【表9】
【0055】表9から明らかなように、上記組成範囲に
含まれる番号1,4,6は常温において6ケ月間保持し
た後でも、降伏強度の上昇がほとんどないことがなく、
また、CCVにも優れており、常温時効が一層遅延され
ていることが確認された。
含まれる番号1,4,6は常温において6ケ月間保持し
た後でも、降伏強度の上昇がほとんどないことがなく、
また、CCVにも優れており、常温時効が一層遅延され
ていることが確認された。
【0056】一方、上記組成範囲から外れる番号5,7
は常温保持後3ケ月間では降伏強度及びCCVに変化な
く常温時効が遅延されているが、常温保持6ケ月後では
降伏強度が上昇し、成形性も低下しているため常温時効
が著しいことが確認された。
は常温保持後3ケ月間では降伏強度及びCCVに変化な
く常温時効が遅延されているが、常温保持6ケ月後では
降伏強度が上昇し、成形性も低下しているため常温時効
が著しいことが確認された。
【0057】
【発明の効果】この発明によれば、プレス成形性及び塗
装焼付硬化性に優れ、かつ良好な常温遅時効性を有する
アルミニウム合金薄板の製造方法が提供される。本発明
によって製造されたアルミニウム薄板は自動車車体等に
好適である。
装焼付硬化性に優れ、かつ良好な常温遅時効性を有する
アルミニウム合金薄板の製造方法が提供される。本発明
によって製造されたアルミニウム薄板は自動車車体等に
好適である。
【図1】常温時効特性に及ぼす低温加熱処理の影響を示
す図。
す図。
【図2】焼付硬化量に及ぼす中間焼鈍後の圧延率の影響
を示す図。
を示す図。
【図3】実施例における番号1及び従来材の番号33に
ついて、常温遅時効性及び成形性に及ぼす低温加熱処理
の影響を示す図。
ついて、常温遅時効性及び成形性に及ぼす低温加熱処理
の影響を示す図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 須賀 正孝 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (72)発明者 大堀 紘一 静岡県三島市加茂48−11 (72)発明者 齊藤 洋 静岡県裾野市千福が丘2−20−10 (56)参考文献 特開 昭57−120648(JP,A) 特開 平2−118049(JP,A) 特開 平1−225738(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22F 1/04 - 1/057 C22C 21/00 - 21/18
Claims (8)
- 【請求項1】 重量%で、Mgを1.5〜3.5%、C
uを0.3〜1.0%、Siを0.05〜0.6%の範
囲で含有し、かつMg/Cuの値が2〜7であり、残部
がAl及び不可避不純物からなるアルミニウム合金の鋳
塊に対し、400〜580℃の範囲内の温度で1段又は
多段の均質化処理を施した後、この鋳塊を熱間圧延及び
冷間圧延することにより所望の板厚とし、次いで500
〜580℃の範囲内の温度まで3℃/秒以上の加熱速度
で加熱してその温度で0〜60秒間保持し、ひき続き1
00℃まで2℃/秒以上の冷却速度で冷却した後、18
0〜300℃の温度で3〜60秒間保持することを特徴
とする常温遅時効性アルミニウム合金薄板の製造方法。 - 【請求項2】 前記鋳塊は、重量%で、Mgを1.5〜
3.5%、Cuを0.3〜0.7%、Siを0.05〜
0.35%の範囲で含有し、かつMg/Cuの値が2〜
7であり、残部がAl及び不可避的不純物からなること
を特徴とする請求項1に記載の常温遅時効性アルミニウ
ム合金薄板の製造方法。 - 【請求項3】 重量%で、0.03〜0.50%のFe
をさらに含有することを特徴とする請求項1又は2に記
載の常温遅時効性アルミニウム合金薄板の製造方法。 - 【請求項4】 重量%で、0.005〜0.15%のT
i,0.0002〜0.05%のBをさらに含有するこ
とを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項に記載の常
温遅時効性アルミニウム合金薄板の製造方法。 - 【請求項5】 重量%で、0.01〜0.50%のM
n,0.01〜0.15%のCr,0.01〜0.12
%のZr,0.01〜0.18%のVの1種又は2種以
上をさらに含有することを特徴とする請求項1乃至4い
ずれか1項に記載の常温遅時効性アルミニウム合金薄板
の製造方法。 - 【請求項6】 重量%で、0.5%以下のZnをさらに
含有することを特徴とする請求項1乃至5いずれか1項
に記載の常温遅時効性アルミニウム合金薄板の製造方
法。 - 【請求項7】 重量%で、0.01〜0.50%のS
n,0.01〜0.5 0%のCd,及び0.01〜0.
50%のInのうち1種又は2種以上をさらに含有する
ことを特徴とする請求項1乃至6いずれか1項に記載の
常温遅時効性アルミニウム合金薄板の製造方法。 - 【請求項8】 前記所望の板厚に圧延される前の中間板
厚まで圧延した後、500〜580℃の範囲内の温度ま
で3℃/秒以上の加熱速度で加熱してその温度で0〜6
0秒間保持し、その後100℃まで2℃/秒以上の冷却
速度で冷却する中間焼鈍を行ない、その後に圧延率5〜
45%の範囲内で冷間圧延を施して所望の板厚とするこ
とを特徴とする請求項1乃至7いずれか1項に記載の常
温遅時効性アルミニウム合金薄板の製造方法。
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