JP2958747B2 - 内面セメントモルタルライニング鋳鉄管防水用組成物および防水性内面セメントモルタルライニング鋳鉄管 - Google Patents

内面セメントモルタルライニング鋳鉄管防水用組成物および防水性内面セメントモルタルライニング鋳鉄管

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JP2958747B2 JP21545695A JP21545695A JP2958747B2 JP 2958747 B2 JP2958747 B2 JP 2958747B2 JP 21545695 A JP21545695 A JP 21545695A JP 21545695 A JP21545695 A JP 21545695A JP 2958747 B2 JP2958747 B2 JP 2958747B2
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Kurimoto Iron Works Ltd
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Kurimoto Iron Works Ltd
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は腐食性の雰囲気下で
使用する鋳鉄管の内面セメントモルタルライニング上に
塗布して水質を維持するなど、防水作用に優れた防水用
組成物、およびこれを塗布した防水性内面セメントモル
タルライニング鋳鉄管に係る。
【0002】
【従来の技術】地中に埋設して形成する管路内に通水し
て家庭や職場に必要な用水を供給する水道管、配水管な
どは、一般に鋳鉄管、鋼管が多用されるが、管内面には
防食用のセメントモルタルライニング(以下単にモルタ
ルと記す)を塗布して通水中の金属腐食に耐性を具える
ように基準化されている。しかし、このモルタル施工後
の課題として、モルタル中のアルカリ成分が通水中へ溶
出して水質を劣化させると共に、モルタル自体の耐久性
も低下させるという現象が避けられない点にある。
【0003】このようなモルタルからのアルカリ成分の
溶出防止のために、モルタル層の表面に高分子材料から
なるいわゆるシールコート材を塗布して通水との接触を
断つ方式が採用され、種々の材質が提案されるようにな
った。これらの従来技術のうち、低分子量であるために
浸透性が良好であり、かつ、反応性も具えたオルガノア
ルコキシシランと、制限されたビニル系重合体からなる
組成物の提案が注目されている。
【0004】たとえば特開昭55−102673号公報
による従来技術は、多孔性の建造物の表面に対する浸透
性防水用組成物に係り、オルガノアルコキシシランと1
0〜50重量%の範囲にあるアクリル酸アルキルエステ
ルを含有するアクリル系樹脂よりなり、従来のオルガノ
アルコキシシラン化合物による防水用の組成物が、耐候
性が不良で撥水効果が短時間で消滅していた欠点を改善
したと謳っている。
【0005】特開昭63−297488号公報の従来技
術は、酸含有のアクリル樹脂と高級脂肪酸金属塩とシラ
ンカップリングとからなる組成物を溶剤中に溶解したシ
ーリング材を提示している。すなわち、従来のモルタル
層上に樹脂皮膜を形成して水道管内面の腐食を防止して
いた発想を転換して、モルタル層上に塗布した成分がモ
ルタル層内へ浸透して吸着され、セメント成分と反応し
てモルタル中のアルカリ分の溶出を防止することに有効
であると謳っている。
【0006】さらに特開平3−285935(特願平2
−86862号)では、実測のガラス転移点(Tg)が
50℃以上で、かつ、重量平均分子量が10000〜1
50000である重合体、ならびにアルキル基および加
水分解可能な基を有する有機ケイ素化合物よりなるメタ
アクリレート系の浸透性防水用組成物を提示している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】水道管のモルタル用の
シールコート材として求められる機能は、単一の条件で
はなくてきわめて多岐に亘ることが一つの特徴と言え
る。具体的には下地モルタルに生じたクラックに対する
シール性、いわゆるフクレ、クロスカット部の経時密
着、低温特性、凍結融解性などが何れも満足できる水準
に達していることがシールコート材としての必須の要件
となる。
【0008】このようなシールコート材の要件を満たし
ているか、多項目に亘る厳密な確性テストを事前に行な
ってみると、たとえば塗布面についての外観テストとし
ては、光沢、カスレ性、クラックの有無、まだら模様の
有無など、試験的に遊離炭酸水を通水した水質テストと
しては、塗膜のフクレ、白化、下地クラックの白化、初
期密着、クロスカット部の密着性などが項目に挙げら
れ、その他5℃における低温密着試験、−20℃から2
0℃への繰返し凍結融解試験など、実際の使用条件より
もかなり厳しいとは言え、シールコート材として求めら
れる特性を確認する試験項目の何れをも十分に余裕を以
て合格するだけの成績が認めらる従来技術は見出されな
かった。
【0009】本発明は以上に述べた課題を解決するに
は、酸基を有する特定組成のアクリル基と、それに反応
するエポキシ基を一部含むオルガノアルコキシシランを
必須成分とする組成物に着目し、前記のシールコート材
としての多岐に亘るすべての要件を満たす内面モルタル
鋳鉄管防水用組成物とこれを塗布してなる防水性内面モ
ルタル鋳鉄管を開発提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明に係る内面モルタ
ル鋳鉄管防水用組成物は、(A)酸モノマーを2重量%
以上20重量%以下含む酸基含有ビニル系重合体と、
(B)エポキシ基含有オルガノアルコキシシランと下記
一般式(1) R1−Si−R2 ‥‥(1) (式中、R1 は炭素数5〜18のアルキル基、R2 は加
水分解可能なトリメトキシ基、トリエトキシ基、メチル
−ジメトキシ基、メチル−ジエキシ基をそれぞれ示
す。)で表されるオルガノアルコキシシランとの混合物
よりなり、かつ、前記(A)/(B)の配合比が0.1
〜10で、かつ、(A)成分と(B)成分の総量中にお
けるエポキシ基含有オルガノアルコキシシランの含有率
が10〜40重量%であることを基本構成とする。
【0011】この基本的構成において、(A)成分のビ
ニル系重合体が、その構成成分としてアクリル酸アルキ
ルエステルを10%を限度として使用してなる重合体で
あってもよい。また、酸モノマーを含むビニル系重合体
の重合は溶液重合によるものであることが好ましい。
【0012】また、前記構成の内面モルタル鋳鉄管防水
用組成物を内面のモルタル上に塗布した防水性内面モル
タル鋳鉄管が優れた実施態様として残ることは言うまで
もない。
【0013】前記の組成物を鋳鉄管内面のモルタルの表
面上に塗布すれば、一般式(1)で表されるオルガノア
ルコキシシラン(以下、「オルガノアルコキシシラン」
と略記する。)がモルタルに浸透して基材を補強すると
共に撥水層を形成する。さらに、酸含有ビニル系重合体
(A)は基材の上層で成膜し、撥水層を保護する樹脂層
を形成すると共に、その酸基が(B)エポキシ基含有オ
ルガノアルコキシシランの中のエポキシ基と反応して、
両層間の接着強度を向上することによって前記の課題を
解決した。
【0014】酸モノマーが2重量%未満であると前記の
エポキシ基含有オルガノアルコキシシランの中のエポキ
シ基と反応するための酸基が過小に失するため、基材表
面上に塗布したときに、クラック、白化、クロスカット
部や、5℃までの経時密着、凍結融解などに対する特有
の作用が期待できない。また、酸モノマーが20重量%
を超えると極性基が過大に失するために、基材表面に塗
布したときには耐水性、フクレ、白化などを改良する作
用が減退する懸念が高い。この結果、酸モノマーの含有
量は2〜20重量%の範囲内に限定することが要件とな
る。
【0015】請求項2に係るアクリル酸アルキルエステ
ルは必ずしも必須の要件ではないが、ビニル系重合体の
構成成分の一つとして加え、塗装時のレベリング作用を
増進して塗装外観上に良い影響を及ぼすことも期待でき
る。しかし、アクリル酸アルキルエステル含有の許容さ
れる上限は10重量%までに留める。アクリル酸アルキ
ルエステルが10重量%を超えると、組成物を基材表面
上に塗布したときに形成される塗膜が、軟弱過ぎて適当
な硬度が得られないので表面の保護層としては不適当と
なるし、耐水性に関してもフクレ、白化などの現象が起
こりやすく悪影響の懸念が高まるので、10重量%を限
度とする。
【0016】ビニル系重合体(A)に対するエポキシ基
含有オルガノアルコキシシランとオルガノアルコキシシ
ランの混合物(B)の配合割合は0.1未満であれば表
面の乾燥性が不良で、光沢、フクレ発生などが起こりや
すく、塗布材として好ましくない。しかし、この配合割
合が10を超えて余りに多くなると、基材に対する浸透
性を失いクロスカットや経時密着の点で特有の作用が得
られない懸念が高いから、結局、本発明に係る組成物の
塗布作用を確保する上では(A)/(B)の配合比率を
0.1〜10.0の範囲内に限定することが要件とな
る。なお、(A)成分と(B)成分の総量中におけるエ
ポキシ基含有オルガノアルコキシシランの含有率は10
〜40重量%である。
【0017】請求項3について言えば、ビニル系重合体
が溶液重合によって重合されることにより、懸濁重合で
多用される界面活性剤のような通常の有機溶剤に溶解し
難い不純物の混入する余地がなくなり、本発明組成物よ
り調整した形で以て、それを塗料として利用し適用する
ときには、はじき、クラック、カスレ性、まだら模様な
どの塗膜外観を損う要素を排し、優れた外観を形成する
作用が現われる。
【0018】
【発明の実施の形態】本発明で適用するビニル系重合体
(A)を構成するモノマー成分としての必須の酸モノマ
ーとしては、 (メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマ
ル酸、イタコン酸もしくはシトラコン酸のような各種の
不飽和モノマーないしジカルボン酸類をはじめ、 さらには、これらの不飽和ジカルボン酸類と、一価ア
ルコール類とのモノエステル類(ハーフエステル類)の
ような種々のα、β−エチレン性不飽和カルボン酸類、 2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒ
ドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキ
シプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチ
ル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メ
タ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピ
ル(メタ)アクリレート、ジ−2−ヒドロキシエチルフ
マレート、モノ−2−ヒドロキシエチル−モノブチルフ
マレートもしくはポリエチレングリコールモノ(メタ)
アクリレートのような各種のα、β−エチレン性不飽和
カルボン酸ヒドロアルキルエステル類とマレイン酸、こ
はく酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ベンゼント
リカルボン酸、ベンゼンテトラカルボン酸、「ハイミッ
クス酸」(日立化成工業株式会社製)、テトラクロルフ
タル酸もしくはドデシニルこはく酸のような各種のポリ
カルボン酸無水物類との付加反応物のような種々のカル
ボキシル基含有ビニル系モノマー類、 ジアルキル (メタ)アクリロイルオキシアルキル ホ
スフェート類、乃至は(メタ)アクリロイルオキシアル
キルアシッドホスフェート類、ジアルキル (メタ)ア
クリロイルオキシアルキル ホスファイト類、乃至は
(メタ)アルキロイルオキシアルキルアシッドホスファ
イト類 の中から適用される。
【0019】0〜10重量%の範囲でビニル系重合体の
成分として使用できるアクリル酸アルキルエステル類と
しては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n
−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、
n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、2
−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリ
レート、が代表例として挙げることができる。
【0020】ビニル系重合体を構成する前記必須の酸モ
ノマー、任意のアクリル酸アルキルエステル以外の成分
としては、 スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ジ
ビニルベンゼンのようなエチレン系芳香族モノマー、 メチルメタアクリレート、エチルメタアクリレート、
n−プロピルメタアクリレート、イソプロピルメタアク
リレート、n−ブチルメタアクリレート、イソブチルメ
タアクリレート、tert−ブチルメタアクリレート、
2−エチルヘキシルメタアクリレート、シクロヘキシル
メタアクリレート、ラウリルメタアクリレートのような
各種の(メタ)アクリレート類、 マレイン酸、フマル酸もしくはイタコン酸のような各
種の不飽和ジカルボン酸類と、1価アルコール類とのジ
エステル類 酢酸ビニル、安息酸ビニルもしくは「ベオバ」(シェ
ル社の製品)のような各種のビニルエステル類、 2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒ
ドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキ
シプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチ
ル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メ
タ)アクリレート、ジ−2−ヒドロキシエチルフマレー
ト、モノ−2−ヒドロキシエチル−モノブチルフマレー
トもしくはポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリ
レートのような各種のα、β−エチレン性不飽和カルボ
ン酸ヒドロアルキルエステル類、 「プラクセルFAまたはFM」(ダイセル化学株式会
社製のカプロラクトン付加モノマー類)のような各種の
α、β−エチレン性不飽和カルボン酸ヒドロキシアルキ
ルエステル類をはじめ、これらの種々の化合物とε−カ
プロラクトンとの付加反応物などがある。
【0021】本発明のビニル系重合体を形成する酸モノ
マーとその他の成分との重合に対しては、塗膜外観向上
のために溶液重合法が好適である。溶液重合法で使用さ
れる溶剤としては、 トルエン、キシレン、「ソルベッソ100」(エクソ
ン社製)または「ソルベッソ150」(同)のような各
種の芳香族炭化水素系溶剤、 「スワゾール300」(丸善石油株式会社製)、「L
AWS」(シェル社製)のような脂肪族−芳香族炭化水
素混合溶剤、 酢酸エチル、酢酸ブチルまたはセロソルブアセテート
のような各種のエステル系溶剤類、 アセトン、メチルエチルケトンまたはメチルイソブチ
ルケトンのような各種ケトン系溶剤類、 「EEP」(アメリカ国イーストマン・コダック社
製)、ブチルセロソルブのような各種のエーテル系溶剤
類、 メタノール、エタノール、プロパノールもしくはn
−、イソ−乃至はsec−ブタノールのような各種のア
ルコール系溶剤類 の単独または混合溶剤がある。
【0022】重合を行なうラジカル重合開始剤類として
特に代表的なもののみ例示するに留めると、アゾビスイ
ソブチロニトリル(AIBN)、ベンゾイルパーオキシ
ド(BPO)、tert−ブチルパーベンゾエート(T
BPB)、tert−ブチルハイドロパーオキシド(T
BPO)、ジ−tertブチルパオキシド(DTBP
O)、またはクメンハイドロパーオキシド(CHP)な
どがある。
【0023】第二成分(B)における実用材料として、
まずエポキシ基含有オルガノアルコキシシランにはγ−
グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシ
ドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシド
キシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプ
ロピルメチルジエトキシシランなどがある。
【0024】また、オルガノアルコキシシランは、下記
一般式(1) R1−Si−R2 ‥‥(1) (式中、R1 は炭素数5〜18のアルキル基、R2 は加
水分解可能なトリメトキシ基、トリエトキシ基、メチル
−ジメトキシ基、メチル−ジエキシ基をそれぞれ示
す。)で表される化合物であり、式中のR1 の具体例と
しては、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチ
ル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドジデル
基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、
ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、およびオクタデシル
基などが挙げられるが、この中では炭素数が6〜10の
アルキル基が好ましい。
【0025】以上に例示した酸含有ビニル系重合体
(A)に対しエポキシ基含有オルガノアルコキシシラ
ン、オルガノアルコキシシランはそれぞれ各1種だけの
単独を選んで混合することもできるし、それぞれが2種
以上の種類を混合して使用することもできる。
【0026】本発明の組成物にはオルガノアルコキシシ
ランの架橋反応を促進させるために、反応が遅いと判断
されるような場合には縮合触媒を配合することもでき
る。縮合触媒としては、たとえば ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジマレエー
ト、ジオクチルスズジラウレート、ジオクチルスズジマ
レエート、オクチル酸スズなどの有機スズ化合物、リ
ン酸、モノメチルホスフェート、モノエチルホスフェー
ト、モノブチルホスフェート、モノオクチルホスフェー
ト、モノデシルホスフェート、ジメチルホスフェート、
ジエチルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオク
チルホスフェート、ジデシルホスフェートなどのリン酸
またはリン酸エステルなどが挙げられる。これらの縮合
触媒は1種だけの単独使用もできるし、2種以上を組合
わせて使用することもできる。縮合触媒の配合量はオル
ガノアルコキシシラン全体の100重量部に対して通常
は5重量部以下が好ましい。
【0027】本発明の組成物には貯蔵安定剤、ハジキ防
止剤、消泡剤、レベリング剤、タレ防止剤、顔料、染料
などを配合することができる。貯蔵安定剤としては、た
とえば オルトギ酸トリメチル、オルトギ酸トリエチルなどの
オルトギ酸トリアルキル メチルアルコール、ブチルアルコール、アミルアルコ
ール、セロソルブなどのアルキルアルコール類 が挙げられる。また、ハジキ防止剤、レベリング剤とし
ては、変性シリコーンが最も一般的であるし、消泡剤と
してはシリコーン化合物、特殊アクリル系重合物などが
一般的である。
【0028】本発明の組成物はそのまま直接モルタル層
上などの基材表面に塗布するのではなく、塗装作業性を
考慮しながら有機溶剤でたとえば有効成分が10〜30
%程度となるように希釈して使用する。この場合の希釈
溶剤としては トルエン、キシレン、「ソルベッソ100」(エクソ
ン社製)または「ソルベッソ150」(同)のような各
種の芳香族炭化水素系溶剤類、 「スワゾール310」(丸善石油株式会社製)、「L
AWS」(シェル社製)のような脂肪族−芳香族炭化水
素混合溶剤、 酢酸エチル、酢酸ブチルまたはセロソルブアセテート
のような各種のエステル系溶剤類、 アセトン、メチルエチルケトンもしくはメチルイソブ
チルケトンのような各種のケトン系溶剤類、 「EEP」(アメリカ国イーストマン・コダック社
製)もしくはブチルセロソルブのような各種のエーテル
系溶剤類、 メタノール、エタノール、プロパノールもしくはn
−、イソ−乃至はsec−ブタノールのような各種のア
ルコール系溶剤類 中の単独または混合溶剤が使用できる。
【0029】本発明に係る組成物は前記のように適宜塗
装性を考慮した調整を加えた後、水道管、配水管、など
に使用するモルタルライニングを施した鋳鉄管のモルタ
ルライニング用シールコート材として好適に使用でき
る。
【0030】
【実施例】本発明の構成要件に基づいて具体的な組成物
を作成して実施例1〜4とし、要件を外れた組成物を比
較例1〜5として作成した。つぎに前記実施例、比較例
を塗料として希釈調整して実際の鋳鉄管モルタルライニ
ング上へ塗布して苛酷な条件下で確性試験を行ない、そ
れぞれの結果を比較検討して良否の判定を行なった。こ
の試験を纏めれば、本発明に係る組成物の防水性の有無
を立証されることは明らかである。
【0031】実施例、比較例を作成するに当って、まず
その基本材として参考例1〜4を作成した。参考例は本
発明の構成要件のうち、ビニル系重合体(A)に関わる
部分を構成するものであり、本発明成立の必須の要件で
ある酸モノマーが含まれる参考例1〜2と、含まれない
参考例3〜4とで形成され、後述する実施例と比較例の
基本材となる試料とした。
【0032】参考例1は窒素で器内の空気が置換された
反応容器に、600部のトルエンを仕込んで90℃に昇
温してから、400部のスチレン、325部のメチルメ
タアクリレート、150部のn−ブチルメタアクリレー
ト、75部のエチルメタアクリレート、および酸モノマ
ーとして50部のメタアクリル酸と、5.0のベンゾイ
ルパーオキシド(BPO)と、622部のトルエンから
なる混合物を、3時間に亘って滴下し、滴下終了後も同
温度に5時間保持して不揮発分が45.0%で、かつ、
25℃におけるガードナー粘度がZ3で酸価8.0であ
る透明な樹脂溶液を得た。
【0033】参考例2は、参考例1のスチレンを300
部に減量し、メタアクリル酸を100部に増量し、更に
n−ブチルアクリレートを50部使用し、他の原料,方
法は参考例1と同様にして反応を行ない、不揮発分が4
5.0%で、かつ、25℃におけるガードナー粘度がZ
4 で酸価が16.0である透明な樹脂溶液を得た。
【0034】参考例3は参考例1のメタアクリル酸の代
りに50部のメチルメタアクリレートを使用した以外
は、参考例1と同様の成分、操作により不揮発分が4
5.0%であり、かつ、25℃におけるガードナー粘度
がZ3で酸価0.4なる透明な樹脂溶液を得た。
【0035】参考例4は窒素で器内の空気が置換された
反応容器に600部のトルエンを仕込んで90℃に昇温
してから、750部のメチルメタアクリレート、250
部のエチルアクリレート、2.5部のベンゾイルパーオ
キシド(BPO)と、622部のトルエンからなる混合
物を、3時間に亘って滴下し、滴下終了後も同温度に5
時間保持して不揮発分が45.0%で、かつ、25℃に
おけるガードナー粘度がZ3で酸価0.4である透明な
樹脂溶液を得た。参考例4は成分(A)における必須成
分である酸モノマーを含まず、任意成分であるアクリル
酸アルキルエステル(エチルアクリレート)を10重量
%を越えて含む点で参考例1〜3と異なる。
【0036】実施例は前記の参考例1で得られた酸基含
有ビニル系重合体に、さらに、本発明構成の他の必須成
分である成分(B)をも加えて調整した形のものである
というのに対して、比較例の方は、(A)および(B)
なる両必須構成成分のうちの、少なくとも一つを欠如す
る形のものである。
【0037】実施例1は参考例1で得られたビニル系重
合体222部とオルガノアルコキシシランとしてのn−
ヘキシルトリメトキシシラン50部、エポキシ基含有オ
ルガノアルコキシシランとしてのγ−グリシドキシプロ
ピルトリメトキシシラン50部の他、アクリル系消泡剤
5部、変性シリコン系ハジキ防止剤5部、およびトルエ
ン578部、アセトン100部を混合し、有効成分20
%のシールコート材を得た。加温用の試験材は、呼び径
100mm、長さ約100mmのモルタルライニング鋳
鉄管の養生直後に約80℃の温水に浸漬した後引き上
げ、モルタル表面に浮き水がなく乾燥した状態で徐々に
該鋳鉄管を回転しつつ前記のシールコート材を刷毛で軸
方向に約100g/m2の割合で塗布した。一方常温用
の試験材は、呼び径100mm、長さ約100mmのモ
ルタルライニング鋳鉄管を養生直後、徐々に鋳鉄管を回
転しつつ前記のシールコート材を刷毛で軸方向に約10
0g/m2の割合で塗布して作成した。
【0038】実施例2は参考例1で得られたビニル系重
合体222部とn−ヘキシルトリメトキシシラン80
部、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン20
部、アクリル系消泡剤5部、変性シリコン系ハジキ防止
剤5部、およびトルエン578部、アセトン100部を
混合し、有効成分20%のシールコート材を得た。この
シールコート材を実施例1と同様の手順で鋳鉄管のモル
タル表面に塗布して作製した。
【0039】実施例3は参考例1で得られたビニル系重
合体222部とn−ヘキシルトリメトキシシラン20
部、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン80
部、アクリル系消泡剤5部、変性シリコン系ハジキ防止
剤5部、およびトルエン578部、アセトン100部を
混合し、有効成分20%のシールコート材を得た。この
シールコート材を実施例1と同様の手順で鋳鉄管のモル
タル表面に塗布して作製した。
【0040】実施例4は、参考例2で得られたビニル系
重合体222部と、n−ヘキシルトリメトキシシラン5
0部、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン5
0部、アクリル系消泡剤5部、変性シリコン系ハジキ防
止剤5部、およびトルエン578部、アセトン100部
を混合し、有効成分20%のシールコート材を得た。こ
のシールコート材を実施例1と同様の手法で鋳鉄管のモ
ルタル表面に塗布して作製した。
【0041】比較例1は参考例3で得られたビニル系重
合体222部とn−ヘキシルトリメトキシシラン50
部、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン50
部、アクリル系消泡剤5部、変性シリコン系ハジキ防止
剤5部、およびトルエン578部、アセトン100部を
混合し、有効成分20%のシールコート材を得た。この
シールコート材を実施例1と同様の手順で鋳鉄管のモル
タル表面に塗布して作製した。
【0042】比較例2は参考例3で得られたビニル系重
合体222部とγ−グリシドキシプロピルトリメトキシ
シラン100部、アクリル系消泡剤5部、変性シリコン
系ハジキ防止剤5部、およびトルエン578部、アセト
ン100部を混合し、有効成分20%のシールコート材
を得た。このシールコート材を実施例1と同様の手順で
鋳鉄管のモルタル表面に塗布して作製した。
【0043】比較例3は参考例3で得られたビニル系重
合体222部とn−ヘキシルトリメトキシシラン100
部、アクリル系消泡剤5部、変性シリコン系ハジキ防止
剤5部、およびトルエン578部、アセトン100部を
混合し、有効成分20%のシールコート材を得た。この
シールコート材を実施例1と同様の手順で鋳鉄管のモル
タル表面に塗布して作製した。
【0044】比較例4は参考例1で得られたビニル系重
合体222部と、γ−グリシドキシプロピルトリメトキ
シシラン100部、アクリル系消泡剤5部、変性シリコ
ン系ハジキ防止剤5部、およびトルエン578部、アセ
トン100部を混合し、有効成分20%のシールコート
材を得た。このシールコート材を実施例1と同様の手順
で鋳鉄管のモルタル表面に塗布して作製した。
【0045】比較例5は参考例1で得られたビニル系重
合体222部とn−ヘキシルトリメトキシシラン100
部、アクリル系消泡剤5部、変性シリコン系ハジキ防止
剤5部、およびトルエン578部、アセトン100部を
混合し、有効成分20%のシールコート材を得た。この
シールコート材を実施例1と同様の手順で鋳鉄管のモル
タル表面に塗布して作製した。以上説明した実施例1〜
4と比較例1〜5および後述する比較例11の成分構成
を纏めて表示すると表1のようになる。
【0046】
【表1】
【0047】作成した実施例、比較例のシールコート材
を、鋳鉄管モルタルライニング表面に説明通りの塗布を
行なった結果の各種試験結果を整理すれば表2のように
集約される。
【0048】
【表2】
【0049】確性試験をより詳細に、より実体的に実施
して実使用に対する耐性をより明確化するために、さら
に実施例5〜8と比較例6〜11を実施した。実施例5
は実施例1で説明したように調整したシールコート材の
二次的な塗布試験であり、呼び径100mm、長さ約1
000mmのモルタルライニング鋳鉄管の養生直後に約
80℃の温水に浸漬した後引き上げ、モルタル表面に浮
き水がなく乾燥した状態で1分間に約480回転しつつ
前記のシールコート材を約125g/m2の割合でスプ
レーした。このときのモルタル表面温度は約60℃であ
った。引続きこのシールコート材をスプレーしたモルタ
ルライニング管を室温で4日間乾燥した後、一端をポリ
塩化ビニリデンフィルムで覆った良質のゴム栓で蓋を装
着し、管中に残留塩素約2ppmの精製水を充満して蓋
を被せ、常温で24時間静置した水を試験水としてJI
S K 6762水道用ポリエチレン管(日本水道協会
水道ダクタイル鋳鉄管モルタルライニング指導要領
シールコートの溶解試験方法)に準拠して水質(pH、
残留塩素の減少、過マンガン酸カリウム消費量)の試験
を行なった。また、同時に1500ppmの遊離炭酸を
含むpH約4.7の水による通常試験を14日間行な
い、塗膜のフクレ、白化、下地クラック部の白化などの
異状の有無を調べた。このような経過による試験材を実
施例5とする。
【0050】実施例6は実施例2によって調整したシー
ルコート材を前記実施例5と同様の手順で作成した試験
材であり、実施例7は実施例3によるシールコート材、
実施例8は実施例4によるシールコート材をそれぞれ実
施例5と同様に処理して作成した試験材である。
【0051】比較例についても全く同様であって、比較
例6は比較例1によるシールコート材を実施例5に記述
した手順によって鋳鉄管のモルタルライニング表面上に
塗布した試験材であり、以下順に比較例7は比較例2
の、比較例8は比較例3の、比較例9は比較例4の、比
較例10は比較例5のそれぞれのシールコート材による
実施例5と同様な試験材である。
【0052】比較例11は前記の参考例4で得られたビ
ニル系重合体222部とn−ヘキシルトリメトキシシラ
ン50部、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラ
ン50部、アクリル系消泡剤5部、変性シリコン系ハジ
キ防止剤5部、およびトルエン578部、アセトン10
0部を混合し、有効成分20%のシールコート材を得
た。このシールコート材を実施例5に記述した手順によ
って作成した試験材である。
【0053】表3は以上の試験材による試験結果を整理
して纏めたものであり、すべての試験項目において評価
基準に達しているのは本発明の実施例に限られ、本発明
の要件を満たしていない比較例はすべて何れかの項目に
おいて低い評価に甘んじざるを得ないというきわめて対
照的な結果を明示している。
【0054】
【表3】
【0055】
【発明の効果】本発明に係る内面モルタル鋳鉄管防水用
組成物は、モルタル上に塗布されると、オルガノアルコ
キシシランが基材に浸透して基材の強化と撥水層を形成
し、ビニル系重合体が基材の上層に成膜して前記の撥水
層を保護する樹脂層を形成するという相乗作用が発生す
るが、特に本発明の際だった効果としては、酸モノマー
に含まれる酸基とオルガノアルコキシシランと結合した
エポキシ基とが反応して両層間の接着強度を向上する点
であり、このため、良好な耐水性を具えるビニル系重合
体の機能は従来技術よりも遥かに持続する効果が得られ
る。そのため、この内面モルタル鋳鉄管防水用組成物を
適用した防水性内面モルタル鋳鉄管は、長期に亘って流
水に曝されても水中に有機物を溶出することがなく、家
庭用、業務用の水質を完全に保証する効果が著しい。ま
た、ビニル系重合体のアルカリシール性も高く、モルタ
ルからのアルカリ成分の溶出を阻止する機能が、前記の
反応によってさらに強化し従来技術を遥かに凌駕する耐
久性が得られる。塗膜の硬度が高いことも前記の酸とエ
ポキシとの架橋を示唆するものと解釈され、堅牢で化学
的に安定した塗膜の構成が水質の保全に理想的な条件を
形成していると高く評価できる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C08K 5/54 C08K 5/54 C09K 3/10 C09K 3/10 G 3/18 104 3/18 104 (72)発明者 道浦 吉貞 大阪府大阪市西区北堀江1丁目12番19号 株式会社栗本鐵工所内 (72)発明者 喜多川 眞好 大阪府大阪市西区北堀江1丁目12番19号 株式会社栗本鐵工所内 (72)発明者 徳永 幸次 大阪府堺市新金岡町3−4−1−202 (72)発明者 太田 克己 大阪府泉大津市条南町4−17−307 (56)参考文献 特開 昭63−301286(JP,A) 特開 昭62−187749(JP,A) 特開 昭63−210157(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C08L 33/08 B05D 5/00 B05D 7/24 302 C04B 41/63 C08K 5/54 C09K 3/10 C09K 3/18 104

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (A)酸モノマーを、2重量%以上20
    重量%以下含む、酸基含有ビニル系重合体と、(B)エ
    ポキシ基含有オルガノアルコキシシランと下記一般式
    (1) 1 −Si−R 2 ‥‥(1) (式中、R 1 は炭素数5〜18のアルキル基、R 2 は加
    水分解可能なトリメトキシ基、トリエトキシ基、メチル
    −ジメトキシ基、メチル−ジエキシ基をそれぞれ示
    す。)で表される オルガノアルコキシシランとの混合物
    とよりなり、しかも、前記(A)/(B)なる配合比が
    0.1〜10.0で、かつ、(A)成分と(B)成分の
    総量中におけるエポキシ基含有オルガノアルコキシシラ
    ンの含有率が10〜40重量%であることを特徴とする
    内面セメントモルタルライニング鋳鉄管防水用組成物。
  2. 【請求項2】 請求項1において、(A)成分のビニル
    系重合体が、その構成成分としてアクリル酸アルキルエ
    ステルを10%を限度として使用してなる重合体である
    ことを特徴とする内面セメントモルタルライニング鋳鉄
    防水用組成物。
  3. 【請求項3】 請求項1または2においてビニル系重合
    体の重合が溶液重合によることを特徴とする内面セメン
    トモルタルライニング鋳鉄管防水用組成物。
  4. 【請求項4】 請求項1または2に記載した内面セメン
    トモルタルライニング鋳鉄管防水用組成物を鋳鉄管内面
    のセメントモルタルに塗布したことを特徴とする防水性
    内面セメントモルタルライニング鋳鉄管
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