JP2933799B2 - 高温耐酸化性溶射材料およびそれの溶射皮膜 - Google Patents
高温耐酸化性溶射材料およびそれの溶射皮膜Info
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Description
ン、ジェットエンジンおよびディーゼルエンジンなどの
高温被曝部の被覆材料として好適な高温耐酸化性に優れ
た溶射材料およびその溶射皮膜である皮膜部材に関する
ものである。またこの発明は、高炉、熱処理炉などの高
温部材として、さらにはロケット、スペースシャトルな
どの耐熱部材としても適合するものである。
びジェットエンジンなどの原動機関では、熱効率の向上
を目的として精力的な開発研究が進められていることは
周知のとおりである。しかし、熱効率の向上は同時に、
構成部材に対する過酷な熱負荷の増大を強いる結果とも
なっている。従って、これらの原動機関の高温部に使用
される金属材料としては、使用環境下で高い機械的強度
を有すると共に、耐高温酸化性および耐高温腐食性に優
れることが要求される。特にV、NaおよびSなどの不純
物を含む燃料を使用する場合には、これらの不純物元素
が高温状態で金属材料を激しく腐食損耗させるので、か
ような環境においても長時間安定した状態を維持するこ
とが必要である。
r,Ni,Mo,Co,W,Ta,AlおよびTiなどの非鉄金属元
素を主成分とする、いわゆる超合金と呼ばれる耐熱合金
類が多数開発されてきた。しかし、これらの超合金類
は、高温強度が最優先されるため、強度の向上に役立た
ない金属元素の添加は必然的にその割合が低く抑えられ
る傾向にある。このような強度の向上に役立たない金属
元素の代表は、Cr, Al, Si等であるが、一方でこれらの
元素は耐酸化性、耐高温腐食性には優れていることか
ら、上記のような高温強度を優先した超合金は、耐酸化
性や耐高温腐食性には乏しいのが一般的である。
する超合金部材に対しては、予めCrやAl、Siなどの金属
あるいは合金をその表面に溶射法や拡散浸透法などによ
って被覆し、超合金の化学的損傷に対する抵抗力の低下
を補償している。しかし、溶射法では、溶射材料の種類
は任意に選択できる利点はあるものの、大気中で処理し
た皮膜は、多孔質で密着性に乏しいという欠点がある。
この点、近年、実質的に空気(酸素)を含まない低圧の
アルゴンガス雰囲気中でプラズマ溶射を行う方法(減圧
プラズマ溶射法)が開発され、大気溶射皮膜が有する欠
点は大幅に改善されてきたが、昨今の高温被曝環境条件
下では、かような皮膜でももはや十分とは言えなくなっ
てきた。
Siなどをそれぞれ単独で処理する場合は比較的容易では
あるが、耐酸化性および耐高温腐食性が十分とは言い難
く、しかもこの処理法では1000℃前後の高温状態で処理
する必要があることから、超合金母材の機械的性質が低
下するという欠点がある。このような状況に対し、特開
昭55−104471号公報では、耐酸化性金属であるNi−Cr合
金を溶射した後、AlやCr等の拡散浸透処理を行う方法を
提案している。しかしながら、この方法は、溶射皮膜の
密着性や緻密性の向上には見るべきものがあるけれど
も、拡散浸透法に特有の高温下での処理が避けられない
ため、やはり母材の機械的性質の低下は免れ得ない状況
にある。
材料そのものの開発も活発に行われている。その代表的
なものがMCrAlX(ここでMはNi,Co,Feまたはこれら
の複数金属。Xは,Y,Hf,Ta, Cs,Ce,La,Thなどの
活性元素)で示される耐熱合金材料である。このMCrAl
X合金を減圧プラズマ溶射することによって、極めて高
度な耐酸化性および耐高温腐食性に富む皮膜の形成が可
能となり、高温部材の性能は一段と向上した。また、こ
の種のMCrAlX合金溶射皮膜を形成した後、さらにCr、
Al等の拡散浸透処理を行う方法も提案されている(例え
ば特公昭61-10034号公報)。
法と拡散浸透処理との組み合わせによっても、今日の高
温化されたガスタービン部材ではその耐久性が十分とは
言えず、またいかに優秀な溶射皮膜を用いても拡散浸透
処理と組み合わせる限り、母材の機械的性質の低下が免
れ得ないところに問題を残していた。
題を有利に解決するもので、MCrAlX合金の溶射皮膜と
しての性能を向上させると共に、高温加熱による超合金
母材の機械的性質の低下を招くことなしに、拡散浸透法
を併用した場合と同等の皮膜特性すなわち高度な緻密性
と母材への密着性とを得ようとするものである。
は次のとおりである。 (1) 市販されている各種組成のMCrAlX合金は、すべて
合金化されており、その融点は非常に高い (1400℃前
後) 。このため溶射状態では皮膜に気孔が存在するの
で、これを真空中で1000〜1100℃に加熱し、皮膜を構成
する溶射粒子を相互に結合させて気孔率を低下させると
共に、母材金属中へも拡散させることによって、皮膜の
密着性の向上を図っている。このようにMCrAlX合金を
減圧プラズマ溶射しても、なおかつ高温の熱処理が必要
であるため、これに伴う母材金属の機械的性質の低下や
経費の増大が問題となる。
AlX合金が提案されているが、かようなMCrAlX合金に
関する特許出願を列挙すると次のとおりである。 特開昭58−37145 号、同58−37146 号、同59−6352号、 同59−89745 号、 同50−29436 号、同51−30530 号、同50-158531 号、同51−10131 号、 同52−33842 号、同55-115941 号、同53-112234 号、同52−66836 号、 同52−88226 号、同53−33931 号、同58−14135 号、同56-108850 号、 同54−16325 号、同57-155338 号、同52−3522号、 同54−66342 号、 同59-118847 号、同56−62956 号、同51−33717 号、同54−65718 号、 同56−93847 号、同51−94413 号、同56-119766 号、同55-161041 号、 同55-113871 号、同53−85829 号、同57-185955 号、同52-117826 号、 同60-141842 号、同57-177952 号、同59−1654号各公報。
MCrAlX合金の成分組成範囲について整理すると、概ね
次のとおりである。 M成分:Ni (0〜75%) 、Co (0〜70%) 、Fe (0〜30%) Cr成分:5〜10% Al成分:1〜29% X成分:Y(0〜5%)、Hf (0〜10%) また上記成分以外に、 Ta (1〜20%) 、Si( 0.1〜14%) 、B(0〜 0.1%)
、C(0〜0.25%) 、Mn(0〜10%) 、Zr(0〜3
%)、W(0〜 5.5%) およびPt(0〜20%)などが添
加されている。
合金化された後、溶射粒子として製造されるため、合金
を構成する金属元素はすべて冶金反応によって合金(含
金属間化合物)状態にあるので、融点の低いAl(660
℃)−ただし、このAlは完全に固溶して合金化Alと化し
ている−を含みながらも、合金全体としての融点は1400
℃前後となっている。このため、MCrAlX合金を減圧プ
ラズマ溶射後、 900℃〜1000℃程度の温度に加熱して
も、皮膜を構成するMCrAlX合金粒子の相互結合反応や
母材合金との接合反応は緩慢であり、また不十分でもあ
る。それ故、真空中にて1100℃前後の高温での熱処理が
不可欠であり、多大のエネルギーおよび労力の消費と共
に、母材合金の機械的性質の低下を余儀なくされていた
のである。
拡散浸透処理する場合の問題ガスタービン翼材(Ni基合
金)を例にとれば、前掲したような従来のMCrAlX合金
を用いて溶射皮膜を形成し、その後CrやAlを拡散浸透処
理した場合、この翼材をガスタービン実機として使用す
るには、次に示すような熱履歴を経るのが一般的であ
る。MCrAlX合金溶射後、Cr、Al拡散浸透処理(900〜
1100℃、 5〜10h加熱)。ついで、母材(Ni基合金)
の溶体化処理(1050〜1150℃、 1〜 8h)。その後、
母材の時効処理( 750〜900 ℃、1〜10h)。すなわ
ち、溶射後のCr、Al拡散浸透処理によって、皮膜の緻密
性や密着性は向上するものの、 900〜1100℃に加熱する
ことによって母材の機械的強度が低下することから、
, の熱処理が余儀なくされ、従ってここでもエネル
ギーと労力の無駄な消費がある。
問題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、所期した目的
を達成するためには、真空溶解後これを粉末化する過程
あるいは粉末製造後、別途に、遊離状態の金属Al粉を添
加することが、極めて有効であることの知見を得た。こ
の発明は、上記の知見に立脚するものである。
りである。 1.Co、Ni、CrおよびAlのうちから選んだ少なくとも1
種を含有する溶射用合金材料に、遊離状態の金属Alを
0.2〜25wt%(以下単に%で示す)の範囲で含有させた
ことを特徴とする高温耐酸化性溶射材料。 2.上記1に記載の溶射材料を、基材表面に溶射して得
られる高温耐酸化性溶射皮膜。 3.Co、Ni、CrおよびAlのうちから選んだ少なくとも1
種を含み、かつY、Hf、Ta、Cs、Ce、La、Th、W,Si 、
MnおよびBのうちから選んだ1種または2種以上を含有
する溶射用合金材料に、遊離状態の金属Alを 0.2〜25%
の範囲で含有させたことを特徴とする高温耐酸化性溶射
材料。 4.上記3に記載の溶射材料を、基材表面に溶射して得
た高温耐酸化性皮膜部材。 5.上記2または4において、基材表面に被成した皮膜
部材が、溶射後、 700℃以上の温度で1時間以上の熱処
理を経たものである高温耐酸化性皮膜部材。
下、単に遊離金属Alという) 粉を添加した合金粉末で
は、減圧プラズマによる溶射後、 700℃程度の比較的低
温に加熱するだけで、皮膜中の融点の低い添加した遊離
金属Al(660 ℃) が溶融するため、溶射皮膜を構成する
粒子の相互結合力と母材への密着性が向上し、また低温
加熱で済むので、従来、溶射成膜後に高温熱処理や拡散
浸透処理法と組み合わせた場合の合金母材の機械的性質
の低下も回避でき、さらには工程の簡略化、省エネルギ
ーなどによるコストダウンに資するところも大きい。
属Alを添加した場合におけるプラズマ溶射皮膜の作用機
構について説明する。MCrAlX合金は、その化学成分か
ら解かるように、酸素との化学的親和力の強い金属元素
から構成されているため、これを合金化するには真空溶
解炉を用いるのが一般的である。この真空溶解炉で溶解
されたMCrAlX合金は、溶融状態において相互に冶金反
応を起こし、多くの合金や金属間化合物 (例えばNiAl,
Ni3Al,Co3Ti, Ti3Al, FeAl, TiAl3)をつくることから、
これを溶射粉末にしても、その物理化学的性質は合金や
金属間化合物としての性質を示すこととなる。このため
MCrAlX合金中に融点の低いAl成分が含まれていなが
ら、その融点は合金としての融点 (1400℃前後) を示す
ため、溶射後これを加熱処理によって緻密化するために
は、少なくとも1100℃前後に加熱する必要があり、しか
もそれでもなお十分な粒子結合度は得られない。
空溶解によって製造されたMCrAlX合金を溶射材料とし
て粉末化する過程あるいは粉末とした後、これに金属Al
粉末を添加したものであるので、合金化したAl成分とし
てではなく、金属Alとしての物理化学的性質を示す。す
なわち、この発明の金属Al添加MCrAlX合金は、これを
溶射成膜した状態では、完全に合金化したMCrAlX合金
と金属Alとがそれぞれ有する2種類の物理化学的性質を
併せ持つという特徴がある。このため 700℃程度に加熱
しただけでも皮膜の緻密化は十分行われる。
は、金属Alを酸化させないために、減圧プラズマ溶射法
で溶射するのが最適であるが、大気圧プラズマ溶射にお
いても、溶射雰囲気をAr,N2,He等として空気の混入を
遮断すれば、容易に行うことができる。さらに、減圧中
におけるプラズマフレームは、同一出力の大気中に比べ
ると、フレームの速度が上昇すると共に温度は低下する
ので、低融点の金属Alを含むこの発明のMCrAlX合金の
溶射には、この意味においても好適である。
射中においても金属Alが溶融状態にあるため、溶射成膜
した状態においても同じ組成のMCrAlX合金の皮膜に比
べるとはるかに気孔が少ない良質な皮膜が得られるとい
う特徴がある。ここに、この発明における溶射基材は、
Co、Ni、CrおよびAlのうちから選んだ少なくとも2種を
含有する、いわゆるMCrAlX合金と呼ばれる合金素材で
あり、その好適成分組成は、以下に示すとおりである。 M成分:Ni(0〜75%) , Co(0〜70%) , Fe(0〜30%) Cr成分:5〜15% Al成分:1〜29% X成分:Y(0〜5%), Hf(0〜10%), Ta(1〜20%), Si(0.1〜14%), B(0〜0.1 %), C(0〜0.25%), Mn(0〜10%), Zr(0〜3%), W(0〜5.5 %), Pt(0〜20%)
量は、合金材料に対し 0.2〜25%の範囲とする。という
のは、Alは比重(2.7)が軽いこともあって、 0.2%の添
加でも効果が認められ、一方MCrAlX合金において合金
化Al量の少ない合金たとえば10%Ni−57%Co−25%Cr−
3%Al− 0.5%Y−5%Ta合金などに対しては、25%添
加しても優れた皮膜が得られるからである。なお、MCr
AlX合金に遊離金属Alを添加する方法としては、合金粉
末を用いたメカニカルアロイング法やメカノフュージョ
ン法が適しているが、蒸着法によっても製造可能であ
り、その純度も市販のAl(JISH2102の3種99%以上) 程
度であれば良く、Al地金に含まれる不純物元素には特に
影響されないので、これを限定する必要はない。
X合金粉末の粒子径は、10〜80μmが適当である。とい
うのは10μm より小さいと溶射時にヒューム(煙霧)と
なるほか、溶射ガンへの安定供給が困難となり、一方80
μm より大きい場合には未溶融粒子が多くなり、得策で
はなくなるからである。
Al− 0.5%Y合金粉末に対し、メカノフュージョン法に
よって金属Al粉末を 0.2〜30wt%となるように添加した
この発明の溶射材料を用い、減圧プラズマ溶射法によっ
て 300μm 厚に成膜した後、溶射直後および真空炉中に
て 700, 800, 900, 1000℃でそれぞれ1時間加熱した後
の皮膜の気孔率について調査した結果を示す。なお、金
属Alの添加量は、以下の要領で算出した。
加しないMCrAlX合金で形成した皮膜では溶射直後の気
孔率は 0.5〜1.2 %であり、これに1000℃,1hの加熱
を施しても気孔率は 0.4〜0.7 %に改善されるに過ぎな
い。これに対し、この発明の溶射材料による皮膜では、
溶射直後でも気孔率は 0.1〜0.3 %程度であり、さらに
700℃, 1hの低温加熱によっても気孔率は0.08〜0.1
%と激減し、格段に緻密化されている。
中に添加されている金属Alの融点が低いため、溶射中や
成膜後の加熱によって溶融し、気孔部を閉塞する作用に
よるものと考えられる。しかしながら、あまりに多量の
遊離金属Alの添加(30%)は、形成される溶射皮膜が軟
質となり、耐高温酸化性は向上するものの、耐エロージ
ョン性が劣化するので好ましいものではない。それ故、
MCrAlX合金に対する遊離金属Al粉末の添加量は、 0.2
〜25%の範囲に制限したのである。
Co−残りNi) を外径:15mm、長さ:100 mmの丸棒試験片
に仕上げ、これにこの発明および市販のMCrAlX合金粉
末を用い、減圧プラズマ溶射法(Ar気圧:100 〜200mba
r)によって 200μm 厚に成膜した。この発明に従って遊
離金属Alを添加してなるMCrAlX合金系溶射材料の組成
は次のとおりである。 (A)10Ni-56.5Co-25Cr-3Al-5Ta-0.5Y に対し、Alが8
%になるように添加。 (B)32Ni-38.5Co-21Cr-8Al-0.5Y に対し、Alが8%に
なるように添加。 (C)76.5Ni-17Cr-6Al-0.5Yに対し、Alが5%になるよ
うに添加。 (D)63.4Co-23Cr-13Al-0.6Y に対し、Alが5%になる
ように添加。 また、比較例のMCrAlX合金系溶射材料としては、上記
の(A)〜(D)において遊離金属Alを含有させないも
の(A′)〜(D′)を用いた。
膜後、次のような方法によって皮膜の性状と性能を調査
した。 (1) 成膜直後の皮膜断面の光学顕微鏡観察。 (2) 成膜後、真空中で 750℃に2時間加熱し、その後の
皮膜断面の光学顕微鏡観察。 (3) 成膜後、電気炉中 (1000℃×1h)で加熱し、これ
を水中(20℃) に投入する操作を繰り返し、皮膜の一部
(3mm×3mm)が剥離したときの回数(耐熱衝撃性) 。 得られた結果を表2に示す。
(A′)〜(D′)(試験片No.5〜8)皮膜の溶射直後の
気孔率は 0.5〜1.2 %であり、その後に真空中で 750
℃, 2hの加熱を施した場合でも気孔率は 0.2〜0.7 %
までしか低下しなかった。これに対し、この発明の遊離
金属Alを添加したMCrAlX合金系溶射材料を用いた
(A)〜(D)(試験片No.1〜4)皮膜の気孔率は、溶射
直後であっても 0.1〜0.4 %と低く、さらに真空中で 7
50℃×2h加熱した場合には、気孔率は0.01〜0.1 %ま
で低下すると共に、Ni基母材に対するAlの拡散現象も認
められた。また、1000℃×1h→水中投入を繰り返す熱
衝撃試験結果を見ると、比較例の(A′) 〜(D′)皮
膜では15〜18回の繰り返しによって、皮膜の一部に剥離
が認められたのに対し、この発明の溶射材料による皮膜
(A)〜(D)は25回の熱衝撃を繰り返しても健全な状
態を呈し、強い密着力を有していることが確認された。
m、厚み:3mmの試験片を作成した後、実施例1に供試
したこの発明の金属Al添加MCrAlX合金溶射材料および
金属Al無添加のMCrAlX合金を用い、減圧プラズマ溶射
によって 300μm厚に成膜した。この試験片を用いて、
次に示すような高温腐食試験を実施した。 (1) バナジウム腐食試験:薬剤の組成:80%V2O5−20%NaCl 温度・時間:900 ℃×3h (2) 高温硫化腐食試験 :薬剤の組成:90%Na2SO4−10%NaCl 温度・時間:1000℃×4h なお、両試験とも薬剤の塗布量は、溶射皮膜1cm2 当た
り25mg(25mg/cm2)とし、これを電気炉中で所定の温度
・時間を維持した後、取り出し、腐食部の皮膜断面を検
鏡し、腐食薬剤の成分の侵入深さをX線マイクロアナラ
イザーによって観察することによって、皮膜の高温耐食
性を調査した。得られた結果を表3に整理して示す。
(A′)〜(D′)皮膜の断面では、腐食薬剤の成分
(バナジウム腐食ではVとS、高温硫化腐食ではSとC
l)が比較的深く内部へ侵入し(20〜70μm )ていたの
に対し、この発明の溶射皮膜(A)〜(D)では5〜20
μm の侵入に止まっており、耐高温腐食性に対しても優
れていることが確認された。この理由は、比較例の皮膜
では比較的気孔率が高いため腐食成分がこの気孔を通し
て内部に侵入したのに対し、この発明の膜は緻密である
ため、腐食成分の内部侵入が阻止された結果であると考
えられる。
AlX合金の化学成分は、Co,Ni,Cr,Alなどを含むもの
であるが、前述したようにMCrAlX合金にはこれらに加
えて、Y,Hf,Ta,Cs,Ce,La,Th,W,Si,Mn,Bな
どを添加したものがあり、その化学成分の種類は非常に
多い。しかしながら、この発明の作用機構および実施例
から明らかなように、この種のMCrAlX合金に添加され
ている遊離金属Alが、MCrAlX合金中に予め固溶して合
金化しているAlとは異なる物理的挙動(特に融点) を示
す作用を利用しているものであり、実施例以外の金属元
素が含まれるMCrAlX合金に対しても、十分その機能を
発揮することは明らかである。
よく確認するため、示差熱分析装置(真空理工製、示差
熱重量分析装置TGD−3000型) を用いて調査した。供
試した比較例の合金は、市販の32.8wt%Ni−21.4wt%Cr
−8.90wt%Al−0.41wt%Y−36.49 wt%Coで、すべての
金属成分は真空溶解後、これを粉末として製造された溶
射材料である。また、本発明のMCrAlX合金は、前記比
較合金にさらにメカニアルアロイング法によって金属粉
末Alを5wt%になるように添加して作製したものであ
る。
たものである。図において、1-1 は 温度目盛り、1-2 は
市販のMCrAlX合金粉末、1-3 は本発明の遊離金属Alを
含むMCrAlX合金粉末の熱分析曲線である。この図に示
す結果から明らかなように、市販のMCrAlX合金粉末は
室温から900 ℃に加熱しても、この間全く熱的に変化が
認められない。すなわち、MCrAlX合金を構成する各金
属成分が完全に合金化し、1000℃までの温度範囲では変
化しないことを示している。これに対し、本発明の遊離
金属Alを含むMCrAlX合金粉末を昇温していくと、660
℃付近で急激な発熱反応が起こることが認められる。こ
の現象は、次のように説明できる。すなわち、660 ℃は
Alの融点であるため、この温度でAlが溶融してMCrAlX
合金成分と冶金反応を起こし、この結果、生成する金属
間化合物の生成熱によって発熱したものである。例え
ば、AlとNiが反応してNiAlが生成すると、118kj/mol の
生成熱が発生するとともに、その融点は1639℃に上昇す
ることが知られている。 (「燃焼合成の化学」編者 焼
結合成研究会 発行者 (株) ティー・アイ・シィー発行
平成4年5月20日 34頁表1化合物の生成熱, 融点お
よび断熱燃焼温度)
明の溶射材料は金属AlとMCrAlX合金本来の性質を有し
ており、低い温度でAlが溶融し、この結果、溶射皮膜を
構成する粒子が相互に結合したり、気孔の発生を抑制す
る作用機構を有することがわかった。
金属Alを添加したMCrAlX合金を用いて形成された溶射
皮膜は、緻密で密着性に富むため、優れた熱衝撃性能や
高温腐食性能を発揮することができる。従って、ボイ
ラ、ガスタービン、ジェットエンジンおよび加熱炉など
の極めて広範囲な高温被曝部において使用できるのみな
らず、従来技術の溶射と拡散浸透法の組み合わせに比
べ、工程が簡略でかつ母材の機械的強度劣化のおそれが
ないという利点があり、性能と経済的の両面にわたって
大きな効果が期待できる。
線の比較図である。
Claims (5)
- 【請求項1】 Co、Ni、CrおよびAlのうちから選んだ少
なくとも2種を含有する溶射用合金材料に、遊離状態の
金属Alを 0.2〜25wt%の範囲で含有させたことを特徴と
する高温耐酸化性溶射材料。 - 【請求項2】 請求項1に記載の溶射材料を、基材表面
に溶射して得た高温耐酸化性溶射皮膜。 - 【請求項3】 Co、Ni、CrおよびAlのうちから選んだ少
なくとも2種を含み、かつY、Hf、Ta、Cs、Ce、La、T
h、W、Si、MnおよびBのうちから選んだ1種または2
種以上を含有する溶射用合金材料に、遊離状態の金属Al
を 0.2〜25wt%の範囲で含有させたことを特徴とする高
温耐酸化性溶射材料。 - 【請求項4】 請求項3に記載の溶射材料を、基材表面
に溶射して得た高温耐酸化性溶射皮膜。 - 【請求項5】 請求項2または4において、基材表面に
被成した溶射皮膜が、溶射処理後に 700℃以上の温度で
1時間以上の熱処理を経たものである高温耐酸化性溶射
皮膜。
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