JP2922761B2 - ノンハロゲン系床材 - Google Patents

ノンハロゲン系床材

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ビル、家屋等の建築物
の床材に関し、更に詳しくは、塩素等のハロゲンを含ま
ない樹脂からなり、且つ施工性、表面強度及び装飾性等
に優れたノンハロゲン系床材に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、ビル、家屋等の建築物の床材とし
ては、基布の表面に塩化ビニル系樹脂又は加硫ゴムから
なる表面層を積層してなる床材が使用されている。上記
従来の床材においては、表面層が塩化ビニル系樹脂から
なるものが大部分である。塩化ビニル系樹脂を表面層に
使用する理由は、塩化ビニル系樹脂からなる表面層が表
面強度及び耐摩耗性に優れ、更に塩化ビニル系樹脂は適
度の粘弾性(損失係数0.3〜0.45)を有し、施工
性等に優れており、更に透明性にも優れている為に鮮明
な印刷模様等の装飾を付与することが出来、装飾性にも
優れていることによる。一方、表面層として加硫ゴムを
使用した床材は、耐摩耗性や耐熱性等に優れているの
で、上記塩化ビニル系樹脂製床材にない特性が要求され
る用途において使用されている。
【0003】
【発明が解決しようとしている問題点】上記の塩化ビニ
ル系樹脂製の床材は、上記の優れた性能と共にコスト的
にも有利であるが、火災時や焼却処理時に有害な塩化水
素ガスが発生し、火災時に塩化水素ガスによる中毒や窒
息等の危険があり、又、焼却処理時には大量の塩化水素
ガスが発生する為、環境衛生上好ましくないという問題
がある。又、上記加硫ゴム製の床材の場合には、上記の
有利な点を有するものの、表面が汚染され易いこと、透
明性に劣る為印刷模様等の装飾を付することが容易では
なく、反発弾性が大きすぎて下地への馴染みが悪く施工
性が劣る、更に加硫されているので、再加工が困難であ
ると共に焼却処理性が劣るので環境衛生的にも問題があ
る。
【0004】以上の如き従来技術の塩化ビニル系樹脂製
床材の問題点を解決すべく、ハロゲン原子を含有せず、
且つ再生処理可能な床材表面材の材料として、エチレン
−エチルアクリレート共重合樹脂(以下EEAとい
う)、エチレン−メチルメタクリレート共重合樹脂(以
下EMMAという)、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂
(以下EVAという)等のオレフィン系共重合樹脂や、
ポリプロピレン樹脂(以下PPという)、ポリエチレン
(以下PEという)、ポリブテン−1(以下PB−1と
いう)等のオレフィン系樹脂、エチレン−プロピレン系
エラストマー(又はゴム)(以下TPOという)が検討
されている。
【0005】しかしながら、上記各材料は、床材の表面
材として見た場合、オレフィン系共重合樹脂は透明性で
あるので、着色性や印刷等による装飾性等においては問
題はないものの、耐傷性、耐汚染性が劣り、上記オレフ
ィン系樹脂は硬すぎて施工性が劣り、オレフィン系エラ
ストマー(又はゴム)は柔軟性ではあるが、耐傷性及び
耐汚染性が劣る等の問題があり、これらのオレフィン系
ポリマーを混合しても上記問題は解消されない。更にこ
れらのオレフイン系ポリマーに共通する問題として、そ
の損失係数が0.1前後である為に、粘性がなく、反発
弾性が強いので、下地形状への追従性が悪く、長尺床材
の場合、巻き物を広げた時に巻き癖が容易に解消され
ず、その結果施工性が劣り、現在のところ研究段階であ
って製品化には至っていない。
【0006】従って本発明の目的は、上記従来技術の問
題点を解決し、塩化ビニル系樹脂或は加硫ゴムを床材の
表面材として使用することなく、塩化ビニル系樹脂製の
床材と同等或はそれ以上に、施工性、耐傷性、耐汚染
性、装飾性に優れたノンハロゲン系床材を提供すること
である。
【0007】
【問題点を解決する為の手段】上記目的は以下の本発明
によって達成される。即ち、本発明は、オレフィン系熱
可塑性樹脂を含んでもよい熱可塑性エラストマー(又は
ゴム)を主成分としてなり、且つ100Hz・20℃に
おける損失係数(tanδ)が0.3以上の下層と、プ
ロピレンを主体とするランダムプロピレン共重合体50
〜80重量部と熱可塑性エラストマー(又はゴム)50
〜20重量部とを主成分としてなる上層とを積層してな
り、該積層物の100Hz・20℃における損失係数
(tanδ)が0.2以上であることを特徴とするノン
ハロゲン系床材である。
【0008】
【作用】床材を下層と上層の2層構成とし、下層をオレ
フィン系熱可塑性樹脂を含んでもよい熱可塑性エラスト
マー(又はゴム)を主成分として形成して、下地形状に
対する優れた追従性及び施工性を与え、上層をプロピレ
ンを主体とするランダムプロピレン共重合体と熱可塑性
エラストマー(又はゴム)との混合物から形成して、表
面に優れた耐傷性、耐汚染性、装飾性を与えることによ
り、塩化ビニル系樹脂や加硫ゴムを使用することなく、
塩化ビニル系樹脂製の床材と同等或はそれ以上に、施工
性、耐傷性、耐汚染性、装飾性に優れたノンハロゲン系
床材を提供することが出来る。
【0009】
【好ましい実施態様】次に好ましい実施態様を挙げて本
発明を更に詳しく説明する。本発明の床材の構造は、そ
の断面を図解的に説明する図1及び図2に示す様に、基
本的には下層1と上層2とを一体的に積層してなり、必
要に応じて下層1と上層2との間又は下層の下面に基布
3を積層してもよく、更に下層1を不透明に着色し、透
明な上層2との界面に任意の装飾模様4、例えば、印刷
模様を施すことが出来る。本発明の床材に使用してもよ
い基布とは、従来の塩化ビニル系樹脂製床材に使用され
ている基布と同様に、ガラス繊維、ポリエステル繊維、
レーヨン繊維、麻等の繊維の単独又は混紡による織布又
は不織布であり、本発明においてはこれら従来の床材用
基布がいずれもそのまま使用することが出来る。
【0010】本発明の床材を構成する下層は、オレフィ
ン系熱可塑性樹脂を含んでもよい熱可塑性エラストマー
(又はゴム)を主成分として形成する。この熱可塑性エ
ラストマー(又はゴム)としては、ハロゲン原子や窒素
原子を含まないもので、損失係数が0.4以上のもの、
例えば、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレン
ブロックコポリマー、ポリスチレン−ポリイソプレン−
ポリスチレンブロックコポリマー、ポリスチレン−ポリ
ブタジエンブロックコポリマー、ポリスチレン−ポリイ
ソプレンブロックコポリマー又はこれらの水素添加物或
はそれらの混合物等が挙げられ、特に好ましい材質は、
ポリスチレン−ビニル−ポリブタジエン−トリブロック
コポリマー、ポリスチレン−ポリビニル−ポリイソプレ
ントリブロックコポリマー又はそれらの部分架橋物或は
水素添加物からなる熱可塑性エラストマー(又はゴム)
である。これらの熱可塑性エラストマー(又はゴム)
は、例えば、ハイブラーVS−1、VS−2、VS−3
等の商品名で(株)クラレ等から入手して本発明で使用
することが出来る。
【0011】上記の如きオレフィン系熱可塑性樹脂を含
んでもよい熱可塑性エラストマー(又はゴム)は単独で
も混合物としても使用することが出来るが、形成される
層は透明である必要がない為に、従来公知の各種充填
剤、例えば、炭酸カルシウム、タルク、水酸化アルミニ
ウム等の体質顔料、各種の着色顔料、滑剤、酸化防止
剤、光安定剤等の任意の添加剤を添加することが出来
る。更に上記エラストマー(又はゴム)には、これと相
溶性のあるEEA、EVA、EMMA等のオレフィン系
共重合樹脂、PP、PE、PB−1等のオレフィン系樹
脂、ポリエチレンーポリプロピレンブロックコポリマ
ー、ポリエチレンーポリプロピレン−ジエンブロックコ
ポリマー系ゴム(以下EPR、EPDMという)等のポ
リオレフィン系ゴム等のオレフィン系熱可塑性樹脂を全
樹脂成分の0〜80重量%、好ましくは50〜80重量
%占める量で配合することが出来る。上記併用してもよ
い樹脂としては、相溶性の良好なEEA、PP及びEP
DM等が好ましく使用される。
【0012】下層は上記成分を溶融混練して熱ロール等
でシート化し、必要に応じて基布に積層するが、上記添
加剤及び併用樹脂の配合量は得られるシートの損失係数
が0.3未満にならない範囲にすることが必要である。
損失係数が0.3未満になる配合では、得られるシート
の粘性が不足し、硬く、反発弾性が大きく、得られる床
材をロール状に巻いた時の巻き癖が残り、下地形状への
追従性が悪く、施工性が劣るので好ましくない。形成す
る下層用のシートの厚みは約1.0〜3.0mm程度が
一般的である。
【0013】前記基布上に上記下層用シートを積層する
場合には、いずれかの面、好ましくは基布面にエチレン
−アクリル酸エステル系、エチレン−酢酸ビニル共重合
体樹脂等のビニル系樹脂からなる接着剤を塗布して加圧
又は加熱ローラー等で積層するが、加圧加熱ロールを使
用する場合には接着剤は使用してもしなくてもよい。上
記下層の表面に上層を積層することにより本発明の床材
が形成されるが、上層の積層前に下層のシートの表面
に、例えば、グラビア印刷、凸版印刷、転写方法等で、
任意の模様、例えば、種々の印刷模様等を付与して、得
られる床材の装飾性及び意匠性を向上させることが出来
る。
【0014】上層は、プロピレンを主体とするランダム
プロピレン共重合体50〜80重量%と熱可塑性エラス
トマー(又はゴム)50〜20重量%を主成分として形
成される。上記ランダムプロピレン共重合体は、プロピ
レンに、エチレン、ブチレン等の他のオレフィンモノマ
ーを約0.5〜5モル%共重合させたものであって、例
えば、商品名6021K、J−450B、E−420
G、F350H等として、例えば、(株)東ソー社や日
石化学(株)社等から入手して本発明で使用することが
出来る。このランダムプロピレン共重合体の軟化剤とし
て使用する熱可塑性エラストマーとしては、前記の如き
各種エラストマー(又はゴム)が使用される。更に上記
の混合物には、EEA、EVA、EMMA等のビニル系
共重合体、PP、PE、PB−1、低密度ポリエチレン
等のオレフィン系樹脂等を0〜30重量%の範囲で配合
することが出来る。
【0015】上記組成においてランダムポリピロピレン
共重合体が50重量%未満であると、形成される上層用
シートの耐傷性、耐汚染性、硬度等が不十分となり、一
方、80重量%を越えるとシートが硬過ぎて、シートに
巻き癖等が付き好ましくない。更にこれらの樹脂には、
これらの樹脂から形成されるシートの透明性を過度に害
さない範囲において、従来公知の各種充填剤、例えば、
炭酸カルシウム、シリカ、タルク、水酸化アルミニウム
等の体質顔料、各種の着色顔料、滑剤、酸化防止剤、光
安定剤等の任意の添加剤を0〜5重量%程度添加するこ
とが出来る。
【0016】上記ランダムランダムプロピレン共重合体
を主体とする成分からのシートの形成は、押出成形方法
やカレンダー法で行うことが出来、前記下層の表面にシ
ート化と同時に積層してもよいし、又、シート化した後
にラミネーター等で加熱押圧して積層してもよい。上記
上層用のシートの厚みは約0.3〜1.0mm程度が一
般的である。
【0017 本発明の床材は、以上の如くして形成されるが、得られ
る床材の損失係数が0.2以上になる様に下層及び上層
(更には基布)を組み合わせて積層することが必要であ
る。損失係数が0.2未満であると、得られる床材の粘
性が不足し、硬く、反発弾性が大きく、得られる床材を
ロール状に巻いた時の巻き癖が残り、下地形状への追従
性が悪く、施工性が劣るので好ましくない。又、最終的
に得られる床材の厚みは、基布を積層した場合には基布
を含めて約2.0〜4.0mm程度が一般的であり、そ
の形状は幅約1,300〜2,500mmの長尺物が一
般的であるが、特に長尺物に限定されることはない。 【0018】
【実施例】次に実施例及び比較例を挙げて本発明を更に
具体的に説明する。 実施例1、2及び比較例1〜4 下記表1及び表2に記載の上層用及び下層用のコンパウ
ンドを配合し、各コンパウンドをインテンシブルミキサ
ーで160℃で混練後、180℃のロールで下層を2.
0mmの厚さに、上層を0.5mmの厚さにシート出し
後、下層及び上層を加熱温度200℃のロールラミネー
ターで加圧積層して実施例及び比較例の床材を得た。得
られた床材の耐傷性、耐汚染性、巻き癖性及び施工性を
調べたところ下記表3の結果が得られた。
【0019】
【表1】 下層用コンパウンド組成 (註1)ポリスチレン・ビニル−ポリイソプレントリブ
ロック共重合体からなるスチレン系熱可塑性エラストマ
ー(100Hz・20℃における損失係数1.0) (註2)エチレン−エチルアクリレート共重合体(EA
含有率20重量%) (註3)ポリプロピレン樹脂 (註4)エチレン−プロピレンゴム (註5)100Hz・20℃における損失係数(tan
δ)
【0020】
【表2】 上層用コンパウンド組成 (註6)E420G、日本石油化学製 (註7)水素添加ポリスチレン・ポリブタジエンゴム
【0021】
【表3】 床材特性 (註8)JIS K 3920の耐ヒールマーク性試験
方法に準拠。 ○:傷つきが少ない ×:傷つきが大きい (註9)JIS K 3920の耐ヒールマーク性試験
方法に準拠。 ○:靴底による汚れが少ない ×:靴底による汚れが大きい (註10)床材を、外径が9cmのボール紙製芯に巻い
た後、これを拡げてカール性を調べた。 ○:巻き癖が取れ易い ×:巻き癖が取れにくい (註11)床材を接着剤を使用して下地と接着施工した
場合の施工性 ○:床材と下地との馴染みが良い △:床材と下地との馴染みがやや悪い ×:床材がカールして施工が出来ない
【0022】実施例3 実施例2で得られた床材の下層の面に、亜麻繊維とレー
ヨン繊維との混紡(50:50)を平織り(密度:縦1
8本/25mm、横18本/25mm)にした織布を、
オレフィン系エマルジョン接着剤を使用して積層した。
得られた床材は耐傷性、耐汚染性、耐巻き癖性及び施工
性が良好なものであった。
【0023】実施例4 実施例2における下層用組成物を着色してシート化し、
このシートの一方の面に実施例2と同様に基布を積層
し、他方の面にグラビアロールを使用して木目調印刷を
行ない、その面に実施例2の上層用シートを積層した。
得られた床材は耐傷性、耐汚染性、耐巻き癖性及び施工
性が良好であるとともに、装飾性に優れたものであっ
た。
【0024】
【効果】以上の如き本発明によれば、本発明による床材
は、その下層の粘弾性が、従来の床材の塩化ビニル樹脂
製層の粘弾性と同様であるので、施工時において下地形
状に馴染み易く施工性に優れる。又、上層は適度の硬さ
と柔らかさを有しているので、耐傷性及び耐汚染性に優
れ、且つ透明性にも優れることから、下層表面に各種の
印刷模様を設けた場合、上層が該模様を隠蔽することが
なく装飾性に優れる。又、床材全体としてハロゲンを含
有する材料を含まないので、火災時や焼却時に有害なガ
スを発生することがなく、更に下層及び上層とも熱可塑
性であるのでリサイクルが可能で環境衛生面でも問題が
少ない。
【0025】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の床材の断面を説明する図
【図2】本発明の床材の断面を説明する図
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) B32B 1/00 - 35/00 E04F 15/16

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 オレフィン系熱可塑性樹脂を含んでもよ
    い熱可塑性エラストマー(又はゴム)を主成分としてな
    り、且つ100Hz・20℃における損失係数(tan
    δ)が0.3以上の下層と、プロピレンを主体とするラ
    ンダムプロピレン共重合体50〜80重量部と熱可塑性
    エラストマー(又はゴム)50〜20重量部とを主成分
    としてなる上層とを積層してなり、該積層物の100H
    z・20℃における損失係数(tanδ)が0.2以上
    であることを特徴とするノンハロゲン系床材。
  2. 【請求項2】 上層の熱可塑性エラストマーが水素添加
    スチレン系熱可塑性エラストマーである請求項1に記載
    のノンハロゲン系床材。
  3. 【請求項3】 下層と上層との間、又は下層の下面に基
    布を積層してなる請求項1に記載のノンハロゲン系床
    材。
  4. 【請求項4】 不透明な下層と透明な上層との界面に装
    飾模様が施されている請求項1に記載のノンハロゲン系
    床材。
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