JP2917258B2 - 自動二輪車用変速装置のｖベルト空冷構造 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、例えばスクータ型自動
二輪車等に搭載されるＶベルト式無段変速装置に関し、
特にＶベルトの冷却性を改善できるようにした空冷構造
に関する。

【０００２】

【従来の技術】スクータ型自動二輪車等に搭載される変
速装置としては、従来、駆動，従動プーリ間にＶベルト
を巻回してなるＶベルト式無段機構を伝動ケース内に収
容してなるものが一般に採用されている。このようなＶ
ベルト式無段変速装置においては、上記伝動ケース内を
外気で換気することにより上記Ｖベルトの冷却を行う場
合が多い。このようなＶベルト空冷構造として、従来、
上記プーリに送風羽根を形成するとともに、伝動ケース
の前部に外気導入口を、後部に排出口を形成した構造が
一般的である。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】ところで上記従来のＶ
ベルト空冷構造では、外気は伝動ケースの前部に形成さ
れた外気導入口から伝動ケース内に導入され、該ケース
内を後方に流れ、伝動ケースの後部に形成された排出口
から排出される。従って伝動ケースの後部については内
部の空気が比較的確実に換気され、十分に冷却されるも
のの、外気導入口が形成された伝動ケースの前部につい
ては、冷却が不十分であるという問題がある。特に駆動
側プーリのクランク軸側部分は、エンジンからの伝熱が
あるにもかかわらず、冷却空気の流れが得られないこと
から空気が停滞し、温度が上昇し易い問題がある。本発
明は上記従来の状況に鑑みてなされたもので、伝動ケー
スの特に前部における空気の流れを確保することにより
Ｖベルトの冷却性を改善できる自動二輪車用変速装置の
Ｖベルト空冷構造を提供することを目的としている。

【０００４】

【課題を解決するための手段】本発明は、伝動ケース内
にＶベルト式無段変速機構を収容してなる自動二輪車用
変速装置において、上記無段変速機構のプーリに送風羽
根を形成するとともに上記伝動ケースの前部に外気導入
口を、後部に排出口をそれぞれ形成し、伝動ケース内を
外気で換気するようにしたＶベルト空冷構造であって、
上記伝動ケースの前壁のシリンダボディ側に前部排出口
を形成し、該排出口に排出ダクトを接続するとともに、
該排出ダクトをシリンダボディの側方を通って下方に屈
曲延長し、路面に向けて開口させたことを特徴としてい
る。

【０００５】

【作用】本発明に係るＶベルト空冷構造によれば、伝動
ケースの前壁のシリンダボディ側に前部排出口を形成し
たので、伝動ケース内に導入された冷却風の一部はこの
前部排出口を通って排出される。従って伝動ケース前部
における空気の滞留が回避され、それだけＶベルトの冷
却性が改善される。また上記前部排出口に排出ダクトを
接続するとともにこれを下方に屈曲延長したので、前部
排出口からの空気の排出が走行風によって阻害されるこ
とはなく、また前部排出口から上記伝動ケース内に塵等
が侵入することもない。

【０００６】

【実施例】以下、本発明の実施例を図について説明す
る。図１ないし図５は本発明の一実施例による自動二輪
車用変速装置のＶベルト空冷構造を説明するための図で
あり、図１，図２はその断面展開図、図３はエンジンユ
ニットの平面図、図４，図５は自動二輪車の左側面図で
ある。

【０００７】図において、１はスクータ型自動二輪車で
あり、これの車体フレーム２は、ヘッドパイプ３に側面
視大略Ｌ字状のメインフレーム４の縦辺４ａの上端を接
続し、横辺４ｂの中央付近に左，右一対のサイドフレー
ム５ａ，５ａの前端を接続し、該両サイドフレーム５
ａ，５ａを上方に立ち上げるとともに後方に延長してな
るいわゆるアンダーボーンタイプのものである。上記ヘ
ッドパイプ３により、下端で前輪６を軸支する前フォー
ク７が左右に操向自在に軸支されており、該前フォーク
７の操向軸７ａの上端には操向ハンドル８が固着されて
いる。また上記左，右のサイドフレーム５ａ，５ａの前
部間上方には燃料タンク１４が、また後部間上方には収
納ボックス１５がそれぞれ配設されており、この燃料タ
ンク１４，及び収納ボックス１５の上方を覆うようにタ
ンデムシート１６が配設されている。さらにまた、該自
動二輪車１の前フォーク７回り，足載部回り，及びタン
デムシート１６の下方周囲部分は、車体カバー１７で囲
まれている。また上記左，右のサイドフレーム５ａ，５
ａの後方屈曲部５ｂには、該部分に固着された懸架ブラ
ケットを介してユニットスイング式エンジンユニット１
０が懸架支持されている。

【０００８】上記エンジンユニット１０は、エンジン本
体１２と変速装置１１とを一体化してなるものである。
上記エンジン本体１２は、左，右分割式クランクケース
１８ｂの前壁に空冷式シリンダボディ２２及び水冷式シ
リンダヘッド２３を略水平に積層締結し、上記シリンダ
ボディ２２内に挿入されたピストン２４をコンロッド２
５でクランク軸２６に連結した構造のものである。

【０００９】上記クランク軸２６の右側突出端部には、
フライホイールマグネット式発電機２７の回転体２７ａ
が固定されており、該回転体２７ａ内には、クランクケ
ース１８ｂの右側壁に固定された発電コイル２７ｂが収
容されている。また上記回転体２７ａのボス部２７ｃに
はクランクプーリ２７ｄが一体形成されている。

【００１０】また上記シリンダヘッド２３内に配設され
たカム軸２８の一端にはカムスプロケット２９ａが固定
されており、該カムスプロケット２９ａと上記クランク
軸２６に固定されたクランクスプロケット２９ｂとはカ
ムチェン２９ｃで連結されている。

【００１１】また、上記シリンダヘッド２３の左側壁に
は冷却水ポンプ４６が装着されている。該ポンプ４６
は、ケース本体４７ａとケースカバー４７ｂとからなる
ポンプケース４７のブレード室４７ｅ内に羽根車４８を
配置した構造のものである。なお、４９ｂは冷却水ホー
スである。上記羽根車４８の羽根軸４８ａは上記カム軸
２８と同軸上に配置されており、かつ該カム軸２８に着
脱可能に連結されている。また、上記ケース本体４７ａ
には上記羽根軸４８ａを囲むようにブリーザ室４７ｃが
形成されており、該ブリーザ室４７ｃの右側開口は端面
板５０で閉塞されている。上記ケース本体４７ａには上
記ブリーザ室４７ｃに連通するようホースジョイント４
７ｄが形成されており、該ジョイント４７ｄにはブリー
ザ管４９が接続されている。

【００１２】また上記シリンダボディ２２の周囲及び上
記発電機２７は冷却風通路を構成するシュラウド５１に
よって囲まれている。このシュラウド５１の上記発電機
２７を囲む発電機カバー部５１ｇのクランク軸２６に対
向する部分にはメンテナンス用の開口５１ｃが形成され
ており、これはキャップ５３で閉塞されている。またシ
ュラウド５１の上記開口５１ｃ後方には排気孔５１ｄが
形成されており、さらに該排気孔５１ｄ内部分には、発
電機２７の回転体２７ａのクランク軸２６に対する取付
角度を調整するための位置決め突起５１ｅが一体形成さ
れている。さらにまた、上記シュラウド５１の上記シリ
ンダボディ２２右方部分には空気導入用開口５１ｆが形
成されている。該開口５１ｆ部分にはこれを覆うように
ラジエータ５４が配設されており、さらに該ラジエータ
５４の内側には送風ファン５５が配設されている。

【００１３】上記送風ファン５５は、羽根車５６と、こ
れの車幅方向外側に配設されたファンプーリ５７とから
構成されており、このファンプーリ５７は上記クランク
軸２６の右端に装着されたクランクプーリ２７ｄにＶベ
ルト６２で連結されている。上記羽根車５６は上記クラ
ンクケース１８ｂの右側壁に一体形成された支持部１８
ｄによって軸受５８を介して軸支された回転筒体５９に
固着されている。上記ファンプーリ５７は上記回転筒体
５９に固定された固定プーリ半体５７ａと、上記回転筒
体５９内に軸方向に摺動可能に挿入されかつスプライン
嵌合された摺動軸６０の右端に固着された可動プーリ半
体５７ｂとから構成されている。

【００１４】そして、上記羽根車５６とシリンダボディ
２２との間には付勢機構６１が配設されている。該付勢
機構６１は上記摺動軸６０の先端に取り付けられたばね
座６３ａと、上記回転筒体５９の内端に挿着されたばね
座６３ｂとの間にばね６３ｃを介在させた構造のもので
ある。これにより上記付勢機構６１で上記可動プーリ半
体５７ｂを固定プーリ半体５７ａ側に付勢することによ
ってファンプーリ５７の直径を変化させてＶベルト６２
の伸びを吸収する張力調整機構６４が構成されている。

【００１５】上記変速装置１１は上記クランクケース１
８ｂの左側部分に一体形成された伝動ケース本体１８ａ
とこれにボルト締め固定されたケースカバー１９ａとか
らなる伝動ケース１９内に無段変速機構２０，遠心式ク
ラッチ３０，及び減速機構２１を配設した構造のもので
ある。なお、上記ケースカバー１９ａは、車幅方向外側
面を構成する側壁１９ｂと、これの周囲から内方に延び
るように形成された周壁１９ｃとからなる横断面コ字状
のものである。

【００１６】上記無段変速機構２０は、上記クランク軸
２６の左側端部に装着された駆動プーリ３１と伝動ケー
ス１９の後部に配設された従動プーリ３２とをＶベルト
３３で連結してなるものであり、該従動プーリ３２は伝
動ケース本体１８ａで軸支されたクラッチ軸３４に上記
遠心式クラッチ３０を介して連結されている。

【００１７】上記駆動プーリ３１は上記クランク軸２６
の左端部に嵌合固定された固定プーリ半体３１ａと上記
クランク軸２６に軸方向に摺動自在に嵌合された可動プ
ーリ半体３１ｂとから構成されている。上記可動プーリ
半体３１ｂの外側面とクランク軸２６に嵌合固定された
ガイドプレート３５との間にはローラウエイト３６が配
置されており、またこのガイドプレート３５の外方には
シールプレート３７が配設されている。このシールプレ
ート３７は樹脂製の環状のもので、その外周部は上記可
動プーリ本体３１ｂの外周部に固定され、内周部はクラ
ンク軸２６に固定された一方向クラッチ３８に当接して
いる。これにより上記ローラウエイト３６部分に充填さ
れたグリースの外方流出を防止している。

【００１８】上記従動プーリ３２は固定プーリ半体３２
ａと可動プーリ半体３２ｂから構成されており、該固定
プーリ半体３２ａは上記遠心式クラッチ３０の筒体３９
に固定されている。上記可動プーリ半体３２ｂは上記筒
体３９に軸方向に移動可能に支持されており、ばね４０
によって上記固定プーリ半体３２ａとの間隔が狭くなる
方向に付勢されている。

【００１９】上記遠心式クラッチ３０は、上記クラッチ
軸３４で軸支された上記筒体３９と、クラッチ軸３４に
固定されたクラッチケース４１との間にクラッチウエイ
ト４２を配置してなり、従動プーリ３２の回転速度が高
くなると上記クラッチウエイト４２がクラッチケース４
１の内面に圧接し、これにより動力がクラッチ軸３４に
伝達される。

【００２０】上記減速機構２１は、上記クラッチ軸３４
の小歯車３４ａを中間歯車（図示せず）を介して後輪軸
４３の大歯車４４に噛合させた構造のものである。上記
後輪軸４３は上記伝動ケース本体１８ａとこれにボルト
締め固定された内ケース１８ｃとでベアリングを介して
軸支されており、該後輪軸４３に後輪１３が固定されて
いる。

【００２１】上記駆動プーリ３１の固定プーリ半体３１
ａの外面には、外気を伝動ケース１９内に導入するため
の送風羽根３１ｃが一体形成されている。また上記伝動
ケース１９の外側部分を構成するケースカバー１９ａの
周壁１９ｃの前端には外気導入口１９ｄが形成されてお
り、後端には後部排出口１９ｅが形成されている。な
お、１９ｆは外気導入口１９ｄに接続されたダクトであ
る。さらにまた、上記伝動ケース１９の内側部分を構成
する伝動ケース本体１８ａの前端には前部排出口１８ｅ
が形成されており、該排出口１８ｅには排出パイプ５２
ａを介して排出ダクト５２ｂが接続されている。この排
出ダクト５２ｂは、シュラウド５１の左側に膨出形成さ
れた膨出部５１ａ内に挿入され、かつシリンダボディ２
２の左側方に位置しており、さらに下方に屈曲延長さ
れ、上記膨出部５１ａに形成された穴５１ｂを通って路
面に対向するように開口している。

【００２２】次に本実施例の作用効果について説明す
る。本実施例の変速装置１１では、クランク軸２６の回
転が、駆動プーリ３１，Ｖベルト３３，従動プーリ３
２，遠心クラッチ３０を介して後輪１３に伝達される。
またこのとき上記駆動プーリ３１に形成されている送風
用羽根３１ｃの回転により外気が外気導入口１９ｄから
伝動ケース１９内に導入され、その一部は該ケース１９
内を後方に流れ、後部排出口１９ｅから外方に排出さ
れ、その際にＶベルト３３を冷却する。また、伝動ケー
ス１９内に導入された空気の残部は伝動ケース１９内を
クランク室側に流れ、前部排出口１８ｅから排出ダクト
５２ｂを通って、シュラウド５１の膨出部５１ａの下方
に排出され、これにより主として駆動プーリ３１のクラ
ンク室側部分を冷却する。

【００２３】このように本実施例では、伝動ケース１９
の前端部に前部排出口１８ｅを形成したので、冷却風を
伝動ケース１９の前部においてクランク室側にも流すこ
とができ、特に温度上昇し易いクランク室側部分を冷却
でき、それだけＶベルトの冷却性を向上できる。また前
部排出口１８ｅに排出ダクト５２ｂを接続し、これを下
方に屈曲させたので、走行風により上記冷却風の排出が
阻害されることはない。また排出ダクト５２ｂをシュラ
ウド５１の排出孔付近に開口させたので、エンジン冷却
風によって伝動ケース内空気を外方に吸引できる効果も
ある。さらにまた前部排出口１８ｅに開口が下を向いた
排出ダクト５２ｂを接続したので、塵等が上記伝動ケー
ス１９に侵入するのを防止できる。

【００２４】なお、上記実施例では排出ダクト５２ｂを
上記シュラウド５１内に挿入したが、本発明はシュラウ
ドを備えていない自動二輪車においても採用できる。

【００２５】

【発明の効果】以上のように本発明に係る自動二輪車用
変速装置のＶベルト空冷構造によれば、伝動ケースの前
端部に前部排気口を形成するとともに、これに出口を下
にした排出ダクトを接続したので、上記伝動ケースの前
部に空気が滞留するのを防止してＶベルトの冷却性を向
上できる効果がある。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例による変速装置のＶベルト空
冷構造を示す断面展開図である。

【図２】上記変速装置を備えたエンジンの断面展開図で
ある。

【図３】上記エンジンの平面図である。

【図４】上記エンジンを搭載した自動二輪車の側面図で
ある。

【図５】上記自動二輪車の側面図である。

【符号の説明】

１ 自動二輪車 １１ 変速装置 １８ｅ 前部排出口 １９ 伝動ケース １９ｄ 外気導入口 １９ｅ 後部排出口 ２０ Ｖベルト式無段変速機構 ２２ シリンダボディ ３１ プーリ ３１ｃ 送風羽根 ５２ｂ 排出ダクト

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.⁶，ＤＢ名) F16H 57/00 - 57/04 F01P 1/06 F01P 5/06

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 伝動ケース内にＶベルト式無段変速機構
   を収容してなる自動二輪車用変速装置において、上記無
   段変速機構のプーリに送風羽根を形成するとともに上記
   伝動ケースの前部に外気導入口を、後部に排出口をそれ
   ぞれ形成し、伝動ケース内を外気で換気するようにした
   Ｖベルト空冷構造であって、上記伝動ケースの前壁のシ
   リンダボディ側に前部排出口を形成し、該排出口に排出
   ダクトを接続するとともに、該排出ダクトをシリンダボ
   ディの側方を通って下方に屈曲延長し、路面に向けて開
   口させたことを特徴とする自動二輪車用変速装置のＶベ
   ルト空冷構造。