JP2908937B2 - セントポーリア属植物の矮化植物体の育苗方法 - Google Patents

セントポーリア属植物の矮化植物体の育苗方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、セントポーリア属植物
の矮化植物体の育苗方法に関するものであり、さらに詳
しくは、セントポーリア属植物の植物体の組織を組織培
養することにより得た完全に分化した無菌植物体を、特
定の幼植物体の誘導及び成長固体培地を用いて、特定の
培養条件で培養し、特定の矮化剤で処理することによ
り、従来、一般に普及している交配種の場合、草姿が大
きく、適正な草姿のものが得難かったセントポーリア属
植物を、容器内で栽培するのに適するような適正な草姿
に矮化させ、かつ高収率で増殖することが可能な組織培
養によるセントポーリア属植物の矮化植物体の容器内育
苗方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、植物体の組織の切片を培地上で無
菌的に培養することにより、不定芽、不定根、花芽、カ
ルス等を誘導し、形成させ、成長させることにより当該
植物を増殖させる、植物の組織培養による増殖方法が、
種々の植物を対象に研究され、これまでに、種々の技術
が開発されている。
【0003】このような植物の組織培養技術の進展に伴
い、当該技術を用いた各種植物の作出方法、増殖方法が
開発され、各々の植物に好適な培地組成、培養条件等が
具体的なものとして確立され、すでに、ウイルスフリー
株の生産、大量繁殖方法等として実用化されているもの
もあり、例えば、ダリア、ジャガイモの茎頂組織培養
(生長点培養)による無病固体の再生、ラン(シンビジ
ウム属)の茎頂組織培養によるプロトコームライクボデ
ィ(原塊体様組織塊PLB)の再生、また、分割増殖に
よって遺伝的に均一な苗の大量増殖技術等、様々な技術
が開発され、実用化されている。
【0004】そして、現在では、このような組織培養技
術は、草花、野菜等の草木類から、果樹、花木、樹木等
の木本類に至るまで、様々な分野で応用されつつあり、
特に、我国では、ラン、カーネーション、キク、ユリ、
シュツコンカスミソウ、セントポーリア、ガーベラ、シ
クラメン、イチゴ等のような栄養繁殖される園芸作物の
苗生産技術を中心として定着化しつつある。
【0005】しかしながら、このような植物の組織培養
技術は、いまだ完成された技術ではなく、未知の分野も
多く、むしろ今後の研究に待つべきところも多い技術で
あって、例えば、ラン科植物の栄養繁殖についても、研
究の進んでいるシンビジウム以外は、培地組成や培養技
術がまだ一般化する程には完成されておらず、また、東
洋系と呼ばれるカンラン、シュンラン等の一群のもの
は、いまだ組織培養による増殖体系は確立されていない
状況にある。
【0006】一般の草花や観葉植物についても、増殖組
織の液体震盪培養による多芽体の形成、ホルモン剤添加
培地での多芽体の誘発、苗の大量増殖等の研究、開発が
活発に行われているが、変異発生の危険性が非常に高い
等今後解決すべき問題は多く残されている。
【0007】また、球根類や多年草で、種子繁殖によっ
て育苗されるシクラメンやプリムラ類等は、遺伝的な分
離で成品に均一性の欠けることや、採取量が少なく、優
良系の種子不足の問題等があることから、優良固体を組
織培養によって増殖する試みがなされている。
【0008】また、採種用母株の保存維持や、種子繁殖
により生産性の高い野菜のF1 固体や、草花のF1 固体
を、組織培養によって増殖し、栄養繁殖系の苗として供
給することも試みられているが、このような従来の種子
繁殖系を栄養増殖とする技術は、一部実用化されている
程度に過ぎない。このように、植物の組織培養技術が、
各種植物の誘導、作出、増殖方法として、広く検討され
る中で、各種観賞用植物の組織培養による誘導、増殖技
術等が提案されている。
【0009】すなわち、例えば、有用一年生植物の茎頂
部を摘出し、これを無機塩類組成物及び植物生長ホルモ
ンを含む人工培地に移植し、これを0.5〜10rpm
の回転数にて回転培養して苗条原基を増殖し、得られた
苗条原基を静置培養して苗化することからなる有用一年
生植物の大量増殖方法が提案されている(特開昭59−
132823号公報)。しかしながら、この方法は、主
として苗条原基(Sho-ot primordia)を利用して色素
体、液胞、油体、貯蔵物質等の二次代謝産物からなる有
用物質を人工的に大量生産するものであり、観賞用植物
の増殖については、ペチュニア、アサガオ等に言及して
いるに過ぎない。
【0010】また、植物の組織片より光照射下でカルス
から発芽、発根させて増殖する植物の再分化方法、及び
そのための増殖用培地として、植物ホルモンであるサイ
トカイニン類0.1〜10ppm、及びオーキシン類
0.01〜10ppmを加えたMS培地が提案されてい
る(特開平3−139224号公報)。しかしながら、
これは、キク科植物を短期間に大量に得るために好適な
キク科植物用の特定の培地組成、培養条件等を検討した
ものである。
【0011】また、植物の組織片よりカルスを誘導せし
め、次いで、当該カルスを培養して不定芽を分化せしめ
た後、当該不定芽を培養して幼植物体を得ることからな
る植物の再生方法、及びその種苗の増殖方法が提案され
ている(特開平4−45730号公報)。しかしなが
ら、この方法は、分化させた不定芽を利用するものであ
り、キキョウ属植物を対象としたものである。
【0012】さらに、顕花植物体の組織切片又はこれを
培養して得られる再生植物体の組織切片を培地にて培養
して再分化せしめて再生植物体を得、次いで当該再生植
物体を再分化時とは異なる組成を有する培地で培養して
開花せしめる顕花植物の培養方法が提案されている(特
開平4−30733号公報)。しかしながら、この方法
は、再分化培養に用いる培地、及び開花培養に用いる培
地の培地組成について検討したものであり、対象とする
植物も、ウマノスグサ科、ナデシコ科、ナス科に属する
植物、特にトレニア属植物が例示されているに過ぎな
い。
【0013】しかして、最近、密閉容器中で植物を栽培
して開花させ、そのまま観賞可能とする容器内開花に関
する技術も提案されている。
【0014】このような提案の例として、例えば、植物
体の茎切片を1次基本培地で無菌的に培養して不定芽を
形成させた後、これを特定の無機塩濃度にし、かつ矮化
剤を加えた2次基本培地に置床して天然昼光色蛍光灯を
短日照射し密閉培養することからなる栽培方法が提案さ
れている(特開昭60−221020号公報)。しかし
ながら、この方法は、不定芽を利用するものであり、対
象とする植物もトレニア(和名ハナウリクサ)に限られ
るものである。
【0015】また、ケイトウの無菌の幼植物体の全草を
透視可能な容器中の矮化剤として特定の矮化剤2〜10
ml/lを添加したMS培地に植えつけ、光を断続的に
長期間照射し無菌的に密閉培養することを特徴とする矮
化けいとうの栽培方法(特開平2−190113号公
報)、センニチコウの無菌の幼植物体の全草を透視可能
な容器中の矮化剤として特定の成分を添加したMS培地
に植え付け、光を断続的に長期間照射し無菌的に密閉培
養することからなる栽培方法(特開平2−200121
号公報)、等が提案されている。
【0016】さらに、ホウセンカの無菌の幼植物体の全
草を透視可能な容器中の矮化剤として特定の矮化剤0.
2〜1.0g/lを添加したMS改変培地に植えつけ、
光を断続的に長期間照射し無菌的に密閉培養することを
特徴とする矮化ホウセンカの栽培方法(特開平3−28
5618号公報)、等植物体の矮化技術、及び容器内栽
培技術に関する提案がなされている。しかしながら、こ
れらは、いずれも、特定の植物体についての密閉容器に
おける矮化条件等を検討したものであり、しかも、セン
トポーリア属植物に関して検討したものは、これまで、
見当たらない。
【0017】このように、植物を密閉容器中で栽培し
て、そのまま観賞可能とする容器内栽培技術を確立する
には、植物を密閉容器内で、安定、かつ高収率で増殖さ
せる技術、密閉容器中で適正形態に育成させるための矮
化技術、花芽を分化させ、開花させる開花技術等を開発
し、確立することが前提とされるが、そもそも、密閉容
器中で植物を栽培し、開花させることは大変困難であ
り、これまで、前記のような、矮化トレニアの密閉容器
中での開花、矮化ケイトウの栽培、センニチコウ、ホウ
センカの密閉容器中での開花等の報告例があるものの、
現在、実用化されているもので、密閉容器中で矮化植物
を育成し、観賞用に供されているものは花をつけない観
葉植物がほとんどである。
【0018】このように、一般に、各種植物を組織培養
により増殖させる技術が開発され、広く普及するに伴
い、各種植物に好適な個有の培養条件等が研究、開発さ
れ、確立されつつあるものの、実用化レベルに至ってい
るものはそれほど多くはなく、まして、植物を密閉容器
もしくは通気性容器中で栽培して花芽を分化させて開花
させ、そのまま観賞することが可能な植物の容器内育成
技術については、その研究例も少なく、ほとんど実用化
されていない状況にある。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】このような状況の中
で、本発明者らは、容器中で植物を栽培して花芽を分化
させ、開花させ、そのまま観賞することが可能な植物の
容器内育成技術を確立することを目標として、その技術
上のベースとなる基礎的技術、すなわち植物を安定、か
つ高収率で増殖させる方法、適正に矮化させるための矮
化条件、安定に花芽を分化させ、かつ長期にわたって開
花させるための栽培条件等について種々検討するために
その基礎的研究に着手した。
【0020】本発明者らの研究及びこれまでの知見によ
ると、このような植物の育成技術を確立するには、その
技術上のベースとなる前記のような各種植物の増殖技
術、矮化技術、開花技術等の基礎的技術の開発が大前提
となることはいうまでもないが、これらの各技術は、実
際上、個々の植物の種類によって全く相違するものであ
り、例えば、前記のトレニア、ケイトウ、センニチコ
ウ、ホウセンカ等についても、その栽培方法、栽培条件
を、そのまま他の植物の場合に転用しても、所期の目的
を達成することはほとんど不可能であり、各植物の種類
に応じて、それぞれ個有の栽培方法、栽培条件を開発
し、確立することが必要である。
【0021】このような知見を前提として、本発明者ら
は、各種植物のうちでも、従来の交配種は草姿が大きい
ことから、容器内で栽培するのに適するような適正な草
姿の植物体の作出が強く要請されていたセントポーリア
属植物に着目し、これを高収率で増殖させ、容器内で栽
培するのに適した矮化植物体を容器内で育苗する方法を
開発することを目標として鋭意研究を積み重ねた結果、
特定の矮化プロセスと特定の培地組成、培養条件を組み
合わせることによって、所期の目的を達成し得ることを
見い出し、本発明を完成するに至った。
【0022】すなわち、本発明は、従来、交配種の場
合、草姿が大きかったセントポーリア属植物を、増殖
し、矮化させ、その矮化植物体を容器内で育苗する方法
を提供することを目的とするものである。
【0023】また、本発明は、セントポーリア属植物の
無菌状態の植物体の組織の切片を組織培養することによ
り得た完全に分化した無菌植物体を利用し、当該植物を
高収率に増殖し、容器内で育苗する方法を提供すること
を目的とするものである。
【0024】さらに、本発明は、セントポーリア属植物
を容器中で無菌的に培養して花芽を分化させ、開花さ
せ、そのまま当該容器中で観賞することが可能な当該植
物の容器内育苗方法を提供することを目的とするもので
ある。
【0025】さらに、また、本発明は、特定の培地組
成、特定の培養条件、及び特定の処理条件下でセントポ
ーリア属植物を高収率で増殖させ、容器内で好適な草姿
の植物体に矮化成長させる方法を提供することを目的と
するものである。
【0026】
【課題を解決するための手段】このような本発明の目的
を達成するための構成は、以下の(1)〜(4)の技術
的手段から成る。 (1)セントポーリア属植物を容器内で育成し、開花さ
せ、そのまま観賞することができる当該植物の容器内育
苗方法であって、組織培養により得たセントポーリア属
植物の完全に分化した無菌植物体を、炭素源を含有し、
pH調整され、無機塩濃度が1/1〜1/5に調整さ
れ、当該無機塩濃度が低減された合成培地を基本培地と
する固体培地に植え付けた後、ジケグラック溶液を葉
面、頂芽の一方又は両方に滴下し、育苗することを特徴
とするセントポーリア属植物の矮化植物体の育苗方法。
【0027】(2)ショ糖1重量%を含有し、pH5.
8に調整され、無機塩濃度が1/2に調整された合成培
地を基本培地とする固体培地を用いることを特徴とする
前記(1)記載のセントポーリア属植物の矮化植物体の
育苗方法。
【0028】(3)成分濃度20〜200mg/lのジ
ケグラック溶液を用いることを特徴とする前記(1)記
載のセントポーリア属植物の矮化植物体の育苗方法。
【0029】(4)合成培地が、MS改変培地であるこ
とを特徴とする前記(1)記載のセントポーリア属植物
の矮化植物体の育苗方法。
【0030】続いて、本発明の構成について詳細に説明
する。一般に、セントポーリア属(Saintpaulia)植物
は、イワタバコ科に属する多年草であり、タンザニア、
ケニア南部に自生する同属二種を中心に育種された観賞
用の園芸植物として知られている。約10cmの葉柄の
端に軟毛をもつ円形の多肉葉を叢生し、花と同じ高さの
花梗にスミレに似た五弁花を多数開く。原種のS-aintpa
ulia ionantha, Saintpaulia confusa等の21種から多
くの品種が作られている。花色は、紫、紅、白等多くの
品種があり、リトルサファイア、ハッピーティーン、ブ
ルーボーイ、セイラーボーイ、ルビー等の品種が代表的
なものとしてあげられる。
【0031】これらのセントポーリア属植物の植物体の
組織の切片を組織培養することにより、完全に分化した
無菌植物体を誘導する。当該植物体の組織の切片として
は、通常の植物体の適宜の器官の組織切片を滅菌処理し
たもの、あるいは、消毒種子を無菌的に播種して発芽さ
せた無菌幼苗、当該幼苗を生育させた植物体の茎頂、
葉、葉柄の切片等が、好適に利用される。
【0032】このようなセントポーリア属植物の無菌状
態の植物体の組織切片を、合成培地であるMS培地(ム
ラシゲとスクーグの基本無機塩培地)をベースとして、
炭素源を含有し、pH調整されたMS改変培地を基本培
地(A)とし、これにオーキシン類とサイトカイニン類
とからなる植物ホルモンを添加し、含有せしめた固体培
地に置床し、特定の培養条件下で培養して芽を分化させ
る。
【0033】前記MS改変培地は、通常のMS培地をベ
ースとして、葉酸約0.5重量%、ビオチン約0.05
重量%添加したものが好適に使用され、これに炭素源と
して、例えば、ショ糖を2重量%添加し、pH5.0〜
6.0、好ましくはpH5.8、に調整し、これを基本
培地(A)とする。
【0034】このように、当該基本培地(A)は、前述
のMS改変培地、炭素源としてのショ糖が、好適なもの
として使用されるが、これに限らず、これと同等の組
成、もしくは成分のものであれば他の同効の合成培地が
同様に利用できることはいうまでもない。他の同効の合
成培地としては、具体的には、MS培地、B5培地、N-
itsch の培地(1965年)が挙げられる。
【0035】当該基本培地(A)に添加される植物ホル
モンとしては、ナフタレン酢酸0.1〜1.0mg/
l、ベンジルアデニン0.1〜1.0mg/lが、好適
に使用されるが、これに限らず、これらと同効の生理活
性を有する他のオーキシン類、サイトカイニン類も、同
様に組合せて利用できる。他のオーキシン類としては、
インドール酢酸、インドール酪酸、2,4−ジクロロフ
ェノキシ酢酸等が、サイトカイニン類としては、カイネ
チン、ゼアチン、2−イソペンテニルアミノプリン等
が、それぞれ挙げられる。
【0036】このような成分を含有せしめた培地に、支
持材料として、例えば、寒天約0.7重量%を添加し、
pHを前記範囲に調整し、常法により殺菌処理した後、
適宜の容器中に無菌的に分注し、固形化させて固体培地
を調製する。前記支持材料としては、寒天に限らず、そ
れと同効の成分であれば、ジェランガム等、適宜のもの
が利用できる。
【0037】前記のセントポーリア属植物の無菌状態の
植物体の組織の切片を、当該固体培地に置床し、培養す
ることにより、芽を分化させ、萌芽させるが、この場
合、22〜27℃、好適には25℃±1℃の温度条件、
及び14〜17時間日長、好適には16時間日長の光照
射条件下で約30〜40日間培養することにより、芽を
分化させ、萌芽させることができる。
【0038】次いで、前記工程により得られた萌芽した
幼苗を、炭素源を含有し、pH調整され、無機塩濃度が
1/1以下、好ましくは1/2〜1/5、に調整され、
当該無機塩濃度が低減されたMS改変培地を基本培地
(B)とした幼植物体誘導及び成長固体培地に植え付け
て培養する。
【0039】当該幼植物体誘導及び成長固体培地として
は、例えば、炭素源として、ショ糖1重量%を使用し、
pH5.8に調整し、無機塩濃度を1/2に調整したM
S改変培地を基本培地(B)とし、さらに、正常な発根
を促進させ植物体を安定させるために、活性炭粉末0.
01〜1重量%、好ましくは0.1〜0.3重量%、を
加えたものが、好適に使用される。当該基本培地(B)
は、これに限らず、前述のようなこれと同効の合成培地
であれば同様に利用できるこはいうまでもない。
【0040】前記萌芽した幼苗を、適宜の容器中に無菌
的に分注した前記固体培地に移植し、次いで、ジケグラ
ック溶液を幼苗の葉面、頂芽の一方又は両方に滴下し、
例えば、約25℃で16時間日長の光照射条件下で育苗
する。当該ジケグラック溶液としては成分濃度20〜2
00mg/lのものを使用し、葉面、及び/又は頂芽に
約1ml滴下する。当該成分濃度範囲以外では、適正な
形態の植物体を得ることはできない。尚、ジケグラック
は、ソジウム−2,3,4,6−ジ−O−イソプロピリ
デン−α−L−キシロ−2−ヘクスロフラノソネートの
略称である(11892の化学商品,化学工業日報社発
行,第1455頁(1992年)参照)。
【0041】また、前記容器としては、試験管、三角フ
ラスコ、ガラスビン、プラスチック容器等が好適に利用
されるが、充分な光透過性を有するものであれば適宜の
ものが利用可能である。育苗は、光を断続的に長期間照
射する条件下すなわち、14〜17時間日長、好ましく
は16時間日長、の光照射条件下で行い、温度条件は、
22〜27℃、特に、25℃±1℃、が好ましい。
【0042】これらの温度、日照時間等の培養環境を正
確に制御することにより、高い再現性で植物体を増殖さ
せることができるが、特に、培養の温度条件は、重要な
要件であり、25℃±1℃の温度条件が、植物体を、均
一、かつ、安定に再生させ、成長させることができるこ
とから、特に好ましい。そして、培養の温度条件を、例
えば、20℃以下に低下させると、成長が遅くなること
が確認された。
【0043】以上のように、本発明は、前記の培養プロ
セス、培地組成、培養条件、処理条件を必須の要件とす
るものであり、これらのいずれを欠いてもセントポーリ
ア属植物を容器内で栽培するのに適するように矮化させ
ることはできず、本発明の所期の目的を達成することは
できない。そして、このような培養プロセス、培地組
成、培養条件、処理条件は、セントポーリア属植物に特
有のものであって、これらは、各種植物の組織培養技
術、あるいは、前記トレニア、ケイトウ、センニチコ
ウ、ホウセンカ等の密閉容器内栽培技術等の従来公知の
事項をもってしても到底予期することはできないもので
ある。
【0044】次に、試験例を示して本発明の特有の効果
について検証する。 試験例1 (分化した植物体の誘導)セントポーリア属植物とし
て、オプティマラ品種の赤花種、白花種等を使用して分
化した植物体の誘導を行った。温室栽培を行って得た植
物体の葉を常法により殺菌したものから5mm〜10m
m程度の材料を採取し、切片を調製した。
【0045】培地としては、MS改変培地を基本培地
(A)とし、これに、ナフタレン酢酸、及びベンジルア
デニンを所定濃度添加した培地を使用した。なお、基本
培地(A)としては、MS培地に、ビオチン0.05重
量%、葉酸0.5重量%添加して改変したMS改変培地
を使用し、これに、ショ糖2重量%、寒天0.7重量%
を加え、pHを5.8に調整したものを培地として使用
した。常法により加圧蒸気殺菌した基本培地を、直径2
5mmの試験管に20ml分注した。
【0046】次いで、前記セントポーリア属植物の葉の
切片を前記試験管内の基本培地上に置床し、室温25
℃、照度4,000Luxの天然昼光色蛍光灯による1
6時間日長の照射条件下で30日間培養して芽を分化さ
せた。
【0047】(容器内育苗試験)次いで、ショ糖1重量
%、寒天0.7重量%添加し、pH5.8に調整し、無
機塩濃度を1/2に調整し、活性炭粉末0.1重量%を
添加分散させたMS改変培地に、常法により加圧蒸気殺
菌した培地を、容積200mlの耐熱ガラス製フラスコ
容器に50ml分注した。
【0048】前記により分化させ、萌芽させた幼苗を、
フラスコ内の固形培地に置床し、次いで、所定の成分濃
度のジケグラック溶液(三共社製、登録商標アトリナー
ル)を、当該幼苗の葉面に1ml滴下し、室温25±1
℃で4,000Lux天然昼光色蛍光灯による16時間
日長の照射条件下で静置培養することにより、植物体の
矮化状態を観察した。ジケグラック溶液の濃度試験の結
果を、表1に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
【実施例】次に、実施例に基づいて本発明を具体的に説
明する。 実施例1 セントポーリアリトルサファイア、セントポーリアオプ
ティマラ白花種の育苗前記セントポーリア属植物の植物
体の葉柄部分を切り取り、7%サラシ粉溶液の濾液で1
5分間滅菌処理した後、無菌水で数回洗浄した。次い
で、葉柄部分を小さく切断し、その葉柄切片を、ショ糖
2重量%、ビオチン0.05重量%、葉酸0.5重量%
を含有し、pH5.8に調整されたMS改変培地を基本
培地(A)とし、これに、ナフタレン酢酸0.1mg/
l、ベンジルアデニン1.0mg/lを添加し、さら
に、寒天0.7重量%を含有する固体培地に置床し、2
5℃で4,000Luxの天然昼光色蛍光灯による16
時間日長の光照射条件下で1ヶ月培養した。
【0051】次に、前記により分化させ、萌芽させた幼
苗を、容器に無菌的に分注した幼植物体誘導及び成長固
体培地に置床し、成分濃度100mg/lのジケグラッ
ク溶液を、当該幼苗の葉面に1ml滴下し、25℃で
4,000Luxの天然昼光色蛍光灯の16時間日長の
光照射条件下に育苗して、幼植物体を成長させた。
【0052】当該幼植物体誘導及び成長固体培地として
は、ショ糖1重量%、寒天0.7重量%添加し、pH
5.8に調整し、無機塩濃度を1/2に調整したMS改
変培地を基本培地とし、さらに、活性炭粉末0.1重量
%添加分散させたものを常法により殺菌し、容積200
mlのガラス製フラスコ容器に分注して形成したものを
使用した。育苗開始後30〜40日間で、根が伸長し、
葉、葉柄が成長し、発根状態が良好で、葉、葉柄の形
態、及び草姿の良好な植物体が得られた。
【0053】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明は、セント
ポーリア属植物の植物体の組織の切片を組織培養するこ
とにより得た完全に分化した無菌植物体を利用して、セ
ントポーリア属植物を増殖させ、容器内で栽培するのに
適した草姿の矮化植物体を育苗するものであり、これに
より、本発明は、従来の交配種にあっては、草姿が大き
く、容器内栽培が難しかったセントポーリア属植物を、
簡便に増殖させ、矮化させ、容器内で育苗することがで
きる効果を有する。
【0054】また、従来の交配種ではみられない多くの
腋芽が出てくるようになるので、実際の環境下にはない
草姿のセントポーリア属植物を作出し、その優良株のみ
を選択的に増殖させ、矮化させ、容器内で育苗すること
ができる効果を有する。
【0055】さらに、本発明の矮化植物体の育苗方法
は、材料を採取してから植物体の成長に至るまで無菌的
に培養するものであることから、親の植物体と遺伝的に
同一の植物体を安定してウイルスフリーの状態で育成さ
せることが可能であり、従来、特に容器内での植物体の
成長が困難であった交配優良種を、簡便、かつ大量に容
器内で矮化成長させることができることから、その産業
上の有用性はきわめて高いものである。
【0056】さらに、また、本発明は、植物体の生育に
必要な水分、栄養素等は、固体培地中に添加されている
ので、格別に肥料を与えなくても植物体を生育させるこ
とが可能であることから、本発明の育苗技術によれば、
格別の管理を必要とすることなく、容器内で栽培するの
に適正な草姿の植物体が、簡便、かつ大量に得られる効
果を有する。
フロントページの続き (56)参考文献 古川仁朗著「図解組織培養入門」(昭 和60年12月24日第4刷)誠文堂新光社、 第68〜69頁 「11892の化学商品」(平成4年1月 22日発行)化学工業日報社、第1455頁 (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) A01H 4/00 BIOSIS(DIALOG) JICSTファイル(JOIS)

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 セントポーリア属植物を容器内で育成
    し、開花させ、そのまま観賞することができる当該植物
    の容器内育苗方法であって、組織培養により得たセント
    ポーリア属植物の完全に分化した無菌植物体を、炭素源
    を含有し、pH調整され、無機塩濃度が1/1〜1/5
    に調整され、当該無機塩濃度が低減された合成培地を基
    本培地とする固体培地に植え付けた後、ジケグラック溶
    液を葉面、頂芽の一方又は両方に滴下し、育苗すること
    を特徴とするセントポーリア属植物の矮化植物体の育苗
    方法。
  2. 【請求項2】 ショ糖1重量%を含有し、pH5.8に
    調整され、無機塩濃度が1/2に調整された合成培地を
    基本培地とする固体培地を用いることを特徴とする請求
    項1記載のセントポーリア属植物の矮化植物体の育苗方
    法。
  3. 【請求項3】 成分濃度20〜200mg/lのジケグ
    ラック溶液を用いることを特徴とする請求項1記載のセ
    ントポーリア属植物の矮化植物体の育苗方法。
  4. 【請求項4】 合成培地が、MS改変培地であることを
    特徴とする請求項1記載のセントポーリア属植物の矮化
    植物体の育苗方法。
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Non-Patent Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
「11892の化学商品」(平成4年1月22日発行)化学工業日報社、第1455頁
古川仁朗著「図解組織培養入門」(昭和60年12月24日第4刷)誠文堂新光社、第68〜69頁

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