JP2908954B2 - スミレ属植物の容器内開花による生産方法 - Google Patents

スミレ属植物の容器内開花による生産方法

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  • Breeding Of Plants And Reproduction By Means Of Culturing (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、スミレ属植物の容器内
開花による生産方法に関するものであり、さらに詳しく
は、組織培養により得られたスミレ属植物の幼苗を、特
定の幼植物体の成長固体培地を用いて、特定の培養プロ
セス、及び培養条件により培養することにより、従来、
同系統のものを大量に増殖することが難しく、優良交配
種を広く普及させることが困難であったスミレ属植物
を、安定、かつ高収率で大量増殖させ、容器内で花芽を
分化させ、開花させ、そのまま観賞することが可能なス
ミレ属植物を容器内開花により生産する方法に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】従来、植物体の組織の切片を培地上で無
菌的に培養することにより、不定芽、不定根、花芽、カ
ルス等を誘導し、形成させ、成長させることにより当該
植物を増殖させる、植物の組織培養による増殖方法が、
種々の植物を対象に研究され、これまでに、種々の技術
が開発されている。
【0003】このような植物の組織培養技術の進展に伴
い、当該技術を用いた各種植物の作出方法、増殖方法が
開発され、各々の植物に好適な培地組成、培養条件等が
具体的なものとして確立され、すでに、ウイルスフリー
株の生産、大量繁殖方法等として実用化されているもの
もあり、例えば、ダリア、ジャガイモの茎頂組織培養
(生長点培養)による無病固体の再生、ラン(シンビジ
ウム属)の茎頂組織培養によるプロトコームライクボデ
ィ(原塊体様組織塊PLB)の再生、また、分割増殖に
よって遺伝的に均一な苗の大量増殖技術等、様々な技術
が開発され、実用化されている。
【0004】そして、現在では、このような組織培養技
術は、草花、野菜等の草木類から、果樹、花木、樹木等
の木本類に至るまで、様々な分野で応用されつつあり、
特に、我国では、ラン、カーネーション、キク、ユリ、
シュツコンカスミソウ、セントポーリア、ガーベラ、シ
クラメン、イチゴ等のような栄養繁殖される園芸作物の
苗生産技術を中心として定着化しつつある。
【0005】しかしながら、このような植物の組織培養
技術は、いまだ完成された技術ではなく、未知の分野も
多く、むしろ今後の研究に待つべきところも多い技術で
あって、例えば、ラン科植物の栄養繁殖についても、研
究の進んでいるシンビジウム以外は、培地組成や培養技
術がまだ一般化する程には完成されておらず、また、東
洋系と呼ばれるカンラン、シュンラン等の一群のもの
は、いまだ組織培養による増殖体系は確立されていない
状況にある。
【0006】一般の草花や観葉植物についても、増殖組
織の液体震盪培養による多芽体の形成、ホルモン剤添加
培地での多芽体の誘発、苗の大量増殖等の研究、開発が
活発に行われているが、変異発生の危険性が非常に高い
等今後解決すべき問題は多く残されている。
【0007】また、球根類や多年草で、種子繁殖によっ
て育苗されるシクラメンやプリムラ類等は、遺伝的な分
離で成品に均一性の欠けることや、採取量が少なく、優
良系の種子不足の問題等があることから、優良固体を組
織培養によって増殖する試みがなされている。
【0008】また、採種用母株の保存維持や、種子繁殖
により生産性の高い野菜のF1 固体や、草花のF1 固体
を、組織培養によって増殖し、栄養繁殖系の苗として供
給することも試みられているが、このような従来の種子
繁殖系を栄養増殖とする技術は、一部実用化されている
程度に過ぎない。
【0009】このように、植物の組織培養技術が、各種
植物の誘導、作出、増殖方法として、広く検討される中
で、各種観賞用植物の組織培養による誘導、増殖技術等
が提案されている。
【0010】すなわち、例えば、有用一年生植物の茎頂
部を摘出し、これを無機塩類組成物及び植物生長ホルモ
ンを含む人工培地に移植し、これを0.5〜10rpm
の回転数にて回転培養して苗条原基を増殖し、得られた
苗条原基を静置培養して苗化することからなる有用一年
生植物の大量増殖方法が提案されている(特開昭59−
132823号公報)。しかしながら、この方法は、主
として苗条原基(Sho-ot primordia)を利用して色素
体、液胞、油体、貯蔵物質等の二次代謝産物からなる有
用物質を人工的に大量生産するものであり、観賞用植物
の増殖については、ペチュニア、アサガオ等に言及して
いるに過ぎない。
【0011】また、植物の組織片より光照射下でカルス
から発芽、発根させて増殖する植物の再分化方法、及び
そのための増殖用培地として、植物ホルモンであるサイ
トカイニン類0.1〜10ppm、及びオーキシン類
0.01〜10ppmを加えたMS培地が提案されてい
る(特開平3−139224号公報)。しかしながら、
これは、キク科植物を短期間に大量に得るために好適な
キク科植物用の特定の培地組成、培養条件等を検討した
ものである。
【0012】また、植物の組織片よりカルスを誘導せし
め、次いで、当該カルスを培養して不定芽を分化せしめ
た後、当該不定芽を培養して幼植物体を得ることからな
る植物の再生方法、及びその種苗の増殖方法が提案され
ている(特開平4−45730号公報)。しかしなが
ら、この方法は、分化させた不定芽を利用するものであ
り、キキョウ属植物を対象としたものである。
【0013】さらに、顕花植物体の組織切片又はこれを
培養して得られる再生植物体の組織切片を培地にて培養
して再分化せしめて再生植物体を得、次いで当該再生植
物体を再分化時とは異なる組成を有する培地で培養して
開花せしめる顕花植物の培養方法が提案されている(特
開平4−30733号公報)。しかしながら、この方法
は、再分化培養に用いる培地、及び開花培養に用いる培
地の培地組成について検討したものであり、対象とする
植物も、ウマノスグサ科、ナデシコ科、ナス科に属する
植物、特にトレニア属植物が例示されているに過ぎな
い。
【0014】しかして、最近、密閉容器中で植物を栽培
して開花させ、そのまま観賞可能とする容器内開花に関
する技術も提案されている。このような提案の例とし
て、例えば、植物体の茎切片を1次基本培地で無菌的に
培養して不定芽を形成させた後、これを特定の無機塩濃
度にし、かつ矮化剤を加えた2次基本培地に置床して天
然昼光色蛍光灯を短日照射し密閉培養することからなる
栽培方法が提案されている(特開昭60−221020
号公報)。しかしながら、この方法は、不定芽を利用す
るものであり、対象とする植物もトレニア(和名ハナウ
リクサ)に限られるものである。
【0015】また、無菌の幼植物体の全草を透視可能な
容器中の矮化剤として特定の成分を添加したMS培地に
植え付け、光を断続的に長期間照射し無菌的に密閉培養
することからなる栽培方法が提案されている(特開平2
−200121号公報)。しかしながら、この方法は、
幼植物体の全草を用いるものであり、ユリ科に属するセ
ンニチコウの矮化条件を検討したものである。
【0016】このように、植物を密閉容器中で栽培し
て、そのまま観賞可能とする容器内栽培技術を確立する
には、植物を密閉容器内で、安定、かつ高収率で増殖さ
せる技術、密閉容器中で適正に育成させるための矮化技
術、花芽を分化させ、開花させる開花技術等を開発し、
確立することが前提とされるが、そもそも、密閉容器中
で植物を栽培し、開花させることは大変困難であり、こ
れまで、前記のような、矮化トレニアの密閉容器中での
開花、センニチコウの密閉容器中での開花等の報告があ
るものの、現在、密閉容器中で矮化植物を育成し、観賞
用に供されているものは花をつけない観葉植物がほとん
どである。
【0017】このように、一般に、各種植物を組織培養
により増殖させる技術が開発され、広く普及するに伴
い、各種植物に好適な個有の培養条件等が研究、開発さ
れ、確立されつつあるものの、実用化レベルに至ってい
るものはそれほど多くはなく、まして、植物を密閉容器
もしくは通気性容器中で栽培して花芽を分化させて開花
させ、そのまま観賞することが可能な植物の容器内育成
技術については、その研究例も少なく、ほとんど実用化
されていない状況にある。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】このような状況の中
で、本発明者らは、容器中で植物を栽培して花芽を分化
させ、開花させ、そのまま観賞することが可能な植物の
容器内育成技術を確立することを目標として、その技術
上のベースとなる基礎的技術、すなわち植物を、安定、
かつ高収率で増殖させる方法、安定に矮化させるための
矮化条件、安定に花芽を分化させ、かつ長期にわたって
開花させるための栽培条件等について種々検討するため
にその基礎的研究に着手した。
【0019】本発明者らの研究及びこれまでの知見によ
ると、このような植物の育成技術を確立するには、その
技術上のベースとなる前記のような各種植物の増殖技
術、矮化技術、開花技術等の基礎的技術の開発が大前提
となることはいうまでもないが、これらの各技術は、実
際上、個々の植物の種類によって全く相違するものであ
り、例えば、前記のトレニア、センニチコウについて
も、その栽培方法、栽培条件を、そのまま他の植物の場
合に転用しても、所期の目的を達成することはほとんど
不可能であり、各植物の種類に応じて、それぞれ個有の
栽培方法、栽培条件を開発し、確立することが必要であ
る。
【0020】このような知見を前提として、本発明者ら
は、各種植物体のうちでも、短茎種で容器内での栽培に
向いているにもかかわらず従来の交配種では第2代目以
降種子ができにくくてその増殖が難しく、また、交配種
においては外観や色にバラツキが出て均一な植物体を作
出することが難しく、従って、優良品種を広く普及させ
ることが難しいことから、これらの点を解決できる新し
い増殖技術の開発が強く要請されていたスミレ属植物に
着目し、これを安定、かつ高収率で増殖させ、容器内で
花芽を分化させ、開花させるための方法を開発すること
を目標として鋭意研究を積み重ねた結果、特定の培養プ
ロセスと特定の培地組成、培養条件を組み合わせること
によって、所期の目的を達成し得ることを見い出し、本
発明を完成するに至った。
【0021】すなわち、本発明は、従来、交配により作
出した優良品種の増殖が難しいとされていたスミレ属植
物を、大量に増殖させ、容器内で花芽を分化させ、開花
させる方法を提供することを目的とするものである。
【0022】また、本発明は、組織培養により得られた
スミレ属植物の幼苗を利用し、組織培養により、当該植
物を、安定、かつ高収率に増殖させ、容器内で開花させ
る方法を提供することを目的とするものである。
【0023】さらに、本発明は、スミレ属植物を容器中
で無菌的に培養して花芽を分化させ、開花させ、そのま
ま当該容器中で観賞することが可能な当該植物の容器内
開花による生産方法を提供することを目的とするもので
ある。
【0024】さらに、また、本発明は、特定の培養プロ
セス、特定の培地組成、及び特定の培養条件下で組織培
養により形成させたスミレ属植物の幼苗を利用して、当
該植物を、安定、かつ高収率で大量に増殖させ、容器内
で花芽を分化させ、開花させるスミレ属植物の容器内開
花による生産方法を提供することを目的とするものであ
る。
【0025】
【課題を解決するための手段】このような本発明の目的
を達成するための構成は、以下の(1)〜(10)の技
術的手段から成る。 (1)組織培養により得られたスミレ属植物の幼苗を、
炭素源を含有し、pH調整され、無機塩濃度が1/1以
下に調整された合成培地を基本培地とし、当該基本培地
を無菌的に収納し、かつ無菌フィルターで通気性を持た
せた容器内に移植し、これを22〜27℃の温度条件で
12〜18時間日長の培養条件で前期育苗培養後、さら
に、昼温度で光照射、及び夜温度で暗所の条件で後期育
苗培養することを特徴とするスミレ属植物の容器内開花
による生産方法。
【0026】(2)22〜27℃の昼温度で6〜10時
間日長の光照射、及び8〜15℃の夜温度で14〜18
時間暗所の条件で後期育苗培養することを特徴とする前
記(1)記載のスミレ属植物の容器内開花による生産方
法。
【0027】(3)組織培養により得られたスミレ属植
物の幼苗を、炭素源を含有し、pH調整され、無機塩濃
度が1/1以下に調整された合成培地を基本培地とし、
当該基本培地を無菌的に収納し、かつ無菌フィルターで
通気性を持たせた容器内に移植し、これを22〜27℃
の温度条件で12〜18時間日長の培養条件で前期育苗
培養後、後期育苗培養として、昼温度22〜27℃で6
〜10時間日長の光照射、及び夜温度8〜15℃で14
〜18時間暗所の条件で30〜40日間培養し、さら
に、22〜27℃の温度条件で14〜18時間日長の光
照射の条件で14〜30日間培養することを特徴とする
スミレ属植物の容器内開花による生産方法。
【0028】(4)スミレ属植物が、ヒゴスミレ、チシ
オスミレ、スズキスミレ又はナンバンスミレ(ツクシス
ミレ)である前記(3)記載のスミレ属植物の容器内開
花による生産方法。
【0029】(5)組織培養により得られたスミレ属植
物の幼苗を、炭素源を含有し、pH調整され、無機塩濃
度が1/1以下に調整された合成培地を基本培地とし、
当該基本培地を無菌的に収納し、かつ無菌フィルターで
通気性を持たせた容器内に移植し、これを22〜27℃
の温度条件で12〜18時間日長の培養条件で前期育苗
培養後、後期育苗培養として、8〜15℃の温度条件で
6〜10時間日長の光照射の条件で30〜40日間培養
し、さらに、22〜27℃の温度条件で8〜18時間日
長の光照射の条件で14〜20日間培養することを特徴
とするスミレ属植物の容器内開花による生産方法。
【0030】(6)スミレ属植物が、ヒゴスミレ、チシ
オスミレ、アリアケスミレ又はエイザンスミレである前
記(5)記載のスミレ属植物の容器内開花による生産方
法。
【0031】(7)組織培養により得られたスミレ属植
物の幼苗を、炭素源を含有し、pH調整され、無機塩濃
度が1/1以下に調整された合成培地を基本培地とし、
当該基本培地を無菌的に収納し、かつ無菌フィルターで
通気性を持たせた容器内に移植し、これを22〜27℃
の温度条件で12〜18時間日長の培養条件で前期育苗
培養後、後期育苗培養として、22〜27℃の温度条件
で6〜10時間日長の光照射の条件で20〜30日間培
養し、さらに、22〜27℃の温度条件で14〜18時
間日長の光照射の条件で14〜30日間培養することを
特徴とするスミレ属植物の容器内開花による生産方法。
【0032】(8)スミレ属植物が、スズキスミレであ
る前記(7)記載のスミレ属植物の容器内開花による生
産方法。
【0033】(9)基本培地が、ショ糖1重量%含有
し、pH5.0〜6.0に調整され、無機塩濃度が1/
2〜1/5に調整された合成培地であることを特徴とす
る前記(1)、(3)、(5)又は(7)記載のスミレ
属植物の容器内開花による生産方法。
【0034】(10)合成培地が、MS改変培地である
ことを特徴とする前記(1)、(3)、(5)又は
(7)記載のスミレ属植物の容器内開花による生産方
法。
【0035】続いて、本発明について詳細に説明する。
一般に、スミレ(菫)というと、スミレ科、特に、スミ
レ属植物の総称を意味しており、これらは、スミレ科の
多年草で、葉は、卵状長棒円形で、春に葉間に数本の花
茎を出し、頂に濃紫色の花一つをつける。また、スミレ
科は、双子葉植物の一科であり、世界に22属約千種、
我国にはスミレ属だけで約50種があり、まれに木本
で、多くは草木である。
【0036】本発明は、このうち、スミレ属(Viola
属)に属する植物を対象とするものであり、例えば、ア
オイスミレ(V. nondoensis)、アリアケスミレ(V. beto
nicif-olia var. albescens)、ヒゴスミレ(V. chaeroph
ylloides var. sieboldiana)、エイザンスミレ(V. eiza
nesis)、サクラスミレ (V. hirtipes)、コスミレ (V.ja
ponica) 、スミレ(V. mandshurica)、コミヤマスミレ
(V. maximovicziana) 、ニオイスミレ (V. ordorata)、
シロスミレ (V. partinii)、アカネスミレ (V.phalacro
carpa)、ミヤマスミレ(V. selkirkii)、ノジスミレ(V.
yedoensis)、チシオスミレ(V. hirtipes var.)、ナンバ
ンスミレ(ツクシスミレ)(V. diffusavar. glabell
a)、スズキスミレ(スミレとヒゴスミレの交配種)等の
品種が代表的なものとしてあげられる。
【0037】本発明では、これらのスミレ属植物の幼苗
が、出発材料として使用されるが、当該スミレ属植物の
幼苗は、以下のように、スミレ属植物の植物体の組織の
切片を組織培養することにより生産される。スミレ属植
物の植物体の組織の切片としては、通常の植物体の適宜
の器官の組織切片を滅菌処理したもの、あるいは、消毒
種子を無菌的に播種して発芽させた無菌幼苗、当該幼苗
を生育させた植物体の根、葉、又は葉柄の切片等が、好
適に利用される。
【0038】このようなスミレ属植物の無菌状態の植物
体の組織切片を、合成培地であるMS培地(ムラシゲと
スクーグの基本無機塩培地)をベースとして、炭素源を
含有し、pH調整されたMS改変培地を基本培地(A)
とし、これにオーキシン類とサイトカイニン類とからな
る植物ホルモンを添加し、含有せしめたカルス誘導固体
培地に置床し、特定の培養条件下で培養してカルスを誘
導させる。
【0039】前記MS改変培地は、通常のMS培地をベ
ースとして、葉酸約0.5重量%、ビオチン約0.05
重量%添加したものが好適に使用され、これに炭素源と
してのショ糖を、例えば、2重量%添加し、pH5.0
〜6.0、好ましくはpH5.8、に調整し、これを基
本培地(A)とする。このように、当該基本培地(A)
は、前記MS改変培地、炭素源としてのショ糖が、好適
なものとして使用されるが、これに限らず、これと同効
の合成培地であれば同様に利用できることはいうまでも
ない。具体的には、MS培地、B5培地、Nitschの培地
(1965年)等が挙げられる。
【0040】当該基本培地(A)に添加される植物ホル
モンとしては、ナフタレン酢酸0.1〜2.0mg/
l、ベンジルアデニン0.1〜6.0mg/lが、好適
に使用されるが、これに限らず、これらと同効の生理活
性を有するものであれば、他のオーキシン類、サイトカ
イニン類も同様に組合わせて利用できる。他のオーキシ
ン類としては、インドール酢酸、インドール酪酸、2,
4−ジクロロフェノキシ酢酸等が、サイトカイニン類と
しては、カイネチン、ゼアチン、2−イソペンテニルア
ミノプリン等が、それぞれ挙げられる。
【0041】このような成分を含有せしめた培地に、支
持材料として、例えば、寒天約0.7重量%を添加し、
pHを前記範囲に調整し、常法により殺菌処理した後、
適宜の容器中に無菌的に分注し、固形化させてカルス誘
導固体培地を調製する。前記支持材料としては、寒天に
限らず、それと同効の成分であれば、ジェランガム等、
適宜のものが利用できる。
【0042】前記のスミレ属植物の植物体の組織の切片
を、当該カルス誘導固体培地に置床し、培養することに
より、カルスを誘導させるが、この場合、22〜27
℃、好適には25℃±1℃の温度条件、及び12〜18
時間日長、好適には16時間日長の光照射条件下で約1
ヶ月間培養することにより、安定、かつ高収率でカルス
を誘導することができる。
【0043】前記工程により得られたカルスを、前記基
本培地(A)をベースとする液体培地中に加え、震盪回
転数100rpm以上、好ましくは130〜150rp
mの条件下で培養して、緑色で直径3〜5mm程度のミ
ニカルスを誘導させる。このような緑色のミニカルス
を、例えば、1週間ごとにピペット等で採取し、約1ヶ
月継代培養する。
【0044】当該液体培地としては、前記基本培地
(A)に、ナフタレン酢酸0.1〜5.0mg/l、ベ
ンジルアデニン0.5〜5.0mg/lを添加した液体
培地が、好適に使用されるが、添加する植物ホルモン
は、これに限定されず、前述のように、これらと同効の
生理活性を有する他のオーキシン類、サイトカイニン類
も、同様に利用することができる。培養の温度条件、及
び光照射条件は、前記工程と同様に設定する。
【0045】当該工程においては、通常の培養方法で
は、前記ミニカルスの形成は行なわれないが、このよう
な高速の回転条件を付与することにより、はじめて前記
緑色のミニカルスを形成させることが可能である。従っ
て、このような高速の回転条件を付与することは、本工
程におけるミニカルスの形成手段として必須の要件であ
る。
【0046】次に、前記工程により得られたミニカルス
を、前記基本培地(A)からなるホルモンフリーの分化
用固体培地に置床して培養することにより、ミニカルス
から芽を分化させる。ホルモンフリーの条件を除き、他
は、前記カルス誘導固体培地と同様のものが使用できる
が、スミレ属植物について、このようなミニカルスから
芽を分化させる方法は、本発明者らによって開発された
ものである。本発明では、以上のような組織培養により
得られたスミレ属植物の幼植物体が、出発材料として使
用される。
【0047】すなわち、前記工程により得られたスミレ
属植物の分化した芽を、炭素源を含有し、pH調整さ
れ、無機塩濃度が1/1以下、好ましくは1/2〜1/
5、に調整されたMS改変培地を基本培地(B)とした
幼植物体誘導及び成長固体培地を用いて培養する。
【0048】当該幼植物体誘導及び成長固体培地として
は、例えば、炭素源として、ショ糖1重量%を使用し、
pH5.8に調整し、無機塩濃度を1/2に調整したM
S改変培地を基本培地(B)とし、これに寒天0.7重
量%、活性炭0.05〜0.3重量%添加したものが、
好適に使用される。当該基本培地(B)は、これに限ら
ず、前述のような、これと同効の合成培地であれば同様
に利用できることはいうまでもない。
【0049】前記分化した芽を、適宜の容器中に無菌的
に分注した前記固体培地に移植し、テフロンフィルタ
ー、綿栓等の無菌フィルターで封をして、通気性条件下
で、例えば、約25℃で16時間日長の光照射条件下で
培養する。
【0050】この場合の容器としては、試験管、三角フ
ラスコ、ガラスビン、プラスチック容器等が好適に利用
されるが、充分な光透過性を有するものであれば適宜の
ものが利用可能である。培養は、前期と後期とで異なっ
た培養条件で行う。まず、光を断続的に長期間照射する
条件下、すなわち12〜18時間日長、好ましくは16
時間日長の光照射条件で、22〜27℃好ましくは25
℃±1℃、の温度条件で約20〜30日間程度の前期育
苗培養を行った後、後期育苗培養を特定の温度条件、光
照射条件下で行う。
【0051】当該後期育苗培養は、以下の1)、2)、
3)又は4)の培養プロセス、培養条件で行う。 1)22〜27℃の昼温度で6〜10時間日長、好まし
くは8時間日長、の光照射、及び8〜15℃の夜温度で
14〜18時間暗所の条件からなるサイクルで約1ヶ月
程度培養する。
【0052】2)昼温度22〜27℃で6〜10時間日
長の光照射、及び夜温度8〜15℃で14〜18時間暗
所の条件で30〜40日間培養し、さらに、22〜27
℃の温度条件で14〜18時間日長の光照射の条件で1
4〜30日間培養する。
【0053】3)8〜15℃の温度条件で6〜10時間
日長の光照射の条件で30〜40日間培養し、さらに、
22〜27℃の温度条件で8〜18時間日長の光照射の
条件で14〜20日間培養する。
【0054】4)22〜27℃の温度条件で6〜8時間
日長の光照射の条件で20〜30日間培養し、さらに、
22〜27℃の温度条件で14〜18時間日長の光照射
で14〜30日間培養する。
【0055】これらの温度、日照時間等の培養環境を正
確に制御することにより、高い再現性で植物体を増殖さ
せ、開花させることができるが、特に、培養の温度条件
は、重要な要件であり、前期育苗培養、及び後期育苗培
養の昼温度条件は、25℃±1℃の温度条件が、短茎の
植物体を、均一、かつ安定に再生させ、開花させること
ができることから、特に好ましい。さらに、前記1)の
場合、後期育苗培養の後、温度条件を、例えば、室温
(25℃)に設定することにより、効率よく、開花させ
ることが可能である。そして、後期育苗培養を、これら
の特定の温度条件、光照射条件で、かつ特定の期間にわ
たって行うことが最適であり、これらの各条件の範囲外
では、好ましい結果を得ることができない。さらに、こ
れらの場合、通気性条件が必須の要件であり、密栓した
密閉容器を用いても、幼植物体から花芽を分化させ、開
花させることは困難である。
【0056】以上のように、本発明は、前記の培養プロ
セス、及び培地組成、培養条件を必須の要件とするもの
であり、これらのいずれを欠いてもスミレ属植物を容器
内で開花させることはできず、本発明の所期の目的を達
成することはできない。そして、このような培養プロセ
ス、及び培地組成、培養条件は、スミレ属植物に特有の
ものであって、これらは、各種植物の組織培養技術、あ
るいは、前記トレニア、センニチコウ等の密閉容器内栽
培技術等の従来公知の事項をもってしても到底予期する
ことはできないものである。
【0057】次に、参考試験例、及び試験例に基づいて
本発明の特有の効果について検証する。 参考試験例1 (カルスの誘導試験)スミレ属植物として、スミレ(Vi
ola mandshurica)、ヒゴスミレ(Viola cha-erophylloi
des var. sieboldiana) を使用してカルス誘導試験を行
った。常法により無菌的に培養して得た無菌植物体の葉
柄組織から5mm〜10mm程度の材料を採取し、切片
を調製した。
【0058】培地としては、MS改変培地を基本培地
(A)とし、これに、ナフタレン酢酸、及びベンジルア
デニンを所定濃度添加した培地を使用した。なお、基本
培地(A)は、MS培地に、ビオチン0.05重量%、
葉酸0.5重量%添加して改変したMS改変培地に、シ
ョ糖2重量%、寒天0.7重量%を加え、pHを5.8
に調整したものを使用した。常法により加圧蒸気殺菌し
た基本培地を、直径25mmの試験管に20ml分注し
た。
【0059】次いで、前記スミレ、ヒゴスミレの葉柄の
切片を、前記試験管内の基本培地上に置床し、室温25
℃、照度4,000Luxの天然昼光色蛍光灯による1
6時間日長の照射条件下で30日間培養してカルスを誘
導させた。その結果を表1に示す。表1から明らかなよ
うに、ナフタレン酢酸0.1〜2.0mg/l、ベンジ
ルアデニン0.1〜6.0mg/lを添加した場合、安
定、かつ高収率でカルスが誘導されることが確認され
た。
【0060】
【表1】
【0061】参考試験例2 (ミニカルス形成試験)前記試験例1で誘導したカルス
15.5gを、前記基本培地(A)に、ナフタレン酢酸
1.0mg/l、ベンジルアデニン1.0mg/lを添
加した液体培地50mlを収納した容積300mlの三
角フラスコ中に加え、25℃で4,000Luxの天然
昼光色蛍光灯で16時間日長照射条件下で、震盪回転数
を変えた条件で、培養を行って、緑色のミニカルスの形
成試験を行った。その結果を表2に示す。
【0062】
【表2】
【0063】表2から明らかなように、震盪回転数10
0rpm以上の高速回転条件の場合に、ミニカルスが形
成されることが分った。
【0064】また、ナフタレン酢酸、ベンジルアデニン
を所定濃度添加し、震盪回転数を130rpmに設定し
て試験した結果を表3に示す。表3から明らかなよう
に、ナフタレン酢酸1.0mg/l、ベンジルアデニン
1.0mg/lの濃度の場合に、ミニカルスが高収率で
形成されることが分った。
【0065】
【表3】
【0066】試験例1 (容器内開花試験)前記参考試験例1〜2と同様にして
形成させた各種のスミレ属植物(アリアケスミレ、ヒゴ
スミレ、スミレ、タチツボスミレ、スズキスミレ、ハグ
ロスミレ、チシオスミレ、ナンバンスミレ、エイザンス
ミレ)のミニカルスをピペットで採取した。一方、前記
基本培地(A)に、寒天0.7重量%加え、pH5.8
になるように調整した後、容積200mlの三角フラス
コに50ml分注して固形培地を形成した。次いで、前
記ミニカルスを、この三角フラスコ内の培地に置床し
て、室温25±1℃、天然昼光色蛍光灯により照度4,
000Lux、16時間日長の照射条件下で14〜30
日間静置培養して、ミニカルスから芽を分化させた。
【0067】次いで、ショ糖1重量%、寒天0.7重量
%添加し、pH5.8に調整し、無機塩濃度を1/2に
調整したMS改変培地に、常法により加圧蒸気殺菌した
培地を、容積200mlの耐熱ガラス製フラスコ容器に
50ml分注した。
【0068】前記ミニカルスから分化した芽を、フラス
コ内の固形培地に置床し、無菌フィルターのミリシール
(ミリポア社製テフロンフィルター)で封をした通気性
条件のもの、及びポリプロピレン製の栓で密栓した密閉
条件のものの2群に分けて、室温25±1℃で4,00
0Lux天然昼光色蛍光灯による16時間日長の照射条
件下で、1ヶ月静置培養して、前期育苗培養した後、2
5℃の昼温度で8時間日長、及び10℃の夜温度で16
時間暗所の条件からなるサイクルで、1ヶ月の後期育苗
培養を行った。続いて、各サンプルを室温(25℃)条
件下にもどして、各サンプルの花芽の分化、及び開花状
態を観察した。その結果を表4に示す。
【0069】
【表4】
【0070】表4から明らかなように、無菌フィルター
で封をした通気性のある容器を利用した群は、前期育苗
培養開始後約20日間で良好な葉、葉柄の形成、発根が
認められ、かつ後期育苗栽培で花芽の分化が認められた
後、約10〜15日間で開花し、短茎で、葉、葉柄、花
の形態が良好な植物体が得られた。なお、ポリプロピレ
ン製の栓で密栓した容器を利用した群は、花芽を分化さ
せ、開花させることはできなかった。
【0071】試験例2 (容器内開花試験)前記試験例1と同様にして各種のス
ミレ属植物(ヒゴスミレ、チシオスミレ、スズキスミ
レ、ナンバンスミレ)のミニカルスから分化させた芽
を、フラスコ内の固形培地に置床し、無菌フィルターの
ミリシール(ミリポア社製テフロンフィルター)で封を
した通気性条件のもの、及びポリプロピレン製の栓で密
栓した密閉条件のものの2群に分けて、室温25±1℃
で4,000Lux天然昼光色蛍光灯による16時間日
長の照射条件下で、1ヶ月静置培養して、前期育苗培養
を行った後、25℃の昼温度で8時間日長、4,000
Lux、及び10℃の夜温度で16時間暗所の条件のサ
イクルで、1ヶ月培養し、さらに、25℃の温度条件で
16時間日長、4,000Luxの条件で1ヶ月培養し
て、後期育苗培養を行い、各サンプルの花の分化、及び
開花状態を観察した。その結果を表5に示す。
【0072】
【表5】
【0073 】表5から明らかなように、無菌フィルター
で封をした通気性のある容器を利用した群は、前期育苗
培養開始後約20日間で良好な葉、葉柄の形成、発根が
認められ、かつ後期育苗栽培で花芽の分化が認められた
後、数日間で開花し、短茎で、葉、葉柄、花の形態が良
好な植物体が得られた。なお、ポリプロピレン製の栓で
密栓した容器を利用した群は、花芽を分化させることは
できたが、開花させることはできなかった。
【0073】試験例3 (容器内開花試験)前記試験例1と同様にして各種のス
ミレ属植物(ヒゴスミレ、チシオスミレ、アリアケスミ
レ、エイザンスミレ)のミニカルスから分化させた芽
を、フラスコ内の固形培地に置床し、無菌フィルターの
ミリシール(ミリポア社製テフロンフィルター)で封を
した通気性条件のもの、及びポリプロピレン製の栓で密
栓した密閉条件のものの2群に分けて、室温25±1℃
で4,000Lux天然昼光色蛍光灯による16時間日
長の照射条件下で、1ヶ月静置培養して、前期育苗培養
を行った後、10℃の温度条件で8時間日長、4,00
0Lux、の条件で1ヶ月培養し、さらに、25℃の温
度条件で16時間日長、4,000Lux、の条件で1
8日間培養して、後期育苗培養を行い、各サンプルの花
の分化、及び開花状態を観察した。その結果を表6に示
す。
【0074】
【表6】
【0075】表6から明らかなように、無菌フィルター
で封をした通気性のある容器を利用した群は、前期育苗
培養開始後約20日間で良好な葉、葉柄の形成、発根が
認められ、かつ後期育苗栽培で花芽の分化が認められた
後、数日間で開花し、短茎で、葉、葉柄、花の形態が良
好な植物体が得られた。なお、ポリプロピレン製の栓で
密栓した容器を利用した群は、花芽を分化させることは
できたが、開花させることはできなかった。
【0076】試験例4 (容器内開花試験)前記試験例1と同様にしてスズキス
ミレのミニカルスから分化させた芽を、フラスコ内の固
形培地に置床し、無菌フィルターのミリシール(ミリポ
ア社製テフロンフィルター)で封をした通気性条件のも
の、及びポリプロピレン製の栓で密栓した密閉条件のも
のの2群に分けて、室温25±1℃で4,000Lux
天然昼光色蛍光灯による16時間日長の照射条件下で、
1ヶ月静置培養して、前期育苗培養を行った後、25℃
の温度条件で8時間日長、4,000Luxの条件で1
ヶ月培養し、さらに、25℃の温度条件で16時間日
長、4,000Lux、の条件で1ヶ月培養して、後期
育苗培養を行い、各サンプルの花の分化、及び開花状態
を観察した。その結果を表7に示す。
【0077】
【表7】
【0078】表7に明らかなように、無菌フィルターで
封をした通気性のある容器を利用した群は、前期育苗培
養開始後約20日間で良好な葉、葉柄の形成、発根が認
められ、かつ後期育苗栽培で花芽の分化が認められた
後、数日間で開花し、短茎で、、葉柄、花の形態が良好
な植物体が得られた。なお、ポリプロピレン製の栓で密
栓した容器を利用した群は、花芽を分化させ、開花させ
ることはできなかった。
【0079】
【実施例】次に、参考例、及び実施例に基づいて本発明
を具体的に説明する。 参考例1 スミレ(Viola mandshurica)、及びヒゴスミレ(Viola
chaerophylloides va-r. sieboldiana) の培養 前記スミレ属の植物体の葉柄部分を切り取り、7%サラ
シ粉溶液の濾液で15分間滅菌処理した後、無菌水で数
回洗浄した。次いで、葉柄部分を小さく切断し、その葉
柄切片を、ショ糖2重量%、ビオチン0.05重量%、
葉酸0.5重量%含有し、pH5.8に調整されたMS
改変培地を基本培地(A)とし、これに、ナフタレン酢
酸1.0mg/l、ベンジルアデニン1.0mg/lを
添加し、さらに、寒天0.7重量%を含有するカルス誘
導固体培地に置床し、25℃で4,000Luxの天然
昼光色蛍光灯による16時間日長の光照射条件下で1ヶ
月培養した。
【0080】次に、前記により誘導されたカルス13.
5gを、前記基本培地(A)に、ナフタレン酢酸1.0
mg/l、ベンジルアデニン1.0mg/lを添加した
液体培地50ml中に加え、25℃で4,000Lux
の天然昼光色蛍光灯による16時間日長の光照射条件下
に、震盪回転数130rpmの条件で培養を行った。培
養後1週間ごとに、当該培養液中に形成された緑色のミ
ニカルスをピペットで採取し、継代培養を行った。
【0081】次に、前記により採取したミニカルスを、
前記基本培地(A)に寒天0.7重量%を添加し、pH
5.8に調整して形成した分化用固体培地に置床し、2
5℃で4,000Luxの天然昼光色蛍光灯の16時間
日長の光照射条件下で培養して、ミニカルスから芽を分
化させた。
【0082】実施例1 前記参考例1により得たスミレ属植物(スミレ、ヒゴス
ミレ)の分化させた芽を、容器に無菌的に分注した幼植
物体誘導及び成長固体培地に置床し、25℃で4,00
0Luxの天然昼光色蛍光灯の16時間日長の光照射条
件下に1ヶ月の前期育苗培養を行って、幼植物体を成長
させた。
【0083】当該幼植物体誘導及び成長固体培地として
は、ショ糖1重量%、寒天0.7重量%添加し、pH
5.8に調整し、無機塩濃度を1/2に調整したMS改
変培地を基本培地とし、これを常法により殺菌し、容積
200mlのガラス製フラスコ容器に分注して形成した
ものを使用した。当該フラスコ容器は、無菌フィルター
のミリシール(ミリポア社製テフロンフィルター)で封
をし、通気性条件下に前記培養を行った。
【0084】続いて、25℃の昼温度で8時間日長、及
び10℃の夜温度で16時間暗所の条件のサイクルで、
1ヶ月の後期育苗培養を行った後、通常の室温(25
℃)条件下に移した。前期育苗培養開始後20〜30日
間で、根が伸長し、葉、葉茎が成長し、後期育苗培養
で、容器内で花芽を分化し、その後10〜15日間で開
花し、発根状態が良好で、葉、葉茎の形態も良好な短茎
タイプの開花植物体が得られた。
【0085】実施例2 前記参考例1と同様にして得たスミレ属植物(ヒゴスミ
レ、チシオスミレ、スズキスミレ、ナンバンスミレ)の
分化させた芽を、容器に無菌的に分注した幼植物体誘導
及び成長固体培地に置床し、25℃で4,000Lux
の天然昼光色蛍光灯の16時間日長の光照射条件下に1
ヶ月の前期育苗培養を行って、幼植物体を成長させた。
【0086】当該幼植物体誘導及び成長固体培地として
は、ショ糖1重量%、寒天0.7重量%添加し、pH
5.8に調整し、無機塩濃度を1/2に調整したMS改
変培地を基本培地とし、これに寒天0.7重量%、活性
炭0.5重量%を加えたものを常法により殺菌し、容積
200mlのガラス製フラスコ容器に分注して形成した
ものを使用した。当該フラスコ容器は、無菌フィルター
のミリシール(ミリポア社製テフロンフィルター)で封
をし、通気性条件下に前記培養を行った。
【0087】続いて、25℃の昼温度で8時間日長
(4,000Lux)及び10℃の夜温度で16時間暗
所の条件のサイクルで、1ヶ月培養した後、さらに、2
5℃の温度条件で16時間日長(4,000Lux)の
条件で1ヶ月培養して、後期育苗培養を行った。前期育
苗培養開始後20〜30日間で、根が伸長し、葉、葉茎
が成長し、後期育苗培養で、容器内で花芽を分化し、そ
の後10〜15日間で開花し、発根状態が良好で、葉、
葉茎の形態も良好な短茎タイプの開花植物体が得られ
た。
【0088】実施例3 前記参考例1と同様にして得たスミレ属植物(ヒゴスミ
レ、チシオスミレ、アリアケスミレ、エイザンスミレ)
の分化させた芽を、容器に無菌的に分注した幼植物体誘
導及び成長固体培地に置床し、25℃で4,000Lu
xの天然昼光色蛍光灯の16時間日長の光照射条件下に
1ヶ月の前期育苗培養を行って、幼植物体を成長させ
た。
【0089】当該幼植物体誘導及び成長固体培地として
は、ショ糖1重量%、寒天0.7重量%添加し、pH
5.8に調整し、無機塩濃度を1/2に調整したMS改
変培地を基本培地とし、これに寒天0.7重量%、活性
炭0.5重量%を加えたものを常法により殺菌し、容積
200mlのガラス製フラスコ容器に分注して形成した
ものを使用した。当該フラスコ容器は、無菌フィルター
のミリシール(ミリポア社製テフロンフィルター)で封
をし、通気性条件下に前記培養を行った。
【0090】続いて、10℃の温度条件で8時間日長
(4,000Lux)の条件で1ヶ月培養し、さらに、
25℃の温度条件で16時間日長(4,000Lux)
の条件で、20日間培養して、後期育苗培養を行った。
前期育苗培養開始後20〜30日間で、根が伸長し、
葉、葉茎が成長し、後期育苗培養で、容器内で花芽を分
化し、その後10〜15日間で開花し、発根状態が良好
で、葉、葉茎の形態も良好な短茎タイプの開花植物体が
得られた。
【0091】実施例4 前記参考例1と同様にして得たスミレ属植物(スズキス
ミレ)の分化させた芽を、容器に無菌的に分注した幼植
物体誘導及び成長固体培地に置床し、25℃で4,00
0Luxの天然昼光色蛍光灯の16時間日長の光照射条
件下に1ヶ月の前期育苗培養を行って、幼植物体を成長
させた。
【0092】当該幼植物体誘導及び成長固体培地として
は、ショ糖1重量%、寒天0.7重量%添加し、pH
5.8に調整し、無機塩濃度を1/2に調整したMS改
変培地を基本培地とし、これに寒天0.7重量%、活性
炭0.5重量%を加えたものを常法により殺菌し、容積
200mlのガラス製フラスコ容器に分注して形成した
ものを使用した。当該フラスコ容器は、無菌フィルター
のミリシール(ミリポア社製テフロンフィルター)で封
をし、通気性条件下に前記培養を行った。
【0093】続いて、25℃の温度条件で8時間日長
(4,000Lux)の条件で1ヶ月培養し、さらに、
25℃の温度条件で16時間日長(4,000Lux)
の条件で、1ヶ月培養して、後期育苗培養を行った。前
期育苗培養開始後20〜30日間で、根が伸長し、葉、
葉茎が成長し、後期育苗培養で、容器内で花芽を分化
し、その後10〜15日間で開花し、発根状態が良好
で、葉、葉茎の形態も良好な短茎タイプの開花植物体が
得られた。
【0094】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明は、スミレ
属植物の幼苗を、特定の培養プロセスで、特定の培地組
成、及び培養条件下に組織培養することによって、スミ
レ属植物を容器内で増殖させ、開花させるものであり、
これにより、本発明は、従来の交配種にあっては、第2
代目以降種子ができにくく、その増殖が難しいとされて
いたスミレ属植物を、簡便に、しかも、安定、かつ高収
率で増殖させ、容器内で開花させることができる効果を
有する。
【0095】また、本発明は、従来の交配種においては
外観や色にバラツキが出て、均一な植物体を量産するこ
とが難しかったスミレ属植物を、その優良株のみを選択
的に、安定、かつ高収率で増殖させ、容器内で開花させ
ることができる効果を有する。
【0096】また、本発明は、スミレ属植物の交配種の
ように第2代目以降種子ができにくく、その増殖が困難
とされていたものでも、1つの株から均一な植物体を、
安定、かつ高収率で大量に増殖することを可能にすると
共に、通気性のある容器中で短茎のスミレ属植物体を誘
導し、花芽を分化させ、これを開花させることを可能に
したものであり、容器中で開花させ、そのまま観賞用と
することができる効果を有する。
【0097】さらに、本発明のスミレ属植物の容器内開
花による生産方法は、材料の採取から花芽の開花に至る
まで組織培養により無菌的に培養するものであることか
ら、親の植物体と遺伝的に同一の植物体、花を安定して
ウイルスフリーの状態で育成させることが可能であり、
従来、特に増殖が困難であった交配優良種を、簡便、か
つ大量に増殖し得ることから、その産業上の有用性はき
わめて高いものである。
【0098】さらに、また、本発明は、植物体の生育に
必要な水分、栄養素等は、固体培地中に添加されている
ので、格別に肥料を与えなくても植物体を生育させるこ
とが可能であることから、本発明の培養技術によれば、
格別の管理を必要とすることなく、短茎で形態の良好な
植物体が、簡便、かつ大量に得られる効果を有する。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 Plant science,Vo l.73,No.2,(1991),p.243 −251 安田勲著「花壇作りと花卉栽培」(昭 和51年10月20日第1版発行)養賢堂、第 280−281頁 (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) A01H 4/00 BIOSIS(DIALOG) JICSTファイル(JOIS)

Claims (10)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 組織培養により得られたスミレ属植物の
    幼苗を、炭素源を含有し、pH調整され、無機塩濃度が
    1/1以下に調整された合成培地を基本培地とし、当該
    基本培地を無菌的に収納し、かつ無菌フィルターで通気
    性を持たせた容器内に移植し、これを22〜27℃の温
    度条件で12〜18時間日長の培養条件で前期育苗培養
    後、さらに、昼温度で光照射、及び夜温度で暗所の条件
    で後期育苗培養することを特徴とするスミレ属植物の容
    器内開花による生産方法。
  2. 【請求項2】 22〜27℃の昼温度で6〜10時間日
    長の光照射、及び8〜15℃の夜温度で14〜18時間
    暗所の条件で後期育苗培養することを特徴とする請求項
    1記載のスミレ属植物の容器内開花による生産方法。
  3. 【請求項3】 組織培養により得られたスミレ属植物の
    幼苗を、炭素源を含有し、pH調整され、無機塩濃度が
    1/1以下に調整された合成培地を基本培地とし、当該
    基本培地を無菌的に収納し、かつ無菌フィルターで通気
    性を持たせた容器内に移植し、これを22〜27℃の温
    度条件で12〜18時間日長の培養条件で前期育苗培養
    後、後期育苗培養として、昼温度22〜27℃で6〜1
    0時間日長の光照射、及び夜温度8〜15℃で14〜1
    8時間暗所の条件で30〜40日間培養し、さらに、2
    2〜27℃の温度条件で14〜18時間日長の光照射の
    条件で14〜30日間培養することを特徴とするスミレ
    属植物の容器内開花による生産方法。
  4. 【請求項4】 スミレ属植物が、ヒゴスミレ、チシオス
    ミレ、スズキスミレ又はナンバンスミレ(ツクシスミ
    レ)である請求項3記載のスミレ属植物の容器内開花に
    よる生産方法。
  5. 【請求項5】 組織培養により得られたスミレ属植物の
    幼苗を、炭素源を含有し、pH調整され、無機塩濃度が
    1/1以下に調整された合成培地を基本培地とし、当該
    基本培地を無菌的に収納し、かつ無菌フィルターで通気
    性を持たせた容器内に移植し、これを22〜27℃の温
    度条件で12〜18時間日長の培養条件で前期育苗培養
    後、後期育苗培養として、8〜15℃の温度条件で6〜
    10時間日長の光照射の条件で30〜40日間培養し、
    さらに、22〜27℃の温度条件で8〜18時間日長の
    光照射の条件で14〜20日間培養することを特徴とす
    るスミレ属植物の容器内開花による生産方法。
  6. 【請求項6】 スミレ属植物が、ヒゴスミレ、チシオス
    ミレ、アリアケスミレ又はエイザンスミレである請求項
    5記載のスミレ属植物の容器内開花による生産方法。
  7. 【請求項7】 組織培養により得られたスミレ属植物の
    幼苗を、炭素源を含有し、pH調整され、無機塩濃度が
    1/1以下に調整された合成培地を基本培地とし、当該
    基本培地を無菌的に収納し、かつ無菌フィルターで通気
    性を持たせた容器内に移植し、これを22〜27℃の温
    度条件で12〜18時間日長の培養条件で前期育苗培養
    後、後期育苗培養として、22〜27℃の温度条件で6
    〜10時間日長の光照射の条件で20〜30日間培養
    し、さらに、22〜27℃の温度条件で14〜18時間
    日長の光照射の条件で14〜30日間培養することを特
    徴とするスミレ属植物の容器内開花による生産方法。
  8. 【請求項8】 スミレ属植物が、スズキスミレである請
    求項7記載のスミレ属植物の容器内開花による生産方
    法。
  9. 【請求項9】 基本培地が、ショ糖1重量%含有し、p
    H5.0〜6.0に調整され、無機塩濃度が1/2〜1
    /5に調整された合成培地であることを特徴とする請求
    項1、請求項3、請求項5又は請求項7記載のスミレ属
    植物の容器内開花による生産方法。
  10. 【請求項10】 合成培地が、MS改変培地であること
    を特徴とする請求項1、請求項3、請求項5又は請求項
    7記載のスミレ属植物の容器内開花による生産方法。
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Non-Patent Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
Plant science,Vol.73,No.2,(1991),p.243−251
安田勲著「花壇作りと花卉栽培」(昭和51年10月20日第1版発行)養賢堂、第280−281頁

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