JP2662709B2 - ネギ属ニンニク植物の小球根大量生産方法 - Google Patents

ネギ属ニンニク植物の小球根大量生産方法

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Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明はネギ属ニンニク植物の組織培養法による小球
根の大量生産方法に関する。より詳しくは、ホワイト6
片種のニンニク植物を組織培養により増殖して得た無菌
茎葉または無菌幼植物体を、2〜10℃の温度で4ヶ月以
上保存した後、ショ糖6〜12%を添加した培地を用いて
長日条件、21−35℃の温度で培養することにより小球根
を得ることを特徴とするホワイト6片種のニンニク植物
の小球根生産方法に関する。この小球根は、培養容器か
ら取りだして長期間保存可能で、発芽、生育は良好で、
無病優良種苗の大量生産に用いられるものである。 従来の技術 ネギ属ニンニク植物は、茎頂培養などで無病の苗の生
産が可能であるが、従来の方法では増殖率が低く、ま
た、培地上で発根させた試験管内植物を培土に移植する
作業は極めて手間がかかった。また、従来の方法では、
生産した苗を保存することが困難で、このため、苗が必
要な季節に1時期に大量に苗を集中的に生産する必要が
あり、生産が効率的に行なえかった。 また、ニンニクカルスを、カイネチン10ないし20μM,
インドール−3−酢酸(IAA)1ないし10μMを含むAZ
改変培地で培養すると、茎葉が分化し、偶発的に低い頻
度でその基部が球根状に肥大することは知られている
が、この肥大を誘導する要因は不明であった。(Plant
Sci. Letters(1977)9:25 9−264)。 本発明者等は、ホワイト6片種のニンニク植物の試験
管内幼植物からの小球根形成の最適条件を鋭意検討した
結果、ホワイト6片種のニンニク植物を組織培養により
増殖して得た無菌茎葉または無菌幼植物体を、2〜10℃
の温度で4ヶ月以上保存した後、ショ糖6〜12%を添加
した培地を用いて長日条件、21−35℃の温度で培養する
ことにより、収量よく小球根が得られ、しかも、これら
の小球根の保存が可能であり、保存後の発芽生育率も良
好であることを見いだし、本発明を完成した。 発明の目的 本発明は、茎頂培養、多芽培養、カルス培養などの方
法により増殖したホワイト6片種のニンニク植物試験管
内植物に、培地上で効率よく小球根を形成させること、
すなわち、長期保存可能で発芽、生育でき種苗として利
用できるホワイト6片種のニンニク植物植物の小球根の
大量生産方法を提供することにある。この小球根を用い
ることにより、1年を通じて計価的に種苗生産ができ、
生産した小球根は出荷時期まで貯蔵可能で、また、輸送
に便利であることから、ホワイト6片種のニンニク種苗
の大量生産を効率よく行うことが可能になる。 発明の構成 本発明によれば、ホワイト6片種のニンニク植物の、
茎頂培養、多芽培養、カルス培養、あるいは根、リン
片、茎、花茎、葉組織から誘導した不定芽、不定はいの
利用などによ増殖した試験管内無菌茎葉または無菌幼植
物を、2〜10℃の温度で4ヶ月以上保存した後、ショ糖
6〜12%を添加した培地を用いて、長日条件即ち1日あ
たり12−24時間照明、好ましくは16−24時間照明条件
で、21−35℃好ましくは21−28℃の温度で、1−6ヵ
月、好ましくは2−4ヵ月培養するという方法により、
収率良く、しかも大量に小球根を生産することが出来
る。 培地の例としては、リンスマイヤー・スクーグの培
地、ガンボルグのB5培地、ニッチ培地、ホワイト培地な
どの液体培地、またはこれらの培地に0.2−0.3%、この
ましくは0.7−1.5Rの寒天等を加えてゲル化した培地が
あげられる。通常、植物ホルモンは無添加でよいが、増
殖を兼ねる場合にはサイトカイニン類、例えば6−ベン
ジルアミノプリン(BA)、カイネチン等を10-10〜10-4
M、好ましくは10-7〜10-5M添加し、オーキシン類の植
物ホルモン、例えば1−ナフタレン酢酸(NAA)、イン
ドール−3−酢酸(IAA)等を10-10M〜10-4M、好まし
くは、10-7〜10-5M添加すればよい。培地のショ糖濃度
は0.5−1.5%、好ましくは6−12%でよい。 培養時の光の照度は100−2000 1ux、好ましくは2000
−10000 1uxでよい。このようにして生産した小球根は
4℃〜25℃に長期(5ヵ月)保存した後培土に植付ける
ことにより45%以上発芽し、その後生育し、約10g以上
の球根(中心球)を形成する。 次に、本発明の詳細を説明する。 a.ホワイト6片種のニンニク植物の小球根生産に用いる
無菌茎葉、無菌幼植物体の増殖。 培地上でのホワイト6片種のニンニク植物の小球根の
生産は、無菌茎葉、または無菌幼植物体を用いている。
これらの組織は、小球根の生産に先立ち、組織培養によ
り必要数だけ増殖しておくことが望ましい。このための
組織培養法としては、茎頂培養、多芽培養、あるいはカ
ルス、根、茎、葉、リン片、花茎組織などからの不定
芽、不定はい誘導などが利用できるが、最も普通に用い
られるのは茎頂培養である。培養条件は、通常、その作
物の栄養生長期の温度、日長に近い条件で行う。この好
適例としては、リンスマイヤー・スクーグの培地に1−
ナフタレン酢酸(NAA)を0ないし10-5M、および6−
ベンジルアミノプリン(BA)を10-5M添加した培地を用
い、ニンニクのリン片から無菌的に採取した茎頂組織を
20℃、12時間照明条件で、12週間培養し、多数の無菌茎
葉組織を得る方法(大沢ら、野菜試験場報告A第9号、
昭和56年12月、p8−p16)があげられる。 b.小球根の形成 a.により増殖した無菌植物体を、2〜10℃の温度で4
ヶ月以上保存した後、小球根形成培養に移すことによ
り、小球根を生産できる。小球根形成培養では、培養温
度を21−35℃、好ましくは25−28℃に上げ、日長条件
を、1日あたり12−24時間照明、好ましくは16−24時間
照明の長日条件とする。光の強度は、培養器の上面で10
0ないし200001ux、好ましくは2000ないし100001uxでよ
い。培養期間は1ヵ月ないし6ヵ月、好ましくは2ない
し4ヵ月でよい。小球根形成培養では、無菌茎葉を通常
1−5茎葉に分割するか、または、6−100茎葉を含む
茎葉塊のまま、小球根形成培地に移植する。 小球根形成培地には、通常の植物組織培養地、例えば
リンスマイヤー・スクーグの培地、ガンボルグのB5培
地、ニッチ培地、ホワイト培地などを用いることができ
る。通常、オ−キシン類、およびサイトカイニン類の植
物ホルモンを添加する必要はないが、増殖を兼ねて小球
根形成培養を行う場合には、サイトカイニンとして6−
ベンジルアミノプリン(BA)またはカイネチン等を10
-10〜10-4M、好ましくは10-7〜10-5M添加し、さらに
オーキシン類、例えば1−ナフタレン酢酸(NAA)また
はインドール−3−酢酸(IAA)等は無添加、または10
-10〜10-4M、好ましくは10-7〜10-5M添加すればよ
い。 また、植物ホルモンであるアブサイジン酸(ABA)10
-9Mないし10-4M通常10-8Mないし10-6Mを上記培地に
添加することにより、小球根の形成率を著しく向上する
ことが出来る。その他、植物成長調製物質であるウニコ
ナゾール(スミセブン)を10-9ないし10-4M、上記培地
を添加することにより、あるいは、アブサイジン酸、ま
たはスミセブンを含む無菌水溶液に、a.により増殖した
無菌植物体を30分ないし48時間浸漬したのち上記培地に
移植することができる。上記培地は、ショ糖を6ないし
12%添加している。 上記培地は、0.2ないし3.0%、通常0.7ないし1.5%寒
天、または0.05ないし10%、通常0.1ないし0.5%のジエ
ランガム等のゲル化物質を添加してゲル化して用いる
か、あるいは液体培地として用いる。 また、小球根形成培養には、0.1ないし20cm、好まし
くは0.5ないし10cmの長さの茎葉を持つ無菌植物体を用
いる。培養は、ゲル化した培地を用いるときには、人工
気象器、培養室などで温度と照明時間を制御しながら行
う。液体培地を用いるときには、旋回培養機、往復振と
う培養機を用い、1分間当り10ないし200回、通常50な
いし150回振とうするか、あるいは、エアーリフト型ジ
ャーファーメンターを用いて、温度制御下、光照明下培
養することができる。 このようにして、小球根形成培養に移して茎葉の80%
の茎葉に、直径0.5mmないし20mm、通常1mmないし10mmの
新鮮重量1mgないし、1000mg、通常30mgないし400mgの小
球根を形成させる事ができる。おのおのの茎葉は1ない
し10個、通常1ないし5個の小球根の形成する。1回の
小球根の生産培養で小球根を形成しなかった茎葉につい
て、さらに小球根形成培養を繰り返すことにより、1回
目の小球根生産培養にくらべて高率に小球根を形成させ
ることが出来る。 c.小球根の保存、植え付け、および栽培 b.により生産した小球根は、室温で1ないし7日程度
乾燥したのち、室温、または2ないし4℃の暗所に保存
する。2ないし5ヵ月間の保存が可能である。この小球
根は、当初休眠しているが、保存中にしだいに休眠打破
される。すなわち、植え付けに先立ち、室温、または2
ないし4℃に、2週間ないし2ヵ月程度保存すれば、休
眠打破される。このようにして休眠を打破した小球根
を、例えば、通常の栽培方法に従って4ないし8ヵ月栽
培すれば、おのおのの小球根から、リン片新鮮重量5な
いし15g、通常6ないし12g程度のリン片(中心球)を1
個生産することが出来る。このようにして生産したリン
片を、翌年通常のニンニク栽培法で栽培すれば、1個3
ないし15gのリン片を4ないし15個程度もつ、ニンニク
の生産が可能である。このようにして、優良で品質の均
一ばリン片を大量に生産することができる。 実施例 ホワイト6片種のニンニクのリン片を、1%次亜塩素
酸ナトリウム水溶液で滅菌し、無菌水で洗浄後、茎頂を
直径0.3ないし0.8mmの大きさに無菌的に採取し、IAA 10
-6M、BA10-6M、ショ糖3%、寒天0.8%を添加したLS
培地を用いて、20℃、12時間日長条件で1ヵ月培養し、
茎葉を再生した。これらの茎葉を、ショ糖3%、寒天1.
5%、1−ナフタレン酢酸(NAA)5X10-6M、BA10-5Mを
含み、窒素成分をKNO3 56.5mM、NH4Cl 3.5mMに改変した
リンスマイヤースクーグの培地に植継ぎ、20℃12時間日
長条件で7か月間に4回培養を繰り返して茎葉を増殖し
た。これらの茎葉を、長さ0.5−10cmに生長したものに
ついて1−3茎葉ずつに分割し、ショ糖3%、寒天0.7
%を含み、植物ホルモンを含まないリンスマイヤ−・ス
クーグの培地に植え継ぎ、20℃、16時間日長条件で1ヵ
月培養し、茎葉の成長を促した。以上の培養では、温度
条件および日長条件の両者が小球根誘導に適さない条件
であり、さらに、ホワイト6片種は小球根形成が誘導さ
れにくい品種であるために、茎葉の増殖あるいは成長だ
けが生じた。この後、茎葉を最後の培養に用いた培養瓶
ごと、4℃の冷蔵庫に移し、4および6ヵ月間貯蔵を行
った後に、それぞれ、ショ糖を、6、9あるいは12%含
み、植物ホルモンを含まないリンスマイヤー・スクーグ
の培地に培養瓶当たり植え継ぎ、25℃16時間日長条件で
2ヵ月培養し、小球根形成を誘導し、各々、冷蔵庫での
貯蔵期間2ヶ月、ショ糖3%の培地の場合と比較した
た。その結果、4℃貯蔵期間が2ヵ月であった茎葉につ
いては小球根の形成数が培養瓶当り0ないし5個と少な
かった。一方、4℃貯蔵期間が4または6カ月であった
茎葉についても、ショ糖濃度が3%の培地では小球根の
形成数が培養瓶当り0ないし6個と少なかったのに対し
て、ショ糖濃度が6、9、あるいは12%の培地では培養
瓶当り19ないし32個の小球根が形成された。(以上、表
1参照)。 直径8cmの培養瓶におのおのが1−3本の茎葉からな
る茎葉塊を10個植え込み、2ヵ月間培養した。その後、
培養瓶当りの小球根形成数を測定した。 発明の効果 従来の試験管内大量増殖では、培地上で発根させた無
菌幼植物を、培土に移植し、培養室または温室で馴化す
る必要があった。本発明の効果は、1)小球根の培地か
らの取りだし、培土への植え付けは、従来法に比べて極
めて容易である。2)小球根を用いれば、馴化の必要が
なく、培養室、温室などの施設が不要である。3)小球
根は長期保存が可能であり、年間を通じて計画的に生産
が可能であり、また、苗に比べて輸送が容易である、と
いう点であり、本発明により、ネギ属ホワイト6片種の
ニンニク植物の無病優良種苗を効率よく生産することが
可能となる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 大川 秀郎 宝塚市高司4丁目2番1号 住友化学工 業株式会社内 (56)参考文献 「図解組織培養入門 花・野菜・果樹 の増殖と無病苗育成」誠文堂新光社、昭 和60年5月10日初版発行 p.115 農文協編集「新野菜全書 ネギ類・タ マネギ・基礎生理と応用技術」農山漁村 文化協会、昭58年7月1日、第2版第1 刷発行p136−141 大久保敬等、園芸学会雑誌 Vol. 50,No.1,p.37−43

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 1.ホワイト6片種のニンニク植物を組織培養により増
    殖して得た無菌茎葉または無菌幼植物体を、2〜10℃の
    温度で4ヶ月以上保存した後、ショ糖6〜12%を添加し
    た培地を用いて長日条件、21−35℃の温度で培養するこ
    とにより小球根を得ることを特徴とするホワイト6片種
    のニンニク植物の小球根生産方法
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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「図解組織培養入門 花・野菜・果樹の増殖と無病苗育成」誠文堂新光社、昭和60年5月10日初版発行 p.115
大久保敬等、園芸学会雑誌 Vol.50,No.1,p.37−43
農文協編集「新野菜全書 ネギ類・タマネギ・基礎生理と応用技術」農山漁村文化協会、昭58年7月1日、第2版第1刷発行p136−141

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