JP2846588B2 - フウロソウの容器内開花方法 - Google Patents

フウロソウの容器内開花方法

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JP2846588B2
JP2846588B2 JP6225761A JP22576194A JP2846588B2 JP 2846588 B2 JP2846588 B2 JP 2846588B2 JP 6225761 A JP6225761 A JP 6225761A JP 22576194 A JP22576194 A JP 22576194A JP 2846588 B2 JP2846588 B2 JP 2846588B2
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  • Breeding Of Plants And Reproduction By Means Of Culturing (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、フウロソウ植物の容器
内開花方法に関するものであり、さらに詳しくは、フウ
ロソウ植物の植物体の組織の切片を、特定のカルス誘導
固体培地、分裂カルス増殖液体培地、分化培地を用い
て、特定の培養プロセスにより培養してカルスを誘導さ
せ、更に該カルスから再分化した植物体を無菌状態下の
特定培地に置床し、特定条件で培養することにより、フ
ウロソウ植物を、安定、かつ高収率で開花させるフウロ
ソウ植物の容器内開花方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、植物の組織培養技術が、各種植物
の誘導、作出、増殖、開花方法として、広く検討される
中で、各種観賞用植物の組織培養による誘導、増殖、開
花技術等が種々提案されている。ここで、その代表的な
ものを2〜3例示すると、例えば、顕花植物体の組織切
片又はこれを培養して得られる再生植物体の組織切片を
培地にて培養して再分化せしめて再生植物体を得、次い
で当該再生植物体を再分化時とは異なる組成を有する培
地で培養して開花せしめる顕花植物の培養方法が提案さ
れている(特開平4−30733号公報)。しかしなが
ら、この方法は、再分化培養に用いる培地、及び開花培
養に用いる培地の培地組成について検討したものであ
り、対象とする植物も、ウマノスグサ科、ナデシコ科、
ナス科に属する植物、特にトレニア属植物が例示されて
いるに過ぎない。
【0003】また、密閉容器中で植物を栽培して開花さ
せ、そのまま観賞可能とする容器内開花に関する技術も
提案されている。このような提案の例として、例えば、
植物体の茎切片を1次基本培地で無菌的に培養して不定
芽を形成させた後、これを特定の無機塩濃度にし、かつ
矮化剤を加えた2次基本培地に置床して天然昼光色蛍光
灯を短日照射し密閉培養することからなる栽培方法が提
案されている(特開昭60−221020号公報)。し
かしながら、この方法は、不定芽を利用するものであ
り、対象とする植物もトレニア(和名ハナウリクサ)に
限られるものである。
【0004】また、無菌の幼植物体の全草を透視可能な
容器中の矮化剤として特定の成分を添加したMS培地に
植え付け、光を断続的に長期間照射し無菌的に密封培養
することからなる栽培方法が提案されている(特開平2
−200121号公報)。しかしながら、この方法は、
幼植物体の全草を用いるものであり、ユリ科に属するセ
ンニチコウの矮化条件を検討したものである。その他、
同様の方法が種々提案されており、その具体的方法は枚
挙にいとまがないが、このように、一般に、各種植物を
組織培養により増殖させる技術が開発され、広く普及す
るに伴い、各種植物に好適な固有の培養条件等が研究、
開発され、確立されつつあるものの、実用化レベルに至
っているものはそれほど多くはなく、まして、植物を密
閉容器もしくは通気性容器中で栽培して花芽を分化させ
て開花させ、そのまま観賞することが可能な植物の容器
内育成技術については、その研究例も少なく、ほとんど
実用化されていない状況にある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】このような状況の中
で、本発明者らは、各種植物のうちでも、例えば、栽培
種のオランダ姫フウロの如く、従来の交配種では第2代
目以降種子ができにくくてその増殖が難しく、また、交
配種においては外観や色にバラツキが出て均一な植物体
を作出することが難しく、従って、優良品種を広く普及
させることが難しいことから、これらの点を解決できる
新しい増殖及び開花技術の開発が強く要請されていたフ
ウロソウ植物に着目し、これを安定、かつ高収率で成
長、開花させるための方法を開発することを目標として
鋭意研究を積み重ねた結果、特定の培養プロセスと特定
の培地組成、培養条件を組み合わせることによって、所
期の目的を達成し得ることを見い出し、本発明を完成す
るに至った。
【0006】すなわち、本発明は、従来、平地では栽培
が困難であり、開花させることが困難であるとされてい
たフウロソウ植物を、容器内で開花させるための方法を
提供することを目的とするものである。
【0007】さらに、本発明は、フウロソウ植物を容器
中で無菌的に培養して花芽を分化させ、開花させ、その
まま当該容器中で観賞することが可能な当該植物の開花
方法を提供することを目的とするものである。
【0008】さらに、また、本発明は、特定の培養プロ
セス、特定の培地組成、及び特定の培養条件下で形成さ
せたフウロソウ植物の分裂カルスを利用して、当該植物
を、安定、かつ高収率で容器内で開花させる方法を提供
することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】このような課題を解決す
るための本発明は、以下の(1)〜(8)の技術的手段
から成る。 (1) フウロソウ植物の植物体の組織の切片を、炭
素源を含有し、pH調整された合成培地を基本培地
(A)とし、これにオーキシン類とサイトカイニン類と
からなる植物ホルモンを加えたカルス誘導固体培地に植
えて培養し、 得られたカルスを、前記基本培地
(A)にオーキシン類とサイトカイニン類とからなる植
物ホルモンを加えた液体培地中で、震盪回転数100r
pm以上の条件で培養し、分裂したカルスを増殖させ、
増殖したカルスを、前記基本培地(A)にオーキシ
ン類とサイトカイニン類とからなる植物ホルモンを加え
た分化用固体培地に移して培養し、 カルスから再分
化した植物体を通気性のある容器内の無菌状態下にあ
る、炭素源を含有し、且つ無機塩濃度が基本培地の1/
5〜1/2濃度の培地(B)に置床し、 株径が30
〜50mmになるまで培養した後、5〜15℃の低温区
で培養し、 その後、20〜25℃の温度区で培養す
ることを特徴とするフウロソウの容器内開花方法。
【0010】(2)ナフタレン酢酸0.1〜2.0mg
/l、ベンジルアデニン0.1〜6.0mg/lを加え
たカルス誘導固体培地を用いることを特徴とする前記
(1)記載のフウロソウ植物の容器内開花方法。
【0011】(3)ナフタレン酢酸0.1〜5.0mg
/l、ベンジルアデニン0.5〜6.0mg/lを加え
た液体培地を用いることを特徴とする前記(1)記載の
フウロソウ植物の容器内開花方法。
【0012】(4)ナフタレン酢酸0.1〜5.0mg
/l、ベンジルアデニン0〜1.0mg/lを加えた分
化用固体培地を用いることを特徴とする前記(1)記載
のフウロソウ植物の容器内開花方法。
【0013】(5)炭素源が、糖濃度としてショ糖0.
5〜4重量%、好ましくは〜工程では1〜3重量%
で〜工程では0.5〜1.0重量%を含有すること
を特徴とする前記(1)記載のフウロソウ植物の容器内
開花方法。
【0014】(6)〜工程の培養を、22〜27℃
の温度条件、12〜18時間日長の光照射条件下で行う
ことを特徴とする前記(1)記載のフウロソウ植物の容
器内開花方法。
【0015】(7)植物体組織の切片が、葉、又は葉柄
の組織切片であることを特徴とする前記(1)記載のフ
ウロソウ植物の容器内開花方法。
【0016】(8)合成培地が、MS改変培地であるこ
とを特徴とする前記(1)記載のフウロソウ植物の容器
内開花方法。
【0017】続いて、本発明についてさらに詳細に説明
する。一般に、フウロソウ(風露草)というと、フウロ
ソウ科の中のゼラニウム属、エロディウム属の植物の総
称を意味しており、学名は、それぞれゼラニウム(G-er
anium)、エロディウム(Erodium)という。また、ヨーロ
ッパ原産のフウロソウ科の一種を、オランダフウロ、イ
ブキフウロの如く、単にこの名で呼ぶことがある。山地
の草原に自生し、葉は、掌状裂、紅葉色、五弁の花をつ
ける。本発明は、このようなフウロソウ植物を対象とす
るものであり、例えば、ハクサンフウロ、アサマフウ
ロ、ヒメフウロ、チシマフウロ等のゼラニウム属、オラ
ンダフウロ、オランダヒメフウロ等のエロディウム属、
が代表的なものとしてあげられる。
【0018】これらのフウロソウ植物の無菌状態の植物
体の組織の切片としては、通常の植物体の適宜の器官の
組織切片を滅菌処理したもの、あるいは、消毒種子を無
菌的に播種して発芽させた無菌幼苗、当該幼苗を生育さ
せた植物体の葉、又は葉柄の切片等が、好適に利用され
る。
【0019】このようなフウロソウ植物の無菌状態の植
物体の組織切片を、合成培地であるMS培地(ムラシゲ
とスクーグの基本無機塩培地)をベースとして、炭素源
を含有し、pH調整されたMS改変培地を基本培地
(A)とし、これにオーキシン類とサイトカイニン類と
からなる植物ホルモンを添加し、含有せしめたカルス誘
導固体培地に置床し、特定の培養条件下で培養してカル
スを誘導させる。
【0020】前記MS改変培地は、通常のMS培地をベ
ースとして、葉酸約0.5重量%、ビオチン約0.05
重量%添加したものが好適に使用され、これに炭素源と
して、例えば、ショ糖を2重量%添加し、pH5.0〜
6.0、好ましくはpH5.8、に調整し、これを基本
培地(A)とする。
【0021】このように、当該基本培地(A)は、前記
MS改変培地、炭素源としてのショ糖が、好適なものと
して使用されるが、これに限らず、これと同等の組成、
もしくは成分のものであれば他の同効の合成培地が同様
に利用できることはいうまでもない。他の同効の合成培
地としては、具体的には、MS培地、B5培地、Nit-sc
h の培地等が好適なものとして挙げられる。
【0022】当該基本培地(A)に添加される植物ホル
モンとしては、ナフタレン酢酸0.1〜2.0mg/
l、好ましくは1.0mg/l、ベンジルアデニン0.
1〜6.0mg/l、好ましくは1.0〜5.0mg/
lが、好適に使用されるが、これに限らず、これらと同
効の生理活性を有する他のオーキシン類、サイトカイニ
ン類も、同様に組合せて利用できる。他のオーキシン類
としては、インドール酢酸、インドール酪酸、2,4−
ジクロロフェノキシ酢酸等が、サイトカイニン類として
は、カイネチン、ゼアチン、2−イソペンテニルアミノ
プリン等が、それぞれ挙げられる。
【0023】このような成分を含有せしめた培地に、支
持材料として、例えば、寒天約0.7〜0.9重量%を
添加し、pHを前記範囲に調整し、常法により殺菌処理
した後、適宜の容器中に無菌的に分注し、固形化させて
カルス誘導固体培地を調製する。前記支持材料として
は、寒天に限らず、それと同効の成分であれば、ジェラ
ンガム等、適宜のものが利用できる。
【0024】前記のフウロソウ植物の無菌状態の植物体
の組織の切片を、当該カルス誘導固体培地に置床し、培
養することにより、カルスを誘導させるが、この場合、
22〜27℃、好適には25℃±1℃の温度条件、及び
12〜18時間日長、好適には16時間日長の光照射条
件下で約1ヶ月間培養することにより、安定、かつ高収
率でカルスを誘導することができる。
【0025】前記工程により得られたカルスを、前記基
本培地(A)をベースとする液体培地中に加え、震盪回
転数100rpm以上、好ましくは130〜150rp
mの条件下で培養して、分裂したカルスを増殖させる。
このような分裂したカルスを、例えば、1週間ごとにピ
ペット等で採取し、約1ヶ月継代培養する。
【0026】当該液体培地としては、前記基本培地
(A)に、ナフタレン酢酸0.1〜5.0mg/l、好
ましくは1.0mg/l、ベンジルアデニン0.5〜
6.0mg/l、好ましくは1.0〜5.0mg/lを
添加した液体培地が、好適に使用されるが、添加する植
物ホルモンは、これに限定されず、前記と同様にこれら
と同効の生理活性を有する他のオーキシン類、サイトカ
イニン類も、同様に組合せて利用することができる。培
養の温度条件、及び光照射条件は、前記工程と同様に設
定する。
【0027】当該工程においては、通常の培養方法で
は、前記分裂したカルスの増殖は行われるが、このよう
な高速の回転条件を付与することにより、はじめて大量
にカルスを増殖させることが可能である。従って、この
ような高速の回転条件を付与することは、本工程におけ
る分裂したカルスの大量増殖手段として必須の要件であ
る。
【0028】次に、前記工程により得られた分裂増殖し
たカルスを、前記基本培地(A)をベースとする分化用
固体培地に置床して培養することにより、分裂したカル
スから植物体を再分化させる。当該分化用固体培地とし
ては、前記基本培地(A)に、ナフタレン酢酸0.1〜
5.0mg/l、好ましくは1.0mg/l、ベンジル
アデニン0〜1.0mg/l、好ましくは0〜0.1m
g/lを添加した固体培地が好適に使用されるが、添加
する植物ホルモンは、これに限定されず、前記と同様に
これらと同効の生理活性を有する他のオーキシン類、サ
イトカイニン類も同様に組合せて利用することができ
る。培養の温度条件、及び光照射条件は、前記工程と同
様に設定する。フウロソウ植物について、このような分
裂、増殖したカルスから芽と根を分化させる方法は、本
発明者らによって開発されたものである。
【0029】次いで、カルスから再分化した植物体を、
通気性のある容器内において、MS(Murashig
e,T.and F.Skoog)培地、LS(Lin
smaier,E.M.and F.Skoog)培
地、NN(Nitsch,C.and J.P.Nit
sch)培地等及びこれらの改変培地等の基本培地に炭
素源を含有させるとともに無機塩濃度が上記基本培地の
1/5〜1/2濃度の培地(B)で培養する。
【0030】本発明における幼植物体の成長及び花芽の
誘導・開花の段階での培養では、上記した如く、炭素源
を含有し、かつ基本培地よりも無機塩濃度を薄くした培
地、すなわち無機塩濃度が基本培地の1/5〜1/2濃
度の培地(B)を使用することが重要な要件となる。上
記培地の無機塩濃度が基本培地の1/5以下、例えば、
1/10以下の場合は、葉柄が徒長し、生育が遅くなる
という問題が発生することになる。反対に、上記培地の
濃度が基本培地の1/2以上、例えば、1以上の場合
は、葉が黄変し、発根が阻害されるという問題が発生す
ることになる。
【0031】炭素源としては、糖濃度としてショ糖0.
5〜4重量%、好ましくはカルスの誘導から分化までは
1〜3重量%で分化した苗を生育させる工程では0.5
〜1.0重量%を含有することが望ましい。ショ糖の濃
度が高くなり過ぎると葉柄が伸長せず、発根も少なく正
常に育たなくなる。反対にこの濃度が低くなり過ぎると
増殖に必要な栄養が不足し上記株の生長が遅くなる。
【0032】前記分裂したカルスから再分化した植物体
を、適宜の容器中に無菌的に分注した前記培地に置床
し、無菌フィルターで封をして、通気性条件下で、例え
ば、約25℃で16時間日長の光照射条件下で培養す
る。
【0033】この場合の容器としては、試験管、三角フ
ラスコ、ガラスビン、プラスチック容器等が好適に利用
されるが、充分な光透過性を有するものであれば適宜の
ものが利用可能である。培養は、光を断続的に長期間照
射する条件下、すなわち、8〜18時間日長、好ましく
は16時間日長、の光照射条件下で行い、温度条件は、
22〜27℃、特に、25℃±1℃、が好ましい。
【0034】これらの温度、日照時間等の培養環境を正
確に制御することにより、高い再現性で植物体を増殖さ
せることができるが、特に、培養の温度条件は、重要な
要件であり、25℃±1℃の温度条件が、植物体を、均
一、かつ、安定に再生増殖させることができることか
ら、特に好ましい。そして、培養の温度条件を、例え
ば、20℃以下に低下させると、成長が遅くなることが
確認された。さらに、この場合、通気性条件下で実施す
る方が好ましく、密栓した密閉容器を用いると、成長が
遅くなり、植物体が徒長してしまう。
【0035】本発明においては、この培養によって、株
径を30〜50mmにすることが重要な要件である。株
径が30mm未満の場合は温度条件を一時的に低温にす
る温度処理を行っても花芽分化が起こらず、反対に、株
径が50mmより大きい場合は温度処理後の開花率が低
くなるという問題がある。
【0036】株径が30〜50mmになるまで培養した
後に、5〜15℃という比較的低温区で、さらに15〜
30日程度培養する。この培養は、花芽を誘導するため
のものであり、次工程の培養で開花させるための前提条
件となる。この培養を行わないか、あるいはこの培養条
件を逸脱すると、例え次工程で適切な培養を実施しても
望ましい開花をみることができなくなる。なお、ここで
株径とは円周上に展開した株の直径のことである。
【0037】上記低温区での培養が終了した後に、20
〜25℃の温度区で培養して開花を誘導・促進させる。
以上のように、本発明は、前記第〜の工程の培養プ
ロセス、及び各工程における培地組成、培養条件を必須
の要件とするものであり、これらのいずれを欠いてもフ
ウロソウ植物を容器内で正常に成長、開花させることは
できず、本発明の所期の目的を達成することはできな
い。そして、このような培養プロセス、及び各工程にお
ける培地組成、培養条件は、フウロソウ植物に特有のも
のであって、これらは、各種植物の組織培養技術、ある
いは、前記トレニア、センニチコウ等の密閉容器内栽培
技術等の従来公知の事項をもってしても到底予期するこ
とはできないものである。
【0038】
【実施例】次に、実施例に基づいて本発明を具体的に説
明する。 実施例1 オランダヒメフウロソウ(白)(Erodium chamaedryoid
es)の培養 前記フウロソウ植物の植物体の葉柄部分を切り取り、7
%サラシ粉溶液の濾液で15分間滅菌処理した後、無菌
水で数回洗浄した。次いで、葉柄部分を小さく切断し、
その葉柄切片を、ショ糖2重量%、ビオチン0.05重
量%、葉酸0.5重量%を含有し、pH5.8に調整さ
れたMS改変培地を基本培地(A)とし、これに、ナフ
タレン酢酸1.0mg/l、ベンジルアデニン1.0m
g/lを添加し、さらに、寒天0.7重量%を含有する
カルス誘導固体培地に置床し、25℃で4,000Lu
xの天然昼光色蛍光灯による16時間日長の光照射条件
下で1ヶ月培養した。
【0039】次に、前記により誘導されたカルス5.5
gを、前記基本培地(A)に、ナフタレン酢酸1.0m
g/l、ベンジルアデニン1.0mg/lを添加した液
体培地50ml中に加え、25℃で3,000Luxの
天然昼光色蛍光灯による16時間日長の光照射条件下
に、震盪回転数130rpmの条件で培養を行った。培
養後1週間ごとに、当該培養液中に形成された分裂した
カルスをピペットで採取し、継代培養を行った。
【0040】次に、前記により採取した分裂したカルス
を、前記基本培地(A)にナフタレン酢酸0.1mg/
l、ベンジルアデニン0.1mg/lを添加し、寒天
0.7重量%を添加し、pH5.8に調整して形成した
分化用固体培地に置床し、25℃で3,000Luxの
天然昼光色蛍光灯の16時間日長の光照射条件下で培養
して、分裂したカルスから芽と根を分化させた。
【0041】次いで、前記のように分裂したカルスから
分化させた芽を根と一緒に、容器に無菌的に分注した幼
植物体成長固体培地に置床し、25℃で3,000Lu
xの天然昼光色蛍光灯の16時間日長の光照射条件下に
培養して、幼植物体誘導させ、成長させた。
【0042】当該幼植物体成長固体培地としては、ショ
糖1重量%、寒天0.7重量%添加し、pH5.8に調
整し、無機塩濃度を1/2に調整したMS改変培地を基
本培地とし、これを常法により殺菌し、容積200ml
のガラス製フラスコ容器に分注して形成したものを使用
した。当該フラスコ容器は、無菌フィルターのミリシー
ル(ミリポア社製テフロンフィルター)で封をし、通気
性条件下に前記培養を行った。培養開始後20〜30日
間で、根が伸長し、葉、葉柄が成長し、発根状態が良好
で、葉、葉柄の形態も良好な植物体が得られた。
【0043】カルスから再分化した植物体を、さらに3
0日程度培養し、株径が30mm以上になった時点で培
養温度を10℃で8時間日長と16時間日長の条件で3
0日間培養して花芽を誘導した。その後、再び20℃、
16時間日長の条件で培養して開花誘導を行った。本発
明の上記容器内開花方法によって得られた花は30日間
以上も開花状態を維持するものであった。
【0044】なお、花芽誘導の処理条件、及び開花誘導
の開花条件を種々変更して、前培養後の株の直径と開花
率との関係について調べた結果を表1及び表2に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】上記結果及び同様に実施した他の試験結果
より、高い開花率を達成するためには、5〜15℃の低
温区で花芽誘導を行い、その後、20〜25℃の温度区
で開花誘導を行うこと、且つ株径が30〜50mmにな
るまで前培養を行うこと、が重要であることが判明し
た。さらに、花芽誘導の処理培養時の処理温度が生育
(株の直径、花芽を除く草丈、発根の程度、葉の色)及
び開花(花芽分化率、開花率、花の直径、花芽を含む草
丈、開花日数)に及ぼす影響について調べた結果を表3
及び表4に示す
【0048】
【表3】
【0049】
【表4】
【0050】上記結果及び同様に実施した他の試験結果
より、生育状態が良好であり、高開花率を達成するため
には、5〜15℃の低温区で8時間日長ないし16時間
日長の条件で処理培養を行い、その後、20〜25℃の
温度区で開花誘導を行うことが重要であることが判明し
た。
【0051】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明は、フウロ
ソウ植物の植物体の組織切片を特定の培養プロセスで、
特定の培地組成、及び培養条件下に組織培養することに
よって形成される分裂したカルスを利用して、フウロソ
属植物を、安定的に成長、開花させるものであり、これ
により、本発明は、従来、平地では栽培が困難であり、
開花させることが困難であったフウロソウ属植物を、容
器内で開花させることができる効果を有する。
【0052】また、本発明は、フウロソウ植物の交配種
の姫フウロのように第2代目以降種子ができにくく、そ
の増殖が困難とされていたものでも、1つの株から均一
な植物体を安定、かつ高収率で大量に増殖することを可
能にすると共に、通気性のある容器中でフウロソウ植物
体を誘導し、成長、開花させることを可能にしたもので
あり、容器中で開花させ、そのまま観賞用とすることと
ができる。
【0053】また、容器内で開花したフウロソウ植物体
の花は、次から次へと開花し、開花期が長いために、観
賞用としての有用性は極めて高い。
【0054】さらに、また、本発明は、植物体の生育に
必要な水分、栄養素等は、固体培地中に添加されている
ので、格別に肥料を与えなくても植物体を生育、開花さ
せることが可能であることから、本発明の培養技術によ
れば、格別の管理を必要とすることがないという効果を
有する。
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) A01H 4/00 BIOSIS(DIALOG) JICSTファイル(JOIS)

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 フウロソウ植物の植物体の組織の切
    片を、炭素源を含有し、pH調整された合成培地を基本
    培地(A)とし、これにオーキシン類とサイトカイニン
    類とからなる植物ホルモンを加えたカルス誘導固体培地
    に植えて培養し、 得られたカルスを、前記基本培地
    (A)にオーキシン類とサイトカイニン類とからなる植
    物ホルモンを加えた液体培地中で、震盪回転数100r
    pm以上の条件で培養し、分裂したカルスを増殖させ、
    増殖したカルスを、前記基本培地(A)にオーキシ
    ン類とサイトカイニン類とからなる植物ホルモンを加え
    た分化用固体培地に移して培養し、 カルスから再分
    化した植物体を通気性のある容器内の無菌状態下にあ
    る、炭素源を含有し、且つ無機塩濃度が基本培地の1/
    5〜1/2濃度の培地(B)に置床し、 株径が30
    〜50mmになるまで培養した後、5〜15℃の低温区
    で培養し、 その後、20〜25℃の温度区で培養す
    ることを特徴とするフウロソウの容器内開花方法。
  2. 【請求項2】 ナフタレン酢酸0.1〜2.0mg/
    l、ベンジルアデニン0.1〜6.0mg/lを加えた
    カルス誘導固体培地を用いることを特徴とする請求項1
    記載のフウロソウ植物の容器内開花方法。
  3. 【請求項3】 ナフタレン酢酸0.1〜5.0mg/
    l、ベンジルアデニン0.5〜6.0mg/lを加えた
    液体培地を用いることを特徴とする請求項1記載のフウ
    ロソウ植物の容器内開花方法。
  4. 【請求項4】 ナフタレン酢酸0.1〜5.0mg/
    l、ベンジルアデニン0〜1.0mg/lを加えた分化
    用固体培地を用いることを特徴とする請求項1記載のフ
    ウロソウ植物の容器内開花方法。
  5. 【請求項5】 炭素源が、糖濃度としてショ糖0.5〜
    4重量%、好ましくは〜工程では1〜3重量%で
    〜工程では0.5〜1.0重量%を含有することを特
    徴とする請求項1記載のフウロソウ植物の容器内開花方
    法。
  6. 【請求項6】 〜工程の培養を、22〜27℃の温
    度条件、12〜18時間日長の光照射条件下で行うこと
    を特徴とする請求項1記載のフウロソウ植物の容器内開
    花方法。
  7. 【請求項7】 植物体組織の切片が、葉、又は葉柄の組
    織切片であることを特徴とする請求項1記載のフウロソ
    ウ植物の容器内開花方法。
  8. 【請求項8】 合成培地が、MS改変培地であることを
    特徴とする請求項1記載のフウロソウ植物の容器内開花
    方法。
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J.Amer.Soc.Hort.Sci.,Vol.106,No.1,(1981),p.114−116

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