JP2904178B2 - 電圧非直線抵抗体及び避雷器 - Google Patents
電圧非直線抵抗体及び避雷器Info
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Description
分とする焼結体から成り、例えば避雷器、サージアブゾ
ーバーなどに好適に使用しうる電圧非直線抵抗体及びこ
れを搭載した避雷器に関するものである。
構造を示す模式図である。従来、避雷器などに用いられ
る酸化亜鉛を主成分とする電圧非直線抵抗体は、主成分
である酸化亜鉛に、電圧非直線性の発現に必須であると
いわれている酸化ビスマスをはじめ、電気特性の改善に
有効な添加物を添加した組成物を混合し、造粒、成形、
焼成の各工程を経た焼結体から成り、この焼結体に側面
高抵抗層及び金属アルミニウムなどから成る電極を設け
ることによって作られている。
晶組織の一部の微細構造を示す模式図である。1は亜鉛
及びアンチモンを主成分とするスピネル粒子、2は酸化
亜鉛粒子、3はケイ酸亜鉛Zn2SiO4、4は酸化ビス
マス、6は酸化亜鉛結晶粒子内の双晶境界である。即
ち、亜鉛及びアンチモンを主成分とするスピネル粒子に
は、酸化亜鉛粒子2に取り囲まれて存在するものと、酸
化亜鉛粒子の三重点(多重点)付近に存在するものの2
種類の存在状態があり、酸化ビスマス4の一部分は多重
点のみならず、酸化亜鉛粒子2の境界に存在している場
合もみられる。
抗体として作用し、酸化亜鉛粒子2と酸化亜鉛粒子2と
の境界部分で電圧非直線性を示すことは、ポイント電極
を用いた実験から明らかにされている(G.D.Mah
an,L.M.Levinson&H.R.Phili
pp,“Theory of conductioni
n ZnO varistors”,J.Appl.P
hys.50[4],2799(1979)(以下文献
1とする))。また後述するように、この酸化亜鉛粒子
2と酸化亜鉛粒子2との境界部分(結晶粒界)の数がバ
リスタ電圧を決定することが実験で確認されている
(T.K.Gupta,“Application o
f Zinc Oxide Varistors,
“J.Am.Ceram.Soc.,73〔7〕181
7−1840(1990)(以下、文献2とする))。
電圧非直線抵抗体の電圧−電流特性(非直線性特性)を
示す特性図である。優れた保護性能を有する酸化亜鉛系
電圧非直線抵抗体とは、図中、大電流域Hにおける電圧
VHと小電流域Lにおける電圧VLとの比VH/VL
(制限電圧比)が小さいものである。制限電圧比の改善
について論じる場合、大電流域における制限電圧比と小
電流域における制限電圧比を決定する要因が異なるため
に、各々に分離して論じる必要がある。それゆえ今後、
制限電圧比VH/VLを図中のSにおける電圧VSを用
いて、大電流域制限電圧比VH/VSと小電流域制限電
圧比VS/VLに分離して論じることとする。
酸化亜鉛結晶粒内部の電気抵抗率によって決まると言わ
れており(文献1、2)、酸化亜鉛結晶粒内部の抵抗率
が小さくなる程VHが小さくなり、従ってVH/VSは
小さくなる。一方、小電流域制限電圧比VS/VLは酸
化亜鉛結晶粒界に形成されると考えられているショット
キーバリアによって決まると言われており(文献1、
2)、酸化亜鉛結晶粒界の見かけの抵抗率が大きくなる
程VS/VLは小さくなる。従って、制限電圧比VH/
VLを改善するためには、酸化亜鉛結晶粒内部の電気抵
抗率を低減し、かつ酸化亜鉛結晶粒界の見かけの電気抵
抗率を高めればよいことが示される。
が非直線性しきい値電圧を表す。このVS値は、避雷器
が適用される送電系統に対応して設定される。VSは、
素子に1mA通電した際の素子の両端電極間電圧(V1
mA(V))などを代表値として使用することが多い。
素子の大きさを勘案すると、1mAの電流値は約30〜
150μA/cm2程度の電流密度に相当する。酸化亜
鉛素子のVS値は素子の厚みに比例する。
ルト送電に使用される避雷器などでは、同一形状で従来
の素子と同等のVS値をもつ素子を積み上げた場合に
は、直列積層枚数が増加し、その結果、避雷器が大きく
なること、及び直列接続方式が複雑化するため、電気
的、熱的、機械的設計上の問題点が多くなる。それゆ
え、VS値を素子の厚さで除して得られる単位長さ当た
りのVS値(例えばV1mA/mm:バリスタ電圧とい
う)の大きい素子を使用できれば、素子1枚当たりの分
担電圧が高くなるため、素子の直列積層枚数を減らすこ
とができ、これらの問題点を解決することが可能とな
る。
は図11に示した素子の結晶組織中の酸化亜鉛2の結晶
粒径であることが知られている(文献2)。1mA程度
の電流領域は、図12に示した電圧−電流特性における
非直線領域であり、実験的には式(1)が成立する。 V1mA/mm=k/D (1) 式(1)中、kは定数、Dは酸化亜鉛の平均粒子径であ
る。従って1/Dは単位長さ当たりに存在する酸化亜鉛
粒子間の結晶粒界の数Ngに相当し、式(1)を書き換
えれば式(2) V1mA/mm=k’Ng (2) のように書き表すことができる。定数k’は酸化亜鉛素
子の1粒界当たりのバリスタ電圧を表していることが分
かる(文献2)。
れた保護特性をもったコンパクトな避雷器を実現するた
めには、電圧非直線抵抗体の電気特性として(イ)制限
電圧比(VH/VL)が小さいこと、コンパクトな避雷
器を実現するために必要な電圧非直線抵抗体に要求され
る電気特性として(ロ)バリスタ電圧を大きくするこ
と、の2点が挙げられる。避雷器の保護特性を決定する
因子は(イ)であるので、電圧非直線抵抗体の組成及び
製造プロセスを改善することによって制限電圧比(VH
/VL)を小さい値とすること、なおかつ避雷器の大き
さ等の構造を決定する因子は主に(ロ)であるので、バ
リスタ電圧を大きい値とすることが強く要求される。
になされたもので、バリスタ電圧が高く、大電流域から
小電流域にわたって制限電圧比が小さい電圧非直線抵抗
体を得ることを目的とする。また、この電圧非直線抵抗
体を搭載した避雷器を得ることを目的とする。
線抵抗体は、酸化亜鉛を主成分とし、複数種類の希土類
元素を有し、この希土類元素のうち少なくとも1種類が
Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Y、Er、Tm、Yb
及びLuから選ばれるものであり、かつBi、Sbを有
する組成物の焼結体であって、前記酸化亜鉛粒子内また
は粒界には析出粒子が形成され、この析出粒子から得ら
れる複数の面間隔dn(Å)のうち5つをd1、d2、
d3、d4、d5とすると、それぞれが2.85Å≦d
1≦2.91Å、1.83Å≦d2≦1.89Å、1.
77Å≦d3≦1.82Å、1.56Å≦d4≦1.6
1Å、1.54Å≦d5≦1.60Åの範囲に存在する
ものである。
d、Tb、Dy、Ho、Y、Er、Tm、Yb及びLu
から選ばれる少なくとも1種類の希土類元素を有し、か
つBi、Sbを有する組成物の焼結体であって、前記酸
化亜鉛粒子内または粒界には析出粒子が形成され、この
析出粒子から得られる複数の面間隔dn(Å)のうち5
つをd1、d2、d3、d4、d5とすると、それぞれ
が2.85Å≦d1≦2.91Å、1.83Å≦d2≦
1.89Å、1.77Å≦d3≦1.82Å、1.56
Å≦d4≦1.61Å、1.54Å≦d5≦1.60Å
の範囲に存在するものである。
Er及びYbから選ばれる少なくとも1種類の希土類元
素を有し、かつBi、Sbを有する組成物の焼結体であ
って、前記酸化亜鉛粒子内または粒界には析出粒子が形
成され、この析出粒子から得られる複数の面間隔dn
(Å)のうち5つをd1、d2、d3、d4、d5とす
ると、それぞれが2.86Å≦d1≦2.88Å、1.
85Å≦d2≦1.86Å、1.78Å≦d3≦1.7
9Å、1.57Å≦d4≦1.58Å、1.55Å≦d
5≦1.56Åの範囲に存在するものである。
にて行うものである。
の電圧非直線性抵抗体を搭載したものである。
亜鉛は、バリスタ電圧及び電圧非直線性の改善の観点か
ら、含有量は、ZnOに換算して原料中に90〜97m
ol%、中でも92〜96mol%含有されるように調
整することが望ましい。
d、Tb、Dy、Ho、Y、Er、Tm、Yb、Luの
うち少なくとも1種類以上の希土類元素を添加すれば、
ZnO粒子内または粒界に析出粒子を形成し、大電流域
制限電圧比を小さくすると同時にバリスタ電圧を大きく
することができる。図1は、この希土類元素を添加する
ことで得られた素子の結晶組織を示す模式図である。図
に示すように、ZnO結晶や亜鉛及びアンチモンを主成
分とするスピネル相の他に、添加した希土類元素(R)
−ビスマス−アンチモン−亜鉛−マンガンを含む析出粒
子が存在する。この粒子が形成されるとZnOの粒成長
を抑制するため、大電流域制限電圧比を小さくすると同
時にバリスタ電圧を大きくさせることができる。
間隔dn(Å)のうち値の大きなものから5つをd1、
d2、d3、d4、d5とすると、それぞれが2.85
Å≦d1≦2.91Å、1.83Å≦d2≦1.89
Å、1.77Å≦d3≦1.82Å、1.56Å≦d4
≦1.61Å、1.54Å≦d5≦1.60Åの範囲に
存在する。ここで言う面間隔とは、X線回析法における
ブラッグ条件によって得られる面間隔である。ブラッグ
条件は、d:面間隔、θ:入射X線及び回析X線が結晶
格子面となす角度、N:回析次数(正の整数でありここ
では1を用いる)、λ:X線の波長とすると、 2d・sinθ=N・λ (3) で表される。従って面間隔dは、式(3)をdについて
解いて、 d=(N・λ)/(2sinθ) (4) で得ることができる。
Y、Er、Tm、Yb、Luの中の1元素を必須とし
て、他の希土類元素を少なくとも1つ添加しても良い。
全ての希土類元素は、そのイオン半径がZn2+のイオン
半径より大きいので、ZnO粒子内のZnサイトを置換
しにくく、主にZnOの結晶粒界またはZnO結晶内部
に取り込まれた独立した結晶粒として偏析する。その極
めてわずかな部分がZnO結晶粒子内部に固溶すると、
その電子的効果によりZnOの結晶粒子内部が低抵抗化
する。その結果、大電流域制限電圧比を小さくできる。
即ち、上記以外の希土類元素は、析出粒子を形成せず従
ってバリスタ電圧をあまり高めることができないが、大
電流域制限電圧比は、希土類元素が全く無添加のものよ
りも小さくすることができる。そこで、バリスタ電圧を
あまり高くする必要が無いケースにおいては、大電流域
制限電圧比を小さくする効果はあるが、バリスタ電圧を
大きくする効果があまりない例えばLa、Ce、Pr、
Nd、Smなどと少量のEu、Gd、Tb、Dy、H
o、Y、Er、Tm、Yb、Luを組み合わせて添加す
ることで、バリスタ電圧を若干量大きくしつつ大電流域
制限電圧比が小さい素子を得ることができる。なお、こ
のような場合でも、添加したEu、Gd、Tb、Dy、
Ho、Y、Er、Tm、Yb、Lu元素は析出粒子を形
成する。
る希土類元素をHo、Y、Er、Ybのうちの少なくと
も1種類に限れば、バリスタ電圧が大きく、大電流域制
限電圧比が小さく、さらに小電流域制限電圧比の悪化を
最小限に抑えた素子を得ることができる。希土類元素の
うちEu、Gd、Tb、Dy、Ho、Y、Er、Tm、
Yb、Luを添加した素子は、他の希土類元素を添加し
た素子及び希土類元素無添加の素子よりもバリスタ電圧
を大きく、大電流域制限電圧比を小さくすることができ
るが、小電流域制限電圧比は大きくなり逆に悪化する。
しかし、添加する希土類元素をHo、Y、Er、Ybの
うちの少なくとも1種類に限れば、La、Ce、Pr、
Nd、Smを添加した素子及び希土類元素無添加の素子
よりも若干高いものの、小電流域制限電圧比の悪化を最
小限に抑えることができる。
1種類を添加して形成された析出粒子から得られる複数
の面間隔dn(Å)のうち5つをd1、d2、d3、d
4、d5とすると、それぞれが2.86Å≦d1≦2.
88Å、1.85Å≦d2≦1.86Å、1.78Å≦
d3≦1.79Å、1.57Å≦d4≦1.58Å、
1.55Å≦d5≦1.56Åの範囲に存在する。ここ
で言う面間隔とは、上述したようにX線回析法における
ブラッグ条件によって得られる面間隔である。
て、析出粒子の面間隔の測定は、室温でX線回折法で行
うことが望ましい。X線回折法は、結晶面間隔を容易に
かつ精度良く測定することができる。
粒子径が1〜10μmのものが用いられる。酸化ビスマ
スの配合量は、5mol%より多い場合には、酸化亜鉛
粒子の粒成長抑制効果に対して逆効果を呈するようにな
り、0.1mol%より少ない場合には、漏れ電流が増
加する(VL値が小さくなる)ため、電圧非直線抵抗体
の原料(以下、単に原料という)の中に0.1〜5mo
l%、特に0.2〜2mol%含有されるように調整す
ることが望ましい。
値を大きくする性質を有する酸化アンチモンを含有して
も良い。酸化アンチモンとしては、通常平均粒子径が
0.5〜5μmのものが用いられる。配合量は、5mo
l%より多い場合にはバリスタ電圧が高くなるが、酸化
亜鉛との反応物のスピネル粒子が多く存在するようにな
って通電パスが大きく制限されるため不均一性が増して
破壊しやすくなる。一方0.5mol%より少ない場合
には、酸化亜鉛粒子の粒成長抑制効果が充分に発現され
なくなるので、原料中には、0.5〜5mol%、中で
も0.75〜2mol%含有されるように調整すること
が望ましい。
非直線性を改善させるために、酸化クロム、酸化ニッケ
ル、酸化コバルト、酸化マンガン、酸化ケイ素を含有し
ても良く、これらは、通常平均粒子径が10μm以下の
ものを用いることが望ましい。また充分な電圧非直線性
を得るためには、これらの成分の配合量は、それぞれ原
料中に、NiO、CO3O4、Mn3O4,SiO2に換算
して0.1mol%以上、中でも0.2mol%以上含
有されるように調整することか望ましい。しかし5mo
l%より該配合量が多い場合には、スピネル相、パイロ
クロア相(スピネル相生成反応の中間生成物)及びケイ
酸亜鉛の量が多くなることから、エネルギー耐量の減少
や電圧非直線性が低下する傾向がある。それゆえ、原料
中に0.1〜5mol%、中でも0.2〜2mol%含
有されるように調整することが望ましい。
亜鉛粒子の電気抵抗を下げ、電圧非直線性を改善するた
めに0.001〜0.01mol%の硝酸アルミニウム
を含有しても良い。アルミニウムイオンはそのイオン半
径がZn2+イオン半径より小さいので、格子の歪みの許
容範囲内でZnO粒子内に固溶し、2価のイオンである
Znを3価のイオンであるアルミニウムイオンが置換す
ることによって、その電子的効果によりZnO結晶粒子
内部が低抵抗化し、その結果大電流域制限電圧比が改善
される。Al2O3としてのmol%は、硝酸アルミニウ
ムAl(NO3)3のmol%の1/2であるので、A
l2O3のmol%としては0.0005〜0.005m
ol%が必要となる。
ビスマスをより低融点化させ、その流動性をよくし、粒
子間などに存在する微細孔(ポア)を有効に減ずる役割
を果たさせるために、0.01〜0.1mol%のホウ
酸を原料中に含有せしめても良い。
線抵抗体の製造方法について具体的に説明する。前記原
料の平均粒子径を適宜調整した後、たとえばポリビニル
アルコール水溶液などを用いてスラリーを形成した後、
スプレードライヤーなどを用いて乾燥・造粒し成形に適
した顆粒を得る。得られた顆粒に例えば200〜500
kgf/cm2程度の加圧力で一軸加圧を施し、所定形
状の粉末成形体を作製する。粉末成形体からバインダー
(ポリビニルアルコール)を除去するために、該粉末成
形体を600℃程度の温度で予備加熱した後焼成する。
後述する実施例及び比較例では、1150℃で5時間焼
成して得られた素子を測定して得たデータを挙げた。焼
成条件よって焼結反応が均一かつ充分に進行し、素子を
緻密化するための条件であり、X線回折装置、熱重量分
析装置(TG)、熱機械分析装置(TMA)などを用い
て設定することができる。
電圧非直線抵抗体を搭載するものが、小形化及び保護特
性の改善が可能となる。
製法を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発
明は係る実施例のみに限定されるものではない。
は次の基本組成と製作過程とを含んでいる。酸化ビスマ
ス、酸化クロム、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化マ
ンガン及び酸化ケイ素の含有量がそれぞれ0.5mol
%、酸化アンチモンの含有量が1.2mol%、であ
る。ホウ酸の含有量は0.08mol%となるように調
整した。アルミニウムは硝酸塩水溶液として0.004
mol%添加した。残部は酸化亜鉛である。
Gd2O3(実施例2)、Tb4O7(実施例3)、Dy2
O3(実施例4)、Ho2O3(実施例5)、Y2O3(実
施例6)、Er2O3(実施例7)、Tm2O3(実施例
8)、Yb2O3(実施例9)、Lu2O3(実施例10)
をR2O3に換算してそれぞれ0.5mol%添加した。
またEu、Luに関しては0.5mol%のLa2O3を
それぞれ加えて、実施例11及び12とした。以上のよ
うな原料をボールミルを用いて混合粉砕した後、スプレ
ードライヤーを用いて乾燥・造粒した。得られた顆粒に
200〜500kgf/cm2程度の加圧力で一軸加圧
成形し、直径40mm、厚さ15mmの粉末成形体を作
製した。得られた粉末成形体からバインダ(ポリビニル
アルコール)を除去するために、600℃で5時間予備
加熱した。焼成は1150℃で5時間行った。
直径約32mmに収縮)を研磨、洗浄した後、アルミニ
ウム電極を形成し、各種電気特性を測定した。制限電圧
比の評価条件は以下のように設定した。即ち、小電流域
制限電圧比は、素子に1mA通電した際の素子の両端電
極間電圧を、10μA通電した際の素子の両端電極間電
圧で除した値(V1mA/V10μA)として評価し、
大電流域制限電圧比は、素子に2.5kA通電した際の
素子の両端電極間電圧を、1mA通電した際の素子の両
端電極間電圧で除した値(V2.5kA/V1mA)と
して評価した。以上の結果を表1に示す。
y、Ho、Y、Er、Tm、Yb、Lu(実施例1〜1
2)を添加した素子のバリスタ電圧は、希土類元素が無
添加の素子(比較例1)及び他の希土類元素であるL
a、Ce、Pr、Nd、Sm(比較例2〜6)を添加し
た素子に比べていずれも増加し、概ね450V/mm近
くの値が得られた。また、素子の大電流域制限電圧比
は、これら希土類元素を添加することで、少なくとも
0.1以上小さくする効果が得られた。
ら12のほうが、比較例1から6よりも逆に悪化してい
る。しかし、添加する希土類元素の中でもHo、Y、E
r、Ybは、小電流域制限電圧比は比較例1〜6よりも
依然高いとはいえ、Eu、Gdを添加した場合に比べて
小さい。Tm、Lu、Tb、Dyも小電流域制限電圧比
は小さいが、TmとLuは他の希土類元素化合物に比べ
て非常に高価であり、また、TbとDyは、確かに小電
流域制限電圧比は小さいが、大電流域制限電圧比が大き
いので実用上望ましくない。従って、バリスタ電圧が大
きく且つ大電流域制限電圧比が小さく、さらに小電流域
制限電圧比の悪化を最小限に抑えた素子を得るには、H
o、Y、Er、Ybの少なくとも1種類以上を添加する
ことが最適であると言える。
て得られる素子の特徴を調査するために次のような実験
を行った。上記実施例の希土類元素を添加すると、Zn
O粒子内または粒界に析出粒子を形成することは上記実
施の形態で説明したとおりだが、X線回析法(XRD)
にてこの析出粒子から得られる面間隔を測定した。素子
は、安価で安定供給が可能なY2O3(実施例6)を用い
た。また、測定によって得られた実施例6のX線回析ピ
ークが、本当に析出粒子によるものかどうかを確かめる
ために、人工的に析出粒子と同じ組成の物質を作製し
て、X線回析法で面間隔を測定した。
下のとおりである。上記実施の形態で説明したように、
析出粒子は、添加した希土類元素(R)−ビスマス−ア
ンチモン−亜鉛−マンガンで構成されている。そこで、
この析出粒子を、SEM(Scanning Elec
tron Microscope)、EPMA(Ele
ctron Probe Micro Analysi
s)、XRD(X−ray Diffractio
n)、及びEDS(Energy Dispersiv
e X−ray Spectroscopy)付き透過
電子顕微鏡(TEM)等の分析法によって調査すると、
その元素比がほぼ13:3:13:8:1であることが
分かった(特願平8−101202号に記載)。この分
析した元素比に基づいて、酸化イットリウム、酸化ビス
マス、酸化アンチモン、酸化亜鉛、酸化マンガンを混合
し、上記実施例と同一条件で焼成を行った。こうして作
成された析出粒子と同じ組成を持つ物質は、添加したす
べての元素が局在することなく均一に存在する、即ち単
相であることを上記SEM及びEPMAによって確認し
た。
X線回折パターンを図2に示す。図において、縦軸は回
析X線強度I(cps)、横軸は上記実施の形態で説明
したブラッグ条件における入射X線及び回析X線が結晶
格子面となす角度θである。なお、ここでは2θ(de
g.)で示している。図に示すように、析出粒子と同じ
物質の5カ所のX線回析ピークと同じ箇所(丸で囲んだ
部分)に、実施例6の素子のX線回析ピークも現れてお
り、従って、実施例6の5カ所のX線回析ピークは、素
子中にY2O3を添加することによって形成された析出粒
子によるものであることが確認できる。析出粒子から得
られる回析ピークは、丸で囲んだ5つだけではなく、他
にもいくつか小さな回析強度のピークが存在すること
が、図2の「偏析粒子のみ」のピークから分かる。しか
し、これらの回析ピークは、素子内に存在する他の生成
物から得られる回析ピークと重なったり、強度が非常に
弱いため検出が困難である。素子中のZnOをエッチン
グすることなく容易に検出できるのが、図2に示した丸
で囲まれた5つのピークである。
は、素子中に存在する析出粒子によるピークをより明瞭
にするために、実施例6の素子の主成分であるZnOを
過塩素酸水溶液に24時間浸してエッチング除去したも
ののX線回析パターンである。ZnOをエッチングする
ことで、析出粒子によるX線回析ピークの場所は変化す
ることなく明瞭に現わすことができる。
raction)法でも、比較例7の析出粒子が、実施
例6の素子中の析出粒子と同一であることを確認した。
施例1)、Ho(実施例5)、Er(実施例7)、Yb
(実施例9)、Lu(実施例10)を添加した素子を、
上記と同様にX線回析法で解析した。図3は、このとき
のX線回折パターン示す図である。なお、比較のため
に、先ほど析出粒子の存在を確認した実施例6の素子の
X線回析パターンと、比較例1(希土類元素無添加)及
び比較例2(La添加)のX線回析パターンも合わせて
掲載している。図に示すように、先ほど析出粒子の存在
を確認した実施例6の素子と同じ5カ所に、実施例1、
5、7、9、10の素子のX線回析ピークも出現し、析
出粒子が形成されていること分かる。これに対して、比
較例1及び比較例2は、実施例6と同じ5カ所にX線回
析ピークが検出されず、析出粒子が形成されていないこ
とが分かる。
ら10に行くに従って、析出粒子によるX線の回析ピー
クが少しずつ高角側に移動していることが分かる。これ
は、添加する希土類元素のイオン半径によるものであ
る。表2に、このイオン半径と上記X線回析パターンか
ら計算した面間隔を合わせて掲載した。
と、面間隔も小さくなることが分かる。これにより、図
3では、最も大きいイオン半径を持つEuを添加した実
施例1から、最も小さいイオン半径を持つLuを添加し
た実施例10に行くに従って、X線回析ピークが高角側
に移動している。
面間隔がどのくらいの値をとるかは、上記イオン半径を
利用することにより推測ができる。図4は、上記表2に
おける面間隔とイオン半径との関係をグラフに書き直し
たものである。図に示すように、イオン半径の増加と共
に、面間隔は直線的に増加していることが分かる。従っ
て、実施例2、3、4、8に関しては、析出粒子を形成
する希土類元素の中でイオン半径が最も小さいLuを添
加して得られる面間隔を最小値とし、イオン半径が最も
大きいEuを添加して得られる面間隔を最大値とした間
の値をとると言える。即ち、Eu、Gd、Tb、Dy、
Ho、Y、Er、Tm、Yb、Luの少なくとも1種類
以上を添加すれば、その析出粒子から得られる複数の面
間隔dn(Å)のうち5つをd1、d2、d3、d4、
d5とすると、それぞれが2.85Å≦d1≦2.91
Å、1.83Å≦d2≦1.89Å、1.77Å≦d3
≦1.82Å、1.56Å≦d4≦1.61Å、1.5
4Å≦d5≦1.60Åの範囲に存在すると言える。
r、Ybの少なくとも1種類以上に限れば、バリスタ電
圧が大きく且つ大電流域制限電圧比が小さくすると共
に、さらに小電流域制限電圧比の悪化を最小限に抑えた
素子が得られることは上述したが、この希土類元素につ
いて表2に示す面間隔を見ると、5つの面間隔はそれぞ
れ2.86Å≦d1≦2.88Å、1.85Å≦d2≦
1.86Å、1.78Å≦d3≦1.79Å、1.57
Å≦d4≦1.58Å、1.55Å≦d5≦1.56Å
の範囲に存在することが分かる。
成しない希土類元素に、上記実施例1から10の析出粒
子を形成する希土類元素添加する場合においても、析出
粒子を形成する希土類元素を添加する限り、析出粒子が
形成された希土類元素に依存した面間隔が得られる。
類の希土類元素を添加し、この希土類元素のうちさらに
少なくとも1種類がEu、Gd、Tb、Dy、Ho、
Y、Er、Tm、Yb、Luであれば析出粒子を形成
し、その析出粒子から得られる複数の面間隔dn(Å)
のうち5つをd1、d2、d3、d4、d5とすると、
それぞれが2.85Å≦d1≦2.91Å、1.83Å
≦d2≦1.89Å、1.77Å≦d3≦1.82Å、
1.56Å≦d4≦1.61Å、1.54Å≦d5≦
1.60Åの範囲に存在する。そしてこの条件を持つ素
子が、バリスタ電圧を大きくすると同時に、大電流域制
限電圧比を小さくすることができる。
Er、Ybのうちの少なくとも1種類に限れば、バリス
タ電圧が大きく且つ大電流域制限電圧比が小さくすると
共に、さらに小電流域制限電圧比の悪化を最小限に抑え
た素子を得ることができる。また、析出粒子から得られ
る複数の面間隔dn(Å)のうち5つをd1、d2、d
3、d4、d5とすると、それぞれが2.86Å≦d1
≦2.88Å、1.85Å≦d2≦1.86Å、1.7
8Å≦d3≦1.79Å、1.57Å≦d4≦1.58
Å、1.55Å≦d5≦1.56Åの範囲に存在する。
は、室温でX線回折法(XRD)で行ったものである
が、電子線回折法(ED)、高速反射電子線回折法(R
eflection High Energy Ele
ctron Spectroscopy)、低速電子線
回折法(Low Energy Electron D
iffraction)等の手法を用いても良い。
載の電圧非直線性抵抗体を搭載することによって、各種
電圧系統用避雷器が、従来の電圧非直線性抵抗体を搭載
した場合と比較して小型化が可能となる。表3に各種電
圧系統用避雷器に適用した結果を示す。避雷器の保護特
性の改善については上記実施例に記した電圧非直線性抵
抗体における非直線性の改善内容がそのまま言える。
とについて、送電系統の電圧毎に外形寸法と容積とを比
較して示したものである。従来とあるのは、従来の電圧
非直線抵抗体を用いた従来の避雷器であり、本発明とあ
るのは、この発明の電圧非直線抵抗体を用いた避雷器で
ある。外形寸法の欄の上段は直径を、下段は高さを示
す。
おいても従来に比べて外形寸法が小形化しており、容積
は、従来のものを1とするとこの発明のものは0.41
〜0.68と著しく小形化している。
00kV避雷器の構造図である。図において、7は電圧
非直線抵抗体、8は絶縁スペーサ、9はシールドであ
る。点線は従来の1000kV避雷器の外形寸法を示
す。
0kV避雷器の構造図である。点線は従来の500kV
避雷器の外形寸法を示す。
kV避雷器の構造図である。点線は従来の275kV避
雷器の外形を示す。
kV避雷器の構造図である。点線は従来の154kV避
雷器の外形寸法を示す。図において、10は絶縁パイプ
である。
77kV避雷器の構造図である。点線は従来の66/7
7kV避雷器の外径寸法を示す。
れば、酸化亜鉛を主成分とし、複数種類の希土類元素を
有し、この希土類元素のうち少なくとも1種類がEu、
Gd、Tb、Dy、Ho、Y、Er、Tm、Yb及びL
uから選ばれるものであり、かつBi、Sbを有する組
成物の焼結体であって、前記酸化亜鉛粒子内または粒界
には析出粒子が形成され、この析出粒子から得られる複
数の面間隔dn(Å)のうち5つをd1、d2、d3、
d4、d5とすると、それぞれが2.85Å≦d1≦
2.91Å、1.83Å≦d2≦1.89Å、1.77
Å≦d3≦1.82Å、1.56Å≦d4≦1.61
Å、1.54Å≦d5≦1.60Åの範囲に存在するの
で、バリスタ電圧が大きく、大電流域制限電圧比が小さ
い電圧非直線抵抗体を得る効果がある。
を主成分とし、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Y、E
r、Tm、Yb及びLuから選ばれる少なくとも1種類
の希土類元素を有し、かつBi、Sbを有する組成物の
焼結体であって、前記酸化亜鉛粒子内または粒界には析
出粒子が形成され、この析出粒子から得られる複数の面
間隔dn(Å)のうち5つをd1、d2、d3、d4、
d5とすると、それぞれが2.85Å≦d1≦2.91
Å、1.83Å≦d2≦1.89Å、1.77Å≦d3
≦1.82Å、1.56Å≦d4≦1.61Å、1.5
4Å≦d5≦1.60Åの範囲に存在するので、バリス
タ電圧が大きく、大電流域制限電圧比が小さい電圧非直
線抵抗体を得る効果がある。
を主成分とし、Ho、Y、Er及びYbから選ばれる少
なくとも1種類の希土類元素を有し、かつBi、Sbを
有する組成物の焼結体であって、前記酸化亜鉛粒子内ま
たは粒界には析出粒子が形成され、この析出粒子から得
られる複数の面間隔dn(Å)のうち5つをd1、d
2、d3、d4、d5とすると、それぞれが2.86Å
≦d1≦2.88Å、1.85Å≦d2≦1.86Å、
1.78Å≦d3≦1.79Å、1.57Å≦d4≦
1.58Å、1.55Å≦d5≦1.56Åの範囲に存
在するので、バリスタ電圧が大きく、大電流域制限電圧
比が小さく、且つ小電流域制限電圧比の悪化を最小限に
抑えた電圧非直線抵抗体を得る効果がある。
測定は、室温でX線回折法にて行うので、析出粒子の面
間隔を簡単に精度良く測定することができる。
から4のいずれか一項に記載の電圧非直線性抵抗体を搭
載したので、小型で保護特性の良い避雷器を得る効果が
ある。
体の結晶組織を示す模式図である。
体のX線回析パターンを示す図である。
体のX線回析パターンを示す図である。
体の添加元素のイオン半径と面間隔との関係を示す図で
ある。
造図である。
造図である。
造図である。
造図である。
造図である。
式図である。
模式図である。
性を示す特性図である。
粒子、4 酸化ビスマス、5 Y−Bi−Sb−Zn−
Mn−O共存酸化物粒子、6 双晶境界、7 電圧非直
線抵抗体、8 絶縁スペーサ、9 シールド、10 絶
縁パイプ
Claims (5)
- 【請求項1】 酸化亜鉛を主成分とし、複数種類の希土
類元素を有し、この希土類元素のうち少なくとも1種類
がEu、Gd、Tb、Dy、Ho、Y、Er、Tm、Y
b及びLuから選ばれるものであり、かつBi、Sbを
有する組成物の焼結体であって、前記酸化亜鉛粒子内ま
たは粒界には析出粒子が形成され、この析出粒子から得
られる複数の面間隔dn(Å)のうち5つをd1、d
2、d3、d4、d5とすると、それぞれが2.85Å
≦d1≦2.91Å、1.83Å≦d2≦1.89Å、
1.77Å≦d3≦1.82Å、1.56Å≦d4≦
1.61Å、1.54Å≦d5≦1.60Åの範囲に存
在することを特徴とする電圧非直線抵抗体。 - 【請求項2】 酸化亜鉛を主成分とし、Eu、Gd、T
b、Dy、Ho、Y、Er、Tm、Yb及びLuから選
ばれる少なくとも1種類の希土類元素を有し、かつB
i、Sbを有する組成物の焼結体であって、前記酸化亜
鉛粒子内または粒界には析出粒子が形成され、この析出
粒子から得られる複数の面間隔dn(Å)のうち5つを
d1、d2、d3、d4、d5とすると、それぞれが
2.85Å≦d1≦2.91Å、1.83Å≦d2≦
1.89Å、1.77Å≦d3≦1.82Å、1.56
Å≦d4≦1.61Å、1.54Å≦d5≦1.60Å
の範囲に存在することを特徴とする電圧非直線抵抗体。 - 【請求項3】 酸化亜鉛を主成分とし、Ho、Y、Er
及びYbから選ばれる少なくとも1種類の希土類元素を
有し、かつBi、Sbを有する組成物の焼結体であっ
て、前記酸化亜鉛粒子内または粒界には析出粒子が形成
され、この析出粒子から得られる複数の面間隔dn
(Å)のうち5つをd1、d2、d3、d4、d5とす
ると、それぞれが2.86Å≦d1≦2.88Å、1.
85Å≦d2≦1.86Å、1.78Å≦d3≦1.7
9Å、1.57Å≦d4≦1.58Å、1.55Å≦d
5≦1.56Åの範囲に存在することを特徴とする電圧
非直線抵抗体。 - 【請求項4】 面間隔の測定は、室温でX線回折法にて
行うことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に
記載の電圧非直線抵抗体。 - 【請求項5】 請求項1から4のいずれか一項に記載の
電圧非直線性抵抗体を搭載したことを特徴とする避雷
器。
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