JP2874784B2 - 塗装金属板の焼付方法および焼付炉 - Google Patents

塗装金属板の焼付方法および焼付炉

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Description

【発明の詳細な説明】 〔概 要〕 高周波誘導加熱方式を利用した塗装金属板の焼付方法
および焼付炉に関し、 焼付速度を速くして短時間に良好な表面性能を有する
熱硬化性塗膜が形成された塗装金属板を得ることを目的
とする。
そのために、高周波誘導加熱により金属板に塗布され
た熱硬化性塗料中の溶剤を蒸発させて該塗料の焼き付け
を行う塗装金属板の焼付方法において、1つの焼付炉に
おいて金属板を高周波誘導加熱により加熱して焼き付け
処理を行うと同時に、該金属板の該塗料表面に熱風を吹
き付けて該塗料表面の性能を向上させる。
〔産業上の利用分野〕
本発明は塗装金属板の焼付方法および焼付炉のうち、
特に、高周波誘導加熱方式を利用した熱硬化性塗膜が形
成された塗装金属板の焼付方法および焼付炉に関する。
〔従来の技術〕
近年、例えば、家電製品等を初めとする各分野で予め
塗装された鋼板(プレコート鋼板)が広く使用されるよ
うになった。それに伴って、鋼板の塗膜に対しても高い
品質が要求されるようになり、この高品質のプレコート
鋼板を短時間で大量に製造することのできる塗装金属板
の焼付技術の開発が期待されている。
従来、塗装金属板(例えば、塗装鋼板)は、ガス加熱
方式を用いた熱風炉を用いて、溶剤蒸発および焼付硬化
等の一連の塗料焼き付け処理を行なっている。
また、最近では、急速加熱が可能で熱慣性がなく、し
かも、クリーンな雰囲気で塗装欠陥の少ない塗装金属板
が得られる高周波誘導加熱方式も実用化されている。具
体的には2つの方法があり、高周波誘導加熱方式を用い
た誘導加熱炉で焼き付け処理を行う方法(例えば、特開
平1−139178号公報参照)、並びに、誘導加熱炉で大部
分の溶剤を蒸発させ、その後、熱風炉で焼き付けを行う
方法(例えば、特開昭62−99479号公報,特開昭62−133
083号公報,特開昭62−133084号公報参照)である。
〔発明が解決しようとする課題〕
上述のように、従来の塗装金属板焼付方法としては、
熱風炉を使用するもの、誘導加熱炉を使用するもの、お
よび、誘導加熱炉と熱風炉との両方を使用するものが知
られている。しかし、これら従来の塗装金属板焼付方法
には、以下に述べるような問題がある。
まず、熱風炉を用いた塗装金属板の焼付方法では、熱
風を塗装面外側から吹き付ける方式のため、加熱が塗装
表面から行われることになる。それが原因となって、急
速に加熱を行うと、塗装面内部の溶剤がうまく蒸発する
ことができず、塗装面にワキ現象が発生して塗装金属板
の品質が低下することがある。このワキ現象発生を防止
するためには、塗装面の加熱を穏やかに行う必要がある
が、それには、炉長を長くするか或いはラインスピード
を遅くしなければならず、生産性が低下することにな
る。さらに、炉内で蒸発した溶剤を排気するために使用
するフレッシュエアーは、炉内の熱損失を少なくする必
要から加熱して吹き込むが、このフレッシュエアーの加
熱には大量のエネルギーを要し、エネルギー原単位の上
昇を招くことにもなっている。
一方、上述の熱風炉を用いた塗装金属板焼付方法の短
所を解決するものとして誘導加熱炉を用いる方法があ
る。この場合には、加熱が塗装面の内側から行われるこ
とになるため、熱硬化性塗料の場合には塗装表面部(塗
料)の硬化反応が熱風炉で焼き付けられた場合に比べて
十分に進まず、熱風炉により焼き付けられた塗装金属板
よりも塗料表面の性能(例えば、耐汚染性,表面硬度)
が劣る。この欠点を補うため、誘導加熱炉のあとに熱風
炉を配置したものは、炉長が誘導加熱炉だけのものに比
して必然的に長くなり、設備保守の面でも問題がある。
本発明は上述した従来の塗装金属板焼付技術が持って
いる課題に鑑み、高い焼付速度で短時間に良好な表面性
能を有する熱硬化性塗膜が形成された塗装金属板を得る
ことを目的とする。
〔課題を解決するための手段〕
本発明の第1は、高周波誘導加熱により、金属板に塗
布された熱硬化型塗料中の溶剤を蒸発させて該塗料の焼
き付けを行う塗装金属板の焼付方法であって、1つの焼
付炉において金属板を高周波誘導加熱により加熱して焼
き付け処理を行うと同時に、該金属板の塗料表面に熱風
を吹き付けることを特徴とする塗装金属板の焼付方法の
提供にある。
本発明の第2は、高周波誘導加熱により、金属板に塗
布された熱硬化型塗料中の溶剤を蒸発させて該塗料の焼
き付けを行う塗装金属板の焼付方法であって、金属板の
加熱の最終段階の該塗料の反応硬化が行われている場所
で、1つの焼付炉において金属板を高周波誘導加熱によ
り加熱して焼き付け処理を行うと同時に、該金属板の塗
料表面に熱風を吹き付けることを特徴とする塗装金属板
の焼付方法の提供にある。
本発明の第3は、高周波誘導加熱により、金属板に塗
布された熱硬化型塗料中の溶剤を蒸発させて該塗料の焼
き付けを行う塗装金属板の焼付炉であって、1つの焼付
炉において、当該焼付炉中で前記塗料の反応硬化が行わ
れている場所に、金属板を高周波誘導加熱により加熱し
て塗料の焼き付け処理を行う高周波誘導加熱手段と、該
高周波誘導加熱手段による塗料の焼き付け処理と同時に
該金属板の塗料表面に熱風を吹き付ける熱風吹付手段と
を設けるようにしたことを特徴とする塗装金属板の焼付
炉の提供にある。
〔作 用〕
以下、本発明に係る塗装金属板の焼付方法および焼付
炉について詳述する。
本発明者らは、高周波誘導加熱方式により、熱硬化性
塗料の焼き付け実験を行っているときに次の知見を得
た。すなわち、高周波誘導加熱による焼き付け処理のみ
では塗料(塗膜)表面の硬化反応の進行が不十分な場合
がある。すなわち、高周波誘導加熱炉により焼き付けた
塗膜は、熱風炉等の塗膜外側から加熱する方式で焼き付
けた塗膜よりも表面の性能、例えば、耐汚染性や表面の
傷つき性,表面硬度等において劣ることが見出された。
これは、高周波誘導加熱方式による焼き付けでは塗膜の
内部から加熱され、塗膜の最表層付近を除けば金属板の
温度に応じて硬化反応が進行するが、炉内の雰囲気温度
はほぼ室温であるため、この室温の空気に触れている塗
膜の最表層付近の温度は塗膜内部に比べて温度が低く、
塗膜の硬化反応が十分に進行しにくいためであると考え
られる。
本発明において、熱硬化性塗料とは、塗料中に熱硬化
性樹脂をバインダーとして含む塗料を指す。ここで、塗
料は、熱硬化性塗料と熱可塑性塗料の2種類に大きく分
類できる。熱硬化性塗料は、熱を加えることによって硬
化反応が進み、この硬化反応によって塗膜が硬化する塗
料を意味し、また、熱可塑性塗料は、塗膜中では反応が
進まず、溶剤が揮発することによって塗膜となるタイプ
の塗料のことである。本発明は、高周波誘導加熱によっ
て昇温された金属板の表面に塗布された熱硬化性塗膜の
最表層の反応を促進するために、硬化反応が進む焼付け
の最終段階で熱風を吹き込むことを特徴としている。
通常、塗料を焼き付けるときには、炉内での金属板の
温度を測定して、金属板の到達板温を知ることにより焼
き付け程度を管理することが多いが、熱風炉焼付のよう
に塗膜の外側から加熱する方式の場合には、炉内温度
(または、炉内風の温度)は目標とする金属板の到達板
温よりも20〜80℃程度高い温度に設定されており、塗料
表面は金属板よりも高い温度の雰囲気中にさらされてい
る。ところが、高周波誘導加熱炉のように金属板の内部
から加熱する場合には、塗料表面は金属板と同じか僅か
に低い温度になり、熱風炉のような塗膜の外側から目標
到達温度より高い温度で加熱される場合に比して塗料表
面の硬度が低くなり、耐汚染性や表面硬度がやや劣る結
果になるものと考えられる。これは、先に述べたよう
に、熱硬化性塗料の硬化反応が十分に進まないためと考
えられる。これを解決するために、高周波誘導加熱で焼
き付ける場合に熱風炉等の塗料表面から加熱する方式よ
りも到達板温を高く設定することも考えられるが、この
場合には塗膜全体の硬化反応が進んでしまうため過剰焼
付による加工性の低下が見られて好ましくない。
そこで、本発明者らは、高周波誘導加熱方式が有する
長所、すなわち、急速加熱が可能で熱慣性がなく、しか
も、クリーンな雰囲気で塗装欠陥の少ない塗装金属板が
得られるという長所を生かしつつ、塗料表面の性能を熱
風炉により焼き付けられたものと同等以上にするため
に、本発明の塗装金属板の焼付方法および焼付炉を提供
するものである。
その際に次の点を考慮することによって、本発明の特
徴がより明確となる。すなわち、本発明者らは、金属板
に塗布された塗料中の溶剤を揮発させる、いわゆるフラ
ッシュオフの段階において、高周波誘導加熱で金属板を
加熱すると同時に、該金属板の塗料表面に熱風を吹き付
けることにより塗料のワキ現象が抑えられ、塗膜の表面
外観が向上することも見出している。このことから、初
期のフラッシュオフ段階から高周波誘導加熱と熱風炉加
熱を同時に実施することが好ましい。これは、先に述べ
たように、フラッシュオフ時に塗膜表面へ熱風を吹き付
けることによって塗装の表面温度を確保することがで
き、それがワキの防止に繋がっているものと考えられ
る。
さらに、フラッシュオフの段階、すなわち溶剤揮発ゾ
ーンで、塗膜表面に熱風を吹付けることにより、ワキが
抑えられるため、溶剤揮発ゾーンを短くでき、全体の炉
長の短縮、及び焼付に要する時間の短縮が図れる。
したがって、本発明の塗装金属板の焼付方法によれ
ば、1つの焼付炉において、金属板は高周波誘導加熱に
より加熱されて焼き付け処理が行われると同時に、該金
属板の塗料表面には熱風が吹き付けられる。この1つの
焼付炉において同時に行う高周波誘導加熱の加熱と熱風
の吹き付けとによって、高い焼付速度で短時間に良好な
表面性能を有する塗装金属板を得ることができる。
ここで、金属板の塗料表面に対する熱風の吹き付け
は、外観性能向上を目的として、高周波誘導加熱による
金属板加熱の初期段階すなわち溶剤の揮発ゾーンで行
い、さらに、硬度、耐汚染性など表面物性改善を目的と
して、硬化反応が進行する高周波誘導加熱による金属板
の加熱の最終段階で行うのが好ましい。さらに、金属板
の塗料表面に吹き付ける熱風の温度は100℃〜280℃の範
囲内に設定するのが好ましく、また、熱風の風速は0.1m
/sec.〜8m/sec.の範囲内に設定するのが好ましい。理由
は、熱風の温度が80℃未満、熱風の風速が0.1m/sec.未
満の場合には、塗料表面の性能向上が不可能となり、ま
た、熱風の温度が280℃を超え、熱風の風速が8m/sec.を
超えた場合には、加工折り曲げ性の低下を招くことにな
るためである。
一方、本発明の塗装金属板の焼付炉によれば、高周波
誘導加熱手段で加熱することにより、金属板に塗布され
た塗料中の溶剤が蒸発し、塗料が金属板に焼き付けられ
る。さらに、熱風吹付手段により溶剤の揮発及び焼き付
け処理中の金属板の熱硬化性塗料表面に対して熱風が吹
き付けられ、これによって、塗料表面の性能が向上す
る。
〔実施例〕
以下、本発明に係る塗装金属板の焼付炉及び焼付方法
の実施例を図面を参照して説明する。
第1図は本発明に係る塗装金属板の焼付炉の一実施例
を示す図である。同図に示されているように、本実施例
の焼付炉1は、例えば、ロールコータ方式,スプレー方
式,静電粉体塗装方式,或いは,カーテンフロー方式等
により鋼板6に塗布された熱硬化性塗料7を該鋼板6に
焼き付けるために使用されるものである。焼付炉1に
は、鋼板6を誘導加熱するために電源装置2に接続され
たコイル3、並びに、鋼板6に塗布された塗料7の表面
性能(例えば、耐汚染性,表面硬度)を向上させるため
に熱風発生装置4からの熱風を鋼板6上の塗料7に吹き
付ける熱風吹出口5が設けられている。すなわち、塗料
7が塗布された鋼板6は、電源装置2およびコイル3か
ら構成された高周波誘導加熱装置によって順次加熱さ
れ、まず、塗料7における溶剤が蒸発し(7a)、次い
で、塗料7が鋼板6に焼き付けられる(7b)。その後、
塗料7の焼き付け処理が行われると同時に、熱風吹出口
5から熱風が塗料7の表面に吹き付けられる(7c)よう
になっている。ここで、熱風吹出口5は、コイル3の下
流側に隣接して設けられていて、コイル3による鋼板6
の高周波誘導加熱の最終段階にあたる場所で熱風の吹き
付けが行われ、塗料7の表面硬度および耐汚染性を向上
させるようになっている。また、本実施例の焼付炉は、
従来の誘導加熱炉と同程度の炉長として構成することが
できる。なお、この第2図には記載してないが、吹出し
た熱風を排出するための排気口を適宜設けることができ
る。
一方、電源装置2は、例えば、サイリスタ等を使用し
て6KHz〜10KHz程度の高周波電圧を発生するもので、該
電源装置2からの電圧はコイル3に印加されるようにな
っている。ここで、電源装置2は、例えば、コンピュー
タ等によりコイル3に流す電流が制御され、金属板(鋼
板)6の材質、厚さ、および塗料7の種類や膜厚等に応
じて最適な制御を行うことができる。また、第1図にお
いて、コイル3は鋼板6を巻く形で配設され、磁力線が
ストリップ進行方向に発生するように構成されている
が、このコイルは鋼板6の上面および下面に一対のコイ
ルを設けて磁力線がストリップ厚さ方向に発生するよう
に構成することもでき、金属板6の材質および厚さ等に
より適切なものを選択することができる。
熱風発生装置4は、一般的な熱風炉で使用される熱風
発生装置と同様のものである。ただし、本実施例で使用
する熱風発生装置4は、一般的な熱風炉のものよりも低
い温度の熱風(ガス)を発生すればよく、使用済みのガ
ス(一度鋼板に吹き付けた熱風)を再使用する場合に必
要とされるフィルタに関しても一般的に用いられる様々
な材質のものを利用することが可能なようにする。すな
わち、一般的な熱風炉で発生させる熱風の温度は、300
℃〜350℃程度であるために、一度使用したガスを再使
用するためには、例えば、約300℃以上の温度に対して
も使用できるような材質のフィルタが要求される。しか
し、これまでにそのような高温に耐え得る材質で塵埃等
を有効に取り除くことのできるフィルタは実用化されて
いない。これに対して、本実施例で使用する熱風の温度
は80℃〜280℃程度でよいために、一担使用したガスを
再使用する場合でも塵埃等を有効に取り除くことのでき
るフィルタが提供されており、一度加熱されたガスを何
度も繰返し使用することにより無駄な熱の浪費を抑えて
エネルギー原単位を向上させることができる。
第2図は本発明に係る塗装金属板の焼付炉の他の実施
例を示す図である。同図に示されているように、本実施
例の焼付炉1′は、第1図の焼付炉1において、該焼付
炉を三つの領域I,IIおよびIIIに分割すると共に、コイ
ル3を二つのコイル31および32に分割してそれぞれ領域
IおよびIIIの位置に配設し、熱風吹出口5′をコイル3
1の直後の位置にも配設したものである。すなわち、第
1図の焼付炉1では、鋼板6に塗布された塗料7に対す
る溶剤の蒸発および該塗料の焼き付けを1つの電源装置
2およびコイル3で行っている。それに対して、本実施
例の焼付炉1′では、領域Iにおいて電源装置21および
コイル31により構成された高周波誘導加熱装置で鋼板6
を加熱して該鋼板6に塗布された塗料中の溶剤を蒸発さ
せ(7a)、コイル31の直後に設けられた熱風吹出口5′
からの熱風により塗膜外観性能を向上させる。次に、領
域IIにおいて該鋼板6を一定温度に保持して溶剤を完全
に揮散させる。さらに、領域IIIにおいて電源装置22お
よびコイル32により構成された高周波誘導加熱装置で鋼
板6を加熱して塗料を焼き付ける(7b)ようになってい
る。そして、最後に、コイル32の下流側に隣接して設け
られた熱風吹出口5からの熱風により鋼板6に塗布され
た塗料7の表面性能を向上させる(7c)。
以上が本発明に係る塗装金属板の焼付炉の実施例であ
る。以下では本発明に係る塗装金属板の焼付方法の実施
例を説明する。
第1表は、三種類のサンプルA,B,Cに対して、従来の
高周波誘導加熱だけ,熱風加熱だけ、および本発明であ
る高周波誘導加熱+熱風加熱を比較して示すものであ
り、前述の本発明に係る塗装金属板の焼付炉により焼き
付け処理したものは、熱風の風速および温度を種々変化
させて検討した結果を示す。
ここで用いた塗装原板は、0.6mm厚の電気亜鉛メッキ
鋼板に電解クロメート処理を施したものである。また、
塗装系は、下塗りとしてポリエステル系塗料を5μ塗布
焼付後、上塗りを20μm塗布した。第1表は、上塗りの
焼付けに関する条件である。
なお、第1表「焼付条件」中「方法」に記載の「高周
波誘導加熱+熱風」とあるのは、高周波誘導加熱による
金属板の加熱の最終段階で熱風を吹付けたものである。
参考までに、第1表に挙げた評価試験の方法を以下に
記載する。
まず、耐汚染性の試験方法は、塗膜に黒と赤のマジッ
クインキで線を引き、24時間経過後にエタノールで拭き
取り、マジックインキの線の跡の残り方で判定する。基
準は以下の通りである。
◎……痕跡なし ○……僅かに痕跡あり △……あまり拭き取れない ×……全く拭き取れない また、折り曲げ加工性の試験方法は、20℃雰囲気下で
プレコート鋼板のT折り曲げ試験を行い(塗膜面を外側
とする)、30倍ルーペで観察して、クラックのない限界
値で表示する。
具体的には、例えば、第1表の実施例3と比較例11と
の対比から、膜厚が20μmのサンプルAについて、加工
折り曲げ性が共に3Tと変わらないが、耐汚染性(黒マジ
ック汚染性および赤マジック汚染性)は向上させること
ができる。この表には、塗料表面の硬度に関する項目は
ないが、本発明に係る塗装金属板の焼付方法を適用し
て、高周波誘導加熱による焼き付け処理の最終段階で熱
風を吹き付ける処理を行えば、耐汚染性と同様に、塗料
表面の硬度を向上させることができる。
また、例えば、第1表の実施例5と比較例4との対比
から、膜厚が20μmおサンプルAについて、熱風の風速
あるいは温度の設定が低過ぎると塗料表面の性能を向上
させることはできない。さらに、例えば、第1表の実施
例2と比較例2との対比から、膜厚が20μmのサンプル
Aについて、熱風の風速あるいは温度の設定が高過ぎる
と、加工折り曲げ性が3Tから5Tとなって加工性が低下す
ることが判る。さらに、膜厚が20μmのサンプルA、膜
厚が17μmのサンプルB、および膜厚が15μmのサンプ
ルCの比較から、塗料表面に吹き付ける熱風の風速およ
び温度は、該塗料(塗膜)の膜厚に適した範囲に設定す
る必要のあることが判るであろう。ここで、第1表で
は、一部の塗料7および鋼板6についての試験データを
示しただけであり、また、塗料7の表面に吹きつける熱
風の風速と温度とは密接に関係しているため、全てを網
羅することはできないが、金属板(鋼板)の塗料表面に
吹き付ける熱風の温度は、80℃〜280℃の範囲に設定す
るのが好ましく、また、金属板の塗料表面に吹き付ける
熱風の風速は、0.1m/sec.〜8m/sec.の範囲に設定するの
が好ましい。
第2表は、外観の向上を目的として溶剤揮発ゾーンで
も熱風を吹付けた場合の実施例を示す。ここで、塗装原
板と塗装系は第1表と同じであり、焼付最終段階での熱
風は、温度200℃、風速2m/sec.に固定した。また、表中
に記載した「外観」の項は、○がワキが発生しなかった
場合、×がワキが発生した場合を表わしている。
結果は、サンプルAを用いた場合、溶剤揮発ゾーンで
熱風を吹付けると、15秒間の焼付けではワキが発生する
が、20秒間の焼付ではワキが発生していない。それに対
して、溶剤揮発ゾーンで熱風を吹付けないと、25秒間の
焼付でもワキが発生し、30秒間の焼付で初めてワキの発
生が見られなくなる。また、サンプルBを用いた場合
は、熱風を吹付けた場合には25秒焼付でワキが発生しな
いが、熱風を吹付けないと、25秒焼付でもワキが発生す
る。
このように、溶剤揮発ゾーンで熱風を吹付けることに
より、ワキが発生して塗装表面の外観悪化を抑制するこ
とができる。
〔発明の効果〕
以上、詳述したように、本発明によれば、1つの焼付
炉において金属板を高周波誘導加熱により加熱して焼き
付け処理を行うと同時に、該金属板の塗料表面に熱風を
吹き付けることによって、高い焼付速度で短時間に良好
な表面性能を有する熱硬化性塗膜が形成された塗装金属
板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明に係る塗装金属板の焼付炉の一実施例を
示す図、 第2図は本発明の塗装金属板の焼付炉の他の実施例を示
す図である。 (参照符号の説明) 1,1′……焼付炉、 2,21,22……電源装置、 3,31,32……コイル、 4……熱風発生装置、 5,5′……熱風吹出口、 6……鋼板、 7……塗料(塗膜)。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 小谷 英夫 千葉県君津市君津1番地 新日本製鐵株 式会社君津製鐵所内 (56)参考文献 特開 昭63−190681(JP,A) 特開 昭61−146366(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) B05D 3/02 B05C 9/14

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】高周波誘導加熱により、金属板に塗布され
    た熱硬化型塗料中の溶剤を蒸発させて該塗料の焼き付け
    を行う塗装金属板の焼付方法であって、1つの焼付炉に
    おいて金属板を高周波誘導加熱により加熱して焼き付け
    処理を行うと同時に、該金属板の塗料表面に熱風を吹き
    付けることを特徴とする塗装金属板の焼付方法。
  2. 【請求項2】高周波誘導加熱により、金属板に塗布され
    た熱硬化型塗料中の溶剤を蒸発させて該塗料の焼き付け
    を行う塗装金属板の焼付方法であって、金属板の加熱の
    最終段階の該塗料の反応硬化が行われている場所で、1
    つの焼付炉において金属板を高周波誘導加熱により加熱
    して焼き付け処理を行うと同時に、該金属板の塗料表面
    に熱風を吹き付けることを特徴とする塗装金属板の焼付
    方法。
  3. 【請求項3】金属板の塗料表面に吹きつける熱風の温度
    を、100℃〜280℃の範囲内とする請求項第1項または第
    2項に記載の塗装金属板の焼付方法。
  4. 【請求項4】金属板の塗料表面に吹きつける熱風の風速
    を、0.1m/sec.〜8m/sec.の範囲内とする請求項第1項〜
    第3項のいずれか1項に記載の塗装金属板の焼付方法。
  5. 【請求項5】高周波誘導加熱により、金属板に塗布され
    た熱硬化型塗料中の溶剤を蒸発させて該塗料の焼き付け
    を行う塗装金属板の焼付炉であって、 1つの焼付炉において、当該焼付炉中で前記塗料の反応
    硬化が行われている場所に、金属板を高周波誘導加熱に
    より加熱して塗料の焼き付け処理を行う高周波誘導加熱
    手段と、該高周波誘導加熱手段による塗料の焼き付け処
    理と同時に該金属板の塗料表面に熱風を吹き付ける熱風
    吹付手段とを設けるようにしたことを特徴とする塗装金
    属板の焼付炉。
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