JP2870266B2 - 硬化性粘着剤組成物およびこれを用いたシートもしくはテープ - Google Patents

硬化性粘着剤組成物およびこれを用いたシートもしくはテープ

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JP2870266B2
JP2870266B2 JP30541591A JP30541591A JP2870266B2 JP 2870266 B2 JP2870266 B2 JP 2870266B2 JP 30541591 A JP30541591 A JP 30541591A JP 30541591 A JP30541591 A JP 30541591A JP 2870266 B2 JP2870266 B2 JP 2870266B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は,接合時には粘着性を有
し,被着体に仮接着でき,次に,加熱や光照射すること
により,あるいは貼り合わせただけで硬化して強固な接
着力を示す,いわゆる粘接着剤として好適な硬化性粘着
剤組成物,およびそれを基材に塗布または含浸させるこ
とによって作られることを特徴とする硬化性粘着シート
またはテープ(以下「シート」と記載する)に関する。
【0002】
【従来の技術】接合時には粘着性を有し,被着体に容易
に仮接着でき,貼り付けた後は徐々に硬化して強固な接
着力を示す硬化性粘着シートには,空気中の湿気や被着
体の水分で硬化する湿気硬化型(特公昭47−4401
7号公報,特公昭49−5895号公報,特開昭54−
64536号公報,特開昭58−171460号公報,
特開昭59−58071号公報,特開昭61−1452
68号公報,特開昭61−148281号公報),熱で
硬化する熱硬化型(特公昭50−12464号公報,特
開昭51−6235号公報,特開昭54−102335
号公報,特公昭55−8113号公報,特公昭59−1
4508号公報,特開昭59−108072号公報,特
開昭60−217283号公報,特開昭61−8146
7号公報),光で硬化する光硬化型(特開昭56−12
0786号公報,特開昭57−159864号公報,特
開昭60−69178号公報,特開昭61−16257
4号公報),空気を遮断することによって硬化する嫌気
硬化型(特公昭58−12918号公報,特開昭59−
199784号公報,特開昭59−199785号公
報,特開昭60−6773号公報,特開昭60−115
68号公報,特開昭60−13868号公報)がある。
しかし,どの硬化様式を採用したとしても,硬化前の粘
着特性と硬化後の接着特性の両方を満足させる,硬化性
樹脂の設計が粘接着剤では最も重要である。
【0003】従来から,硬化性粘着剤組成物としては,
非反応性または反応性の粘着ポリマーに,反応性オリゴ
マーまたはモノマーを添加したものが知られている(特
公昭50−28970号公報,特公昭53−31898
号公報,特開昭53−118439号公報,特公昭54
−28877号公報,特開昭60−69178号公報,
特公昭61−18591号公報,特開昭61−8327
3号公報,特開昭61−83274号公報,特開昭61
−101583号公報,特公平1−36513号公報,
特公平2−5791号公報など参照)。しかしながら,
これらの組成物では,硬化後の十分な接着力を得るため
に,反応性オリゴマーまたはモノマーを多く添加した場
合には,硬化前の粘着特性,特に凝集力が低下し,貼着
から硬化までの間にずれや剥離を生ずる可能性があっ
た。一方,硬化前の粘着特性,とりわけ凝集力を改善す
るために,反応性オリゴマーやモノマーの添加量を減ら
すと,硬化性が低くなり,十分な接着力が得られなかっ
た。反応性オリゴマーまたはモノマーの添加量を,硬化
前の粘着特性と硬化後の接着特性のバランスが最も良く
なるように調整しても,硬化前の粘着特性と硬化後の接
着特性はいずれも中途半端なものとなり,満足できる性
能を有する粘接着剤は得られなかった。このように,硬
化前の粘着特性と硬化後の接着特性との両方に十分優
れ,とりわけ硬化後の剥離接着力に優れた硬化性粘着剤
組成物は開発されていなかった。
【0004】そこで,本発明者の一部らはポリマーに通
常複数個の不飽和基を有するグラフト鎖を導入すること
により(特開平1−188508号公報,特開平1−1
93314号公報,特開平1−193315号公報,特
開平3−50213号公報,特開平3−50214号公
報,特開平3−50215,特開平3−66779号公
報,特開平3−66780号公報,特開平3−6678
1号公報,特開平3−66782号公報,特開平3−6
6783号公報,特開平3−66784号公報),ポリ
マー自体に硬化性を付与し,硬化前の粘着特性および硬
化後の接着特性の両方に優れた硬化性粘着剤組成物を開
発したが,硬化性樹脂の合成面および粘着特性の一部に
いくつかの問題を残していた。
【0005】この樹脂の合成は,分子量の大きいポリマ
ーにグラフト鎖を導入する反応であるため,反応速度が
非常に遅く,長時間反応させても反応は容易に進行せ
ず,未反応の原料が樹脂中に残留し易かった。また,反
応を停止した場合には,未反応の原料による臭気の問題
により,性能悪化の可能性があった。このように,硬化
前の粘着特性と硬化後の接着特性の両方に優れた,硬化
性粘着剤組成物ものを容易かつ安定につくることも難し
かった。
【0006】これらの問題を解消するため,さらに新し
い試みとして(特願平02−188683号),本発明
者の一部らは,不飽和ポリエステルオリゴマーと粘着ポ
リマーをブレンドすることにより,ミクロ相分離を起さ
せ,硬化前の粘着特性と硬化後の接着特性の両方に優れ
た,硬化性粘着剤組成物を開発し,前記の問題を解決す
ることに成功した。しかし,さらに微妙な硬化性を要求
される用途では,粘着特性と接着特性のバランスはまだ
十分とはいえなかった。例えば,硬化後の剥離強度が,
非常に高いレベルを要求されるような用途では,過度の
硬化による接着力の低下を防止するため,硬化性の不飽
和基の含有量を最小限にして,所定の硬化性を示す組成
物が必要であり,効率的な硬化性を示す構造の樹脂をつ
くることが,この課題を達成する上で重要であった。特
に,硬化後さらに200℃以上の半田浴に浸漬されるよ
うな用途では,過度の硬化によって引き起こされる硬化
収縮に起因した接着力の低下を抑えるため,樹脂構造の
最適化を行なう必要があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】従来の硬化性樹脂の合
成は,ポリマーに直接グラフト鎖をつける反応であるた
め,反応速度が非常に遅く,反応を途中で停止した場合
には,未反応の原料による臭気の問題によって,性能悪
化を起こす可能性があった。また,粘着特性と硬化後の
接着力のバランスの優れたものを容易かつ安定につくる
ことも難しかった。さらに,従来の硬化性樹脂を改良し
た,不飽和ポリエステルオリゴマーと粘着性ゴム系ポリ
マーをブレンドした硬化性粘着剤組成物も,要求品質の
厳しい用途ではまだ多くの問題があった。特に,剥離強
度を強くした粘接着剤のように,微妙な硬化性と硬化後
の粘弾性が要求される場合は,この改良を加えた樹脂で
さえ,十分とはいえなかった。本発明は,従来の硬化性
粘着剤組成物における上記のような合成面および物性面
の諸問題点を改良し,硬化前の粘着特性と硬化後の接着
特性に十分優れた硬化性粘着剤組成物,およびこれを用
いたシートを提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明の硬化性粘着剤組
成物は,粘着性ゴム系ポリマー(A)100重量部に対
して,水酸基および/またはアミノ基を有する化合物
(a)(以下「化合物(a)」と記載する),環状酸無
水物(b),ラジカル重合性の不飽和基を有するエポキ
シド(c)(以下「エポキシド(c)」と記載する),
およびラジカル重合性の不飽和基を有しないエポキシド
(d)(以下「エポキシド(d)」と記載する)を反応
させて得られる硬化性ポリエステルオリゴマー(B)5
〜200重量部含むこと特徴とする硬化性粘着剤組成物
である。これらの組成物を用いて得られたシートは,硬
化前の粘着特性および硬化後の接着特性の両方に優れた
ものとなる。
【0009】また,本発明の硬化性粘着剤組成物とし
て,粘着性ゴム系ポリマー(A)および硬化性ポリエス
テルオリゴマー(B)の他に,(1)重合開始剤(C)
を,粘着性アクリルポリマー(A)と硬化性ポリエステ
ルオリゴマー(B)の総重量100重量部に対し,0.
1〜5重量部,(2)ポリイソシアネート(D)を,粘
着性アクリルポリマー(A)と硬化性ポリエステルオリ
ゴマー(B)の総重量100重量部に対し,0.1〜5
重量部,(3)粘着付与剤(E)を,粘着性アクリルポ
リマー(A)と硬化性ポリエステルオリゴマー(B)の
総重量100重量部に対し,1〜100重量部,の中
の,(1)〜(3)から選ばれる1種以上の化合物を含
むことを特徴とする硬化性粘着剤組成物とすることによ
って,重合開始剤(C)を添加した場合には,硬化を迅
速に起こすことが可能になり,ポリイソシアネート
(D)を添加した場合には,硬化前の粘着特性の一つで
ある保持力が向上し,粘着付与剤(E)を添加した場合
には,プラスチック基材への接着性が改善される。特
に,加熱温度150度以下の熱硬化,嫌気硬化,UV硬
化などでは,重合開始剤(C)なしには反応は進行せ
ず,ほとんど必須成分として,本発明の硬化性粘着剤組
成物に添加される。この硬化性粘着剤組成物を,基材に
塗布または含浸させることにより,硬化前の粘着特性お
よび硬化後の接着特性の両方に優れたシートを得ること
ができる。
【0010】本発明の硬化性粘着剤組成物は,粘着性ポ
リマーと反応性のオリゴマーとのブレンドであるという
点で,従来のものと類似している。しかし,従来のブレ
ンド型の粘接着剤では,ブレンドした両者の性質を相殺
してしまい,優れたものはできない。それに対して,本
発明の粘着性ゴム系ポリマー(A)と硬化性ポリエステ
ルオリゴマー(B)を,硬化性粘着剤組成物として用い
た場合には,両者の相溶性が適度に調整され,海島状の
ミクロ相分離構造を形成することができる。そのため
に,硬化性を発現する成分と硬化前の粘着性を発現する
成分が,それぞれ別々に機能し,両者の性質を相殺する
ことなしに,優れた硬化前の粘着特性,および優れた硬
化後の接着特性を,発現させることが特徴である。
【0011】硬化性を発現する成分は,ポリエステルオ
リゴマーに組み込まれた不飽和基を有するエポキシドで
あるが,剥離強度を大きくするためには,硬化性成分を
少なくし,適度な粘弾性を有する樹脂にしなければなら
ない。しかし,粘着性ゴム系ポリマーに対して,不飽和
ポリエステルオリゴマーの量を単純に少なくしても,粘
着特性と接着特性のバランスがくずれ,あまり良好な結
果にはならない。そこで,従来はこの解決策として,不
飽和基を有するエポキシドを用いて合成したポリエステ
ルオリゴマーと,不飽和基を有しないエポキシドより合
成したポリエステルオリゴマーを別々に合成し,硬化後
の剥離強度が最も大きくなるよう,粘着性ゴム系ポリマ
ーと適当な比率で混合していた。しかし,不飽和基を有
するエポキシドだけを用いた不飽和ポリエステルオリゴ
マーは,必ずしも反応性が十分ではなく,所定の条件で
熱硬化させた後も,未反応の不飽和基が残留していた。
その理由は,不飽和基を有するエポキシドのみから誘導
したポリエステルオリゴマーでは,一つの不飽和基が反
応すると,隣接した不飽和基の反応性は著しく低下する
ためである。隣接した不飽和基の反応低下は,互いに不
飽和基同志が接近し過ぎているためであり,樹脂構造自
体を再検討する必要があった。
【0012】本発明は,これらの問題を解消するため
に,不飽和ポリエステルオリゴマーの構造を従来のポリ
マーから変更したものである。従来のポリマーのよう
に,不飽和基を有するエポキシドのみからなるポリエス
テルオリゴマーと,不飽和基を有しないエポキシドから
なるポリエステルオリゴマーを,混合して用いるのでは
なく,不飽和基を有するエポキシドと不飽和基を有しな
いエポキシドを反応させたものである。同一分子内に,
エポキシド由来の不飽和基と飽和基が共存するため,従
来のものに比べて,相対的に不飽和基同志が隣接する可
能性が少なく,硬化性が向上している。
【0013】また,ポリイソシアネート(D)を添加し
た場合には,粘着性ゴム系ポリマー(A)と硬化性ポリ
エステルオリゴマー(B)に含まれる官能基の間で部分
的に架橋構造を形成し,海島状のミクロ相分離構造を保
持したまま,硬化性を損なうことなく,硬化前の凝集力
を著しく向上させることができる。粘着付与剤(E)を
添加した場合には,粘着性ゴム系ポリマー(A)と硬化
性ポリエステルオリゴマー(B)が形成する,海島状の
ミクロ相分離構造の中で,さらに粘着付与剤(E)もミ
クロ相分離を起こし,非常に複雑なミクロ相分離構造を
形成する。その結果,粘着性ゴム系ポリマー(A)と硬
化性ポリエステルオリゴマー(B)からなる,ミクロ相
分離構造によって得られた,硬化前の粘着特性や硬化後
の接着特性は損なわれることなく,さらに,粘着付与剤
(E)の効果によって,プラスチック基材への接着性に
も優れた硬化性粘着剤組成物を得ることができる。
【0014】粘着性ゴム系ポリマー(A)は,粘着性ア
クリルポリマーをはじめ,天然および合成のゴムなど粘
着剤用ゴム系樹脂として用いられているものであり,い
わゆるエラストマーと称されているポリマーである。
【0015】粘着性アクリルポリマーの合成には,長鎖
アルキル(メタ)アクリレートを主成分として,様々な
官能基を有するモノマーを用いることができる。長鎖ア
ルキル(メタ)アクリレートとしては,ブチル(メタ)
アクリレート,ペンチル(メタ)アクリレート,ヘキシ
ル(メタ)アクリレート,2−エチルヘキシル(メタ)
アクリレート,オクチル(メタ)アクリレートなどのア
ルキル(メタ)アクリレートがある。その他,メチル
(メタ)アクリレート,エチル(メタ)アクリレート,
プロピル(メタ)アクリレート,シクロヘキシル(メ
タ)アクリレート,ベンジル(メタ)アクリレート,テ
トラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートなどのアル
キル(メタ)アクリレートがある。また,アルキル基が
芳香環基,複素環基,ハロゲン原子などで置換されてい
るアルキル(メタ)アクリレートなど,一般にアクリル
ポリマーの合成に用いられるモノマーを,本発明の粘着
性アクリルポリマーの合成にも用いることもできる。水
酸基を有するモノマーとしては,2−ヒドロキシエチル
(メタ)アクリレート,2−ヒドロキシプロピル(メ
タ)アクリレート,3−ヒドロキシプロピル(メタ)ア
クリレート,4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレー
ト,N−メチロールアクリルアミド,アリルアルコール
などがあり,三級アミノ基を有するモノマーとしては,
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート,ジエチル
アミノエチル(メタ)アクリレート,ジメチルアミノプ
ロピル(メタ)アクリルアミドなどをあげることができ
る。カルボキシル基を有するモノマーとしては,アクリ
ル酸,メタクリル酸,クロトン酸,マレイン酸,フマル
酸,イタコン酸,シトラコン酸などがある。アミド基,
N−置換アミド基を有するモノマーとしては,アクリル
アミド,メタクリルアミド,N−メチル(メタ)アクリ
ルアミド,N−エチル(メタ)アクリルアミド,N−メ
トキシメチル(メタ)アクリルアミド,N−エトキシメ
チル(メタ)アクリルアミド,N−プロポキシメチル
(メタ)アクリルアミド,N−ブトキシメチル(メタ)
アクリルアミド,N−tert−ブチルアクリルアミ
ド,N−オクチルアクリルアミド,ジアセトンアクリル
アミドなどがある。ニトリル基を有するモノマーとして
は,アクリロニトリル,メタクリロニトリル,クロトノ
ニトリル,フマロニトリルなどがある。
【0016】反応は通常のラジカル重合であり,反応方
法に何等制限はなく,溶液重合,塊状重合,乳化重合な
どの公知の重合法で行なうことができるが,反応のコン
トロールが容易であることや直接次の操作に移れること
から溶液重合が好ましい。溶媒としては,メチルエチル
ケトン,メチルイソブチルケトン,トルエン,セロソル
ブ,酢酸エチル,酢酸ブチルなど本発明の樹脂が溶解す
るものであれば何でもよく,単独でも,複数の溶媒を混
合しても使用できるが,特にその中でも,ラジカル重合
反応時に連鎖移動を起こしにくく,沸点も適度である酢
酸エチルが好ましい。また,重合反応の際に使用される
重合開始剤もベンゾイルパーオキサイド,アセチルパー
オキサイド,メチルエチルケトンパーオキサイド,ラウ
ロイルパーオキサイドなどの有機過酸化物,アゾビスイ
ソブチロニトリルなどのアゾ系開始剤など公知のもので
あれば何でもよく,とくに制限はない。
【0017】粘着性アクリルポリマーを除いた粘着性ゴ
ム系ポリマーには,天然および合成のシス−1,4−ポ
リイソプレンゴム,再生ゴム,ポリイソブチレン,ブチ
ルゴム,ハロゲン化ブチルゴム,部分加硫ブチルゴム,
スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー
(SBS),スチレン−イソプレン−スチレンブロック
コポリマー(SIS),スチレン−エチレン−ブチレン
−スチレンブロックコポリマー(SEBS),シリコン
ゴム,クロロプレンゴム,ニトリルゴム,ブタジエンゴ
ムなどがあり,これらの中でもSBS,SIS,SEB
Sなどのようなブロックコポリマーは,非常に高い凝集
力を有しており,本発明の粘着性ゴム系ポリマー(A)
には好適である。これらのポリマーは,メチルエチルケ
トン,メチルイソブチルケトン,トルエン,セロソル
ブ,酢酸エチル,酢酸ブチルなど適当な溶媒に溶解して
使用する。
【0018】硬化性ポリエステルオリゴマー(B)にお
いて,化合物(a)は,水酸基および/または一級アミ
ノ基,二級アミノ基,三級アミノ基,アミド基,N−置
換アミド基のようなアミノ基を有する化合物である。こ
の中でも,原料および生成物の性状や反応物の管理のし
やすさから,一般的には水酸基を有する化合物を用いる
のが好ましい。水酸基を有する化合物として,メタノー
ル,エタノール,1−プロパノール,2−プロパノー
ル,1−ブタノール,2−ブタノール,ペンタノール,
ヘキサノールなどの脂肪族飽和アルコール,アリルアル
コール,クロチルアルコール,プロパギルアルコールな
どの脂肪族不飽和アルコール,2−ヒドロキシエチル
(メタ)アクリレート,2−ヒドロキシプロピル(メ
タ)アクリレート,3−ヒドロキシプロピル(メタ)ア
クリレート,4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレー
ト,N−メチロールアクリルアミドなどの水酸基を有す
る(メタ)アクリレートまたは(メタ)アクリルアミド
など,シクロペンタノール,シクロヘキサノールなどの
脂環式アルコール,ベンジルアルコール,シンナミルア
ルコールなどの芳香族アルコール,フルフリルアルコー
ル,テトラヒドロフルフリルアルコールなどの複素環ア
ルコール,エチレングリコール,プロピレングリコー
ル,1,4−ブチレングリコール,ブテンジオール,ヘ
キサンジオール,シクロヘキサンジオール,ビスフェノ
ールA,ジエチレングリコールなどのジオール,グリセ
リン,トリメチロールプロパンなどのトリオール,フェ
ノール,o−クレゾール,m−クレゾール,p−クレゾ
ールなどのフェノール類などのアルコール性またはフェ
ノール性の水酸基を有する化合物がある。
【0019】化合物(a)において,アミノ基を有する
化合物として,一級アミノ基,二級アミノ基,三級アミ
ノ基,アミド基,N−置換アミド基などを有する化合物
があり,一級アミノ基を有する化合物には,モノプロピ
ルアミン,モノブチルアミン,ヘキサメチレンジアミ
ン,トリメチルヘキサメチレンジアミン,ポリオキシプ
ロピレンジアミン,3,3’−ジメチル−4,4’−ジ
アミノジシクロヘキシルメタン,イソホロンジアミン,
4,4’−ジアミノジシクロヘキシル,1,3−ビス
(アミノメチル)シクロヘキサン,4,4’−ジアミノ
ジフェニルメタン(メチレンジアニリン),4,4’−
ジアミノジフェニルエーテル,キシリレンジアミンな
ど,二級アミノ基を有する化合物には,ジイソプロピル
アミン,ジブチルアミン,2−メチルイミダゾール,ジ
フェニルグアニジン,ジエチルチオ尿素,ピペリジン,
ピロリジン,モルホリンなど,三級アミノ基を有する化
合物には,ジメチルベンジルアミン,4−ジメチルアミ
ノ安息香酸メチル,p−ジメチルアミノアセトフェノ
ン,N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン,ジメチル
アミノメチルフェノール,トリス(ジメチルアミノメチ
ル)フェノールなどがある。アミド基,N−置換アミド
基を有する化合物には,アクリルアミド,メタクリルア
ミド,N−メチル(メタ)アクリルアミド,N−エチル
(メタ)アクリルアミド,N−メトキシメチル(メタ)
アクリルアミド,N−エトキシメチル(メタ)アクリル
アミド,N−プロポキシメチル(メタ)アクリルアミ
ド,N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド,N−
tert−ブチルアクリルアミド,N−オクチルアクリ
ルアミド,ジアセトンアクリルアミドなどがある。
【0020】しかしこの中でも,2つの水酸基を同時に
有する前出のジオールや,2−ヒドロキシ−n−酪酸,
3−ヒドロキシ−n−酪酸,p−ヒドロキシ安息香酸,
ヒドロキシピバリン酸,サリチル酸,バニリン酸,12
−ヒドロキシステアリン酸などのカルボキシル基と水酸
基を同時に有する化合物,あるいはエタノールアミン,
1−アミノ−2−プロパノール,o−アミノフェノー
ル,m−アミノフェノール,p−アミノフェノールなど
のアミノ基と水酸基を同時に有する化合物など,2つ以
上の官能基を有する化合物が好ましい。
【0021】硬化性ポリエステルオリゴマー(B)にお
いて,環状酸無水物(b)としては,多価カルボン酸の
分子内無水物であり,飽和または不飽和の脂肪族多価カ
ルボン酸無水物,脂環式多価カルボン酸無水物,芳香族
多価カルボン酸無水物など,あるいはこれらの一部が飽
和または不飽和の炭化水素基,芳香環基,ハロゲン原
子,複素環基などで置換されたものがある。これらの具
体例としては,無水こはく酸,無水フタル酸,無水マレ
イン酸,無水イタコン酸,無水グルタル酸,無水ドデセ
ニルこはく酸,無水クロレンデック酸,無水ピロメリッ
ト酸,無水トリメリット酸,シクロペンタンテトラカル
ボン酸二無水物,ヘキサヒドロ無水フタル酸,メチルヘ
キサヒドロ無水フタル酸,テトラメチレン無水マレイン
酸,テトラヒドロ無水フタル酸,メチルテトラヒドロ無
水フタル酸,エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル
酸,メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸,
5−(2,5−ジオキソテトラヒドロキシフリル)−3
−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸
無水物,無水メチルナジック酸,無水ベンゾフェノンテ
トラカルボン酸,グリセロールトリス(アンヒドロトリ
メリテート),エチレングリコールビス(アンヒドロト
リメリテート)などがある。これらの中でも,架橋構造
を作らないジカルボン酸無水物またはトリカルボン酸無
水物を用いることが好ましい。
【0022】硬化性ポリエステルオリゴマー(B)にお
いて,ラジカル重合性の不飽和基を有するエポキシド
(c)には,グリシジル(メタ)アクリレート,グリシ
ジルシンナメート,アリルグリシジルエーテル,ビニル
シクロヘキセンモノエポキサイド,1,3−ブタジエン
モノエポキサイドなどがあり,これらは飽和または不飽
和の炭化水素基,芳香環基,ハロゲン原子,複素環基な
どで置換されていてもよい。これらの中でも,架橋構造
を作らないモノエポキサイドを用いることが好ましい。
【0023】硬化性ポリエステルオリゴマー(B)にお
いて,ラジカル重合性の不飽和基を持たないエポキシド
(d)には,エチレンオキサイド,プロピレンオキサイ
ド,エピクロルヒドリン,スチレンオキサイド,エピブ
ロモヒドリン,フェニルグリシジルエーテル,シクロヘ
キセンオキサイド,ブテンオキサイド,ブチルグリシジ
ルエーテル,クレジルグリシジルエーテル,エチレング
リコールジグリシジルエーテル,プロピレングリコール
ジグリシジルエーテル,グリセロールポリグリシジルエ
ーテル,ジグリセロールポリグリシジルエーテル,ソル
ビトールポリグリシジルエーテル,アルキルフェノール
グリシジルエーテル,ポリエチレングリコールジグリシ
ジルエーテル,トリプロピレングリコールジグリシジル
エーテル,ポリプロピレングリコールジグリシジルエー
テル,ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル,
1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル,グリ
セリンポリグリシジルエーテル,ジグリセリンポリグリ
シジルエーテル,トリメチロールプロパンポリグリシジ
ルエーテル,脂肪族ジグリシジルエーテル,多官能グリ
シジルエーテル,三級脂肪族モノグリシジルエーテル,
スピログリコールジグリシジルエーテル,テレフタル酸
ジグリシジルエステル,フタル酸ジグリシジルエステル
などがあり,これらは飽和もしくは不飽和の炭化水素
基,芳香環基,ハロゲン原子,複素環基などで置換され
ていてもよい。
【0024】化合物(a),環状酸無水物(b),エポ
キシド(c)およびエポキシド(d)を反応させて,硬
化性ポリエステルオリゴマー(B)が得られる。反応
は,適当な溶媒の存在下あるいは不存在下に行うことが
できるが,反応を制御しやすくするため,モノマー10
0重量部に対し,10〜50部の溶媒を加えるのが一般
的である。溶媒の添加量をこれより多くすると反応速度
が極端に遅くなり,少なくすると反応の制御が難しくな
る。N,N−ジメチルベンジルアミン,トリエチルアミ
ン,トリブチルアミン,N,N−ジエチルアニリン,
N,N−ジメチルアニリンなどの三級アミンなどに代表
される塩基性触媒を用い,エチレン性不飽和基の保護の
ために,ハイドロキノン,ハイドロキノンモノメチルエ
ーテル,tert−ブチルカテコール,p−ベンゾキノ
ンなどのラジカル重合禁止剤を添加した状態で行なうこ
とができる。
【0025】反応は,化合物(a)の水酸基および/ま
たはアミノ基と,塩基性触媒により活性化された環状酸
無水物(b)の酸無水物基とが,先ず優先的に反応し,
次いで,この反応により生じたカルボキシル基と,塩基
性触媒により活性化されたエポキシド(c)またはエポ
キシド(d)のエポキシ基とが反応し,二級の水酸基を
生じる。さらに,生じた水酸基と環状酸無水物(b)の
酸無水物基とが反応するというように,以下,順次,上
記と同様の反応を進行させることができる。合成された
ポリエステルオリゴマーは,化合物(a)を起点とし
て,酸無水物とエポキシドが結合したユニットを繰り返
し単位とする構造であり,エポキシド(c)とエポキシ
ド(d)がランダムに配列する。この反応の詳細は,特
開昭61−47728号公報,特開昭61−12612
8号公報に記載されている。
【0026】この反応において,化合物(a)の量に対
して,反応させられる環状酸無水物(b),エポキシド
(c)およびエポキシド(d)からなるエポキシドの量
を調整することにより,化合物(a)を末端とする,所
望の長さの硬化性ポリエステルオリゴマー(B)をつく
ることができる。それぞれの化合物の割合は,環状酸無
水物(b)がジカルボン酸無水物である場合には,化合
物(a)1モルに対して,環状酸無水物(b)1〜20
モル,およびエポキシド(c)とエポキシド(d)の合
計量(以下「総エポキシド」と記載する)1〜20モル
の割合で,また,環状酸無水物(b)と総エポキシドは
ほぼ等モルの割合で反応させることが好ましい。環状酸
無水物(b)がトリカルボン酸無水物である場合には,
化合物(a)1モルに対して,環状酸無水物(b)1〜
10モルおよび総エポキシド1〜20モルの割合で,ま
た,環状酸無水物(b)1モルに対して総エポキシドを
ほぼ1〜2モルの割合で反応させることが好ましい。化
合物(a)1モルに対して,反応させられる環状酸無水
物(b)または総エポキシドの量が1モル未満の場合に
は,得られるポリエステルオリゴマーの分子量が低く,
化合物(a)の残留もあって,必要な特性が得られな
い。逆に,環状酸無水物(b)または総エポキシドの量
が20モルを超える場合には,反応のコントロールが難
しくなったり,分子量が高くなりすぎて,やはり必要な
特性が得られなくなる傾向がある。
【0027】それぞれ反応および溶解によって得られた
粘着性ゴム系ポリマー(A)の溶液と,硬化性ポリエス
テルオリゴマー(B)の溶液を混合することにより,硬
化性を有する粘着剤組成物を得ることができる。混合は
室温で見かけ上,均一になる程度まで撹拌すれば十分で
あるが,相互の混合の状態をより高めるために,粘着性
ゴム系ポリマー(A)および硬化性ポリエステルオリゴ
マー(B)の合成および溶解で用いた溶媒の沸点以下の
温度での加熱撹拌を行なってもよい。
【0028】本発明においては,エポキシドの一部とし
てラジカル重合性の不飽和基を有するエポキシド(c)
を用いているので,硬化性ポリエステルオリゴマー
(B)が不飽和基を持ち,電子線硬化や適切な重合開始
剤(C)との併用での熱硬化,嫌気硬化,光硬化などの
硬化法により,簡単に固化させることができる。
【0029】熱硬化,嫌気硬化の場合に用いられる重合
開始剤(C)としては,ジ−tert−ブチルパーオキ
サイド,tert−ブチルクミルパーオキサイド,ジク
ミルパーオキサイドなどのジアルキルパーオキサイド
類,アセチルパーオキサイド,ラウロイルパーオキサイ
ド,ベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキ
サイド類,メチルエチルケトンパーオキサイド,シクロ
ヘキサノンパーオキサイド,3,3,5−トリメチルシ
クロヘキサノンパーオキサイド,メチルシクロヘキサノ
ンパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド類,1,
1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサ
ンなどパーオキシケタール類,tert−ブチルヒドロ
パーオキサイド,クメンヒドロパーオキサイド,1,
1,3,3−テトラメチルブチルヒドロパーオキサイ
ド,p−メンタンヒドロパーオキサイド,ジイソプロピ
ルベンゼンヒドロパーオキサイド,2,5−ジメチルヘ
キサン−2,5−ジヒドロパーオキサイドなどのヒドロ
パーオキサイド類,tert−ブチルパーオキシアセテ
ート,tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサ
ノエート,tert−ブチルパーオキシベンゾエートな
どのパーオキシエステル類などの有機過酸化物,2,
2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレ
ロニトリル),2,2’−アゾビス(2−シクロプロピ
ルプロピオニトリル),2,2’−アゾビス(2,4−
ジメチルバレロニトリル),アゾビスイソブチロニトリ
ル,2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリ
ル),1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カル
ボニトリル),2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニ
トリル,2−フェニルアゾ−4−メトキシ−2,4−ジ
メチルバレロニトリルなどのアゾ系化合物など公知のも
のであれば特に制限はない。重合開始剤(C)は,本発
明の硬化性粘着剤組成物100重量部に対して通常0.
1〜15重量部,好ましくは0.5〜5重量部の割合で
用いられる。
【0030】有機過酸化物のうちラジカル発生速度の小
さいものを用いる場合には,N,N−ジメチルベンジル
アミン,トリエチルアミン,トリブチルアミン,N,N
−ジエチルアニリン,N,N−ジメチルアニリン,N−
フェニルジエタノールアミン,N−フェニルジイソプロ
パノールアミン,ジメチル−p−トルイジン,トリエタ
ノールアミン,4−フェニルモルホリンなどの三級アミ
ンや,リチウム,カルシウム,ストロンチウム,バリウ
ム,セリウム,ジルコニウム,バナジウム,モリブデ
ン,マンガン,鉄,コバルト,ニッケル,銅,亜鉛,ス
ズ,鉛などの金属のラウリル酸塩,ナフテン酸塩,オク
チル酸塩,オレイン酸塩,オクテン酸塩などの脂肪酸
塩,ロジン塩などの樹脂酸塩,アセチルアセトネート錯
塩などのキレート化合物などから選ばれる金属化合物の
うちの1種または2種以上を促進剤として用いることが
できる。特に,嫌気硬化の場合には,促進剤として三級
アミンまたは金属化合物のうちのどちらか,あるいはそ
の両方を有機過酸化物と併用するのが好ましい。これら
の促進剤のうち,三級アミンは通常有機過酸化物100
重量部に対して,1〜100重量部の割合で,金属化合
物は有機過酸化物100重量に対して,0.01〜10
重量部の割合で用いられる。
【0031】光硬化の場合に用いられる重合開始剤
(C)としては,ベンゾイン,ベンゾインメチルエーテ
ル,ベンゾインエチルエーテル,o−ベンゾイル安息香
酸メチル−p−ベンゾインエチルエーテル,ベンゾイン
イソプロピルエーテル,α−メチルベンゾインなどのベ
ンゾイン類,ジメチルベンジルケタール,トリクロルア
セトフェノン,2,2−ジエトキシアセトフェノンなど
のアセトフェノン類,2−ヒドロキシ−2−メチルプロ
ピオフェノン,2−ヒドロキシ−4´−イソプロピル−
2−メチルプロピオフェノンなどのプロピオフェノン
類,α−アシロキシムエステル,ベンゾフェノン,メチ
ルベンゾフェノン,p−クロルベンゾフェノン,p−ジ
メチルアミノベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類,
2−クロルチオキサントン,2−エチルチオキサント
ン,2−イソプロピルチオキサントンなどのチオキサン
トン類,ベンジル,ジベンゾスベロンなどの他,加藤清
視編:「UV・EB硬化ハンドブック−原料編−」(1
985年12月,高分子刊行会刊)第67〜73頁ある
いは山下普三,金子東助編「架橋剤ハンドブック」(昭
和56年10月,大成社刊)第582〜593頁に記載
されているものがある。これらの重合開始剤(C)は,
促進剤とともに用いてもよい。
【0032】このような促進剤としては,4,4´−ビ
ス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン,N−ジメチルア
ミノ安息香酸エチル,ジメチルエタノールアミン,グリ
シンなどの他,加藤清視編:前掲書,第67〜73頁に
記載されたものを用いることができる。光として紫外線
や可視光線など波長の比較的長いものを用いる場合に
は,硬化効率の面から,重合開始剤(C)および促進剤
の両方を用いることが好ましい。重合開始剤(C)は,
本発明の硬化性粘着剤組成物100重量部に対して,通
常0.05〜20部,好ましくは0.5〜10部の割合
で用いられる。
【0033】以上の重合開始剤(C)および促進剤はマ
イクロカプセル化して用いることもできる。硬化性粘着
剤組成物あるいはそれを用いて作られたシートなどの製
品が作られてから使用されるまでに長時間放置される場
合には,この方法により使用するまで安定に保つことが
できる。特に嫌気硬化の場合には,用いられる重合開始
剤および促進剤のいずれか,あるいはその複数をマイク
ロマプセル化することにより保存安定性を大きく向上さ
せることが可能となる。上記の重合開始剤(C)および
促進剤をマイクロカプセル化する方法としては特に制限
はなく,特公昭38−19574号公報,特公昭42−
446号公報,特公昭42−771号公報,特公昭42
−2882号公報,特公昭42−2883号公報,特開
昭56−115371号公報,特開昭60−60173
号公報などに記載された界面重合法,特公昭36−91
68号公報,USP3427250号公報,BP123
6498号公報などに記載されたin situ重合
法,USP3787327号公報,USP355134
6号公報,USP3574133号公報などに記載され
た液中硬化被覆法,USP2800457号公報,US
P2800458号公報,USP3531418号公
報,USP3577515号公報,BP1117178
号公報に記載されたコアセルベーション法(相分離
法),USP3523906号公報,USP36603
04号公報などに記載された界面析出法,USP383
0750号公報に記載されたスプレードライ法などがあ
る。これらの方法のなかでも,マイクロカプセル壁の厚
さを自由に制御でき,マイクロカプセル壁の厚さを均一
とすることができ,マイクロカプセル壁の強度を高くす
ることができるポリユリアをマイクロカプセル壁とする
界面重合法,ゼラチンおよびアラビアゴムをマイクロカ
プセル壁とする複合コアセルベーション法によりマイク
ロカプセル化することが好ましい。
【0034】硬化前の粘着特性を改善するため,特に保
持力を高めるために,本発明の硬化性粘着剤組成物にさ
らにポリイソシアネート(D)を添加して,粘着性ゴム
系ポリマー(A)を部分架橋させることができる。この
ようなポリイソシアネートとしてはトリレンジイソシア
ネート,4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネー
ト,ヘキサメチレンジイソシアネート,m−キシレンジ
イソシアネート,p−キシレンジイソシアネート,1,
5−ナフタレンジイソシアネート,イソホロンジイソシ
アネート,リジンジイソシアネート,水添4,4´−ジ
フェニルメタンジイソシアネート,水添トリレンジイソ
シアネートなどのジイソシアネート類,あるいはこれら
とグリコール類またはジアミン類との両末端イソシアネ
ートアダクト体,あるいはこれらの混合物があり,必要
に応じてトリフェニルメタントリイソシアネート,ポリ
メチレンポリフェニルイソシアネートなどの3官能以上
のポリイソシアネート類もジイソシアネート類と混合し
て用いることができる。ポリイソシアネート(D)の添
加量は,硬化性粘着剤組成物100重量部に対し,0.
1〜5重量部である。
【0035】プラスチック基材への接着性を改善するた
め,本発明の硬化性粘着剤組成物にさらに粘着付与剤
(E)を添加することができる。粘着付与剤(E)は,
粘着性樹脂にさらに粘着性を付与するものであるが,粘
着性ゴム系ポリマー(A)と硬化性ポリエステルオリゴ
マー(B)より形成される,海島状のミクロ相分離構造
の中で,粘着付与剤(E)もさらに複雑なミクロ相分離
を起こし,様々な被着体特にプラスチック基材にたいす
る接着性を改善することができる。粘着付与剤(E)と
しては,ロジン系樹脂やテルペン系樹脂などの天然樹脂
およびその誘導体や,石油樹脂などの合成樹脂を使うこ
とができる。ロジン系樹脂には,ガムロジン,トール油
ロジン,ウッドロジンなどの天然ロジン,水添ロジン,
重合ロジン,マレイン化ロジンなどの変性ロジン,ロジ
ングリセリンエステル,水添ロジングリセリンエステ
ル,重合ロジングリセリンエステル,ロジンペンタエリ
スリトールエステル,水添ロジンペンタエリスリトール
エステル,重合ロジンペンタエリスリトールエステルな
どのロジンエステルがある。テルペン系樹脂には,α−
ピネン,β−ピネン,リモネンなどのテルペン樹脂や,
α−ピネンフェノール樹脂,ジテルペンフェノール樹脂
などのテルペンフェノール樹脂がある。この他,芳香族
炭化水素変性テルペン樹脂も使用できる。一方,粘着付
与剤(E)に使用できる合成樹脂としては,脂肪族系,
脂環族系,芳香族系などの石油樹脂,クマロンインデン
樹脂,スチレン樹脂,キシレン樹脂,ロジン変性フェノ
ール樹脂などがある。粘着付与剤(E)の添加量は,硬
化性粘着剤組成物100重量部に対し,1〜100重量
部である。
【0036】硬化前の粘着特性や硬化後の接着力を調整
するために,エチレン性不飽和基を持たないエポキシド
を用いて合成したポリエステルオリゴマーを,本発明の
不飽和基を有する硬化性ポリエステルオリゴマー(B)
と併用することができる。エチレン性不飽和基を持たな
いエポキシドとしてはエピクロルヒドリン,フェニルグ
リシジルエーテル,スチレンオキサイド,シクロヘキセ
ンオキサイド,ブテンオキサイドなどがある。
【0037】硬化後の接着力をさらに強固なものとする
ために,本発明の硬化性粘着剤組成物に,さらに,(メ
タ)アクリロイル基などのエチレン性不飽和基を有す
る,モノマーやオリゴマーを添加することができる。本
発明で用いた不飽和ポリエステルオリゴマー(A)以外
に,エチレン性不飽和基を有するモノマーやオリゴマー
を別に添加することによって,接着に要する時間を短く
したり,重合開始剤(C)量を少なくすることができ
る。このようなモノマーやオリゴマーとしては,スチレ
ン,アルキル(メタ)アクリレート,(メタ)アクリル
酸,多価アルコールポリ(メタ)アクリレート,エポキ
シポリ(メタ)アクリレート,オリゴエステルポリ(メ
タ)アクリレート,ポリウレタンポリ(メタ)アクリレ
ート,ジアリルフタレート,ジアリルイソフタレートな
どがある。これらのモノマーやオリゴマーの使用量は,
本発明の粘着剤組成物の全固形分に対して60重量%以
下である。60重量%を超えると,硬化前の粘着特性,
とりわけ凝集力が著しく劣るようになる。
【0038】本発明の硬化性粘着剤組成物には,その性
能を阻害しない範囲で,必要に応じて顔料,染料,無機
充填剤,有機溶剤,銀粉,銅粉,ニッケル粉などの金属
粉,カーボンブラック,グラファイト,シランカップリ
ング剤などを加えることができる。
【0039】本発明の硬化性粘着剤組成物は,それ自体
をシートの形状に加工するか,シリコーン処理を施した
紙,布,プラスチックフィルムなどの剥離性の高いフィ
ルム,シートあるいはテープなどの上に塗工し,必要が
あれば乾燥により有機溶剤を除去し,必要があれば裁断
し,粘着シートの形にされる。また,レーヨン,ナイロ
ンなどの不織布や寒冷紗などの布類,ウレタン,アクリ
ルなどのフォーム類などでライニングしたり,これらの
布類,フォーム類などを芯材として,これに本発明の硬
化性粘着剤組成物を塗布または含浸させて用いることも
できる。ここで用いられるシートの基材,芯材などが硬
化性粘着剤組成物とともに使用後も接着部に残る場合に
は,これらが,加熱や光照射などの,硬化のための処理
で著しく変質したり,硬化を著しく妨げることが無いも
のである必要がある。
【0040】このようにして得られた粘着シートは,2
つの同種または異種の被着体間に挟持され,その良好な
粘着性によって仮接着した後,それぞれの硬化法に応じ
た処理をすることにより硬化性粘着剤組成物が硬化し,
被着体同士を強固に接着させることができる。
【0041】重合開始剤(C),促進剤などがマイクロ
カプセル化されているときには被着体に仮接着する前,
あるいは後に加圧ロールなどの圧力などの力を加えるこ
とによりマイクロカプセルを破壊する。またはマイクロ
カプセルの性状に応じて,熱を加えたり,紫外線などの
光を照射することでカプセルを破壊することが必要とな
る。ただし,徐放性のマイクロカプセルの場合はとくに
破壊する必要はない。
【0042】嫌気硬化の場合には被着体に仮接着した後
は,重合開始剤(C)の作用により程なく硬化が開始さ
れ,数時間から1週間程度で実用強度に達する。熱硬化
の場合には,オーブンなどの空気加熱では通常,80〜
150℃で3〜20分間程度,熱プレスなどの接触加熱
では80〜150℃で0.5秒〜5分間程度の加熱が行
なわれる。光硬化の場合には,被着体の少なくとも一方
が光透過性を有するものであり,光透過性を有する被着
体の側から光を照射することにより,接着させることが
できる。
【0043】本発明において光としては,太陽や蛍光灯
を線源とする可視光線,高圧水銀灯,超高圧水銀灯,メ
タルハライドランプ,カーボンアーク灯,キセノンラン
プなどを線源とする紫外線,コバルト60を線源とする
γ線,またはX線発生器を線源とするX線などの他,電
子線加速器などを線源とする電子線も含める。これらの
なかでも,実用上は,可視光線,紫外線,または電子
線,とりわけ,波長が200〜800nmの可視光線ま
たは紫外線を用いることが好ましい。光として紫外線を
用いる場合には,硬化効率の面から前記の通り,重合開
始剤(C)および必要に応じて促進剤を用いることが好
ましい。線源の出力,線源からの距離,照射面積,用い
る樹脂や重合開始剤(C)および促進剤の種類と量,硬
化性粘着剤組成物層の厚さ,被着体やシート基材の種類
や厚さなどによって異なるが,通常,電子線の場合の照
射量は0.5〜50Mrad,紫外線の場合は20〜5
000mJ/cm2 程度,照射の時間は0.3〜30秒
程度である。
【0044】
【実施例】以下,実施例により本発明を説明する。例
中,部とは重量部を,%とは重量%を,それぞれ表わ
す。
【0045】ポリエステルオリゴマーの合成
【0046】ポリエステルオリゴマー1 エチレングリコール 2.0部 ヘキサヒドロ無水フタル酸 50.2部 グリシジルメタクリレート 23.2部 フェニルグリシジルエーテル 24.6部 N,N−ジメチルベンジルアミン 0.9部 ハイドロキノン 0.2部 酢酸エチル 25.0部 上記原料をそれぞれ混合し,空気雰囲気中,80℃で1
0時間反応させ,冷却後,酢酸エチル125部を加え
て,ポリエステルオリゴマー1の溶液(固形分40%)
を得た。以下,全く同様に操作して,ポリエステルオリ
ゴマー2〜4を得た。
【0047】ポリエステルオリゴマー2 エチレングリコール 2.0部 ヘキサヒドロ無水フタル酸 50.0部 グリシジルメタクリレート 13.8部 フェニルグリシジルエーテル 34.3部 N,N−ジメチルベンジルアミン 0.9部 ハイドロキノン 0.2部 酢酸エチル 25.0部
【0048】ポリエステルオリゴマー3 エチレングリコール 2.0部 ヘキサヒドロ無水フタル酸 51.0部 グリシジルメタクリレート 47.0部 N,N−ジメチルベンジルアミン 0.9部 ハイドロキノン 0.2部 酢酸エチル 25.0部
【0049】ポリエステルオリゴマー4 エチレングリコール 2.0部 ヘキサヒドロ無水フタル酸 51.0部 フェニルグリシジルエーテル 49.6部 N,N−ジメチルベンジルアミン 0.9部 ハイドロキノン 0.2部 酢酸エチル 25.0部
【0050】アクリルポリマーの合成
【0051】ポリマー1 ブチルアクリレート 93.5部 アクリル酸 1.4部 2−ヒドロキシエチルメタクリレート 5.1部 アゾビスイソブチロニトリル 0.2部 酢酸エチル 150.0部 窒素気流中で,80℃に加熱した上記組成の混合物12
5部に,上記の同組成の混合物125部を滴下し,滴下
終了後,12時間加熱還流させ,冷却し,アクリルポリ
マー1の溶液(固形分40%)を得た。以下,同様に操
作してポリマー2および3を得た。
【0052】ポリマー2 ブチルアクリレート 92.0部 アクリルアミド 2.8部 2−ヒドロキシエチルメタクリレート 5.2部 アゾビスイソブチロニトリル 0.2部 酢酸エチル 150.0部
【0053】ポリマー3 ブチルアクリレート 88.2部 酢酸ビニル 5.6部 2−ヒドロキシエチルメタクリレート 6.2部 アゾビスイソブチロニトリル 0.2部 酢酸エチル 150.0部
【0054】実施例1 ポリマー1の溶液60.0部,オリゴマー1の溶液4
0.0部を十分に混合し,この樹脂溶液100部に対し
て,ベンゾイルパーオキサイド0.4部を均一に混合
し,シリコーン処理を施したポリエチレンテレフタレー
トフィルム(以下「処理PET」と記載する)上に,乾
燥後の厚さが30μmとなるように塗布し,60℃で3
分間乾燥して,シリコン処理した紙からなる剥離紙を重
ね合わせ粘着シートを得た。また上記組成の樹脂混合物
に,さらにトリレンジイソシアネート0.2部を加え,
同様に粘着シートを得,さらに50℃で3日間熟成させ
た。
【0055】得られた粘着シートについて,硬化前の粘
着特性(剥離接着力,タック,保持力),硬化後の剪断
接着力および剥離接着力を測定した結果を表1に示す。
硬化はオーブンを用い,130℃,10分間加熱し硬化
させた。なお,測定には次のような方法を用いた。
【0056】(1)硬化前の剥離接着力 得られた粘着シートの剥離紙を剥し,粘着面に厚さ50
μmの未処理ポリエチレンテレフタレートシートを貼着
し,幅25mmに切断し,次に処理PETを剥離させ,
生じた粘着面を#280の紙やすりで研磨したステンレ
ススチール板(SUS304)に貼着し,30分間放置
した後,25℃,相対湿度65%の条件下,剥離速度3
00mm/分で,180度剥離接着力を測定した。
【0057】(2)硬化前のタック 傾斜角30度の斜面に,剥離紙を剥した粘着シートを粘
着面が上になるようセットして,25℃,相対湿度65
%の条件下,助走距離10cmで,ステンレススチール
製ボールを転がし,粘着面10cm以内のところで停止
する最大のボールの番号を測定した。ボールの番号は,
JIS B 1501に定める,ボールの直径を32等
分した「ボールの呼び」の32倍の数値で表示した。
【0058】(3)硬化前の保持力 得られた粘着シートの剥離紙を剥し,粘着面に厚さ50
μmの未処理ポリエチレンテレフタレートシートを貼着
し,幅25mm,長さ100mmの大きさに切断し,次
に処理PETを剥離させ,生じた粘着面のうち,たて2
5mm,横25mmの部分を紙やすり#280で研磨し
たステンレススチール板(SUS304)に貼着し,4
0℃,荷重1kgで粘着シートがステンレススチール板
より落下するまでの時間(秒)を測定した。
【0059】(4)硬化後の剪断接着力 得られた粘着シートを縦10mm,横10mmに切断
し,剥離紙を剥して粘着面を,縦50mm,横10m
m,厚さ0.5mmのアルミニウム板の一端に貼着し,
処理PETを剥離させ,生じた粘着面に縦50mm,横
10mm,厚さ0.5mmのもう一方のアルミニウム板
を貼着し,所定の硬化法で粘着剤を硬化させた後,25
℃,相対湿度65%の条件下,引張り速度5mm/分で
剪断強度を測定した。
【0060】(5)硬化後の剥離接着力 得られた粘着シートを幅25mm,長さ50mmに切断
し,剥離紙を剥して粘着面を,縦100mm,横250
mm,厚さ100μmのアルミニウムシートに貼着し,
処理PETを剥離させ,生じた粘着面に,縦100m
m,横25mm,厚さ100μmのもう一方のアルミニ
ウムシートを貼着し,所定の硬化法で粘着剤を硬化させ
た後,25℃,相対湿度65%の条件下,引張り速度3
00mm/分でT型剥離強度を測定した。
【0061】実施例2 (マイクロカプセル化ベンゾイルパーオキサイドの調
製) ポリビニルアルコール1部および水100部を3
0℃に保ち,毎分225回転の速度で回転する撹拌翼で
撹拌しながら,これに,ベンゾイルパーオキサイド5
部,トリレンジイソシアネート5部をキシレン10部に
溶解した溶液を添加し分散させ,5分後にテトラエチレ
ンペンタミン1部を添加し,次いで2時間撹拌を続け,
トリレンジイソシアネートと,テトラエチレンペンタミ
ン,ポリビニルアルコールおよび水とが反応して生成し
た壁を有するベンゾイルパーオキサイドのマイクロカプ
セルの分散液を得た。得られたマイクロカプセルの分散
液122部に,グルタルアルデヒド2部を添加し,2時
間撹拌し,次に,N−(2−アミノエチル)−γ−アミ
ノプロピルトリメトキシシラン2部を添加し,分散液の
pHが約11となるようにアンモニア水を加え,さらに
撹拌を6時間続けた後,マイクロカプセルを濾別し,エ
タノールで洗浄し,50℃の温風で乾燥し,マイクロカ
プセル化されたベンゾイルパーオキサイドを得た。得ら
れたマイクロカプセル中にはベンゾイルパーオキサイド
が20%含まれ,マイクロカプセルの平均粒子径は40
μmであった。
【0062】ポリマー1の溶液60.0部,オリゴマー
1の溶液40.0部を十分に混合し,この樹脂溶液10
0部に対してマイクロカプセル化されたベンゾイルパー
オキサイド10部,ナフテン酸コバルト0.1部,ジメ
チル−p−トルイジン0.5部およびトリレンジイソシ
アネート0.1部を均一に混合し,実施例1と同様にし
て粘着シートを得た。硬化前の粘着特性はマイクロカプ
セルを破壊しないように注意しながら実施例1と同様に
して測定した。また実施例1と同様にアルミニウム板を
貼り合わせた後,加圧ロールにて10kg/cm2 で加
圧し,常温で1週間放置して,十分に硬化させた後,実
施例1と同様の条件で剪断接着力と剥離接着力を測定し
た。さらに,粘着シート作製2カ月後に同様に測定を行
なった。以上の測定結果は表1に示した。
【0063】実施例3 ポリマー1の溶液60.0部,オリゴマー1の溶液4
0.0部を十分に混合し,この樹脂溶液100部に対し
て2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン0.4
部およびトリレンジイソシアネート0.1部を均一に混
合し,実施例1と同様にして粘着シートを得た。得られ
た粘着シートについて,硬化前の粘着特性,硬化後の剪
断接着力および剥離接着力を測定した。硬化後の剪断接
着力の測定は縦50mm,横10mm,厚さ188μm
のポリエチレンテレフタレート板をアルミニウム板のか
わりに用いた。硬化後の剥離接着力の測定は,縦100
mm,横25mm,厚さ50μmのポリエチレンテレフ
タレートフィルムをアルミニウムシートのかわりに用い
た。硬化は2kW高圧水銀灯下15cmの距離で15秒
間紫外線を照射することにより行なった。以上の測定結
果は表1に示した。
【0064】また,上記の樹脂溶液に,2−ヒドロキシ
−2−メチルプロピオフェノンのような光重合開始剤を
全く添加せずに,同様の方法で粘着シートを作製し,硬
化前の保持力の測定の時と同様の方法で,50μmのポ
リエチレンテレフタレートフィルムとステンレススチー
ル板とを5mmの重なり幅で貼り合わせ,エレクトロカ
ーテン型の電子線照射機を用いてポリエチレンテレフタ
レートフィルムの側から5Mradの電子線を照射して
硬化させた後,剪断接着力と剥離接着力を測定した。以
上の結果は表1に示した。
【0065】実施例4 ポリマー2の溶液60.0部,オリゴマー1の溶液4
0.0部を十分に混合し,この樹脂溶液100部に対し
て,実施例1と同様にして,ベンゾイルパーオキサイド
0.4部およびトリレンジイソシアネート0.2部を均
一に混合したもの,実施例2と同様にして,マイクロカ
プセル化されたベンゾイルパーオキサイド10部,ナフ
テン酸コバルト0.1部,ジメチル−p−トルイジン
0.5部およびトリレンジイソシアネート0.1部を均
一に混合したもの,実施例3と同様にして,2−ヒドロ
キシ−2−メチルプロピオフェノン0.4部およびトリ
レンジイソシアネート0.2部を均一に混合したものに
ついて,各実施例の通り操作し,粘着シートを得た。得
られた粘着シートについて,それぞれ硬化前の粘着特
性,硬化後の剪断接着力および剥離接着力を各実施例に
示した方法で測定した。硬化も,それぞれ各実施例に示
す熱硬化,嫌気硬化,UV硬化で行なった。但し,嫌気
硬化では,2カ月後の測定は実施しなかった。以上の測
定結果は表1に示した。
【0066】実施例5 ポリマー3の溶液60.0部,オリゴマー1の溶液4
0.0部を十分に混合し,それ以外は実施例4と全く同
様に操作して,硬化前の粘着特性と,熱硬化,嫌気硬
化,UV硬化による硬化後の剪断接着力および剥離接着
力を測定した。以上の測定結果は表1に示した。
【0067】実施例6 ポリマー1の溶液60.0部,オリゴマー2の溶液4
0.0部を樹脂溶液として,実施例1と同様の操作で硬
化前の粘着特性と熱硬化後の剪断接着力および剥離接着
力を測定した。以上の測定結果は表1に示した。
【0068】実施例7〜9 ポリマー1の溶液60.0部,オリゴマー1の溶液4
0.0部を十分に混合し,この溶液100部に対して,
YSポリスター2100(ヤスハラケミカル 製テルペ
ンフェノール樹脂)8部を溶解して樹脂溶液とし,以降
の操作は,試験板をステンレス板からポリプロピレン板
へかえる以外,実施例4の熱硬化の場合と全く同様に操
作し,熱硬化後の剪断接着力および剥離接着力を測定し
た(実施例7)。また,ポリマー1のかわりにポリマー
2(実施例8),ポリマー1のかわりにポリマー3(実
施例9)を用いて,全く同様に操作し,それぞれ硬化前
の粘着特性と,熱硬化後の剪断接着力および剥離接着力
を測定した。以上の測定結果は表1に示した。
【0069】比較例1,2 ポリマー1の溶液60.0部,オリゴマー3の溶液2
0.0部,オリゴマー4の溶液20部を十分に混合し,
この樹脂溶液100部に対して,ベンゾイルパーオキサ
イド0.4部およびトリレンジイソシアネート0.2部
を均一に混合し,実施例1と全く同様に操作して,硬化
前の粘着特性と,熱硬化後の剪断接着力および剥離接着
力を測定した(比較例1)。ポリマー1の溶液60.0
部,オリゴマー3の溶液12.0部,オリゴマー4の溶
液28.0部を用いて,同様の測定を行なった(比較例
2)。以上の測定結果は表1に示した。
【0070】比較例3 実施例7で,YSポリスター2100(ヤスハラケミカ
ル 製テルペンフェノール樹脂)8部を添加せずに樹脂
溶液を作成し,実施例7と同様に操作して,硬化前の粘
着特性と,熱硬化後の剪断接着力および剥離接着力を測
定した。以上の測定結果は表1に示した。
【0071】
【表1】
【0072】 単位:硬化前の剥離接着力 g/25mm 保持力 秒 硬化後の剪断接着力 kg/cm2 硬化後の剥離接着力 g/25mm 硬化法 H 熱硬化 A 嫌気硬化 U 光硬化 試験板 測定に用いた試験板 S ステンレス板 P PET板 PP ポリプロピレン板 TDI トリレンジイソシアネート 無 無添加 有 添加 実施例2の上段は粘着シート作製直後 下段は作製2ヶ月後 実施例3の上段は紫外線硬化 下段は電子線硬化
【0073】
【発明の効果】本発明の硬化性粘着剤組成物は,表1に
示されたように,ステンレス板を試験板として用い,粘
着付与剤(E)を添加しない場合,硬化前の剥離接着力
が1500g/25mm幅以上,タックが5以上であ
る。保持力はポリイソシアネートを添加した場合,十分
な保持力を発揮することはもとより,添加しない場合で
も1000秒以上である。この粘着特性は,通常の粘着
剤としても十分通用するレベルであり,申し分のない性
能といえる。さらに硬化後の剪断接着力は熱硬化,嫌気
硬化の場合には30kg/cm2 以上,光硬化の場合に
は15kg/cm2 以上,硬化後の剥離接着力も,熱硬
化,嫌気硬化の場合,2.5kg/25mm幅以上,U
V硬化の場合でも1.3kg/25mm幅以上である。
このように,硬化前の粘着特性,硬化後の剪断接着力お
よび剥離接着力ともに優れた硬化性粘着剤組成物が得ら
れるようになった。特に,従来の硬化性粘着剤組成物で
問題とされていた,硬化後の剥離接着力は非常に大きく
なった。
【0074】また,本発明の硬化性粘着剤組成物は,従
来のポリマー中へ不飽和基を導入した硬化性粘着剤組成
物と比べて,反応のしやすさや反応残留物による臭気の
低減の点で優れるとともに,硬化性粘着剤組成物として
の本来の性能,すなわち,硬化前の粘着特性および硬化
後接着特性も従来のものに劣っていない。さらに,ポリ
イソシアネート(D)を適量添加することにより,凝集
力を著しく向上させ,粘着付与剤(E)の添加により,
プラスチック基材への接着性を改善できた。
【0075】このように,本発明により,接合時には粘
着特性が良好で,硬化後には強固な接着力を示す,硬化
前の粘着特性と硬化後の接着特性のバランスに優れた硬
化性粘着剤組成物が得られるようになった。また,これ
を用いたシートやテープは,被着体に仮接着できるた
め,機械的な仮止めが不必要であり,硬化後は接着剤並
みの強度に達するものであり,様々な用途に使用するこ
とが可能になった。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI (C09J 121/00 167:06) (56)参考文献 特開 平5−9453(JP,A) 特開 平5−9452(JP,A) 特開 平4−213380(JP,A) 特開 平1−292017(JP,A) 特開 昭50−46977(JP,A) 特開 昭53−14795(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C09J 107/00 - 121/02 C09J 133/04 - 133/16 C09J 167/00 - 167/07 C09J 7/02

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 粘着性ゴム系ポリマー(A)100重量
    部に対し,水酸基および/またはアミノ基を有する化合
    物(a),環状酸無水物(b),およびエポキシドとし
    て, (1)ラジカル重合性の不飽和基を有するエポキシド
    (c) (2)ラジカル重合性の不飽和基を有しないエポキシド
    (d) の両方を使用し,反応させて得られる硬化性ポリエステ
    ルオリゴマー(B)5〜200重量部を含むこと特徴と
    する硬化性粘着剤組成物。
  2. 【請求項2】 粘着性ゴム系ポリマー(A)および硬化
    性ポリエステルオリゴマー(B)の他に,(1)重合開
    始剤(C)を,粘着性ゴム系ポリマー(A)と硬化性ポ
    リエステルオリゴマー(B)の総重量100重量部に対
    し,0.1〜5重量部,(2)ポリイソシアネート
    (D)を,粘着性ゴム系ポリマー(A)と硬化性ポリエ
    ステルオリゴマー(B)の総重量100重量部に対し,
    0.1〜5重量部,(3)粘着付与剤(E)を,粘着性
    ゴム系ポリマー(A)と硬化性ポリエステルオリゴマー
    (B)の総重量100重量部に対し,1〜100重量
    部,(1)〜(3)から選ばれる1種以上を含むことを
    特徴とする請求項1記載の硬化性粘着剤組成物。
  3. 【請求項3】 請求項1または請求項2に記載の硬化性
    粘着剤組成物を,基材に塗布または含浸させることによ
    って作られることを特徴とするシートもしくはテープ。
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