JP2862989B2 - 形状記憶能を有するポリエーテルエステル - Google Patents

形状記憶能を有するポリエーテルエステル

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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は,形状記憶能を有するポリエーテルエステル
に関するものである。
(従来の技術) 従来,形状記憶能を有する素材としては,Ni−Ti系,Cu
−Ni−Al系,Cu−Zn−Al系,Cu−Zn−Si系等の形状記憶合
金がよく知られている。
また,形状記憶能を有する樹脂材料としては,ポリト
ランスイソプレン系樹脂(特開昭55−93806号,同61−3
4150号),ポリノルボルネン系樹脂(特開昭59−53528
号,同61−91244号),ビニル系樹脂とアクリル酸系樹
脂又は合成ゴムとの混合物からなるもの(特開昭63−17
952号)等が知られている。
さて,ポリエステルは,その優れた物性及び加工性ゆ
えに,繊維,フイルム,ボトル,その他汎用成形物等と
して極めて広範囲に利用されている。また,ポリアルキ
レンエーテル成分を共重合したポリエステルであるポリ
エーテルエステルは熱可塑性エラストマーとしての用途
を中心にその需要が伸びている。
ところで,ポリエステル系の形状記憶能を有する機能
についても研究されている。例えば,ポリブチレンテレ
フタレートと脂肪族ポリラクトンとのブロック共重合体
からなるものが提案されている(特開平2−123129
号)。しかし,この樹脂は,ポリラクトンに由来して融
点が低いため,成形物としての用途が制限されたり,製
造工程において操業性が悪く,形状記憶能にバラツキが
出たりするといった問題を有している。
(発明が解決しようとする課題) 本発明は,形状記憶能が安定しており,操業性良く製
造することのできる形状記憶能を有するポリエーテルエ
ステルを提供しようとするものである。
(課題を解決するための手段) 本発明者らは,形状記憶能を有するポリエーテルエス
テルについて鋭意研究した結果,特定の,ガラス転移
点,融点及び極限粘度を有する不飽和結合を有する特定
のポリエーテルエステルによりこの目的が達成されるこ
とを見出し,本発明に到達した。
すなわち,本発明の要旨は次のとおりである。
下記構成単位〜から主としてなり,単位〜の
和と単位〜の和とが等モル,単位との和が単位
〜の和の0.01〜10モル%(単位及びのいずれか
一方は0でもよい。),単位が10〜50重量%であるポ
リエーテルエステルであって,ガラス転移点が10〜80
℃,融点が100℃以上,極限粘度が0.3以上である形状記
憶能を有するポリエーテルエステル。
−OC−R1−CO− −OC−R2−CO− −O−G1−O− −O−G2−O− −O−(AO)n− (R1は芳香族基,R2は不飽和脂肪族基,G1は飽和脂肪族
基,G2は不飽和脂肪族基,Aはアルキレン基,nは単位の
分子量が400〜6000となる数を表す。) 以下,本発明について詳細に説明する。
本発明のポリエーテルエステルは,任意の形状Aに成
形して,その形状Aを不飽和結合の開裂による分子間架
橋や非晶相の結晶化により固定記憶させ,次いで,その
形状Aとは異なる形状Bに外力により一旦変形させてガ
ラス転移点よりも低い温度にして形状Bを固定させた
後,ガラス転移点よりも高い温度に加熱することによ
り,形状Aに回復するという機能,すなわち,「形状記
憶能」を有するものである。
本発明のポリエーテルエステルは,前記構成単位〜
から主としてなり,単位ととで構成される結晶化
が可能なハードセグメント,単位ととで構成される
ソフトセグメント,及び単位及び/又はの架橋可能
な単位を有するものである。
そして,本発明のポリエーテルエステルは,各単位の
割合が次の条件を満足するものである。
(a)単位〜の和と単位〜の和とが等モル (b)単位との和が単位〜の和の0.01〜10モル
%(好ましくは0.1〜5モル%,最適には1〜2モル
%) (c)単位が10〜50重量%(好ましくは20〜40重量
%,最適には20〜30重量%) (a)は,高分子量のポリエーテルエステルが当然備
えるべき条件である。また,(b)は,分子間架橋を形
成し得るとともに物性等の優れたポリエーテルエステル
とするための条件であり,不飽和結合を有する単位(
及び/又は)の割合が少なすぎると十分な分子間架橋
を形成することができず,一方,これが多すぎると重合
工程においてゲル化したり,ポリエーテルエステルの機
械的強度が低下したりして好ましくない。また,(c)
は,実用的な温度領域で形状記憶能を発現するポリエー
テルエステルとするための条件であり,単位が多すぎ
ると可逆相を固定するための結晶相の割合が少なくな
り,形状の変形及び回復の時に可逆相の流動を防ぐこと
ができないため,形状の回復が不十分となり,一方,単
位が少なすぎるとポリエーテルエステルが剛直にな
り,形状の変形や回復が困難となる。
また,本発明のポリエーテルエステルは,ガラス転移
点が10〜80℃のものであり,好ましくは15〜70℃,最適
には20〜60℃の範囲にあり,融点が100℃以上のもので
あることが必要である。ガラス転移点が10℃未満では,
室温でゴム状となるため,成形物を変形固定しても室温
で放置するだけで変形が急速に回復してしまうので実用
的メリットが少ない。一方,ガラス転移点が80℃を超え
ると成形物の形状を回復させる温度が高くなりすぎて,
熱水等では形状を回復させることができず,使用上不便
である。また,融点が100℃未満のポリエーテルエステ
ルでは,繊維,フイルム,各種成形品としたときに耐熱
性が不十分で,融着,ブロッキング等が起こり,実用化
が困難である。
さらに,本発明のポリエーテルエステルは,極限粘度
が0.3以上であることが必要であり,好ましくは0.4〜2,
最適には0.5〜1の範囲とするのがよい。極限粘度が0.3
未満であれば引張強度,曲げ強度,衝撃強度等成形物と
したとき,最低限必要とされる機械的強度が満足されな
いばかりか繊維やフイルムに成形することが困難であ
る。なお,極限粘度をあまり大きくしても機械的強度は
飽和してしまい,成形性が悪化するので,適度の極限粘
度に止めておくことが望ましい。
次に,本発明のポリエーテルエステルにおける構成単
位について,より具体的に説明する。
単位は芳香族ジカルボン酸残基単位である。
芳香族ジカルボン酸の具体例としては,テレフタル
酸,イソフタル酸,フタル酸,2,6−ナフタレンジカルボ
ン酸,1,4−ナフタレンジカルボン酸,4,4′−ジフェニル
ジカルボン酸,ジフェノキシエタンジカルボン酸等が挙
げられ,特に好ましいものはテレフタル酸である。
単位は不飽和脂肪族ジカルボン酸残基単位である。
不飽和脂肪族ジカルボン酸の具体例としては,無水マ
レイン酸,マレイン酸,クロロマレイン酸,ジクロロマ
レイン酸,イタコン酸,フマル酸,シトラコン酸,無水
シトラコン酸,メサコン酸,ヘット酸,無水ヘット酸等
が挙げられ,特に好ましいものは無水マレイン酸及びイ
タコン酸である。
単位は飽和脂肪族ジオール残基単位である。
飽和脂肪酸ジオールの具体例としては,エチレングリ
コール,1,3−プロパンジオール,1,4−ブタンジオール,
ネオペンチルグリコール,1,6−ヘキサンジオール,1,9−
ノナンジオール等が挙げられ,特に好ましいものはエチ
レングリコールである。
単位は不飽和脂肪族ジオール残基単位である。
不飽和脂肪族ジオールの具体例としては,2−ブテン−
1,4−ジオール,3−ブテン−1,2−ジオール等が挙げら
れ,特に好ましいものは2−ブテン−1,4−ジオールで
ある。
単位ポリアルキレングリコール残基単位である。
ポリアルキレングリコールとしては,ポリエチレング
リコール,ポリトリメチレングリコール,ポリテトラメ
チレングリコール等が挙げられが,特に好ましいものは
ポリエチレングリコール及びポリテトラメチレングリコ
ールである。(ポリアルキレングリコールは,少量のト
リメチロールプロパン,ペンタエリスリトール等の多官
能アルコール成分を含有していてもよい。) ポリアルキレングリコールは,分子量400〜6000(好
ましくは800〜2000)のものであることが必要である。
分子量が400未満のものでは,形状記憶能を付与するた
めに必要な量を共重合するとガラス転移点が著しく低下
するために不適当であり,一方,分子量が6000を超える
ものでは,成形時に劣化が著しく,共に好ましくない。
なお,本発明のポリエーテルエステルには,構成単位
〜の他に,ビスフェノールA,シクロヘキサンジメタ
ノール等の芳香族又は脂環族ジオール,4−ヒドロキシ安
息香酸等の芳香族ヒドロキシカルボン酸,γ−ブチロラ
クトン,ε−カプロラクトン等のラクトン類からの単位
が少量含まれていてもよいし,種々の添加剤等が含まれ
ていてもよい。
本発明のポリエーテルエステルを構成するモノマー成
分及びその共重合割合は広範囲に選択しうるが,経済
性,汎用性,物性等を勘案すれば,例えば,次のような
ものが好ましい。
すなわち,芳香族ジカルボン酸成分としてテレフタル
酸,不飽和脂肪族ジカルボン酸として無水マレイン酸,
脂肪族飽和ジオール成分としてエチレングリコール,ポ
リアルキレングリコールとしてポリエチレングリコール
を使用したポリエーテルエステルである。
次に,このポリエーテルエステルを例にとって本発明
の形状記憶能を有するコポリエステルの製造方法の一例
を具体的に説明する。
テレフタル酸,エチレングリコール及びポリエチレン
グリコールをエステル化反応缶に仕込み,0.5〜5.0kg/cm
2の窒素ガス制圧下,190〜300℃で1〜4時間エステル化
反応を行った後,160〜270℃にして無水マレイン酸を添
加し,さらに1〜4時間エステル化反応を行う。(エス
テル化反応時に不飽和結合開裂抑制剤としてハイドロキ
ノン等のラジカル重合禁止剤を添加するのが望まし
い。) 得られたエステル化物を重合反応缶に移送し,180〜27
0℃の温度で,0.5〜5時間,1トル以下の減圧下に重縮合
反応を行う。
所望の極限粘度となるまで重縮合した後,窒素ガスで
常圧に戻し,加圧して重縮合物をテグス状で払い出し,
冷却後,切断してチップ状の形状記憶能を有するポリエ
ーテルエステルを得ることができる。
重縮合反応は,通常,触媒の存在下で行われ,重縮合
反応触媒としてはポリエステルの製造に一般に用いられ
ているアンチモン,ゲルマニウム,スズ,チタン,コバ
ルト等の金属の化合物やスルホサリチル酸,o−スルホ安
息香酸無水物等の有機スルホン酸化合物が用いられる。
なお,エステル化工程で予め重縮合反応触媒を添加す
ることもできる。
本発明のポリエーテルエステルは,常法によって,繊
維,フイルム,押出成形品又は射出成形品等の成形物に
成形される。なお,本発明のポリエーテルエステルは,
成形物の形状記憶能を損なわない範囲で,ポリエチレン
テレフタレートのような他の熱可塑性重合体と混合又は
複合して成形することもできる。
得られた成形物をガラス転移点より高く,流動開始温
度より低い温度で架橋や非晶相を結晶化させることによ
り,形状を固定記憶させることができる。
架橋のための具体的手段としては,電子線や紫外線を
放射したり,あるいは成形後熱処理,好ましくは成形時
に架橋剤としてケトンパーオキサイド,パーオキシケタ
ール,ハイドロパーオキサイド,ジアルキルパーオキサ
イド,パーオキシエステル,パーオキシカーボネート等
の有機過酸化物やアゾビスイソブチロニトリル等のアゾ
化合物を添加しておいてから,成形後熱処理すればよい
が,後者の方法が好ましい。
本発明のポリエーテルエステルからなる成形物におい
て,形状Aを記憶した成形物を変形させて形状Bの成形
物とするために変形を与える温度は,ガラス転移点以上
が好ましい。変形の与え方は特に制限されず,成形物の
形状や肉厚に応じて成形物を変形させ易い温度雰囲気下
(例えば加熱空気中,加熱液体中,水蒸気中等)で変形
を与えることができる。
変形を固定するには,前記条件で変形を与えられた成
形物を,変形を保持したままガラス転移点未満に冷却す
ればよい。
形状Bの成形物から形状Aの成形物に戻すには,ガラ
ス転移点以上,流動開始温度未満の温度に加熱すればよ
く,変形は自動的に起こり,形状Aが回復する。温度を
高くするほど成形物が形状Aに回復する時間は一般に短
くなる。
なお,共重合された不飽和結合がすべて架橋に消費さ
れた場合は,半永久的に固定,記憶された形状Aは消去
できないが,共重合された不飽和結合が形状Aの固定,
記憶時にすべて架橋に消費されておらず,依然としてポ
リエーテルエステル中に不飽和結合として残存してお
り,かつ,架橋点の数が少ない場合等,特定の構造をと
らせることによって消去が可能な場合もあり,さらには
再記憶が可能な場合もある。
(作 用) 本発明のポリエーテルエステルは,温度変化に伴って
軟化と硬化を可逆的に起こして変形回復機能を発揮する
可逆相(ソフトセグメント及びハートセグメント)と分
子間の架橋や非晶相の結晶化により分子の流動を防いで
一定の形状を発現するための固定相(架橋点や結晶相)
が形成され,前記可逆相と相まって形状記憶が可能とな
るものと推察される。
(実施例) 次に,実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
なお,実施例においてポリエーテルエステルの特性値
は次のようにして測定したものである。
極限粘度〔η〕 フェノールと四塩化エタンとの等重量混合物を溶媒と
し,温度20℃で測定した。
ガラス転移点(Tg)及び融点(Tm) 示差走査熱量計(パーキンエルマー社製DSC−2型)
を用いて,昇温速度20℃/minで測定した。
流動開始温度(Tf) フローテスター(島津製作所製CFT−500型)を用い,
荷重100kg/cm2,ノズル径0.5mmの条件で,初期温度50℃
より10℃/minの割合で昇温して行き,ポリマーがダイか
ら流出し始める温度として求めた。
形状記憶能の有無 ポリエーテルエステルからなる成形物をTfより約20℃
低い温度で30分間熱処理を行って形状を固定,記憶さ
せ,得られた成形物を次の基準で形状記憶能有無の判定
を行った。
形状記憶能有り: Tg未満で変形の固定が可能であるとともにTg以上で完
全な形状の回復も可能で,かつ,Tg未満の温度での放置
により変形しないもの。
形状記憶能無し: Tg以下での変形の固定が不可もしくは不完全なもの又
はTg以上での固定された変形の回復が不可もしくは不完
全なもの。
実施例1 テレフタル酸とエチレングリコールとのエステル化反
応により得られたビス(β−ヒドロキシエチルテレフタ
レート)及びそのオリゴマー〔PETオリゴマー〕29.9kg
に,平均分子量1000のポリテトラメチレングリコール
(PTMG)7.3kg,エチレングリコール2.5kg及び触媒とし
てテトラブチルチタネート16gを加え,250℃,窒素ガス
制圧下3.6kg/cm2で1時間エステル化反応を行った後,
無水マレイン酸44gを加え,更に250℃,窒素ガス制圧下
3.6kg/cm2で0.5時間エステル化反応を行った。
得られたエステル化物を重縮合反応器に移して,260
℃,0.4トルで,3時間重縮合反応を行い,ポリエーテルエ
ステルを得た。
得られたポリエーテルエステルは,Tg=46℃,Tf=236
℃,Tm=247℃,〔η〕=0.71であった。
このポリエーテルエステルを,250℃の温度で押出成形
し,直径3mmのテグス状物とした。
次に,このテグス状物を直径2cmの鉄棒に巻き付け,20
0℃の熱風乾燥機中で30分間熱処理してコイル状の成形
物とした。
形状記憶能を評価するために,得られたコイル状の成
形物を,60℃の熱水中で直線状に変形させ,20℃の水中で
その変形を一時固定し,再び60℃の熱水中に浸漬し,形
状の回復程度を評価したところ,瞬時に元の形状に戻
り,良好な形状記憶能を示した。
なお,上記のテグス状物を直径2cmの鉄棒に巻き付
け,熱処理することなくコイル状の成形物とし,60℃の
熱水中で直線状に変形させ,20℃の水中に浸漬し,再び6
0℃の熱水中に浸漬したがコイル状の形状は回復しなか
った。
実施例2 PTMGの使用量を19.2kgとした以外は実施例1と同様の
操作でポリエーテルエステルを製造した。
得られたポリエーテルエステルは,Tg=23℃,Tf=192
℃,Tm=208℃,〔η〕=0.52であり,良好な形状記憶能
を示した。
実施例3 PETオリゴマーの使用量を27.7kg,無水マレイン酸の使
用量を1.2kgとした以外は実施例1と同様の操作でポリ
エーテルエステルを製造した。
得られたポリエーテルエステルは,Tg=42℃,Tf=216
℃,Tm=231℃,〔η〕=0.64であり,良好な形状記憶能
を示した。
実施例4 PETオリゴマーの使用量を30.0kg,無水マレイン酸の使
用量を15gとした以外は実施例1と同様の操作でポリエ
ーテルエステルを製造した。
得られたポリエーテルエステルは,Tg=49℃,Tf=235
℃,Tm=246℃,〔η〕=0.57であり,良好な形状記憶能
を示した。
実施例5 PTMGの代わりに平均分子量1000のポリエチレングリコ
ール7.3kg,無水マレイン酸の代わりにイタコン酸59gを
使用した以外は実施例1と同様の操作でポリエーテルエ
ステルを製造した。
得られたポリエーテルエステルは,Tg=44℃,Tf=216
℃,Tm=229℃,〔η〕=0.59であり,良好な形状記憶能
を示した。
実施例6 無水マレイン酸の代わりに2−ブテン−1,4−ジオー
ル55gを使用した以外は実施例1と同様の操作でポリエ
ーテルエステルを製造した。
得られたポリエーテルエステルは,Tg=42℃,Tf=206
℃,Tm=218℃,〔η〕=0.48であり,良好な形状記憶能
を示した。
比較例1 PTMGの使用量を1.5kgとした以外は実施例1と同様の
操作でポリエーテルエステルを製造した。
得られたポリエーテルエステルは,Tg=55℃,Tf=241
℃,Tm=254℃,〔η〕=0.67であった。
このポリエーテルエステルについて実施例1と同様に
して形状記憶能を判定したところ,コイル状の成形体を
直線状に変形させようとする際に,ソフトセグメントが
少なくポリマーが剛直なため変形することができなかっ
た。
比較例2 PETオリゴマー14.8kg,無水マレイン酸22g,エチレング
リコール1.3kg,PTMG22.5kgを使用して実施例1と同様の
操作でポリエーテルエステルを製造した。
得られたポリエーテルエステルは,Tg=−5℃,Tf=16
2℃,〔η〕=0.88の非晶性ポリマーであった。
このポリエーテルエステルについて実施例1と同様に
して形状記憶能を判定したところ,コイル状の成形体を
直線状に変形固定させようとする際に,Tgが低いため室
温で形状を固定することができず,徐々に元の形状に戻
ってしまった。
比較例3 PETオリゴマーの使用量を30.0kg,無水マレイン酸の使
用量を0とした以外は実施例1と同様の操作でポリエー
テルエステルを製造した。
得られたポリエーテルエステルは,Tg=47℃,Tf=232
℃,Tm=244℃,〔η〕=0.62であった。
このポリエーテルエステルについて実施例1と同様に
して形状記憶能を判定したところ,形状記憶能は有して
いるが,形状の回復が遅いものであった。
比較例4 PETオリゴマーの使用量を24.0kg,無水マレイン酸の使
用量を2.9kg,エチレングリコールの使用量を4.6kgとし
た以外は実施例1と同様の操作でポリエーテルエステル
を製造した。
得られたポリエーテルエステルは,Tg=37℃,Tf=205
℃,Tm=215℃,〔η〕=0.74であった。
このポリエーテルエステルについて実施例1と同様に
して形状記憶能を判定したところ,形状記憶能は有して
いるが,ポリマーが脆く,実用に供し得ないものであっ
た。
なお,上記実施例及び比較例のコポリエステルの各構
成単位の割合は,表1のとおりである。
(発明の効果) 本発明によれば,優れた形状記憶能を有するポリエー
テルエステルを安価に製造することが可能となる。
そして,本発明のポリエーテルエステルは,パイプや
電線等の接合材やシール材,パイプや棒状物品の内部,
外部のラミネート材,物体の被覆材,締めつけピンやク
ランプ等の工作,建築用固定材,バルーンカテーテル等
の医療機器材,未使用時には折り畳んでおき使用時に形
状を回復させて使用する携帯容器や食器類,自動車バン
パー等の衝撃吸収後の変形回復を必要とする部材,玩具
用部材,文具材,造花やブローチ等の装飾部材,熱感応
スイッチ等の電機部材,パッキンやOリング,型取り
材,その他各種のレジャー用具等に使用することができ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C08G 63/676 CA(STN)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】下記構成単位〜から主としてなり,単
    位〜の和と単位〜の和とが等モル,単位と
    の和が単位〜の和の0.01〜10モル%(単位及び
    のいずれか一方は0でもよい。),単位が10〜50重量
    %であるポリエーテルエステルであって,ガラス転移点
    が10〜80℃,融点が100℃以上,極限粘度が0.3以上であ
    る形状記憶能を有するポリエーテルエステル。 −OC−R1−CO− −OC−R2−CO− −O−G1−O− −O−G2−O− −O−(AO)n− (R1は芳香族基,R2は不飽和脂肪族基,G1は飽和脂肪族
    基,G2は不飽和脂肪族基,Aはアルキレン基,nは単位の
    分子量が400〜6000となる数を表す。)
  2. 【請求項2】電位がテレフタル酸残基,単位マレイ
    ン酸又はイタコン酸残基,単位がエチレングリコール
    残基,単位が2−ブテン−1,4−ジオール残基,単位
    がポリエチレングリコール又はポリテトラメチレング
    リコール残基である請求項1記載のポリエーテルエステ
    ル。
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