JP3770350B2 - 高分子量不飽和ポリエステル樹脂およびその製造方法 - Google Patents

高分子量不飽和ポリエステル樹脂およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は不飽和二重結合を有する高分子量のポリエステル樹脂およびその製造法に関する。さらに詳しくは、熱安定性に優れた不飽和高分子量ポリエステル樹脂であり、塗料、インキ、コーティング剤、接着剤などのベヒクルとして有用な高分子量不飽和ポリエステル樹脂の提供に関する。
【0002】
【従来の技術】
飽和高分子量共重合ポリエステル樹脂は上述の利用分野で、特に優れた可撓性や各種基材への密着性の要求される分野でその有用性が認められて使用されてきているが、そのほとんどが二重結合を含まない飽和ポリエステルの形で利用されているのが実状である。一方、不飽和ポリエステル樹脂は、上述の分野でその二重結合の反応性を利用して改質反応や架橋反応により、複合化や高性能化が計られている。しかしながらそれらの多くは低分子量の樹脂であり、逆に単独での使用では満足した性能の樹脂は得られず、複合化が必須である。
【0003】
飽和高分子量共重合ポリエステルに二重結合を導入できれば、架橋反応点や改質反応点として二重結合が活用でき、より高性能な機能性樹脂が提供できると考えられるが、そのような樹脂は熱安定性に劣り、加熱処理や高温下での滞留、あるいは重合反応中にゲル化反応が起こるためこれまで製造出来なかった。これに類した発明として、特開平8-48761 号、特開平8-269180号、特開平8-269181号、特開平8-269182号などでは高分子量の不飽和ポリエステル樹脂の製造方法を開示しているが、その方法は製造工程上煩雑な操作を必要とし、また工程上十分に分子量の高いポリエステルを得ることが難しいという欠点がある。また、酸化防止剤としてヒドロキノンが例示されているが、このような2官能のフェノール系の酸化防止剤はポリエステルの重合を阻害し、高分子量のポリエステルが得られ難いという欠点がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明者らは、
1)高分子量を有し、
2)優れた熱安定性を有し、
3)大幅な設備の変更なく、飽和ポリエステルの重合を行うのと同様に製造出来ることをきわめて高いレベルにおいて満足し、熱劣化によるゲル化が抑制された高分子量不飽和ポリエステル樹脂を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記問題点を解決するため、樹脂設計とその重合方法に関し、鋭意研究を重ねた結果、本発明に到達した。
【0006】
すなわち、本発明はジカルボン酸とグリコール及び不飽和二重結合基を有するジカルボン酸またはグリコールとを構成成分とする不飽和ポリエステル樹脂において、不飽和二重結合基を有するジカルボン酸またはグリコール成分を全ジカルボン酸またはグリコール成分の 0.1モル%以上20モル%以下含み、還元粘度0.2dl/g 以上であり、フェノチアジンが10〜5000ppm含まれ、200℃の温度で72時間保持したときのゲル分率が3%以下であることを特徴とする高分子量不飽和ポリエステル樹脂であり、さらにジカルボン酸とグリコール及び不飽和二重結合を有するジカルボン酸またはグリコールとを重縮合して高分子量不飽和ポリエステル樹脂を製造するに際し、フェノチアジンを不飽和ポリエステル樹脂に対し、10〜5000ppmを添加して重合を行うことを特徴とする高分子量不飽和ポリエステル樹脂の製造方法である。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明における不飽和ポリエステル樹脂(以下、単にポリエステル樹脂と表記することがある)の構成成分としては以下のものが例示される。即ちジカルボン酸成分のうちの芳香族ジカルボン酸としてはテレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸等を挙げることができ、必要に応じて5-ナトリウムスルホイソフタル酸も用いることができる。脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸等を挙げることができ、脂環族ジカルボン酸としては、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸とその酸無水物等を挙げることができる。
【0008】
さらに、p-ヒドロキシ安息香酸、p-(2−ヒドロキシエトキシ)安息香酸、あるいはヒドロキシピバリン酸、γ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトン等のヒドロキシカルボン酸類も必要により使用できる。
【0009】
重合性不飽和二重結合を含有するジカルボン酸としては、α,β−不飽和ジカルボン酸類としてフマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、不飽和二重結合を有する脂環族ジカルボン酸として2,5−ノルボルナンジカルボン酸無水物、テトラヒドロ無水フタル酸等を挙げることができる。重合性不飽和二重結合を含有するジカルボン酸は全酸成分に対して0.1〜40モル%であるが、0.1〜20モル%より望ましくは0.5〜15モル%であり、更に望ましくは1〜10モル%である。重合性不飽和二重結合を含有するジカルボン酸が0.1モル%以下の場合、その二重結合を利用した反応が起こりにくくなり、二重結合含有量が多くなるほど熱安定性が低下する傾向がある。
【0010】
一方、グリコール成分は炭素数2〜10の脂肪族グリコールおよびまたは炭素数が6〜12の脂環族グリコ−ルおよびまたはエーテル結合含有グリコールよりなるが、炭素数2〜10の脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコ−ル、1,3−プロパンジオ−ル、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−エチル−2−ブチルプロパンジオール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、ジメチロールヘプタン等を挙げることができ、炭素数6〜12の脂環族グリコールとしては、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール等を挙げることができる。
【0011】
エーテル結合含有グリコールとしては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、さらにビスフェノール類の2つのフェノール性水酸基にエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドをそれぞれ1〜数モル付加して得られるグリコール類、例えば2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパンなどを挙げることが出来る。その他のグリコールとして、公知のポリオールが使用でき、例えば、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールやポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオール類、ラクトン系化合物の重合体やポリエチレンアジペート等のポリエステルポリオール類、ポリカーボネートポリオール類、ポリオレフィンポリオール類等が使用できるが、そのほかに、ジカルボン酸化合物やジアミン化合物にエポキシ化合物を反応させて得られるポリオール等も使用できる。ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールも必要により使用しうる。
【0012】
本発明のポリエステル樹脂中に0〜5モル%の3官能以上のポリカルボン酸および/又はポリオールが共重合することができるが3官能以上のポリカルボン酸としては(無水)トリメリット酸、(無水)ピロメリット酸、(無水)ベンゾフェノンテトラカルボン酸、トリメシン酸、エチレングルコールビス(アンヒドロトリメリテート)、グリセロールトリス(アンヒドロトリメリテート)等が使用される。一方3官能以上のポリオ−ルとしてはグリセリン、トリメチロ−ルエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が使用される。
【0013】
3官能以上のポリカルボン酸および/またはポリオールは、全酸成分あるいは全グリコール成分に対し0〜5モル%、望ましくは、0〜3モル%の範囲で共重合されるが、5モル%を越えると充分な加工性が付与できにくくなる。
【0014】
本発明のポリエステル樹脂に添加される酸化防止剤としては、フェノチアジンが例示できる。
【0015】
【0016】
【0017】
【0018】
【0019】
【0020】
ェノチアジンの使用される量としては、樹脂に対し、10〜5000ppm であり、望ましくは100〜2000ppm であり、さらに望ましくは100〜1000ppm である。5000ppm を越えると、ポリエステル中の二重結合を利用した反応を阻害する恐れがある。10ppm 以下では、熱安定性が低く、ゲル化が進行する恐れがある。
【0021】
得られたポリエステル樹脂の分子量は、還元粘度測定により代用的に知ることができる。樹脂の還元粘度は、0.1〜2.0dl/gであり、望ましくは0.2〜1.5dl/g、さらに望ましくは0.3〜1.3dl/gである。0.1dl/g以下では、望ましい機械的物性が得られない。
【0022】
また、この樹脂中の二重結合基の量は、次に示すような方法で知ることができる。例えば、樹脂の1H NMR測定により定量することが可能である。また、臭素や過マンガン酸カリなどを二重結合と反応させ、消費量を調べることによっても定量は可能である。
【0023】
本発明のポリエステル樹脂は、熱的に安定性を示す。安定性は、特定の温度下、特定の時間処理したときのゲル分率で表すことが出来る。処理温度条件は高いほど安定性が低下する傾向にあるが、望ましくは200℃以上で72時間、さらに望ましくは230℃以上で36時間、最も望ましくは250℃以上で24時間処理したときのゲル分率が3%以下であることが好ましい。ここに挙げた温度、時間範囲の条件で処理したときのゲル分率が3%以上であった場合、ポリエステル樹脂の加工、変性において高粘度化することが問題になる。
【0024】
本発明のポリエステル樹脂は塗料、インキ、コーティング材、接着剤などのベヒクルとして利用される。本発明のポリエステル樹脂はそのままでも使用されるが、架橋剤(硬化用樹脂)を配合して焼付硬化を行なうことにより、高度の耐水性を発現することができる。架橋剤としては、フェノールホルムアルデヒド樹脂、アミノ樹脂、多官能エポキシ化合物、多官能イソシアネ−ト化合物およびその各種ブロックイソシアネート化合物、多官能アジリジン化合物などを挙げることが出来る。
【0025】
これらの架橋剤には硬化剤あるいは促進剤を併用することもできる。
硬化反応は、一般に本発明のポリエステル樹脂100部(固形分)に対して硬化用樹脂5〜40部(固形分)が配合され硬化剤の種類に応じて60〜250℃の温度範囲で1〜60分間程度加熱することにより行われる。必要の場合、反応触媒や促進剤も併用される。
【0026】
また、本発明のポリエステル樹脂は二重結合を含む重合性単量体とラジカル重合反応させ、複合化樹脂を得ることもできる。重合性単量体としてはアクリル酸、メタクリル酸のエステル類としてアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキプロピル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシルプロピル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、N−メチロ−ルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、酢酸ビニル、ビニルエーテル類、N-ビニルピロリドン、スチレン、α−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、ビニルトルエン、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、マレイン酸無水物、イタコン酸無水物、メタクリル酸無水物、などを例示することができ、これらの中から一種または複数種を選んで用いることができる.使用する重合性単量体の量はポリエステル樹脂/重合性単量体の割合で10/90〜90/10の範囲が望ましい。
【0027】
本発明のポリエステル樹脂には、顔料、染料、各種添加剤などを配合することが出来る。本発明のポリエステル樹脂は、他の樹脂と混合使用することができ、その加工性を向上せしめることが出来る。
以下に実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0028】
【実施例】
以下、本発明を実施例を用いて説明する。実施例中、単に部とあるのは重量部を表し、%とあるのは重量%を示す。各測定項目は以下の方法に従った。
(1)還元粘度
樹脂 0.25 g をフェノール/テトラクロロエタンに溶かし、常法に従い30℃での還元粘度を測定した。
【0029】
(2)ガラス転移温度(Tg)
得られたポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、DSCにより測定した。
【0030】
(3)重合体組成
得られたポリエステル樹脂の重合体組成は、重水素化クロロホルムに溶解し、1H NMRにより測定した。
【0031】
(4)熱安定性評価
得られたポリエステル樹脂10gを試験管中に入れ、窒素置換した後熱媒中に付け、経時的にサンプリングを行い、ゲル分率を測定した。ゲル分率の測定はクロロホルムを用いてソックスレー抽出器で処理し、クロロホルム不溶分の秤量より求めた。
【0032】
参考例1
撹拌機、温度計および部分還流式冷却器を具備したステンレススチール製オートクレーブにテレフタル酸 400部、イソフタル酸 400部、フマル酸23部、ネオペンチルグリコール 401部、エチレングリコール 443部、テトラ−n−ブチルチタネート0.52部、テトラキス〔メチレン(3,5-t-ブチル-4- ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン0.20部を仕込み、 160℃〜220 ℃まで4時間かけてエステル化反応を行なった。次いで 255℃まで昇温し、反応系を徐々に減圧したのち0.5 mmHgの減圧下で60分反応させ、ポリエステルポリオール(A-1)を得た。得られたポリエステルポリオール(A-1)は淡黄色透明で還元粘度は0.50dl/gであった。 NMR等により測定した組成は次の通りであった。
【0033】
ジカルボン酸成分
テレフタル酸 48モル%
イソフタル酸 48モル%
フマール酸 4モル%
ジオール成分
ネオペンチルグリコール 50モル%
エチレングリコール 50モル%
【0034】
参考例2〜、実施例
同様の方法により表1に示した種々のポリエステルポリオール(A-2 〜7)を製造した。各ポリエステルの還元粘度とNMR等により測定した組成分析結果を表1に示す。表中各成分はモル数を示す。
【0035】
比較例1〜2
酸化防止剤を添加しないことを除いては、参考例1と同様にポリエステル樹脂(B-1) を製造した。
【0036】
【表1】
Figure 0003770350
【0037】
【発明の効果】
本発明の不飽和結合を有するポリエステル樹脂は、高分子量であり、かつ二重結合基を含有しているにもかかわらず熱安定性に優れている。また、この二重結合基を利用したグラフト反応や架橋などの変性反応が容易に行える。したがって塗料、インキ、コ−ティング剤、接着剤、などのベヒクルとして有用である。

Claims (2)

  1. ジカルボン酸とグリコール及び不飽和二重結合基を有するジカルボン酸またはグリコールとを構成成分とする不飽和ポリエステル樹脂において、不飽和二重結合基を有するジカルボン酸またはグリコール成分を全ジカルボン酸または全グリコール成分の 0.1モル%以上40モル%以下含み、還元粘度0.2dl/g 以上であり、フェノチアジンが10〜5000ppm含まれ、200℃の温度で72時間保持したときのゲル分率が3%以下であることを特徴とする高分子量不飽和ポリエステル樹脂。
  2. ジカルボン酸とグリコール及び不飽和二重結合を有するジカルボン酸またはグリコールとを重縮合して高分子量不飽和ポリエステル樹脂を製造するに際し、フェノチアジンを不飽和ポリエステル樹脂に対し、10〜5000ppmを添加して重合を行うことを特徴とする高分子量不飽和ポリエステル樹脂の製造方法。
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