JP2849933B2 - 輪転式孔版印刷装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本発明は、孔版印刷の技術分野に係り、特に輪転式孔
版印刷装置に係る。

［従来の技術］ 孔版印刷装置の一つとして、中心軸線の周りに回転可
能なよう支持されインキ通過孔を有し円筒状の周表面に
穿孔版原紙が巻き付け装填されるよう構成された印刷ド
ラムと、前記印刷ドラムの中心軸線に平行に配置された
中心軸線の周りに回転可能なよう支持されその円筒状の
周表面と前記印刷ドラムの周表面との間に印刷を施され
るべきシートを挾んで送る挾み領域を形成する裏押しロ
ーラとを有する輪転式孔版印刷装置が知られている。

かかる輪転式孔版印刷装置に於ける印刷ドラムは、古
くは多数の孔を明けられた金属板を円筒状に丸めた構造
に作られており、その円筒壁は印刷ドラム全体の強度と
剛性を保持するに必要な肉厚を有するものとされてい
た。

上記の如き古くからの輪転式孔版印刷装置の印刷ドラ
ムの構造に代えて、印刷ドラムのインキ通過孔を有する
周壁部を線材を織製又は編製してなる網材のみにて実質
的に構成し、実質的にかかる網材のみよりなる周壁部に
その半径方向内側より当接してこれを裏押しローラへ向
けて半径方向外方へ押出す中押しローラを備えた構造の
輪転式孔版印刷装置が、本件出願人と同一人の出願に係
る特願昭63−28553号（特開平１−204781号公報）にて
提案された。このように印刷ドラムのインキ通過孔を有
する周壁部が実質的に網材のみにて構成されることによ
り旧来の剛固な円筒壁を有する印刷ドラムに対比して得
られる新たな作用及び効果は、上記公開公報に詳細に記
載されている。

更に上記の先の提案になる印刷ドラムに於て、それが
一対の環状部材の間に線材を織製又は編製してなる網材
を張り渡し、その両縁部を環状部材に固定した構造に作
られる時には、そのような構造の円筒体は捩れに対する
剛性が低いことから、その作動中に捩れを生じ易く、そ
の捩れによってその回りに巻かれた孔版原紙に皺が生
じ、印刷画像に歪みが生ずる虞れがあることに対処し、
二つの環状部材の間に長方形の展開形状を有する網材を
円筒状に張り渡して印刷ドラムを構成するに当って、環
状部材の周面上に着座した網材の両側縁部を環状部材に
固定せず、該周面上に自由に着座した状態とすること
が、本件出願人と同一人の出願による特願平１−47029
号に於て提案された。

このように長方形の展開形状を有する網材がその両側
縁部にて環状部材に固定されることなく自由に着座した
状態に印刷ドラムを構成することにより、二つの環状部
材の間に相対的角変位が生じても、それは網材と環状部
材の周表面の間の滑りによって吸収されるので、網材に
は何らの捩れが生ぜず、これによって印刷ドラムの捩れ
に起因する印刷画像の歪みを生じない良好な孔版印刷を
達成することができる。またかかる構造によれば、網材
は何らの捩れを課せられない状態にて使用されるので、
線材を織製又は編製した網材だけでなく、線材の不織製
によって作られた網材を使用することも可能となる。

［発明が解決しようとする課題］ これまで輪転式孔版印刷装置に於ては、装置の運転中
印刷ドラムが一回転する毎に、印刷ドラムの回転に同期
して、ローラなる比較的質量の大きい物体をその回転中
心軸線に垂直の方向に一度ずつ急速に往復動させること
が必要であった。即ち、印刷ドラムにはその周りに長方
形展開形状の孔版原紙が装着されるので、ドラムの円筒
状外周面の一部にはその一つの母線に沿って孔版原紙の
前縁部を取付けるための孔版原紙前縁取付装置が設けら
れており、この部分は印刷ドラムの円筒状外周面より半
径方向外方へ突出た形状になっている。従って、旧来の
金属板に孔が明けられた剛性の印刷ドラムを有する輪転
式孔版印刷装置に於ては、印刷ドラムの円筒状外周面に
対し印刷を施されるべきシートを押付ける裏押しローラ
は、印刷ドラムの回転に伴って、孔版原紙前縁取付装置
がそれに向かい合った位置を通過する度に、孔版原紙前
縁取付装置との衝突を避けるべく、一時的に印刷ドラム
から引離されなければならない。かかる裏押しローラの
印刷ドラムからの引離しは、印刷シートを印刷ドラムの
円筒状外周面に押付けるという裏押しローラの機能を損
わないよう、孔版原紙前縁取付装置が裏押しローラに極
く接近したところで行われ、また孔版原紙前縁取付装置
が裏押しローラに向かい合った位置を通過した時には、
裏押しローラは速やかに印刷ローラの外周面へ向けて押
し戻されなければならないので、かかる裏押しローラの
往復動は大きな加速度を以て行われ、そのための印刷装
置全体に大きな衝撃振動を惹起しまた騒音の原因とな
る。

一方、上記の特願昭63−28553号及び特願平１−47029
号に於て提案された輪転式孔版印刷装置に於ては、印刷
ドラムの周りに巻かれ且印刷ドラムの内側よりインキを
施される孔版原紙に対して印刷を施されるシートを押付
ける作用は、裏押しローラを印刷ドラムの外周面へ向け
て押付ける代わりに、網材により構成された印刷ドラム
の筒状体がその内部に設けられた中押しローラにより裏
押しローラへ向けて半径方向外方へ膨出されることによ
り行われるようになっている。この構造に於ては、裏押
しローラの直径を印刷ドラムの直径に等しくしておき、
裏押しローラの一部に印刷ドラムの孔版原紙前縁取付装
置を受入れることのできる大きさの溝を設けておき、印
刷ドラムの回転に伴って孔版原紙前縁取付装置が裏押し
ローラに向かい合った位置に来る度に孔版原紙前縁取付
装置が丁度裏押しローラの溝に嵌り合うように両者を同
期させて回転させれば、印刷ドラムの回転に伴って孔版
原紙前縁取付装置が裏押しローラに向かい合った位置を
通過するときにも、孔版原紙前縁取付装置との衝突を避
ける目的で裏押しローラを印刷ドラムより引離す必要は
なくなる。また印刷ドラムと裏押しローラの間に印刷シ
ートが供給されていないとき印刷ドラムと裏押しローラ
とが接することにより裏押しローラがインキにより汚染
される危険は、印刷ドラムと裏押しローラの間の挾み領
域へシートが供給されている否かを感知することによる
中押しローラの押出し制御によって回避されるので、こ
の点からも裏押しローラの軸移動制御は必要なくなり、
裏押しローラの軸移動制御に起因する振動や騒音の発生
の問題はなくなる。

しかし、この場合にも、二つの環状部材の間に延在し
て孔版原紙前縁取付装置を支持する横木は網材により形
成された印刷ドラム円筒体の円筒面に直に沿って設けら
れていたので、網材よりなる印刷ドラム円筒体を印刷に
当って半径方向外方へ膨出させるべくこれを内側から押
す中押しローラが、横木の内側を通過するときにもドラ
ムの半径方向外側へ向けて押されたままでいると、横木
と中押しローラの間に好ましからざる衝突が生ずるの
で、中押しローラは、やはり横木がそれに対向する位置
を通過するとき、横木との衝突を避けるべくドラムの半
径方向内側へ向けて一時引離されるよう駆動されなけれ
ばならない。かかるる中押しローラの横木からの引離し
及び横木通過後の押し戻しの軸移動も、上述の裏押しロ
ーラの軸移動と同様に大きな加速度にて急速に行われな
ければならないので、中押しローラは裏押しローラに比
してかなり軽量な構造に作られてはいるが、やはりその
軸移動によって印刷装置に振動を生じまた騒音を発生す
るという問題がある。

本発明は、上記の如き裏押しローラや中押しローラの
軸移動に伴う振動や騒音の発生の問題に対処し、これを
回避することができるよう改良された輪転式孔版印刷装
置を提供することを課題としている。

［課題を解決するための手段］ かかる課題は、本発明によれば、二つの同径の環状部
材とこれら二つの環状部材の間に延在し孔版原紙の前縁
を保持する原紙取付装置を備えた横木と線材を織製、不
織製又は編製してなる長方形展開形状を有する網材とを
有し該網材がその長方形展開形状の両側縁に沿った帯状
領域にて前記環状部材の各々と外周面上に自由に着座し
た状態にて円筒状に巻かれることにより孔版原紙を巻き
付け装填するための多孔性円筒体が形成されている印刷
ドラムと、前記印刷ドラムと実質的に同径であり前記印
刷ドラムの外周面に向かい合って配置され前記印刷ドラ
ムとの間に印刷シートを挾んで送る印刷シート挾み領域
を形成する裏押しローラと、前記印刷ドラム内にその前
記多孔性円筒体の内周面にその一つの母線に沿って接触
可能に配置された中押しローラとを有し、前記裏押しロ
ーラはその外周部の一部に前記印刷ドラムの前記横木と
向かい合ったときこれを受入れることができる溝を有
し、前記印刷ドラムと前記裏押しローラとは前記横木を
前記溝内に整合させるように互いに同期して互いに反対
の方向に回転駆動されるようになっており、前記横木は
その前記多孔性円筒体に向かい合った部分が該多孔性円
筒体の円筒状輪郭より半径方向外方へ隔置されているこ
とを特徴とする輪転式孔版印刷装置によって達成され
る。

［発明の作用］ 上記の如く二つの環状部材の間に延在し孔版原紙の前
縁を保持する原紙取付装置を備えた横木が、二つの環状
部材の周面の間に張り渡された円筒状の網材の円筒状輪
郭より半径方向外方へ隔置されていることにより、中押
しローラが網材よりなる印刷ドラム円筒体をその内側か
ら半径方向外方へ膨出させるべく網材に対し内側から押
付けられたままの状態にあっても、印刷ドラムの回転に
伴って横木は中押しローラに向かい合った位置を中押し
ローラと衝突することなく通過することができ、従って
横木との衝突を避けるための中押しローラの軸移動は最
早必要とされない。

従って、本発明による輪転式孔版印刷装置に於ては、
中押しローラは、印刷シートが順次引続いて供給される
一連の印刷工程の間中、連続して網材よりなる印刷ドラ
ム円筒体を半径方向外方へ押出す位置に保持されてよ
く、中押しローラをかかる押出し位置とこれより印刷ド
ラムの半径方向内側へ後退した位置との間に軸移動させ
る制御は、印刷シートが所定の印刷位置に供給されてい
て印刷ドラムがそれに印刷を行うべき状態にあるか否
か、換言すれば、印刷シートが所定の位置に供給されて
いない状態に於て印刷ドラムの外周面が裏押しローラに
直に押し当てられることにより裏押しローラがインキで
汚染される虞れがあるかどうかに関してのみ制御されれ
ばよい。

尚、上記のように中押しローラの軸移動制御が最早単
に印刷ドラムと裏押しローラとがその間に印刷シートが
供給されていないとき互いに接触することにより裏押し
ローラがインキにて汚染されることを回避するだけのた
めに行われることになれば、印刷シートが所定の位置に
供給されているか否かの検出に基いて行われるべき中押
しローラの軸移動制御に代えて裏押しローラの軸移動制
御が行われてもよく、或いはまた中押しローラ及び裏押
しローラの何れについても軸移動制御は行わず、印刷シ
ートが所定の位置に供給されていないことが検出された
時には印刷ドラムと裏押しローラの同期回転を横木が裏
押しローラに向かい合った位置にて急停止させる制御が
行われてもよい。

［実施例］ 以下に本発明を添付の図を参照して実施例について詳
細に説明する。

第１図、第２図及び第３図は本発明による輪転式孔版
印刷装置の要部の構成を三つの異なる作動状態に於て解
図的に示す側面図であり、第４図は第１図〜第３図に示
されている構成を含む印刷装置をこれらの図の右方より
見た幾分解図的側面図である。

これらの図に於て、１は印刷ドラムであり、２は裏押
しローラである。印刷ドラム１はその両端部を環状部材
3a、3bにより構成されており、これら環状部材3a、3bの
周面上には、後程詳細に説明される如く、線材を織製、
不織製又は編製してなる長方形展開形状を有する網状、
例えばステンレスワイヤを縦横に織製してなる網材４
が、その両側縁に沿った帯状領域にて自由に着座した状
態にて円筒状に巻かれて設置されている。印刷ドラム１
の母線に沿う一部には、横木５が設けられており、この
横木には印刷ドラムの周りに巻き付け装填される孔版原
紙の前縁を選択的に取付けるための孔版原紙前縁取付装
置5aが設けられている。横木５は環状部材3aと3bの両者
を連結する部材としても機能しているが、環状部材3a及
び3bは以下に説明される要領にて互いに同期して駆動さ
れるようになっているので、横木５にはさほど強度は要
求されない。印刷ドラム１は、その両端の環状部材3a及
び3bの部分にてそれより両側へ突出た環状軸部6a及び6b
がそれぞれ軸受7a及び7bを経て枠体８に回転可能に装着
されることにより、その中心軸線の周りに回転可能なよ
う支持されている。裏押しローラ２は、その両端より突
出た軸部9a及び9bがそれぞれ軸受10a及び10bを経て枠体
８に回転可能に装着されることにより、その中心軸線の
周りに回転可能なよう支持されている。

印刷ドラム１と裏押しローラ２は、それぞれの両端部
に装着された同形の環状歯車11aと12a及び11bと12bとの
噛合いにより、第１図〜第３図にて矢印により示されて
いる如く互いに反対方向に同期して同速度にて回転する
ようになっており、この回転は裏押しローラ２の軸9bが
内部に電動機を含む駆動装置13によって駆動されること
により行われるようになっている。裏押しローラ２は剛
固な構造を有していてよいので、横木５がさほど強固で
なくても、環状部材3aと3bの間の捩れのない同期整合は
この場合裏押しローラ２を介して達成される。裏押しロ
ーラ２には印刷ドラム１の横木５に対応してそれを受入
れることのできる溝14が形成されている。

第１図〜第４図に於ては、印刷ドラム１と裏押しロー
ラ２の周表面の間の距離或いは印刷ドラム１と裏押しロ
ーラ２の直径に対する両者の中心間距離の増分は、図示
の目的で、それらの直径に比して誇張して大きく示され
ているが、この周表面間の距離或いは中心間距離の直径
に対する増分は、印刷ドラムの直径が十数センチである
実際の装置に於ても２〜5mm程度の極く小さいものとさ
れてよい。この部分が印刷に当って印刷を施されるべき
シートＳを挾み込む挾み領域15である。尚、16及び17は
シートＳを挾み領域15へ向けて送るための送りローラで
ある。

印刷ドラム１内には、その実質的に網材４のみよりな
る円筒体の部分の母線に沿う一部であって裏押しローラ
２に対向する部分を選択的に裏押しローラ２へ向けて半
径方向外方へ膨出させるための中押しローラ18が設けら
れている。この中押しローラはその中心軸線に整合して
延在する軸19により回転可能に支持されており、軸19は
その両端部にて軸20よりアーム21a及び21bを経て支持さ
れている。軸20は印刷ドラム１の両端部に於ける環状軸
部6a及び6bの内部を貫通して延在しており、その両端部
にて軸受22a及び22bを経て枠体８より回動可能に支持さ
れている。軸20の一端は梃23及びリンク24を経て駆動装
置13に連結されており、印刷ドラム１の周りに孔版原紙
が所定の態様に装着され且挾み領域15に印刷シートが所
定の態様にて供給されているとき、これらをそれぞれ感
知する図には示されていない適当なセンサの出力に応答
して駆動され、中押しローラ18によって網材よりなる円
筒体の裏押しローラに向かい合ったその一つの母線に沿
う部分を裏押しローラへ向けて半径方向外方へ膨出させ
るようになっている。第２図及び第３図はそのように中
押しローラ18によって網材よりなる円筒体の一部が裏押
しローラへ向けて押出されている状態を示している。こ
のうち第２図は丁度横木５が裏押しローラの溝14に嵌り
合った位置にあり、横木５に前端部を取付けられて印刷
ドラム１の周りに巻き付けられた孔版原紙Ｔが印刷シー
トＳに対し接触し始める直前の状態を示している。

孔版原紙の前縁部及びドラムの周りを一周した後この
前縁部に隣接する孔版原紙の後縁部は通常穿孔されてい
ないので、これらの部分が中押しローラに向かい合った
状態にあるとき、網材よりなる円筒体がその内側よりイ
ンキを含んだ中押しローラにより裏押しローラへ向けて
押付けられても、裏押しローラがインキにより汚染され
ることはない。また孔版原紙の前縁と後縁の継目に当る
部分には横木５が存在し、裏押しローラは更に横木より
溝14によって隔置されているので、網材よりなる円筒体
が第２図に示す状態に於て中押しローラ18により横木の
裏側へ向けて半径方向外方に膨出されても、裏押しロー
ラがインキによって汚染されることはない。

尚、図には示されていないが、インキは従来の輪転式
孔版印刷装置に於けると同じ要領により印刷ドラムの内
部へ供給され、これより中押しローラ18の表面に層状に
供給され、中押しローラの外周面より網材よりなる円筒
体の内周面を移転され、これより孔版原紙の内面に施さ
れる。従って中押しローラ18は印刷ドラムの網材よりな
る円筒面の一部を裏押しローラへ向けて押出す作用を行
うローラとして作動すると同時に、インキ供給ローラと
しても作動する。従ってかかる中押しローラは、丁度四
角の枠体に網材を張った初期の手動式謄写版装置に於
て、孔版原紙を印刷面に対し押付ける作用を行うと同時
にインキを供給する作用を行っていた手押しローラと同
様の働きをするものである。

本発明による輪転式孔版印刷装置の改良は、特に横木
５を網材４よりなる円筒体の円筒状輪郭、即ち環状部材
3a及び3bの周表面を結ぶ円筒面より半径方向外方に引離
して設けたところにある。この要部の構成が第５図に部
分的斜視図として示されている。この図は第２図に於け
る如く横木が丁度真下に来た状態にある印刷ドラムの下
端部を一方の環状部材3bの近傍にてその要部についての
み示す斜視図である。長方形の展開形状を有する網材４
の前縁4lはねじ28等の適当な固定手段により横木５に固
定されており、これよりその両側縁に沿った帯状領域4s
にて環状部材の外周面上に自由に着座してその周りを円
筒状に一周した後、その後縁4tの両側端部はそこに取付
けられたラグ30bを経て引張りコイルばね27b（図に見え
ていない他端に於ては引張りコイルばね27a、第８図参
照）により環状部材の周表面の周りに巻き付く方向に付
勢されている。図示の実施例に於ては、ばね27a、27bの
一端はねじ31等の適当な固定手段により横木５の両端に
係止されている。

横木５は図示の実施例に於ける如く比較的薄い厚さの
帯状部材であってよく、その両端部にて桁部材29a、29b
（但し第５図には桁部材29bのみ示されている）により
環状部材3a、3bの周表面及び網材４よりなる円筒体の外
面より隔置された状態にて環状部材3a、3bに取付けられ
ている。

第６図は第５図に示されている如き環状部材に対する
横木と網材の取付構造を有する印刷ドラムが、その横木
を裏押しローラ２の溝14内に整合させた状態をそれらの
輪郭の相互の関係について解図的に示す図であり、第２
図の対応箇所の拡大図に相当する図である。この図より
印刷ドラムは、中押しローラが網材４よりなる円筒体の
一部をその母線に沿って半径方向外方へ膨出させる位置
に保持されたままで、横木５を中押しローラ18の下方に
支障なく通過させることができることが理解されよう。

第７図は網材４の前縁4lを環状部材3a、3bに取付ける
構造の他の一つの実施例を示す第５図と同様の斜視図で
ある。この実施例に於ては網材はその前縁の両側縁部に
て板ばね32a、32b（但し第７図には板ばね32bのみが示
されている）を介して環状部材3a、3bに固定されてい
る。板ばね32bはその一端にて網材にろう付等の適当な
固定手段により固定され、他端にてねじ33等の適当な固
定手段により環状部材3bに固定されている。板ばね32b
は図示の如く湾曲した形状を有し、網材の前縁に対しそ
の円筒状延在方向に弾力性のある支持を与えるようにな
っている。またこの実施例では網材の後縁部4tは網材の
前縁部と環状部材3a、3bの周表面の間に挾まれただけの
自由な状態になっている。網材には印刷ドラムの回転に
伴って前縁より後縁へ向かうしごき作用が与えられるの
で、網材の後縁がこのように自由な状態に解放されてい
ても、網材は上記のしごき作用により常に皺のない展延
状態に保たれる。

第８図は二つの環状部材3a及び3bを相互の間の捩れな
く同期して回転させるための他の一つの実施例を示す印
刷ドラム部の斜視図である。この実施例に於ては、環状
部材3a及び3bにそれぞれ取付けられた環状歯車11a及び1
1bに軸26にて互いに連結されたピニオン25a及び25bが噛
合っており、これによって環状部材3aと3bの間の捩れの
ない同期回転が保証されるようになっている。勿論この
実施例に於ては、第４図の実施例に於て裏押しローラ２
の一方の端部に設けられた環状歯車12aは必要とされな
い。

本発明による輪転式孔版印刷装置に於ても、特願昭63
−28553号及び特願平１−47029号による先の提案になる
輪転式孔版印刷装置に於けると同じく、そのインキ通過
部を実質的に網材のみにて構成された印刷ドラムは、そ
の内部に供給されたインキを薄い網材の層よりなる周壁
部を経てその外面に沿って巻き付け装填された孔版原紙
の全域に対し容易に直接的に供給することができるの
で、印刷ドラムの周りに新しい孔版原紙が巻き付け装填
され、新たな孔版印刷が行われるときにも、一枚目の印
刷のときから十分なインキの供給が行われ、無駄な試し
刷りを重ねることなく孔版印刷を行うことができる。

また印刷ドラム１と裏押しローラ２の間の軸線間距離
を印刷ドラムの回転に同期して変化させる装置は必要と
されず、中押しローラ18を第１図に示す状態と第２図又
は第３図に示す状態との間で移動させる作動は、図示の
実施例に於ける如く軸20を僅かに回動させることによっ
て達成されるので、そのための駆動構造は極めて簡単で
済み、しかも中押しローラ18は軽量なものでよく、その
移動距離も極く小さいので、その作動は殆ど騒音を発生
することなく行われる。

しかも尚、本発明によれば、中押しローラ18は横木５
がその下方を通過するときにも押出し状態のままに保持
されてよいので、多数枚の印刷物を得るべく印刷シート
が連続して送られる時には、中押しローラ18を押出し位
置に保ったままで印刷が継続され、中押しローラの軸移
動に伴う振動や騒音は完全に回避される。

［発明の効果］ 上記の如く、本発明によれば、複数枚の印刷が連続し
て行われる時には裏押しローラ及び中押しローラの何れ
をもその作動位置に保ったままで印刷作動を連続して行
うことができ、輪転式孔版印刷装置の作動の大幅な静粛
化を達成することができる。

【図面の簡単な説明】

第１図〜第３図は本発明による輪転式孔版印刷装置の構
造の要部を三つの作動状態に於て解図的に示す側面図、
第４図は第１図〜第３図に示されている構造を含む印刷
装置をこれらの図にて右方より見たところを示す一部解
図的表示による側面図、第５図は本発明による印刷ドラ
ムに関する改良の要部を示す印刷ドラムの一部の斜視
図、第６図は本発明による輪転式孔版印刷装置に於て横
木が中押しローラの下方を通過する状態を示す解図、第
７図は本発明の要部の他の一つの実施例を示す第５図と
同様の図、第８図は印刷ドラムの両端部を構成する二つ
の環状部材の同期的回転を達成する他の一つの構成を示
す印刷ドラムの斜視図である。 １……印刷ドラム,2……裏押しローラ,3a、3b……環状
部材,4……網材,5……横木,5a……孔版原紙前縁取付装
置,6a、6b……環状軸部,7a、7b……軸受,8……枠体,9
a、9b……軸部,10a、10b……軸受,11a、11b、12a、12b
……環状歯車,13……駆動装置,14……溝,15……挾み領
域,16、17……ローラ,18……中押しローラ,19、20……
軸,21a、21b……アーム,22a、22b……軸受,23……梃,24
……リンク,25a、25b……ピニオン,26……軸,27a,27b…
…引張りコイルばね,28……ねじ,29a、29b……桁部材,3
0b……ラグ,31……ねじ,32b……板ばね,33……ねじ

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】二つの同径の環状部材とこれら二つの環状
   部材の間に延在し孔版原紙の前縁を保持する原紙取付装
   置を備えた横木と線材を織製、不織製又は編製してなる
   長方形展開形状を有する網材とを有し該網材がその長方
   形展開形状の両側縁に沿った帯状領域にて前記環状部材
   の各々の外周面上に自由に着座した状態にて円筒状に巻
   かれることにより孔版原紙を巻き付け装填するための多
   孔性円筒体が形成されている印刷ドラムと、前記印刷ド
   ラムと実質的に同径であり前記印刷ドラムの外周面に向
   かい合って配置され前記印刷ドラムとの間に印刷シート
   を挾んで送る印刷シート挾み領域を形成する裏押しロー
   ラと、前記印刷ドラム内にその前記多孔性円筒体の内周
   面にその一つの母線に沿って接触可能に配置された中押
   しローラとを有し、前記裏押しローラはその外周部の一
   部に前記印刷ドラムの前記横木と向かい合ったときこれ
   を受入れることができる溝を有し、前記印刷ドラムと前
   記裏押しローラとは前記横木を前記溝内に整合させるよ
   う互いに同期して互いに反対の方向に回転駆動されるよ
   うになっており、前記横木はその前記多孔性円筒体に向
   かい合った部分が該多孔性円筒体の円筒状輪郭より半径
   方向外方へ隔置されていることを特徴とする輪転式孔版
   印刷装置。