JP2844286B2 - 窒素酸化物検出素子およびその製造方法 - Google Patents

窒素酸化物検出素子およびその製造方法

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JP2844286B2 JP4307887A JP30788792A JP2844286B2 JP 2844286 B2 JP2844286 B2 JP 2844286B2 JP 4307887 A JP4307887 A JP 4307887A JP 30788792 A JP30788792 A JP 30788792A JP 2844286 B2 JP2844286 B2 JP 2844286B2
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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、例えば燃焼排ガス中や
大気中に存在する窒素酸化物(NOX )濃度を検出する
窒素酸化物検出素子およびその製造方法に関するもので
ある。
【0002】
【従来の技術】近年、産業活動の加速化に伴い、自動車
やボイラーなど多くの燃焼機関から排出される窒素酸化
物(NOX )は、酸性雨の原因として地球規模の環境破
壊の原因となっている。このため、NOX 排出規制は、
一層の強化が行われている。このNOX 排出規制を達成
するには、燃焼機関の改良や脱硝触媒の開発が必須であ
るが、同時にNOX 排出量のモニターや燃焼機器のフィ
ードバック制御を行うためのNOX 濃度測定手段の開発
が要請されている。
【0003】これまでNOX 濃度測定装置には、化学発
光法が用いられてきたが、装置が大型で高価であり、メ
ンテナンスに問題があった。また、金属酸化物半導体を
用いたセンサは、構造が簡単であり、応答性,保守性,
経済性に優れているという特長がある。
【0004】図23は、この種のNOX 濃度測定装置の
一例として金属酸化物半導体からなる焼結型の窒素酸化
物検出素子の構成を示す斜視図である。同図において、
51はセラミック製の絶縁チューブ、52はこの絶縁チ
ューブ51内に形成配置された螺線状のPtヒータコイ
ル、53はこの絶縁チューブ51の表面に形成されたS
n/Oの組成比2.0を有しかつ粒子径300〜600
Åの微粒子の集合体からなるSnO2 焼結体、54a,
54bはこのSnO2 焼結体53内に形成された一対の
Pt電極、55a,55bはその電極リード線である。
【0005】このように構成された窒素酸化物検出素子
は、Ptヒータコイル52を200〜500℃に加熱
し、高温度に保持させることによって可燃性ガス中で
は、表面の吸着酸素が酸化反応により取り除かれるの
で、酸素にトラップされていた電子が酸化錫に戻され、
キャリア濃度が大きくなるので、SnO2 焼結体53の
酸化錫粒子間の接合部の抵抗を減少させる。したがって
窒素酸化物検出素子の電気抵抗は減少し、大気中の可燃
性ガス濃度に応じた値が得られる。つまり、可燃性ガス
の濃度によって電気抵抗が変化することになる。
【0006】また、可燃性ガス中では、その影響で表面
空間電荷層が減少し、キャリアが多くなるので、電気抵
抗は減少する。また、酸化性ガス中では、その電気抵抗
は増加する。
【0007】また、図24は、この種のNOX 濃度測定
装置の他の例として金属酸化物半導体からなる薄膜型の
窒素酸化物検出素子の構成を示す斜視図である。同図に
おいて、61は表面粗さ約380Å(谷から山までの寸
法)のアルミナ基板、62a,62bはこのアルミナ基
板61の表面61aに形成された金電極、63はこの表
面61aに金電極62a,62b上に跨って形成された
酸素−錫の組成比(O/Sn)1.5〜1.95の酸化
錫薄膜であり、この酸化錫薄膜63は化学量論比2.0
に比べて酸素が不足するように調製されている。なお、
この酸化錫薄膜63は反応性RFスパッタリング法によ
り膜厚約1000Åの厚さで形成されている。
【0008】通常、RFスパッタリングにおいては、薄
膜の厚さと表面粗さとは密接な関係があり、表面粗さ
は、薄膜の厚さの40〜50%程度でなければならな
い。したがって表面粗さ300〜4000Åの基板に対
しては、600〜10000Åの酸化錫薄膜が形成され
ている。また、64はこのアルミナ基板61の背面側に
形成されたヒータ、65はこのヒータ64を加熱させる
直流電源、66は金電極62a,62b間に接続された
抵抗計である。
【0009】このように構成された窒素酸化物検出素子
は、大気中において、ヒータ64を150〜300℃に
加熱し、高温度に保持させることによって大気中の窒素
酸化物の濃度を測定する。この場合も窒素酸化物の濃度
で電気抵抗が変化する原理は、前述した焼結型の窒素酸
化物検出素子とほぼ同じである。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このよ
うに構成された従来の窒素酸化物検出素子は、以下に説
明するような問題があった。前述した図23に示す焼結
型の窒素酸化物検出素子では、SnO2 焼結体53が微
粒子の集合体から形成されているので、この集合体の中
までNO,N02 ガスが侵入するのに時間がかかり、応
答速度が遅くなる。また、このように構成された窒素酸
化物検出素子は、図25に示すように無通電状態で放置
された状態では、高抵抗化され、再通電されると、元の
抵抗レベルに戻って安定するのに長時間を要していた。
つまり無通電後の復帰特性が極めて悪いため、使用範囲
が制約されていた。また、前述した図24に示す薄膜型
の窒素酸化物検出素子では、酸化錫薄膜63を形成する
アルミナ基板61が表面粗さ約400Å(谷から山まで
の寸法)程度の表面が極めて滑らかな基板を必要とする
ことから、製造コストが高価となる。また、この酸化錫
薄膜63は600〜10000Å程度の比較的厚い膜厚
で形成されているので、応答速度が比較的遅くなるとと
もに無通電放置後、再通電し、元の抵抗レベルに戻るの
に若干時間がかかる。つまり、前述と同様に復帰特性に
問題があった。
【0011】したがって本発明は、前述した従来の課題
を解決するためになされたものであり、その目的は、窒
素酸化物に対する応答性が速く、かつ燃焼性ガスに影響
されることなく窒素酸化物の検出を可能とし、しかも低
コストで実現可能とした窒素酸化物検出素子およびその
製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】このような目的を達成す
るために本発明による窒素酸化物検出素子は、絶縁性基
板と、この絶縁性基板上に形成されかつ酸素−錫の組成
比1.5〜1.9を有する酸化錫薄膜と、この酸化錫薄
膜と接触しかつ互いに対向して形成された一対の金属電
極と、絶縁性基板の背面に形成されたヒータとを有して
構成されており、酸化錫薄膜は非晶質物質で形成され、
酸化錫薄膜の膜厚は50Å〜600Åである。また、本
発明による窒素酸化物検出素子の製造方法は、絶縁性基
板上にマイクロ波プラズマ化学気相成長法により非晶質
物質で形成された酸化錫薄膜を膜厚が50Å〜600Å
となるように形成する。
【0013】
【作用】本発明における酸化錫薄膜は、絶縁性基板上に
一様に連続して平坦かつ緻密にしかも密着性良く形成さ
れる。
【0014】
【実施例】以下、図面を用いて本発明の実施例を詳細に
説明する。図1は、本発明による窒素酸化物検出素子の
一実施例による構成を示す図であり、図1(a)は平面
図、図1(b)は図1(a)のB−B′線の断面図であ
る。同図において、1は絶縁性基板であり、この種の絶
縁性基板としては例えばアルミナ,セラミック,ステア
タイト,スピネル,サファイア,石英,ガラス,熱酸化
シリコンまたはSiO2 など動作時に後述する酸化錫膜
と反応しない絶縁体であれば良い。2はこの絶縁性基板
1の表面上にマイクロ波プラズマCVD法により形成さ
れた膜厚50〜600Åの酸化錫薄膜であり、この酸化
錫薄膜2は酸素−錫の組成比が化学量論組成比2.0に
比べて酸素不足の状態となる組成比1.5〜1.95、
好ましくは組成比1.75を有して形成されている。
【0015】また、3a,3bはこの酸化錫膜2の表面
上に金を蒸着またはスパッタリング法などにより膜厚約
0.5μmの厚さに被着されかつ互いに組み合わされて
形成された櫛歯状の金属電極である。なお、この金属電
極3a,3bは、動作時に酸化錫膜2および測定ガスと
反応しない例えば白金,ニッケル,銅,酸化ルテニウム
などの導電体の印刷,焼き付け,蒸着またはスパッタリ
ングなどで形成しても良い。4a,4bはそれぞれ一対
の金電極3a,3bと一体的に形成された電極端子であ
る。5はこの絶縁性基板1の背面側に形成されかつ酸化
錫膜2を200〜400℃に加熱する抵抗加熱方式のヒ
ータである。また、この絶縁性基板1の背面側には図示
されないが、加熱ヒータ5の温度測定用の熱電対または
測温抵抗体などが形成配置されている。
【0016】次にこのように構成された窒素酸化物検出
素子の製造方法を説明する前にその製造装置について説
明する。図2は、マイクロ波プラズマCVD装置の構成
を示す図である。同図において、11は反応室、12は
反応室11の排気用拡散ポンプ、13はロータリーポン
プ、14は前述した絶縁性基板1を搭載する試料台、1
5は絶縁性基板1を加熱させるヒータ、16は反応室1
1内に供給する原料としてのテトラメチルスズ((Sn
(CH34:TMT)を収容した試料管、17は流量
計、18は反応室11に結合されたプラズマ室、19は
周波数2.45GHzのマイクロ波を発生させるマイク
ロ波発生装置、20はプラズマ室18内にマイクロ波を
導入する導波管、21は導入窓、22は整合器、23は
パワーモニタ、24はプラズマ室18内に供給するアル
ゴン(Ar)を収容したボンベ、25はプラズマ室18
内に供給する酸素(O2 )を収容したボンベである。
【0017】次に窒素酸化物検出素子の製造方法につい
て説明する。窒素酸化物検出素子の製造方法では、図2
に示したマイクロ波プラズマCVD装置を用いてマイク
ロ波プラズマCVD法により調製する。まず、絶縁性基
板1には表面粗さ約3000Å(谷から山までの寸法)
のアルミナ基板を用いた。標準的な条件を、TMT分圧
0.005〜0.1Torr,O2 分圧0.01〜0.
2Torr,Ar分圧0.40Torr(一定),基板
温度約400℃,堆積時間1h,マイクロ波(周波数
2.45GHz)入射電力100〜400Wとし、パラ
メータを一つずつ変化させてアルミナ基板上に酸化錫薄
膜2を形成し、その影響を調べた。
【0018】ここでこの酸化錫薄膜2の膜厚の測定は、
エリプソメトリーにより行い、抵抗率の測定は、四端子
針抵抗測定器を用いた四端子法により行った。さらに形
成された酸化錫薄膜の構造および表面状態の分析には、
X線回折装置(XRD),X線光電子分光装置(XP
S),紫外可視分光光度計(UV−VIS),フーリエ
変換赤外分光装置(FT−IR)などを用いた。また、
ガス応答測定は、酸化錫薄膜2の表面上に一対の金属電
極3a,3bとして金を真空蒸着法により堆積し、膜厚
約0.5μmの櫛形状の金電極を形成し、この金電極間
の抵抗値を測定することにより行った。この結果、金電
極間の酸化錫薄膜2の抵抗値は、基板温度や放電ガス分
圧などの調製条件に依存して大きく変化する。
【0019】図3および図4は、前述した調製時の基板
温度を変化させたときの酸化錫薄膜2のそれぞれ膜厚お
よび抵抗率を示したものである。図3に示すように酸化
錫薄膜2の膜厚は、基板温度によって変化し、膜厚50
〜500Åの薄膜が得られた。また、酸化錫薄膜2は、
図4に示すように基板温度約300℃付近で急激に抵抗
が減少し、高い導電性を示す膜が得られた。また、この
酸化錫薄膜2の薄膜表面は、平滑かつ緻密であり、機械
的強度にも優れていることが判った。
【0020】また、XPSの結果より、酸素過剰雰囲気
で調製した酸化錫薄膜2の表面組成は、図5に示すよう
にSnOX (X=1.75)と、酸化錫の場合のX=2
よりも酸素不足となっていることが判った。また、O2
/TMT分圧比を変化させると、酸化錫薄膜2は、図6
に示すように酸素−錫(O/Sn)組成比が1.3〜
1.9の薄膜が得られ、O/Sn組成比がX=1.5以
下より小さい酸化錫薄膜は、絶縁性となり、窒素酸化物
検出素子として使用できないことが判った。また、TM
T分圧を変化させると、この酸化錫薄膜2のシート抵抗
は、図7に示すように室温で数KΩ/□〜無限大であ
り、酸化錫薄膜2の膜厚およびシート抵抗から抵抗率を
求めると、10-2Ω・cm〜無限大であった。
【0021】このような製造方法において、酸化錫薄膜
2をテトラメチルスズ((Sn(CH:TMT)
を原料としてマイクロ波プラズマCVD法により形成す
ることにより、酸化錫薄膜2は非晶質物質で形成され
る。このため、絶縁性基板1の表面粗さ(谷から山まで
の寸法)が大きくても酸化錫薄膜2が絶縁性基板1上に
均一にかつ連続的にしかも薄く堆積されるので、ステッ
プカバレッジの良い薄膜が得られる。つまり酸化錫薄膜
2の膜厚50〜600Åに対して表面粗さ(山−谷の寸
法)が10〜50000Åの範囲の比較的表面の粗い基
板を絶縁性基板1として使用することができる。したが
って表面が滑らか基板を用いる必要がなく、いずれの絶
縁性基板上にも形成でき、製造コストが安価となる。
【0022】また、このような製造方法において、酸化
錫薄膜2をテトラメチルスズ((Sn(CH34:TM
T)を原料としてマイクロ波プラズマCVD法により形
成することにより、非晶質物質の調製が可能となるとと
もに化学量論的に種々の組成の物質が調製できるので、
例えばO対Snが組成比1.5〜1.9のSnOX の調
製が可能となる。
【0023】また、マイクロ波プラズマCVD法により
形成した酸化錫薄膜2は、走査型電子顕微鏡(SEM)
により観察した結果、粒子などの大きな構造は全く見ら
れず、表面が極めて平滑で緻密であった。また、剥離強
度試験においても絶縁性基板1との密着性が極めて強固
であった。
【0024】また、図8〜図10は、本発明による窒素
酸化物検出素子の他の実施例による構成を示す図であ
り、それぞれ(a)は平面図,(b)はそのB−B′線
の断面図を示し、前述の図と同一部分には同一符号を付
してある。これらの図において、図8に示す構成では、
絶縁性基板1上に一対の櫛歯状金属電極3a,3bが形
成され、この櫛歯状金属電極3a,3bが形成された絶
縁性基板1上に酸化錫薄膜2が形成されている。また、
図9に示す構成では、一方の櫛歯状金属電極3aが絶縁
性基板1上に形成され、他方の櫛歯状金属電極3bが酸
化錫薄膜2上に形成されている。また、図10に示す構
成では、図8の構成において、酸化錫薄膜2上に透ガス
性金電極6が形成されている。
【0025】このように構成される窒素酸化物検出素子
においても、同様な効果が得られるとともに図10に示
す酸化錫薄膜2上に透ガス性金電極6を形成する構成で
は、金電極3bが完全に酸化錫薄膜2で覆われているた
め、測定雰囲気中での導電性物質の付着や測定雰囲気中
の化学物質による反応生成物の付着による金電極3bと
透ガス性金電極6との間の短絡による機能の劣化がなく
なる。つまり耐環境性が向上するなどの効果が得られ、
また、このような構成される窒素酸化物検出素子におい
ても、前述と同様な製造方法により形成することができ
る。
【0026】このように構成された窒素酸化物検出素子
を用いて各種のガスに対する応答性を測定した。NO
2 ,メタノール,エタノール,アセトンの各種ガスは流
通式ガス応答測定装置を用いて測定し、NO,N2O,
CO,CH4,C38,イソブタンなどは閉鎖系ガス応
答測定用チャンバーを用いて測定した。
【0027】窒素酸化物検出素子は、その背面側のヒー
タ5に直流電源により電圧を印加して加熱し、応答特性
を測定した。図11はNO2 が15ppm,動作温度3
00℃の結果を示したもである。同図に示すように10
分毎にNO2 15ppmと空気とを切り替えた。この結
果、NO2 に対して抵抗値が増加し、空気に切り替える
と、元の抵抗値に回復する可逆的な反応を示した。
【0028】酸化性ガスに対しては、図12に示すよう
にNO2 に対して高い感度(Rg/Ra:Rg,Raは
それぞれNO2 中,空気中での抵抗)を示した。NO2
に対する選択性が良好であり、NO2 センサとして有望
であると考えられる。
【0029】図13は、NO2 15ppmに対する感度
の動作温度依存性を示したものである。同図に示すよう
に動作温度が上昇するに伴って感度(Rg/Ra:R
g,RaはそれぞれNO2 中,空気中での抵抗)が減少
し、約400℃を超えると、ほとんど感度が得られな
い。
【0030】図14は、動作温度を室温から200℃ま
で変化させた時のNO2 15ppmに対する応答性を示
したものである。同図に示すように動作温度が約200
℃より低い温度では空気に切り替えたときに元の値に回
復しない。したがってこの窒素酸化物検出素子の動作
は、200〜400℃の範囲である。
【0031】図15は、NO2 15ppmに対する応答
時間の動作温度依存性を示したものである。前述した流
通式ガス応答測定装置において、測定系のガス置換に1
分程度の時間を要することなどを考慮すると、同図に示
すように約300℃以上で応答時間が一定となり、極め
て速い応答速度が得られる。応答速度,感度、再現性,
安定性から判断してNO2 検出の最適動作温度は約30
0℃付近であると考えられる。
【0032】図16は、動作温度300℃におけるNO
2 に対する感度の濃度依存性を示したものである。同図
に示すようにNO2 が最小濃度2.5ppmでも感度3
が得られ、希薄な濃度のNO2 の検出も可能である。
【0033】図17は、動作温度300℃におけるNO
に対する感度の濃度依存性を示したものである。同図に
示すようにNOが数ppm程度の極めて希薄な濃度でも
感度(Rg/Ra:Rg,RaはそれぞれNO中,空気
中での抵抗)が得られ、希薄な濃度に対するNOの検出
に極めて優れている。
【0034】図18は、動作温度300℃におけるH2
に対する感度の濃度依存性を示したものである。同図に
示すようにH2 は高濃度領域では感度(Ra/Rg:R
a,Rgはそれぞれ空気中,H2 中での抵抗)が得られ
るが、約100ppm以下の希薄なガスでは極めて僅か
な感度しか示さなかった。
【0035】図19は、動作温度300℃におけるCO
に対する感度の濃度依存性を示したものである。同図に
示すようにCOは高濃度領域でも極めて僅かな感度しか
示さなかった。
【0036】図20は、動作温度300℃におけるメタ
ノールに対する感度の濃度依存性を示したものである。
同図に示すようにメタノールは高濃度領域では感度が得
られるが、約100ppm以下の希薄なガスでは極めて
僅かな感度しか示さなかった。
【0037】また、エタノール,アセトンについても同
様に測定したところ、高濃度領域では感度が得られる
が、約100ppm以下の希薄なガスでは極めて僅かな
感度しか示さなかった。
【0038】また、N2O,CH4,C38,イソブタン
に対しては動作温度300℃では、全く感度を示さなか
った。
【0039】図21は、動作温度300℃におけるNO
2 検知において、H2 ,CO(各50ppm)が共存す
る時の影響を閉鎖系ガス応答装置を用いて調べた結果を
示したものである。同図に示すようにH2 ,COの影響
は少なく、NO2 に対して選択的に応答することが確認
された。
【0040】図22は、N2 中にNO2 (15ppm)
が共存するときの影響を流通式ガス応答装置を用いて調
べた結果を示したものである。同図に示すように動作温
度300℃において無酸素雰囲気中でもNO2 に対して
感度が得られた。
【0041】通常、大気中に存在する窒素酸化物は、N
O,NO2,N2O,N23,N24,N25などが知ら
れているが、化石燃料などの燃焼によって生成されるの
は殆どがNO,NO2 である。したがってこのように構
成された窒素酸化物検出素子によれば、NO,NO2
は感度が高く、H2 ,CO,メタノール,エタノール,
アセトンでは高濃度でのみ反応し、100ppm以下で
は僅かな感度しか得られない。また、H2O,CH4,C
38,イソブタンでは全く感度を示さないことになる。
【0042】したがって化石燃料の燃焼による不完全燃
焼により発生したCOの影響を全く受けずにNO,NO
2 のみを高い感度で検出することができる。また、この
ように構成された窒素検出検出素子は、化石燃料などの
燃焼によって生成されるのは殆どがNO,NO2 である
ことから、化石燃料の燃焼によって発生する窒素酸化物
の全窒素酸化物量の測定に適用できる。
【0043】通常、窒素酸化物検出素子で要求される濃
度測定範囲は、大気中の濃度測定では1ppb〜10p
pm,燃焼排気ガスの濃度測定では1ppm〜1%であ
るが、前述のように構成された窒素酸化物検出素子によ
れば、1〜1000ppmの測定範囲で十分な検出感度
が得られた。
【0044】なお、前述した実施例においては、酸化錫
薄膜の膜厚を50〜600Åの範囲とした場合について
説明したが、この膜厚が50Å未満では絶縁性となり、
使用することができず、また、膜厚が600Åを超える
と、膜厚を薄くする意味がない。したがって酸化錫薄膜
を50〜600Åの範囲に形成することによって応答性
が速く、性能が極めて良好となる。
【0045】また、前述した実施例においては、酸化錫
薄膜をテトラメチルスズ(TMT)を原料としてマイク
ロ波プラズマCVD法により形成した場合について説明
したが、本発明はこのマイクロ波プラズマCVD法に限
定されるものではなく、酸素不足の酸化錫薄膜が形成さ
れるいずれのCVD法を用いて形成しても良いことは言
うまでもない。
【0046】
【発明の効果】以上、説明したように本発明による窒素
酸化物検出素子は、絶縁性基板と、この絶縁性基板上に
形成されかつ酸素−錫の組成比1.5〜1.9を有する
酸化錫薄膜と、この酸化錫薄膜と接触しかつ互いに対向
して形成された一対の金属電極と、絶縁性基板の背面に
形成されたヒータとから構成され、酸化錫薄膜を非晶質
物質で形成し、酸化錫薄膜の膜厚を50〜600Åとす
る。これにより、窒素酸化物に対する応答性が速くかつ
可燃性ガスおよび不完全燃焼で発生したガスなどに影響
されることなく、窒素酸化物を高感度で検出することが
できるなどの極めて優れた効果が得られる。さらに、比
較的表面の粗い絶縁性基板を使用することができるの
で、窒素酸化物検出素子が低コストで得られるなどの極
めて優れた効果を有する。また、このように構成された
窒素酸化物検出素子は、低空気比燃焼,排ガス再循環,
水蒸気噴射などにおける窒素酸化物量の抑制装置に適用
でき、その効果は極めて大である。また、本発明による
製造方法によれは、酸化錫薄膜の形成にマイクロ波プラ
ズマ化学気相成長法を用いることによって、非晶質物質
を調整できる。これにより、表面粗さが比較的大きい絶
縁性基板上に酸化錫薄膜を滑らかにかつ薄く形成できる
ので、高感度の窒素酸化物検出素子が低コストで得られ
るなどの極めて優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による窒素酸化物検出素子の一実施例に
よる構成を示す図である。
【図2】本発明による窒素酸化物検出素子の製造方法を
説明するマイクロ波プラズマCVD装置の構成を示す図
である。
【図3】本発明に係わる酸化錫薄膜の膜厚の基板温度依
存性を示す図である。
【図4】本発明に係わる酸化錫薄膜の抵抗率の基板温度
依存性を示す図である。
【図5】本発明に係わる酸化錫薄膜のO/Sn比の基板
温度依存性を示す図である。
【図6】本発明に係わる酸化錫薄膜のO2 /TMT分圧
比に対するO/Sn比の変化を示す図である。
【図7】本発明に係わる酸化錫薄膜のシート抵抗・膜厚
のTMT分圧依存性を示す図である。
【図8】本発明による窒素酸化物検出素子の他の実施例
による構成を示す図である。
【図9】本発明による窒素酸化物検出素子のさらに他の
実施例による構成を示す図である。
【図10】本発明による窒素酸化物検出素子の他の実施
例による構成を示す図である。
【図11】本発明に係わる酸化錫薄膜のNO2 に対する
応答特性を示す図である。
【図12】本発明に係わる酸化錫薄膜のNO,NO2
対する感度の濃度依存性を示す図である。
【図13】本発明に係わる酸化錫薄膜のNO2 に対する
感度の動作温度依存性を示す図である。
【図14】本発明に係わる酸化錫薄膜のNO2 に対する
応答の動作温度依存性を示す図である。
【図15】本発明に係わる酸化錫薄膜のNO2 に対する
90%到達応答時間の動作温度依存性を示す図である。
【図16】本発明に係わる酸化錫薄膜のNO2に対する
感度の濃度依存性を示す図である。
【図17】本発明に係わる酸化錫薄膜のNOに対する感
度の濃度依存性を示す図である。
【図18】本発明に係わる酸化錫薄膜のH2 に対する感
度の濃度依存性を示す図である。
【図19】本発明に係わる酸化錫薄膜のCOに対する感
度の濃度依存性を示す図である。
【図20】本発明に係わる酸化錫薄膜のメタノールに対
する感度の濃度依存性を示す図である。
【図21】本発明に係わる酸化錫薄膜のNO2,H2,C
Oに対する応答特性を示す図である。
【図22】本発明に係わる酸化錫薄膜のN2 中でのNO
2 に対する応答特性を示す図である。
【図23】従来のNOX 濃度測定装置の構成の一例を示
す斜視図である。
【図24】従来のNOX 濃度測定装置の構成の他の例を
示す斜視図である。
【図25】図23に示すNOX 濃度測定装置のNO,N
2 による抵抗変化を示す図である。
【符号の説明】
1 絶縁性基板 2 酸化錫薄膜 3a 金属電極 3b 金属電極 4a 電極端子 4b 電極端子 5 加熱ヒータ 6 透ガス性金電極
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭62−222153(JP,A) 特開 平2−98658(JP,A) 米国特許4169369(US,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) G01N 27/12

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 絶縁性基板と、 前記絶縁性基板上に形成されかつ酸素−錫の組成比1.
    5〜1.9を有する酸化錫薄膜と、 前記酸化錫薄膜と接触しかつ互いに対向して形成された
    一対の金属電極と、 前記絶縁性基板の背面に形成されたヒータとを備えた
    素酸化物検出素子において、 前記酸化錫薄膜は、非晶質物質で形成され、 前記酸化錫薄膜の膜厚は、50Å〜600Åである こと
    を特徴とする窒素酸化物検出素子。
  2. 【請求項2】 絶縁性基板と、 前記絶縁性基板上に形成されかつ酸素−錫の組成比1.
    5〜1.9を有する酸化錫薄膜と、 前記酸化錫薄膜と接触しかつ互いに対向して形成された
    一対の金属電極と、 前記絶縁性基板の背面に形成されたヒータとを備えた窒
    素酸化物検出素子の製造方法において、 前記絶縁性基板上にマイクロ波プラズマ化学気相成長法
    により非晶質物質で形成された前記酸化錫薄膜を膜厚が
    50Å〜600Åとなるように形成することを特徴とす
    る窒素酸化物検出素子の製造方法。
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