JP2833753B2 - トナーバインダー用架橋型ポリエステル樹脂 - Google Patents

トナーバインダー用架橋型ポリエステル樹脂

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JP2833753B2 JP63095809A JP9580988A JP2833753B2 JP 2833753 B2 JP2833753 B2 JP 2833753B2 JP 63095809 A JP63095809 A JP 63095809A JP 9580988 A JP9580988 A JP 9580988A JP 2833753 B2 JP2833753 B2 JP 2833753B2
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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は電子写真法、静電印刷法などによる画像形成
プロセスにおいて、形成された静電荷像や導電性像など
の電子性潜像を現像するために用いられるトナーの形成
に用いるバインダーとして好適な樹脂に関する。
[従来の技術] 記録すべき画像に対応する静電荷像や導電性像等の電
子性潜像をトナーによって可視化して得たトナー像を紙
や各種フイルム上に転写させ、定着させる過程を有す
る、いわゆる電子写真法や静電印刷法などの画像形成方
法は、高速処理に適し、定着安定性の良い画像が容易に
得られ、また用いる装置の操作性も良いという利点を有
し、複写機、レーザープリンター等の各種機器における
画像形成に採用されている。
例えば、電子写真法による画像形成においては、光導
電性感光体より成る潜像形成用のローラー表面の像露
光、帯電により形成された電子性潜像がトナーによって
現像され、更に得られたトナー像が紙等に転写され、か
つ加熱下での加圧により転写トナー像が紙上に定着され
て画像が形成される。
なお、トナー像の定着には、熱効率が良く、高速処理
や装置のコンパクト化に容易に対応できる構成を有する
熱ローラーを用いた方式が広く採用されている。
[発明が解決しようとする課題] 複写機や各種プリンター等においては、作業の能率化
を図る上から、より高速での画像形成処理が強く望まれ
ており、その高速化に必要な種々の検討がなされてい
る。
上述したような電子性潜像の形成過程を含む画像形成
方法における高速処理にとって重要な課題の1つにトナ
ー像の定着段階での高速化があり、そのためには、用い
る装置の高速駆動性と、トナーの紙等への高速定着性が
要求とされる。
定着用装置の高速駆動性については、従来より用いら
れている熱ローラー等を用いた定着装置によって十分対
応可能であるが、低温定着性に優れ、より高速での定着
処理に十分対応でき、しかもトナーとしての良好な特性
を有するトナーは未だ知られていないのが現状である。
例えば、より低温での定着が可能となるように軟化点
の低いバインダーを用いて形成したトナーを使用するこ
とにより、熱ローラー等の加熱・加圧手段とトナー像と
の接触処理時間を短縮して、より高速での処理が可能と
なる。
しかしながら、従来より用いられている線状重合体バ
インダーの場合、一般的に、その軟化点を低下させると
該バインダーを含むトナーの紙等への接着性は低下する
傾向にあり、良好な高速定着性が得られない。
従って、そのようなトナーの定着処理時に熱ローラー
等の表面にトナーが移ってそこに残存し、次に送られて
くる紙等を汚す現象、いわゆるオフセットが生じ易くな
る。
一方、オフセットの防止という観点から、エーテル化
ビスフェノールAとジカルボン酸成分を反応させて、線
状ポリエステルを得た後、該線状ポリエステルに3価以
上の単量体成分、例えば無水トリメリット酸を加え、架
橋構造を形成させて得られる架橋型ポリエステルをバイ
ンダーとして用いることによって非オフセット性に優れ
たトナーが得られることが、特公昭61−59333号公報に
よって知られている。
しかしながら、このようなトナーは、非オフセット性
に選れているもののバインダーの軟化点が比較的高いた
めに、その高速定着性能は必ずしも良好とはいえない。
例えば、このようなトナーを用いて例えば定着速度が
50枚/分程度以上の高速定着を連続して行った場合に、
トナーの加熱が不十分となり、トナー像に良好な定着強
度を得にくくなる。
そこで、良好な非オフセット性を維持しつつ低温定着
性能を改善するために樹脂の軟化点を下げる目的で長鎖
脂肪族炭化水素単位を導入した架橋型ポリエステルが特
開昭62−127751号公報に開示されている。ところが、こ
のような構成を有するポリエステルでは、そのガラス転
移点(Tg)が過度に低くなる傾向にあり、そのようなポ
リエステルをバインダーとして用いたトナーは、その保
存中にトナー粒子同士が凝集するブロッキングを起し易
く、貯蔵安定性に劣るという問題を有している。
本発明者らは、以上に述べたようなトナーにおける問
題点を解決し、高速画像形成に必要な高速定着に十分対
応できるトナーを提供すべく種々の検討を行なった結
果、加熱による定着方式に用いられるトナーの低温定着
性にとって重要な因子は、軟化点が一義的なものではな
くむしろ軟化・溶融時のトナーの流動性が重要であると
の知見を得るに至った。
そこで、この新たな知見に基づいてトナーバインダー
用の樹脂の構成について更に検討を重ねた結果、トナー
に良好な低温定着性を得るのに必要な十分に低い軟化点
と、軟化・溶融時の流動性とを有し、かつそのTgをトナ
ーの良好な保存安定性を得るのに必要な水準に容易に維
持し得る樹脂の構成を見い出し、本発明を完成した。
本発明の目的は、低温定着性及び保存安定性に優れ、
より高速での加熱定着に十分対応できるトナーの形成に
用いるバインダーとして好適な樹脂を提供することにあ
る。
[課題を解決するための手段] 本発明のトナーバインダー用樹脂は、構成単位とし
て、モノカルボン酸単位、ジカルボン酸単位、芳香
族ジオール単位、アルキレンジオール単位、3価以
上の多価カルボン酸単位及び3価以上の多価アルコー
ル単位の各単位を含むことができる。
これらの各単位のうち、構成単位、、及びと
からなる群より選択された1種以上とが樹脂中に少なく
とも含まれ、構成単位及びは必要に応じて追加され
る。
各構成単位の含有量は、樹脂に含まれる全酸成分単位
(++)に対して、以下の範囲とされる。
a)モノジカルボン酸単位 ……0〜20モル% b)芳香族ジオール単位 ……0〜80モル% c)アルキレンジオール単位 ……30モル%以上 d)多価カルボン酸単位及び多価アルコール単位か
らなる群より選らばれた1種以上 ……1〜40モル% 上記構成を有する本発明の架橋型ポリエステル樹脂
は、145℃以下の軟化点、30℃〜68℃のガラス転移点(T
g)及び3×10-4〜300×104ml/秒の流れ値を有し、該樹
脂を用いることにより低温定着性及び保存安定性に優れ
たトナーを形成できる。
すなわち、上記構成を有する本発明のトナーバインダ
ー用樹脂は、架橋構造を有し、すなわち非線状ポリエス
テルであるため、該樹脂を用いたトナーは軟化点が低い
にも拘わらず優れた非オフセット性を有し、更に、該樹
脂が軟化・溶融時における流動性に優れるため、そのTg
が以下に述べるようにトナーの保存安定性を確保するた
めに高く設定されているにも拘らず、該樹脂を用いたト
ナーは紙や各種フィルム等に対する付着・定着性に優れ
るという特徴を有する。
例えば、本発明のトナーバインダー用樹脂は、同一の
定着性を有する従来のバインダーに対して、より高い
を有することができるため、本発明の樹脂を用いること
によりブロッキングの起きにくい保存安定性に極めて優
れたトナーを得ることができる。
以下、本発明のトナーバインダー用樹脂の構成につい
てさらに詳細に説明する。
なお、以下の説明にける「カルボン酸成分」とは、エ
ステル化反応もしくはエステル交換反応によりエステル
のカルボン酸単位を構成できる化合物の総称であり、例
えば、カルボン酸、カルボン酸無水物、カルボン酸のア
ルキルエステル等が含まれる。また、「アルコール成
分」とは、エステル化反応もしくはエステル交換反応に
よりエステルのアルコール単位(フェノール化合物から
なる基を含む)を形成できる化合物の総称であり、例え
ばアルコール化合物、フェノール化合物などが含まれ
る。
本発明のトナーバインダー用樹脂に必要に応じて導入
されるモノカルボン酸単位とは、1価のカルボン酸成
分がアルコール成分と反応して生じた単位を言い、次式
(1)で示されるものである。
R1−CO− (1) (但し、R1は炭化水素残基である。) モノカルボン酸単位は、例えば安息香酸、ナフタレ
ンカルボン酸、サリチル酸、4−メチル安息香酸、3−
メチル安息香酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、オクタン
酸、デカン酸及びドデカン酸等のモノカルボン酸、これ
らのモノカルボン酸のアルキルエステルなどのモノカル
ボン酸成分の1種以上を、アルコール成分と反応させる
ことによってポリエステル末端に導入することが可能で
ある。
モノカルボン酸成分の使用量は、モノカルボン酸単位
の所望のポリエステル中への導入量に応じて決定すれ
ば良いが、その使用量が多すぎるとポリエステル末端が
過量のモノカルボン酸によって封止されて、良好な重縮
合反応の進行が妨げられるようになるので好ましくな
い。従って、これらモノカルボン酸成分の使用量は、全
酸成分単位(++)に対してモノカルボン酸単位
が20モル%以下となるように設定するのが望ましい。
なお、モノカルボン酸のアルキルエステルとしては、
炭素数6以下のアルキル基を有するエステルがエステル
交換速度が大きい点で好ましく、炭素数3以下のアルキ
ル基を有するエステルが好適である。
更に、モノカルボン酸単位は、架橋反応の速度を調
節する必要がある場合に導入すると良く、その際の樹脂
中への導入割合は、全酸成分単位に対して5〜15モル%
以下とするのがより好ましい。
また、モノカルボン酸単位としては、安息香酸から
得られる次式(2)で示されるカルボン酸単位が、得ら
れるポリエステル樹脂のTgを維持し、軟化点を下げる効
果を有する点から有用である。
本発明のトナーバインダー用樹脂の必須構成単位であ
るジカルボン酸単位とは、ジカルボン酸成分がアルコ
ール成分と反応して生じた単位であり次式(3)で示さ
れるものである。
(R2OCOjR3CO′ (3) (但し、j,j′は整数であり、またj+j′=2、j≧
0、j′≧1であり、更にR3は炭化水素残基、R2はアル
キル基、好ましくは炭素数6以下のアルキル基または水
素を表わす。) このジカルボン酸単位は、例えばテレフタル酸、イ
ソフタル酸、オルトフタル酸、シクロヘキサンジカルボ
ン酸、3,5−トルエンジカルボン酸、2,4−トルエンジカ
ルボン酸、2,5−トルエンジカルボン酸、アジピン酸、
セバシン酸、グルタル酸などのジカルボン酸、これらの
酸無水物及びこれらのアルキルエステルなどのジカルボ
ン酸成分の1種以上を、アルコール成分と反応させるこ
とによってポリエステル中へ導入することができる。
なお、ジカルボン酸成分としてジカルボン酸アルキル
エステルを用いる場合には、該アルキルエステルは、炭
素数6以下の低級アルキルエステルが前記モノカルボン
酸のアルキルエステルの場合と同様の点から好ましい。
また、上記ジカルボン酸成分の中では、テレフタル酸
及びイソフタル酸由来の単位(次式(4)で示されるテ
レフタル酸単位及び次式(5)で表わされるイソフタル
酸単位)は、その導入により得られるポリエステルの軟
化点を効率良く低下させることができるので、特に好適
である。
本発明の樹脂がこれらテレフタル酸単位及びイソフタ
ル酸単位を有する場合のこれらの含有割合は、Tgに対す
る影響も考慮して、テレフタル酸単位が全ジカルボン酸
単位に対して40モル%以下、イソフタル酸単位が全ジカ
ルボン酸単位に対して60モル%以下であるのが好まし
い。
なぜならば、テレフタル酸単位が過小でイソフタル酸
単位が過大となれば樹脂のTgが低下する傾向にあり、そ
のような樹脂をバインダーとしたトナーの保存安定性が
低下するので好ましくない。
本発明のトナーバインダー用樹脂に必要に応じて導入
される芳香族ジオール単位とはアルコール成分として
の芳香族ジオールがカルボン酸成分と反応して生じた単
位を言い次式(6)で示される。
(HOkR4′ (6) (但し、k、k′は整数であり、またk+k′=2、k
≧0、k′≧1であり、更にR4は芳香族化合物残基を表
わす。) この芳香族ジオール単位は、例えば、2,2−ビス
(4′−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノー
ルA)のプロピレンオキシド付加物であるポリオキシプ
ロピレン(n)−2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニ
ル)プロパン、あるいは2,2−ビス(4′−ヒドロキシ
フェニル)プロパンのエチレンオキシド付加物であるポ
リオキシエチレン(n)−2,2−ビス(4′−ヒドロキ
シフェニル)プロパンなどのアルコール成分としての芳
香族ジオール類の1種以上をカルボン酸成分と反応させ
ることによってポリエステル中に導入でき、その導入に
よりポリエステルの軟化点を低下させることができる。
これらの中でポリオキシプロピレン(n)−2,2−ビ
ス(4′−ヒドロキシフェニル)プロパンは、Tgを向上
させ、かつ軟化点を低下させる効果を顕著に有するので
好適であり、なかでもポリエステル合成の際の反応の制
御性、得られる樹脂のTgの向上、軟化点の低下等の特性
における改質効果の点から、2≦n≦4である、すなわ
ちビスフェノールAの1モルに対してプロピレンオキシ
ドを平均2〜4モル%の範囲で付加させた化合物の重合
体が好ましい。
一方、芳香族ジオール単位を導入するための芳香族
ジオール成分を過大に使用すると、ポリエステルの合成
における反応性が極端に低下するので、その使用に当っ
ての量は、芳香族ジオール単位が全酸成分単位(+
+)に対し80モル%以下の範囲でポリエステル中へ
導入されるように調整するのが望ましい。
本発明のトナーバインダー用樹脂の必須構成単位であ
るアルキレンジオール単位とは、アルコール成分とし
てのアルキレンジオール成分とカルボン酸成分との反応
から得られる単位であり、次式(7)で示されるもので
ある。
(HO1R5′ (7) (但し、1+1′=2、1≧0、1′≧1であり、R5
非芳香族炭化水素残基を表わす。) このアルキレンジオール単位は、例えば、エチレン
グリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジ
オール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、
1,2−ヘキサンジオール、1,2−ドデカンジオール、ネオ
ペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノー
ル、水素化ビスフェノールA、ジエチレングリコール、
トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール及び
ポリテトラメチレンエーテルグリコール等のグリコール
類などからなるアルコール成分としてのアルキレンジオ
ール成分の1種以上をカルボン酸成分と反応させること
によってポリエステル中に導入することができる。
このアルキレンジオール単位は、ポリエステル中
に、その全酸成分単位(++)に対して30モル%
以上、好ましくは50モル%以上含まれるのが反応性の点
で望ましい。
本発明のトナーバインダー用樹脂は、3価以上の多価
カルボン酸単位及び3価以上の多価アルコール単位
からなる群より選択された1種以上を必須構成単位とし
て更に含む。
3価以上の多価カルボン酸単位とは、カルボン酸成
分としての3価以上の多価カルボン酸成分をアルコール
成分と反応させて生じた単位を言い次式(9)で示され
る。
(R6OCOnR7CO′ (9) (但し、n、n′は整数、n+n′≧3、n≧0、n′
≧1であり、R6はアルキル基、好ましくは炭化水素6以
下のアルキル基または水素を、R7は、炭化水素残基を表
わす。) この3価以上の多価カルボン酸単位は、例えば、1,
2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカ
ルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、2,
5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレント
リカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−
ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−
メチル−2−メチレンカルボキシルプロパン、テトラ
(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタン
テトラカルボン酸等の多価カルボン酸;これらの酸無水
物;及びこれらのアルキルエステルからなる多価カルボ
ン酸成分の1種以上と、アルコール成分とを反応させる
ことによってポリエステル中に導入することができる。
なお、多価カルボン酸成分として多価カルボン酸のア
ルキルエステルを用いる場合には、炭素数6以下の低級
アルキルエスエルが前述のモノカルボン酸のアルキルエ
ステルの場合を同様の点から望ましい。
一方、3価以上の多価アルコール単位とは、アルコ
ール成分としての3価以上の多価アルコール成分がカル
ボン酸成分と反応して生じた単位を言い次式(8)で示
される。
(HOmR8′ (8) (但し、m、m′は整数、m+m′≧3、m≧0、m′
≧1であり、R6は炭化水素残基を表わす。) この多価アルコール単位は、例えば、ソルビトー
ル、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、
ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリ
ペンタエリスリトール、ショ糖、1,2,4−ブタントリオ
ール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2
−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブ
タントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロー
ルプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼンな
どの3価以上のアルコール成分の1種以上をカルボン酸
成分と反応させることによってポリエステル中に導入す
ることが可能である。
これらの3価以上のカルボン酸成分及び/または3価
以上のアルコール成分由来の単位は、得られるポリエス
テルの架橋構造を構成し、主にトナーの非オフセット性
の向上に寄与する。
これらの総量(+)は、全酸成分単位(++
)に対して好ましくは1〜40モル%、より好ましくは
1〜30モル%となるように導入される。
すなわち、これらの単位の含有率が、全酸成分単位
(++)に対して40モル%以上であると、ポリエ
ステル合成の際における反応の制御が難しく、また1モ
ル%以下の範囲においては十分な架橋構造が得られずオ
フセットが生じ易くなるからである。
なお、多価カルボン酸単位導入用の多価カルボン酸
成分としては、無水トリメリット酸またはそのメチルエ
ステルが、下記式(10)で示される単位の導入に好適で
あり、かつ工業上利用し易く、しかもTgの向上に効果的
である点で特に有用である。
無水トリメリット酸やそのメチルエステルを用いる場
合には、反応性の面からこれらに由来の単位がポリエス
テル中の全酸成分単位(++)に対して5モル〜
40モル%の割合で導入されるように使用するのが好まし
い。
一方、多価アルコール単位導入用の多価アルコール
成分としては、ペンタエリスリトール、1,1,1−トリメ
チロールプロパン、グリセリンはそれぞれ、下記式(1
0)〜(11)で表わさる単位のポリエステル中への導入
に好適であり、かつ工業上利用し易く、しかも反応性に
優れる点で有用である。
これらを用いる場合の、その使用量は、得られるポリ
エステルのTgに対する配慮及び反応の制御の容易性など
の観点から、上記式(10)〜(11)単位の1種以上の総
量が、全酸成分単位(++)に対して1モル〜30
モル%含まれるよう使用するのが望ましい。
なお、本発明のトナーバインダー用樹脂は、前記構成
単位〜以外に、必要に応じて種々の構成単位を含む
ことができる。
例えば、ジアミン、モノアミン、ハロゲン化カルボン
酸、フォスフェート類、シリケート類等が挙げられる。
以上の構成単位を有する本発明のポリエステル樹脂は
架橋型構造を有するので、該ポリエステル樹脂を用いて
形成したトナーは、線状型樹脂をバインダーとして用い
たトナーに対して熱ローラー定着での非オフセット性に
優れている。
なお、本発明のポリエステルの架橋化の程度は、合成
時の反応機の撹拌トルク又は撹拌動力によって決定さ
れ、所望の架橋状態を有するかどうかは、該樹脂を用い
たトナーの高温側オフセットを調べることにより確認で
きる。
本発明の架橋型ポリエステル樹脂は、上記の各構成単
位を形成できる成分を、上述した各構成単位の含有割合
が得られるように配合して用い、通常のポリエステル合
成法、つまり酸成分とアルコール成分をエステル化及び
/またはエステル交換反応させた後、必要に応じた触媒
の存在下で、生成する低沸点のジオールを真空下または
チッ素気流下で系外へ除去しながら重縮合及び架橋化反
応を行なわせ、反応系のゲル化点到達以降に反応系の粘
度が上昇し、撹拌トルク又は撹拌動力が所定の値となっ
た時点で反応を停止させることによって合成できる。
しかしながら、本発明の架橋型ポリエステル樹脂を合
成する際に用いる方法については特に限定されるもので
はなく、種々の方法を利用し得る。例えば、本発明者ら
による特願昭62−4654号明細書に記載の手法(エステル
化又はエステル交換反応後、触媒の存在下に150mmHg
下の減圧下でジオールを系外に留去することにより架橋
状態を形成させた後、減圧を解除して反応を停止させる
方法)を採用し、極めて合理的かつ安定的に本発明の架
橋型ポリエステル樹脂を得ることができる。
本発明の架橋型ポリエステル樹脂は、以下に詳述する
特性を有する。
本発明の架橋型ポリエステル樹脂は、30℃以上のTg
有し、該樹脂を用いたトナーはブロッキングを生じにく
く保存安定性に優れる。
すなわち、トナー用バインダーのTgが30℃に満たない
場合には、トナーのブロッキングが生じ易くなり、実用
上の貯蔵安定性が得られない。
なお、本発明の架橋型ポリエステル樹脂のTgは、68℃
以下であることが好ましい。すなわち、ポリエステルの
Tgを68℃を越えるように設定すると、その軟化点がトナ
ーの低温定着性を得るのに必要な限度を越えてしまう。
一方、本発明の架橋型ポリエステル樹脂は、加熱定着
処理における、より低温での熱効率の良い定着や高速定
着に実用上十分に対応可能な145℃以下の軟化点を有す
る。
更に、本発明の樹脂の軟化・溶融時の流動性の指標と
なる流れ値は3×10-4ml/秒以上とされており、該樹脂
をバインダーとして用いたトナーは、軟化・溶融時の紙
等への付着・定着性に優れる。
すなわち、上述のように該樹脂が高いTg及び低い軟化
点を有していても、該樹脂をバインダーとして用いたト
ナーは、軟化・溶融時にその紙等の表面層と接触する部
分が該表面層の空隙中へ容易に侵入し、そこにしかっり
と付着でき、しかもトナーの定着の際の加熱温度がその
軟化点よりかなり高く設定されている場合でも、トナー
の良好な付着・定着性が得られる。
なお、該樹脂の流れ値はより高いほうが好ましいが30
0×10-4ml/秒を越えると、該樹脂を用いたトナーにおい
てオフセット現象が見られるようになるので好ましくな
い。
本発明において、樹脂のTgはDSC法(昇温速度は5℃/
min)により、軟化点は1mmφ×1mmのノズルを有するフ
ローテスター(CFT−500、島津製作所製)を用いて、荷
重30kg、昇温速度3℃/分の等速昇温下での測定におい
て1gのサンプルの1/2が流出したときの温度を計測する
方法によりそれぞれ測定されるものである。
更に、樹脂の流れ値は、上記フローテスターに1mmφ
×10mmのノズルを用い、該ノズルから150℃、荷重10kg
の条件下で樹脂を押し出した際の軟化樹脂の流動速度を
測定することにより求めたものである。
〔実施例〕
以下、実施例及び比較例により本発明を更に具体的に
説明する。
実施例1〜4 3価以上のカルボン酸成分、ジカルボン酸成分、芳香
族ジオール成分及びエチレングリコールより選ばれた単
量体を蒸留塔を有する2のオートクレーブに全量が80
0gとなるように仕込み、常圧下、170〜260℃、無触媒の
条件でエステル化反応せしめた後、反応系に全カルボン
酸成分に対し500ppmの3酸化アンチモンを加え3Torrの
真空下でグリコールを系外へ除去しながら250℃で重縮
合を行い樹脂を得た。
尚、架橋反応は撹拌トルクが10kg・cm(100ppm)とな
るまで実施し、反応は反応系の減圧状態を解除して停止
させた。
次いで、得られた樹脂をバインダーとして用い、これ
に該バインダー95重量部に対して5重量部の割合でカー
ボンブラックを加えて混練、冷却、粉砕、分級し平均粒
径10〜13μmの粒子よりなるトナーを得た。
以上の操作で得られた樹脂の組成、Tg及び軟化点、並
びにトナーの最低定着温度、オフセット発生温度及び耐
ブロッキング性について調べた。その結果を表1に示
す。
なお、樹脂の組成は、常法に従って得られたポリエス
テル樹脂の分解物を、該分解物を液体クロマトグラフィ
ー及びガスクロマトグラフィーによる方法で分析して求
め、また、Tg及び軟化点は前述した方法により測定し
た。
更に、トナーの最低定着温度は、テフロンローラー
(熱ローラー)とゴムローラの一対からなり、加熱温度
が自由に設定できる熱ローラー定着器を用い、テフロン
ローラーの周速を20cm/sec、ローラー圧接荷重を14kg・
fとして、回転する両ローラ間にトナー像を転写した紙
を通過させることにより得られた定着画像のトナー定着
率を以下のようにして調べ、定着率が95%に達したとき
のローラー温度を最低定着温度とすることにより求め
た。
トナーの定着率の測定: セロテープ(商品名、ニチバンNo.405)を定着処理後
のトナー像(黒ベタ部)に貼付後剥離し、その前後のト
ナーの濃度を反射型濃度計(マクベス社製)で測定し、
その比率を定着率とした。
また、オフセット発生温度は、最低定着温度の測定と
同様にして紙上トナー像を転写して上述の熱ローラー定
着器による定着処理を行い、次いで白紙の転写紙を同様
の条件下で定着器に送ってこれにトナー汚れが付着する
か否かを観察する操作を、前記定着器の熱ローラーの温
度を順次降下させた状態で繰り返すことにより行い、ト
ナー汚れが付着しはじめたときの熱ローラーの最低温度
とした。
また、耐ブロッキング性は、トナーを容器内に充填
し、それを約25℃、湿度60%下に48時間放置したときの
トナー粒子同士の凝集の発生の有無及びその程度を観察
することにより評価した。なお、◎は非常に良好(全く
凝集が認められない)、○は良好(容器をさかさまにし
て軽くたたけば再分散する)、△はやや不良(容器をさ
かさまにして強くたたけば再分散する)、×は不良(容
器をたたいても凝集物は分散しない)を表す。
実施例5〜8 表2に示すような配合割合となるように各成分を用い
る以外は、実施例1と同様にして架橋型ポリエステル樹
脂を合成し、更に得られた樹脂をバインダーとして用い
てトナーを得た。
得られた樹脂の組成及び物性、並びにトナーの物性を
実施例1と同様にして調べた結果を表2に示す。
表2に示された結果により、実施例5〜8で得られた
架橋型ポリエステル樹脂は実施例1〜4と同様にトナー
バインダー用として優れたものであることが確認され
た。
実施例9〜12 表3に示すような配合割合となるように各成分を用い
る以外は、実施例1と同様にして架橋型ポリエステル樹
脂を合成し、更に得られた樹脂をバインダーとして用い
てトナーを得た。
得られた樹脂の組成及び物性、並びにトナーの特性を
実施例1と同様にして調べた結果を表3に示す。
表3に示された結果により、実施例9〜12で製造した
架橋型ポリエステル樹脂はトナーバインダー用樹脂とし
て優れた特性を有していることが確認された。
比較例1〜3 表4に示すような配合割合となるように各成分を用い
る以外は、実施例1と同様にしてポリエステル樹脂を合
成し、更に得られた樹脂をバインダーとして用いてトナ
ーを得た。
得られた樹脂の組成及び物性、並びにトナーの物性を
実施例1と同様にして調べた結果を表4に示す。
表4に示された結果から明らかなように、比較例1〜
3で得たポリエステル樹脂は、トナーバイダー用樹脂と
して十分なものではなかった。
[発明の効果] 以上詳細に説明したとおり、本発明のポリエステル樹
脂は、架橋構造を有し、しかも軟化点が低く、かつ軟化
・溶融時における流動性が良好であるので、該樹脂をバ
インダーとして用いることにより、非オフセット性に優
れ、かつ良好な低温定着性を有し、高速定着に十分対応
し得るトナーを提供することができる。
また、本発明の架橋型ポリエステル樹脂は軟化点が低
いにも拘らず、十分に高いTgを有し、該樹脂をバインダ
ーとして用いたトナーは、上述のように良好な非オフセ
ット性及び低温定着性を有しつつ貯蔵安定性に優れる。
従って、本発明の架橋型ポリエステル樹脂をバインダ
ーとして用いたトナーを使用すれば、安定したトナー像
の高速現像を行なうことができ、複写機やLBP(レーザ
ービームプリンター)のより高速化の達成が可能とな
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 船渡 良 愛知県名古屋市東区砂田橋4丁目1番60 号 三菱レイヨン株式会社商品開発研究 所内 (72)発明者 久保 伸司 愛知県名古屋市東区砂田橋4丁目1番60 号 三菱レイヨン株式会社商品開発研究 所内 (56)参考文献 特開 昭62−45622(JP,A) 特開 昭62−278569(JP,A) 特開 昭54−86342(JP,A) 特開 昭61−284772(JP,A) 特公 昭59−50060(JP,B2) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) G03G 9/087

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】構成単位として、モノカルボン酸単位、
    ジカルボン酸単位、芳香族ジオール単位、アルキレ
    ンジオール単位、3価以上の多価カルボン酸単位及
    び3価以上の多価アルコール単位を、全酸成分単位
    (++)に対して a)0〜20モル%のモノカルボン酸単位 b)0〜80モル%の芳香族ジオール単位 c)30モル%以上のアルキレンジオール単位 d)1〜40モル%の多価カルボン酸単位及び多価アル
    コール単位からなる群より選択された1種以上 の割合でそれぞれ含み、145℃以下の軟化点、30℃〜68
    ℃のガラス転移点及び3×10-4〜300×10-4ml/秒の流れ
    値を有することを特徴とするトナーバインダー用架橋型
    ポリエステル樹脂。
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