JP2818696B2 - Nadhキナーゼを用いる高感度定量法 - Google Patents

Nadhキナーゼを用いる高感度定量法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、NADHに特異性の高いNA
DHキナーゼを用いて、主として疾病等の診断において、
病態のマーカーとなる物質を高感度に定量することによ
り、正確な診断を可能とし、臨床・医療等の分野に利用
できるものである。
【0002】
【従来の技術】現在、酵素反応を用いて、病態のマーカ
ーとなる物質を定量する診断法が広く行なわれている。
しかし、現行法では測定の困難な極く微量のマーカーも
存在しまた、新生児検診のように被検液量が微量に限ら
れる場合もあって、これに対応しうる高感度な分析法が
求められている。
【0003】それらの方法のひとつとして、サイクリン
グ反応による増感分析法があり、β-NAD+ ←→β-NADH
系のサイクリング反応やβ- NADP+ ←→β-NADPH系のサ
イクリング反応等が知られている。(東京化学同人社刊
生化学実験講座 第5巻、121 〜131 ページ) 。そし
て例えば、特開昭59-213400 号公報に記載されている如
く、β-NAD+に特異的なキナーゼを用いてβ-NADH とβ-
NAD+を含有する溶液中のβ-NAD+のみをリン酸化してβ-
NADP+ とし、サイクリング反応に導くことによって高感
度に定量することができる。
【0004】しかしながら、NAD+ ( 以下、β-NAD+、Th
io-NAD+、またはα-NAD+等を示す。) とNADH( 以下、β
-NADH 、Thio-NADH 、またはα-NADH 等を示す。)を含
有する混合系において、NADHが、微量に存在している場
合は、そのNADHを定量する方法として前述の特開昭59-2
13400 号公報に記載されている方法では、定量すること
が不可能である。そのため従来は、HPLCを使ったフロー
インジェクションアッセイや煮沸する方法(特開昭58-1
29994号) があるが、高価な装置が必要だったり、操作
が煩雑で時間がかかったりするという欠点があった。ま
た、β-NADH をルシフェラーゼで発光に導く高感度な方
法や、化学発光に導く方法があるが、特殊で高価な検出
器が必要であり、また試薬の安定性が問題になってい
る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明者等は上記した
事情に鑑み、過剰の NAD+ が存在する場合に、微量のNA
DHを高感度に定量する方法について、鋭意研究を重ねた
結果、NADHに特異的に作用するキナーゼを用いることに
よりその目的が達成できることを見いだした。さらに研
究を重ねた結果、NAD+ とNADHを含有する混合系におい
てもNADHのみをリン酸化してNADPH とし、これをサイク
リング反応に導くことにより、微量のNADHを高感度に定
量でき、また同様に、微量のXTP についても高感度定量
が可能となるという知見を得て、本発明を完成させた。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、NAD+ 及びNAD
Hが混在する溶液に、二価の金属イオン及び XTP〔式
中、X はA(アデノシン)、U(ウリジン)、G(グアノシ
ン)、C(シチジン) 、I(イノシン)、dT(チミジン)、
dA(デオキシアデノシン)、dU(デオキシウリジン)、
dG(デオキシグアノシン)、dC( デオキシシチジン)、
dI(デオキシイノシン) を示す〕の存在下に、NADHに特
異性の高いNADHキナーゼを作用させてXDP(式中、X は前
記と同じ) 及びNADPH を生成させ、次いでNADPH を、こ
れをNADP+ に酸化する触媒反応及びNADP+ をNADPH に還
元する触媒反応を用いてサイクリング反応させ、該サイ
クリング反応により消費される基質または生成する生成
物の変化量を検出することによりNAD+ 及びNADHが混在
する溶液中のNADHのみを定量することを特徴とするNADH
の高感度定量法である。
【0007】また、本発明は、 XTP〔式中のX はA(アデ
ノシン)、U(ウリジン)、G(グアノシン)、C(シチジ
ン)、I(イノシン)、dT(チミジン)、dA(デオキシア
デノシン)、dU(デオキシウリジン)、dG(デオキシグ
アノシン)、dC(デオキシシチジン)、dI(デオキシイ
ノシン)を示す〕を含む溶液に、二価の金属イオン及び
NADHの存在下に、NADHに特異性の高いNADHキナーゼを作
用させてXDP(但し式中のX は前記と同じ。) 及びNADPH
を生成させ、次いでNADPH を、これをNADP+ に酸化する
触媒反応及びNADP+ をNADPH に還元する触媒反応を用い
てサイクリング反応させ、該サイクリング反応により消
費される基質または生成する生成物の変化量を検出する
ことによりXTP を定量することを特徴とするXTP の高感
度定量法である。
【0008】 上記のNADとしては、β−NA
、またはα−NADが挙げられ、NADHとして
は、β−NADH、Thio−NADH、またはα−N
ADHが挙げられる。上記二価の金属イオンとしては、
Mg2+,Mn2+,Ca2+,Co2+等が挙げら
れ、また酸化する触媒としては、デヒドロゲナーゼ、ジ
アホラーゼ、NAD(P)Hオキシダーゼ、または電子
運搬体を挙げることができる。さらに電子運搬体として
は、メルドラブルー(9−Dimethylamin
o,benzo−α−phenazoxonium c
hloride)、1−メトキシPMS(1−Meth
oxy−5−methylphenazinium m
ethylsulfate)、PMS(methylp
henazinium methylsulfat
e),またはPQQ(Pyrroloquinolin
equinone)等を挙げることができる。還元する
触媒としては、デヒドロゲナーゼがあり、特にNADP
依存性デヒドロゲナーゼが好適である。
【0009】以下、本発明を詳細に説明する。まず、本
発明の高感度測定における反応を略示する。
【0010】
【化1】
【0011】ここで各記号は以下の意味を示す。 E1: NADPH とS1を基質として、NADP+ とP1を生成する反
応を触媒する酸化触媒 E2: NADP+ とS2を基質として、NADPH とP2を生成する反
応を触媒する還元触媒 S1: E1の酸化型基質 S2: E2の還元型基質 P1: E1による、S1からの還元型生成物 P2: E2による、S2からの酸化型生成物 XDP : 上記の、それぞれの「三リン酸」を「二リン
酸」に置き換えたものに同じ。
【0012】本発明の対象となる溶液は、NAD+ 及びNAD
Hが混在する溶液であればどのようなものでもよく、例
えばNAD+ とNADHの両者を含有するもの、種々の酵素反
応によって遊離生成するNADHを含むもの等が挙げられ
る。そしてその具体例としては、デヒドロゲナーゼの酵
素反応によってNAD+ を基質として消費し、生成したNAD
Hを含む反応液等、例えば以下に示す如き、1〜20の反
応液等を挙げることができる。但しこれらの例示反応系
は、なんら本発明の対象を限定するものではない。 ま
た、本発明の対象となる溶液は、XTP を含む液であれば
どのようなものでもよく、例えばキナーゼによる酵素反
応によって、XDP を基質として消費し、生成したXTP を
含む反応液等、例えば以下に示す如き、21〜29の反応液
等を挙げることができる。但しこれらの例示反応系は、
なんら本発明の対象を限定するものではない。
【0013】 以下、式中の“DH”は、デヒドロゲナ
ーゼの省略記号として用いている。 これらの溶液、1〜20等においては、デヒドロゲナー
ゼの酵素反応によって生成するNADHを定量すること
を目的とした例として供したものである。さらにこの場
合、NADHを定量することによって、これらの酵素反
応系のデヒドロゲナーゼの酵素活性か、NADか、ま
たはNADとともに消費される、酵素の基質成分のう
ち、いずれかを定量することが可能となる。また、溶液
2l〜29等においては、キナーゼの酵素反応によって
生成するATPを定量することを目的とした例として供
したものである。さらにこの場合、ATPを定量するこ
とによって、これらの酵素反応系の、キナーゼの酵素活
性か、ADPか、またはADPとともに消費される、酵
素の基質成分となるリン化合物のうち、いずれかを定量
することが可能となる。
【0014】また、以上の定量目的となる物質が、さら
に別の一連の反応系によって生成したものでもよく、こ
の場合最も先に行なわれた反応系に関与する、いずれか
の要素が結果的に定量可能となる。さらに、これら種々
の酵素反応については、NADHキナーゼの酵素反応と同時
に起こさせることもできる。
【0015】この場合の全体の反応を次に簡単に示す。
【0016】
【化2】
【0017】ここで、各記号は以下の意味を示す。 E0 : NAD + とA を基質として、NADHとB を生成する反
応を触媒するデヒドロゲーゼ A : デヒドロゲナーゼE0の還元型基質 B : デヒドロゲナーゼE0による、A からの酸化型生成
物 E1, E2, S1, S2, P1, P2 : 前記と同義である。
【0018】これらの酵素反応系において、反応を起こ
させるための温度、pH、安定化剤や金属イオンの必要性
などの条件は、適宜公知の技術に基づいて判断される。
即ち、反応温度としては通常20℃〜40℃の範囲でよく、
pH条件は、対象とする酵素反応にあわせて, 適宜pH6.0
〜9.5の範囲に設定され、これはそのpH範囲の好適な緩
衝液を選択して用いることにより行われる。これらの緩
衝液としては、例えば、リン酸緩衝液、各種のグッドバ
ッファー等が用いられる。反応時間は酵素反応を行うに
必要な時間であり、特にその範囲が限定されるものでは
ない。
【0019】 本発明に用いるNADHキナーゼとして
は、NADHに特異的に作用し、実用に耐える安定性を
有するキナーゼであればいずれでもよいが、その例とし
ては、例えば以下の理化学的性質を有するNADHキナ
ーゼ(以下、”本酵素”という)が挙げられる。 (1)作 用 本酵素は下記の反応式に示す通り、Mg2+、M
2+、Ca2+、C02+のうちの少なくとも1種の
イオンの存在下で、NADHとXTP(但し式中のX
は、前記に同じ。)を基質としてNADHをリン酸化
し、NADPHとXDP(但し式中のXは、前記に同
じ。)を生成する反応を触媒する。(但し反応式中のX
は、前記に同じ。) (2)基質特異性 本酵素は、NADHに対して非常に特異性が高く、NA
には殆ど作用しない。
【0020】本酵素の基質特異性を以下の反応条件で調
べた。
【0021】
【表1】
【0022】表1のNADHを含む基質溶液0.9ml 及びNAD
+ を含む基質溶液0.9ml に、それぞれ23U/mlの本酵素を
0.1ml ずつ加え、30℃で20分間反応させた。その後、10
0 ℃、2 分間の処理で反応を停止して変性タンパクを除
去し、次いでそれぞれの基質の反応によって生成したNA
DPH またはNADP+ の量を以下の通り測定した。なお対照
としては、基質溶液と本酵素を混合後、直ちに反応を停
止したものを用いた。
【0023】すなわち上記反応液各1ml に、10mM G-6-
P、50mM HEPPS緩衝液(pH8.0) 、10mM塩化マグネシウ
ム、0.1 % 牛血清アルブミン、2.5IU/ml G-6-Pデヒドロ
ゲナーゼ(NADP + 依存性) 、5IU/mlジアホラーゼ、250
μM 2,6-ジクロロフェノールインドフェノール、なる組
成の発色液1ml をそれぞれ加えて混合し、直ちにギルフ
ォード社ステーサーIII 型分光光度計の恒温キュベット
内に導き、30℃で反応させた。この際、反応と同時に60
0nm における吸光度の変化を経時的に測定し、発色反応
後1 分後の吸光度値と2 分後の吸光度値との差(△OD
600nm /min)を測定値とした。相対活性(%) は、NADH
を基質として得られた測定値(△OD600nm /min)を100
%として、NAD+ を基質として得られた測定値(△OD
600nm /min)を比較値(%) で示した。
【0024】結果は次の通りである。 基 質 相対活性(%) NADH 100 NAD+ 0.9 (3) 力価の測定法
【0025】
【表2】
【0026】 表2の組成のNADHを含む基質溶液
0.9mlを30℃に予備加温し、これに適当な濃度の
本酵素液0.1mlを加えて、30℃で2O分間反応さ
せた。その後、100℃、2分間の処理で反応を停止し
て変性タンパクを除去し、次いでそれぞれの基質の反応
によって生成したNADPHの量を以下の通り測定し
た。なお対照としては、基質溶液と本酵素を混合後、直
ちに反応を停止したものを用いた。
【0027】すなわち上記反応液各1ml に、前記”基質
特異性”の項に記載したものと同じ組成の発色液1ml を
加えて混合し、直ちにギルフォード社ステーサーIII 型
分光光度計の恒温キュベット内に導き、30℃で反応させ
た。この際、反応と同時に600nm における吸光度の変化
を経時的に測定し、発色反応後1 分後の吸光度値と2分
後の吸光度値との差(△OD600nm /min)を測定値として
得た。予め、濃度既知のNADPH 溶液を用いて、△OD
600nm /min とNADPH 濃度との検量線を作成しておき、
これによって測定値から、生成したNADPH の量を算出し
た。
【0028】なお、30℃において1分間当り、1ナノモル
量のNADPHを生成する酵素量を1単位とする。本酵素のNA
DHに対するKm値[ミカエリス定数]は、30℃、pH7.8
(トリス緩衝液)において、27マイクロモルである。 (4)至適pH 本酵素の至適pHは、NADHを基質とした場合、図1に示す
ようにpH8.0〜9.0である。 (5)安定pH範囲 本酵素を、各種pHの緩衝液に溶解し、4℃16時間放置し
た後、残存活性を調べたところ、図2に示すようにpH7.0
〜9.0で安定であった。 (6)作用適温の範囲 本酵素の作用適温の範囲は、図3に示すように30℃〜45
℃にある。 (7)熱安定性 本酵素を、緩衝液中に溶解し、各温度で10分間放置し
て、残存する酵素活性を測定し、熱安定性を調べた。そ
の結果、図4に示すように、本酵素は35℃で83%、40℃
で60%、45℃で30%の残存活性を示した。 (8)阻害、活性化及び安定化 本酵素はSDS(Sodium Lauryl sulfate)、p−CMB(p−Chlo
romercuribenzoic acid)、Pb2+、Zn2+、Cd2+、Cu2+、Hg
2+等により強く阻害され、また酢酸ナトリウム等により
活性化される。さらに、サッカロース、Mg2+、Mn2+、ジ
チオスレイトール、N−アセチル−L−システイン、硫酸
アンモニウム等により安定化される。 (9) 精製方法 本酵素は、常法の酵素精製法、例えばイオン交換クロマ
トグラフィー、硫安分画、疎水クロマトグラフィー、ゲ
ル濾過等の方法を、単独または組合わせて用いることに
より精製できる。 (10) 分子量 本酵素の分子量を、アンドリウスの方法[Biochem.J. 9
6,595(1965)]に基づき、セファクリルS−300HR[ファ
ルマシア社(スウェーデン)製]を用いたゲル濾過法で
測定した場合は約270,000、上記アンドリウスの方法に
基づき、スーパーローズ6HR10/30カラム[ファルマシ
ア社(スウェーデン)製]を用いたゲル濾過法で測定する
と約160,000である。 (11) 等電点 本酵素の等電点を、アンフォライトを含むアガロースゲ
ルを用いて電気泳動法によって測定した結果pI=6.40で
ある。
【0029】本酵素を公知文献に記載のNADHキナーゼA
(J.Biochem.105,588-593,1989)及びB(J.Biochem.247,1
473-1478,1972) と比較すると表3の通りである。
【0030】
【表3】
【0031】表3から明らかなように、本酵素は公知の
NADHキナーゼとは酵素化学的、物理化学的性質が異な
り、特に熱安定性の点において優れているため、他の各
種酵素と組み合わせて使用して高感度分析を行なったり
する上で、実用に耐え得るため大変有利である。本酵素
は、ピヒア・メンブラニファシエンスYS27(微工研条寄
第3208号) を栄養培地中で培養することにより製造され
る。本酵素は、通常pH6.5 〜9.5 程度の範囲で、また通
常20℃〜40℃程度で反応をおこさせれば良く、使用量も
特に限定されないが、通常1 〜500 単位程度用いれば良
い。
【0032】また、NADHキナーゼの反応で要求されるマ
グネシウムイオン、マンガンイオン、カルシウムイオ
ン、またはコバルトイオン等の2 価金属イオンは、これ
らを放出できる水溶性塩、例えば塩化マグネシウム、塩
化マンガン、塩化カルシウム等を使用すれば良く、反応
系において通常0.1mM〜100mM程度の濃度で用いることが
でき、好ましくは、1mM 〜20mMの濃度で用いることがで
きる。
【0033】さらに、NADHを定量する場合に用いられる
ATP の量としては、溶液中のNADHの量に比べて過剰に用
いれば良いが、通常反応系において、0.1mM 〜10mM程度
の濃度で用いることが好ましい。また、ATP を定量する
場合に用いられるNADHの量としては、溶液中のATP の量
に比べて過剰に用いれば良いが、通常反応系において、
0.05mM〜5mM 程度の濃度で用いることが好ましい。
【0034】さらに、E0にあたる種々の酵素による反応
とNADHキナーゼの酵素反応を同時に起こさせる場合、ま
たさらに、多くの一連の酵素反応を同時に起こさせる場
合は全体の反応が円滑に行なわれる温度、pHを適宜選択
し種々の添加物等の条件を満たして行なえばよい。ま
た、本発明に用いる前述の、NADPH を酸化する触媒E
1は、ATPとNADHから先のNADHキナーゼの酵素反応によっ
てADP とともに生成するNADPH に作用し、これと酸化型
基質S1より還元型生成物P1とNADP+ を生成する反応を触
媒するものであれば如何なるものでもよい。
【0035】さらに、これと組み合わせてサイクリング
反応を形成する、NADP+ を還元する触媒E2は、前述のよ
うにE1により生成されたNADP+ に作用して、これと還元
型基質S2より酸化型生成物P2とNADPH を生成する反応を
触媒するものであれば、いかなるものでもよい。このE1
とE2による酵素反応を組み合わせて起こさせれば、NADH
キナーゼにより生成されるNADPH がE1によりNADP+ に変
換され、このNADP+ がE2によりNADPH に変換され、この
NADPH が再びE1の反応に戻されるというしくみによっ
て、サイクリング反応が形成される。
【0036】 ここで、EとEの少なくとも一方が
NADP依存性であれば、NAD(H)についてはサ
イクリング反応が形成されないので、NADPHのみの
高感度定量が可能となる。このサイクリング反応におい
ては、1サイクルの反応が起こるごとに、Eの反応に
よりNADPHと等モルのSが消費され、等モルのP
とNADPが生成しさらに、Eの反応によりNA
DPと等モルのSが消費され、等モルのPとNA
DPHが生成するが、E単独の反応に比べて、溶液中
のNADHの一定量に対してのサイクリング反応の速度
は増加するため、定量目的となる成分の量に比べて、そ
のサイクリング度数をかけたモル比に相当する量以上の
基質が必要となる。通常、大過剰量の各基質を用いれば
よく、例えば溶液中のNADH量に比べて、10倍〜1
万倍量の基質を用いればよい。また、サイクリング反応
に用いられるEやEは、サイクリング反応を行なわ
せるのに充分な任意量を用いればよく、測定目的となる
成分の量に合せて、望ましい増感を得るサイクリング度
数を、達成しうるだけの量を適宜選択することができ
る。例えば、1分間に10サイクル以上の反応を行なう
のが好ましく、そのためには例えば酵素を用いるのであ
ればそれぞれ1〜l00単位を用いるのが好ましく、電
子運搬体であれば、0.01mM〜10mMを用いるの
が好ましい。ここで、このサイクリング反応のpH条件
としては、用いる触媒が安定で、良好に働き、サイクリ
ング反応が円滑に行なわれるpH範囲であればよく、通
常6.0〜9.5程度の範囲で適宜、緩衝液を選択して
用いればよい。例えば、リン酸緩衝液や各種グッドバッ
ファー等が用いられる。また、反応は通常25℃〜40
℃付近で1分以上行なえばよく、なんら限定されるもの
ではない。
【0037】次に、このサイクリング反応において検出
できる変化量を定量するには、S1かS2の減少量、P1かP2
の生成量のいずれかの変化量を定量すればよい。これら
の成分を測定するには、公知の方法を用いて適宜行なえ
ばよいが、これらの成分を基質として作用する、オキシ
ダーゼやペルオキシダーゼ等を単独で、または組み合わ
せて用いればよい。また、特に好適な例として、E1にNA
DPH ジアホラーゼを、S1にテトラゾリウム塩や2,6-ジク
ロロフェノールインドフェノール等を用いれば、サイク
リング反応における変化量が、色素の発色や退色となっ
て現れるため、反応と同時に経時的な吸光度測定を行な
ってサイクリング反応における変化量を容易に比色定量
することもでき、またサイクリング反応を停止したのち
変化量を定量することもできる。また同様に、E1にNAD
(P)H オキシダーゼを用い、同時にペルオキシダーゼを
作用させて、NAD(P)H オキシダーゼにより生成したH2O2
を、発色系に導けば、反応と同時にサイクリング反応に
おける変化量を定量することもでき、またサイクリング
反応を停止したのち変化量を定量することもできる。
【0038】このようにして、サイクリング反応におい
て消費される成分の量または生成される成分の量を定量
することにより、その検量曲線から溶液中のNADHまたは
ATPの高感度定量ができる。さらには、そのNADHの値か
ら用いた溶液中のデヒドロゲナーゼE0の酵素反応系のう
ち、E0の酵素活性、NAD+ 、またはその基質成分A のい
ずれかの定量もでき、ATP の値からは用いた溶液中のキ
ナーゼの酵素反応系のうち、キナーゼの酵素活性、ADP
、またはその基質となるリン化合物の、いずれかの定
量もできる。また、これらのNAD+ 、基質A、ADP、また
はキナーゼの基質となるリン化合物等が、さらに別の一
連の反応系によって生成したものである場合は、最も先
に行なわれた反応系に関与する、いずれかの要素が結果
的に定量できる。
【0039】本発明の定量をなすための、酵素及び必要
な試薬はひとつの系、または複数の系として、水溶液で
保存してもよく、乾燥粉末状で保存してもよい。これら
各酵素及び、必要な試薬の量を決定し、これを水溶液状
として定量に供するものであるが、1 テスト当り用いる
液量は特に限定されるものではないが、通常50μl〜5ml
程度を用いればよい。また測定の対象となる溶液の量
も、特に限定されるものではないが、通常5μl 〜5ml
程度を用いればよい。
【0040】また、溶液中のNADHを遊離生成する酵素反
応は、予め別に行なってもよく、またNADHキナーゼの酵
素反応と同一系で、同時に行なってもよい。ついで、サ
イクリング反応を行ない、反応において検出できる変化
量を定量すればよい。
【0041】
【実施例】以下、実施例により本発明をさらに詳細に説
明するが、これらは本発明の範囲をなんら制限するもの
ではない。
【0042】
【実施例1】 NADHキナーゼの調製 ピヒア・メンブラニファシエンス(Pichia membranaef
aciens)YS27(微工研条寄第3208号) を、500ml 坂口フラ
スコ中のグルコース2%、酵母エキス1%、ポリペプト
ン1%、リン酸水素一カリウム0.9 %、硫酸アンモニウ
ム0.6 %、塩化カルシウム0.05%、硫酸マグネシウム0.
05%なる組成の、培地A(pH5.5)50ml に植菌し、30℃で
24時間振盪培養した。この種培養物を、培地A20リット
ルに接種し、30リットルのジャーファーメンターで、通
気量20L /min 、攪拌速度300rpmの条件下で、30℃で18
時間培養し、培養物を遠心分離により集菌し菌体1406g
を得た。この全量を、グルコース0.5 %、酵母エキス1
%、ポリペプトン1%、リン酸水素一カリウム0.9 %、
硫酸アンモニウム0.6 %、塩化カルシウム0.05%、硫酸
マグネシウム0.05%、コハク酸ナトリウム2 %なる組成
の、 培地B(PH5.5)20リットルに接種し、30リットルの
ジャーファーメンターで、通気量20L /min、攪拌速度3
00rpmの条件下で、30℃で6 時間培養し、培養物を遠心
分離により集菌し、菌体1428gを得た。この全量を0.1M
サッカロース、0.5 %トリトンX-100、50mMリン酸バッ
ファー(pH6.0) に分散させて、総量を5 リットルとし、
これをダイノミル( スイス国 WAB社) を用いてグラスビ
ーズ破砕した。
【0043】回収した破砕液5280mlは、遠心分離によっ
て沈殿物を除去した後、限外濾過膜(分画分子量6,000)
を用いてバッファー交換を行ない、0.05M 塩化ナトリウ
ム、10mMリン酸バッファー(pH6.0) の状態とした。次に
この酵素液5260mlを、予め0.05M 塩化ナトリウム、10mM
リン酸バッファー(pH6.0) で緩衝化したCM- セファデッ
クスC-50カラム(ファルマシア社) に通液して吸着さ
せ、0.1M塩化ナトリウム、10mMリン酸バッファー(pH6.
0)で洗浄した後、塩化ナトリウム濃度0.1 〜0.4Mの濃度
勾配で溶出を行ない、活性画分を集めた。
【0044】溶出液455ml を限外濾過膜(分画分子量6,
000)を用いてバッファー交換を行ない、10%硫酸アンモ
ニウム、5mM MgCl2,10mM HEPPSバッファー(pH7.5) とし
て、予め同じバッファーで緩衝化した、フェニル- トヨ
パール650 カラム(東ソー社)に通液して吸着させ、10
%硫酸アンモニウム、5mM MgCl2,10mM HEPPSバッファー
(pH7.5) で洗浄した後、硫酸アンモニウム濃度10%〜0
%の濃度勾配で溶出を行ない、活性画分を集めた。
【0045】続いて、この溶出液372ml を、アミコン社
製限外濾過装置(分画分子量10,000)を用いて濃縮して
25mlとし、予め0.2M硫酸アンモニウム,5mM MgCl2, 10mM
HEPPSバッファー(pH7.5) で緩衝化した、セファクリル
S-300 HRカラム(ファルマシア社製) にかけて、ゲル濾
過を行なった。得られた活性画分を濃縮後、凍結乾燥し
て本酵素標品117.3 mg(回収率34%) を得た。本標品の
比活性は102U/mg であった。
【0046】
【実施例2】 NADHの定量 多量の NAD+ を含む系に混在する微量のNADHを定量する
目的で, 下記反応液I組成を持つ反応液0.8 mlに2mM N
AD+ と各濃度(0〜10μM)のNADHを含有する試料液0.4ml
を添加し、35℃で20分間反応させた。反応停止後、これ
に下記反応液II組成を持つ反応液0.8ml を添加して混合
し、直ちにギルフォード社ステーサーIII 型分光光度計
の恒温キュベット内に導き、30℃で反応させて、同時に
600nm における吸光度の変化を経時的に測定し、発色反
応後1分後の吸光度値と2分後の吸光度値との差(△OD
600nm /min)を測定値として得た。その結果、図5に示
すように、NADH濃度と△OD600nm /min との間に、良好
な直線性が感度良く得られた。
【0047】 反応液I組成(pH8.5) 100mM HEPPS 7.5mM ATP 15mM 塩化マグネシウム 0.3M 酢酸ナトリウム 10U/ml NADHキナーゼ(実施例1で調製し
たもの) 反応液II組成(pH8.0) 10mM G−6−P 50mM HEPPS 10mM 塩化マグネシウム 0.1% 牛血清アルブミン 2.5IU/ml G−6−Pデヒドロゲナーゼ(NA
DP依存性) 5IU/ml ジアホラーゼ 300μM 2,6−ジクロロフェノールインドフェノ
ール
【0048】
【実施例3】 コール酸ナトリウムの定量 微量の胆汁酸を定量する目的で, 下記反応液I組成を持
つ反応液0.8ml に、各濃度(0〜100 μM)のコール酸ナト
リウムを含有する試料液80μl を添加し、35℃で20分間
反応させた。反応停止後、これに下記反応液II組成を持
つ反応液0.8ml を添加して混合し、直ちにギルフォード
社ステーサーIII 型分光光度計の恒温キュベット内に導
き、30℃で反応させて、同時に600nm における吸光度の
変化を経時的に測定し、発色反応後1 分後の吸光度値と
2 分後の吸光度値との差(△OD600n m /min)を測定値と
して得た。その結果、図6に示すように、コール酸ナト
リウム濃度と△OD600nm /min との間に、良好な直線性
が感度良く得られた。
【0049】 反応液I組成(pH8.5) 67mM HEPPS 5mM ATP 10mM 塩化マグネシウム 0.2M 酢酸ナトリウム 2mM NAD 0.3IU/ml 3α−ハイドロキシステロイドデヒ
ドロゲナーゼ (オリエンタル
酵母社製) 7U/ml NADHキナーゼ(実施例1で調製した
もの) 反応液II組成:実施例2で用いた反応液II組成に同
じ。
【0050】
【実施例4】 コール酸ナトリウムの定量 微量のコール酸ナトリウムを定量する目的で, 下記反応
液I組成を持つ反応液300 μl に、各濃度(50,100,150,
200,250 μM)に調製したコール酸ナトリウム溶液を検体
としてそれぞれ50μl を添加し、30℃で5分間放置した
後、下記NK液を300μl加え、30℃で20分間反応させた。
次に、下記反応液II組成を持つ反応液3.0ml を添加して
混合し、30℃で反応させて、1 分後から6 分後までの55
0nm における1 分間当りの平均吸光度変化量を求めた。
その結果、β-NAD+を用いた場合は図7に、Thio-NAD+
用いた場合は図8に示すように、コール酸ナトリウム濃
度と平均吸光度変化量との間に、コール酸ナトリウム濃
度200 μM まで、原点を通る良好な直線性が感度良く得
られた。
【0051】 反応液I組成(pH8.5) 65mM リン酸二カリウム 8mM ATP 20mM 塩化マグネシウム 0.5M 酢酸ナトリウム 5mM NAD(β−体かThio−体) 0.03% 牛血清アルブミン 10IU/ml 3α−ハイドロキシステロイドデヒド
ロゲナーゼ NK液組成 7.7U/ml NADHキナーゼ(実施例1で調製し
たもの) 0.2M 硫酸アンモニウム 反応液II組成(pH8.0) 20mM G−6−P 50mM リン酸二カリウム 0.03% 牛血清アルブミン 1.2mM ニトロテトラゾリウムブルー 0.1M EDTA−2Na 0.5% トリトン X−100 3IU/ml G−6−Pデヒドロゲナーゼ:イース
ト由来 (Thio−体の時6IU/ml) 3IU/ml ジアホラーゼ:バチルス属由来 (Thio−体の時6IU/ml ジアホラーゼ:クロ
ストリジウム 属由来)
【0052】
【実施例5】 血清中の胆汁酸の定量 血清中の胆汁酸濃度を定量する目的で, 下記反応液I組
成を持つ反応液300 μl に、検体として24例の人血清と
標準液としての50μM コール酸ナトリウム溶液を、それ
ぞれ200μl添加し、30℃で5分間放置した後、下記NK液
を300 μl 加え、30℃で20分間反応させた。次に、下記
反応液II組成を持つ反応液3.0ml を添加して混合し、30
℃で反応させて、2 分後から3 分後までの550nm におけ
る1 分間の吸光度変化量を求めた。また、公知の方法で
ある3 α-HSD- ホルマザン法についても同一検体につい
て測定を行なった。その結果、本法と3 α-HSD- ホルマ
ザン法の感度の比較は、第4 表のようになり、相関係数
0.995 から相関性が高く、また、標準液における吸光度
変化量から求めた胆汁酸濃度は、図9のようになった。
これより本法は、従来法である3 α-HSD- ホルマザン法
とよく相関し、胆汁酸を正確に、そして3 α-HSD- ホル
マザン法よりも高感度に測定できることがわかった。
【0053】 反応液I組成(pH8.5) 65mM リン酸二カリウム 12mM ATP 20mM 塩化マグネシウム 0.75M 酢酸ナトリウム 75mM β−NAD 0.03% 牛血清アルブミン 60mM オキサミン酸カリウム 15IU/ml 3α−ハイドロキシステロイドデヒド
ロゲナーゼ NK液組成 13.5U/mlNADHキーゼ(実施例1で調製した
もの) 0.2M 硫酸アンモニウム 反応液II組成 (pH8.0) 20mM G−6−P 50mM リン酸二カリウム 0.03% 牛血清アルブミン 1.2mM ニトロテトラゾリウムブルー 0.1M EDTA−2Na 0.5% トリトンX−100 3IU/ml G−6−Pデヒドロゲナーゼ:イースト
由来 3IU/ml ジアホラーゼ:バチルス属由来 40mM オキサミン酸カリウム
【0054】
【表4】
【0055】
【実施例6】 3−ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナ−ゼの
定量微量の3-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼを定量す
る目的で、下記反応液I組成を持つ反応液0.8mlに、各
濃度(0〜60IU/L) の3-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼ
を含有する試料液400 μl を添加し35℃で10分間反応さ
せた。反応停止後、これに下記反応液II組成を持つ反応
液0.8ml を添加して混合し、直ちに分光光度計の恒温キ
ュベット内に導き、30℃で反応させて、同時に600nm に
おける吸光度の変化を経時的に測定し、発色反応後1分
後の吸光度値と2分後の吸光度値との差(△OD600nm
min)を測定値として得た。その結果、図10に示すよう
に、3-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼ活性量と△OD
600nm /min との間に、良好な直線性が感度良く得られ
た。
【0056】 反応液I組成(pH8.5) 100mM HEPPS 7.5mM ATP 15mM 塩化マグネシウム 0.3M 酢酸ナトリウム 3mM β−NAD 90mM 3−ヒドロキシ酪酸 10U/ml NADHキナーゼ(実施例1で調製し
たもの) 反応液II組成:実施例2で用いた反応液II組成に同
じ。
【0057】
【実施例7】 グリセリンの定量 微量のグリセリンを定量する目的で, 下記反応液I組成
を持つ反応液300 μlに、各濃度(10,20,30,40,50 μM)
に調製したグリセリン溶液を検体としてそれぞれ50μl
を添加し、30℃で5分間放置した後、下記NK液を300 μl
加え、30℃で20分間反応させた。次に、下記反応II組
成を持つ反応液3.0ml を添加して混合し、30℃で反応さ
せて、1分後から6分後までの550nm における1分間当
りの平均吸光度変化量を求めた。その結果、図11に示す
ように、グリセリン濃度と平均吸光度変化量との間に、
原点を通る良好な直線性が感度良く得られた。
【0058】 反応液I組成(pH9.0) 65mM トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン 8mM ATP 20mM 塩化マグネシウム 0.5M 酢酸ナトリウム 5mM β−NAD 0.03% 牛血清アルブミン 7IU/ml グリセリンデヒドロゲナーゼ NK液組成 7.7U/ml NADHキナーゼ(実施例1で調製し
たもの) 0.2M 硫酸アンモニウム 反応液II組成(pH8.0) 20mM G−6−P 50mM リン酸二カリウム 0.03% 牛血清アルブミン 1.2mM ニトロテトラゾリウムブルー 0.1M EDTA−2Na 0.5% トリトンX−100 3IU/ml G−6−Pデヒドロゲナーゼ:イースト
由来 3IU/ml ジアホラーゼ:バチルス属由来
【0059】
【実施例8】 アルコールデヒドロゲナーゼの定量 微量のアルコールデヒドロゲナーゼを定量する目的で,
下記反応液I組成を持つ反応液300 μl に各酵素量(1,
2,3,4,5IU/L) に調製したアルコールデヒドロゲナーゼ
溶液を検体としてそれぞれ50μl を添加し、30℃で10分
間放置した後、下記NK液を300 μl 加え、30℃で20分間
反応させた。次に下記反応液II組成を持つ反応液3.0ml
を添加して混合し、30℃で反応させて、1 分後から6 分
後までの550nm における1 分間当りの平均吸光度変化量
を求めた。その結果、図12に示すように、アルコールデ
ヒドロゲナーゼ活性量と平均吸光度変化量との間に、原
点を通る良好な直線性が感度良く得られた。
【0060】 反応液I組成(pH9・0) 65mM グリシルグリシン 8mM ATP 20mM 塩化マグネシウム 0.5M 酢酸ナトリウム 0.4mM Thio−NAD 0.03% 牛血清アルブミン 50mM n−アミルアルコール NK液組成 7.7U/ml NADHキナーゼ(実施例1で調製し
たもの) 0.2M 硫酸アンモニウム 反応液II組成(pH8.0) 20mM G−6−P 50mM リン酸二カリウム 0.03% 牛血清アルブミン 1.2mM ニトロテトラゾリウムブルー 0.1M EDTA−2Na 0.5% トリトンX−100 6IU/ml G−6−Pデヒドロゲナーゼ:イースト
由来 6IU/ml ジアホラーゼ:クロストリジウム属由来
【0061】
【実施例9】 ATPの定量 微量のATPを定量する目的で,下記反応液I組成を持
つ反応液0.8mlに、各濃度(0〜50μM)のAT
Pを含有する試料液400μ1を添加し、35℃で20
分間反応させた。反応停止後、これに下記反応液II組
成を持つ反応液0.8mlを添加して混合し、直ちに分
光光度計の恒温キュベット内に導き、30℃で反応させ
て、同時に600nmにおける吸光度の変化を経時的に
測定し、発色反応後1分後の吸光度値と2分後の吸光度
値との差(△0D600nm/min)を測定値として
得た。その結果、図13に示すように、ATP濃度と△
0D600nm/minとの間に、良好な直線性が感度
良く得られた。 反応液I組成(pH8.5) 100mM HEPPS 3mM NADH 15mM 塩化マグネシウム 0.3M 酢酸ナトリウム 10U/ml NADHキナーゼ(実施例1で調製した
もの) 反応液II組成:実施例2で用いた反応液II組成に同
じ。
【0062】
【発明の効果】本発明の定量法は、NAD+ とNADHが混在
する系において、NAD+ の影響を受けることなく微量のN
ADHを高感度に定量し得る新規なものである。さらに、N
AD+ やATP を基質とする種々の酵素反応系に関与する酵
素活性、NAD+ 、ADP 、またはこれらとともに反応する
基質の、いずれかの測定をも良好に成し得るものであ
る。ひいては、疾病等の診断において、病態のマーカー
となる物質を正確に感度よく短時間に定量することを可
能とし、自動分析にも適用できるため正しい診断を与え
ることができ、臨床・医療等の分野で、産業上極めて有
意義である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本酵素の至適pH(●ー●はリン酸緩衝液;○ー
○はトリス塩酸緩衝液;▲ー▲は、グリシン水酸化ナト
リウム緩衝液) を示す図
【図2】本酵素の安定pH範囲( ●ー●はリン酸緩衝液;
○ー○はトリス塩酸緩衝液;▲ー▲は、グリシン水酸化
ナトリウム緩衝液) を示す図
【図3】本酵素の作用適温の範囲を示す図
【図4】本酵素の熱安定性を示す図
【図5】実施例2 における検量線を、NADH濃度と△OD
600nm /min との関係で示した図
【図6】実施例3 における検量線を、コール酸ナトリウ
ム濃度と△OD600nm /min との関係で示した図
【図7】実施例4における、β-NAD+を用いた場合の検
量線を、コール酸ナトリウム濃度と△OD550nm /min と
の関係で示した図
【図8】実施例4における、Thio-NAD+を用いた場合の
検量線を, コール酸ナトリウム濃度と△OD550nm /min
との関係で示した図
【図9】実施例5における、本法と3α-HSD-ホルマザン
法との、測定値の相関を示した図
【図10】実施例6における検量線を、3-ヒドロキシ酪酸
デヒドロゲナーゼ活性量と△OD 600nm /min との関係で
示した図
【図11】実施例7における検量線を、グリセリン濃度と
△OD550nm /min との関係で示した図
【図12】実施例8における検量線を、アルコールデヒド
ロゲナーゼ活性量と△OD550nm /min との関係で示した
【図13】実施例9における検量線をATP 濃度と、△OD
600nm /min との関係で示した図出願人 (財) 野田
産業科学研究所同 国際試薬株式会社代理人
弁理士 平木祐輔同 弁理士 石井 貞次同
弁理士 早川 康
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 白波瀬 泰史 神戸市西区学園西町5丁目8−3 532 −305 (72)発明者 岸 浩司 神戸市垂水区上高丸2−1−13−202 (72)発明者 渡津 吉史 明石市茶園場町3丁目2−804 (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C12Q 1/48 BIOTECHABS(STN)

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 NAD +及びNADHが混在する溶液に、二価の
    金属イオン及びXTP[式中、X はA(アデノシン)、U(ウ
    リジン)、G(グアノシン)、C(シチジン)、I(イノシ
    ン)、dT(チミジン)、dA(デオキシアデノシン)、dU
    (デオキシウリジン)、dG(デオキシグアノシン)、dC
    (デオキシシチジン)、dI(デオキシイノシン)を示
    す]の存在下に、NADHに特異性の高いNADHキナーゼを作
    用させてXDP(式中、X は前記と同じ) 及びNADPH を生成
    させ、次いでNADPH を、これをNADP + に酸化する触媒反
    応及びNADP+ をNADPH に還元する触媒反応を用いてサイ
    クリング反応させ、該サイクリング反応により消費され
    る基質または生成する生成物の変化量を検出することに
    より NAD+ 及びNADHが混在する溶液中のNADHのみを定量
    することを特徴とするNADHの高感度定量法。
  2. 【請求項2】 NAD+ が、β-NAD+、Thio-NAD+、または
    α-NAD+であり、NADHが、β-NADH 、Thio-NADH 、また
    はα-NADH である請求項1記載のNADHの高感度定量法。
  3. 【請求項3】 XTP〔式中、X はA(アデノシン)、U(ウリ
    ジン)、G(グアノシン)、C(シチジン)、I(イノシ
    ン)、dT(チミジン)、dA(デオキシアデノシン)、dU
    (デオキシウリジン)、dG(デオキシグアノシン)、dC
    (デオキシシチジン)、dI(デオキシイノシン)を示
    す〕を含む溶液に、二価の金属イオン及びNADHの存在下
    に、NADHに特異性の高いNADHキナーゼを作用させてXDP
    (式中、X は前記と同じ) 及びNADPH を生成させ、次い
    でNADPH を、これをNADP+ に酸化する触媒反応及びNADP
    + をNADPH に還元する触媒反応を用いてサイクリング反
    応させ、該サイクリング反応により消費される基質また
    は生成する生成物の変化量を検出することによりXTPを
    定量することを特徴とするXTP の高感度定量法。
  4. 【請求項4】 NAD+ が、β-NAD+、Thio-NAD+、または
    α-NAD+であり、NADHが、β-NADH 、Thio-NADH 、また
    はα-NADH である請求項3記載のXTP の高感度定量法。
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