JP2817881B2 - 歯科用組成物 - Google Patents

歯科用組成物

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、歯科用組成物に関し、より詳しくは、従来
の歯科用組成物に、ゴム重合体の存在下にエチレン性不
飽和モノマーの一種以上を重合して得た重合体(ゴムグ
ラフトコポリマー)が配合された、強度物性に優れた硬
化物を与える歯科用組成物に関する。
〔従来の技術〕
歯科材料の分野では、近年金属系材料から高分子系材
料への代替が急速に進められている。このような材料と
して、表面滑沢剤、ハードコート剤等の表面塗装剤、充
填用コンポジットレジン、前装用硬質レジン、コンポジ
ットレジンインレー、ジャケット冠等のコンポジットレ
ジン、人工歯、義歯床、義歯床裏装剤、個人トレー用材
料やブランケット等の歯矯正用材料等が例示できる。
これら材料の組成は、通常(メタ)アクリル酸エステ
ル系化合物と重合開始剤とを主成分としてなり、更に目
的によっては、必要に応じて第三成分として、無機物、
(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー、顔料、溶剤、
重合禁止剤、酸化安定剤等が添加されてなり、通常、可
視光、紫外線等による光重合、熱重合、レドックス重合
で重合させられる。また、これらは特に口腔内で重合硬
化させられる場合が多い。
〔発明が解決しようとする課題〕
しかしながら、このような高分子系材料を歯質代替材
料として考えた場合、金属材料に比べ、接着性、審美性
および操作性には優れるものの、強度等の機械的物性の
面で未だに十分とはいえなかった。
特に、臼歯部修復材料である臼歯部用コンポジットレ
ジンには、臼歯部特有の大きな咬合圧がかかるため、特
に強度物性が重要視されている。この問題を解決するた
めに、近年口腔外で光と熱による二段重合により架橋密
度を上げ、強度物性を増大させたインレー体を形成する
コンポジットレジンインレーという考え方が提唱されて
いるが、ポットライフ、操作性および耐衝撃性の点で課
題を残している。
また、ラダー構造を有するシロキサンポリマーの分子
複合による義歯床用レジンの強化(歯科材料・機器、6,
4,529,1987)等も提案されているが、十分なものとはい
えない。
本発明者らは、このような状況に鑑み鋭意検討した結
果、従来の歯科用組成物に、ゴム重合体の存在下にエチ
レン性不飽和モノマーの一種以上を重合して得たゴムグ
ラフトポリマーを配合することにより、強度物性に優れ
た硬化物を与える歯科用組成物が得られることを見い出
し、本発明を完成するに至った。
〔課題を解決するための手段〕
すなわち、本発明の歯科用組成物は、(メタ)アクリ
ル酸エステル系化合物を主成分とし、重合開始剤を含有
する歯科用組成物において、ゴム重合体の存在下にエチ
レン性不飽和モノマーの一種以上を重合して得たゴムグ
ラフト重合体が配合されたことを特徴するものである。
〔作用〕
本発明の歯科用組成物の主成分として用いられる(メ
タ)アクリル酸エステル系化合物は、単官能性の化合物
でもよいし、多官能性の化合物でもよい。単官能性(メ
タ)アクリル酸エステル系化合物の具体例としては、メ
チル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレー
ト、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)ア
クリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、
ベンジル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メ
タ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、
テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、メタク
リロイルオキシエチルトリメリット酸モノエステルおよ
びその無水物等が例示できる。
また、多官能性の(メタ)アクリル酸エステル系化合
物の具体例としては、下記一般式 (式中、Rは水素原子またはメチル基、nは1〜20の整
数である。) で表わされるエチレングリコールジ(メタ)アクリレー
ト、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ト
リエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエ
チレングリコールジ(メタ)アクリレート等のエチレン
グリコール誘導体のジ(メタ)アクリレート;1,3−ブタ
ンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオ
ールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオール
ジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリ
レート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビ
スフェノールAジグリシジルジ(メタ)アクリレート、
エトキシ化ビスフェノールAジグリシジルジ(メタ)ア
クリレート;ウレタンジ(メタ)アクリレート類;トリ
メチロールプロパントリ(メタ)アクリレート;4官能ウ
レタンテトラ(メタ)アクリレート類;ペンタエリスリ
トールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリ
トールペンタ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸骨
格のウレタンのヘキサ(メタ)アクリレート類が挙げら
れる。
これらの(メタ)アクリル酸エステル系化合物は、そ
の1種を使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用
いてもよい。
本発明の歯科用組成物に用いられる重合開始剤は、歯
科用組成物が用いられる重合形式に応じて任意に選択さ
れる。
熱重合の場合には、各種の過酸化物、アゾ化合物等
が、可視光や紫外光による光重合の場合には、ベンゾフ
ェノン類、、ベンゾインジメチルエーテルのようなケタ
ール化合物、ベンゾインアルキルエーテル類、アントラ
キノン類、チオキサントン類、アシルホスフィンオキサ
イド類、チオキサントン類、アシルホスフィンオキサイ
ド類およびα−ジケトン類を用いることができる。ま
た、光重合の場合には、第3級アミン等の還元剤を併用
してもよい。更に、過酸化物等の酸化物と還元剤とを別
々に配合して使用時に混合して、レドックス重合を行わ
せてもよい。重合開始剤の通常の添加量は、熱重合の場
合は0.1〜5重量%、光重合の場合は0.01〜5重量%、
レドックス重合の場合0.1〜10重量%である。
本発明の歯科用組成物には、必要に応じて無機フィラ
ー(例えばシリカ粉、石英粉、バリウムガラス等の各種
ガラス粉末等)、(メタ)アクリル酸エステル系ポリマ
ー(例えばポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチ
ル(メタ)アクリレートおよび(メタ)アクリル酸エス
テルを主成分とする共重合体等)を配合することができ
る。更に必要に応じて、顔料、溶剤(例えばエタノール
等のアルコール類、酢酸エチル等)、重合禁止剤(例え
ばハイドロキノン、メチルフェノール等)、酸化安定
剤、紫外線吸収剤、顔料(例えば酸化チタン、酸化鉄
等)、染料などを配合することもできる。
本発明の歯科用組成物の特徴は、重合体の存在下にエ
チレン性不飽和モノマーの少なくとも一種を重合して得
た重合体、いわゆるゴムグラフトコポリマーを、重合開
始剤を含む(メタ)アクリレート化合物を主成分とする
歯科用組成物に配合することにより、強度物性に優れた
硬化物を与える歯科用組成物を得た点にある。
ゴムグラフトコポリマーを構成するゴム重合体は、単
一のゴム成分からなるものでもよいし、ゴム以外の成分
または他の種類のゴム成分からなる芯に、ゴムまたはゴ
ムとゴム以外の高分子とを多層に被覆(但し最外層はゴ
ム層であるもの)してなるいわゆる多層複合ゴムでもよ
い。
単一ゴム成分からなるゴム重合体としては、ポリブタ
ジエン等のジエン系ゴム、EPDM等のオレフィン系ゴム、
ポリブチルアクリレート等のアクリレート系ゴムおよび
ジロキサン系ゴムなどが挙げられる。また、多層複合ゴ
ムとしては、ポリスチレン、スチレン系樹脂、AS樹脂等
の硬質樹脂やポリブタジエンのラテックスの存在下に、
アクリレート系モノマーを重合させたものが挙げられ
る。これらのゴム重合体の中でも、芯成分の存在下にア
クリレート系モノマーを重合させて得られる多層複合ゴ
ムおよびアクリレート系ゴムが好ましい。また、この多
層複合ゴムとしては、アクリレート系ゴムが60〜90重量
%存在するものであることが好ましく、芯成分がポリブ
タジエンであるものが好ましい。
ゴムグラフトコポリマーを得るためにゴム重合体の存
在下で重合させるエチレン性不飽和モノマーとしては、
メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレ
ート等の(メタ)アクリル酸エステル系化合物;スチレ
ン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物;およ
び(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物
などよりなる群から選ばれる1種以上の単量体または単
量体混合物を用いることができる。但し、このエチレン
性不飽和モノマーとして前記ゴム重合体を合成するため
に用いられたと同様のアクリレート系モノマーが用いら
れたとしても、それはグラフト共重合体の軟質成分であ
ってゴム重合体ではないので、ゴムグラフトコポリマー
におけるゴム重合体成分としてはカウントしない。一
方、ゴム重合体がゴム以外の樹脂をその芯または内層に
有するものである場合には、このゴム以外の樹脂もゴム
重合体として機能しているので、ゴム重合体成分として
カウントする。
このゴムグラフトコポリマーにおいて、ゴム重合体成
分が該ゴムグラフトコポリマー中に10〜90重量%含まれ
ていることが好ましく、45〜70重量%がより好ましい。
このようなゴムグラフトコポリマーとしては、ポリブ
チルアクリレート系ゴム、あるいはポリブタジエンや、
ポリスチレン、スチレンやメチルメタクリレートブチル
アクリレートとの共重合体を芯として、ブチルアクリレ
ートや2−エチルヘキシルアクリレートを主成分とする
アクリレート系ゴムを外層とする複合ゴムの存在下に、
メチルメタクリレートを重合したりメチルメタクリレー
トとアクリロニトリルやスチレン等とを重合したもの
(ゴム45〜70重量%、エチレン性不飽和モノマー30〜55
重量%)が例示され、その具体的な例としては、アクリ
ロイドKM−330、(商品名、ローム&ハース社製)、ク
レハHIA−28(商品名、呉羽化学(株)製)、カネエー
スFM(商品名、鐘淵化学(株)製)、メタブレンW−80
0(商品名、三菱レイヨン(株)製)等が挙げられる。
ゴムグラフトコポリマーの歯科用組成物への配合比率
は、(メタ)アクリレート化合物に対して0.01〜10重量
%の範囲が好ましく、0.05〜5重量%の範囲がより好ま
しい。0.05重量%未満では強度物性における添加効果が
発現しにくく、一方10重量%を超える添加量では逆に強
度物性が低下しやすいので好ましくない。
〔実施例〕
以下、実施例に従い本発明を説明するが、本発明はこ
れらの実施例に限定されるものではない。なお、部は重
量部を表わす。
実施例において用いたゴムグラフトコポリマー(アク
リレートC)の製造方法を下記に示す。
(1)ブタジエン系弾性体ラテックス(C−1)の製造 1,3−ブタジエン100部、ラウリン酸ソーダ4部、n−
ラウリルメルカプタン0.5部、過硫酸カリウム0.4部およ
び脱イオン水180部の混合物を、窒素置換を行なったオ
ートクレーブ中に仕込み、撹拌しながら60℃で50時間重
合させてゴムラテックス(平均粒子径0.09μm)を得
た。膨潤度は25であった。
(2)肥大化用高分子ラテックス(D)の合成 アクリル酸エチル 80 部 メタクリル酸 20 部 過硫酸カリウム 0.5部 ノンサートTK−1(日本油脂(株)製、半硬化牛脂カ
リ石けん) 2.0部 ラプゾール80(日本油脂(株)製、オクチルスルホこ
はく酸ナトリウム) 1.0部 水 200 部 上記組成に従って70℃で4時間重合させ、pH6.2のエ
マルジョンラテックスを得た。
(3)肥大化ラテックス(C−2)の合成 ラテックス(C−1)100部(固形分)を撹拌機を備
えた反応釜に入れ、それにラテックス(D)2.0部(固
形分)を撹拌しながら10秒間で添加し肥大化ラテックス
(C−2)を得た。この肥大化ラテックスは平均粒子径
0.5μmであった。
(4)アクリレート系ゴム重合体の製造 この肥大化ラテックス(C−2)10部(固形分とし
て)に、脱イオン水150部に溶解したインサールTK−1
2部およびアクリル酸ブチル189.5部、シアヌル酸ト
リアリル0.5部からなる混合物を加え、温度を50℃にて
過硫酸カリ0.2部(水10部)を加え2時間重合させてア
クリレート系ゴム重合体ラテックスを得た。アクリル酸
ブチルの重合率は99%以上であった。
(5)ゴムグラフトコポリマー(アクリレートC)の製
造 このアクリレート系ゴム重合体ラテックスの全量に、
インサールTK−1 0.6部(水10部)を加え、80℃に昇温
し、温度を保ちながらスチレン30部を1時間に亘って滴
下し、2時間保持した。更に、メタクリル酸メチル30部
を1時間に亘って滴下し、2時間保持して重合を完結さ
せた。スチレン、メタクリル酸メチルのそれぞれ所定時
間保持後の重合率はいずれも99%以上であった。得られ
たラテックスに熱安定剤としてB.H.T(2,6−ジ−tert−
ブチル−p−クレゾール)を乳化状態で0.5部添加し、
硫酸水溶液に加え、酸析凝固した後、洗浄、脱水し乾燥
を行い、グラフト共重合体を粉末状にて回収した。
実施例1〜7、比較例1および参考例1〜3 歯科用組成物Iとして下記組成に基づき調製したもの
を用い、下面に厚さ0.1mmのカバーグラスを付けた内径4
mmφ、高さ6mmのステンレス製金型に充填し、上面に同
じカバーグラスを密着させた後に、両面より可視光照射
器「GCライト」(而至歯科工業(株)製)で60秒ずつ光
照射を行ない圧縮試験用硬化物を得た。
この硬化物について、テンシロン(島津製作所製IS−
500)を用いてクロスヘッドスピード1mm/min.で圧縮強
度を測定し評価した。その結果を第1表に示した。
実施例8〜14、比較例2および参考例3〜4 歯科用組成物IIとして下記組成のものを用いた以外
は、実施例1と同様に圧縮試験用硬化物を作製し、圧縮
強度を評価した。その結果を第2表に示した。
実施例15〜21、比較例3、参考例5〜6 歯科用組成物Iの代わりに、下記組成のA液とB液と
からなる歯科用組成物IIIを用い、光重合する代わりに
両液を均一に混合、直ちに実施例1で用いたステンレス
製金型に充填し、10分間常温放置してレドックス重合を
行なわせた以外は実施例1と同様に重合硬化し、圧縮強
度を評価した。その結果を第3表に示した。
実施例22〜28、比較例4および参考例7〜8 歯科用組成物Iの代わりに下記組成からなる歯科用組
成物IVを用い、光重合する代わりに実施例1で用いたス
テンレス製金型に充填し、60℃で5時間熱重合を行なっ
た以外は実施例1と同様にして重合硬化物を作製し、圧
縮強度を評価した。その結果を第4表に示した。
実施例29〜35、比較例5および参考例9〜10 歯科用組成物V(コンポジットレジン)として、下記
組成のものを用いたことを除いては、実施例1と全く同
様にして光重合で圧縮試験用硬化物を作製し、圧縮強度
を評価した。その結果を第6表に示した。
実施例36〜42、比較例6および参考例11〜12 歯科用組成物Iの代わりに下記組成からなる歯科用組
成物VI(義歯床用レジン)を用い、光重合する代わりに
実施例1で用いたステンレス製金型に充填し、60℃で5
時間熱重合を行なった以外は実施例1と同様にして重合
硬化物を作製し、圧縮強度を評価した。その結果を第6
表に示す。
〔発明の効果〕 以上詳述したように、重合開始剤を含む(メタ)アク
リレート化合物を主体とする歯科用組成物に、ゴム重合
体の存在下にエチレン性不飽和モノマーの少なくとも一
種を重合して得たゴムグラフトコポリマーを配合した本
発明の歯科用組成物を用いることにより、強度物性に優
れた歯科用硬化物が得られ、特に、高い咬合圧のかかる
臼歯部修復材料および義歯床用レジンなどに適用した場
合に優れた効果が発揮される。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 新 純子 広島県大竹市御幸町20番1号 三菱レイ ヨン株式会社内 (56)参考文献 特開 昭60−173058(JP,A) 特開 昭59−199618(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) A61K 6/00

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】(メタ)アクリル酸エステル系化合物を主
    成分とし、重合開始剤を含有する歯科用組成物におい
    て、ゴム重合体の存在下にエチレン性不飽和モノマーの
    一種以上を重合して得たゴムグラフト重合体が配合され
    たことを特徴とする歯科用組成物。
  2. 【請求項2】エチレン性不飽和モノマーが(メタ)アク
    リル酸エステル系化合物、芳香族ビニル化合物およびシ
    アン化ビニル化合物からなる群より選ばれたものである
    請求項1記載の歯科用組成物。
  3. 【請求項3】(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーお
    よび無機充填剤の少なくとも一種が更に添加されてなる
    請求項1記載の歯科用組成物。
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