JP2806619B2 - 針状バリウムフェライト磁性粉の製法 - Google Patents

針状バリウムフェライト磁性粉の製法

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【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、高密度磁気記録方式用垂直磁気記録方式の
塗布型媒体に使用する針状バリウムフェライト磁性粉の
製法、詳しくは、針状で、焼結がきわめて少なく、且つ
飽和磁化の高いバリウムフェライト磁性粉の製法に関す
るものである。
〔従来の技術〕
従来、バリウムフェライト磁性粉には板状のものと針
状のものが知られている。板状のものの製造法として
は、例えば、共沈法、ガラス結晶化法、水熱合成法等、
種々の方法が知られている。また、針状のものの製造法
としては、例えば、針状のオキシ水酸化鉄等を炭酸バリ
ウム等で被覆した後、焼成する方法(特開昭61−104602
号公報参照)が知られている。
〔発明が解決しようとする課題〕
しかし、針状のものは、原料鉄化合物の針状形状を焼
成時に保持するのが難しく、焼成温度が低ければ、針状
を保持できるが、飽和磁化が低くなり、また焼成温度が
高ければ、飽和磁化を高くできるが、焼結してしまい針
状が保持できなくなるという問題があった。焼成温度を
低くして時間を長くする方法もあるが、やはり焼結も時
間と共に進行するし、生産効率からも好ましい方法とは
いえない。
また、特開昭61−104602号公報に記載されている製造
法においては、炭酸バリウムによるオキシ水酸化鉄の被
覆を、塩化バリウムに重炭酸ソータ又は炭酸ソーダを反
応させる方法により行っているが、この方法では、炭酸
バリウムを充分に微細なコロイド粒子としてオキシ水酸
化鉄に被覆することができず、得られるバリウムフェラ
イト磁性粉の磁気特性が不充分であっあ。これは、生成
する炭酸バリウムが充分に微細でないこと、及びバリウ
ムの一部が溶出してしまうためである。
従って、本発明の目的は、前記問題点を解決し、針状
で、焼結しておらず、且つ飽和磁化が従来のものと比較
して飛躍的に向上したバリウムフェライト磁性粉の製法
を提供することにある。
〔課題を解決するための手段〕
本発明者等は、上記目的を達成すべく鋭意検討した結
果、バリウム化合物で被覆した針状のオキシ水酸化鉄又
は酸化鉄を焼成して針状バリウムフェライト磁性粉を製
造する際に、予め、上記オキシ水酸化鉄又は酸化鉄の粒
子表面をSi及びAlの少なくとも1種の元素の酸化物及び
/又は水酸化物で被覆しておくことにより、焼結が少な
くなり、しかも、飽和磁化が向上した針状バリウムフェ
ライト磁性粉が得られることを知見した。
また、本発明者等は、針状のオキシ水酸化鉄又は酸化
鉄をバリウム化合物で被覆する際に、塩化バリウム等の
水溶性バリウム化合物を含む針状のオキシ水酸化鉄又は
酸化鉄のスラリーに、水酸化アルカリを添加してpHを8
以上にし、このスラリーに炭酸ガス又は炭酸塩の炭酸源
を添加し、pH8〜12の範囲で炭酸バリウムを析出させる
ことにより、微細な炭酸バリウムのコロイド粒子を生成
させることができ、上記オキシ水酸化鉄又は酸化鉄を炭
酸バリウムで均一に被覆でき、磁気特性の優れた針状バ
リウムフェライト磁性粉が得られることを知見した。
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、針状
のオキシ水酸化鉄又は酸化鉄、水溶性バリウム化合物、
及び水酸化アルカリを含む、pHが8以上の水分散スラリ
ーに、炭酸ガス及び/又は炭酸塩を添加しpH8〜12とし
て上記オキシ水酸化鉄又は酸化鉄の表面を炭酸バリウム
で被覆し、次いで、炭酸バリウムで被覆されたオキシ水
酸化鉄又は酸化鉄を、Si及びAlの少なくとも一種の元素
の酸化物及び/又は水酸化物で更に被覆し、次いで、濾
過、水洗、乾燥した後、700〜1000℃で焼成することを
特徴とする針状バリウムフェライト磁性粉の製法を提供
するものである。
以下、本発明のバリウムフェライト磁性粉の製法につ
いて詳述する。
本発明で用いられる針状のオキシ水酸化鉄及び酸化鉄
としては、α−FeOOH、β−FeOOH、γ−FeOOH、α−Fe2
O3、及びγ−Fe2O3の何れであっても良いが、良好な針
状バリウムフェライトを得るためには、枝分かれのない
もの、粒度分布の揃ったものが好ましく、平均長軸長0.
1〜1.0μm及び平均短軸長0.01〜0.1μmの範囲のもの
を使用するのが好ましい。
而して、本発明のバリウムフェライト磁性粉の製法を
実施するには、先ず、上記オキシ水酸化鉄又は酸化鉄
(以下、原料鉄化合物という)を次のようにして炭酸バ
リウムで被覆する。
原料鉄化合物及び塩化バリウム等の水溶性バリウム化
合物を水に加えて、原料鉄化合物の水分散スラリーを調
製する。この際、スラリー濃度は、原料鉄化合物5〜7g
/程度とするのが好ましい。
次いで、上記スラリーに水酸化アルカリを添加して、
スラリーのpHを8以上にした後、炭酸ガス及び/又は炭
酸塩を添加し、pH8〜12の範囲で炭酸バリウムを析出さ
せて、炭酸バリウムで被覆された原料鉄化合物を得る。
即ち、例えば、水溶性バリウム化合物として塩化バリウ
ムを用いた場合、水酸化アルカリの添加によりスラリー
中の塩化バリウムは水酸化バリウムとなるが、pH8以上
では水酸化バリウムの水に対する溶解度はBaO換算で3.8
4g/100g(20℃)であるから、溶解度以下の濃度にして
おけば水酸化バリウムは溶解している。この状態で炭酸
源を添加すると、速やかに微細な炭酸バリウムが析出
し、原料鉄化合物に被着するのである。この際、スラリ
ーのpHを8〜12の範囲に保持するのは、pHを7以下にす
ると炭酸バリウムが溶解し始め、またpHを12超とすると
充分に微細な炭酸バリウムが得られないからである。
また、上記水酸化アルカリとしては、水酸化ナトリウ
ムが好ましく、また、上記炭酸塩としては、炭酸ナトリ
ウム、炭酸水素ナトリウム等が好ましい。
次に、上記の如くして炭酸バリウムで被覆された原料
鉄化合物を、次のようにしてSi及びAlの少なくとも一種
の元素の酸化物及び/又は水酸化物で更に被覆する。
炭酸バリウムで被覆された原料鉄化合物に、水ガラ
ス、ケイ酸ソーダ等のSi化合物及び/又はアルミン酸ソ
ーダ、塩化アルミニウム等のAl化合物を添加し、Si,Al
の酸化物及び/又は水酸化物を付着させる。
この際、Siとして水ガラスやケイ酸ソーダ、Alとして
アルミン酸ソーダのようなアルカリ性のものを使用する
場合は、塩酸や炭酸ガス等を添加することにより、また
塩化アルミニウム等のような酸性のものを使用する場合
は、アルカリを添加することにより、それぞれpHを8〜
12に調整することが好ましい。
Si,Alの酸化物及び/又は水酸化物の被着量は、Feに
対して、Siは好ましくは0.1〜2.0モル%、より好ましく
は0.5〜1.0モル%、Alは好ましくは0.1〜4.0モル%、よ
り好ましくは0.5〜2.0モル%である。
次いで、上記の如くしてSi,Alの酸化物及び/又は水
酸化物で更に被覆された原料鉄化合物のスラリーを濾
過、水洗、乾燥し、粉末を得る。
然る後、上記粉末を700〜1000℃で焼成し、本発明に
係る針状バリウムフェライト磁性粉を得る。
焼成温度が700℃のように低い場合は、100時間のよう
な長時間の焼成により充分な飽和磁化を得ることができ
る。また、焼成が1000℃のような高温の場合は、数分〜
数10分で充分な飽和磁化が得られる。更に好ましくは、
800℃で5時間、又は900℃で1時間のような焼成条件で
ある。即ち、焼成温度800〜900℃、焼成時間1〜5時間
が現実的な範囲として推奨できるが、本発明において
は、Si又はAlの酸化物及び/又は水酸化物の添加によ
り、900〜1000℃でも焼結の少ないバリウムフェライト
磁性粉を得ることができる。
この様にして得られる本発明に係るバリウムフェライ
ト磁性粉は、長さ0.1〜1.0μm及び幅0.01〜0.1μmの
針状粉末であり、焼結がきわめて少なく且つ飽和磁化が
高いものである。
尚、本発明においては、焼成する前に酸化硼素(B
2O3)や酸化ビスマス(Bi2O3)等の融剤を加えても良
い。B2O3は750℃以上で飽和磁化を向上させる効果があ
るが、焼結も促進する。また、Bi2O3は850℃付近、即ち
Bi2O3の融点付近で飽和磁化を向上させる効果がある。
これらの融剤は、バリウムフェライトに対して1重量%
程度の添加では焼結はほとんど進まない。従って、融剤
を添加する場合、その好ましい添加量は1〜5重量%で
ある。
また、本発明においては、保磁力制御剤としてのCo及
びTiを添加することもでき、これらの添加は、バリウム
化合物被着と同時あるいはその前後に行えば良い。
〔実施例〕
以下に実施例を比較例と共に挙げ、本発明を更に具体
的に説明する。
実施例1〜4 針状ゲーサイト(α−FeOOH)66.6g及び塩化バリウム
(BaCl2・2H2O)16.8gを脱イオン水に加えて10の分散
スラリーとし、これを撹拌しながら、水酸化ナトリウム
(NaOH)11gを脱イオン水に溶解して加え、スラリーのp
Hを12にする。これに炭酸ガスを3/分で8分間通
じ、スラリーのpHを10.5とする。これに水ガラスをSiと
して下記表1に示す割合で添加し、良く撹拌する。得ら
れたスラリーを濾過、水洗、乾燥して固型物を得る。得
られた固型物を空気雰囲気下で900℃で5時間焼成し
て、針状バリウムフェライト磁性粉をそれぞれ得た。
得られたバリウムフェライト磁性粉は、何れも、X線
回析スペクトルによりマグネトプランバイト型であるこ
とを確認した。また、これらのバリウムフェライト磁性
粉それぞれについて、振動試料型磁力計で磁気特性を、
透過型挙電子顕微鏡で焼結状態をそれぞれ測定した。そ
の結果を下記表1に示す。
実施例5〜8 実施例1〜4において、水ガラスを添加する代わり
に、塩化アルミニウム(AlCl3・6H2O)を水に溶解した
ものをAlとして下記表1に示す割合で添加する以外は、
実施例1〜4と同様にして針状バリウムフェライト磁性
粉をそれぞれ得た。
得られたバリウムフェライト磁性粉は、何れも、X線
回析スペクトルによりマグネトプランバイト型であるこ
とを確認した。また、これらのバリウムフェライト磁性
粉それぞれの磁気特性及び焼結状態を実施例1〜4と同
様の方法で測定した。その結果を下記表1に示す。
実施例9 実施例2において、水ガラスを添加した後、更に塩化
アルミニウム(AlCl3・6H2O)を水に溶解したものをAl
として下記表1に示す割合で添加する以外は、実施例2
と同様にして針状バリウムフェライト磁性粉を得た。
得られたバリウムフェライト磁性粉の磁気特性及び焼
結状態を実施例1〜4と同様の方法で測定した。その結
果を下記表1に示す。
実施例10 針状ゲーサイト(α−FeOOH)55.5g、塩化バリウム
(BaCl2・2H2O)16.8g、塩化コバルト(CoCl2・2H2O)1
0.4g及び塩化チタン(TiCl4)11.9gを脱イオン水に加え
て10の分散スラリーとし、これを撹拌しながら、水酸
化ナトリウム(NaOH)26gを脱イオン水に溶解して加
え、スラリーのpHを12にする。これに炭酸ナトリウム
(Na2Co3)14.57g脱イオン水に溶解したものを加え、ス
ラリーのpHを10.5とする。これに水ガラスをSiとして下
記表1に示す割合で添加し、良く撹拌する。得られたス
ラリーを濾過、水洗、乾燥して固型物を得る。得られた
固型物を空気雰囲気下で1000℃で1時間焼成して、針状
バリウムフェライト磁性粉を得た。
得られたバリウムフェライト磁性粉の磁気特性及び焼
結状態を実施例1〜4と同様の方法で測定した。その結
果を下記表1に示す。
比較例1 実施例1〜4において、水ガラスを添加しない以外
は、実施例1〜4と同様にして針状バリウムフェライト
磁性粉を得た。
得られたバリウムフェライト磁性粉の磁気特性及び焼
結状態を実施例1〜4と同様の方法で測定した。その結
果を下記表1に示す。
比較例2 針状ゲーサイト(α−FeOOH)66.6g及び塩化バリウム
(BaCl2・2H2O)16.8gを脱イオン水に加えて10の分散
スラリーとした。これに炭酸ナトリウム(Na2CO3)14.5
7gを脱イオン水に溶解して加える。これに水ガラスをSi
として下記表1に示す割合で添加し、良く撹拌する。得
られたスラリーを濾過、水洗、乾燥して固型物を得る。
得られた固型物を空気雰囲気下で900℃で5時間焼成し
て、針状バリウムフェライト磁性粉を得た。
得られたバリウムフェライト磁性粉の磁気特性及び焼
結状態を実施例1〜4と同様の方法で測定した。その結
果を下記表1に示す。
比較例3 比較例2において、炭酸ナトリウム(Na2CO3)を加え
る代わりに、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)11.55g加え
る以外は、比較例2と同様にして針状バリウムフェライ
ト磁性粉を得た。
得られたバリウムフェライト磁性粉の磁気特性及び焼
結状態を実施例1〜4と同様の方法で測定した。その結
果を下記表1に示す。
〔発明の効果〕 本発明のバリウムフェライト磁性粉の製法によれば、
針状で、焼結がきわめて少なく、且つ飽和磁化が従来の
ものと比較して飛躍的に向上したバリウムフェライト磁
性粉を得ることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 鈴木 明 群馬県渋川市金井425番地 関東電化工 業株式会社研究開発センター内 (72)発明者 杉本 光男 東京都練馬区氷川台4―56―5 (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C01G 49/00 - 49/08

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】針状のオキシ水酸化鉄又は酸化鉄、水溶性
    バリウム化合物、及び水酸化アルカリを含む、pHが8以
    上の水分散スラリーに、炭酸ガス及び/又は炭酸塩を添
    加しpH8〜12として上記オキシ水酸化鉄又は酸化鉄の表
    面を炭酸バリウムで被覆し、次いで、炭酸バリウムで被
    覆されたオキシ水酸化鉄又は酸化鉄を、Si及びAlの少な
    くとも一種の元素の酸化物及び/又は水酸化物で更に被
    覆し、次いで、濾過、水洗、乾燥した後、700〜1000℃
    で焼成することを特徴とする針状バリウムフェライト磁
    性粉の製法。
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