JP2800187B2 - 5−メチルウリジンの製造方法 - Google Patents

5−メチルウリジンの製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 5−メチルウリジンはリボチミジンとも呼ばれ、チミ
ジンの類縁体である。すなわちチミジンの糖部分がデオ
キシリボースであるのに対して5−メチルウリジンの糖
部分はリボースである。本物質は容易に化学的に還元し
てチミジンに変換しえる。チミジンは医薬原料、特に最
近世界的に問題になっているエイズ(AIDS)に対する最
も効果のある治療薬として知られているアジドチミジン
の原料であり大量合成法の確立が望まれている。本発明
は化学合成法で容易にチミジンに変換することのできる
5−メチルウリジンを微生物によって製造させる方法に
関するものである。
(従来の技術) 5−メチルウリジンの製造法としてはリボースと5−
メチルウラシルからの化学合成法が良く知られているが
収率が非常に悪い。またウリジンの5位を化学合成の手
法によってメチル化する方法もあるが、一度ブロモ化し
てメチル基を導入するために操作が複雑で実用的でな
い。ピリミジンヌクレオシドを対応塩基化合物と対応リ
ボース化合物との酵素的反応によってつくることは、特
開昭56−102794号公報ですでに知られているが、5−メ
チルウリジンの合成に関して記載されていないし、又他
のピリミジンヌクレオシドの合成収率も低い。
(発明が解決しようとする課題) 化学合成法による5−メチルウリジンの製法の欠点を
補う方法、つまり操作が簡便で合成収率の極めて良い5
−メチルウリジンの製造方法の提供である。
(課題を解決するための手段) 本発明者はこのような目的を達成するべく鋭意検討の
結果、グアノシンに化学合成法で安価に供給される5−
メチルウラシル(チミン)を微生物の存在下に作用させ
ることにより、グアノシンが5−メチルウリジンに変換
されることを見いだし本発明を完成するに至った。本発
明を簡単に記すと以下の通りである。
即ち本発明は、(イ)グアノシン、(ロ)無機リン酸
もしくはその塩及び(ハ)5−メチルウラシルから5−
メチルウリジンを生成せしめる方法である。またグアノ
シンのかわりに対応するヌクレオチドであるグアノシン
−5′−モノリン酸を用いても構わない。なぜならば、
グアノシン−5′−モノリン酸は反応中にグアノシンに
変換されるため、基質として利用できるからである。
アクロモバクター属、エアロモナス属、アースロバク
ター属、バチルス属、ブレビバクテリウム属、セルロモ
ナス属、シトロバクター属、エシェリヒア属、エンテロ
バクター属、エルビニア属、フラボバクテリウム属、ロ
ドコッカス属、クレブシェラ属、ミクロバクテリウム
属、ミクロコッカス属、プロテウス属、サルシナ属、セ
ラチア属、ストレプトマイセス属、ビブリオ属及びキサ
ントモナス属に属し、例えば以下のようなものである。
アクロモバクター ラクティカム FERM P−7401 (Achromobacter lacticum) エアロモナス サルモニシダ ATCC 14174 (Aeromonas salmonicida) アースロバクター シンプレクス FERM P−10068 (Arthrobacter simplex) バチルス サーキュランス ATCC 9966 (Bacillus circulans) ブレビバクテリウム アセチリカム ATCC 954 (Brevibacterium acetylicum) セルロモナス フラビゲナ ATCC 486 (Cellulomonas flavigena) シトロバクター フロウンディ IFO 13539 (Citrobacter freundii) エシェリヒア コリ FERM P−9736 (Escherichia coli) エンテロバクター クロアカエ ATCC 7256 (Enterobacter cloacae) エルビニア カロトボラ FERM P−2766 (Erwinia carotovora) フラボバクテリウム レナナム FERM BP−1862 (Flavobacterium rhenanum) クレブジェラ ニューモニエ ATCC 8308 (Klebsiella pneumoniae) ミクロバクテリウム ラクチカム ATCC 8180 (Microbacterium lacticum) ミクロコッカス ルテウス FERM P−7399 (Micrococcus luteus) プロテウス ミラビリス FERM P−9599 (Proteusu mirabilis) ロドコッカス ロドクラウス ATCC 21291 (Rhodococcus rhodochrous) サルシナ ルテア FERM P−7400 (Sarcina lutea) セラチア ルベシファシエンス FERM BP−1863 (Serratia rubefaciens) ストレプトマイセス タナシエンシス ATCC 15238 (Streptomyces tanashiensis) ビブリオ メチュニコビー ATCC 7708 (Vibrio metschnikovii) キサントモナス シトリ FERM P−8462 (Xanthomonas citri) 等がある。
これらの微生物を用いて5−メチルウリジンを生成せ
しめる方法は、微生物の培養中に基質を添加する培養法
を用いても良いし、また培養した菌体あるいはこの処理
物を基質に作用させる酵素法を用いても良い。
培養法を用いる場合には、炭素源、窒素源、P、S、
Fe、Mn等の無機イオン、さらに必要ならばビタミン等の
微量栄養素または蛋白分割物、酵母エキスのような有機
窒素源を含有する通常の培地を基本に用いれば良い。
即ち、5−メチルウリジンをグアノシンより生産する
場合には、上記基本培地にグアノシン、リン酸若しくは
その塩及び5−メチルウラシルを添加して培養すればよ
い。
上記基質の添加は培養初期でも培養途中でも構わな
い。酵素法を用いる場合の酵素源としては、炭素源、窒
素源、P、S、Fe、Mn等の無機イオン、更に必要ならば
ビタミン等の微量栄養素を含有する培地または淡白分解
物、若しくは酵母エキスのような有機窒素源を含有する
通常の培地で培養した培養液、さらにこれより得た洗浄
菌体が使用できる他に、菌体処理物も使用できる。菌体
処理物としては、アセトン乾燥菌体、菌体の磨砕物、菌
体の超音波処理物、界面活性剤あるいはトルエン等の処
理菌体、リゾチーム等の酵素処理菌体、菌体より抽出し
た後、塩析等により分離した菌体の蛋白区分の精製物、
更に本菌体および菌体処理物の固定化物等いずれもが使
用できる。培養法を用いる場合でも、酵素法を用いる場
合でも基質として使用するグアノシンの濃度は1−1000
mM程度が適当であり、無機リン酸またはその塩の濃度は
グアノシンの0.01−10倍モル程度が適当である。無機リ
ン酸の塩は反応の進行を大きく阻害しないものであれば
いずれを用いてもよく、例えばナトリウム塩、カリウム
塩、アンモニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等
の無機塩、さらにはトリメチルアンモニウム塩等の有機
塩が用いられる。グアノシンから5−メチルウリジンを
直接生産する場合でも、5−メチルウラシルの添加量は
上記基質と等モルあるいはそれ以上が適当で、通常1−
10倍モル程度が適当である。又、グアノシンより直接生
産させる場合において、基質のグアノシンが反応液中に
残ってもよい場合には、5−メチルウラシルの添加量は
これらの基質の等モル以下でもよい。
さてこれらを含む水溶液に前記菌体、またはその処理
物を加え、pHを4−10の範囲に調製した後、20−70℃、
望ましくは50−70℃で静置あるいは撹拌しながら10分−
10日間保持すると反応が進行し、反応液中に目的とする
5−メチルウリジンが蓄積される。
反応液より5−メチルウリジンを採取する方法は、水
等の溶媒にたいする溶解度を利用したり、イオン交換樹
脂や吸着樹脂を用いる方法で行うことができる。また5
−メチルウリジンの定量は高速液体クロマトグラフィー
を用いる方法で行えばよい。
以下、実施例に従って本発明を更に詳細に説明する。
参考例1 酵母エキス0.5g/dl、ポリペプトン1.0g/dl、肉エキス
1.0g/dl、NaCl 0.5g/dlを含む培地(pH 7.0)50mlを500
ml容肩付きフラスコに分注し殺菌した。この培地に、ブ
イヨン寒天培地にて30℃、16時間前培養した第1表に示
す微生物を1白金耳ずつ接種し、30℃にて16時間振とう
培養した。得られた培養液より菌体を遠心分離より分離
した後、0.05Mリン酸バッファ−(pH 7.0)で洗浄し、
更に遠心分離することにより洗浄菌体を調製した。
上記洗浄菌体を20mMのリボース−1−リン酸と20mMの
5−メチルウラシルを含む0.05Mトリスバッファー(pH
7.2)10mlに5g/dlになるように添加し、60℃、24時間反
応させた。各反応液中に生成した5−メチルウリジンの
濃度を高速液体クロマトグラフィーをもちいて測定しそ
の結果を第1表に示した。
実施例1 参考例1と同様に培養調製した第2表に示す微生物の
洗浄菌体を50mMのグアノシンと50mMの5−メチルウラシ
ルを含む100mMのリン酸バッファー(pH 7.0)10mlに5g/
dlになるように添加し、60℃、24時間反応させた。各反
応液中に生成した5−メチルウリジンを参考例1と同様
の方法で測定し、その結果を第2表に示した。
実施例2 5−メチルウリジンの高生産株であるフラボバクテリ
ウムレナナム(Flavobacterium rhenanum FERM BP−186
2)について参考例1同様に培地調製し、その洗浄菌体
を第3表に示す50mMのヌクレオシドと50mMの5−メチル
ウラシルを含む100mMのリン酸バッファー(pH 7.0)10m
lに5g/dlになるように添加し、60℃、24時間反応させ
た。各反応液中に生成した5−メチルウリジンを参考例
1と同様の方法で測定し、その結果を第3表に示した。
実施例3 参考例1と同様の培地を用いて、実施例1と同様の方
法で、37℃、16時間培養したフラボバクテリウム レナ
ウム(Flavobacterium rhenanum FERM BP−1862)の培
養液に予め殺菌した100mMのグアノシンと100mMの5−メ
チルウラシルを含む100mMのリン酸バッファー(pH 7.
0)100mlを添加し、更に24時間培養を続けた。この培養
液中に生成した5−メチルウリジンを参考例1の方法と
同様に定量した結果、33mg/dlの5−メチルウリジンが
生成していた。
(効果) 本発明の方法は従来の化学合成法に比較して、反応が
簡単で、しかも高収率で目的とする5−メチルウリジン
を製造できる優れた方法である。また、このようにして
製造された5−メチルウリジンは最近世界的に問題とな
っているエイズ(AIDS)の治療薬として有用なアジドチ
ミジン(AZT)の原料となる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI (C12P 19/38 C12R 1:06) (C12P 19/38 C12R 1:09) (C12P 19/38 C12R 1:13) (C12P 19/38 C12R 1:185) (C12P 19/38 C12R 1:18) (C12P 19/38 C12R 1:20) (C12P 19/38 C12R 1:22) (C12P 19/38 C12R 1:32) (C12P 19/38 C12R 1:265) (C12P 19/38 C12R 1:37) (C12P 19/38 C12R 1:425) (C12P 19/38 C12R 1:465) (C12P 19/38 C12R 1:63) (C12P 19/38 C12R 1:64)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】アクロモバクター属、エアロモナス属、ア
    ースロバクター属、バチルス属、ブレビバクテリウム
    属、セルロモナス属、シトロバクター属、エシェリヒア
    属、エンテロバクター属、エルビニア属、フラボバクテ
    リウム属、ロドコッカス属、クレブシェラ属、ミクロバ
    クテリウム属、ミクロコッカス属、プロテウス属、サル
    シナ属、セラチア属、ストレプトマイセス属、ビブリオ
    属及びキサントモナス属に属し、 (イ)グアノシン、 (ロ)無機リン酸もしくはその塩及び (ハ)5−メチルウラシル から5−メチルウリジンを生成する能力を有する微生物
    を水性媒体中で (イ)グアノシン、 (ロ)無機リン酸もしくはその塩及び (ハ)5−メチルウラシル に作用せしめることを特徴とする5−メチルウリジンの
    製造方法。
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