JP2797077B2 - 建築部材用継手装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、木造家屋或いは鉄
骨構造建築物等を建築するのに好適な骨組を構築するた
めの建築部材用継手装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来の建築物の建築方法として、軸組工
法と枠工法なるものが良く知られている。前者は、スケ
ルトンスキン工法やポスト＆ビーム工法とも称されるも
ので、柱、梁を主体として構成する架構方法である。

【０００３】後者は、ツーバイフォー工法やプラットフ
ォームフレーム工法とも称されるもので、根太で組まれ
た床の枠組に対して構造物用合板又はそれと同等以上の
性能を有する面材を打ち付けて形成した床に、枠材で組
まれた壁の枠組に対して構造用合板その他これに類する
ものを打ち付けて形成した壁体をくぎ及び金物で取りつ
けて建築物を建築するものである。

【０００４】これら工法の主たる違いを比較して述べる
と、まず、空間の構成は、前者は「軸（線）」、後者は
「版（面）」である。床面、壁面等の剛性付与構造は、
前者は「火打ちばり、筋かい」、後者は「構造用合板張
り」である。使用する木材は、前者は「正方形を主とし
た大断面・長尺材（通し柱）を含む」、後者は「小断面
・短尺材を主とする」である。施工時の工程は、前者は
「一階・二階軸，小屋連続建上げ，床」、後者は「一階
床→一階壁→二階床→二階壁→小屋（ステップ作業）」
である。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】ところで、従来、木造
家屋等の建築物の施工においては、基礎を構成した後、
木材等の建築部材を巧みに切断し切欠加工してこれらを
構造力学に沿って巧みに組み立て結合し、特に建築部材
の重要接続部分をボルト等で固定している。しかし、こ
のような古来の方法では、建築部材の結合等高度の技量
と熟練を要し、作業能率，建築部材の経済性，結合部分
の強度等に劣り、工期が長く、結局高価となる。

【０００６】一方、近年のプレハブ建築は大量生産によ
り上記の経済性の問題を幾分は解決するが、耐久性，強
度（特に結合部）に劣り、多様性に欠け、建築後使用す
る期間の経過に従ってみすぼらしくなり、長期の使用に
なると、建築の落ち着き感，重量感等の良さを醸し出す
ことができない。そこで、本願出願人は、上記の如き構
造部材の結合について永年鋭意研究の結果、従来の最も
簡単な結合方法、例えば鉄板とボルト・ナットを種々組
み合わせる方法に比して更に簡単であり、しかも、強度
において古来の木造刻み込み方式にも優る建築部材用継
手を開発した。

【０００７】これは、特開昭５１−１０７６２６号公報
によって明らかにされている。即ち、この継手は、立方
体若しくは直方体形状の基本継手本体に対し、該基本継
手本体表面から、該表面に略直交する平面内を外向きに
延びる板状部材を溶接固定したものであり、該板状部材
には、ボルト等の固定具が挿通し得る孔を設けたもので
ある。このものは、基本継手部材本体と板状部材の形
状，数及び方向を変えて組み合わせることにより多数の
種類の継手部材が得られる。

【０００８】しかしながら、かかる従来の継手にあって
は、次のような問題点があった。即ち、上記のような立
方体若しくは直方体形状の基本継手本体を適用した結
果、継手として重量がかなり嵩み、材料費も多く必要と
なって、コスト的に不利である。又、重量が重い結果、
取扱に苦慮し、建築部材の結合作業が難しい。本発明は
以上のような従来の問題点に鑑み、建築部材として、規
格化されたプレカット部材を使用可能とし、これを結合
して建築物の骨組を形成するに好適な規格化された継手
部材からなる建築部材用継手装置であって、在来軸組工
法と枠組壁工法の両特徴を混合した建築物等に適した骨
組を構築し得る継手装置を提供することを課題とする。

【０００９】

【課題を解決するための手段】このため、請求項１に係
る発明は、材軸が鉛直方向に延びる鉛直建築部材の４つ
の側面のうち少なくとも２つの側面に、材軸が水平方向
に延びる少なくとも２つの水平建築部材を結合する建築
部材用継手装置であって、互いに直交する面に延びる一
対の板部から夫々構成される３つの略Ｌ字形部材相互
を、前記一対の板部の略Ｌ形をなす端部縁同士を突き合
わせて、一方の略Ｌ字形部材の板部と該板部と隣り合う
他方の略Ｌ字形部材の板部とが直交する面に延びるよう
に接合することにより、略三脚形状に形成された継手部
材を８つ設け、前記８つの継手部材のうちの少なくとも
２つを選択し、該選択した継手部材を構成する略Ｌ字形
部材の板部側縁同士が突き合わせ可能となるように組み
付けて、中心部から互いに直交する方向に延びる部分で
あって、前記鉛直建築部材が保持される保持部及び前記
水平建築部材が保持される保持部を形成し、一方の略Ｌ
字形部材の一方の板部と該板部と隣り合う他方の略Ｌ字
形部材の板部同士が相対向する方向に所定長さを有する
板状連結部材と、該板状連結部材を板部に締結する第１
の締結手段と、前記保持部に、鉛直建築部材及び水平建
築部材を締結する第２の締結手段と、を含んで構成した
請求項２に係る発明は、前記板状連結部材は種々の長さ
に形成された複数種のものが設けられ、該板状連結部材
の選択により、一方の略Ｌ字形部材の板部と該板部と隣
り合う他方の略Ｌ字形部材の板部同士の間隔を調整可能
とした。

【００１０】

【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を図面に
基づいて説明する。本発明に係る継手装置（以下、コネ
クタと言う）の一実施形態の構成を、図１に示す。この
実施形態のコネクタＣは、材軸が鉛直方向に延びる鉛直
建築部材としての上下の柱１Ａ，１Ｂの４つの側面に、
材軸が水平方向に延びる４つの水平建築部材としての梁
２〜５を結合するものであり、その構成は次の通りであ
る。

【００１１】即ち、互いに直交する面に延びる一対の板
部６Ａ，６Ｂから夫々構成される３つの金属製の略Ｌ字
形部材６が設けられている。かかる３つの金属製の略Ｌ
字形部材６相互は、前記板部６Ａ，６Ｂの略Ｌ形をなす
端部縁同士を突き合わせて、一方の略Ｌ字形部材６の板
部６Ａ，６Ｂと該板部６Ａ，６Ｂと隣り合う他方の略Ｌ
字形部材６の板部６Ｂ，６Ａとが直交する面に延びるよ
うに溶接により接合され、これにより、図２に示すよう
な略三脚形状に形成された継手部材７が形成される。

【００１２】このような継手部材７は、８つ設けられ
る。そして、各継手部材７は、各継手部材７を構成する
３つの略Ｌ字形部材６の板部６Ａ，６Ｂ側縁同士が突き
合わせ可能となるように組み付られ、中心部から互いに
直交する６方向に延びる保持部としての６つの角筒部８
〜１３が形成される。

【００１３】かかる角筒部８〜１３は、前記柱１Ａ，１
Ｂが貫通される上下２つの角筒部８，９と、前記梁２〜
５が挿入される前後・左右４つの角筒部１０〜１３から
なる。更に、以上の６つの角筒部８〜１３における一方
の略Ｌ字形部材６の板部６Ａと該板部６Ａと隣り合う他
方の略Ｌ字形部材６の板部６Ｂ同士が相対向する方向に
所定長さを有する板状連結部材と、該板状連結部材を板
部６Ａ，６Ｂに締結する第１の締結手段と、前記角筒部
８〜１３に、該角筒部８〜１３内の柱１及び梁２〜５を
締結する第２の締結手段と、が設けられている。

【００１４】前記板状連結部材は、例えば、短冊状に形
成された座金１４から構成される。又、前記締結手段
は、例えば、ボルト１５とナット１６とから構成され、
各板部６Ａ，６Ｂには、ボルト１５の挿通孔６ａが開設
されている。尚、ボルト１５とナット１６は、第１の締
結手段と第２の締結手段の両方を兼ねるものである。そ
して、角筒部８〜１３内に柱１Ａ，１Ｂ及び梁２〜５を
セットした状態で、６つの角筒部８〜１３夫々におい
て、略Ｌ字形部材６の一方の板部６Ａ，６Ｂ外面に配し
た座金１４から挿入したボルト１５を、該板部６Ａ，６
Ｂ、柱１Ａ，１Ｂ又は梁２〜５、他方の略Ｌ字形部材６
の板部６Ｂ，６Ａ、該板部６Ｂ，６Ａ外面に配した座金
１４の順に通し、この座金１４からのボルト１５の突出
端部にナット１６を締め付けることにより、座金１４を
板部６Ａ，６Ｂに締結すると共に、前記角筒部８〜１３
に、該角筒部８〜１３内の柱１Ａ，１Ｂ及び梁２〜５を
締結する。

【００１５】ここで、前記座金１４として、種々の長さ
に形成された複数種のものを設けておき、これらの座金
１４の選択により、一方の略Ｌ字形部材６の板部６Ａ，
６Ｂと該板部６Ａ，６Ｂと隣り合う他方の略Ｌ字形部材
６の板部６Ｂ，６Ａ同士の間隔を調整できるようになっ
ている。即ち、柱１Ａ，１Ｂ或いは梁２〜５の大きさに
合わせて、前記板部６Ａ，６Ｂと板部６Ｂ，６Ａ同士の
間隔を拡げたり、縮めたりして、種々の大きさの柱１
Ａ，１Ｂ或いは梁２〜５を問題なく締結できるようにし
ている。

【００１６】尚、上記の実施形態においては、板状連結
部材として短冊状の座金１４を適用したが、例えば並列
する２つの座金１４と１４に代えて、単一の金属製板部
材を用いれば、柱１Ａ，１Ｂや梁２〜５に加わる曲げ応
力に耐えるという効果を得ることが可能である。以上説
明したコネクタＣによれば、単なるボルト締め等の締結
手段を用いるという単純な作業によるのみで、建築部材
の結合が完了できる。又、あたかも色々な形状のブロッ
ク玩具を組み合わせる如く、少数規格品を用いて需要者
の要求に応じて各種各様の家屋を次々に構成することが
できる。又、継手装置及びこれによって接続される建築
部材を規格化できるので、継手装置を工場で全て用意
し、使用する建築部材のみを工場でプレカットして用意
すれば良い。更に、継手装置を用いて行う建築部材の結
合は極めて強固であり、従来公知の単なる鉄板やボルト
・ナットを用いる方法に比して圧倒的に強度が大であ
る。

【００１７】上記コネクタＣの特記すべき特徴は、次の
通りである。即ち、略三脚形状に形成された継手部材を
基本のものとして使用するので、継手装置として重量並
びに材料の低減を図れ、コストダウンを図れると共に、
部材単独の重量が軽い結果、取扱も簡単で、建築部材の
結合作業が容易である。尚、かかる実施形態において
は、８つの継手部材７を全て選択して、材軸が鉛直方向
に延びる鉛直建築部材としての柱１Ａ，１Ｂの４つの側
面に、材軸が水平方向に延びる４つの水平建築部材とし
ての梁２〜５を結合するコネクタＣを構成したが、８つ
の継手部材７の少なくとも２つを選択して、選択した継
手部材を構成する略Ｌ字形部材の板部側縁同士が突き合
わせ可能となるように組み付けて、中心部から互いに直
交する方向に延びる部分であって、鉛直建築部材が保持
される保持部及び水平建築部材が保持される保持部を形
成したコネクタとしても良い。

【００１８】この場合、例えば、柱の２つ或いは３つの
側面に、２つ或いは３つの梁を結合するコネクタを形成
できる。

【００１９】

【発明の効果】以上説明したように、請求項１に係る発
明によれば、継手装置として重量並びに材料の低減を図
れ、コストダウンを図れると共に、建築部材の結合作業
の簡略化を図れ、作業能率をより向上できる。又、製作
性に優れ、建築部材間の寸法に誤差が生じ難い。

【００２０】更に、建築部材の縦横に捕らわれずに、建
築部材の締結が行え、アイテムを少なくすることがで
き、製作性の向上やコスト低減に貢献する。特に、略三
脚形状に形成された継手部材を基本のものとして使用す
るので、製作性に優れている。尚、本発明の継手装置を
使用した建築方法は、複雑な仕口、継手が不要であり、
構造上の強度のばらつきもなく、建築部材の結合は極め
て強固である。又、建築作業が非常に行い易く、工期が
著しく短縮でき、極めて経済的であり、少数規格品を用
いて需要者の要求に応じて各種各様の建築物を次々に構
造することができる。

【００２１】請求項２に係る発明によれば、柱等の鉛直
建築部材或いは梁等の水平建築部材の大きさに合わせ
て、前記板部同士の間隔を拡げたり、縮めたりすれば、
種々の大きさの建築部材を問題なく締結できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】 本発明に係る建築部材用継手装置の一実施形
態を示す斜視図

【図２】 同上実施形態における継手部材の斜視図

【符号の説明】

Ｃ コネクタ １Ａ，１Ｂ 柱 ２〜５ 梁 ６ 略Ｌ字形部材 ６Ａ，６Ｂ 板部 ７ 継手部材 ８〜１３ 角筒部 １４ 座金 １５ ボルト １６ ナット

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】材軸が鉛直方向に延びる鉛直建築部材の４
   つの側面のうち少なくとも２つの側面に、材軸が水平方
   向に延びる少なくとも２つの水平建築部材を結合する建
   築部材用継手装置であって、 互いに直交する面に延びる一対の板部から夫々構成され
   る３つの略Ｌ字形部材相互を、前記一対の板部の略Ｌ形
   をなす端部縁同士を突き合わせて、一方の略Ｌ字形部材
   の板部と該板部と隣り合う他方の略Ｌ字形部材の板部と
   が直交する面に延びるように接合することにより、略三
   脚形状に形成された継手部材を８つ設け、 前記８つの継手部材のうちの少なくとも２つを選択し、
   該選択した継手部材を構成する略Ｌ字形部材の板部側縁
   同士が突き合わせ可能となるように組み付けて、中心部
   から互いに直交する方向に延びる部分であって、前記鉛
   直建築部材が保持される保持部及び前記水平建築部材が
   保持される保持部を形成し、 一方の略Ｌ字形部材の一方の板部と該板部と隣り合う他
   方の略Ｌ字形部材の板部同士が相対向する方向に所定長
   さを有する板状連結部材と、該板状連結部材を板部に締
   結する第１の締結手段と、前記保持部に、鉛直建築部材
   及び水平建築部材を締結する第２の締結手段と、を含ん
   で構成したことを特徴とする建築部材用継手装置。
2. 【請求項２】前記板状連結部材は種々の長さに形成され
   た複数種のものが設けられ、該板状連結部材の選択によ
   り、一方の略Ｌ字形部材の板部と該板部と隣り合う他方
   の略Ｌ字形部材の板部同士の間隔を調整可能としたこと
   を特徴とする請求項１記載の建築部材用継手装置。