JP2771855B2 - 合わせガラス用電磁波シールド用積層板 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 この発明は、透明性合成樹脂板と導電性金属化繊維製
の織編物とを積層した電磁波シールド用積層板、特に電
磁波シートルド合わせガラスにおける電磁波遮蔽材とし
て有用な上記積層板に関する。

従来の技術 テレビやコンピュータ用ディスプレイの画面フィルタ
ーに使用される電磁波シールド用積層板として、ポリ塩
化ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネー
ト等の透明性合成樹脂板間に導電性金属化繊維製の織編
物を挾んで熱圧着したものが知られている（特開昭60-2
51786号）。

一方、近年では、OA機器、医療用機器、ビル管理シス
テム等の高度化に伴って電磁ノイズを防止する必要性が
高まっており、これに対処するために窓障子、出入口ド
ア、間仕切り等に電磁波シールド合わせガラスが用いら
れるようになっている。この合わせガラスは基本的には
ガラス板の片面に上記の電磁波シールド用積層板を接着
した構造を有するが、後者の透明性合成樹脂板として特
に透明度が高く硬度や耐候性にも優れるポリメチルメタ
クリレートの如きアクリル樹脂板を使用すると共に、こ
れとガラス板との接着にアクリル系液状接着剤を使用す
るのが一般的である。そして、上記のアクリル樹脂板に
は量産性及びコストの観点から専ら押出成形品が用いら
れている。

発明が解決しようとする課題 しかしながら、押出成形によるアクリル樹脂板を用い
た従来の電磁波シールド用積層板とガラス板とをアクリ
ル系液状接着剤にて接着した場合、該アクリル樹脂板の
表面に無数の微細なクラックが発生し、得られる電磁波
シールド合わせガラスの透視性の低下を招くという問題
があった。

そこで、この発明者らは、上記クラックの発生を防止
する手段について検討を重ねたところ、電磁波シールド
用積層板のアクリル樹脂板として従来汎用の押出成形品
に代えてキャスト成形品、つまり硬化剤ないし触媒を含
む液状モノマーあるいはプレポリマーを型内に流し込ん
で重合させて得られる板状成形品を使用した場合、ガラ
ス板との接着においてクラックが全く発生しないことを
究明した。

ところが一方、このキャスト成形品からなるアクリル
樹脂板を用いた電磁波シールド用積層板では、それ自体
の製造に際してアクリル樹脂板と導電性金属化繊維製の
織編物とを常法に準じて熱圧着すると、アクリル樹脂板
に曇りないし白濁を生じて透明性の低下をきたすという
新たな問題を生じることが判明した。

この発明は、上述の事情に鑑みて、それ自体の透明性
に非常に優れると共にガラス板との接着においてクラッ
クを生じず、もって特に電磁波シールド合わせガラスの
電磁波遮蔽材として好適な電磁波シールド用積層板を提
供することを目的としている。

課題を解決するための手段 この発明に係る電磁波シールド用積層板は、上記目的
を達成するために、厚さ１〜6mmの透明なキャスト成形
アクリル樹脂板と導電性金属化織編物とが、該織編物の
厚さの30〜100％の厚さを有する透明性ホットメルト型
接着剤シートを介して積層一体化されてなる構成を採用
したものである。

また、この発明においては、透明性ホットメルト型接
着剤の熱活性温度が170℃以下である請求項（２）の構
成を好適態様とする。

発明の細部構成と作用 この発明の電磁波シールド用積層板は、第１図で示す
ようにキャスト成形アクリル樹脂板（１）の片面に導電
性金属化繊維製の織編物（２）がホットメルト型接着剤
（３）を介して積層された片面積層形（Ａ）と、第２図
で示すように同様の織編物（２）が２枚のキャスト成形
アクリル樹脂板（１）（１）間に挾まれる形でホットメ
ルト型接着剤（３）を介して積層されたサンドイッチ形
（Ｂ）との二通りの形態がある。

しかして、電磁波シールド合わせガラスの製作におい
ては電磁波シールド用積層板（Ａ）（Ｂ）の樹脂板の表
面とガラス板表面とをアクリル系液状接着剤にて接着す
るが、樹脂板の接着表面には従来の積層板における押出
成形アクリル樹脂板のような微細なクラックは全く発生
しない。この理由は定かではないが、キャスト成形アク
リル樹脂板が硬化剤ないし触媒を含む液状のモノマーあ
るいはプレポリマーを型内で重合させるという成形法上
から性状的にアクリル系液状接着剤に近似し、押出成形
アクリル樹脂板よりも該接着剤との相溶性及び親和性が
大きいことから、クラックを生じにくゝなると推測され
る。

このようなキャスト成形アクリル樹脂板としては、特
に単量体主成分がメチルメタアクリレートであるものが
好ましく、また１〜6mmの厚みを有するものが使用され
る。

導電性金属化繊維製の織編物は、ポリエステル繊維、
ポリアミド繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリ塩化ビニリ
デン繊維、カーボン繊維等の合成繊維表面に無電解メッ
キ法あるいはスパッタ等の真空中薄膜形成法によって
銅、ニッケルの如き金属の単独または複合薄膜を被覆し
て導電性を付与し、これを織編したものであり、電磁波
を有効に遮蔽する作用を示す。

このような織編物としては、電磁波シールド性と透視
性の面から、100〜250メッシュ程度で且つ50〜150μｍ
程度の厚みを有するものが好適であり、特に縦糸と横糸
によって平織りにしたものが最適である。なお、防眩性
が要求される場合には金属薄膜上に更に異色樹脂を被覆
したものが使用される。

透明性ホットメルト型接着剤は、ポリエステル系、ア
クリル系、ポリオレフィン系等熱可塑性合成樹脂からな
るシート形態で用いられ、前記のキャスト成形アクリル
樹脂板と織編物との間に介在させて加熱圧着することに
より、溶融して織編物の空隙を埋めた形で該織編物と樹
脂板とを接着する作用を示す。

このようなホットメルト型接着剤のシートの厚みは、
織編物の厚さの30〜100％の範囲とすべきであり、最適
には40〜７％であることが望ましく、薄すぎては接着性
が低下すると共に織編物の空隙が埋められずに気泡とし
て残って透明性を悪化させることになり、逆に厚すぎて
は加熱圧着時に樹脂板の周縁より溶融した接着剤のはみ
出しを生じるおそれがある。

こゝで、キャスト成形アクリル樹脂板と織編物との接合
を、ホットメルト型接着剤を使用せずに従来と同様に熱
圧着にて行う場合は、加熱温度を180℃前後の高温とし
て高圧プレスを行う必要があり、この高温加熱に伴う変
質・劣化に起因して既述の曇りないし白濁を生じると考
えられ、また樹脂板の溶融物が周縁より流れ出して積層
板の厚み変化や変形をきたすことがあった。しかるに、
上記のホットメルト型接着剤を介在させる場合には、該
接着剤の材質によって熱活性温度が種々異なるため、該
材質の選択によって接合温度を変質や劣化を生じない低
温に設定して樹脂板の曇りないし白濁ならびに溶融物流
れ出しを回避することが可能となる。

なお、ホットメルト型接着剤の熱活性温度は、上述の
点より170℃以下、特に好適には160℃以下であることが
望ましい。また、ホットメルト型接着剤としては、透明
性の観点より特にポリエステル系のものが最適である。

実施例 以下、この発明の実施例につき比較例と共に具体的に
説明する。

実施例１〜６ キャスト成形アクリル樹脂板として住友化学工業社製
の商品名スミペックス000（ポリメチルメタクリレー
ト、厚さ2.0mm）、導電性金属化繊維製の織編物とし
て、日清紡績社製の商品名MT3−100（平織り、ニッケル
メッキ繊維、100メッシュ、厚さ100μｍ）、ホットメル
ト型接着剤のシートとして旭化成工業社製のハーディッ
クC6300（ポリエステル系）をそれぞれ使用し、２枚の
上記樹脂板間に上記織編物とシートを挾んで加熱圧着す
ることにより、第２図の如きサンドイッチ形の電磁波シ
ールド用積層板を作製した。各実施例において使用した
ホットメルト型接着剤のシートの厚さと加熱圧着の温度
は後記表に示すとおりであり、また加熱圧着時のプレス
圧力はいずれも35kg/cm²、圧着時間は10分に設定した。

比較例 比較例１〜２ ホットメルト型接着剤のシートの厚さを、導電性金属
化織編物の厚さの25％及び105％に設定したほかは、実
施例と同様にして試料を作成した。

比較例３ 実施例と同様の樹脂板と織編物を用い、両者をホット
メルト型接着剤のシートを介さずに180℃、35kg/cm²の
温度圧力条件で15分間熱圧着し、サンドイッチ形の電磁
波シールド用積層板を作製した。

以上の実施例１〜６及び比較例１〜３の電磁波シール
ド用積層板につき、透明性と積層性（接着性）を調べた
ところ、後記表に示す結果が得られた。なお両項目は◎
…優良、○…可、×…不良の３段階で評価した。

上表の結果から、この発明に係る電磁波シールド用積
層板は透明性及び積層性に共に優れているのに対し、キ
ャスト成形アクリル樹脂板と導電性金属化繊維製の織編
物とを直接に熱圧着した比較例３の積層板では曇りによ
る透明性低下を生じていることが明らかである。また、
この発明の積層板においても、ホットメルト型接着剤の
シートの厚さが織編物の厚さの30〜100％で、加熱圧着
温度を160℃以下とした実施例１〜６の積層板が透明性
及び積層性の両面に特に優れることが判る。

なお、比較例２の積層板は、透明性及び接着性共に優
れるが、積層板の周縁には接着剤のはみ出しが認められ
た。この結果から、ホットメルト型接着剤のシートの厚
さは織編物の厚さの100％以下が好ましいと言える。

発明の効果 この発明によれば、透明性に非常に優れると共にガラ
ス板との接着においてクラックを生じず、もって電磁波
シールド合わせガラスの電磁波遮蔽材として好適な電磁
波シールド用積層板を提供できる。また、キャスト成形
アクリル樹脂板と導電性金属化繊維製の織編物との接着
性が極めて良好で、且つホットメルト接着剤の上記樹脂
板からのはみ出しや気泡の残留のない高品質の上記積層
板を提供できる。

また、この発明の請求項（２）の構成によれば、特に
透明性の高い上記積層板を提供できる。

【図面の簡単な説明】

第１図及び第２図は共にこの発明の電磁波シールド用積
層板の形態例を示す断面図である。 （１）……キャスト成形アクリル樹脂板、（２）……織
編物、（３）……ホットメルト型接着剤。

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】厚さ１〜6mmの透明なキャスト成形アクリ
   ル樹脂板と導電性金属化織編物とが、該織編物の厚さの
   30〜100％の厚さを有する透明性ホットメルト型接着剤
   シートを介して積層一体化されてなる合わせガラス用電
   磁波シールド用積層板。
2. 【請求項２】透明性ホットメルト型接着剤の熱活性温度
   が170℃以下である請求項（１）記載の合わせガラス用
   電磁波シールド用積層板。