JP2743633B2 - クロメ−ト処理鋼板及びその製造方法 - Google Patents

クロメ−ト処理鋼板及びその製造方法

Info

Publication number
JP2743633B2
JP2743633B2 JP3198634A JP19863491A JP2743633B2 JP 2743633 B2 JP2743633 B2 JP 2743633B2 JP 3198634 A JP3198634 A JP 3198634A JP 19863491 A JP19863491 A JP 19863491A JP 2743633 B2 JP2743633 B2 JP 2743633B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
chromate
steel sheet
solution
ratio
total
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP3198634A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH04350173A (ja
Inventor
義博 川西
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Sumitomo Metal Industries Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Family has litigation
First worldwide family litigation filed litigation Critical https://patents.darts-ip.com/?family=26378494&utm_source=google_patent&utm_medium=platform_link&utm_campaign=public_patent_search&patent=JP2743633(B2) "Global patent litigation dataset” by Darts-ip is licensed under a Creative Commons Attribution 4.0 International License.
Application filed by Sumitomo Metal Industries Ltd filed Critical Sumitomo Metal Industries Ltd
Priority to JP3198634A priority Critical patent/JP2743633B2/ja
Publication of JPH04350173A publication Critical patent/JPH04350173A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP2743633B2 publication Critical patent/JP2743633B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C23COATING METALLIC MATERIAL; COATING MATERIAL WITH METALLIC MATERIAL; CHEMICAL SURFACE TREATMENT; DIFFUSION TREATMENT OF METALLIC MATERIAL; COATING BY VACUUM EVAPORATION, BY SPUTTERING, BY ION IMPLANTATION OR BY CHEMICAL VAPOUR DEPOSITION, IN GENERAL; INHIBITING CORROSION OF METALLIC MATERIAL OR INCRUSTATION IN GENERAL
    • C23CCOATING METALLIC MATERIAL; COATING MATERIAL WITH METALLIC MATERIAL; SURFACE TREATMENT OF METALLIC MATERIAL BY DIFFUSION INTO THE SURFACE, BY CHEMICAL CONVERSION OR SUBSTITUTION; COATING BY VACUUM EVAPORATION, BY SPUTTERING, BY ION IMPLANTATION OR BY CHEMICAL VAPOUR DEPOSITION, IN GENERAL
    • C23C22/00Chemical surface treatment of metallic material by reaction of the surface with a reactive liquid, leaving reaction products of surface material in the coating, e.g. conversion coatings, passivation of metals
    • C23C22/73Chemical surface treatment of metallic material by reaction of the surface with a reactive liquid, leaving reaction products of surface material in the coating, e.g. conversion coatings, passivation of metals characterised by the process

Landscapes

  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • General Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Materials Engineering (AREA)
  • Mechanical Engineering (AREA)
  • Metallurgy (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Chemical Treatment Of Metals (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、そのままで上塗り塗
装を施すことが可能な程に優れた塗装密着性を有すると
共に、裸使用であっても十分に良好な耐食性を示すクロ
メ−ト処理鋼板、並びにその製造方法に関するものであ
る。
【0002】
【従来技術とその課題】従来、家電製品や自動車等の素
材として需要先へ納入された鋼板には“1次防錆的な見
地”からのクロメ−ト処理を施すのが一般的であった
が、近年、コストダウン指向の浸透に伴って次第に「ク
ロメ−ト処理そのものによって1次防錆の域を超える良
好な耐食性や優れた外観色調等を付与しよう」との考え
が支配的になってきた。
【0003】そのため、“クロメ−ト液に関する様々な
工夫”や“新しい処理法の提案”が数多くなされてきた
が、中でも、鋼板にクロメ−ト液を塗布し水洗すること
なくそのまま乾燥する所謂「塗布型クロメ−ト処理」
は、クロム廃液処理の問題が少ない上に処理自体が簡単
かつ安価で、しかも適当な添加剤を添加することによっ
て種々の性能が確保できることから、一般に広く採用さ
れる手法の1つとなっている。
【0004】ところで、家電製品用や自動車用の鋼板に
は外面側のみを片面塗装して使用するものも少なくな
く、このような鋼板では「塗装反対面(非塗装面)につ
いてはある程度の耐食性さえ確保されておれば良いが塗
装面には優れた上塗密着性が必要である」とされる場合
が多い。
【0005】そこで、上述の用途に供される鋼板に対し
ては次のような処理法が提案されている。 A) クロメ−ト処理を施してから更に樹脂コ−ティング
する方法(特公昭49−4611号,特公昭60−33
192号), B) クロメ−ト液中に樹脂を添加した処理液を用い、こ
れでコ−ティングを施す方法(特公昭60−20468
号,特開昭61−28751号)。
【0006】しかし、上記各方法で処理された鋼板は溶
接性や脱脂性の点で問題があり、しかも樹脂を使用する
ためにコストアップとなるのを否めないことから、樹脂
を含まない無機系の皮膜形成処理が有利であると考えら
れた。
【0007】一方、鋼板の耐食性改善を主目的としたク
ロメ−ト処理法としては、次のものが例示される。 a) 6価クロムの一部を強制還元して難溶性のCr3+を含
有させた処理液を用いる塗布型クロメ−ト処理法(特公
昭53−32350号,特公昭54−37566号
等), b) シリカを添加したクロメ−ト液で処理することによ
り耐食性の向上を図る方法(特公昭42−14050
号,特公昭60−18751号,特公昭61−5855
2号等) , c) 前記a)項, b)項に示す手法を組み合わせたクロメ−
ト処理法(特公昭61−1508号,特開平2−141
583号等)。 しかしながら、これらの方法は樹脂を用いる手段に比し
て溶接性,脱脂性或いはコストの面で優位であるもの
の、上塗り塗装密着性の点では十分に満足できる結果が
得られないと言った問題を有していた。
【0008】このようなことから、本発明が目的とした
のは、更なる処理を施さなくても優れた上塗り塗装密着
性(1次,2次密着性を含む)を有していると同時に、
片面塗装した場合でも無塗装面(裸面)が1次防錆を超
える良好な耐食性を示し、かつ処理コストの安いクロメ
−ト処理鋼板を安定して提供することであった。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達
成すべく鋭意行われた本発明者の研究によって完成され
たものであり、 「鋼板表面のクロメ−ト皮膜を、 〔水可溶性クロム/水不溶性クロム〕の比率: 30/70〜
0/100, クロメ−ト皮膜最表層におけるSi原子占有面積率:5〜
30%, クロム付着量:金属Cr換算で5〜100 mg/m2 , なる構成とすることにより、 優れた塗装密着性と良好な
耐食性とを兼備したクロメ−ト処理鋼板を実現した点」
に特徴を有し、更には 「シリカを添加して 〔Cr6+/全Cr〕の比率: 0.3〜0.7 , 全Cr濃度:5〜60g/l(リットル), 〔SiO2 /全Cr〕の比率: 0.5〜4.0 に調整したCrO3 を主成分とするクロメ−ト液を被処理
鋼板の表面に常法通りに塗布するか、 或いは該クロメ−
ト液に超音波振動を付加しながら被処理鋼板の表面に塗
布し、 水洗することなくそのまま最高到達板温が50〜
250℃の条件で乾燥することにより、 優れた塗装密着
性と良好な耐食性とを兼備した前記クロメ−ト処理鋼板
を安定かつ低コストで製造し得るようにした点」にも大
きな特徴を有している。
【0010】ここで、ベ−ス鋼板、即ちクロメ−ト処理
が施される被処理鋼板としては亜鉛又は亜鉛系合金めっ
き鋼板が好適である。また、クロメ−ト液に添加するシ
リカとしては、酸性領域で安定な“水分散型コロイダル
シリカ”或いは“粉末凝集シリカ”であって、1次平均
粒径が10〜50nmのものが好ましい。
【0011】なお、本発明において、クロメ−ト皮膜中
の 「水不溶性クロムに対する水可溶性クロムの比率」,
「最表層におけるSi原子占有面積率」 及び 「クロム付着
量」 、並びにクロメ−ト液中の 「全Cr量に対するCr6+
の比率」, 「全Cr濃度」 及び 「全Cr量に対するSiO2 量の
比率」 、更には乾燥時の最高到達板温を前記の如くに数
値限定した理由は次の通りである。
【0012】(a) 〔水可溶性クロム/水不溶性クロ
ム〕の比率 水可溶性クロムは吸湿性であるため塗装後に塗膜下に水
分を吸い込みやすく、2次密着ばかりか1次密着におい
ても塗装密着性を劣化する。そして、水不溶性クロム量
に対する水可溶性クロム量の比率が30/70を超えた場合
には所望の塗装密着性を確保できなくなる。従って、ク
ロメ−ト皮膜中における〔水可溶性クロム/水不溶性ク
ロム〕の比率は 30/70〜0/100 と定めた。
【0013】なお、水不溶性クロム量が100%近くの
場合でも、オ−バ−ベ−クになると表面に存在する不活
性なCr, Si酸化物層が厚くなって塗装密着性が劣化する
傾向が認められる。また、シリカが添加されると、水可
溶性のCr6+がSiO2 表面に吸着してクロメ−ト皮膜中に
ある程度残留するようになるので水不溶性クロム量が1
00%近くの場合でもCr6+のセルフヒ−リング効果によ
る耐食性向上効果が期待できるが、水不溶性クロムが多
い状態でオ−バ−ベ−クになるとこのセルフヒ−リング
効果も期待できなくなり、耐食性(特に加工後耐食性)
の劣化が懸念されるようになる。このような事情等を考
慮すれば、〔水可溶性クロム/水不溶性クロム〕の比率
は 20/80〜5/95の範囲に調整するのが好ましいと言え
る。
【0014】ところで、〔水可溶性クロム/水不溶性ク
ロム〕の比率を上記範囲に調整する手段としては、次の
2つの方法或いはこれらを組み合わせた方法を採用する
のが良い。 i) 予め、クロメ−ト液中に不溶性塩を形成しやすいCr
3+を存在させておく方法で、このためにはCrO3 溶液中
に多糖類,脂肪酸,アルコ−ル等の有機物還元剤や過酸
化水素等の還元剤を添加して成分調整するのが良い。 ii) 焼付け温度を上げることにより、可溶性のCr6+を不
溶性のCr3+へ熱還元させる方法。
【0015】(b) クロメ−ト皮膜最表層におけるSi原
子占有面積率 従来、シリカ(SiO2 )を添加したクロメ−ト皮膜は
「耐食性が良好であるものの塗装密着性が悪い」とされ
ているが、一方で「SiO2 粒子は表層にシラノ−ル基
(Si−OH)があるのでそのOH基が焼付塗料の官能基
と反応して塗装密着性を上げる」とも言われている。
【0016】そこで、本発明者は種々の観点からこの点
に関する検討を行ったところ、 1) SiO2 を添加するとこのSiO2 粒子表面に可溶性で
あるCr6+が吸着して保持されるが、これにより良好な塗
装密着性が劣化する。しかし、最表層でのSiO2 量を多
くするように図ると上記不都合が回避される。即ち、最
表層部のSiO2量が多くなるとシラノ−ル基が多数存在
することとなって塗装密着性が向上する, 2) ただ、SiO2 の粒径や添加量、更にはCr付着量等に
よってはクロメ−ト皮膜最表層のSiO2 にシラノ−ル基
が出ず、逆に塗装密着性の劣化を来たす場合もある, との事実を確認することができた。このため、更に検討
を重ねて次の結論を得たのである。
【0017】SiO2 添加によって塗装密着性が改善され
るが、その場合でもクロメ−ト皮膜最表層におけるSi原
子占有面積率(以降“Si占有率”と称す)が5%に達し
ないとSiO2 添加による一層の塗装密着性改善効果は確
保できない。一方、Si占有率が30%を超えた場合には
表層に硬いシリコン皮膜が形成され、クロメ−ト皮膜全
体が凝集破壊を起こしやすくなって塗装密着性が劣化す
る。なお、Si占有率はX線光電子分析装置にてクロメ−
ト皮膜の表層組成比率を調べることで測定することがで
きる。
【0018】(c) クロム付着量 クロム付着量が5 mg/m2 未満であると、鋼板表面を完
全にクロメ−ト皮膜でカバ−することができずにベ−ス
鋼板面(亜鉛めっき鋼板であると亜鉛或いは亜鉛酸化物
層)が一部剥き出しになって耐食性の劣化を招いたり、
クロメ−ト皮膜が薄すぎてSiO2 粒子を保持し切れずに
塗装密着性を劣化したりする。一方、クロム付着量が1
00 mg/m2 を超えた場合にはクロメ−ト皮膜内の凝集
破壊を起こしやすくなり(特にクロメ−ト皮膜中にSiO
2 粒子が存在すると皮膜が固くなって一段と凝集破壊を
起こしやすくなる)、このため塗装密着性は劣化する。
従って、クロム付着量は5〜100 mg/m2 と定めた
が、出来れば10〜70 mg/m2 に調整するのが好まし
い。
【0019】(d) クロメ−ト液中の〔Cr6+/全Cr〕の
比率 クロメ−ト処理に適用するクロメ−ト液中の〔Cr6+/全
Cr〕比率が 0.3未満では、不溶性のCr3+が多すぎてクロ
メ−ト液の安定性が劣化する。一方、〔Cr6+/全Cr〕比
率が 0.7を上回ると可溶性のCr6+が多すぎて、熱還元に
よってもクロメ−ト皮膜における〔水可溶性クロム/水
不溶性クロム〕の比率を 30/70〜0/100の範囲内に収め
ることが困難となる。また、Cr6+が多すぎるとSiO2
子が凝集しやすく、液安定性の面でも問題がある。従っ
て、適用するクロメ−ト液は、液中の〔Cr6+/全Cr〕の
比率を 0.3〜0.7 とするのが好ましい。
【0020】(e) クロメ−ト液中の全Cr濃度 クロメ−ト処理に適用するクロメ−ト液中の全Cr濃度が
5g/L 未満では目標Cr付着量5mg/m2 以上を確保するこ
とが困難であり、一方、全Cr濃度が60g/L を超えると
Cr付着量を目標たる100mg/m2 以下に抑えることが困
難となるばかりか、Cr6+が多すぎてSiO2 粒子が凝集し
やすくなるなど液安定性の面でも問題となる懸念が出て
くる。従って、クロメ−ト液中の全Cr濃度は5〜60g/
L に調整するのが良い。
【0021】(f) クロメ−ト液中における〔SiO2
全Cr〕の比率 クロメ−ト処理に適用するクロメ−ト液中の〔SiO2
全Cr〕比率が 0.5未満であると、目標Si占有率5%以上
を確保することが困難になる。一方、〔SiO2 /全Cr〕
比率が4.0以上であるとSi占有率が30%を超える可能
性があり、しかもSiO2 量が多すぎてSiO2 粒子が凝集
しやすくなるなど液安定性の面でも問題となる。従っ
て、クロメ−ト液中における〔SiO2 /全Cr〕の比率は
0.5〜4.0と定めた。
【0022】なお、クロメ−ト液中に添加するシリカは
前述したSi占有率さえ確保できるものであれば特にその
種類には関係ないが、液中への分散性や液安定性の面か
らすれば、酸性領域で安定な“水分散型コロイダルシリ
カ”又は“粉末凝集シリカ”が好適である。
【0023】また、添加するシリカの粒径はクロメ−ト
処理鋼板の性能に少なからぬ影響を及ぼす。例えば、シ
リカの1次平均粒径が10nm以下であるとクロメ−ト皮
膜がSiO2 粒子をカバ−してしまい、表層にSiO2 粒子
が存在しにくくなってSi占有率5%を確保するのが難し
くなる。一方、シリカの1次平均粒径が50nmを超える
とSi占有率が30%を超える傾向を見せるばかりか、Si
2 粒子径が大きすぎるとロ−ル塗布等の場合には鋼板
とロ−ル間のせん断によりSiO2 粒子が剥落するように
なり、クロメ−ト皮膜にSiO2粒子を保持させるのが難
しくなって塗装密着性の劣化を招く恐れが出てくる。そ
のため、添加するシリカは1次平均粒径が10〜50nm
のものとするのが望ましい。使用シリカの具体例として
は、例えばコロイダルシリカではスノ−テックスシリ−
ズ〔商品名:日産化学株式会社〕,粉末シリカではエア
ロジル〔商品名:デグサ社〕等が挙げられる。
【0024】ところで、本発明に係わるクロメ−ト液中
には、更なる耐食性の向上を目指してリン酸,硫酸,硝
酸等の無機酸を添加して良いことは言うまでもない。そ
して、被処理鋼板面にクロメ−ト液を塗布する手段とし
ては周知のシャワ−リンガ−絞り方式,エア−ナイフ絞
り方式、ロ−ルコ−ト方式,静電塗布方式等の何れの方
法を採用しても良く、格別な規制はない。また、乾燥方
式も特に規制はなく、オ−ブン乾燥,電磁誘導加熱,ブ
ロア−乾燥等の何れによっても差支えはない。
【0025】しかし、クロメ−ト液としてSiO2 粒子の
ような酸化物微粒子を添加したものでは、クロメ−ト液
中に存在するCr6+やCr3+の影響、或いは耐食性向上を目
的として必要により添加されるZr,Ba,V,Ni,Co,Mo
等が水溶液中に多価陽イオンとなって存在したり、造膜
剤として必要により添加されるPO4 3- やSO3 2- のよ
うな陰イオンが存在する場合にはそれらの影響により、
前記酸化物微粒子の粒径が経時的に増大して粒子の粗大
凝集化,処理液のゲル化が起きる恐れがある。
【0026】なお、クロメ−ト液中の酸化物粒子径が変
動するということは製品性能に影響を及ぼすクロメ−ト
皮膜中の酸化物微粒子径が変動することであって、製品
性能が経時的にバラツキを生じる原因となり品質管理上
問題となる。また、クロメ−ト液中で酸化物微粒子の凝
集,ゲル化が起きると、シャワ−スプレ−,浸漬後リン
ガ−ロ−ルで絞るロ−ル絞り,ロ−ルコ−ティング等の
ようにノズル内やロ−ル・鋼板間、或いはロ−ル・ロ−
ル間でクロメ−ト液に剪断力がかかるような作業では酸
化物微粒子を均一に安定して鋼板上に載せることができ
ず、場合によっては酸化物粒子の粗大凝集化によりクロ
メ−ト皮膜中に全く酸化物粒子が保持されずに製品性能
を劣化させる事態も生じ、塗工安定性からも問題とな
る。
【0027】クロメ−ト液中で酸化物微粒子が凝集を起
こしやすい理由としては、「水溶液中では酸化物微粒子
は表層に水和物層が存在し電気的に極性を持つためにそ
の反発力で分散しているが、 例えばクロメ−ト中のCr6+
等の金属多価イオンが微粒子表面に特異吸着を起こすと
酸化物微粒子表面電位が下がるために電気的反発力を失
い微粒子間で凝集が起こっていく。 そして、 この際に多
価イオンを介しているためにファン・デル・ワ−ルス力
のみの凝集とは異なって強い結合力で凝集が起こり、 最
終的に沈澱或いはゲル化が起きる」ためであると考えら
れる。
【0028】このように、酸化物微粒子を添加したクロ
メ−ト液では、調合直後のものを使用する場合には目標
とする被膜性能が得られるが、時間の経過に影響されな
いで何時までも安定した製品性能を得る上では大きな懸
念がある。従って、SiO2 粒子のような酸化物微粒子を
添加したクロメ−ト液では前記問題を解消するために該
酸化物微粒子の均一分散を図ることも重要となるが、タ
ンク内での循環攪拌や攪拌子を用いる機械的攪拌方法で
は経時安定的に酸化物微粒子の均一分散状態を確保する
ことは困難である。
【0029】しかるに、上述のような酸化物微粒子を添
加したクロメ−ト液であっても、クロメ−ト処理に際し
て超音波振動を付与しながらクロメ−ト処理液の塗布を
行うと、クロメ−ト液中での酸化物微粒子の安定した均
一分散が確保され、微細な酸化物微粒子が均一に保持さ
れた高性能のクロメ−ト皮膜を安定して形成させること
が可能になる。しかも、上記超音波振動の付与を実施す
ると、一旦クロメ−ト液の経時劣化により凝集した酸化
物微粒子を添加直後の1次粒子径近くにまで再分散させ
ることもできるで、クロメ−ト液の調整時からクロメ−
ト処理時までの液の管理も極めて容易となる。
【0030】この際、付加する超音波の周波数としては
15〜100kHzで十分である。ここで、該周波数が1
5kHz未満であると振動音が可聴域に入るために騒音が
大きくなり、一方、100kHzを超える周波数を付加す
るには製作が困難な大きな振動子を必要とする上、設備
費が高くなるので何れも好ましくない。超音波の出力に
ついては使用タンク内全般で攪拌がなされる程度で良
く、付加時間はクロメ−ト液濃度,液pH,添加する酸
化物種,添加濃度,使用液温等に応じて所望の酸化物分
散状態が得られる値を決定すれば良い。この際、酸化物
微粒子の粒子変動を考慮すると、塗布期間中は連続的に
超音波振動を付加し続けることが好ましいと言える。
【0031】超音波振動の付加手段としては、“超音波
振動子を直接クロメ−ト液収容タンク中に浸漬する方
法", "タンク下部や側壁に超音波振動子を取付ける方
法”或いは“循環パイプの途中に超音波振動子を取付け
る方法”等が採用できる。また、必要により攪拌子によ
る機械的攪拌と組み合わせても良い。特に、多少底部に
沈澱を起こすような分散性の悪い酸化物微粒子添加クロ
メ−ト液を使用する場合には、予め機械攪拌にて底部凝
集物を巻き上げ、それから超音波振動にて酸化物粒子を
細粒化させるように両手段を組み合わせると、効果的に
短時間で再分散均一化が行えるので好ましい。
【0032】なお、図1乃至図3は、それぞれクロメ−
ト液貯蔵循環タンク(1) 内のクロメ−ト液をクロメ−ト
液スプレ−ゾ−ン(2) にて被処理鋼板(3) の表面にスプ
レ−してクロメ−ト処理する際に、クロメ−ト液へ超音
波振動を付加して酸化物微粒子の微細均一分散化を図る
手法を説明したものであるが、図1はクロメ−ト液貯蔵
循環タンク(1) 内で超音波振動板(4) を浸漬して超音波
振動装置(5) からの振動を付与する方法を、また図2は
クロメ−ト液貯蔵循環タンク(1) の外側に直接超音波振
動装置(5) を直接接触配置して振動を付与する方法を、
そして図3はクロメ−ト液循環パイプに超音波振動装置
(5) を直接付設しして振動を付与する方法を示してい
る。また、この例では、酸化物微粒子の分散効率を高め
るためにクロメ−ト液貯蔵循環タンク(1) 内での機械的
攪拌を実施できるよう、何れもクロメ−ト液貯蔵循環タ
ンク(1) 内に攪拌子(インペラ−)(6) が設置されてい
る。
【0033】ところで、一見類似しているかに思える技
術として、クロメ−ト処理の際に被処理鋼板を浸漬した
クロメ−ト液に超音波振動を加え、そのキャビテ−ショ
ンを利用して液の反応性を上げる“反応型クロメ−ト処
理法”が知られているが(例えば特開昭61−1478
84号公報参照)、これは塗布型クロメ−トに適用でき
るものではなく、しかも本発明に係わる酸化物微粒子の
分散性を改善するための技術でないことは明らかであ
る。
【0034】(g) 乾燥時の最高到達板温 SiO2 添加によりクロメ−ト皮膜中のCr6+が多くなるた
め、クロメ−ト皮膜中の可溶性Cr量を増やす結果とな
る。これを防止するためには、従来の如き単なる水分を
飛ばすような乾燥ではなく、加熱温度を強化して熱還元
力を上げた乾燥を行う必要がある。そして、この場合の
最高到達温度が板温基準で50℃未満であると〔水可溶
性クロム/水不溶性クロム〕の比率を30/70 以下とする
のが困難であり、一方、該最高到達温度が250℃を超
えると〔水可溶性クロム/水不溶性クロム〕の比率0/10
0 を達成できるが、オ−バ−ベ−クのためにクロメ−ト
皮膜表面のシラノ−ル基中のOH基が減少して酸化皮膜
層が厚くなり、塗装密着性が劣化する。従って、乾燥時
の最高到達板温は50〜250℃と定めた。
【0035】以下、本発明を実施例により更に具体的に
説明する。
【実施例】実施例 1 片面塗装鋼板を想定して被処理鋼板に下記条件でクロメ
−ト処理を施し、得られたクロメ−ト処理鋼板の塗装密
着性と裸面の耐食性を調査した。
【0036】被処理鋼板…電気亜鉛めっき鋼板(めっき
目付量:20g/m2 ), クロメ−ト液…CrO3 =50g/l (全Cr濃度:26g/
l), Cr6+/全Cr=0.5 (還元剤はエチレングリコ−ル使用), SiO2 /全Cr=2.0 (SiO2 として粒径10〜20nmの
酸性安定コロイダルシリカと粉末シリカを使用), 塗布方法…上記クロメ−ト液を希釈したものを用い、Cr
付着量が3〜150mg/m2 となるよう回転塗布した。な
お、この時のSi占有率を測定した結果、2〜40%の幅
で振れていた。 焼付条件…オ−ブン設定温度を変化させ(焼付時間は6
0秒で一定)、〔水可溶性Cr/不溶性Cr〕の比率が 50/
50〜0/100 の各種条件になるよう調整した。
【0037】なお、塗装密着性については、メラミンア
ルキッド系塗料の1コ−ト1ベ−ク処理(片面塗装,塗
膜厚:25ミクロン,焼付条件:125℃で25分)を
施した後、その1次密着性(塗装焼付後にそのまま評
価)並びに2次密着性(塗装焼付後、 沸水に2時間浸漬
したものについての評価)で評価したが、評価方法は、
何れの場合も1mm角にゴバン目をけがいてエリクセン5
mm張出し後にテ−プ剥離を行い、その剥離状況を目視判
定する手法によった。
【0038】また、評価結果は ◎:剥離なし, ○:かすかに剥離あり, △:半分剥離あり, ×:剥離大, ××:全面剥離, で表示することとした(目標性能は◎及び○の評価結果
に該当)。
【0039】そして、クロメ−ト処理鋼板の裸面(無塗
装面)における耐食性はJIS Z2371に規定される塩
水噴霧試験で評価した(目標性能は錆が5%発生するま
での時間:72時間以上である)。
【0040】ところで、Cr量については、蛍光X線分析
にて沸水2時間浸漬前後のCr量を測定し、 全Cr量=浸漬前のCr量, 水不溶性Cr量=浸漬後のCr量, 水可溶性Cr量=全Cr量−不溶性Cr量 で表される値として把握した(なお、 試験としては最高
で沸水6時間まで浸漬したが、 2時間以降は不溶性Cr量
の変化がなかったため沸水浸漬時間は2時間とした)。
【0041】Si占有率(クロメ−ト皮膜最表層のSi原子
占有面積率)については、極表層の皮膜分析に適したX
線光電子分析装置(XPS)を使用し、最表層原子を定
量することにより求めた。
【0042】さて、上記調査結果のうち、まずCr付着量
が30 mg/m2 で一定の時(Si占有率=10%)の〔水
可溶性Cr/水不溶性Cr〕比率と塗装密着性との関係を整
理して図4に示した。この図4からも、〔水可溶性Cr/
水不溶性Cr〕の比率が 30/70〜0/100 の時に塗装密着性
が良好であることを確認できる。
【0043】次いで、Cr付着量と塗装密着性との関係を
図5に(この時の〔水可溶性Cr/水不溶性Cr〕比は 20/
80〜5/95であった)、Cr付着量と耐食性との関係を図6
に、Si占有率と塗装密着性との関係を図7に、それぞれ
整理して示す。図5及び図6からは、Cr付着量が金属Cr
換算で100mg/m2 を超えると塗装密着性が不十分とな
り、逆にCr付着量が5mg/m2 未満では耐食性が不十分と
なることを確認できる。図7からは、Si占有率が5〜3
0%であれば良好な塗料密着性が確保されることを確認
できる。
【0044】実施例 2 片面塗装鋼板を想定して被処理鋼板に下記条件でクロメ
−ト処理を施したが、この際に使用したクロメ−ト液の
安定性と、得られたクロメ−ト処理鋼板の組成及び性能
を調査した。
【0045】被処理鋼板…電気亜鉛めっき鋼板(目付
量:20g/m2 ), 電気亜鉛−ニッケル合金めっき鋼板(目付量:20g/m
2 ,Ni含有率:12wt%), 溶融亜鉛めっき鋼板(目付量:60g/m2 ), 溶融亜鉛−鉄合金めっき鋼板(目付量:45g/m2 , Fe
含有率:9wt%), クロメ−ト液…表1に示す種々のCr濃度,Cr6+/全Cr,
SiO2 量(この時の使用シリカは1次平均粒径10〜2
0nmのコロイダルシリカに統一)のクロメ−ト液を調合
し、使用した。 塗布方法…表1に示す各クロメ−ト液を各種被処理鋼板
面に表2の組み合わせで回転塗布した。 焼付条件…オ−ブン設定温度を変化させ(焼付時間は6
0秒で一定)、最高到達板温を40〜350℃の各種条
件になるよう調整した。
【0046】なお、クロメ−ト液の安定性は、調整3日
後の処理液における沈澱物の有無,液の増粘(ゲル化)
を目視判定することによって評価した。また、塗装密着
性,耐食性については実施例1と同様に調査・評価し
た。
【0047】さて、まずクロメ−ト液の安定性を調査し
た結果を前記表1に併せて示す。表1に示される結果か
らも、クロメ−ト液中における〔Cr6+/全Cr〕の比率が
0.3 未満では沈澱物が形成され、また〔Cr6+/全Cr〕の
比率が 0.7を超えると液がゲル化することが確認でき
る。更に、全Cr濃度が60g/l を超えた場合も液がゲル
化を起こすことが明らかである。
【0048】
【表1】
【0049】次に、得られたクロメ−ト処理鋼板におけ
るクロメ−ト皮膜内容並びにその性能を整理して表2に
示す。
【0050】
【表2】
【0051】表2に示される結果からも、本発明で規定
する条件を満たす場合には塗装密着性,耐食性とも良好
な結果を示すクロメ−ト処理鋼板が得られることを確認
できる。
【0052】参考例 1 片面塗装鋼板を想定して被処理鋼板に下記条件でクロメ
−ト処理を施したが、その際に使用したシリカの粒径と
得られたクロメ−ト皮膜のSi占有率との関係、並びにシ
リカの粒径と得られたクロメ−ト処理鋼板の塗装密着性
との関係を調査した。
【0053】ベ−ス鋼板…電気亜鉛めっき鋼板(目付
量:20g/m2 ), クロメ−ト液…CrO3 =20g/l (全Cr濃度:10.4g/
l), Cr6+/全Cr=0.5 (還元剤はエチレングリコ−ル使用) SiO2 /全Cr=2.0 (SiO2 として粒径7〜80nmの粉
末シリカを使用), 塗布方法…上記クロメ−ト液を使用し、Cr付着量が15
mg/m2となるように回転塗布とロ−ル絞り塗布を行っ
た。 焼付条件…オ−ブン設定温度:120℃,焼付時間:6
0秒とし、最高到達温度:90℃に設定(この時の〔水
可溶性Cr/不溶性Cr〕比率は20/80〜5/95の範囲内であ
った)。なお、塗装密着性,Si占有率は実施例1におけ
ると同様に調査・評価した。
【0054】さて、このようにして得られた「シリカ平
均粒径と塗装密着性との関係」を図8に、また「シリカ
平均粒径とSi占有率との関係」を図9に示す。図8に示
される結果から回転塗布方式の場合にはシリカ平均
粒径が50nmよりも大きくなるとSi占有率が30%を超
えて塗装密着性が劣化し、またロ−ル絞り方式の場合に
は平均粒径が50nm以上よりも大きくなると逆にSi占有
率が5%を下回って塗装密着性の不良を招く傾向のある
ことが窺える。なお、図9に示される結果からは、クロ
メ−トの塗布方法に関係なく、シリカ平均粒径が10nm
未満であるとSi占有率が5%以下になって塗装密着性が
不良になる傾向のあることが窺える。これらの結果から
も、クロメ−ト液に添加するシリカは平均粒径が10〜
50nmのものを使用するのが望ましいと考えられる。
【0055】実施例 3 まず、酸化物微粒子添加クロメ−ト液の分散状態変化を
把握するため、 無水クロム酸(CrO3 )=25g/l , Cr6+/全Cr=0.5 (グリセリンを還元剤として使用し部
分還元する), 水分散SiO2 ゾル=固形分重量で100g/l(1次粒径が1
0〜20mμの水分散SiO2 ゾルを添加) なる組成のクロメ−ト液を調整し、レ−ザ−ビ−ム散乱
法によるクロメ−ト液中の粒子径変化を室温中に放置し
た状態で経時的に調査した。
【0056】この結果を図10に示す。図10からも、放置
時間が長くなるとクロメ−ト液中の平均粒子径が大きく
なっていることが明らかで、酸化物微粒子が粗大化して
いることが分かる。そして、これを放置しておくと最終
的にはゲル化してしまった。
【0057】そこで、これとは別に、前記と同様の酸化
物微粒子添加クロメ−ト液を作ると共に、これから種々
の時間を経過した時点で採取した各“経時液”を用い、
次に示す条件で攪拌を行った時の“クロメ−ト液中の平
均粒子径”を測定して、その結果を図10に併せて示し
た。 (イ) インペラ−による機械攪拌 [条件] 容量:3l,回転数:500rpm ,回転時間:
30分。 (ロ) 超音波振動による攪拌 [条件] 振動付加手法:振動子をクロメ−ト液中に浸漬
して振動付加, 容量:3l,振動数:18kHz,超音波出力:400
W, 振動時間:30分。
【0058】図10に示す結果を総合的に検討すると、ク
ロメ−ト液の攪拌を行わない場合に比較して機械的攪拌
を実施すると平均粒子径が減少するものの、クロメ−ト
液を調合した初期状態の粒子径にまでは回復していない
ことが分かる。これに対し、超音波振動を付与したもの
は経時劣化液であってもほヾ液の調合初期における粒子
径にまで回復しており、超音波振動を付与することが酸
化物微粒子の再分散に有効な手段であることが確認でき
る。
【0059】次に、前記クロメ−ト液を用い、それぞ
れ、 1) 各“経時液”を攪拌しない場合, 2) 各“経時
液”を機械的に攪拌した場合,3) 各“経時液”に超音
波振動を付与した場合,についてクロメ−ト処理を行
い、該クロメ−ト処理製品性能を比較した。なお、この
時のクロメ−ト処理は以下の条件で実施した。 被処理鋼板…電気亜鉛めっき鋼板(めっき目付量:20
g/m2 ), クロメ−ト液塗布条件…サンプルクロメ−ト液に浸漬
後、ロ−ル絞り塗布実施(抑え圧:5kg/cm2,ロ−ルゴ
ム硬度:50°,絞りスピ−ド:10m/min), 乾燥条件…オ−ブン乾燥(設定温度:200℃,乾燥時
間:30秒,最高到達板温:70℃)。
【0060】ここで、「耐食性」の調査は、得られたク
ロメ−ト処理鋼板を無塗装でJIS Z2371に規定され
る塩水噴霧試験に付し、白錆発生面積率が5%以上とな
る時間を測定する手法によった。
【0061】また、「塗装密着性」の調査は、メラミン
アルキッド系塗料の1コ−ト1ベ−ク処理(塗膜厚:2
5μm,焼付条件:最高到達温度150℃で20分)を
施した後、1mm角にゴバン目をけがいてからテ−プ剥離
を行い、その剥離状況を目視判定する手法によった。こ
の判定結果は、 ○:剥離なし, △:部分的に剥離発生, ×:全面剥離発生, で表示することとした。
【0062】更に、「クロメ−ト皮膜におけるSiO2
着量」の調査も行ったが、この調査はクロメ−ト液中の
SiO2 が鋼板クロメ−ト皮膜中に十分転写されているか
を見るため(ロ−ル絞り塗布時に経時的に粗大化したSi
2 粒子が剥落し鋼板上に十分転写されないことが考え
られるため)に実施したものであり、蛍光X線法にてSi
2 付着量を測定した。これらの結果を図11乃至図13に
示す。
【0063】図11に示される結果からは、無攪拌,機械
的攪拌後のクロメ−ト液で処理した場合、経時時間が長
いクロメ−ト液を使用すると調合初期液の場合に比べて
耐食性が劣化していくが、超音波攪拌後のクロメ−ト液
で処理した場合には調合初期液であっても経時液であっ
ても耐食性劣化が殆ど認められず、超音波振動を付加し
てクロメ−ト液中のSiO2 再分散性を向上させると経時
安定して良好な耐食性が得られることを確認できる。
【0064】また、図12に示される結果からは、無攪
拌,機械的攪拌後のクロメ−ト液で処理した場合、経時
時間が長いクロメ−ト液を使用すると調合初期液の場合
に比べて或る放置時間を境に急激に塗装密着性が劣化す
ることが分かる。これに対し、超音波攪拌後のクロメ−
ト液で処理した場合にはこのような急激な塗装密着性劣
化は認められず、調合初期液であっても経時液であって
も塗装密着性が劣化しないことが明らかであるから、超
音波振動を付加してクロメ−ト液中のSiO2 再分散性を
向上させると経時安定して、良好な塗装密着性が得られ
ることを確認できる。
【0065】更に、図13に示される結果からは、経時劣
化液を使用しロ−ル絞りで処理した時のクロメ−ト皮膜
中へのSiO2 付着量の変化状況が分かるが、無攪拌,機
械的攪拌後のクロメ−ト液で処理した場合には或る放置
時間を境に急激にSiO2 付着量が減少しており、この放
置時間は塗装密着性劣化時間と一致していることが確認
される。これは、クロメ−ト液中に粗大SiO2 粒子が成
長するとロ−ル絞りの際にこれが剥落し、良好な塗装密
着性の確保に必要な十分量のSiO2 が鋼板上に転写され
て付着しないためと考えられる。
【0066】従って、上記試験結果から、ロ−ル・鋼板
間でクロメ−ト液に剪断力がかかるロ−ル絞り方式、或
いはロ−ル・ロ−ル間でクロメ−ト液に剪断力がかかる
ロ−ルコ−ト方式等では、クロメ−ト液中に粗大凝集Si
2 粒子が生成すると鋼板上に十分転写されずに製品性
能の劣化が著しくなるが、この場合でもクロメ−ト液に
超音波振動を付加してSiO2 粒子の再分散を図ると粗大
凝集SiO2 粒子は再び微細に均一分散することとなり、
経時液を適用したロ−ル絞り方式やロ−ルコ−ト方式等
によるクロメ−ト処理においても良好な製品性能を安定
して確保できるようになることが分かる。
【0067】
【効果の総括】以上に説明した如く、この発明によれ
ば、優れた上塗り塗装密着性を有し、かつ無塗装でも良
好な耐食性を示すところの、片面塗装用としても十分満
足できるクロメ−ト処理鋼板をコスト安く提供すること
が可能になる上、処理液の経時劣化に影響されることな
く、また格別な設備変更を要することもなく高品質処理
品を安定提供できるようになるなど、産業上極めて有用
な効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】クロメ−ト液へ超音波振動を付加する手法の1
例に関する説明図である。
【図2】クロメ−ト液へ超音波振動を付加する手法の別
例に関する説明図である。
【図3】クロメ−ト液へ超音波振動を付加する手法の更
なる別例の説明図である。
【図4】クロメ−ト皮膜の〔水可溶性クロム/水不溶性
クロム〕比率と塗装密着性との関係を示すグラフであ
る。
【図5】クロメ−ト皮膜のクロム付着量と塗装密着性と
の関係を示すグラフである。
【図6】クロメ−ト皮膜のクロム付着量と耐食性との関
係を示すグラフである。
【図7】クロメ−ト皮膜のSi占有率(最表層におけるSi
原子占有面積率)と塗装密着性との関係を示すグラフで
ある。
【図8】シリカ平均粒径と塗装密着性との関係を示すグ
ラフである。
【図9】シリカ平均粒径とSi占有率との関係を示すグラ
フである。
【図10】クロメ−ト処理液の放置時間と液中酸化物の
平均粒子径との関係を示すグラフである。
【図11】使用クロメ−ト処理液の経時日数と耐食性と
の関係を示すグラフである。
【図12】使用クロメ−ト処理液の経時日数と塗装密着
性との関係を示すグラフである。
【図13】使用クロメ−ト処理液の経時日数とクロメ−
ト皮膜へのSiO2 付着量の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 クロメ−ト液貯蔵循環タンク 2 クロメ−ト液スプレ−ゾ−ン 3 被処理鋼板 4 振動板 5 超音波振動装置 6 攪拌子(インペラ−)

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 表面に、 〔水可溶性クロム/水不溶性クロム〕の比率: 30/70〜
    0/100, クロメ−ト皮膜最表層におけるSi原子占有面積率:5〜
    30%, クロム付着量:金属Cr換算で5〜100 mg/m2 , であるクロメ−ト皮膜を有して成ることを特徴とする、
    塗装密着性に優れたクロメ−ト処理鋼板。
  2. 【請求項2】 シリカを添加して 〔Cr6+/全Cr〕の比率: 0.3〜0.7 , 全Cr濃度:5〜60g/l, 〔SiO2 /全Cr〕の比率: 0.5〜4.0, に調整したCrO3 を主成分とするクロメ−ト液を被処理
    鋼板の表面に塗布し、水洗することなく最高到達板温が
    50〜250℃の条件で乾燥することを特徴とする、請
    求項1に記載の塗装密着性に優れたクロメ−ト処理鋼板
    の製造方法。
  3. 【請求項3】 シリカを添加して 〔Cr6+/全Cr〕の比率: 0.3〜0.7 , 全Cr濃度:5〜60g/l, 〔SiO2 /全Cr〕の比率: 0.5〜4.0, に調整したCrO3 を主成分とするクロメ−ト液を、該液
    に超音波振動を付加しながら被処理鋼板の表面に塗布
    し、水洗することなく最高到達板温が50〜250℃の
    条件で乾燥することを特徴とする、請求項1に記載の塗
    装密着性に優れたクロメ−ト処理鋼板の製造方法。
JP3198634A 1991-02-09 1991-07-13 クロメ−ト処理鋼板及びその製造方法 Expired - Fee Related JP2743633B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP3198634A JP2743633B2 (ja) 1991-02-09 1991-07-13 クロメ−ト処理鋼板及びその製造方法

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP3-39163 1991-02-09
JP3916391 1991-02-09
JP3198634A JP2743633B2 (ja) 1991-02-09 1991-07-13 クロメ−ト処理鋼板及びその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH04350173A JPH04350173A (ja) 1992-12-04
JP2743633B2 true JP2743633B2 (ja) 1998-04-22

Family

ID=26378494

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP3198634A Expired - Fee Related JP2743633B2 (ja) 1991-02-09 1991-07-13 クロメ−ト処理鋼板及びその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2743633B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2011102537A1 (ja) * 2010-02-19 2011-08-25 新日本製鐵株式会社 亜鉛系めっき鋼板及びその製造方法

Family Cites Families (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS54161549A (en) * 1978-06-13 1979-12-21 Nippon Steel Corp Chromate treatment method for zinc-coated steel product
JPS58221287A (ja) * 1982-06-18 1983-12-22 Tokico Ltd 機械的メツキ品のクロメ−ト処理方法
JPS5950184A (ja) * 1982-09-16 1984-03-23 Kansai Paint Co Ltd 電着塗装方法
JPS61147884A (ja) * 1984-12-19 1986-07-05 Kawasaki Steel Corp 亜鉛または亜鉛系合金めつき鋼板のクロメ−ト処理法
JPH0735589B2 (ja) * 1988-11-22 1995-04-19 日本鋼管株式会社 溶融亜鉛めつき鋼板のクロメート処理方法

Also Published As

Publication number Publication date
JPH04350173A (ja) 1992-12-04

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP3392008B2 (ja) 金属の保護皮膜形成処理剤と処理方法
JP5600417B2 (ja) 表面処理組成物及び表面処理鋼板
JP5196916B2 (ja) 溶融めっき鋼材の表面改質処理方法、及び表面改質された溶融金属めっき鋼材
JP5600416B2 (ja) 表面処理組成物及び表面処理鋼板
KR20130051997A (ko) 아연계 도금 강판용의 표면 처리액 그리고 아연계 도금 강판 및 그의 제조 방법
JPS6141744B2 (ja)
JP2743633B2 (ja) クロメ−ト処理鋼板及びその製造方法
JPS60174879A (ja) 下塗り塗装がカチオン電着塗装である多層塗装用防錆鋼板の製造方法
JPH041070B2 (ja)
JP3983386B2 (ja) クロメート防錆処理剤
JP5097311B2 (ja) 表面処理鋼板及び有機樹脂被覆鋼板
JPH11335863A (ja) 耐食性に優れた表面処理鋼板の製造方法
JP4916913B2 (ja) 表面処理鋼板及び有機樹脂被覆鋼板
JP2005097719A (ja) 亜鉛めっき製品用非クロム表面処理剤
JP3278475B2 (ja) 3価クロム化合物ゾル組成物、およびその製造方法
JP3615781B2 (ja) 3価クロム化合物ゾルの製造方法、並びに前記ゾルを含む金属材料用表面処理剤及び表面処理方法
JP5101271B2 (ja) 表面処理鋼板
JP2005105290A (ja) 導電性及び加工性に優れた樹脂塗装金属板
JP3709018B2 (ja) 潤滑性、接着性および化成処理性に優れた亜鉛系めっき鋼板の製造方法
JPH0366392B2 (ja)
JP3299459B2 (ja) 打抜き性と焼鈍後の耐焼付き性に優れた無方向性電磁鋼板およびその絶縁被膜形成方法
JP4113322B2 (ja) 金属材料表面処理用水性組成物
JP2910621B2 (ja) 潤滑性と導電性に優れた表面処理鋼板
JPH0394075A (ja) 表面調整処理方法
JP2701145B2 (ja) メツキ鋼板のクロメート化成処理方法

Legal Events

Date Code Title Description
FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20080206

Year of fee payment: 10

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090206

Year of fee payment: 11

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100206

Year of fee payment: 12

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees