JP2743228B2 - 加工性とめっき密着性に優れた溶融アルミめっきCr含有鋼板の製造方法 - Google Patents

加工性とめっき密着性に優れた溶融アルミめっきCr含有鋼板の製造方法

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JP2743228B2 JP11753492A JP11753492A JP2743228B2 JP 2743228 B2 JP2743228 B2 JP 2743228B2 JP 11753492 A JP11753492 A JP 11753492A JP 11753492 A JP11753492 A JP 11753492A JP 2743228 B2 JP2743228 B2 JP 2743228B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はメッキ密着性に優れ、か
つ加工性が良好なCr含有アルミめっき鋼板を焼鈍炉を
保有するゼンジマー方式の溶融めっきラインにてインラ
イン焼鈍を行いながら製造する方法に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】加工用冷延鋼板にアルミめっきを施した
アルミめっき鋼板はその優れた耐熱性、耐食性から屋根
・壁等の建築部材、エキゾーストパイプやマフラー等の
自動車排気部材、ストーブやパン焼き皿等の家庭用器具
・耐熱用部品材料等巾広い分野に亘って使用されてい
る。この中で特に、自動車排気系については、従来か
ら、Cr含有鋼板やアルミめっき鋼板が最もよく使用さ
れている。ところが、最近になり、車体防錆の表面錆5
年−穴明き10年対応に呼応して、より長寿命化が要求
されてきている。Cr含有鋼板は、マフラー内部の排気
ガス凝縮液環境には、良好な耐食性を示すが、外面側の
塩害に弱く、塩素イオンが存在するとCr含有鋼板の特
徴である不働態膜が破壊され、孔食腐食が起き、孔があ
く欠点がある。またアルミめっき鋼板だけでは、外面耐
食性はAlの犠牲防食作用で良好であるが、内面耐食性
が劣る欠点が存在した。このため、両方の長所を兼ね備
えたアルミめっきCr含有鋼板のニーズが高く、多くの
アルミめっきCr含有鋼板が開発されている。例えば、
特開昭63−143240号公報、特開昭63−143
241号公報のように5〜10%Cr含有鋼板をベース
としたアルミめっきCr含有鋼板や、更に高耐食性を有
したCrを10〜18.5%を含有し、且つMo,T
i,Nb等を含有したアルミめっきCr含有鋼板(特開
平3−277761号)等がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところがこれらのCr
含有鋼板はめっき原板としては、多くの問題が存在す
る。その第一は溶融アルミめっき時に発生する不めっき
の問題である。これはCr含有鋼板に含まれているCr
が大きく影響している。つまり、CrはFeに比べて酸
化されやすいため、加熱炉内で鋼板表面にCr系の難還
元性酸化皮膜が生成し、これは通常の還元性雰囲気中で
は還元が困難であり、鋼板表面に残存する。このためこ
の酸化膜が溶融めっき時に浴中のAlと地鉄の合金化反
応を阻害し、めっきが濡れない状態になる。(不めっき
と呼んでいる)軽い程度の不めっき(φ1mm以下)で
あれば、めっき層の犠牲防食作用から耐食性は極端に悪
化することはないが、それより大きい場合や数が多い場
合は耐食性が悪化する。また外観も悪く商品価値が著し
く低下する。もう1つは、再結晶温度の問題である。C
r含有鋼板の場合その要求特性のレベルから様々な合金
元素が添加されている場合が多い。その中でも、Ti,
Nb等は固溶Cを固定しクロムカーバイトの析出を防止
し、Cr欠乏層の生成による耐食性悪化の効果があり、
また加工性の改善の効果があるため、使用される頻度が
高い。しかしながら、Nbについては、再結晶温度を上
げる性質をもっているため、Nb添加のCr含有鋼板の
再結晶温度は通常のCr含有鋼板の再結晶温度に比べ約
100℃も高く、900℃以上になるものも数多くあ
る。これらについては、通常の溶融めっきラインでの焼
鈍は不可能で専用の焼鈍設備が必要である。
【0004】これらの課題に対する解決方法としては、
例えば、特開昭60−26950号公報等のように鋼板
表面にNiやFeのように易還元性の金属を被覆して鋼
板のCrの酸化を防止する方法が一般的であるが、この
場合、鋼板表面を易還元性金属で被覆するためには最低
2.0g/m2 以上の付着量が必要でコストが嵩むだけ
でなく、加工性や耐食性劣化等の弊害が生じる。また特
開平2−163357号公報のように炉内での生成酸化
皮膜の形態を制御して、鉄系酸化膜を選択的に生成させ
この酸化膜を還元しめっき濡れ性を向上させる方法も有
効である。しかしこの場合、鉄系酸化膜の生成量と適当
な厚みにコントロールしないと酸化膜の表層のみが還元
され、良好なめっき外観は得られても、プレス加工を施
すと残存した酸化膜のところから、めっき剥離が生じて
加工用途には適さない場合がある。このため、特開平3
−111546号のように、原板に焼鈍済鋼板を用い
て、鉄系酸化膜を選択的に生成させ、その生成量を極力
薄くし、酸化還元バランスを考慮したヒートサイクルで
溶融アルミめっきを施すのが合理的である。しかしこの
場合も、原板に焼鈍済鋼板を使用するため、インライン
で焼鈍機能を有している溶融アルミめっきラインを通板
する前に、専用の焼鈍ラインと酸洗ラインを通板する必
要があり、結果的に2回焼鈍を行うことになり、コスト
が高くなり、また製造工程上も必要以上に長くなってい
る。
【0005】
【課題を解決するための手段】発明者らは、上記課題を
克服するため数々の実験を繰返した結果、原板として、
再結晶温度を上げているNbを添加しないで製造したC
rを10〜25%含有するCr含有鋼板を用いて、弱酸
化性雰囲気炉にて適当な温度に加熱することにより、易
還元性の鉄系酸化膜を選択的に生成させ、且つその酸化
膜を還元しながら焼鈍をも行い、加工性・めっき密着性
・外観の全て成立させる操業条件があることを知見し
た。この方法であれば、原板として冷延鋼板を使用でき
るため、焼鈍・酸洗工程を省略できるため、コスト・製
造工期上のメリットが大きく、且つ加工性・めっき密着
性・外観については、焼鈍済鋼板を使用した場合とほぼ
同等の特性を得られることを見出した。即ち本発明は鋼
中にCr;10〜25%含有する冷延板を、加熱バーナ
ーの空気比0.90〜1.50の酸化性又は弱酸化性雰
囲気炉で、温度550〜700℃に加熱し、鋼板表面に
鉄を主体とした酸化膜を生成させ、その後還元性雰囲気
炉で温度800℃以上でかつ上記弱酸化性雰囲気炉出側
板温+300℃以内に加熱して軟化焼鈍を行い、同時に
鉄系酸化膜のみを還元し、その後、冷却帯にて冷却しな
がら、連続溶融アルミめっきすることを特徴とする加工
性とめっき密着性に優れた溶融アルミめっきCr含有鋼
板の製造方法である。
【0006】
【作用】以下に本発明について詳細に説明する。転炉,
電気炉など通常の溶解炉で溶製された溶鋼を、造塊また
は連続鋳造を経て製造された鋼片をさらに熱間圧延と冷
間圧延を経て鋼中にCr:10〜25%を含有する冷延
板を製造する。スケール等の発生を防止するため、スラ
ブ手入れ等の処置は通常のCr含有鋼板の製造に準じて
実施する。Crは鋼中に含有されて鋼板自体の耐食性を
向上させるだけでなく、アルミめっき後は、自動車排ガ
ス凝縮中の腐食環境中では、めっきされたアルミニウム
の犠牲防食中の腐食環境下では、めっきされたアルミニ
ウムの犠牲防食作用を発揮させるのに、有効な成分であ
る。しかしながら10%未満の少ないCr含有量では、
そのような効果をえるのには不十分で、また25%を超
える過剰な含有量は耐食性・耐熱性効果が過飽和とな
り、鋼板の加工性も劣化し、各種の用途の製品に使用す
ることができない。
【0007】Nbは、固溶Cを固定し、クロムカーバイ
トの析出を防止し、鋼板の耐食性を向上させるだけでな
く、加工性を向上させるのに有効な成分であり、特に再
結晶温度を上昇させる効果があり、マニフォールド用途
等の高温強度を必要な部位には必要な元素であるが、本
発明においては、自動車のマフラーや家電等の高温での
強度を必要としない用途に限定しており、Nbについて
は必須元素では無く、Ti等の炭化物生成元素にて代替
する。これにより、再結晶温度の上昇が回避され、溶融
めっきラインでのインライン焼鈍が可能になる。その他
Mo,Ni等については、必須元素ではないが、再結晶
温度の上昇効果はなく且つ耐食性向上効果があるためよ
り高耐食性を必要とされる用途については、添加するこ
とが好ましい。
【0008】このようにして製造された鋼中にCr;1
0〜25%含有する冷延板は、そのまま又は必要によっ
ては、NiプレめっきやFeプレめっきを施した後、加
熱バーナーの空気比0.9〜1.5%の酸化性または弱
酸化性雰囲気で鋼板の温度が550〜700℃に加熱す
る。この加熱は鋼板及びNi等のプレめっき表面とアル
ミめっき金属との密着性を改善し、かつ還元性雰囲気炉
にてインライン焼鈍するための必要な温度までに加熱す
るものである。本発明が対象とする鋼板は、Cr含有量
が高いので、通常の焼鈍条件では、鋼中Crが選択的に
酸化し、この酸化膜は還元炉にて還元は不可能のため、
アルミめっきした場合地鉄とアルミとの合金化反応を阻
害し、めっき濡れ性が著しく劣化する。そこで加熱バー
ナーの空気比を0.9〜1.5にして鉄系酸化膜の生成
を促進し、焼鈍に必要な温度まで加熱する。このように
して生成した鉄系酸化膜は還元炉にて容易に還元され、
鋼板表面が活性化され、アルミめっきした場合の合金層
が均一に生成し、良好な密着性を確保できる。
【0009】このような効果は所定の空気比と板温によ
り得られるものであって、0.9未満の空気比では、鉄
系酸化膜を緻密に生成させるには、「O」量が不足して
いるため、鉄系酸化膜が緻密に生成する前にCr系酸化
膜も生成するため、めっき濡れ性が劣化する。逆に、
1.5を超える高空気比では、加熱バーナーが安定して
焼鈍できなくなり、連続操業が困難となる。また板温が
700℃を超えると生成する酸化膜の量が多くなり、還
元するためには、還元炉にて高温、長時間の還元が必要
となる。このため莫大な設備投資が必要であるだけでな
く、結晶粒が粗大化し加工性の劣化も懸念される。逆に
板温が550℃未満では、インライン焼鈍するためには
還元性雰囲気炉で800℃以上に加熱する必要があるの
で、還元性雰囲気炉での加熱負荷が増大すると酸化性ま
たは弱酸化性雰囲気炉で鉄系酸化膜の還元が完了し、更
に地鉄のCrの酸化がおこりめっき濡れ性が劣化する。
また冷延鋼板をそのままめっきする場合、圧延油を完全
に消失させるためには、550℃以上が必要である。す
なわち上記のような空気比と加熱温度の調和のとれた範
囲で加熱することにより、易還元性の鉄系酸化膜が緻密
に生成し、Crの濃化と酸化を極力抑制した界面になっ
ている。
【0010】このようにして鋼板表面に鉄系酸化膜を生
成したCr含有冷延板は還元性雰囲気炉にて800℃以
上でかつ酸化性または弱酸化性雰囲気炉出側板温+30
0℃以下に加熱しインライン焼鈍を行いながら表面の鉄
系酸化膜を還元し、丁度還元が終了するタイミングにて
アルミ浴中に侵入する。この場合、板温が800℃未満
では再結晶が完了せず冷延組織が残留し、加工性を劣化
させる。還元性雰囲気炉は、Feについての還元性であ
り、この雰囲気では易酸化性であるCrについては酸化
性雰囲気のため、ここで板温を上げすぎて、表層に生成
した鉄系酸化膜を完全に還元し、地鉄表面が露出すると
Crの酸化が起こりめっき濡れ性が劣化する。そこで数
々の実験を繰り返したところ、酸化性または弱酸化性雰
囲気炉出側板温+300℃以下であれば、丁度酸化還元
反応がバランスし、良好な外観・密着性・加工性が得ら
れることを知見した。図1のABCDに囲まれた範囲で
ある。
【0011】しかして上記の熱処理を受けたCr含有鋼
板はただちに冷却を開始しながら溶融アルミめっき浴を
通過し所定のめっき付着量に調整されて製品化される。
この場合の冷却速度は冷却中に生成するクロムカーバイ
トの析出を防止するために速い程好ましく、またはアル
ミめっき浴についても、アルミ・アルミシリコン合金な
ど各種のアルミ系めっき浴が使用される。しかして製造
されたアルミめっきCr含有鋼板は溶融めっきラインで
のインライン焼鈍のため、コスト削減が可能でかつ製造
工期が短縮され、更に、加工性・めっき密着性・外観に
すぐれた鋼板となる。本発明の製造条件を模式的に表す
と図1のようになる。次に本発明の実施例について説明
する。
【0012】
【実施例】表1及び表2は各種成分含有量の異なるCr
含有冷延板を、温度、空気比を変化させて、溶融アルミ
めっきした時のめっき特性(外観・密着性・引張り試験
結果)を示した実験結果である。その結果、本発明でア
ルミめっきした鋼板は、上記特性の全てが良好であり、
本発明から逸脱した比較材は良好な特性を得ることがで
きなかった。
【0013】
【表1】
【0014】
【表2】
【0015】 (注)(1)Alめっき浴組成 Si:9.0〜10.5% Fe:2.0〜3.0% Al:残 (2)炉内雰囲気 H2 :30〜40% N2 :残 (3)その他の条件は一般アルミめっき製造条件に同じ (4)カップ絞り条件 ブランク径 85φ 絞り比 2.1 潤滑油 スピンドル油 (5)めっき外観 記号 不めっき個数 ◎・・・10ケ/dm2 以下 ○・・・30ケ/dm2 以下 △・・・50ケ/dm2 以上 (6)ボールインパクトテスト評点 記号 評点 カップ絞りテスト評点 1・・・ 異常なし 1t曲げ テスト評点 2・・・めっき層に亀裂あり 3・・・点状めっき剥離あり 4・・・箔状めっき剥離あり 5・・・全面めっき剥離あり
【0016】
【発明の効果】以上述べたように、本発明は従来の方法
と異なり、インライン焼鈍を行ないながらめっきするの
で焼鈍・酸洗工程を省略でき、コスト、製造工期上のメ
リットが大きく工業上極めて優れた効果を奏するもので
ある。
【図面の簡単な説明】
【図1】加工性・めっき密着性・外観に及ぼす各板温の
影響について示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 江口 晴彦 福岡県北九州市戸畑区飛幡町1番1号 新日本製鐵株式会社 八幡製鐵所内 (56)参考文献 特開 平3−111546(JP,A) 特開 平2−163357(JP,A) 特開 平3−64437(JP,A)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鋼中にCr;10〜25%含有する冷延
    板を、加熱バーナーの空気比0.90〜1.50の酸化
    性又は弱酸化性雰囲気炉で、温度550〜700℃に加
    熱し、鋼板表面に鉄を主体とした酸化膜を生成させ、そ
    の後還元性雰囲気炉で温度800℃以上でかつ上記弱酸
    化性雰囲気炉出側板温+300℃以内に加熱して軟化焼
    鈍を行い、同時に鉄系酸化膜のみを還元し、その後、冷
    却しながら、連続溶融アルミめっきすることを特徴とす
    る加工性とめっき密着性に優れた溶融アルミめっきCr
    含有鋼板の製造方法。
JP11753492A 1992-05-11 1992-05-11 加工性とめっき密着性に優れた溶融アルミめっきCr含有鋼板の製造方法 Expired - Lifetime JP2743228B2 (ja)

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CN108796417A (zh) * 2017-05-02 2018-11-13 贵州理工学院 一种热浸镀铝法连续制备耐腐蚀工字钢的方法及其装置

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