JP2827739B2 - 疲労特性及び深絞り性に優れた鋼板の製造方法 - Google Patents

疲労特性及び深絞り性に優れた鋼板の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、優れた深絞り成形性と
疲労特性とを兼備えた鋼板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、薄鋼板に高い成形性を付与す
る手法としては、極低炭素鋼にTi,Nb等の炭・窒化
物形成元素を添加してC,Nを析出固定したIF(In
terstitial Free)鋼が知られている。
このようなIF鋼を前提とした成形性に優れた冷延鋼板
及び溶融亜鉛めっき鋼板に関する技術が、例えば特開平
2−34722号、特開平1−225727号に開示さ
れている。近年、自動車車体の形状が複雑化してきてい
るため、IF鋼のように非常に優れた加工性を有してい
る鋼板でなければ加工できない部品が急増しており、I
F鋼が自動車用鋼板の素材として広く用いられている。
【0003】一方、疲労強度が必要であり、かつ深絞り
成形を受けるような部品には、従来低炭素アルミキルド
鋼が使用されているが、この低炭素アルミキルド鋼板の
成形性はIF鋼のそれには及ばない。こうした背景か
ら、疲労特性、深絞り成形性ともに優れた鋼板が求めら
れている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従来のIF鋼では、特
開平1−225727号や特開平2−34722号など
のように、高r値を達成するための手段としてC,Nを
十分析出固定するにたるTi,Nbを含有させること、
及びAc3 変態点を越えない範囲で高温焼鈍することを
行っている。確かに、これらの方法によれば、高r値を
得ることはできる。しかし、これらの技術では、疲労特
性の改善は全く意図されていないのである。
【0005】この発明はかかる事情に鑑みてなされたも
のであって、優れた深絞り成形性を有し、かつ低炭素ア
ルミキルド鋼板に匹敵する疲労特性を有する鋼板の製造
方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段及び作用】本発明は、第1
に、重量%で、C:0.0050%以下、Si:0.2
%以下、Mn:0.10〜0.5%、P:0.03%以
下、S:0.015%以下、sol.Al:0.10%
以下、N:0.0040%以下を含有し、更に0.00
5〜0.10%のTi及び0.005〜0.030%の
Nbの1種又は2種を含有する鋼材を1200℃以上1
300℃以下の温度で加熱した後熱間圧延し、450℃
以上600℃以下の温度でコイルに巻き取り、得られた
熱延鋼帯を酸洗後圧下率60%以上90%以下で冷間圧
延し、再結晶温度以上でかつ、6(10Si+0.5M
n+100P+14)+710で規定される温度以下で
焼鈍することを特徴とする疲労特性及び深絞り性に優れ
た鋼板の製造方法を提供する。
【0007】第2に、重量%で、C:0.0050%以
下、Si:0.2%以下、Mn:0.10〜0.5%、
P:0.03%以下、S:0.015%以下、sol.
Al:0.10%以下、N:0.0040%以下、更に
Ti及びNbのうち1種又は2種を−1≦(12Ti
* )/(48C)+(12Nb)/(93C)≦2(た
だし、Ti* =Ti−48/14/N−48/32S)
を満足するように含有する鋼材に対して熱間圧延を施
し、500℃以上600℃未満の温度でコイルに巻き取
り、これを酸洗後圧下率60%以上90%以下で冷間圧
延し、再結晶温度以上でかつ、−11{(12Ti*
/(48C)+(12Nb)/(93C)}+800で
規定される温度以下で焼鈍することを特徴とする疲労特
性及び深絞り性に優れた冷延鋼板の製造方法を提供す
る。
【0008】本発明者らは、上記課題を解決するために
研究を進めた結果、軟質薄鋼板の疲労強度は材料の降伏
強度が高いほど高くなることを見出した。すなわち、深
絞り成形性に優れているIF鋼を用いて鋼板のr値を確
保した上で降伏強度を上昇させれば、優れた深絞り成形
性および疲労特性を兼ね備えた鋼板を製造することがで
きるのである。
【0009】そして、深絞り成形性を損なうことなく降
伏強度を上昇させるためには、焼鈍後の粒径を小さくす
ることが必要であり、そのためには、(1)高温加熱・
低温巻取を行い、かつSi,Mn,Pの強化元素量に基
づいて焼鈍温度の上限を規定すればよいこと、(2)焼
鈍温度の上限を残留固溶C量に基づいて、
【0010】−11{(12Ti* )/(48C)+
(12Nb)/(93C)}+800(ただし、Ti*
=Ti−48/14/N−48/32S)に規定すれば
よいことを新たに見出した。上記構成を有する本発明
は、本願発明者らのこのような知見に基づいて完成され
たものである。以下、この発明について詳細に説明す
る。
【0011】上述したように、この発明の第1の態様に
おいては、特定の組成の鋼を、高温に加熱した後熱間圧
延し、低温で巻き取り、酸洗後特定温度冷間圧延を行
い、Si,Mn,Pの強化元素量に基づいてその上限が
規定される温度範囲にて焼鈍し、優れた深絞り成形性お
よび疲労特性を兼ね備えた鋼板を製造する。
【0012】また、第2の態様においては、特定の組成
の鋼を熱間圧延し、酸洗後特定温度で冷間圧延を行い、
残留固溶C量に基づいてその上限が規定される温度範囲
にて焼鈍し、優れた深絞り成形性および疲労特性を兼ね
備えた鋼板を製造する。
【0013】そして、いずれの態様においても、冷延鋼
板のまま使用してもよいし、その上に溶融亜鉛めっきを
施してもよい。また、溶融亜鉛めっきに合金化処理を施
してもよく、さらに合金化処理しためっき皮膜の上にF
e含有量が50%以上のFe−Zn合金めっきを施して
もよい。第1の態様における鋼成分の限定理由は以下の
通りである。 C: Cは高r値を達成するためには低い方がよいが、
実用上本発明の効果を損なわない範囲として、その上限
を0.0050重量%に規定する。
【0014】Si: Siは強化元素として、鋼板の降
伏強度および引張強度の上昇に寄与して、疲労強度の向
上に有効な元素であるが、0.2重量%を越えて含有す
ると、鋼板のr値を劣化させるばかりか、溶融亜鉛めっ
きを施す場合にその密着性を著しく悪化させる。従っ
て、その上限を0.2重量%に規定する。
【0015】Mn: MnもSiと同様に、鋼板の強度
上昇に対して寄与するが、0.10重量%未満ではその
効果がほとんどなく、逆に0.50重量%を越えて添加
すると、鋼板のAc3 変態点を低下させ、最適焼鈍温度
範囲が狭くなるばかりか、鋼板のr値を劣化させる。従
ってMn含有量を0.10〜0.5重量%の範囲に規定
する。
【0016】P: Pは、最も安価に鋼を強化させるこ
とができるが、0.03重量%を越えて含有すると、溶
融亜鉛めっきの合金化反応を極端に遅らせ、合金化むら
等の欠陥の原因となるばかりか、鋼板のr値を劣化させ
る。従ってその上限を0.03重量%に規定する。
【0017】S: Sは鋼板の延性を劣化させるため、
できる限り低減したほうが望ましい。しかし、極端に減
少させることは現実的ではなく、実用上本発明の効果を
損なわない範囲である0.015重量%を上限とする。 sol.Al: Alは脱酸のために必要であるが、あ
まり多量に添加するとコストの上昇を招くため、その上
限を0.10重量%に規定する。 N: Nは高r値を得るためには少ないほうが望まし
く、その含有量を高r値が得られる0.0040重量%
以下に規定した。
【0018】Ti,Nb: Ti,Nbは鋼中の固溶
C,Nを析出物として固定し、高r値を得るために添加
される。しかし、Tiの含有量が0.005重量%未満
ではその効果がなく、0.10重量%を越えて含有して
もその効果が飽和し、コスト上昇を招くのみである。ま
た、Nbの含有量が0.005重量%未満ではその効果
がなく、0.03重量%を越えて含有すると鋼の延性を
著しく低下させる。このため、Ti,Nbを夫々0.0
05〜0.10重量%、0.005〜0.03重量%の
範囲に規定する。そして、これらは同様の作用をするた
め、これらの少なくとも1種が含まれていればよい。次
に、第1の態様の製造条件の限定理由について説明す
る。
【0019】熱間圧延工程においては、まずスラブを1
200℃以上1300℃以下の温度で加熱する。120
0℃以上の温度で加熱を行うことにより、スラブの段階
で粗大に析出したTiN等の析出物を加熱時に再溶解さ
せることができ、これらが熱延終了時に微細析出して焼
鈍時の粒成長を抑制し、降伏強度の上昇に寄与する。し
かし、加熱温度が1300℃を越えると、スラブ表面に
生成するスケールが厚くなり、熱延時のスケール剥離性
が劣化する。従って、熱間圧延の際の加熱温度を120
0〜1300℃に規定する。
【0020】この温度に加熱後、熱間圧延を行う。この
際の熱間圧延は常法に従ってAr3変態点以上の温度で
終了することが好ましい。Ar3 点未満の温度では、焼
鈍後のr値が劣化するためである。ただし、熱間潤滑が
十分になされるような条件下においては、フェライト域
熱延を行ってもよい。
【0021】熱延後の巻取温度は450℃以上600℃
以下に規定する。600℃以下に規定したのは、熱延時
に微細析出したTiC等の析出物の粗大化を抑制し、粒
成長を抑制するためである。降伏強度を上昇させるため
には、巻取温度は低ければ低いほど良いが、450℃未
満では焼鈍後のr値が劣化するため、その下限を450
℃に規定する。
【0022】このようにして得られた熱延鋼帯を常法に
て酸洗した後、圧下率60%以上90%以下で冷間圧延
する。この際の圧下率が60%未満では高r値が得られ
ず、また、圧下率90%以上で圧延しても、r値の上昇
に対して効果がなくなるばかりか、圧延時の圧延機に対
する負荷が大きくなるため、その下限を60%、上限を
90%に規定する。
【0023】その後の焼鈍工程は、再結晶温度以上でか
つ、6(10Si+0.5Mn+100P+14)+7
10で規定される温度以下で行う。本発明者らは、この
範囲に焼鈍温度を限定することで、成形性に優れ、かつ
疲労特性にも優れた薄鋼板を製造できることを新たに知
見した。このような知見は、本発明者らの以下のような
実験を通して得られたものである。
【0024】まず、C:0.0020%,Si:tr〜
0.3%,Mn:0.1%〜0.8%,P:0.003
〜0.03%,S:0.010%,sol.Al:0.
055%,N:0.0025%,Ti:0.005〜
0.10%,Nb:0.005〜0.035%の成分の
鋼を溶解し、得られたスラブを1250℃で加熱した
後、熱間圧延して板厚を4.0mmとし、580℃でコ
イルに巻き取った。酸洗後、0.8mmまで冷間圧延
し、700℃〜900℃の範囲で連続焼鈍を行った。焼
鈍板に0.5%の調圧を施した後、機械試験および軸引
張疲労試験を行った。疲労試験は、部分片振り条件で行
い、繰り返し速度は20Hzで行った。なお、以降の引
張疲労試験は全てこのような条件で行ったものである。
図1に降伏強度と疲労限の関係を示す。図1に示すよう
に、疲労限は降伏強度で整理でき、降伏強度の高い材料
ほど疲労限は高くなることが確認された。この結果よ
り、疲労特性に優れ、しかも成形性の高い材料を得るた
めには、成形性の許される範囲で、できる限り降伏強度
の高い材料を製造しなければならないことがわかる。
【0025】次に、焼鈍温度と降伏強度及びr値との関
係の例を図2に示す。ここでr値としては、圧延方向に
対して0°、45°、90°から採取した試験片で求め
た値、r0 、r45、r90を用いて以下の式で示される平
均r値を採用した。
【0026】
【数1】 なお、図2に示した鋼板の化学成分を表1に示す。
【0027】
【表1】
【0028】図2から明らかなように、焼鈍温度の上昇
とともにr値は大きくなるが、その反面降伏強度が低下
する。従って、疲労特性の良好な範囲の降伏強度を保持
しながらr値も高くするためには、焼鈍温度に上限値が
存在する。その上限値を種々の化学成分の鋼のSi,M
n,Pの添加量によって重回帰分析を行った結果、図3
に示すような関係が得られたのである。すなわち、焼鈍
温度の上限値は6(10Si+0.5Mn+100P+
14)+710で与えられることが判明したのである。
【0029】なお、上記の焼鈍工程を溶融亜鉛めっきラ
インで行い、溶融亜鉛めっきを施しても本発明の効果を
損なうことなく、製品に防錆性が要求される場合はこの
ような溶融亜鉛めっきを施すことが好ましい。また、溶
接性などの特性が要求される場合は、450〜550℃
程度の温度で溶融亜鉛めっきの合金化処理を行う。ま
た、プレス成形性がとくに要求される場合には、めっき
皮膜上層にFe含有率が50%以上のFe−Zn合金め
っきを施すことで摩擦係数が低下し、成形性が大きく向
上する。得られた鋼板には、必要に応じて0.5〜1.
5%程度の調質圧延を行い、製品とする。また、冷延鋼
板表面にZn系めっきを電気めっきにより施しても本発
明の効果を何ら損なうものではない。次に、第2の態様
について説明する。
【0030】この態様における鋼組成は、Ti,Nb量
以外は基本的に第1の態様と同様である。Ti,Nbは
上述したように鋼中のC,Nを固定し、r値を向上させ
るために添加されるものであり、r値を上昇させるため
には、Ti,Nbは多い程よいが、大量に添加されると
鋼中のC,Nは全て固定されてしまい、TiC,NbC
等の析出物が粗大化して粒成長性が増大し、強度低下を
招く。この態様ではこの点に着目し、(12Ti* )/
(48C)+(12Nb)/(93C)(ただし、Ti
* =Ti−48/14/N−48/32S)で表される
値によりTi及びNb量を規定した。すなわち、この値
が2を越えるとTiC,NbC等の析出物が粗大化して
粒成長性が増大し強度低下を招くので、その上限を2に
規定した。また、逆にあまりTi,Nbの添加量が少な
いとC,Nが多量に残留し、高r値が得られないばかり
か、常温非時効性が保てなくなるため、その下限を−1
とした。次に、第2の態様の製造条件の限定理由につい
て説明する。
【0031】この態様における熱間圧延の条件は特に限
定されるものではなく、常法にて行えばよい。すなわ
ち、連続鋳造によって得られたスラブを加熱処理を施し
た後熱間圧延を行う方法でも、高温鋳片のまま圧延機に
直送されたスラブをそのまま熱間圧延する方法でもよ
い。熱延後の巻取り温度は好ましくは500℃以上60
0℃未満である。この理由は、前述した第1の態様と同
様に、当業者であれば容易に想到可能なものである。即
ち、熱延時に微細析出したTiC等の析出物の粗大化を
抑制し、粒成長を抑制するために巻取温度の上限は好ま
しくは600℃未満である。一方、降伏強度を上昇させ
るためには、巻取温度は低ければ低いほど良いが、50
0℃未満では焼鈍後のr値が劣化する可能性があるた
め、その下限は好ましくは500℃である。
【0032】その後の焼鈍工程は、再結晶温度以上でか
つ、−11{(12Ti* )/(48C)+(12N
b)/(93C)}+810で規定される温度以下で行
う。本発明者らは、この範囲に焼鈍温度を限定すること
で、成形性に優れ、かつ疲労特性にも優れた薄鋼板を製
造できることを新たに知見した。このような知見は、本
発明者らの以下のような実験を通して得られたものであ
る。
【0033】まず、C:0.0020%,Si:0.0
2%,Mn:0.2%,P:0.010%,S:0.0
10%,sol.Al:0.055%,N:0.002
5%,Ti:tr〜0.050%,Nb:tr〜0.0
30%の成分の鋼を溶解し、得られたスラブを1250
℃で加熱した後、熱間圧延して板厚を4.0mmとし、
580℃でコイルに巻き取った。酸洗後、0.8mmま
で冷間圧延し、600℃〜880℃の範囲で連続焼鈍を
行った。焼鈍板に0.5%の調圧を施した後、機械試験
および軸引張疲労試験を行った。その際の降伏強度と疲
労限の関係は、第1の態様の図1と同様に、降伏強度の
高い材料ほど疲労限は高くなることが確認され、やは
り、第1の態様と同様、疲労特性に優れ、しかも成形性
の高い材料を得るためには、成形性の許される範囲で、
できる限り降伏強度の高い材料を製造しなければならな
いことが確認された。次に、焼鈍温度と降伏強度及びr
値との関係の例を図4に示す。なお、図4に示した鋼の
化学成分を表2に示す。
【0034】
【表2】
【0035】図4から明らかなように、図2と同様、焼
鈍温度の上昇とともにr値は大きくなるが、その反面降
伏強度が低下するため、疲労特性の良好な範囲の降伏強
度を保持しながら、r値も高くするためには、焼鈍温度
に上限値が存在する。その上限値を種々の化学成分のT
i,Nbの添加量によって重回帰分析を行った結果、図
5に示すような関係が得られたのである。すなわち、焼
鈍温度の上限値は−11{(12Ti* )/(48C)
+(12Nb)/(93C)}+810で与えられるこ
とが判明したのである。
【0036】なお、第1の態様と同様、上記の焼鈍工程
を溶融亜鉛めっきラインで行い、溶融亜鉛めっきを施し
ても本発明の効果を何ら損なうことはなく、製品に防錆
性が要求される場合はこのような溶融亜鉛めっきを施す
ことが好ましい。また、溶接性などの特性が要求される
場合は、450〜550℃程度の温度で合金化処理を行
う。また、プレス成形性がとくに要求される場合には、
めっき皮膜上層にFe含有率が50%以上のFe−Zn
合金めっきを施すことで摩擦係数が低下し、成形性が大
きく向上する。得られた鋼板には、必要に応じて0.5
〜1.5%程度の調質圧延を行い、製品とする。また、
第1の態様と同様、冷延鋼板表面にZn系めっきを電気
めっきにより施しても本発明の効果を何ら損なうもので
はない。
【0037】かくして、本発明により、成形性に優れか
つ疲労特性にも優れた冷延鋼板および溶融亜鉛めっき鋼
板を安価に、しかも安定して製造することが初めて可能
になったのである。
【0038】
【実施例】以下、本発明の実施例について説明する。な
お、以下の実施例1〜3は第1の態様に対応するもの、
実施例5は第2の態様に対応するものである。 (実施例1)
【0039】表3に示す成分の鋼を溶製し、1100℃
〜1300℃で加熱後熱間圧延して、板厚を4.0mm
とし、580℃でコイルに巻き取った。酸洗後、0.8
mmまで冷間圧延し、760℃で連続焼鈍した後、溶融
亜鉛めっきを施した。その後、500℃で合金化処理を
行った後、0.5%の調圧を行い、製品とした。得られ
た鋼板より、引張試験片及び疲労試験片を採取して、引
張試験及び疲労試験に供した。その結果を図6に示す。
図6は、横軸にスラブ加熱温度をとり、縦軸に引張強度
及び疲労限をとって、これらの関係を示す図である。こ
の図から明らかなように、スラブ加熱温度を1200℃
以上にすることにより降伏強度及び疲労限が高い値とな
ることが確認された。
【0040】
【表3】 (実施例2)
【0041】表4に示す成分の鋼を溶製し、1250℃
で加熱した後、熱間圧延して板厚を4.0mmとし、4
00℃〜700℃の範囲でコイルに巻き取った。酸洗
後、0.7mmまで冷間圧延し、770℃で連続焼鈍し
た後、0.5%の調圧を行い、製品とした。得られた鋼
板より、引張試験片および疲労試験片を採取して、試験
に供した。結果を図7に示す。図7は、横軸に巻取温度
をとり、縦軸に降伏強度、疲労限及び平均r値をとっ
て、これらの関係を示す図である。この図から明らかな
ように、巻取温度が600℃を越えると高r値は得られ
るが降伏強度が低下するとともに疲労限も低下し、ま
た、450℃未満の温度範囲では降伏強度及び疲労限は
高い値が得られるがr値が低下することが確認された。
すなわち、巻取温度としては450〜600℃が適当な
ことが確認された。
【0042】
【表4】 (実施例3)
【0043】表5、表6に示す成分の鋼を溶製し、11
00℃から1300℃の温度で加熱した後、熱間圧延し
て板厚を4.0mmとし、400℃〜650℃の温度範
囲でコイルに巻き取った。酸洗後、0.8mmまで冷間
圧延し、650℃〜900℃の範囲で連続焼鈍を行っ
た。その後、これらの鋼材の一部は調圧を施して製品と
し、他は焼鈍後に溶融亜鉛めっきを施し、その後に45
0〜550℃の温度で合金化処理を施した。そして、合
金化処理を施したものの一部には、さらに亜鉛めっき皮
膜の上層にFe−Zn合金めっきを施した。なお、鋼番
号1〜30は本発明鋼であり、鋼番号31〜42は比較
鋼である。
【0044】
【表5】
【0045】
【表6】
【0046】これらの鋼材について機械試験及び軸引張
疲労試験を行った。なお、溶融亜鉛めっきの付着量は6
0/60g/m2 とした。また、上層めっき付着量は3
g/m2 とした。さらに、溶融亜鉛めっきを施した物に
ついては、耐パウダリング性を調べるため、ドロービー
ド試験を行った。この際に、片面当たりの剥離量5g/
2 以上を不良とした。これらの結果を表7及び表8に
示す。
【0047】
【表7】
【0048】
【表8】
【0049】これらの表から明らかなように、本発明鋼
はいずれも疲労限が高く、しかも高いr値が得られるこ
とが確認された。これに対して、比較鋼31では加熱温
度が低いため疲労限が低く、比較鋼32,33ではそれ
ぞれ巻取温度、焼鈍温度が高いため疲労限が低くなっ
た。また、比較鋼41では巻取温度が低いためr値の劣
化が著しく、比較鋼42では焼鈍温度が再結晶温度以下
のためr値が低くなっている。また、比較鋼34,40
ではそれぞれC,Nが多いためr値が低く、比較鋼3
4,37ではそれぞれSi,Pが多いため溶融亜鉛めっ
きの密着性が悪く、比較鋼36ではMnが多いためr値
が低い値となった。さらに、比較鋼39はTi,Nbが
添加されていないためr値が極端に低く、比較鋼38で
はNbが多いためやはりr値が低い値となった。
【0050】
【0051】
【0052】表10、11に示す成分の鋼を溶製し、1
150℃から1250℃の温度で加熱した後、熱間圧延
して板厚を4.0mmとし、500℃〜600℃の温度
範囲でコイルに巻き取った。酸洗後、0.8mmまで冷
間圧延し、650℃〜880℃の範囲で連続焼鈍を行っ
た。その後、これらの鋼材の一部は調圧を施して製品と
し、他は焼鈍後に溶融亜鉛めっきを施し、その後に45
0〜550℃の温度で合金化処理を施した。そして、合
金化処理を施したものの一部には、さらに亜鉛めっき皮
膜の上層にFe−Zn合金めっきを施した。なお、鋼番
号51〜80は本発明鋼であり、鋼番号81〜91は比
較鋼である。
【0053】
【表10】
【0054】
【表11】
【0055】これらの鋼材について機械試験および軸引
張疲労試験を行った。なお、溶融亜鉛めっきの付着量は
60/60g/m2 とした。また、上層の付着量は3g
/m2 とした。さらに、溶融亜鉛めっきを施した物につ
いては、耐パウダリング性を調べるため、ドロービード
試験を行った。この際に、片面当たりの剥離量5g/m
2 以上を不良とした。これらの結果を表12及び表13
に示す。
【0056】
【表12】
【0057】
【表13】
【0058】これらの表から明らかなように、本発明鋼
はいずれも疲労限が高く、しかも高r値が得られること
が確認された。これに対して、比較鋼81はTi,Nb
量が少ないためr値が低く、比較鋼82,83はTi,
Nb量が多すぎるため疲労限が低くなった。また、比較
鋼84,85,86はそれぞれC,Si,Mnが多いた
めr値が低く、比較鋼87はPが多いためr値が低いば
かりか、めっき密着性にも劣っている。また、比較鋼8
8はTi,Nbがまったく添加されていないためr値が
低く、比較鋼89はNが多いためr値が劣化している。
また、比較鋼90では焼鈍温度が高いため高r値は得ら
れるが、疲労限が低く、比較鋼91では焼鈍温度が再結
晶温度以下のためr値が極端に低い値となった。
【0059】
【発明の効果】本発明によれば、高い成形性を有し、か
つ疲労特性にも優れた鋼板の製造方法が提供される。こ
の発明の方法により、このような優れた特性を有する冷
延鋼板および溶融亜鉛めっき鋼板が初めて製造可能とな
るもので、その工業的価値は極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】降伏強度と疲労限との関係を示す図。
【図2】焼鈍温度と降伏強度及びr値との関係の一例を
示す図。
【図3】10Si+0.5Mn+100P+14と焼鈍
温度の上限値との関係を示す図。
【図4】焼鈍温度と降伏強度及びr値との関係の他の例
を示す図。
【図5】(12Ti* )/(48C)+(12Nb)/
(93C)と焼鈍温度の上限値との関係を示す図。
【図6】第1の態様における引張強度及び疲労限のスラ
ブの焼入れ加熱温度による変化を示す図。
【図7】第1の態様における降伏強度、疲労限及び平均
r値の巻取温度による変化を示す図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 吉武 明英 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (56)参考文献 特開 昭59−193221(JP,A) 特開 昭61−264134(JP,A) 特開 昭61−113724(JP,A) 特公 平4−5732(JP,B2) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C21D 9/48 C21D 8/04

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量%で、C:0.0050%以下、S
    i:0.2%以下、Mn:0.10〜0.5%、P:
    0.03%以下、S:0.015%以下、sol.A
    l:0.10%以下、N:0.0040%以下を含有
    し、更に0.005〜0.10%のTi及び0.005
    〜0.030%のNbのうち1種又は2種を含有する
    材を1200℃以上1300℃以下の温度で加熱した後
    熱間圧延し、450℃以上600℃以下の温度でコイル
    に巻き取り、得られた熱延鋼帯を酸洗後圧下率60%以
    上90%以下で冷間圧延し、再結晶温度以上でかつ、6
    (10Si+0.5Mn+100P+14)+710で
    規定される温度以下で焼鈍することを特徴とする疲労特
    性及び深絞り性に優れた鋼板の製造方法。
  2. 【請求項2】重量%で、C:0.0050%以下、S
    i:0.2%以下、Mn:0.10〜0.5%、P:
    0.03%以下、S:0.015%以下、sol.A
    l:0.10%以下、N:0.0040%以下、更にT
    i及びNbのうち1種又は2種を−1≦(12Ti*
    /(48C)+(12Nb)/(93C)≦2(ただ
    し、Ti* =Ti−48/14/N−48/32S)を
    満足するように含有する鋼材に対して熱間圧延を施し、
    500℃以上600℃未満の温度でコイルに巻き取り、
    これを酸洗後圧下率60%以上90%以下で冷間圧延
    し、再結晶温度以上でかつ、−11{(12Ti* )/
    (48C)+(12Nb)/(93C)}+800で規
    定される温度以下で焼鈍することを特徴とする疲労特性
    及び深絞り性に優れた冷延鋼板の製造方法。
  3. 【請求項3】 さらに溶融亜鉛めっきを施すことを特徴
    とする請求項1又は2に記載の疲労特性及び深絞り性に
    優れた鋼板の製造方法。
  4. 【請求項4】 さらに合金化処理を施し、合金化溶融亜
    鉛めっきを形成することを特徴とする請求項3に記載の
    疲労特性及び深絞り性に優れた鋼板の製造方法。
  5. 【請求項5】 さらにめっき皮膜の上層にFe含有量が
    50%以上のFe−Zn合金めっきを施すことを特徴と
    する請求項4に記載の疲労特性及び深絞り性に優れた鋼
    板の製造方法。
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