JP2736520B2 - バックスキン調布帛 - Google Patents

バックスキン調布帛

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JP2736520B2 JP29764195A JP29764195A JP2736520B2 JP 2736520 B2 JP2736520 B2 JP 2736520B2 JP 29764195 A JP29764195 A JP 29764195A JP 29764195 A JP29764195 A JP 29764195A JP 2736520 B2 JP2736520 B2 JP 2736520B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、衣料生地や椅子張地等
に使用されるバックスキン調布帛に関するものである。
【0002】
【従来の技術】バックスキン調布帛としては、起毛布帛
に付与した薄い樹脂溶液の皮膜の表面に毛羽先が突き出
た人工皮革が公知である。その起毛布帛には、繊度が1
デニール未満の極細繊維を起毛面に浮き出させた経編布
が使用され、樹脂溶液には皮膜が柔軟なポリウレタン樹
脂やシリコン樹脂が使用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】起毛布帛に樹脂溶液を
付与すると、個々独立に突き出ていた毛羽が塗料や墨汁
の付いた筆先のように数本づつ纏まって固まり、その固
まった樹脂皮膜の表面に毛羽先が突き出て起毛面がバッ
クスキンの観を呈し、その毛羽に極細繊維を使用する
と、起毛面の触感風合がバックスキンに酷似したものと
なる。従って人工皮革では、その原反となる経編布の起
毛毛羽を構成するパイル糸には、1デニール未満の極細
繊維が使用され、1デニール以上の一般繊維は使用され
ず、樹脂溶液を付与することが必須条件となる。しかし
樹脂皮膜は、(1) 使用中に経日変化して脆化・変色
・脱落し易い。(2) 染色性が悪く極細繊維毛羽と同
じようには染色し得ない。(3) 起毛布帛の通気性や
成型加工性を損なう。(4) 樹脂皮膜の脆化・脱落に
より人工皮革が摩耗し易くなる。(5) 極細繊維毛羽
に比して耐光性に劣る樹脂皮膜の変色により人工皮革の
耐光堅牢度が低下する。従って従来技術によっては、炎
天下で直射日光を受ける車両内装材、特に、身体に触れ
て擦られる車両椅子張地に適した耐光堅牢度、耐摩耗
性、通気性、成型加工性、柔軟可撓性等の物性に優れた
バックスキン調布帛は得られない。
【0004】
【発明の目的】そこで本発明は、車両内装材、特に、車
両椅子張地としての使用に耐え、触感風合や通気性など
の点で衣料生地としても優れた品質を有するバックスキ
ン調布帛を得ることを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明に係るバックスキ
ン調布帛17は、(a) ベース地13から突き出たパ
イル長2mm以下(0.3〜2mm)のパイル14を有
し、(b) そのパイル糸が低収縮性繊維11と高収縮
性繊維12を混有する糸条(本発明では、混在糸条と言
う。)であり、(c) その高収縮性繊維12の収縮率
(α%)と低収縮性繊維11の収縮率(β%)との収縮
率差(α−β)が10〜40%であり、(d) その高
収縮性繊維12の混有率が10〜50重量%、低収縮性
繊維11の混有率が90〜50重量%であり、(e)
混在糸条の長さ1cm内に混在する高収縮性繊維12の
本数(N)が5本以上(N≧5)、低収縮性繊維11の
本数(M)が高収縮性繊維12の本数(N)の5〜25
倍(M=5N〜25N)であり、(f) 高収縮性繊維
12の繊度が1.5デニール以上であり、低収縮性繊維
11が繊度0.5デニール以下の極細繊維であり、
(g) 高収縮性繊維12と低収縮性繊維11の少なく
とも一方が捲縮を有し、(h) パイル内の高収縮性繊
維12が、収縮率差(α−β)に応じて低収縮性繊維1
1よりも大きく収縮した短毛羽を形成しており、(i)
パイルを構成する高収縮性繊維の少なくとも一部の短
毛羽が輪奈を形成し、パイルを構成する低収縮性繊維の
少なくとも一部の毛羽が高収縮性繊維の短毛羽よりも長
くパイル面に掻き出されており、(j) 単位面積(1
cm2 )に含まれる少なくとも1個のパイルに含まれる
少なくとも一部の低収縮性繊維の毛羽が輪奈を形成して
おり、(k) 単位面積(1cm2 )に含まれる一部の
パイル15の表面に突き出た毛羽の数と長さが他の一部
のパイル16の表面に突き出た毛羽の数と長さと異な
り、そのパイル表面の毛羽の相異による梨地調凹凸がパ
イル面に形成されていることを特徴とするものである。
【0006】混在糸条は、高収縮性繊維と低収縮性繊維
との混紡糸(紡績糸)であっても混繊糸(マルチフイラ
メント糸)であってもよい。高収縮性繊維の収縮は、加
熱による熱収縮、吸湿による水収縮、又、熱水による熱
水収縮の何れでもよい。高収縮性繊維と低収縮性繊維と
の収縮率差(α−β)は、高収縮性繊維の収縮する条件
下(熱、水、熱水)で測定される両者の収縮率(αと
β)の差を意味する。高収縮性繊維と低収縮性繊維の比
重が異なる場合、それらの混有率は、それらの比重を1
とする容積比率で示される。
【0007】本発明は、少なくとも一部の高収縮性繊維
と低収縮性繊維によって形成される輪奈と、高収縮性繊
維より長く掻き出された低収縮性繊維の長毛羽と、低収
縮性繊維よりも大きく収縮した高収縮性繊維の短毛羽を
構成要件とするので、本案バックスキン調布帛は、ルー
プパイル布帛を原反とし、低収縮性繊維との収縮率差に
応じた高収縮を高収縮性繊維に顕現する収縮処理と、低
収縮性繊維の毛羽を高収縮性繊維の毛羽よりも長く掻き
出す掻出処理を施して得られる。
【0008】そのループパイルは、人工皮革の原反とす
る経編布の起毛されるシンカーループの如く、ベース生
地を構成する数本の経糸や緯糸の上を越えて浮き出た三
日月状の輪奈を形成したものであってもよい。従ってバ
ックスキン調布帛の原反となるループパイル布帛は、パ
イル編機、パイル織機、タフテッド機等によるほか、通
常の織機や編機を用い、混在糸条を数本の地経糸や地緯
糸にわたってベース生地から浮き上がらせて織成・編成
し、そのベース生地の収縮によって三日月状の輪奈を形
成したものであってもよい。
【0009】
【作用】低収縮性繊維との収縮率差に応じた収縮を高収
縮性繊維に顕現する収縮処理過程において、ループパイ
ル中の高収縮性繊維の混有率が10〜50重量%で低収
縮性繊維の混有率が90〜50重量%であり、ループパ
イル内に混在する高収縮性繊維の本数(N)が5本以上
(N≧5)で低収縮性繊維の本数(M)が高収縮性繊維
の本数(N)の5〜25倍(M=5N〜25N)であ
り、高収縮性繊維の繊度が1.5デニール以上であり、
低収縮性繊維が繊度0.5デニール以下の極細繊維であ
り、高収縮性繊維と低収縮性繊維の少なくとも一方が捲
縮を有するループパイルでは、混在糸条が無撚であって
も低収縮性繊維は高収縮性繊維の何れかの部分に触れて
絡まり合っており、その絡合具合は個々の低収縮性繊維
によって異なるので、ループパイル内の個々の輪奈を形
成している或る低収縮性繊維は高収縮性繊維の輪奈に引
き込まれるようにしてパイル面に深く沈み、或る低収縮
性繊維はパイル面に浅く沈み、その沈み具合も区々にな
り、その結果、パイル面には多くの低収縮性繊維が深く
沈んだパイルと余り深く沈まないパイルとが混在するこ
とになり、その低収縮性繊維の沈み具合に応じた梨地調
凹凸がパイル面に生じるようになる。
【0010】このようなことは掻出処理においても生じ
る。即ち、低収縮性繊維は、繊度が0.5デニール以下
と極細なので、針布やエメリーペーパー(サンドペーパ
ー)の突起に引っ掛かり易く、太く伸びにくい高収縮性
繊維よりも長く掻き出されることになるが、高収縮性繊
維との絡合具合が個々の低収縮性繊維によって異なるの
で、その掻き出され方も低収縮性繊維によって個々区々
になり、又、各パイルによっても区々になる。その結
果、パイル面には多くの低収縮性繊維が長く掻き出され
たパイルと余り掻き出されないパイルとが混在すること
になる。
【0011】かくして、表面に掻き出された低収縮性繊
維の毛羽の数と長さが異なるパイルによる梨地調凹凸が
パイル面に形成され、パイル面が極細の低収縮性繊維で
覆われた柔らかい感触のバックスキン調布帛が得られる
ことになる。
【0012】収縮処理と掻出処理は何れを先に行っても
よいが、好ましくは収縮処理を行ってから掻出処理を行
うとよい。ループパイル布帛を染色する場合は、その染
色を兼ねて収縮処理を行ってもよい。低収縮性繊維との
収縮率差に応じた収縮が高収縮性繊維に顕現し易くし、
又、収縮する高収縮性繊維と共に変動する低収縮性繊維
の沈み具合や低収縮性繊維が長く掻き出され方が個々区
々になるようにするには、混在糸条を無撚にするか1個
のループパイル内の撚回数が0.5回以下となる程度の
甘撚にし、低収縮性繊維が混在糸条内で長さ方向に移動
し易いようにしておくとよい。そのためには、高収縮性
繊維と低収縮性繊維の双方を捲縮を有するフイラメント
とし、それらのフイラメントを絡まり合わせただけの実
撚を有しない混繊糸、具体的に言えばタスラン捲縮加工
マルチフイラメントを混在糸条(パイル)に用いること
が推奨される。
【0013】パイルを構成する高収縮性繊維の少なくと
も一部の短毛羽が輪奈を形成し、低収縮性繊維の少なく
とも一部が高収縮性繊維よりも長く掻き出されて長毛羽
を形成し、単位面積(1cm2 )に含まれる少なくとも
1個のパイルに含まれる少なくとも一部の低収縮性繊維
の毛羽が輪奈のまま残されていて、単位面積(1c
2 )に含まれる一部のパイルの表面に突き出た毛羽の
数や長さが他のパイルの表面に突き出た毛羽の数や長さ
と異なり、そのパイル表面の毛羽の相異による梨地調凹
凸がパイル面に確実に形成されるようにするには、高収
縮性繊維と低収縮性繊維の収縮率差、混有率、本数、繊
度、捲縮、混在糸条の撚加減を上記の通り設定するほ
か、高収縮性繊維までをも起毛してしまう虞のある針布
ではなくエメリーペーパーを用いてパイル面を研磨する
ように掻出処理し、その際、全ての低収縮性繊維の輪奈
が掻き出されてしまわないように加減する。
【0014】具体的に言えば、単位面積(1cm2 )に
含まれる3割以上のパイルに含まれる少なくとも一部の
低収縮性繊維が高収縮性繊維の短毛羽よりも長く掻き出
され、単位面積(1cm2 )に含まれる3割以上のパイ
ル内で高収縮性繊維が構成する少なくとも5個の短毛羽
と低収縮性繊維が構成する少なくとも一部の毛羽が削り
出されず輪奈の状態で残る程度に掻出処理を加減する。
【0015】高収縮性繊維と低収縮性繊維との収縮率差
(α−β)が10%未満になると、はっきり目視し得る
梨地調凹凸がパイル面に形成されない。高収縮性繊維と
低収縮性繊維との収縮率差40%以下にするのは、収縮
率が40%を超える高収縮性繊維が一般市販されていな
いためで格別な技術的理由はなく、収縮率が40%を超
える高収縮性繊維があれば、それを使用することも出来
る。従って現実的に言えば、高収縮性繊維と低収縮性繊
維との収縮率差(α−β)は10%以上、好ましくは2
0%以上であればよい。
【0016】高収縮性繊維の混有率を10〜50重量
%、低収縮性繊維の混有率を90〜50重量%とする理
由は、高収縮性繊維の混有率が10重量%未満で低収縮
性繊維の混有率が90重量%超過になると、収縮する高
収縮性繊維によって低収縮性繊維が押さえ込まれ難く梨
地調凹凸がパイル面に形成されず、それとは逆に、高収
縮性繊維の混有率が50重量%超過で低収縮性繊維の混
有率が50重量%未満になると、収縮する高収縮性繊維
に殆ど全ての低収縮性繊維が押さえ込まれてループパイ
ル布帛が硬く薄い平板なものとなるからである。
【0017】混在糸条の長さ1cm内に混在する高収縮
性繊維の本数を5本以上とし、低収縮性繊維の本数を高
収縮性繊維の本数の5〜25倍とすること、高収縮性繊
維の繊度を1.5デニール以上とし、低収縮性繊維の繊
度を0.5デニール以下にすること、そして高収縮性繊
維と低収縮性繊維の少なくとも一方に捲縮を付与するこ
とも同じ理由による。即ち、高収縮性繊維が少なく低収
縮性繊維が余りに多ければパイル面が低収縮性繊維の毛
羽に完全に覆われてしまい、高収縮性繊維の繊度が低収
縮性繊維の繊度と同じ程度になれば、掻出処理時に高収
縮性繊維も掻き出され、又、収縮する高収縮性繊維によ
って低収縮性繊維が押さえ込まれ難くなり、混在する低
収縮性繊維が太かったり数が少ない場合にはバックスキ
ン調の柔らかい感触は得られず、捲縮がなければ低収縮
性繊維と高収縮性繊維の絡み具合が悪く、加撚しなけれ
ば混在糸条をベース地に織り込んだり編み込み難くな
る。ここに“混在糸条の長さ1cm内に混在”とは、混
在糸条が紡績糸であり、その番手のバラツキによって生
じた混在糸条の細い“長さ1cm程度”の部分において
も、混在糸条が高収縮性繊維と低収縮性繊維によって上
記の通り構成されることを意味し、混在糸条がフイラメ
ント糸の場合は、その全長にわたって上記の通り構成さ
れる。
【0018】ループパイル布帛のパイル密度は、ループ
パイルによってベース地が完全に被覆される程度、即
ち、従来の人工皮革の原反のパイル密度と同程度にすれ
ばよい。収縮処理と掻出処理後に、ループパイルが個々
独立して纏まった粒状の外観を呈さず、掻き出された低
収縮性繊維の毛羽が隣合うループパイル間で絡み合って
連続したバックスキン調の外観を呈するようにするに
は、従来の人工皮革の原反と同様に、数ウエール間にま
たがってベース生地から三日月状に浮き出たシンカール
ープを有する経編布をバックスキン調布帛の原反とする
とよい。
【0019】掻出処理したパイル面にはシャーリングを
施し、その掻き出された毛羽の長さを揃えてパイル面を
平滑にするとよい。しかしその場合、シャーリングによ
ってループパイルを構成している全ての繊維の輪奈がカ
ットされ、ループパイル布帛がパイル長が揃ったコール
テン(ビロード)やモケット等のように表面が平滑なカ
ットパイル布帛にならないように注意する。パイル面を
天然のバックスキンに一層酷似したものとするには、天
然のバックスキンに見られる濃淡地模様をパイル面に捺
染するとよい。その他、ヌメリ感や撥水性を付与するた
め、或いは、脱毛を防ぎ耐摩耗性を高めるために、バッ
クスキン調布帛に所要の樹脂溶液を付与して仕上げると
しても、そのことによって本発明の技術的範囲は縮減さ
れない。
【0020】
【実施例】ウエール間隔(ゲージ)が1/28吋(所謂
28ゲージ)のバック筬とフロント筬との2枚筬のトリ
コット経編機において、バック筬には75デニール/3
6フイラメント(繊度;2.1デニール)の通常のポリ
エステル捲縮加工マルチフイラメント糸を地編糸として
通し、フロント筬には100℃×30分間での熱水収縮
率が24%の30デニール/12フイラメント(繊度;
2.5デニール)の高収縮性ポリエステル捲縮加工マル
チフイラメント糸と100℃×30分間での熱水収縮率
10%未満の55デニール/168本フイラメント
(繊度;0.3デニール)の低収縮性ポリエステル捲縮
加工マルチフイラメント糸からなるタスラン加工無撚混
繊マルチフイラメント糸をパイル糸として通し、〔表
1〕に示すベース地編組織(1/0/1/2)とパイル
組織(1/0/5/6)で編成したトリコット経編布
(生機編密度;28ウエール/吋、70コース/吋)を
熱セット処理(120℃×10分間)し、高圧染色機に
て染色と同時に収縮処理(132℃×30分間)し、柔
軟剤を付与した後、エメリーペーパー・ロールに通して
シンカーループ面を掻出処理し、シャーリングを施して
シンカーループ面から異常に長く突き出た低収縮性ポリ
エステル捲縮加工マルチメイラメントの毛羽先を揃えて
バックスキン調布帛(仕上がり編密度;44ウエール/
吋、80コース/吋)を得た。
【0021】
【表1】
【0022】
【発明の効果】本案バックスキン調布帛では、その表面
にループパイルから掻き出された極細で柔らかい低収縮
性繊維の毛羽が突き出ており、その掻き出された低収縮
性繊維の毛羽の数と長さが異なるパイルが混在した梨地
調凹凸によってバックスキン調の触感風合と外観が構成
され、パイル層内部にはベース地の全面を覆うように通
常の太さの高収縮性繊維が介在し、表面に掻き出された
低収縮性繊維の毛羽の根元はパイル層内部の高収縮性繊
維にも絡まり合っており、表面に掻き出された低収縮性
繊維の毛羽の根元とベース地をパイル層内部の高収縮性
繊維が補強・保護して本案バックスキン調布帛を耐摩耗
性に優れたものとしている。
【0023】従って本案では、従来の人工皮革のように
原反に樹脂溶液を付与する必要はなく、その分原料コス
トが安くつくと共に製造工数も少なくなり、又、付与す
る樹脂溶液によって生じる不都合、即ち、樹脂皮膜が経
日変化して耐光堅牢度や耐摩耗性が低下したり、樹脂皮
膜によって原反の染色が妨げられる、樹脂皮膜によって
原反の通気性や成型加工性が損なわれる、等の不都合を
生じない。
【0024】そして本案では、バックスキン調布帛の原
反であるループパイル布帛を、そのパイル面が毛羽によ
って埋め尽くされる程度に強く起毛する必要はなく、本
案における掻出処理は、高収縮性繊維を掻き出さず、低
収縮性繊維の構成する少なくとも一部の毛羽が削り出さ
れず輪奈のまま残る程度にすることが要件となるから、
その掻出処理は原反であるループパイル布帛の強度低下
を招かず、この点でも従来の人工皮革のように樹脂溶液
による補強を必要としない。
【0025】而も本案バックスキン調布帛の表面毛羽
は、従来の人工皮革のように樹脂溶液に固められ被覆さ
れておらず、表面毛羽間に吸湿や保温上必要とする細か
い隙間が保たれるので、本案バックスキン調布帛に触れ
てベトツキや冷たい感触を受けることはない。
【0026】かくして本発明によると、触感風合や耐光
堅牢度、耐摩耗性、通気性、成型加工性、柔軟可撓性等
の物性に優れ、車両内装材、特に車両椅子張地として炎
天下での使用に耐え、衣料生地にも好適なバックスキン
調布帛が経済的に得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るバックスキン調布帛の斜視図であ
り、そのバックスキン調布帛の一部を丸で囲んで拡大し
て図示している。
【符号の説明】
11 低収縮性繊維 12 高収縮性繊維 13 ベース地 14 パイル 15 パイル面の一部のパイル 16 パイル面の一部のパイル 17 バックスキン調布帛

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】(a) ベース地(13)から突き出たパ
    イル(14)を有し、(b) そのパイル糸が低収縮性
    繊維(11)と高収縮性繊維(12)を混有する混在糸
    条であり、(c) その高収縮性繊維(12)の収縮率
    (α%)と低収縮性繊維(11)の収縮率(β%)との
    収縮率差(α−β)が10〜40%であり、(d) そ
    の高収縮性繊維(12)の混有率が10〜50重量%、
    低収縮性繊維(11)の混有率が90〜50重量%であ
    り、(e) 混在糸条の長さ1cm内に混在する高収縮
    性繊維(12)の本数(N)が5本以上(N≧5)、低
    収縮性繊維(11)の本数(M)が高収縮性繊維(1
    2)の本数(N)の5〜25倍(M=5N〜25N)で
    あり、(f) 高収縮性繊維(12)の繊度が1.5デ
    ニール以上であり、低収縮性繊維(11)が繊度0.5
    デニール以下の極細繊維であり、(g) 高収縮性繊維
    (12)と低収縮性繊維(11)の少なくとも一方が捲
    縮を有し、(h) パイル内の高収縮性繊維(12)
    が、その有する収縮性を顕現して収縮率差(α−β)に
    応じた低収縮性繊維(11)よりも短い短毛羽を形成し
    ており、(i) パイルを構成する高収縮性繊維(1
    2)の少なくとも一部の短毛羽が輪奈を形成し、パイル
    を構成する低収縮性繊維(11)の少なくとも一部の毛
    羽が高収縮性繊維(12)の短毛羽よりも長くパイル面
    に掻き出されており、(j) 単位面積(1cm2 )に
    含まれる少なくとも1個のパイルに含まれる少なくとも
    一部の低収縮性繊維の毛羽が輪奈を形成しており、
    (k) 単位面積(1cm2 )に含まれる一部のパイル
    (15)の表面に突き出た毛羽の数と長さが他の一部の
    パイル(16)の表面に突き出た毛羽の数と長さと異な
    り、そのパイル表面の毛羽の相異による梨地調凹凸がパ
    イル面に形成されていることを特徴とするバックスキン
    調布帛(17)。
  2. 【請求項2】 前掲請求項1に記載のバックスキン調布
    帛(17)の単位面積(1cm2 )に含まれる3割以上
    のパイルに含まれる少なくとも一部の低収縮性繊維(1
    1)が高収縮性繊維(12)の短毛羽よりも長く掻き出
    されており、単位面積(1cm2 )に含まれる3割以上
    のパイル内で高収縮性繊維(12)が構成する少なくと
    も5個の短毛羽と低収縮性繊維(11)が構成する少な
    くとも一部の毛羽が輪奈を形成していることを特徴とす
    る前掲請求項1に記載のバックスキン調布帛(17)。
  3. 【請求項3】 前掲請求項1に記載のバックスキン調布
    帛(17)がトリコット経編布帛であり、バックスキン
    調布帛のパイル(14)がベース地(13)から突き出
    たパイル長が2mm以下のシンカーループであることを
    特徴とする前掲請求項1に記載のバックスキン調布帛。
  4. 【請求項4】 前掲請求項1に記載のバックスキン調布
    帛のパイル面に捺染模様が施されていることを特徴とす
    る前掲請求項1に記載のバックスキン調布帛。
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